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特許7418954パワーコンディショナおよび蓄電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】パワーコンディショナおよび蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240115BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018232948
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020096449
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】中村 英人
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009482(JP,A)
【文献】特開2018-121449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の直流電圧に直流電力を変換するコンバータと、該変換された前記直流電力を交流電力に変換するインバータを備えたパワーコンディショナにおいて、
前記インバータに直流電力を供給する電力線上に介装される地絡検出部と、
前記地絡検出部からの出力信号に重畳される高周波信号を除去するアクティブフィルタ回路と、
前記アクティブフィルタ回路からの出力信号に対して補正処理を施す補正処理部と、
前記補正処理部からの出力信号に基づいて、地絡の有無を判定する地絡判定部と、
を備え、
前記地絡検出部が、鉄心と、前記鉄心内部を貫通し、往路電流が流れるDC+配線と復路電流が流れるDC-配線とからなる電力線としての往復電流配線対とを有し、
前記補正処理部は、前記アクティブフィルタ回路の出力信号に対して、零補正を行い、前記零補正後に、前記零補正した前記アクティブフィルタ回路の出力信号に対して、最終補正を行い、前記最終補正をした信号を前記補正処理部からの出力信号として出力するものであり、
前記零補正は、前記地絡検出部の鉄心内部に前記電力線以外の試験用電力線としての往復電流配線対を貫通させた場合において、前記試験用電力線としての往復電流配線対に地絡試験電流を流さないときに前記地絡検出部を介して前記コンバータと前記インバータとの間に流れるインバータ電流の大きさにかかわらず、前記アクティブフィルタ回路からの出力信号が零となるように所定の第1の関係式または固定値に基づき行われる補正であり、
前記最終補正は、前記零補正した後に、前記試験用電力線としての往復電流配線対に特定の地絡試験電流を流したときに、前記零補正した前記アクティブフィルタ回路の出力信号が、前記インバータ電流の大きさにかかわらず、前記特定の地絡試験電流の値となるように所定の第2の関係式に基づき行われる補正であるパワーコンディショナ。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーコンディショナと、
電動車に搭載された車載蓄電池に対して充放電制御を行う車載蓄電池用コンバータを有するV2Hスタンドと、
を備え、
前記パワーコンディショナは当該パワーコンディショナが備える前記コンバータとして、再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置の発電電力を所定の直流電圧に変換する発電装置用コンバータを有し、
前記パワーコンディショナが備える前記インバータは、前記発電装置用コンバータからの直流電力および前記車載蓄電池用コンバータからの直流電力を交流電力に変換するとともに、交流電力を直流電力に変換して前記車載蓄電池用コンバータを介して前記車載蓄電池を充電可能に構成され、
前記地絡検出部は、前記発電装置用コンバータからの直流電力と前記車載蓄電池用コンバータからの直流電力とが共通の電力線を経由して前記インバータに供給される当該共通の電力線上に介装されていることを特徴とする蓄電システム。
【請求項3】
定置型の蓄電池ユニットをさらに備え、
前記パワーコンディショナは当該パワーコンディショナが備える前記コンバータとして、前記蓄電池ユニットに対して充放電制御を行う定置型蓄電池用コンバータを有し、
前記地絡検出部は、前記発電装置用コンバータからの直流電力と前記車載蓄電池用コンバータからの直流電力と前記定置型蓄電池用コンバータからの直流電力が共通の電力線を経由して前記インバータに供給される当該共通の電力線上に介装され、
前記蓄電池ユニットから前記インバータへの放電電力の供給および前記インバータから前記蓄電池ユニットへの充電電力の供給が前記共通の電力線を経由して行われることを特徴とする請求項2記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコンディショナおよび蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムと、電気自動車、蓄電池等を組み合わせて、昼間、太陽光発電で発電した電気を蓄電池にためて、夜間に電気自動車へ電気を移動するエレムーブ(登録商標)や、電気自動車にためた電気も利用することにより、長期間の停電にも対応可能なトライブリッド蓄電システム(登録商標)の開発が進められている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ところで、非特許文献1に記載のように、太陽光発電システムや電気自動車を含む蓄電システムでは、電気設備技術基準の定めにより、太陽光発電システムや電気自動車のそれぞれに対して、地絡検出を行う必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】トライブリッド蓄電システム、[online]、ニチコン株式会社、[平成30年6月1日検索]、インターネット<URL:http://www.nichicon.co.jp/products/tribrid/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その際、蓄電システムに接続されるのが、例えば、太陽光発電システムあるいは電気自動車のうち、1系統であれば、太陽光発電システムあるいは電気自動車の所定の位置で地絡検出を行えば良い。
しかしながら、複数系統である場合には、地絡検出器が複数必要となる。
この場合、検出に使用する地絡検出器と検出回路が複数必要となり、システム全体のコストアップになるという問題があった。
【0006】
そこで、複数系統の地絡検出を1箇所に集約して行うことも考えられるが、地絡検出する箇所によっては、その箇所に流れる電流が高周波成分を含んでいる場合がある。
そのため、単純に、地絡検出器を1つにすればよいというものではなく、状況によっては地絡検出器を1つに集約すると、地絡を検出できない場合があった。
【0007】
具体的には、発明者が行った実験によれば、地絡検出器として使用したバスバー型の零相変流器(ZCT)230を貫通する配線の配置を図8に示すようにして、商用系統側に負荷5kWで放電させた。零相変流器230は、鉄心230a内部に往復電流が流れる往復電流配線対(DC+配線とDC-配線)を2対貫通させ、鉄心230aの横断面において合計4本の配線を図8に示すように配置した。この場合、電圧については、変動のない直流電圧を観測できたが、図9に示すように、電流については、直流電流ではなく、駆動周波数に準じた矩形波状の電流波形が観測された。
【0008】
このように、電流波形に高周波が重畳すると、正確に地絡を検出することができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、コストダウンを図るとともに、精度の高い地絡検出を実現可能なパワーコンディショナおよび蓄電システムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、所定の直流電圧に直流電力を変換するコンバータと、該変換された前記直流電力を交流電力に変換するインバータを備えたパワーコンディショナにおいて、前記インバータに直流電力を供給する電力線上に介装される地絡検出部と、前記地絡検出部からの出力信号に重畳される高周波信号を除去するアクティブフィルタ回路と、前記アクティブフィルタ回路からの出力信号に対して補正処理を施す補正処理部と、前記補正処理部からの出力信号に基づいて、地絡の有無を判定する地絡判定部と、を備え、前記地絡検出部が、鉄心と、前記鉄心内部を貫通し、往路電流が流れるDC+配線と復路電流が流れるDC-配線とからなる電力線としての往復電流配線対とを有し、前記補正処理部は、前記アクティブフィルタ回路の出力信号に対して、零補正を行い、前記零補正後に、前記零補正した前記アクティブフィルタ回路の出力信号に対して、最終補正を行い、前記最終補正をした信号を前記補正処理部からの出力信号として出力するものであり、前記零補正は、前記地絡検出部の鉄心内部に前記電力線以外の試験用電力線としての往復電流配線対を貫通させた場合において、前記試験用電力線としての往復電流配線対に地絡試験電流を流さないときに前記地絡検出部を介して前記コンバータと前記インバータとの間に流れるインバータ電流の大きさにかかわらず、前記アクティブフィルタ回路からの出力信号が零となるように所定の第1の関係式または固定値に基づき行われる補正であり、前記最終補正は、前記零補正した後に、前記試験用電力線としての往復電流配線対に特定の地絡試験電流を流したときに、前記零補正した前記アクティブフィルタ回路の出力信号が、前記インバータ電流の大きさにかかわらず、前記特定の地絡試験電流の値となるように所定の第2の関係式に基づき行われる補正であるパワーコンディショナを提案している。
【0011】
形態1によれば、地絡検出部からの出力信号を補正する補正部を備えることから、地絡検出部からの出力信号に高周波信号が重畳していても、この重畳する高周波信号を除去し、地絡判定部において地絡の有無を判定可能な信号に補正することできる。
また、このように地絡検出部からの出力信号に高周波信号が重畳していても地絡の有無を判定可能になることから、高周波信号が重畳しやすいインバータに直流電力を供給する電力線上であっても、当該電力線上に地絡検出部を介装することができ、複数系統の地絡検出を1箇所に集約することも可能となる。そのため、コスト低減を図りながら高い検出精度で地絡検出を実現することができる。
【0015】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、請求項1に記載のパワーコンディショナと、電動車に搭載された車載蓄電池に対して充放電制御を行う車載蓄電池用コンバータを有するV2Hスタンドと、を備え、前記パワーコンディショナは当該パワーコンディショナが備える前記コンバータとして、再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置の発電電力を所定の直流電圧に変換する発電装置用コンバータを有し、前記パワーコンディショナが備える前記インバータは、前記発電装置用コンバータからの直流電力および前記車載蓄電池用コンバータからの直流電力を交流電力に変換するとともに、交流電力を直流電力に変換して前記車載蓄電池用コンバータを介して前記車載蓄電池を充電可能に構成され、前記地絡検出部は、前記発電装置用コンバータからの直流電力と前記車載蓄電池用コンバータからの直流電力とが共通の電力線を経由して前記インバータに供給される当該共通の電力線上に介装されていることを特徴とする蓄電システムを提案している。
【0016】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、定置型の蓄電池ユニットをさらに備え、前記パワーコンディショナは当該パワーコンディショナが備える前記コンバータとして、前記蓄電池ユニットに対して充放電制御を行う定置型蓄電池用コンバータを有し、前記地絡検出部は、前記発電装置用コンバータからの直流電力と前記車載蓄電池用コンバータからの直流電力と前記定置型蓄電池用コンバータからの直流電力が共通の電力線を経由して前記インバータに供給される当該共通の電力線上に介装され、前記蓄電池ユニットから前記インバータへの放電電力の供給および前記インバータから前記蓄電池ユニットへの充電電力の供給が前記共通の電力線を経由して行われることを特徴とする蓄電システムを提案している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、コストダウンを図るとともに、精度の高い地絡検出を実現可能なパワーコンディショナおよび蓄電システムを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る蓄電システムの構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るパワーコンディショナの構成図である。
図3】本発明の実施形態に係るアクティブフィルタ回路と制御装置との構成を示す図である。
図4】(A)は、従来と同様に、ZCTの出力信号に対して増幅のみを行った場合のZCTの出力信号とμCom入力信号との関係を示した図である。(B)は、ZCTの出力信号に対して本発明の補正部の一部であるアクティブフィルタを通して、μCom入力信号を生成した場合のZCTの出力信号とμCom入力信号との関係を示した図である。
図5】本発明の補正部を用いない場合に、地絡試験電流を0mA、95mA、-95mAとしたときのインバータ電流と制御装置の読み値との関係を示した図である。
図6】地絡試験電流を0mAとして、補正を行った場合のインバータ電流と制御装置の読み値との関係を示した図である。
図7】地絡試験電流を0mAとして、補正を行い、さらに、インバータ電流が5A以上に対して、演算式を用いた補正を行った場合のインバータ電流と検出部の制御装置の読み値との関係を示した図である。
図8】従来例に係るバスバー型零相変流器における配線レイアウトを示す図である。
図9】従来例に係るバスバー型零相変流器における電流波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
図1から図7を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
<蓄電システムの構成>
以下、図1を用いて、本実施形態に係る蓄電システム10の構成について説明する。
【0021】
なお、本実施形態にかかる蓄電システム10は、蓄電池ユニットとパワーコンディショナと、が分離された蓄電システムであって、単機能型蓄電システム(太陽光パワーコンディショナが分離された蓄電システム)および多機能型蓄電システム(太陽電池に接続される太陽光パワーコンディショナと蓄電池ユニットに接続される蓄電パワーコンディショナと、電動車両に接続される充放電回路とを一体化した蓄電システム)のいずれにも対応可能な蓄電システムである。
【0022】
本実施形態に係る蓄電システム10は、図1に示すように、蓄電池システム用ブレーカ110と、パワーコンディショナ200と、定置型の蓄電池ユニット240と、電気自動車(EV)等の電動車260に接続されるV2H(Vehicle to Home)スタンド250と、太陽電池モジュール(発電装置)300と、主幹ブレーカ410と、分岐ブレーカ420と、切替スイッチ430と、重要負荷用分岐ブレーカ440とを含んで構成されている。
なお、図1に示すように主幹ブレーカ410の商用電力系統側にエネファーム(登録商標)等の商用系統連系機器500が接続される場合がある。
【0023】
蓄電池システム用ブレーカ110には、商用電力系統から常時、電力が供給されており、例えば、パワーコンディショナ200や蓄電池ユニット240に異常が発生した場合等に蓄電池システム用ブレーカ110が作動して、電路を開放する。
【0024】
パワーコンディショナ200は、蓄電池システム用ブレーカ110を介して商用電力系統と接続されるとともに、例えば、太陽光により発電する太陽電池モジュール300等の再生可能エネルギーを利用した発電モジュールや外部への給電機能を有する電気自動車、燃料電池自動車等の電動車260と接続可能とされている。
【0025】
<パワーコンディショナの構成>
パワーコンディショナ200は、例えば、太陽光等の再生可能エネルギーにより発電された直流電力(発電電力)および/または蓄電池ユニット240からの直流電力(放電電力)をコンバータにより所定の電圧に変換した後、交流電力に変換する(インバータ機能)とともに、V2Hスタンド250からの直流電力(放電電力)をインバータにより交流電力に変換する。変換された交流電力は、蓄電池システム用ブレーカ110を介して重要負荷および一般負荷に繋がる商用電力系統に供給可能となっている。
【0026】
また、商用電力を直流電力に変換するとともに、太陽電池モジュール300からの発電電力および/または直流電力に変換された商用電力を充電電力としてコンバータを介して蓄電池ユニット240および/またはV2Hスタンド250を介して電動車260に搭載される比較的大容量の車載蓄電池に充電することが可能となっている。
【0027】
パワーコンディショナ200は、図2に示すように、コンバータ211、212と、インバータ221と、制御装置(マイコン回路)222と、零相変流器(ZCT)230と、を含んで構成されている。
なお、以下の構成は例示であり、同様の機能を果たすことができるものであれば、他の構成であってもよい。
【0028】
コンバータ211は、太陽電池モジュール300からの直流電力(発電電力)に基づいて所定の直流電圧に昇圧した直流電力に変換するものである。
このようにコンバータ211が本発明の「発電装置用コンバータ」に相当する。
【0029】
コンバータ212は、蓄電池ユニット240からの直流電力(放電電力)を昇圧した直流電力に変換する。
また、コンバータ212は、インバータ221により直流電力に変換された商用電力を所定の直流電圧に変換した直流電力(充電電力)や太陽電池等の他の直流電力を蓄電池ユニット240に供給する双方向コンバータである。
このようにコンバータ212が本発明の「定置型蓄電池用コンバータ」に相当する。
【0030】
インバータ221は、太陽電池モジュール300の発電電力を含む太陽光等の再生可能エネルギーにより発電された直流電力を交流電力に変換するとともに、蓄電池ユニット240あるいは、V2Hスタンド250からの直流電力(放電電力)を交流電力に変換する。
また、蓄電池ユニット240における蓄電池および/または電動車260の車載蓄電池を充電するため、商用電力を直流電力に変換する。
【0031】
制御装置222は、マイコン回路により構成され、インバータ221およびコンバータ211、212を制御する。
また、制御装置222は、後述する地絡検出部としての零相変流器(ZCT)230からの出力信号に基づいて、地絡の有無を判定する地絡判定部2222を有する。具体的には、地絡判定部2222は、補正部(後述するアクティブフィルタ回路231および補正処理部2221)から出力される信号に基づき、地絡の有無を判定する。
また、制御装置222は、後述するアクティブフィルタ回路231の出力値と、インバータ221の電流値と、零相変流器230に流れる地絡試験電流との関係から補正値を定め、この補正値を図示しない記憶部に記憶する。
【0032】
また、零相変流器230は、本発明の「地絡検出部」として機能し、蓄電池ユニット240、V2Hスタンド250および太陽電池モジュール300の地絡検出を行う素子である。
零相変流器230は、コンバータ211からの直流電力(太陽電池モジュール300の発電電力に基づく電力)、コンバータ212からの直流電力(蓄電池ユニット240の放電電力に基づく電力)および双方向コンバータ251からの直流電力(車載蓄電池の放電電力に基づく電力)が共通の電力線を経由してインバータ221に供給される当該共通電力線上に介装される。
具体的には、図2に示すように、2つのコンバータ211、212および双方向コンバータ251からそれぞれインバータ221側に延びる電力線の接続点Pと、インバータ221の直流側端子Qとを結ぶ電力線(共通電力線)L1上に零相変流器230が介装される。
【0033】
零相変流器230は、図8に示すように、鉄心230a内部に往路電流および復路電流が流れるDC-配線とDC+配線とからなる往復電流配線対が紙面垂直方向に貫通している。
図8では、2対の往復電流配線対となっているが、往復電流配線対の数はこれに限定されない。地絡検出のメカニズムは、基本的には次に示すとおりである。すなわち、鉄心230aには二次側コイル(図示せず)が巻回されており、正常時には往復電流の磁束は相殺されるが、地絡発生時には磁束のバランスが崩れることにより、二次側コイルに出力され地絡検出される。
【0034】
しかしながら、本実施形態のように、コンバータとインバータとの間を流れる電流には高周波信号が重畳しており、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、往復電流配線対の配置状態によっては、インバータ電流の増加に伴い正常に地絡検出を行うことができなくなる。
そこで、本発明は、正常に地絡検出ができるように零相変流器230からの出力信号を必要に応じ、補正部(アクティブフィルタ回路231および補正処理部2221)において補正している。
【0035】
アクティブフィルタ回路231は、地絡検出部としての零相変流器(ZCT)230からの出力信号を制御装置222において地絡判定が可能な信号とする。
なお、アクティブフィルタ回路231の詳細については、後述する。
【0036】
また、パワーコンディショナ200は、蓄電池ユニット240およびV2Hスタンド250と通信ケーブル(図示せず)で接続されており、当該通信ケーブルを介して、蓄電池ユニット240およびV2Hスタンド250の状態等を受信するとともに、蓄電池ユニット240およびV2Hスタンド250に対して充放電制御する。
【0037】
<V2Hスタンドについて>
V2Hスタンド250は、電動車260に搭載される車載蓄電池からの直流電力をパワーコンディショナ200を介して、負荷に供給する機能および商用電力、太陽電池モジュール300等の発電電力または蓄電池ユニット240からの電力により、電動車260の車載蓄電池を充電する機能を有する。
V2Hスタンド250は、双方向コンバータ251を内蔵し、当該双方向コンバータ251は、電動車260に搭載された車載蓄電池からの直流電力(放電電力)を昇圧した直流電力に変換する一方、インバータ221により直流電力に変換された商用電力を所定の直流電圧に変換した直流電力(充電電力)として車載蓄電池に供給する。このように双方向コンバータ251が本発明の「車載蓄電池用コンバータ」に相当する。
【0038】
また、V2Hスタンド250は、パワーコンディショナ200と通信ケーブルで接続されており、当該通信ケーブルを用いて、パワーコンディショナ200に、例えば、電動車260における車載蓄電池の状態等を出力している。
【0039】
<その他の構成について>
太陽電池モジュール300は、太陽電池セルが複数配列され、これをガラスや樹脂、フレームで保護したものであり、一般的には、太陽光パネルあるいは太陽電池パネルと呼ばれるものである。
【0040】
主幹ブレーカ410には、商用電力系統からの出力電力が常時、供給されており、例えば、漏電や過負荷、短絡等の要因で二次側の回路(負荷、電路等)に異常な過電流が流れたときには、主幹ブレーカ410が作動して、電路を開放する。
なお、主幹ブレーカ410は、トリップ機能を備えたブレーカである。
【0041】
分岐ブレーカ420は、一端が主幹ブレーカ410と接続されるとともに、他端が、それぞれの一般負荷と接続されている。
【0042】
切替スイッチ430は、系統出力側と自立出力側とに切替え可能となっている。
通常時(商用電力連系時)には、切替スイッチ430は自立出力側に接続され(図1に示す状態)、重要負荷には蓄電池システム用ブレーカ110およびパワーコンディショナ200を介して商用電力が供給される。
また、一般負荷には主幹ブレーカ410を介して商用電力が供給される。
一方、停電時には、商用電力系統とパワーコンディショナ200とが解列され蓄電池ユニット240、V2Hスタンド250(車載蓄電池)および太陽電池モジュール300の少なくとも1つに基づく電力がパワーコンディショナ200から重要負荷に供給可能となっている。
また、パワーコンディショナ200が故障した場合等、蓄電池システム用ブレーカ110がオフ状態のときには、切替スイッチ430を手動で系統出力側に切り替えることにより、重要負荷には主幹ブレーカ410を介して商用電力が供給される。
【0043】
重要負荷用分岐ブレーカ440は、一端が切替スイッチ430と接続されるとともに、他端が、それぞれの重要負荷と接続されている。ここで、重要負荷としては、照明、冷蔵庫、空調機器等を例示することができる。
【0044】
なお、商用系統連系機器500が商用電力系統に接続される場合には、当該商用系統連系機器500からの供給電力を重要負荷および一般負荷に給電することが可能となっている。
【0045】
<アクティブフィルタ回路231について>
図3に示すように、アクティブフィルタ回路231は、オペアンプOP1を有し、オペアンプOP1の負入力端子には、抵抗R1の一端が接続され、抵抗R1の他端には、零相変流器230の基準電圧(ZCT_REF)が印加される。オペアンプOP1の正入力端子には、抵抗R2の一端が接続され、抵抗R2の他端には、零相変流器230の出力電圧信号(ZCT_OUT)が入力される。また、オペアンプOP1の正入力端子には、抵抗R4の一端が接続され、抵抗R4の他端には、基準電圧(Vref)が印加されており、この抵抗R4と並列にコンデンサC2が設けられている。また、オペアンプOP1の負入力端子とオペアンプOP1の出力端子との間には、抵抗R3が接続され、この抵抗R3と並列にコンデンサC1が設けられている。また、オペアンプOP1の出力端子に直列に抵抗R5が設けられ、抵抗R5の他端は、制御装置222の入力端子(μCom_IN)に接続されている。なお、抵抗R1とR3との比、抵抗R2とR4との比は、零相変流器230の出力電圧が制御装置222の入力電圧レンジの中に収まるゲイン設定となるように決められている。
【0046】
アクティブフィルタ回路231は、零相変流器230の基準電圧に対する出力電圧(以下、単に「ZCT出力電圧」という)を増幅しつつ、所定の高周波をカットするフィルタ機能を果たし、コンデンサC1、C2の容量値は、抵抗R3、R4の抵抗値との関係で、所定の周波数以上をカットするよう定められている。
【0047】
図4(A)は、従来と同様に、零相変流器230の出力信号に対して増幅のみを行った場合(コンデンサC1、C2の容量値が所定の周波数以上をカットするように設定されておらず、アクティブフィルタ回路231の所定の高周波信号に対するフィルタリングを実質的に機能させない場合)のZCT出力電圧と制御装置222への入力信号(以下「マイコン入力電圧」という)との関係を示している。
零相変流器230に流れる電流が、高周波電流を含まない直流電流であれば、ZCT出力電圧波形は、一定値となる。しかし、図4(A)のように、高周波を含む信号波形になると、マイコン入力電圧も図4(A)に示すような波形となり、一定値とならない。
つまり、ZCT出力電圧波形が高周波を含む場合には、零相変流器230を流れる往復の電流値に差がないにもかかわらず、ZCT出力電圧波形は、図4(A)のようになってしまう。そのため、地絡検出を的確に行うことが出来なくなってしまう。
【0048】
図4(B)は、零相変流器230の出力信号に対して、アクティブフィルタ回路231を通してフィルタリング(コンデンサC1、C2の容量値が所定の周波数以上をカットするように設定され、所定の高周波信号が除去されるようにカットオフ周波数を変更)を行い、制御装置222へ入力した場合のZCT出力電圧とマイコン入力電圧との関係を示している。図4(B)から分かるように、ZCT出力電圧波形が高周波を含む場合でも、アクティブフィルタ回路231の所定の高周波信号に対するフィルタリング機能を発揮させることにより、マイコン入力電圧を一定にすることができる。
【0049】
図5は、地絡試験電流(0mA、95mA、-95mA)を流した場合の零相変流器230に流れるインバータ電流(横軸)と制御装置222の入力電流値(縦軸)との関係を示した図である。具体的には、零相変流器230の鉄心230a内に電力線L1の他に試験用電力線(電力線L1以外の他の往復電流配線対)を貫通させ、外部電源を用いて既知の電流(以下「地絡試験電流」という)値に設定した上で、地絡試験電流を試験用電力線に流し、そのときの制御装置222の入力電流値(アクティブフィルタ回路231の出力電流値)が、インバータ電流に対してどのように変化するか(理想的には、インバータ電流にかかわらず、制御装置222の入力電流値が地絡試験電流値を示すことが求められる)を調べたものである。
【0050】
この図から、インバータ電流が5A以下の領域では、零相変流器230の出力信号に高周波が重畳していても、制御装置222の入力電流値は正常(制御装置222の入力電流値と地絡試験電流値が同等)であることが分かる。そのため、同図の特性を示すパワーコンディショナの場合、補正が必要な範囲は、インバータ電流が5A以上の場合である。
また、地絡試験電流が0mAの場合、制御装置222の入力電流値は、インバータ電流が5Aから12Aの範囲では、正常値(0mA)から徐々に低下し、インバータ電流が12A以上では、正常値に対して、ずれが一定であることも分かる。このことから、インバータ電流が、5A以上の場合には、アクティブフィルタのフィルタリング機能に加えて、補正機能を備える必要がある。補正処理部2221は、インバータ電流の増加に伴う正常値からのずれを補正する補正機能を備える。なお、補正処理部2221における補正機能の詳細については、後述する。
【0051】
図6は、インバータ電流が5A以上の場合に、図5に示す特性に対して、地絡試験電流が0mAのときの制御装置222の入力電流値が一定となるように、補正処理部2221により、地絡試験電流が0mAのときの制御装置222の入力電流値に加えて、地絡試験電流が95mA、-95mAのときの制御装置222の入力電流値に対しても補正をかけた特性を示している。
この場合、補正処理部2221は、制御装置222が取得するインバータ221の電流値と図5の特性を記憶する記憶部との情報に基づいて、以下の演算を実行する。
まず、インバータ電流が5A以下の場合には、補正処理部2221による補正を行わない。また、インバータ電流が5Aよりも大きく12A以下である場合には、以下の数1による補正演算を実行する。また、インバータ電流が12Aよりも大きい場合には、補正値を一律+0.02Aとする。
【0052】
【数1】
【0053】
上記補正は、図5の特性から、インバータ電流が5A以下では、地絡試験電流値が0mAのときに、制御装置222の入力電流値も0mAであること、インバータ電流が5Aより大きく、12A以下では、制御装置222の入力電流値がほぼ線形性を有していること、インバータ電流が12Aより大きい場合には、一律に制御装置222の読み値が-0.02Aオフセットしていることによるものである。
なお、上記した地絡試験電流が0mAのときに、インバータ電流にかかわらず、制御装置222の入力電流値(アクティブフィルタ回路231の出力電流値)に対して正常値(0mA)となるように補正することを、以下「零補正」という。
【0054】
また、図6から、上記零補正後には、地絡試験電流値が95mAのときのデータと地絡試験電流値が-95mAのときのデータとが0mAを中心に上下対称となっている。そこで、この関係に基づいて地絡試験電流値が95mA、-95mAのときの制御装置222の入力電流値に対して、再度、補正処理部2221による補正を行う。つまり、図6のグラフでは、地絡試験電流値が95mAのときのデータと地絡試験電流が-95mAのときのデータのいずれもがインバータ電流が5A以下では、制御装置222の入力電流値とほぼ一致していることから補正処理部2221による補正は行わない。また、インバータ電流が5Aよりも大きい場合には、双方のグラフが線形性を有することから、地絡試験電流値が95mAの場合には、以下の数2により、地絡試験電流値が-95mAの場合には、以下の数3により補正を行う。
なお、上記した零補正後に地絡試験電流が特定の電流値のときに、インバータ電流にかかわらず、制御装置222の入力電流値(アクティブフィルタ回路231の出力電流値)に対して正常値(特定の電流値)となるように補正することを、以下「最終補正」という。
【0055】
【数2】
【0056】
【数3】
【0057】
なお、上記では、簡易的に、線形補正を行うことを例示したが、さらに誤差を小さくする観点から、S字状カーブの多項式により、補正をかけるようにしてもよい。また、本実施形態では、制御装置(マイコン回路)222が、アクティブフィルタ回路231の出力値と、インバータ221の電流値と、零相変流器(ZCT)230に流れる地絡試験電流との関係から補正値を定め、この補正値を図示しない記憶部に記憶するとして説明したが、制御装置222以外の演算・記憶装置が実行してもよい。例えば、パワーコンディショナ200の外部装置により実行してもよい。また、本実施形態では、制御装置222とアクティブフィルタ回路231とを分離して構成しているが、これらを一体的に構成してもよい。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態によれば、アクティブフィルタとインバータ電流を変数とする補正を行うことにより、たとえ、零相変流器(ZCT)230の出力信号に高周波が重畳している場合であっても、制御装置222が正確に、地絡電流値を検出することができる。
【0059】
以上、この発明の実施形態および実施例につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態あるいは実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、地絡試験電流値が0mAのとき、制御装置222の入力電流値がインバータ電流にかかわらず、ほぼ正常値(0mA)を示すような場合には零補正をスキップすることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、パワーコンディショナ200に太陽電池モジュール(発電装置)300、定置型の蓄電池ユニット240およびV2Hスタンド250が接続されているが、これに限定されず、これらの少なくとも1つ以上を備えたシステムに適用することができる。
つまり、本発明は、パワーコンディショナ内部のインバータとパワーコンディショナ外部のコンバータとを接続する電力線(インバータに直流電力を入力またはインバータから直流電流を出力する電力線)上に地絡検出部を介装するシステム、またはパワーコンディショナ内部にインバータのほかコンバータを備え、パワーコンディショナ内部のインバータとコンバータとを接続する電力線上に地絡検出部を介装するシステムに適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10;蓄電システム
110;蓄電池システム用ブレーカ
130;主幹ブレーカ
200;パワーコンディショナ
211;コンバータ(発電装置用コンバータ)
212;コンバータ(定置型蓄電池用コンバータ)
221;インバータ
222;制御装置
230;零相変流器(地絡検出部)
231;アクティブフィルタ回路
240;蓄電池ユニット
250;V2Hスタンド
251;双方向コンバータ(車載蓄電池用コンバータ)
260;電動車
300;太陽電池モジュール(発電装置)
410;主幹ブレーカ
420;分岐ブレーカ
500;商用系統連系機器
2221;補正処理部
2222;地絡判定部
図1
図2
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図4
図5
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図9