(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】内燃エンジン、及び窒素酸化物排出物を還元するための方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240115BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240115BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20240115BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20240115BHJP
F02B 25/04 20060101ALI20240115BHJP
F02B 25/20 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/24 N
F01N3/24 L
F01N3/24 A
F01N3/20 K
F01N3/20 U
F02D13/02 A
F02D13/02 H
F02B25/04
F02B25/20 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019093964
(22)【出願日】2019-05-17
【審査請求日】2022-03-08
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515191442
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラン プリュス
(72)【発明者】
【氏名】ディルク カダウ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ブルッチェ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シュタルク
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-305320(JP,A)
【文献】特開昭64-019108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/24
F01N 3/20
F02D 13/02
F02B 25/04
F02B 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に推進システムのための、好適には2ストローク・エンジン(1)である、内燃エンジンあって、前記内燃エンジンは、
- 各々が、燃料のための入口と、出口弁(6)を有する排気ガスのための出口(5)とを有する燃焼室(3)を備える、少なくとも2つのシリンダ(2)
を備え、
- 前記エンジンは、前記燃焼室(3)の下流にある少なくとも1つの分離デバイス(7)を備え、
- 第1の成分のエグゾースト・ライン(8)及び第2の成分のエグゾースト・ライン(9)が、前記少なくとも1つの分離デバイス(7)に接続され、
- 前記少なくとも1つの分離デバイス(7)は、各燃焼室(3)からの前記排気ガスを、前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)のための第1のガス・ストリームと、前記第2の成分のエグゾースト・ライン(9)のための第2のガス・ストリームとに分離するように構成され、
- 第1のSCR反応器(10)が、前記分離デバイス(7)の下流の前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)に配置され、
- 前記第2の成分のエグゾースト・ライン(9)及び前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)は、少なくとも前記第1のSCR反応器(10)までに、互いから分離され、
- 前記第1のSCR反応器(10)は、前記少なくとも2つのシリンダ(2)の全負荷吐出量の80%以下、好適には60%以下又は50%以下であり、且つ40%以上である最大処理能力を有することを特徴とする、内燃エンジン。
【請求項2】
前記分離デバイス(7)は、前記燃焼室(3)からの前記排気ガスを、好適には前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)のための第1のガス・ストリームと、好適には前記第2の成分のエグゾースト・ライン(9)のための第2のガス・ストリームとに分離するように構成され、前記第2のガス・ストリームの温度が、前記第1のガス・ストリームの温度より低いことを特徴とする、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項3】
前記分離デバイス(7)は、前記排気ガスを前記第1及び第2のガス・ストリームに分離するために、前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)を開閉するための、特にバタフライ弁である、制御可能弁を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内燃エンジン。
【請求項4】
前記エンジンは、前記シリンダの前記排気ガスを集めるための排気ガス・レシーバ(11)を備え、前記少なくとも1つの分離デバイス(7)は、前記排気ガス・レシーバ(11)の上流に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内燃エンジン。
【請求項5】
前記分離デバイス(7)は、前記少なくとも2つのシリンダ(2)の各々の前記出口弁によって形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内燃エンジン。
【請求項6】
少なくとも1つの分離デバイス(7)、好適には各分離デバイス(7)は、前記排気ガスを前記第1及び第2のガス・ストリームに分離するために、それぞれの前記燃焼室(3)のための、複数の弁、好適には2つ又は4つの弁を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内燃エンジン。
【請求項7】
前記エンジン(1)は、前記第2の成分のエグゾースト・ライン(9)に配置され、好適には前記排気ガス・レシーバ(11)の下流にある第2のSCR反応器(12)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の内燃エンジン。
【請求項8】
前記第2のSCR反応器(12)は、前記第1のSCR反応器(10)より高い最大処理能力、好適には前記少なくとも2つのシリンダ(2)の全負荷吐出量の少なくとも80%の最大処理能力を有することを特徴とする、請求項7に記載の内燃エンジン。
【請求項9】
前記第2の成分のエグゾースト・ラインは、SCRパイプ(13)及びバイパス・パイプ(14)を備え、前記第2のSCR反応器(12)は、前記SCRパイプに配置され、前記第2の成分のエグゾースト・ラインは、前記排気ガスを前記第2のSCR反応器(12)及び/又は前記バイパス・パイプ(14)に案内するための少なくとも1つ、好適には2つの弁(15)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の内燃エンジン。
【請求項10】
前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)は、前記第1及び/又は第2のSCR反応器(10,12)の上流に配置された加熱要素(16)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の内燃エンジン。
【請求項11】
尿素溶液のような還元剤を噴射するためのデバイスが、前記第1のSCR反応器及び/又は前記第2のSCR反応器の上流に配置される、請求項
7に記載の内燃エンジン。
【請求項12】
好適には請求項1に記載の燃焼エンジンである、内燃エンジンのNO
x排出物を還元するための方法であって、
- 燃料のための入口と、出口弁(6)を有する排気ガスのための出口(5)とを有する内燃チャンバ(3)を有する少なくとも2つのシリンダ(2)において燃料を燃やすステップと、
- 前記出口(5)を通して排気ガスを送出するステップと、
- 分離デバイス(7)を用いて全ての燃焼室(3)の前記排気ガスを、前記燃焼室(3)の下流において第1及び第2の排気ガス・ストリームに分離するステップであって、前記第1の排気ガス・ストリームは、第1の成分のエグゾースト・ライン(8)によって移送され、前記第2の排気ガス・ストリームは、第2の成分のエグゾースト・ライン(9)によって移送され、両方のエグゾースト・ライン(8,9)は、前記少なくとも1つの分離デバイス(7)に接続される、ステップと、
- 前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)における前記第1の排気ガス・ストリームを、前記少なくとも2つのシリンダの全負荷吐出量の80%以下、好適には60%以下又は50%以下の最大処理能力を有する第1のSCR反応器(10)に案内するステップと、
- 前記第2の成分のエグゾースト・ライン(9)における前記第2の排気ガス・ストリームを案内するステップであって、前記第1及び第2のエグゾースト・ラインは、少なくとも前記第1のSCR反応器(10)までに、分離状態を維持される、ステップと、
- 前記第1の排気ガス・ストリームにおけるNO
xの濃度が低下するように、前記第1のSCR反応器において前記第1の排気ガス・ストリームを反応させるステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記第1の排気ガス・ストリームが第1の温度を有し、前記第2の排気ガス・ストリームが第2の温度を有し、前記第2の温度は前記第1の温度より低い、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分離ステップにおいて、前記内燃チャンバから最初に送出される部分は、前記第1の成分のエグゾースト・ライン(8)に案内され、その後に送出される部分は、前記第2の成分のエグゾースト・ライン(9)に案内される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
- 前記第1のSCR反応器(10)の上流において、前記第1の排気ガス・ストリームを加熱するステップ
をさらに含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
- 前記第2の成分のエグゾースト・ライン(9)を通して第2のSCR反応器(12)に前記第2の排気ガス・ストリームを案内するステップと、
- 前記第2のSCR反応器(12)において前記第2の排気ガス・ストリームを反応させるステップと
をさらに含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項17】
還元剤が、前記第1のSCR反応器(10)及び/又は前記第2のSCR反応器(12)の上流で噴射される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルによる、内燃エンジンと、窒素酸化物排出物を還元するための方法とに関する。
【0002】
本発明は燃焼エンジン及びそれらの排出物の還元の技術分野に関連する。
【背景技術】
【0003】
大型船舶の場合、排出物に関する要求事項が増えており、これは特には窒素酸化物排出物に関するものである。したがって、これらの船舶の内燃エンジンによって噴出される排気ガス中の窒素酸化物の量を削減することが必要である。
【0004】
これらの燃焼エンジン内で選択的接触還元(SCR:selective catalytic reduction)のための反応器を使用することが知られている。燃焼エンジン内の既知の反応器の1つの問題は、低負荷において選択的接触還元が噴出される窒素酸化物を十分には還元しないことである。さらに、既知のSCR反応器は柔軟性が低く、高負荷においての高速(high)の窒素還元にのみ適合する(例えば、tier IIIの必要条件を満たすために)。
【0005】
特許文献1が、燃焼室を有する複数のシリンダと、排気ガス・システムとを備える2ストローク内燃エンジンを開示している。排気ガス・システムが、複数のシリンダからの排気ガスを受け取るための排気ガス・レシーバと、排気ガス・レシーバの下流に位置する少なくとも1つのSCRレシーバとを備える。非常に低温であることを理由として、硫酸がアンモニアによって中和され、ABSと呼ばれる粘着性の生成物を生成し、この粘着性の生成物がSCR反応器内の触媒物質上に堆積する。SCR反応器を再生させるために、特許文献1が1つのシリンダから排気ガスを高温で送ることを提案している。この高温の排気ガスは限定される時間で再生経路を通してSCR反応器まで供給される。高温ガスをそこから除去するところのシリンダが低い出力を有する。このエンジンにはエンジン・ガバナが低い出力を補償する必要があるという欠点がある。さらに、提案されるエンジンは低負荷のNOx還元に適合しない。
【0006】
特許文献2が排気ガス中の窒素酸化物を還元するための方法を開示している。装置が、再循環させられる第1のパートと、タービンまで誘導される第2のパートとへと排気ガスを分離することを含む。再循環させられるパートが燃焼室の中まで誘導され、窒素酸化物排出物が還元される。SCRを用いる窒素酸化物の還元は示されていない。
【0007】
特許文献3が、複数のエグゾースト・レッグ(exhaust leg)を通る排気ガス流れを独立して制御するのを可能にする排気ガス後処理システムを開示している。弁が、エグゾースト・レッグを通る流れの均衡状態又は不均衡状態を実現及び制御するために調整され得る。
【0008】
特許文献4が燃焼エンジンを開示しており、ここでは、排気ガスが、部分的に、排出物還元デバイスに平行に配置されるバイパスにより、化学量論的オペレーションにおいて触媒ユニットまで案内される。
【0009】
特許文献5が、第1のSCRを通り抜けたNH3を、第1のSCRに平行に配置される第2のSCR内で保存するためのシステムを開示している。
【0010】
特許文献6が、入ってくる気体ストリームを2つのサブストリームへと分けるためのデバイスに関連し、それぞれのストリームが導管システムの1つの枝路を通過する。
【0011】
特許文献7が、上流の排気中に配置されるエグゾースト・パイプから分岐する2つのパイプを備える排気ガス後処理システムを開示している。NOからNO2への酸化処理能力が互いに異なる個別に配置される複数の酸化触媒が存在する。
【0012】
特許文献8が、排気ガス浄化システム、又は内燃エンジンからの排気ガスを開示している。窒素変換における高効率を達成するために、入口ラインが下流側において計量デバイスにより2つの触媒ラインへと分けられ、これらの2つの触媒ラインが各々の事例での内燃エンジンからの排気ガス・ストリームを触媒要素まで導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】デンマーク国特許出願公開第201570704号明細書
【文献】独国特許出願公開第102008058612号明細書
【文献】国際公開第2012/0151273号
【文献】欧州特許出願公開第2055909号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0023907号明細書
【文献】国際公開第02/075124号
【文献】国際公開第2007/010664号
【文献】米国特許出願公開第2010/0199643号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2151569号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、低負荷において内燃エンジンの排気ガス中の窒素酸化物を還元することである。本発明の別の具体的な課題は、多様なエンジン負荷においての、窒素酸化物の柔軟性のある効率的な還元を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によると、内燃エンジンが提供される。内燃エンジンが好適には2ストローク・エンジンである。エンジンが、例えば船舶の推進システムなどの、推進システムに特に適する。内燃エンジンが少なくとも2つのシリンダを備える。2つのシリンダの各々が燃焼室を有し、また、燃料のための入口と、出口弁を備える排気ガスのための出口とを有する。エンジンが、燃焼室の下流にある少なくとも1つの分離デバイスを備える。第1及び第2のエグゾースト・ラインが少なくとも1つの分離デバイスに接続される。少なくとも1つの分離デバイスが、各燃焼室からの排気ガスを、第1の成分のエグゾースト・ラインのための第1のガス・ストリームと、第2の成分のエグゾースト・ラインのための第2のガス・ストリームとに分離するように構成される。第1の選択的接触還元(SCR)反応器が分離デバイスの下流で第1の成分のエグゾースト・ライン内に配置される。第2の成分のエグゾースト・ライン及び第1の成分のエグゾースト・ラインが、少なくとも第1のSCR反応器のところまで、互いから分離される。第1のSCR反応器が、少なくとも2つのシリンダの全負荷吐出量(full load outflow rate)の80%以下である最大処理能力を有する。好適には、第1のSCR反応器が、少なくとも2つのシリンダの全負荷吐出量の60%以下又は50%以下である最大処理能力を有する。
【0016】
全負荷は、内燃エンジンが最大出力又は最大トルクを提供するときの内燃エンジンの動作状態であってよい。エネルギー供給が低下して出力又はトルクが低下する場合、この動作状態が部分負荷と呼ばれる。全負荷はエンジンのCMCR(約定連続最大定格)(contract maximum continuous rating)ポイントであってよい。一実施例では、全負荷(例えば、CMCR)が、所望の船速、所望のパワー、及び任選選択で所望のプロペラ速度を使用して計算される。
【0017】
分離デバイスが、排気ガスを2つのストリームに分離するように構成される。排気ガスの1つのパートのみが第1のSCRに誘導されることから、より小型のSCR反応器が選択され得る。大型のSCR反応器はエンジンの組み立てにかなりの制限を加える。大型のSCR反応器は高価であり、エンジンに一体化することが困難であり、また、燃料効率の損失をもたらす。排気ガスの1つのパートのみがSCRを通るように案内されることから、スペース及びコストが節約され得る。
【0018】
2ストローク・エンジンでは、給気が圧縮され、燃料が噴射され、混合気がシリンダ内で燃焼させられる。シリンダ内の燃焼から生じるガス混合物を以下で「燃焼ガス」と呼ぶ。燃焼ガスが粒子状物質をさらに含む可能性がある。
【0019】
出口を通して燃焼室から燃焼ガスを排出するのに掃気が使用される。掃気及び燃焼ガスの組み合わせがシリンダの出口を通して排出され、総称的に「排気ガス」と呼ばれる。
【0020】
掃出することにより、シリンダからの高温の燃料ガスがより低温の掃気と共に出口を通して押し進められる。
【0021】
掃出するとき、掃気及び燃焼ガスが混合する。しかし、送出フェーズ中、燃焼ガスの濃度が初期状態では高く経時的に低下することを理由として、排気ガスが温度勾配を有することになる。
【0022】
言い換えると、出口を通るように案内されるガスが、比較的高温である排気ガスの第1のパート(つまり、大部分が燃焼ガス)と、比較的低温である排気ガスの第2のパート(つまり、大部分が掃気である)とに分離され得る。排気ガスの第1のパートが窒素酸化物の大部分を含む。
【0023】
エンジンがターボチャージャを備えることができる。ターボチャージャが第1の成分及び/又は第2の成分のエグゾースト・ライン内に配置され得る。ターボチャージャが第1及び/又は第2のSCRの下流に配置され得る。代替的実施例では、ターボチャージャが第2のSCRの上流に配置され得る。
【0024】
さらに、分離デバイスが、排気ガス・レシーバの前に配置される1つ又は2つの或はそれより多い弁によって形成され得る。好適には、分離デバイスが、1つの燃焼チャンバごとに、少なくとも1つの、特には2つの弁を備える。弁がバタフライ弁又はポペット弁であってよいか、或は任意適切な他の弁であってよい。また、分離デバイスは排気ガス・レシーバの後ろに配置され得るが、ターボチャージャの前に配置されてもターボチャージャの後ろに配置されもよい。分離デバイスが複数の弁によって形成され得る。
【0025】
一実施例では、分離デバイスが、排気ガスを第1及び第2の成分のエグゾースト・ストリームへと分離することを目的として第1の成分のエグゾースト・ラインを開閉するための制御可能弁を備える。制御可能弁が制御装置によって制御され得る。制御装置は機械的であってよく、つまりエンジンのカムシャフトであってよいか、又は電子的であってもよい。
【0026】
分離デバイスが、燃焼室からの排気ガスを、それぞれ第1及び第2の成分のエグゾースト・ラインのためのものである第1及び第2のガス・ストリームへと分離するように構成され得、ここではガス・ストリームが順番に又は同時に送出される。
【0027】
分離デバイスの多様な実施例が、第1及び第2の排気ガス・ストリームの単純で高い信頼性の分離を実現する。具体的には、燃焼ガスを比較的より多く含みしたがってより高温である最初に送出される排気ガスの1つのパートを、比較的掃気をより多く含みしたがってより低温であるその後で送出される1つのパートから分離するのを可能にする。一実施例では、燃焼室の送出フェーズ中に制御可能弁が最初に開けられ、次いで出口を通って掃気が流れるときに閉じられる。このような分離デバイスの一実施例が特許文献9に示されている。分離デバイスが、燃焼室からの排気ガスを、第1の比較的高温のガス・ストリームと、第2の比較的低温のガス・ストリームとに分離するように構成される。好適には、比較的高温のガス・ストリームが第1の成分のエグゾースト・ラインのためのものである。好適には、比較的低温のガス・ストリームが第2の成分のエグゾースト・ラインのためのものである。
【0028】
言い換えると、分離デバイスが、燃焼室からの排気ガスを、好適には第1の成分のエグゾースト・ラインのための、第1のガス・ストリームと、好適には第2の成分のエグゾースト・ラインのための第2のガス・ストリームとに分離するように構成され、ここでは、第2のガス・ストリームの温度が第1のガス・ストリームの温度より低い。
【0029】
分離デバイスが、第1の成分のエグゾースト・ライン及び第2の成分のエグゾースト・ラインのための弁の開閉のタイミングを調整することにより第1のガス・ストリームを分離することができる。一実施例では、分離デバイスが、第1の成分のエグゾースト・ラインを通して出口から最初に吐出される第1のパートと、第2の成分のエグゾースト・ラインを通してその後で吐出される第2のパートとを案内するように構成される。
【0030】
分離デバイスが、シリンダ内の排気ガスの温度、クランク角、時間、又はシリンダ内の圧力に応じて、第1の成分のエグゾースト・ライン及び第2の成分のエグゾースト・ラインの中に流れが入るのを可能にするように弁を設定するように構成され得る。
【0031】
通常、排気ガスの送出の第1のフェーズ中、シリンダ内の圧力と同様に、排気ガスの温度が最高温度まで急激に上昇し、その後緩やかに低下する。
【0032】
特定の時点ts又は特定のクランク角αsからスタートする、第2のフェーズ中、掃気がシリンダに入ると、シリンダ内の圧力が特定の圧力psを下回り、送出される排気ガスの温度が、特定の温度Ts未満である温度を有する。この第2のフェーズ中、排気ガスの温度が例えば350°未満まで低下する可能性があり、また具体的には250°未満まで低下する可能性がある。
【0033】
燃焼エンジンが、シリンダ内の排気ガスの温度に関しての結論を出すのを可能にするような値を検出するためのセンサを備えることができ、これは、温度センサ、圧力センサ、時間センサ(time sensor)、又はクランク角センサなどである。センサが、好適には、高速反応式の、高速式の、及び/又は高速測定のセンサであり、その結果、燃焼サイクル中に測定値及び測定値の変化が十分に迅速に検出される。迅速な測定は、所定の限界値との及び/又は分離デバイスの設定の適宜の変更との継続的な比較を可能にする。
【0034】
値が所定の特定の値と比較され得る。特定の値に達すると、分離デバイスが、新たな状態へと移行させられ得、例えば、排気ガスが第1の成分のエグゾースト・ラインの中まで案内されて第2の成分のエグゾースト・ラインの中へは案内されない第1の状態から、排気ガスが第2の成分のエグゾースト・ラインの中まで案内されて第1の成分のエグゾースト・ラインの中へは案内されない第2の状態へと、移行させられ得る。
【0035】
燃焼エンジンが、分離デバイスを操作するための、また具体的には、特には、センサの測定に基づいて並びに/或は温度、又は排気ガスの温度に関しての結論を出すのを可能にするような、圧力、時間、又はクランク角などの、値に基づいて、弁を設定するための、制御ユニットを備えることができる。
【0036】
例えば、特定の温度Ts、特定の圧力ps、特定の時点ts、又は特定のクランク角αsなどの特定の値に達すると、すぐに、制御ユニットが分離デバイスの設定を変更することができる。
【0037】
特定の値は所定のものであり、制御デバイスに提供され得るか又は制御デバイス内に保存され得る。
【0038】
特定の値は負荷によって決定されてよい。負荷依存の特定の値を有するマップが制御ユニットによって使用されるように残され得る。
【0039】
分離デバイスを設定するための、また具体的には値を設定するための、制御ユニットが、負荷に応じて分離デバイスを操作するように構成され得る。所定の負荷の範囲では、制御ユニットが上述したように分離デバイスを設定することができる。加えて又は別法として、第1の成分のエグゾースト・ラインのための第1のガス・ストリームのみを又は第2の成分のエグゾースト・ラインのための第2のガス・ストリームのみを、或は第1の成分のエグゾースト・ライン及び第2の成分のエグゾースト・ラインのための第1及び第2のガス・ストリームを同時に許容するような、所定の負荷範囲が存在してもよい。
【0040】
エンジンの低負荷では、重亜硫酸アンモニウム(ABS:ammonium bisulfate)が生成されてSCR反応器内の触媒物質上に堆積する可能性がある。これは、排気ガスが非常に低温であることによって起こる。SCR反応器内にABSが堆積することは、ガス・ストリームを2つのストリームに分離することによって回避される。一方のストリームが比較的高温であることを理由として、高温ガスのみがSCR反応器まで案内され、ABSの生成が防止される。好適には、尿素溶液などの還元剤を噴射するためのデバイスが第1のSCR反応器の上流に配置される。
【0041】
エンジンが排気ガス再循環(EGR:exhaust gas recirculation)を含むことできる。EGRが内燃チャンバの入口及び内燃チャンバの出口に接続され得る。
【0042】
一実施例では、エンジンが、シリンダの排気ガスを集めるための排気ガス・レシーバを備える。分離デバイスが排気ガス・レシーバの上流に配置され得る。それにより、排気ガス・ストリームの成分(例えば、燃焼ガス及び掃気)が排気ガス・レシーバ内で均一に混合される前に、排気ガスが分離され得るようになる。
【0043】
排気ガス・レシーバが第2の成分のエグゾースト・ライン内に配置され得る。
【0044】
分離デバイスが排気ガス・レシーバの下流に配置され得る。
【0045】
好適な一実施例では、少なくとも1つの、好適には各々の、分離デバイスが、複数の弁を備える。分離デバイスは2つ又は4つの弁を備えることができる。一実施例では、4つの弁のうちの2つの弁が、第1の成分のエグゾースト・ストリームを第2の成分のエグゾースト・ラインへと進路変更させるのに使用され得る。残りの2つの弁が、第2の成分の排気ガス・ストリームを第2の成分のエグゾースト・ラインへと進路変更させるのに使用される。
【0046】
別の好適な実施例では、3つ又は4つの或はそれより多い弁のうちの1つの弁が、排気ガスの第1のパートを第1の成分のエグゾースト・ストリームへと進路変更させるように適合される。2つ又は3つの或はそれ以上の残りの弁が排気ガスを第2の成分のエグゾースト・ラインへと進路変更させるように適合される。それにより、第1及び第2の成分のエグゾースト・ストリームが特に単純で効率的である形で発生させられ得る。
【0047】
一実施例では、分離デバイスが少なくとも2つの各々のシリンダの出口弁によって形成される。一実例では、各シリンダが複数の出口弁を備えることができる。各シリンダの第1の出口弁が第1の成分のエグゾースト・ラインを開けるように適合され、第2の出口弁が第2の成分のエグゾースト・ラインを開けるように適合される。別の実例では、各シリンダが各々の成分のエグゾースト・ラインのための2つの弁を備える。さらに、各出口が4つの出口弁を備えることができる。これらの好適な実施例では、分離デバイスが出口弁によって形成され、それによりコンパクトなデバイスを提供する。
【0048】
加えて又は別法として、分離デバイスが、1つ若しくは2つの、又は4つの、或はそれより多い弁を有することができる、これは例えば、出口又は出口弁の下流にあるバタフライ弁である。
【0049】
一実施例では、エンジンが、第2の成分のエグゾースト・ライン内に配置される第2のSCR反応器を備える。第2の成分のエグゾースト・ラインが排気ガス・レシーバの下流に配置され得る。
【0050】
好適には、尿素溶液などの還元剤を噴射するためのデバイスが第2のSCR反応器の上流に配置される。
【0051】
第2のSCRが第1のSCRより高い最大処理能力を有することができる。第2のSCRが、少なくとも2つのシリンダの全負荷吐出量の少なくとも80%又は100%の最大処理能力を有することができる。それにより、エンジンの高負荷での効率的な窒素酸化物の還元が実現される。加えて、2つのSCRを提供することにより、SCRの柔軟性のある効率的な使用が可能となる。例としては船舶が低速で進むときなどの、例えば低負荷では、第1の(小型の)SCRのみが使用されてよい。高負荷では、窒素酸化物の高速還元(high reduction)が必要とされる場合、第2のSCRが追加され得る。
【0052】
一実施例では、還元剤のための第1の入口が第1の成分のエグゾースト・ライン内に配置される。第1の入口が分離デバイスの下流に配置され得、及び/又は第1の入口が第1のSCR反応器の上流に配置され得る。還元剤が尿素又はアンモニアであってよい。
【0053】
別の実施例では、還元剤のための第2の入口が第2の成分のエグゾースト・ライン内に配置される。第2の入口が分離デバイスの下流に配置され得、及び/又は第2の入口が第2のSCR反応器の上流に配置され得る。還元剤が尿素又はアンモニアであってよい。
【0054】
第1及び第2の入口が同じ還元剤(すなわち、アンモニア又は尿素)を噴射することができる。好適な実施例では、第1及び第2の入口が異なる還元剤を噴射する。一実例では、第1の入口が尿素を噴射することができ、第2の入口がアンモニアを噴射することができる。尿素はアンモニアに対しての吸熱反応を必要とする。アンモニアは反応する必要がないことから、低い排気ガス温度での還元剤として特に適する。
【0055】
一実施例では、第2の成分のエグゾースト・ラインが、好適には平行である、SCRパイプ及びバイパス・パイプを備える。第2のSCRがSCRパイプ内に配置され得る。第2の成分のエグゾースト・ラインが、排気ガスをSCRパイプ及び/又はバイパス・パイプの中まで案内するための、少なくとも1つの、好適には2つの、弁を備える。さらに、エンジンが弁を作動させるように適合される制御装置を備えることができ、その結果、排気ガスが第2のSCRまで誘導されるか又はバイパス・パイプを通るように誘導されるか、或はその両方を通るように誘導される。
【0056】
バイパス・パイプがエンジンの高燃料効率の動作モードを可能にする。したがって、所望される動作モードに応じて、つまり燃料効率に応じて、又は高負荷/低負荷で還元される排出物に応じて、操作者が、どのパイプ/成分のエグゾースト・ラインを通すように排気ガスを誘導するのかを選択することができる。本発明の示される実施例に関連させて動作モードの実例を説明する。
【0057】
一実施例では、第1の成分のエグゾースト・ラインが、第1のSCR反応器の上流に配置される加熱要素を備える。加えて又は別法として、別の加熱要素が第2のSCRの上流に配置され得る。特定の動作モードでは、また具体的には低負荷では、排気ガスが非常に低温である可能性があり、それにより第1及び/又は第2のSCR反応器の触媒の上に重亜硫酸アンモニウム(ABS)が堆積することになる。これを防止することを目的として、及び選択されるシリンダからのガスの再循環を利用するのを回避することを目的として、それぞれのSCR反応器がそれ自体で、排気ガスを十分な温度にまで加熱するための加熱デバイスを備えることができる。
【0058】
十分な温度(最低の連続動作温度)が、排気ガスの絶対圧又は燃料中の硫黄濃度から計算され得る。
【0059】
例えば、100kPa(1バール)の絶対温度及び0.1%の硫黄濃度の場合、最低温度は280℃であってよい(端数切捨て)。好適には、100kPa(1バール)及び0.1%の硫黄の場合、最低温度は十分な温度Tsuより30°高く、つまり310°である。
【0060】
具体的には、150kPa(1.5バール)の場合、0.1%の硫黄の場合に、温度が290℃を超え、好適には320℃を超える。0.5%の硫黄の場合、150kPa(1.5バール)で、温度が310℃を超えてよく、好適には340℃を超えてよい。3.5%の硫黄の場合(やはり、150kPa(1.5バール))の場合、温度は340℃を超えてよく、好適には370℃を超えてよい。
【0061】
本発明の別の態様が、内燃エンジンの窒素酸化物(NOx)排出物を還元するための方法に関連する。好適には、エンジンが、本明細書において上で言及した燃焼エンジンである。この方法が以下のステップを含む:
- 燃料のための入口と、出口弁を備える排気ガスのための出口とを備える内燃チャンバを有する少なくとも2つのシリンダ内で燃料を燃やすステップと、
- 出口を通して排気ガスを送出するステップと、
- 分離デバイスを用いてすべての燃焼室の排気ガスを燃焼室の下流において第1及び第2の排気ガス・ストリームへと分離するステップであって、ここでは、第1の排気ガス・ストリームが第1の成分のエグゾースト・ラインによって移送され、第2の排気ガス・ストリームが第2の成分のエグゾースト・ラインによって移送され、またここでは、両方のエグゾースト・ラインが少なくとも1つの分離デバイスに接続されるステップと、
- 第1の成分のエグゾースト・ライン内の第1の排気ガス・ストリームを、少なくとも2つのシリンダの全負荷吐出量の80%以下、好適には60%以下又は50%以下の最大処理能力を有する第1のSCR反応器まで案内するステップと、
- 第2の成分のエグゾースト・ライン内の第2の排気ガス・ストリームを案内するステップであって、ここでは、第1及び第2のエグゾースト・ラインが少なくとも第1のSCR反応器のところまで、分離状態を維持する、ステップと、
- 第1のSCR反応器内の第1の排気ガス・ストリームを反応させるステップであって、その結果、第1の排気ガス・ストリーム中のNOxの濃度が低下する、ステップ。
【0062】
第1の排気ガス・ストリームが燃焼サイクルの第1のフェーズ中に送出され得、第2の排気ガス・ストリームが燃焼サイクルの第1のフェーズ中に送出され得る。好適には、第1の排気ガス・ストリームが第1の温度を有し、第2の排気ガス・ストリームが第2の温度を有し、ここでは、第2の温度が第1の温度より低い。
【0063】
この方法の好適な実施例では、この方法が、第1のSCR反応器の上流で第1の排気ガス・ストリームを加熱するステップをさらに含む。
【0064】
好適な実施例では、内燃チャンバから最初に送出されるパートが第1の成分のエグゾースト・ラインの中まで案内され、その後で送出されるパートが第2の成分のエグゾースト・ラインの中まで案内される。通常、最初に送出されるパートがその後で送出されるパート(第2のパート)より高い温度を有する。それにより、排気ガスを比較的高温のエグゾースト・ストリーム及び比較的低温のエグゾースト・ストリームへと分離する単純な方法が提供される。
【0065】
内燃エンジンが、掃気レシーバを通して及び掃気ポート又は入口ポートとも呼ばれるフラッシング・ホールを通して外気をシリンダの中まで案内するための外気供給装置を備えることができる。外気が、燃焼サイクルの最後に燃焼ガスをシリンダの外へ流し出すのに使用され得る。燃焼サイクル中、主として燃焼ガスが送出される第1のフェーズと、燃焼ガスと新鮮な掃気との混合気が送出される第2のフェーズとが存在する。第1のフェーズ中に送出される排気ガスが第1のガス・ストリームとして第1の成分のエグゾースト・ラインの中で案内され得る。第2のフェーズ中に送出される排気ガスが第2のガス・ストリームとして第2の成分のエグゾースト・ラインの中で案内され得る。
【0066】
主として燃焼ガスを含む第1のガス・ストリームは通常、一定の間隔でシリンダから送出される、燃焼ガスと、新鮮な掃気とを含む排気ガス混合気の温度より高い温度を有する。さらに、第1のフェーズ中に送出される排気ガスが高いNOx含有量を有する。第2のガス・ストリームは、燃焼用空気と外気との混合気を含むことを理由として、通常、第1のガス・ストリームより低いNOx含有量を有する。
【0067】
第2のガス・ストリーム中の燃焼ガス及び/又はNOx含有量のパーセンテージは、SCR反応器を通して第2のガス・ストリームを案内するのを必要とすることがないくらいに、低くてよい。
【0068】
好適な実施例では、第1の排気ガス・ストリームが比較的高温であり、第2の排気ガス・ストリームが比較的低温である。本明細書で言及されるように、比較的高温は残りの排気ガス・ストリームと比較されるものである。例えば、比較的高温である第1の排気ガス・ストリームは、第1の排気ガス・ストリームが第2の排気ガス・ストリームより高温であることを意味する。
【0069】
好適な実施例では、この方法が、第1のSCR反応器及び/又は第2の排気ガス・ストリーム内の第2のSCR反応器の上流で第1及び/又は第2の排気ガス・ストリームの中に還元物質を噴射するステップをさらに含む。
【0070】
好適な実施例では、この方法が、第2の成分のエグゾースト・ラインを通して第2のSCR反応器まで第2の排気ガス成分ストリームを案内するステップと、結果として第2の排気ガス成分ストリーム中の窒素酸化物の濃度を低下させるように第2のSCR反応器内の第2の排気ガス成分ストリームを反応させるステップとをさらに含む。
【0071】
好適な実施例では、この方法が、第2の成分ガス・ストリームを部分的に又は全体として反応させることなく部分的に又は全体としてバイパス・パイプを通るように第2の排気ガス・ストリームを案内するステップをさらに含む。好適な実施例では、第2の排気ガス・ストリーム及び/又は第1の排気ガス・ストリームがターボチャージャまで誘導される。
【0072】
一実施例では、第1及び/又は第2のストリームがターボチャージャまで平行の形で案内される。
【0073】
単に例として、添付図面に関連させて、本発明の非限定の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明による第1の実施例を示す概略図である。
【
図2】本発明による第2の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図3が内燃エンジンを示す。内燃エンジン1が、燃焼室3を備えるシリンダ2を備える。燃焼室3の内部に、ピストン・ロッド25を備えるピストン26が設けられる。燃料が燃料入口(図示せず)を通して燃焼室3の中まで案内されて燃焼室3の中で燃やされる。燃焼ガスが、単一の出口弁6を備える出口5を通るように案内される。燃焼ガスが掃気を用いて掃出される。出口弁6を過ぎた後、燃焼ガス及び掃気(総称的に、排気ガス)が出口パイプ29を通るように案内される。
【0076】
出口パイプ29が2つのチャンネルを備える。第1のチャンネルが、バタフライ弁7’を備えるEGRクリーナ24を備えるEGRパイプを通るように排気ガスの1つのパートを誘導するのに使用される。バタフライ弁7’が閉じられるとき、第1のチャンネル内の排気ガスがEGRを通るように案内される。バタフライ弁7’が開位置にあるとき、第1のチャンネルがその排気ガスをエグゾースト・レシーバ11まで案内する。第2のチャンネルが、排気ガスの残りを排気ガス・レシーバ11まで案内するのに使用される。
【0077】
図1が、2ストローク・クロスヘッド内燃エンジン1の第1の実施例の概略図を示す。エンジン1が
図3のエンジンのいくつかの部分を含む。
【0078】
加えて、分離デバイス7が出口パイプ29内に配置される。分離デバイス7が、出口パイプ29の2つのチャンネルを開閉する2つの弁を備える。
【0079】
第1の成分のエグゾースト・ライン8が出口パイプ29に接続される。接続された第1の成分のエグゾースト・ライン8が、排気ガスの1つのパートを、出口5を通して第1のSCR反応器10まで案内する。第1のSCR反応器10が選択的接触還元を利用して排気ガス中の窒素酸化物を還元する。このようなSCR反応器内で使用される触媒の例として、バナジウム及びタングステンなどのベース金属の酸化物を用いて安定化される二酸化チタンがある。触媒が、二酸化チタンと、バナジウムと、タングステンとの混合物から押出成形される。
【0080】
別法として、二酸化チタンと、バナジウムと、タングステンとから作られるウォッシュ・コートを有する菫青石が使用されてもよい。さらに別法として、金属ベースが上で言及したウォッシュ・コートで被覆されてもよい。
【0081】
別の実施例では、銅ゼオライト又は鉄ゼオライトなどの金属ゼオライトが触媒として使用されてもよい。
【0082】
窒素酸化物の還元はアンモニアとの窒素酸化物の反応に基づく。第1のSCR反応器10の上流で尿素噴射装置21を用いて尿素を噴射することによりアンモニアが生成される。シリンダ2の排気ガスの1つのパートのみが第1の成分のエグゾースト・ライン8を通るように案内される。ライン8を通るように案内される排気ガスが、選択的還元反応のためには低すぎる温度を有する可能性がある。低い温度(150kPa(1.5バール)、0.1%の硫黄の場合は、290℃未満など)では、硫酸がアンモニアによって中和され、粘着性の生成物である重亜硫酸アンモニウム(ABS)を生成する。ABSがSCR反応器の触媒物質の上に堆積する可能性がある。これを回避するために、ライン8が加熱要素16をさらに備えることができ、加熱要素16が第1のSCR反応器の上流に配置され、尿素噴射装置21の下流に配置され得る。
【0083】
2ストローク・エンジン1では、排気フェーズ中、燃焼ガスを燃焼室3から送出するのに掃気が使用される。したがって、排気ガスが掃気さらには燃焼ガスを含むことになる。燃焼ガスは燃焼を理由として掃気より高い温度を有する。さらに、燃焼ガスは窒素酸化物の濃度が掃気より高い。
【0084】
例えば、排気ガス・マニホルドなどの、排気ガス・レシーバ11などにおいて、燃焼ガス及び掃気が混合されると、燃焼ガスの温度が低下する。低負荷では、燃料噴射が少量であることと、燃焼ガスの量が少ないことと、SCR反応器が適切に動作することができないこととを理由として、この温度が特に低くなる。
【0085】
したがって、低負荷においてシリンダ2の出口5のところで燃焼ガスが掃気から分離される。第1の分離方法は、第1の成分のエグゾースト・ライン8のための分離デバイス7の第1の弁を閉じて、さらに第2の成分のエグゾースト・ライン9のための分離デバイス7の第2の弁を閉じることである。この構成では、排気ガスの全体が第1の成分のエグゾースト・ライン8を通るように案内される。高負荷では、分離デバイス7の例えばバタフライ弁である両方の弁が開いており、排気ガスの大部分が第2の成分のエグゾースト・ライン9を通るように案内される。
【0086】
図1に示されるエンジンは、
図3に示されるエンジンとは異なり、燃焼室3のための2つの出口弁6を備える。2つの出口弁が示されていても、好適には1つ又は4つの弁が使用される。出口弁6が排気ガスを案内するのに使用される。最初に、燃焼ガスが吐出されるとき、第1の成分のエグゾースト・ライン8のための出口弁が開いており、対して第2の成分のエグゾースト・ライン9のための出口弁が閉じられる。この構成では、排気ガスが第1の成分のエグゾースト・ライン8を通るように案内される。これが、分離デバイス7の両方のバタフライ弁を閉じることによって補助され得る。掃気が出口5のところに到達するとすぐに第1の成分のエグゾースト・ライン8のための出口弁6が閉じられ、第2の成分のエグゾースト・ライン9の出口弁が開けられる。
【0087】
それにより、分離されたパートが第1の成分のエグゾースト・ライン8を通るように案内され、それにより第1のSCR反応器10内の窒素酸化物の高い信頼性の還元が可能となる。加えて、排気ガスの1つのパートのみがライン8を通るように案内されることを理由として、小型のSCRが使用され得るようになる。全負荷吐出量の40%の最大処理能力を有するSCR反応器10で十分であり、それによりスペースが節約される。SCR反応器10が、反応器内の温度を調整するための反応器加熱器27をさらに備えることができる。
【0088】
第2の成分のエグゾースト・ライン9が排気ガス・レシーバ11に繋がっている。排気ガス・レシーバ11から、排気ガスがSCRパイプ13又はバイパス・パイプ14を通過させられる。SCRパイプ13及びバイパス・パイプ14の各々が弁15を備える。弁15が独立して開閉され得、その結果、バイパス・パイプ14及び/又はSCRパイプ13が使用される。SCRパイプ13が第2のSCR反応器12を備える。第2のSCR反応器12が、第1のSCR反応器10より高いスループットに対して適合される。第2のSCR反応器12が、シリンダ2の全負荷吐出量の少なくとも60%の最大処理能力を有する。
【0089】
尿素噴射装置36が第2のSCR反応器12の上流に配置される。
【0090】
一実施例では、第2のSCR反応器12及び第1のSCR反応器10が、組み合わせで、少なくとも2つのシリンダの全負荷吐出量の少なくとも100%の総処理能力を有することができる。バイパス・パイプがSCRを備えなくてよい。
【0091】
加えて、SCRパイプ13がSCR反応器12の下流に第2の弁20を備える。弁20がSCRパイプ13の中への逆流を防止する。
【0092】
第1のライン8及び第2のライン9(つまり、バイパス・パイプ14及びSCRパイプ13)が、ターボチャージャ17に、及びその後のファンネル30(
図2を参照)に繋がっている。ターボチャージャ17が外気を引き入れ、ここでは排気ガス中にエネルギーが保存される。ターボチャージャ17によって引き入れられる外気が冷却システム19及び外気供給装置18を通して入口4まで案内される。入口4を過ぎた後、外気が掃気レシーバ23を通して及びフラッシング・ホール31を通してシリンダ2の中まで案内される。
【0093】
SCR反応器10、12内での窒素酸化物の還元に加えて、粒子及び硫酸などの排出物がEGRクリーナ24を用いて還元される。EGRパイプ22がシリンダ2の出口5に接続される。EGRパイプ22が排気ガスをEGRクリーナ24まで導いて、EGRクリーナ24を過ぎた後で燃焼室3に入れる。EGRクリーナ24が、気体洗浄装置、冷却装置、及び水飛沫捕集器(water mist catcher)を備えることができる。
【0094】
図1に示されるエンジン1が4つの異なる動作モードを可能にする:
【0095】
第1の動作モードが具体的には低負荷に適しており、tier IIIの必要条件を満たすのを可能にする。低負荷では、弁15及び分離デバイス7が、第1の成分のエグゾースト・ライン8及びバイパス・パイプ14を開けた状態とするように、設定される。SCRパイプ13が閉じられる。燃焼ガスを含む排気ガスの第1のパートが第1のSCR反応器10を通るように案内され、ここで窒素酸化物が還元される。主として掃気を含む排気ガスの残りがバイパス・パイプ14を通るように案内される。別法として、主として燃焼ガスを含む排気ガスの第1のパートがSCRパイプ13及び第2のSCR反応器12を通るように案内されることも可能であり、ここでは対して主として掃気を含む排気ガスの残りが第1の成分のエグゾースト・ライン8を通るように案内される。この事例では、第1のSCR反応器10が働かず、SCRバイパス・パイプ14の弁15が閉じられる。具体的には、別個のバイパス・ライン(図示せず)によりSCR反応器10を迂回してもよい。
【0096】
第2の動作モードでは、排気ガスが第2のエグゾースト・ライン9のみを通るように案内され、排気ガスが第1のエグゾースト・ライン8を通るようには案内されない。第2の動作モードの変形形態では、排気ガスが、SCRパイプ13及び第2のSCR反応器12のみを通るように案内される。第2の動作モードが従来技術で既知のエンジン内のSCR反応器に対応する。
【0097】
第3の動作モードが、高速の窒素酸化物の還元が所望されるような(tier III)高負荷に特に適している。第3の動作モードでは、第1の成分のエグゾースト・ライン8及び第2の成分のエグゾースト・ライン9の両方が開いている。第3の動作モードでは、バイパス・パイプ14が閉じられ、SCRパイプ13が開いている。第1及び第2のSCR反応器10、12が平行に延びる。高負荷では、掃気が十分に高温となり、その結果、第2のSCR反応器12内で高い信頼性の窒素酸化物の還元が可能となる。
【0098】
第1の小型のSCR反応器10がこの動作モードでは特に効率的である。その理由は、追加の加熱なしで排気ガスの燃焼ガスが窒素酸化物の反応のために十分に高温であることで、加熱装置16がオフに切り換えられ得るからである。さらに、第1の小型のSCR反応器10は、窒素酸化物が第1のSCR反応器10に誘導されるより高い濃度のパートを有することを理由として、高速の窒素酸化物の還元を可能にする。
【0099】
第2のエグゾースト・ライン9を通るように案内される排気ガスがさらに処理されることを理由として、全体のNOx還元をより高速にすることが可能となる。
【0100】
1つのSCRのみが採用される、第1のモード及び第2のモードの両方で、相対的なNOxの還元が、好適には、排気ガスの還元されていないパートと混合される後でTier IIIを満たすために、必要なTier IIIレベルを上回る。
【0101】
第4の動作モードでは、排気ガスがバイパス・パイプ14のみを通るように案内され、第1の成分のエグゾースト・ライン8さらにはSCRパイプ13が閉じられる。この動作モードでは、SCR10及び12がオフに切り換えられる。第4の動作モードは特に燃料効率が高い。
【0102】
図2が内燃エンジン1の第2の実施例を示す。エンジン1の第2の実施例は第1の実施例に類似する。したがって、参照符号が同様の特徴を意味する。しかし、第1の実施例とは異なり、第2のSCR反応器12を備えるSCRパイプ13、及びバイパス・パイプ14が、ターボチャージャ17の下流に配置される。
【0103】
エンジン1がシリンダ2を備える。シリンダ2の出口で、シリンダ2からの排気ガスが第1及び第2のストリームへと分離される。第1のストリームが第1の成分のエグゾースト・ライン8を通るように案内され、第2のストリームが第2の成分のエグゾースト・ライン9を通るように案内される。第2の成分のエグゾースト・ライン9が排気ガス・レシーバ11を備える。第1の成分のエグゾースト・ライン8が
図1を参照して示されるように構成され、第1のSCR反応器10を備え、排気ガス・レシーバ11に平行である。第1のSCR反応器10を過ぎた後で且つ第2のSCR反応器12及びバイパス・パイプ14の前で、第1の成分のエグゾースト・ライン8が第2のライン9に統合され、すべてのシリンダ2の排気ガスの全体がターボチャージャ17を通るように案内される。
【0104】
ターボチャージャ17を過ぎた後、第2の成分のエグゾースト・ライン9が、SCRパイプ13又はバイパス・パイプ14を通して第2のSCR反応器12の中まで排気ガスを誘導するのを可能にする。その後、排気ガスがファンネル30を通して放出され得る。変形形態では、第2のSCR反応器12及びバイパス・パイプ14がターボチャージャ17の上流に配置され得る。
【0105】
図1に関して上で概説した動作モードは
図2に示される実施例でも使用され得る。