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  • 特許-副生水素生成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】副生水素生成装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/10 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
C01B3/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019101074
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020193134
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520320022
【氏名又は名称】津田 訓範
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 訓範
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/155848(WO,A1)
【文献】特開2016-064935(JP,A)
【文献】特開2006-232593(JP,A)
【文献】国際公開第2006/100915(WO,A1)
【文献】特開2009-186157(JP,A)
【文献】特開2006-206965(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0054243(KR,A)
【文献】特開2012-083056(JP,A)
【文献】特開2000-329358(JP,A)
【文献】国際公開第2019/039991(WO,A1)
【文献】Danielle QUIJANO et al.,“Combustion of Mechanically Alloyed Aluminum-Magnesium Powders in Steam”,Propellants, Explosives, Pyrotechnics,2015年07月29日,Vol. 40, No. 5,p.749-754,DOI: 10.1002/prep.201500079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物を生成する際に水素を発生する金属Mと水蒸気との反応を利用して水素ガスを製造する副生水素生成装置であって、
前記反応は、金属Mの酸化物Mαβ(α、βはそれぞれ1~4のいずれかの整数であり、αとβは同じあっても異なるものであってもよい。)と水素ガスとを少なくとも生成するものであり、
前記反応は、酸水素ガスに着火することにより開始されるものであり、
金属Mを充填する反応容器と、
反応容器に水蒸気を供給する供給手段と
を備える、副生水素生成装置。
【請求項2】
前記反応容器は複数の反応炉を含む構造である、請求項1に記載の副生水素生成装置。
【請求項3】
複数の反応炉は垂直方向に積載された構造である、請求項2に記載の副生水素生成装置。
【請求項4】
複数の反応炉を含む反応容器を2以上備える、請求項2又は3に記載の副生水素生成装置。
【請求項5】
さらに、反応容器を冷却するための冷却手段を備え、
該冷却手段が水冷式の冷却装置である、請求項1~4のいずれかに記載の副生水素生成装置。
【請求項6】
反応容器内で発生した水素ガスを反応容器外に取り出すガス排出手段と、
ガス排出手段から排出される水素ガスを固定化する固定化手段と
を備える、請求項1~5のいずれかに記載の副生水素生成装置。
【請求項7】
酸化物を生成する際に水素を発生する金属Mと水蒸気との反応を利用して水素ガスを製造する方法であって、
前記反応は、金属Mの酸化物Mαβ(α、βはそれぞれ1~4のいずれかの整数であり、αとβは同じあっても異なるものであってもよい。)と水素ガスとを少なくとも生成するものであり、
前記反応は、酸水素ガスに着火することにより開始されるものであり、
金属Mを充填した反応容器に水蒸気を供給する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを製造するための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、多くの化学プロセスにおいて重要な材料であり、また、燃料電池の燃料をはじめとしたクリーンエネルギー源としての利用が期待されている。
【0003】
水素を製造する方法としては、水の電気分解方法、メタン水蒸気改質法、光触媒による水の分解方法が知られている。中でも、メタン水蒸気改質法は、広く実用化されている。メタン水蒸気改質法は、メタンガスと、約700~800℃に加熱された水蒸気とを反応させて水素を得る方法である。しかし、この方法は二酸化炭素の放出を伴うだけでなく、化石燃料を使用する必要があり、化石燃料の代替燃料とはならない。
【0004】
このような従来のメタン水蒸気改質法の問題を解決するものとして、水素吸蔵金属とその水素化物を併用して、水蒸気と反応させることで、水素を製造する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1では、水素吸蔵金属の反応を促進させるために、水素吸蔵金属の水素化物の反応熱を利用しているが、水素吸蔵金属の水素化物は、水素吸蔵金属と比べてコストがかかるだけでなく、反応性が高いために安全性や取り扱い性に欠けるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-206932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水素吸蔵金属の水素化物を用いなくても、安全性や取り扱い性に優れた原材料のみを用いて、効率よく、低コストで水素ガスを製造することができる、水素ガスの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸化物を生成する際に水素を発生する金属Mを水蒸気と接触させて、金属Mの酸化物を生成する反応を利用する製造装置により、上記課題を解決する。すなわち、本発明は、以下[1]~[7]のいずれかにより上記課題を解決するものである。
【0008】
[1]酸化物を生成する際に水素を発生する金属Mと水蒸気との反応を利用して水素ガスを製造する副生水素生成装置であって、前記反応は、金属Mの酸化物Mαβ(α、βはそれぞれ1~4のいずれかの整数であり、αとβは同じあっても異なるものであってもよい。)と水素ガスとを少なくとも生成するものであり、前記副生水素生成装置は、金属Mを充填する反応容器と、反応開始時に酸水素ガスに着火する加熱手段と、反応容器内で発生した水素ガスを反応容器外に取り出すガス排出手段とを備える、副生水素生成装置。;
[2]前記反応容器は複数の反応炉を含む構造である、上記[1]に記載の副生水素生成装置。;
[3]複数の反応炉は垂直方向に積載された構造である、上記[2]に記載の副生水素生成装置。;
[4]複数の反応炉を含む反応容器を2以上備える、上記[2]又は[3]に記載の副生水素生成装置。;
[5]さらに、反応容器を冷却するための冷却手段を備え、該冷却手段が水冷式の冷却装置である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の副生水素生成装置。;
[6]さらに、ガス排出手段から排出される水素ガスを固定化する固定化手段を備える、上記[1]~[5]のいずれかに記載の副生水素生成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全性や取り扱い性に優れた材料のみを用いて、効率よく水素ガスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、副生水素生成装置の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0012】
(副生水素生成装置)
本発明の副生水素生成装置は、酸化物を生成する際に水素を発生する金属Mと水蒸気との反応を利用して水素ガスを製造する装置である。図1に示すように、本実施の形態の副生水素生成装置1は、金属Mを充填する反応容器2と、反応開始時に酸水素ガスに着火する加熱手段3と、反応容器内で発生した水素ガスを反応容器外に取り出すガス排出手段4とを備える。
【0013】
(反応容器)
反応容器2は、複数の反応炉(図1中、反応炉5、6、7及び8)を含む構造であることが好ましい。複数の反応炉を含む構造とすることによって、同量の原料を一つの反応炉において反応させる場合に比べて、金属Mと水蒸気との接触効率を向上させ、結果として生産効率を向上させることができる。さらに、反応容器2が複数の反応炉に分割された形態では、同じ体積で反応炉が分割されていない反応容器2を用いる場合に比べて、反応炉の冷却効率を高めることができ、酸化反応後の反応容器2の冷却時間の短縮が可能である。特に、反応容器2を複数の反応炉に分割し、且つ、水冷式等の冷却機を用いることで、炉内壁面の温度を低く保つことができる点で好ましい。
【0014】
上記複数の反応炉は、垂直方向に積載された構造であることが好ましい。このような構造とすることによって、床面積が狭い立地条件であっても本発明の副生水素生成装置の設置が可能となる。また、各反応炉が軽量化されるので、原料を充填した反応炉の生産現場での搬送を容易に行うことができる。図1においては、4つの反応炉5、6、7及び8が垂直方向に積載されているが、2つ以上の反応炉が積載されていればよく、5以上の反応炉を積載するように構成してもよい。
【0015】
各反応炉の形状は、特に限定されるものではないが、複数の反応炉を垂直方向に効率よく積載できる観点から、上面と底面とが平行関係にある、直方体や立方体、円筒状の反応容器を採用することが好ましい。この他、例えば、一の反応炉の底面に設けた凸構造と他の反応炉の上面に設けた凹構造とを嵌合することにより積載可能な構造としてもよい。
【0016】
例えば、一つの反応炉を外寸が7.5m角の正方形であって、高さが3mのサイズとした場合、一つの反応炉には原料となる金属Mを20kg充填することができるとすると、4つの反応炉を含む反応容器2では、合計で80kgの原料を反応させることが可能となる。
【0017】
個々の反応炉の体積は0.2m以下とすることが好ましく、0.1m以下とすることがより好ましい。個々の反応炉の体積の下限値は、特に限定されるものではないが、反応効率の観点からは0.08m以上としておくことが好ましい。反応炉の体積を上述の範囲とする場合は、水素ガスを発生させるための酸化反応が発熱を伴う反応であることから、反応開始時に加熱手段により反応容器2を一時的に加熱するだけで、反応が進行するにつれて反応系全体が加熱された状態となり、反応が連続的に進行する。
【0018】
金属Mを充填する反応容器2や、反応炉5、反応炉6、反応炉7及び反応炉8の材質は、酸化物を生成する際に水素を発生する金属Mと水蒸気との反応の原料及び反応生成物に耐性のある内壁を有することが望ましく、ステンレス系の金属製容器とすることができる。
【0019】
本発明の副生水素生成装置1において、反応容器2は、複数の反応炉を含む反応容器2を2以上備える構成とすることが好ましい。例えば、図1に示す反応炉を4つ含む反応容器2が4基存在する場合は、各反応炉での原料の充填量が20kgであるとすると、同時に320kgの反応を実施できることとなる。
【0020】
(金属Mと水蒸気との反応)
本発明の副生水素生成装置1において実施される、上記酸化物を生成する際に水素を発生する金属Mと水蒸気との反応は、下記式(1)に示すものであり、本発明は、金属Mと水蒸気との反応により金属Mの酸化物が生成する際に水素ガスが発生するという現象を利用するものである。
【化1】
【0021】
式(1)中、α、βはそれぞれ1~4のいずれかの整数であり、αとβは同じあっても異なるものであってもよい。上記式(1)による酸化反応は発熱を伴う反応であり、反応が進行するにつれて反応系全体が加熱された状態となり、反応が連続的に進行する。
【0022】
金属Mは、水蒸気との酸化反応により水素ガスを生成する金属である。このような金属としては、従来公知のマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)及び鉄(Fe)からなる群より選ばれる少なくとも一つが挙げられる。材料の調達やコスト面等からはマグネシウムを単独で用いることが好ましい。
【0023】
例えば、金属Mがマグネシウムである場合は下記式(2)に示す反応、金属Mがアルミニウムである場合は下記式(3)に示す反応が進行する。また、金属Mが鉄である場合は、上記反応は、下記式(4)により表される。
【化2】
【0024】
また金属Mとして、上述のマグネシウム、アルミニウム、及び、鉄の他に、カリウム、ルビジウム、カルシウム、マンガン、ニッケル、亜鉛のイオンなど、水素生成に用いられることが知られている材料を用いることもできる。さらに、これらの材料を、マグネシウム、アルミニウム、鉄などと併用してもよい。ただし、反応後の酸化物を分離することなく、他の用途に利用できるという観点からは、上記金属Mのいずれかを単独で使用することが好ましい。
【0025】
金属Mの形態は、水蒸気との反応性が確保できれば、いずれの形態でも用いることができる。なかでも、粒状の金属Mをペレット状に成形して用いた場合、金属Mの表面積を大きくし、水蒸気との反応初期の立ち上がりを良好にすることができる点から好ましい。粒状物の金属Mの粒径は、3mm以上であることが好ましく、30mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。金属Mの粒径が3mmより小さくなると、金属Mの製造コストが高くなり、30mmを超えると、水蒸気との反応性が低下する傾向がある。
【0026】
金属ペレットの成形方法は、特に限定されず、従来公知の方法をいずれも採用することができる。すなわち、金属粒子とバインダとを混錬し、押出成形などによりペレット化し、ついで、加熱または溶媒処理によりバインダを除去し、必要に応じて焼成処理に供するなどの方法を採用することができる。
【0027】
(反応条件)
本発明では、金属Mと水蒸気を接触させて起こる反応を利用して水素ガスを製造する。金属Mに接触する水蒸気の温度が、用いる金属Mの融点以上となると上記式(1)の反応が開始する。また一旦反応が開始すると、上述のように、上記式(1)による酸化反応は発熱を伴う反応であり、反応が進行するにつれて反応系全体が加熱された状態となるので、その熱量により反応が連続的に進行する。
【0028】
(加熱手段)
上記のように金属Mに接触する水蒸気の温度を用いる金属Mの融点以上とするために、本発明の副生水素生成装置1は、反応開始時に酸水素ガス(HHOガス)に着火する加熱手段3を備える。酸水素ガスを用いて着火をすることで、着火のために炉内温度の上昇を待たずに済む。過熱水蒸気やヒーターなどで着火を行う場合、着火させる金属Mの周辺も加熱し蓄熱させる必要があるが、酸水素ガスを用いて着火する場合は、酸水素ガスが接触した金属の温度を急激に上昇させる特性があり、この上昇にともなう熱量が過熱水蒸気やヒーターによるものよりも遥かに高いため、着火点周辺の金属Mの蓄熱が不要となり短時間で着火を行うことができる。
【0029】
酸素と水素の混合ガスである酸水素ガスは、公知の水の電気分解により生成させる方法により得られる。酸水素ガスにおける酸素と水素の混合割合は、酸素/水素のモル比が1/2であることが通常である。加熱手段3では、反応開始時にこの酸水素ガスをスパークなどにより着火し燃焼させる。酸水素ガスは下記式(5)の発熱を伴う反応により燃焼し、水蒸気が発生する。また、この発熱により酸水素ガスの供給がある間は反応が継続し、水蒸気が発生し続ける。
【0030】
加熱手段3は、ガスバーナーによる加熱のように、上記酸水素ガスの燃焼などによる炎部分を、反応容器2の反応炉5、反応炉6、反応炉7及び反応炉8の側面に設けた加熱口である配管9を通じて反応炉5、反応炉6、反応炉7及び反応炉8内に到達させることにより金属Mを加熱する。各反応炉を同時に加熱してもよいし、各反応炉を順次加熱するようにしてもよい。
【0031】
上記加熱手段3により金属Mが加熱されて、一旦式(1)による反応が開始すると、反応が進行するにつれて反応系全体が加熱された状態となるので、その熱量により反応が連続的に進行し、水素ガスが生成する。従来の方法では、金属Mを着火させるために過熱水蒸気を必要とし、金属Mを酸化反応させるために、各反応炉に対し4kW/hのヒーター用電力消費が必要である。一方、酸水素ガスを着火に用いる場合は、酸水素ガスを生成するための電力は1kW未満に抑えられるため、消費電力を大幅に削減することができる。
【0032】
(冷却手段)
本発明の副生水素生成装置1は、水蒸気を発生させる酸水素ガスの燃焼反応と、該燃焼反応により生成した水蒸気と金属Mとの反応とが、いずれも発熱を伴う反応であるため、反応容器2が発熱反応により過度に昇温する場合がある。そのため、本発明においては、この過度な昇温を回避するために、副生水素生成装置1が反応容器2を冷却するための冷却手段を備える態様とすることが好ましい。
【0033】
冷却手段は、反応容器2を冷却するものであれば特に限定されず、水冷方式により行うことができる。水冷方式としては、反応容器2の外周に設けるジャケット(図示しない)に冷媒となる水を流通させる高速水流式を採用することができる。炉内温度は、酸化反応により1000℃を超えることがあるが、水冷方式、特に高速水流式による水冷を採用することで、反応炉の耐久性を確保し、冷却時間を短縮することができる。上記ジャケットは、反応炉5、反応炉6、反応炉7及び反応炉8のそれぞれの外周に設けるようにしてもよい。
【0034】
(ガス排出手段)
発生した水素ガスは、ガス排出手段4により反応容器2外に取り出される。ガス排出手段4は、反応容器2に備えられた配管などを適用することができる。反応容器2のガス排出手段4から排出された水素ガスと未反応の水蒸気とは、例えば、一次冷却塔(不図示)に送られ、100℃未満に冷却することで、水蒸気は凝縮して温水となり水素ガスと分離される。
【0035】
分離された水素ガスは二次冷却塔に送られ、さらに冷却機能を備えた気液分離装置等の従来公知の水素ガス回収装置により回収することができる。また、分離された水素ガスを、固定化手段10により固定化することができる。固定化手段10は、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物であって、水素が固定化された化合物が水と反応して水素ガスを発生する化合物をカートリッジなどの容器に配した態様とすることが望ましい。
【0036】
水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物、としては、例えば、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ素カリウムなどが挙げられる。これらの水と反応して水素ガスを発生する化合物は、水素ガスと反応して水素を固定化できる化合物をもとに、水素を固定化することで得ることができる。例えば、メタホウ酸ナトリウムと水素ガスを接触させることで、水素化ホウ素ナトリウムを得ることができる。さらに、水素化ホウ素ナトリウムを水に接触させることで、水素ガスを発生させ、メタホウ酸ナトリウムを得ることができる。したがって、これらの化合物を配したカートリッジは、容器内の化合物を交換しなくても、水素を固定化させたのち、水素ガスを発生させる水素源として使用し、さらにまた、水素を固定化させるといったように、繰り返し使用することが可能である。
【0037】
(担体ガス)
本発明においては、必要に応じて、反応容器2内の水蒸気の流出を促すなどの目的で、担体ガスを使用してもよい。担体ガスは、たとえば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、または空気が挙げられる。これらの担体ガスは、酸水素ガスの燃焼反応による水蒸気の発生を妨げない範囲で適用することが望ましい。
【0038】
(中央制御装置)
本発明の副生水素生成装置1は、中央制御装置11により加熱手段3を制御する。中央制御装置11は、加熱手段3にて検知された水蒸気の圧力又は発生量を通信等により受信すると、発生した水蒸気の圧力又は発生量に関する情報に基づいて、加熱手段3により反応炉5、反応炉6、反応炉7及び反応炉8に供給される水蒸気量を制御するための制御情報を生成する機能を有する。また、生成された制御情報は、通信により加熱手段3に送信される。加熱手段3は、送信された制御情報を受信し、該制御情報をもとに、反応炉5、反応炉6、反応炉7及び反応炉8に供給される水蒸気量を調整する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の副生水素生成装置は、連続的に水素ガスを生成することができるので、種々の工業および商用の水素源として有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 副生水素生成装置
2 反応容器
3 加熱手段
4 ガス排出手段
5,6,7,8 反応炉
9 配管
10 固定化手段
11 中央制御装置
図1