(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240115BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240115BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019105919
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 健
(72)【発明者】
【氏名】矢野 令
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-188580(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052084(WO,A1)
【文献】特開2011-090649(JP,A)
【文献】特開2014-203359(JP,A)
【文献】特開2010-092292(JP,A)
【文献】特開2015-075868(JP,A)
【文献】特開平08-214377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025785(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041831(US,A1)
【文献】国際公開第2019/093386(WO,A1)
【文献】特開2003-330524(JP,A)
【文献】特開2000-218473(JP,A)
【文献】特開2001-344008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも1つの機能を実現可能な複数の装置と、
1つの処理を実現するために必要な2以上の機能
の実現順番を表す第1情報と、
前記2以上の機能が前記複数の装置の中のどの
装置に割り当てられているかを表す第2情報とを記憶し、前記第1情報と前記第2情報に基づき前記
複数の装置を順次作動させ前記1つの処理を実現する制御部と、
表示部と入力部とを備え、前記制御部に接続される端末と、
前記複数の装置の動作状態を検知するセンサと、
を具備し、
前記センサは、前記複数の装置の中の1つの装置が正常に動作しないことを検知すると、検知結果を前記制御部に送信し、
前記制御部は、前記検知結果を受信すると、前記端末にアラートを通知し、
前記端末は、
前記実現順番に従って配置された前記2以上の機能をそれぞれ表す2以上のアイコンと、前記実現順番を表す第1経路画像とを前記表示部で表示し、前記2以上のアイコンの中の第1アイコンであって、前記1つの装置に割り当てられている1つの機能を表す第1アイコンに機能が正常に実現されないことを表す印を重畳して表示し、
前記入力部の操作に応じて前記第1アイコンの表示位置を変更し、前記1つの機能の代替機能を表す第2アイコンと、前記代替機能の実現順番を表す第2経路画像とを前記表示部でさらに表示する、制御システム。
【請求項2】
前記複数の装置は、第1の機能を実現する第1の装置と、第2の機能を実現する第2の装置と、を具備し、
前記第1の装置は前記第1の機能を実現すると、前記第2の装置あるいは前記制御部に引継ぎデータを送信する送信部を具備し、
前記引継ぎデータは、
前記第1情報を識別する識別情報と、
前記第1の機能を示す機能情報と、
前記第1の機能による処理結果を示す結果情報を具備する請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記引継ぎデータは、前記第1の装置が実現した前記第1の機能の
納期情報と、前記第1の装置が実現した前記第1の機能の
進捗状況情報とをさらに具備する請求項
2記載の制御システム。
【請求項4】
前記送信部は、管理シェルを用いて前記引継ぎデータを送信する請求項
2又は請求項
3記載の制御システム。
【請求項5】
前記複数の装置は、同一の企業の複数の工場又は複数の企業の複数の工場に分散されている請求項1乃至請求項
4のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項6】
1つの処理を実現するために必要な2以上の機能
の実現順番を表す第1情報と、
前記2以上の機能が複数の装置の中のどの装置
に割り当てられているかを表す第2情報とに基づき前記複数の装置を順次作動させて前記1つの処理を実現する制御方法
であって、
前記複数の装置の動作状態を検知し、
前記複数の装置の中の1つの装置が正常に動作しないことを検知すると、前記実現順番に従って配置された前記2以上の機能をそれぞれ表す2以上のアイコンと、前記実現順番を表す第1経路画像とを表示し、
前記2以上のアイコンの中の第1アイコンであって、前記1つの装置に割り当てられている1つの機能を表す第1アイコンに機能が正常に実現されないことを表す印を重畳して表示し、
入力部の操作に応じて前記第1アイコンの表示位置を変更し、前記1つの機能の代替機能を表す第2アイコンと、前記代替機能の実現順番を表す第2経路画像とをさらに表示する、制御方法。
【請求項7】
前記複数の装置は、第1の機能を実現する第1の装置と、第2の機能を実現する第2の装置と、を具備し、
前記第1の装置は前記第1の機能を実現すると、前記第2の装置に引継ぎデータを送信し、
前記引継ぎデータは、
前記第1情報を識別する識別情報と、
前記第1の機能を示す機能情報と、
前記第1の機能による処理結果を示す結果情報を具備する請求項
6記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は複数の装置の連携を制御する制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークの進展に伴い、1つの処理を構成する複数の機能をそれぞれ実現する複数の装置が連携して1つの処理を行う制御システムが開発されている。複数の機能を実現する順番が決まると、複数の機能に割り当てられた複数の装置は機能の実現順番に応じた所定の順番で連携して作動する必要がある。制御システムは複数の装置の連携を制御する。
【0003】
いずれかの装置が故障した場合、複数の装置の連携を変更しなければならない。従来の制御システムは、機能と装置との対応は、予め1対1に固定されていることが多い。そのため、装置の故障時等に、連携を容易に変更することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複数の装置の連携を制御する制御システムにおいて、複数の装置の連携を容易に変更することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による制御システムは、複数の装置と、制御部と、端末と、センサを具備する。前記複数の装置のそれぞれは、少なくとも1つの機能を実現可能である。前記制御部は、1つの処理を実現するために必要な2以上の機能の実現順番を表す第1情報と、前記2以上の機能が前記複数の装置の中のどの装置に割り当てられているかを表す第2情報とを記憶し、前記第1情報と前記第2情報に基づき前記複数の装置を順次作動させ前記1つの処理を実現する。前記端末は、表示部と入力部とを備え、前記制御部に接続される。前記センサは、前記複数の装置の動作状態を検知し、前記複数の装置の中の1つの装置が正常に動作しないことを検知すると、検知結果を前記制御部に送信する。前記制御部は、前記検知結果を受信すると、前記端末にアラートを通知する。前記端末は、前記実現順番に従って配置された前記2以上の機能をそれぞれ表す2以上のアイコンと、前記実現順番を表す第1経路画像とを前記表示部で表示し、前記2以上のアイコンの中の第1アイコンであって、前記1つの装置に割り当てられている1つの機能を表す第1アイコンに機能が正常に実現されないことを表す印を重畳して表示し、前記入力部の操作に応じて前記第1アイコンの表示位置を変更し、前記1つの機能の代替機能を表す第2アイコンと、前記代替機能の実現順番を表す第2経路画像とを前記表示部でさらに表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による制御システムによる工程管理の一例の概要を示す図である。
【
図2】工程管理の一例で利用される機能フロー情報の一例を示す図である。
【
図3】工程管理の一例で利用されるリンク情報の一例を示す図である。
【
図5】工程管理を変更する際に利用される機能フロー情報の一例を示す図である。
【
図6】工程管理を変更する際に利用される機能フロー情報の一例を示す図である。
【
図7】工程管理を変更する際に利用される機能フロー情報の一例を示す図である。
【
図8】工程管理を変更する際に利用されるリンク情報の一例を示す図である。
【
図10】工程管理の変更の他の例で利用される機能フロー情報の一例を示す図である。
【
図11】工程管理の変更の他の例で利用される機能フロー情報の一例を示す図である。
【
図12】第1実施形態による工程管理の階層構造の一例を示す図である。
【
図13】製造システムの工程管理の機能フローの一例を示す図である。
【
図14】製造システムの機能フローの一例を示す図である。
【
図15】製造工程を管理する工程管理システムの一例を示すブロック図である。
【
図16】
図15に示す工程管理システムにおける機能フローの一例を示す図である。
【
図17】
図16に示した機能フローの変更の概念を示す図である。
【
図18】迂回路作成に利用される機能マップの一例を示す図である。
【
図19】機能マップを用いて迂回路を作成する操作の一例を示す図である。
【
図20】迂回路作成に利用される稼働率管理情報の一例を示す図である。
【
図21】稼働率管理情報に基づくドメインマップの表示例を示す図である。
【
図22】迂回路作成を含む工程管理の他の例を示す図である。
【
図23】迂回路作成を含む工程管理のさらに他の例を示す図である。
【
図24】迂回路作成に利用される機能マップの他の例を示す図である。
【
図25】迂回路作成に利用されるリンク情報の一例を示す図である。
【
図26】迂回路作成時の部品の移動の一例を示す図である。
【
図27】装置間で伝送される引継ぎデータの第1の例のIPヘッダの一例を示す図である。
【
図28】引継ぎデータの第1の例のペイロード内の機能フローヘッダの一例を示す図である。
【
図29】引継ぎデータの第1の例のペイロード内の機能フローヘッダの他の例を示す図である。
【
図30】引継ぎデータの第2の例のペイロード内の機能フローヘッダの一例を示す図である。
【
図31】引継ぎデータの第2の例のペイロード内の機能フローボディの一例を示す図である。
【
図33】管理シェル同士がネットワークを介して連携している一例を示す図である。
【
図34】引継ぎデータの分割の概念を示す図である。
【
図35】引継ぎデータの分割伝送の一例を示す図である。
【
図36】第1の装置による加工済み部品を第2の装置に搬送するための台車の一例を示す図である。
【
図38】機能フロー作成の一例を示すフローチャートである。
【
図39】機能フロー作成の一例を示すフローチャートである。
【
図40】リンク情報更新の一例を示すフローチャートである。
【
図41】ドメインマップ更新の一例を示すフローチャートである。
【
図42】第1の装置による加工が終了したときのデータ伝送の一例を示すフローチャートである。
【
図43】リンク情報更新の他の例を示すフローチャートである。
【
図44】迂回路作成の一例を示すフローチャートである。
【
図45】迂回路作成の一例を示すフローチャートである。
【
図46】第2実施形態による制御システムの一例であるビル管理システムの一例の概要を示す図である。
【
図47】ビル管理システムのビル管理の一例を示すフローチャートである。
【
図48】第3実施形態による製造技能基盤システムの概念を説明するための図である。
【
図49】第3実施形態による制御システムの一例である資産管理システムの一例を示すブロック図である。
【
図50】資産管理システムの一例の概要を示す図である。
【
図51】資産管理システムの迂回評価部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接的な接続のみならず、他の要素を介して間接的に接続されることも意味する。
【0009】
[第1実施形態]
[工程管理の概要]
実施形態による制御システムは、種々のシステムに適用可能であるが、一例として工程管理に応用された制御システムの例を説明する。工程管理とは、例えば材料や部品から製品を製造する製造システムの製造工程を管理する。製品を製造するためには、種々の機能が必要とされる。機能を実現するものを装置と称する。工程管理は、複数の機能の実現順番と、どの装置がどの機能を実現するかの組み合わせを管理する。
【0010】
製造工程の単純な例として、材料を所定の形状に切削して部品とし、部品の所定の箇所に所定のサイズの穴をあけ、この穴に他の部品を差し込んで製品とする例を考える。機能の例は材料を切削すること、部品に穴をあけること、複数の部品を組立てることである。切削機能を実現する装置の例はフライス盤であり、穴あけ機能を実現する装置の例はドリルであり、組立て機能を実現する装置の例はロボットアームである。作業員は加工装置を操作して所定の加工作業を行い、製品を製造する。作業員が加工装置の操作盤を操作するのではなく、コンピュータ制御の加工装置が利用されることもある。例えば、フライス盤、ドリル、ロボットアーム等の加工装置は、NC(Numerical Control)加工装置に置き換えられることがある。NC加工装置は制御プログラムによって作動し、制御プログラムが変更されると、異なる機能を実現することができる。例えば部品の右端から10cm、部品の上端から10cmの距離の点に深さ10cmの穴をあけるNCドリルは「部品の右端から10cm、部品の上端から10cmの距離の点に直径5mm、深さ10cmの穴をあける」機能を実現する。このNCドリルの制御プログラムを変更すると、NCドリルは「部品の右端から5cm、部品の上端から20cmの距離の点に直径1cm、深さ5cmの穴をあける」機能を実現することができる。そのため、装置の例は、加工装置のようなハードウェアに限らず、このような制御プログラム等のソフトウェアも含む。さらに、ハードウェは専用のハードウェアに限らず、パーソナルコンピュータ等の汎用処理装置も含む。この場合も、汎用処理装置にインストールされたプログラムが装置の例となる。汎用処理装置からなるシステムは、使用環境や使用目的の変化に応じて、汎用処理装置のプログラムを変更することにより、実現する機能を変更することができ、システムの多様性、自律性、迅速適応性を向上することができる。
【0011】
1つの製品を作るのに必要な複数の機能をそれぞれ実現する複数の装置は1つの企業の同一工場内に集中して配置されても良いし、1つの企業の異なる工場内に分散して配置されても良い。更に、複数の装置は複数の企業に跨って複数の場所に分散して配置されていても良い。複数の装置はネットワークを介して互いに接続される。ネットワークにはサーバも接続される。複数の装置は、サーバを介さずに直接互いに接続されても良いし、サーバを介して互いに接続されても良い。
【0012】
制御システムは、各装置に実現する機能を通知し、各装置は機能を実現する。1つの機能を実現する1つの装置が当該機能を実現すると、その機能の実現により得られた部品が次に実現すべき機能を実現する次の装置に搬送されるとともに、機能の実現結果を示す情報が次の装置にネットワークを介して送信される。
【0013】
実施形態による制御システムが応用される工程管理の一例の概要を
図1に示す。工程管理は、製品毎の機能の流れを機能フローとして管理する。機能フローは、複数の機能をいつどのような順番で実現するか、すなわち複数の機能間の連携を示す。機能フローを表す情報を機能フロー情報(第1情報)と称する。
図1は製品A、B、Cについての機能フローを示す。工程管理は複数の機能の各々を実現する複数の装置を管理し、どの装置がどの機能を実現するかの組み合わせをリンク情報(第2情報)として管理する。リンク情報は、どの機能とどの装置が対応(リンクとも称する)するか、すなわちどの機能がどの装置に割り当てられているかを示す。
図1はドリルa、b、cについてのリンクを示す。機能フロー情報とリンク情報とに基づいて、各機能を実現する装置が認識され、機能フロー情報に従って装置が作動され、製品が製造され得る。
【0014】
機能フロー情報は、製造管理者が製造開始前に作成し、システムに入力しても良い。あるいは、製品の図面等をパーソナルコンピュータ等に取り込み、図面から機能フロー情報を自動的に作成するプログラムにより機能フロー情報が自動的に作成され、システムに入力されても良い。機能フロー情報を自動的に作成する場合、製造管理者の承認を必要としても良い。
【0015】
図1に示すように、製品Aについての機能フローは、切削、穴あけ、組立て、…の順番に機能が実現されることを示す。製品Bについての機能フローは、切削、組立て、穴あけ、切削、…の順番に機能が実現されることを示す。製品Cについての機能フローは、穴あけ、組立て、切削、…の順番に機能が実現されることを示す。また、機能フローは製造する製品の総数も示す。
【0016】
ドリルaについてのリンク情報は、ドリルaが製品Bの穴あけ機能を実現することを示す。ドリルbについてのリンク情報は、ドリルbが製品Cの穴あけ機能と製品Aの穴あけ機能を実現することを示す。ドリルcについてのリンク情報は、ドリルcが実現する機能は無いことを示す。ドリル以外の加工装置、例えばフライス盤やロボットアームについても、ドリルのリンク情報と同様なリンク情報が管理されている。
【0017】
各ドリルa、b、cが自装置に割り当てられた機能を実現する前に、実現する機能に対応した制御プログラムが各ドリルa、b、cにインストールされる。各ドリルa、b、cが機能を実現した後、実現した機能に対応した制御プログラムが各ドリルa、b、cからアンインストールされる。
【0018】
図2は、工程管理で利用される機能フロー情報の一例を示す。機能フロー情報は製造する製品毎に設定される。製品A(例えば1000個)についての機能フロー情報は、切削開始日時、切削終了日時、穴あけ開始日時、穴あけ終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時からなる。これらの日時は将来の日時であり、製造予定に従って設定される。同様に、製品B(例えば2000個)についての機能フロー情報は、切削開始日時、切削終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時、穴あけ開始日時、穴あけ終了日時、切削開始日時、切削終了日時からなり、製品C(例えば10000個)についての機能フロー情報は、穴あけ開始日時、穴あけ終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時、切削開始日時、切削終了日時からなる。このように、切削、穴あけ、組立ての順番は、製品によって異なっても良い。
図2は複数個数の製品全体の製造の流れを示す機能フロー情報であるが、製品1個1個に対応して
図2に示す機能フロー情報と同様なサブ機能フロー情報を設定しても良い。すなわち、1つの製品についてのサブ機能フロー情報は製品の数だけ存在する。なお、機能フロー情報やリンク情報表す説明及び各図面中において“○”は日付や時間に対応する任意の自然数である。
【0019】
図3は、工程管理で利用されるリンク情報の一例を示す。リンク情報はシステムが備える各装置に割り当てられている機能の一覧を示す。機能と装置との割り当てをリンクとも称する。〇印は機能が装置に割り当てられ、機能と装置とのリンクが設定されていることを示し、×印は機能が装置に割り当てられておらず、機能と装置とのリンクが設定されていない、すなわち解除されていることを示す。
【0020】
ドリルに関するリンク情報は、ドリルaには製品Bの穴あけ機能が割り当てられており、ドリルbには製品Aの穴あけ機能と製品Cの穴あけ機能が割り当てられており、ドリルcには何も機能が割り当てられていないことを示す。フライス盤に関するリンク情報は、フライス盤aには何の機能が割り当てられておらず、フライス盤bには製品Aの切削機能と製品Bの切削機能が割り当てられており、フライス盤cには製品Cの切削機能が割り当てられていることを示す。ロボットアームに関するリンク情報は、ロボットアームaとcには何も機能が割り当てられておらず、ロボットアームbには製品Aの組立て機能と、製品Bの組立て機能と、製品Cの組立て機能が割り当てられていることを示す。
【0021】
機能フローは製品毎の機能の集合からなるので、リンク情報の機能欄は製品の製造に関する機能ではなく、どの機能フローのどの機能かで表しても良い。
【0022】
[工程管理の変更]
上述した製造工程において、ある装置、例えばドリルが刃の破損等により故障したとする。この場合、予め決められた機能間の連携が停止し、機能フローの実現が停止してしまう。製造システムは、同一企業あるいは異なる企業の複数の工場内等の多数の場所に配置された多数の装置を備えることがある。従来の工程管理では、製造システムを構成する装置の稼働状況が管理されていないので、故障した装置が実現する穴あけ機能を引き継ぐ代替装置を探すことができない。そのため、ドリルの刃を交換する際、当該ドリルが実現していた穴あけ機能の実現は停止していた。もし、同一工場内に使用していない代替装置があり、故障した装置から代替装置に穴あけ機能を引き継がせたとしても、代替装置の使用予定がある場合、やはり穴あけ機能の実現は停止してしまう。機能の数(工程数)が増えると、故障時の対応が複雑になり、長時間を要しても最適な代替品を探すことができないこともある。
【0023】
また、従来のNC加工装置では、加工装置を動作させるための制御プログラムを加工装置にインストロールするためには、制御プログラムを格納するUSBメモリ等の可搬型の記憶媒体を加工装置に電気的に接続する必要がある。そのため、最適な代替装置を探し出したとしても、例えば「部品の右端から10cm、部品の上端から10cmの距離の点に深さ10cmの穴をあける」という制御プログラムをその代替装置にインストールするのに時間が掛かり、やはり穴あけ機能の実現が停止する期間が生じることがある。
【0024】
実施形態の工程管理では、このような機能フロー情報とリンク情報が管理されているので、システムが備える複数の装置の稼働状況と、複数の装置が実現する機能を認識することができ、装置の故障時に、機能間の連携を容易に変更することができる。実施形態の工程管理では、ネットワークを経由して、サーバが装置に制御プログラムをインストール、装置から制御プログラムをアンインストールする。
【0025】
実施形態による工程管理システムにおいて、装置の故障に対応する工程管理の変更例を
図4に示す。
図1に示す機能フローと同じ機能フローが実現され、ドリルbが製品Cについての穴あけ機能(以下、製品Cについての穴あけ機能#1と称する)を実現中に刃が破損したとする。この場合、製品Cについての穴あけ機能#1はドリルbに割り当てられているので、ドリルbが故障したことが検知されると、製品Cについての穴あけ機能#1のドリルbへの割り当てが解除され、リンク情報が更新される。とともに、製品Cについての新たな穴あけ機能#2が機能フローに追加され、機能フローが更新される。製品Cについての穴あけ機能#2はドリルb以外の代替ドリルに割り当てられる。代替ドリルに割り当てられる製品Cの穴あけ機能#2を代替機能あるいは迂回機能と称する。実現不可能となった機能から代替機能への切り替え、代替機能の実現及び代替機能から実現不可能となって機能の直後の機能への切り替えに関する機能フローの部分を迂回路と称する。後述する属性に基づいて選んだドリル、例えばドリルcが製品Cについての穴あけ機能#2のリンク先装置とされる。代替機能のリンク先が決定されると、代替機能とリンク先の装置との割り当てが設定され、リンク情報が更新される。
【0026】
機能フローでは、製品Aについての穴あけ機能(以下、製品Aについての穴あけ機能#1と称する)もドリルbに割り当てられているので、ドリルbが故障したことが検知されると、製品Aについての新たな穴あけ機能#2が機能フローに追加され、機能フローが更新される。製品Aについての穴あけ機能#2もドリルb以外のドリルに割り当てられる。後述する属性に基づいて選んだドリル、例えばドリルcが製品Aについての穴あけ機能#2のリンク先装置とされる。機能のリンク先が決定されると、製品Aについての穴あけ機能#1のドリルbへの割り当てが解除され、製品Aについての穴あけ機能#2とドリルcとの割り当てが設定され、リンク情報が更新される。
【0027】
図5は、故障発生時に工程管理システムにおいて更新された製品Aについての機能フロー情報の一例を示す。機能フロー情報は、ドリルbが故障したときに更新される。製品Aについての機能フロー情報は、切削開始日時、切削終了日時、穴あけ#1開始日時、穴あけ#2開始日時、穴あけ#1終了日時、穴あけ#2終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時からなる。ドリルbが故障し、穴あけ#2が開始する。機能フローでは、穴あけ#1と穴あけ#2が共存しているが、前述したように、穴あけ機能#1のドリルbへの割り当てはドリルbの故障が検知されると解除されているので、ドリルbの故障が検知された後は穴あけ機能#1は実現されない。
【0028】
ドリルbが故障しても製品Bについての機能フロー情報は変更されないので、
図6に示す製品Bについての更新機能フロー情報は、
図2に示した製品Bについての機能フロー情報と同じであり、切削開始日時、切削終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時、穴あけ開始日時、穴あけ終了日時、切削開始日時、切削終了日時からなる。
【0029】
図7は、故障発生時に工程管理システムにより更新された製品Cについての機能フロー情報の一例を示す。製品Cについての機能フロー情報は、穴あけ#1開始日時、穴あけ#2開始日時、穴あけ#1終了日時、穴あけ#2終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時、切削開始日時、切削終了日時からなる。穴あけ#1開始日時と穴あけ#2開始日時はほぼ同じである。穴あけ#1終了日時と穴あけ#2終了日時もほぼ同じである。機能フローでは、穴あけ#1と穴あけ#2が共存しているが、前述したように、穴あけ機能#1のドリルbへの割り当てはドリルbの故障が検知されると解除されているので、ドリルbの故障が検知された後は穴あけ機能#1は実現されない。
【0030】
図8は、機能フロー情報が更新される場合に更新されるドリルに関するリンク情報の一例を示す。
図4のように新たに追加された製品Cについての穴あけ機能#2と製品Aについての穴あけ機能#2が
図3に示したリンク情報に追加される。
図8に示す更新後のリンク情報は、製品Aについての穴あけ機能#1と製品Cについての穴あけ機能#1のドリルaへの割り当てが解除され、製品Aについての穴あけ機能#2と製品Cについての穴あけ機能#2がドリルcに割り当てられたことを示す。
【0031】
工程管理システムは、割り当てが解除された製品Aについての穴あけ機能#1を更新後の機能フローに残しているので、製品Aについての穴あけ機能#1を実現する予定であるドリルbに制御プログラムが既にインストールされている場合、制御プログラムをアンインストールしない。これにより、工程管理システムは、故障したドリルbの修理が終了した場合、ドリルcによる製品Cについての穴あけ機能#2の実現を中止させ、修理が終わったドリルbによる製品Cについての穴あけ機能#1の実現を再開させることができる。
【0032】
なお、工程管理システムは、代替機能を機能フローに追加した場合、
図4に示すように、故障した装置に割り当てられていた当初の機能を必ずしも機能フローに残す必要はなく、
図9に示すように、当初の機能を機能フローから削除してもよい。
【0033】
図10は、製品Aについての新たな穴あけ機能#2を機能フローに追加し、故障した装置に割り当てられていた製品Aについての穴あけ機能#1を機能フローから削除した場合の製品Aについての更新機能フロー情報の一例を示す。製品Aについての機能フロー情報は、切削開始日時、切削終了日時、穴あけ#2開始日時、穴あけ#2終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時からなる。
【0034】
製品Bについての機能フロー情報は
図6に示す更新機能フローと同じであるので、図示を省略する。
【0035】
図11は、製品Cについての新たな穴あけ機能#2を機能フローに追加し、故障した装置に割り当てられていた製品Cについての穴あけ機能#1を機能フローから削除した場合の製品Cについての更新機能フロー情報の一例を示す。製品Cについての機能フロー情報は、穴あけ#1開始日時、穴あけ#1終了日時、穴あけ#2開始日時、穴あけ#2終了日時、組立て開始日時、組立て終了日時、切削開始日時、切削終了日時からなる。穴あけ#1終了日時と穴あけ#2開始日時はほぼ同じである。
【0036】
機能フロー情報が更新されたときのリンク情報は
図8に示したリンク情報と同じであるので、図示を省略する。
【0037】
なお、
図4に示すように、代替機能を機能フローに追加した場合、故障した装置に割り当てられていた当初の機能を機能フローに残しておくと、代替前の当初の機能にわりあてられていた装置が正常に動作するようになったときに、当初の機能を簡単に実現する、すなわち迂回路の処理が終了し、元の機能フローに戻ることができる利点がある。
【0038】
さらに、上述の工程管理の変更の例は、
図4に示すように、当初機能を残す機能フローの変更の例と、
図9に示すように、当初機能を削除する機能フローの変更の例を含む。しかし、工程管理は機能フローとリンク情報の組み合わせにより制御されているので、機能フローを変更せずにリンク情報のみを変更し、機能と装置の対応関係を変更することによっても工程管理を変更できる。例えば、正常な動作が見込まれない装置がある場合、当該装置への当該機能の割り当てを解除し、当該機能を正常な動作が見込まれる他の装置に割り当てるようにリンク情報を変更すると、同じ機能フローを実行しても、工程管理は変更される。
【0039】
[工程管理の具体例]
以下、実施形態による工程管理の具体例を説明する。
【0040】
工程管理は、
図12に示すように、機能層と、装置層と、両層の間にある中間層からなる。機能層は、機能フローを管理する。中間層はリンク情報と、通信プロトコルを管理する。装置層は、ドメインマップを管理する。
【0041】
図12に示す機能フローは、機能aの次に機能bが実現され、機能bの次に機能cが実現され、機能cの次に機能dが実現されることを示す。装置層は機能フローを構成する各機能a~eを実現する手段としての装置A~Eを備える。装置は多機能を実現できる装置であっても良い。例えば、NC制御の装置の場合、制御プログラムが変更されると、装置が実現する機能も変更され、装置が複数の機能を実現できる。
【0042】
ある装置、例えば装置Cが動作不可能となると、装置Cに対応する機能cが実現不可能となる。あるいは、装置Cは動作しているが、動作に遅延が生じると、機能cの実現に長時間を要する。工程管理者は、そのような状態を認識すると、機能cの代替機能(ここでは、機能e)を探し、機能bの次に機能eを実現し、機能eの次に機能dを実現するように、機能フローを書き換えることがある。
【0043】
図4に示すように機能フローを変更する場合は、機能フローは当初の機能cとその代替機能eの両方を含むので、機能bから機能cへのフローに加えて機能bから機能eへの迂回路と、機能cから機能dへのフローに加えて機能eから機能dへの迂回路が機能フローに含まれる。
【0044】
図9に示すように機能フローを変更する場合は、機能bから機能cへのフローの代わりに機能bから機能eへの迂回路が機能フローに含まれるとともに、機能cから機能dへのフローの代わりに機能eから機能dへの迂回路が機能フローに含まれる。
【0045】
以下の説明は、
図4に示すように、装置の故障時に、当初の機能を残した状態で新機能を追加する場合を対象としているが、
図9に示すように、当初の機能を削除して新機能を追加するだけの場合も同様である。
【0046】
現実空間に対応する装置層が中間層としてのリンク情報及び通信プロトコルを介して仮想空間に対応する機能層により制御される。通信プロトコルは国、地域、業種等に依存せず、どの国、地域、業種等でも共通に使用される。
【0047】
装置層が管理するドメインマップは、各装置の稼働状況を示す表示態様を定義する。装置層は、情報公開/共有部を備える。情報公開/共有部は、ドメインマップや機能フローをネットワーク上で公開させ、及び/又は共有させる。
【0048】
機能フローは機能マップ(第1の画像)として表示される。機能マップは、種々の形態を取り得るが、例えば各機能を示すアイコンと、連携する機能の経路を示す矢印からなっても良い。機能マップは各機能の実現進捗状況、機能間の連携の混雑状況等の機能実現に関する情報を表示しても良い。リンク情報は
図3、
図8等に示すように、表形式で管理されているので、そのままリンクテーブル(第2の画像)として表示される。
【0049】
装置が故障すると、故障の内容に関する情報はネットワークを介してサーバ(制御部)に送信される。機能層は、ネットワークを介してサーバから故障の内容に関する情報を受信すると、機能マップ上の対応する機能のアイコンや機能の矢印に×印を表示しても良い。
【0050】
機能層はリンク評価部を備える。リンク評価部は、機能と各装置とのリンクの属性値を計算し、機能マップに含ませて属性値を表示させる。工程管理者はこの属性値に基づいて代替機能を探したり、機能フローを書き直すことができる。属性値の一例は機能の平均処理時間、歩留り等がある。
【0051】
図13、
図14を参照して、製造システムの機能フローの一例を説明する。説明の便宜上、上述の説明では、各機能間の加工品の搬送機能は機能フローから省略したが、ここでは、搬送機能も機能フローに含まれる。
図13は機能と装置とのリンクの概念を示す。
図14は装置層の概念を示す。
【0052】
機能フローは切削、搬送、穴あけ、搬送、組み立ての機能からなる。
図13、
図14に示すように、製品#1についての切削機能112aはフライス盤102bに、切削後の部品Aについての搬送機能112bは台車108aに、穴あけ機能112cはドリル104aに、穴あけ後の部品Bについての搬送機能112dは台車108cに、組立て機能112eはロボットアーム106aに、組立て後の部品Cについての搬送機能112fは台車108eにそれぞれ割り当てられるようにリンク情報が設定される。同様に、製品#2についての切削機能はフライス盤102dに、切削後の部品についての搬送機能は台車108bに、穴あけ機能はドリル104bに、穴あけ後の部品についての搬送機能は台車108dに、組立て機能はロボットアーム106bにそれぞれ割り当てられるようにリンク情報が設定される。これにより、各製品の各機能が各装置により実現され、製品が製造される。
【0053】
図15は製造工程を管理する工程管理システムの一例を示すブロック図である。機能実現手段である複数の装置20-1~20-m1(装置20と総称する場合もある)と、工程管理者が使用する端末30-1~30-m2(端末30と総称する場合もある)と、サーバ40-1~40-m3(サーバ40と総称する場合もある)と、第2サーバ50がネットワーク10に接続される。m1、m2、m3は任意の正整数である。ネットワーク10はイントラネット、インタネット等を含む。工程管理システムが管理する工程は製品毎の工程を想定する。製造工程は同一の工場で実施されるに限らず、複数の工場に亘って実施されても良い。さらに、同一の企業内に限らず、複数の企業の工場に亘って実施されても良い。
【0054】
装置20は製造に関する加工装置、部品を第1の装置から第2の装置に搬送する台車等を含む。装置20の各々は駆動部24、コントローラ22、センサ26、表示部28を含む。駆動部24は、加工に関するフライス盤、ドリル、ロボットアームや搬送に関する台車の本体を含む。コントローラ22は、駆動部24を駆動する制御プログラムがインストールされたプロセッサを含む。センサ26は装置20の種々の箇所の状態を検知し、検知結果をサーバ40へ送信する。表示部28は、サーバ40又は他の装置20から送信された情報を表示する。サーバ40は製品毎に複数設けられるが、複数のサーバを設けずに、1つのサーバが複数の製品の工程管理を担当するようにしても良い。
【0055】
端末30の各々は携帯可能な電子機器、例えばスマートフォン、ノートブック型・タブレット型のパーソナルコンピュータ等からなる。端末30はマウス、キーボード等の入力装置と表示装置を備えても良いし、タッチパネル式の表示・入力装置を備えても良い。工程管理者は端末30を用いて機能フローの作成、更新、リンクの作成、更新をすることにより、製造工程を管理することができる。
【0056】
サーバ40は製品の製造会社のサーバであり、機能フロー情報42やリンク情報44を格納するとともに、製品に関する機能フロー情報やリンク情報を当該製品の製造に関係する装置20や工程管理者の端末30に公開し、機能フロー情報やリンク情報を共有化する。
【0057】
第2サーバ50は製品の製造会社以外の会社、例えば運送会社のサーバである。1つの製品の製造に関与する複数の装置が遠隔地に分散しており、ある装置についての加工済みの部品が遠隔地の装置に運送会社のトラック等により搬送される際、サーバ40に加えて第2サーバ50も機能の連携制御に用いられる。
【0058】
図16は
図15に示す工程管理システムにおける機能フローの一例を示す。機能層は、納入材料の数量・特性の確認機能122a、部品の加工・成形機能122b、部品寸法・性能の測定・入力機能122c、加工済み部品の良品選別機能122d、部品組立て機能122e、製品特性測定・データ入力機能122f、出荷可能製品選別機能122g、データ解析・良否判定機能122h、歩留り・発注量算定機能122i、加工材料発注機能122j、データ解析・良否判定機能122kからなる機能フローを管理する。
【0059】
部品の加工・成形機能122bの例は切削、穴あけを含む。部品寸法・性能の測定・入力機能122cは加工・成形後の部品の寸法・性能を測定し、測定結果をデータ解析・良否判定機能122hへ送信する。データ解析・良否判定機能122hは加工・成形後の部品の良否を判定し、良否判定結果を良品選別機能122dへ送信する。良品選別機能122dは良否判定結果に基づいて加工・成形後の部品の中から良品を選別する。
【0060】
データ解析・良否判定機能122hは良否部品数データを歩留り・発注量算定機能122iへ送信する。
【0061】
部品組立て機能122eの例は複数の部品を組立てて製品を完成させることを含む。製品特性測定・データ入力機能122fは完成品の特性を測定し、測定結果をデータ解析・良否判定機能122kへ送信する。データ解析・良否判定機能122kは完成品の良否を判定し、良否判定結果を出荷可能製品選別機能122gへ送信する。出荷可能製品選別機能122gは良否判定結果に基づいて完成品の中から出荷可能製品を選別する。
【0062】
データ解析・良否判定機能122kは良否製品数データを歩留り・発注量算定機能122iへ送信する。歩留り・発注量算定機能122iは良否部品数データと良否製品数データに基づいて歩留りと発注量を算定し、算定結果を加工材料発注機能122jへ送信する。加工材料発注機能122jは歩留りと発注量に基づいて発注量を決定し、発注量を納入材料の数量・特性確認機能122aへ送信する。
【0063】
機能フローの各機能は装置層の各装置にリンク設定されており、リンク設定の状態はリンク情報で管理されている。リンク設定の一例では、加工材料発注機能122jは装置124aに割り当てられ、歩留り・発注量算定機能122iは装置124bに割り当てられ、データ解析・良否判定機能122h、122kは装置124cに割り当てられている。このように、この機能フローでは、データ解析・良否判定機能122hと122kは一つの装置124cに割り当てられているので、装置124cの処理能力によっては、データ解析・良否判定機能122hと122kは実現に遅延が生じることがある。
【0064】
装置124cのセンサ26が装置124cの処理の遅延を検知すると、検知結果が当該製品の製造会社のサーバ40に送信される。あるいは、装置124cの近傍に居る作業員が目視により装置124cの処理の遅延を確認し、装置124cの図示しない通信機を用いてサーバ40に遅延を通知しても良い。
【0065】
サーバ40は装置124cの処理の遅れを通知されると、当該製品の工程管理者の端末30に装置124cの処理の遅れを通知する。端末30は工程管理者に音、光等で機能122h、122kの処理の遅れを知らせる。工程管理者は装置124cに基づく機能122h、122kの実現の遅延を認識すると、機能フローを訂正する必要性を認識できる。
【0066】
図16に示した機能フローの変更の概念について、
図17を参照して説明する。工程管理者は、機能122h、122kの実現の遅延を認識すると、第2のデータ解析・良否判定機能122h-2を作成し、部品寸法・性能の測定・入力機能122cの測定結果を第2のデータ解析・良否判定機能122h-2にも送信するように機能フロー情報を変更する。さらに、工程管理者は、第2のデータ解析・良否判定機能122h-2で得られた良否部品数データを歩留り・発注量算定機能122iへ送信し、第2のデータ解析・良否判定機能122h-2で得られた良否データを良品選別機能122dへ送信するように機能フロー情報を変更する。元のデータ解析・良否判定機能122hは機能フロー情報に残しておいても良いし、削除しても良い。
【0067】
工程管理者は、データ解析・良否判定機能122hの装置124cへの割り当てを解除し、第2のデータ解析・良否判定機能122h-2をいずれかの装置、例えばどの機能も割り当てられていなかった装置124dに割り当てるようにリンク情報を変更する。
【0068】
これにより、装置124dは第2のデータ解析・良否判定機能122h-2を実現し、装置124cはデータ解析・良否判定機能122kを実現することになり、装置124c、124dそれぞれが機能を迅速に実現することができ、データ解析・良否判定機能の実現の遅延が解消する。
【0069】
機能フロー情報は、工程管理者が機能マップを修正することにより変更される。
図18、
図19に示す機能マップを参照して、製造システムの機能フロー情報を変更する実際の処理の例を説明する。機能フローを実行して製品を製造している間に、装置20の動作異常又は動作停止がセンサにより検知されると、その検知結果がサーバ40に送信される。サーバ40は、機能の実行の遅延又は停止の通知を受けると、当該機能フローの工程管理者の端末30にアラートを通知する。通知を受けた端末30は、音、光等で機能フローの変更の必要性を工程管理者に知らせるとともに、メニューを表示する。工程管理者が機能フローの変更の変更性を認識し、メニューから機能フローの変更を選択すると、端末はサーバ40から機能フロー情報を受信し、
図18に示すような機能マップ132を表示する。
【0070】
機能マップ132は、ユーザがイメージとして視認できるように機能フロー情報を表示するものであり、形状の切削機能112aを示すアイコン、穴あけ機能112cを示すアイコン、組立て機能112eを示すアイコンと、機能の連携を示す矢印114a、114bを含む。ここでは、説明の便宜上、機能間で部品を搬送する機能は省略されている。図示しないリンク情報において、形状の切削機能112aはフライス盤102bに、穴あけ機能112cはドリル104aに、組立て機能112eはロボットアーム106aに割り当てられている。さらに、機能マップ132は、ドリル104aによる穴あけ機能が実現されていない又は実現に遅延が生じていることを示すために、穴あけ機能112cを示すアイコンに重畳される×印も表示する。
【0071】
図18のケースは、例えばドリル104aの刃が破損し、ドリル104aの近傍に居る作業員がドリル104aの刃が破損したことに気付き、作業員がドリル104aの動作を停止させるケースである。あるいは、
図18のケースは、ドリル104aに備えられているセンサ26が刃の破損を検知して、ドリル104aの動作が自動的に停止されたケースでも良い。ドリル104aの動作停止はサーバ40に通知され、サーバが
図18のような機能マップ132を表示させるデータを端末30に送信する。
【0072】
工程管理者は、
図18の機能マップ上で正常に実現されていない穴あけ機能112cのアイコンをドラッグ&ドロップして表示位置を変更すると、
図19に示すように穴あけ機能112cのアイコンのコピーである第2穴あけ機能112c-2のアイコンが機能マップ上に作成される。さらに、形状の切削機能112aのアイコンから第1穴あけ機能112cのアイコンへのフローを示す矢印が削除され、代わりに形状の切削機能112aのアイコンから第2穴あけ機能112c-2のアイコンへのフローを示す矢印114a-2が表示される。同様に、第1穴あけ機能112cのアイコンから組立て機能112eのアイコンへのフローを示す矢印が削除され、代わりに第2穴あけ機能112c-2のアイコンから組立て機能112eのアイコンへのフローを示す矢印114b-2が表示される。これに応じて、機能フロー情報も変更される。
【0073】
機能フローの変更が終了すると、サーバ40は端末30の機能マップ132の表示を停止させ、代わりに
図3、
図8に示すようなリンク情報をリンクテーブルとして端末30で表示させる。あるいは、サーバ40は、機能マップ132とリンクテーブルを2つの画面で表示させても良い。工程管理者が、リンクテーブル上で第1穴あけ機能112cからドリル104aへのリンクを解除する操作(〇印を×印に変更)を実行し、第2穴あけ機能112c-2から他のドリル、例えばドリル104cへのリンクを設定する操作(×印を〇印に変更)を実行すると、リンク情報が更新される。
【0074】
これにより、形状の切削機能の実現後、正常に実現されない第1穴あけ機能の代わりに第2穴あけ機能が正常に実現され、穴あけ機能の実現後、組立て機能が実現され、製造工程に遅延が生じること防止される。
【0075】
なお、元の第1穴あけ機能は機能フローに残しておいても、削除しても良い。
【0076】
新規追加された第2穴あけ機能を他のドリルに割り当てる際、工程管理者は、各ドリルの動作状況が分かると、適切なドリルを選ぶことができる。動作状況の一例として、サーバ40は、
図20に示すような装置の稼働率管理情報を管理する。稼働率管理情報は工程管理システムが管理する全ての装置20の稼働率を示す。端末30は、工程管理者が新機能を装置に割り当てる際、稼働率管理情報に基づいて
図21に示すようなドメインマップを表示する。ドメインマップは会社、工場毎に装置の稼働率をバー(棒)グラフの形で表示する。ドメインマップは機能マップと同時に表示しても良いし、画面を切り替えて表示しても良い。
【0077】
ドメインマップは、例えば会社Aの工場a1のドリル2と、会社Bの工場b1のドリル2の稼働率は高く、会社Aの工場a1のドリル1と、会社Aの工場a2のドリル1とドリル2と、会社Bの工場b1のドリル1は稼働していないことを示す。工程管理者は、ドメインマップを見ることにより、新規追加された機能を稼働率が低い装置に割り当てることができ、各装置を効率良く使い、製品を効率よく製造することができる。
【0078】
動作状況の他の例としては、装置のコントローラのCPU使用率、機能を実現するための平均処理時間、歩留り等がある。
【0079】
図22を参照して機能フローの変更の他の例を示す。
図22は端末30で表示される機能マップ232の一例を示す。この機能マップ232は、部品加工・成形機能のアイコン222b、部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222c、良品選別機能のアイコン222d、部品組立て機能のアイコン222e、製品特性測定・データ入力機能のアイコン222f、データ解析・良否判定機能のアイコン222h、歩留り・発注量算定機能のアイコン222i、データ解析・良否判定機能のアイコン222kからなる。これらのアイコンの中で正常に実現されないことが検知された部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222cには×印が重畳されている。
図18、
図19に示す機能フローの変更例では、×印が重畳されている正常に実現されない機能の代替機能が設定されたが、
図22に示す機能フローの変更例では、正常に実現されない機能が単に削除される。
【0080】
工程管理者が機能マップ232上でアイコン222cを削除する操作を実行すると、部品加工・成形機能のアイコン222bから部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222cへのフローを示す矢印と、部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222cから良品選別のアイコン222dへのフローを示す矢印が削除され、代わりに部品加工・成形機能のアイコン222bから良品選別のアイコン222dへのフロー(迂回路)を示す矢印が表示される。これに応じて、機能フロー情報も変更される。
【0081】
工程管理者が、リンクテーブル上で部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222cの装置へのリンクを解除する操作を実行すると、リンク情報が更新される。
【0082】
図23を参照して機能フローの変更のさらに他の例を示す。
図23は端末30で表示される機能マップ332の一例を示す。この機能マップ332は、納入材料の数量・特性確認機能のアイコン222a-1、部品加工・成形機能のアイコン222b-1、部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222c-1、良品選別機能のアイコン222d-1、部品組立て機能のアイコン222e、データ解析・良否判定機能のアイコン222h、歩留り・発注量算定機能のアイコン222i、加工材料発注機能のアイコン222jからなる。これらのアイコンの中で正常に実現されないことが検知された複数のアイコン(納入材料の数量・特性確認機能のアイコン222a-1、部品加工・成形機能のアイコン222b-1、部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222c-1、良品選別機能のアイコン222d-1)には×印が重畳されている。このように機能フロー内の複数の機能からなる部分フロー222-1が正常に実現されない場合、纏めて代替機能を設定することができる。工程管理者は、機能マップ上で、×印が重畳されている複数のアイコン222a-1、222b-1、アイコン222c-1、222d-1を選択し、アイコングループ222-1をドラッグ&ドロップすると、アイコングループ222-1のコピーであるアイコングループ222-2が機能マップ上に作成される。アイコングループ222-2は納入材料の数量・特性確認機能#2のアイコン222a-2、部品加工・成形機能#2のアイコン222b-2、部品寸法・性能の測定・入力機能#2のアイコン222c-2、良品選別機能#2のアイコン222d-2からなる。
【0083】
さらに、加工材料発注機能のアイコン222jから納入材料の数量・特性確認機能のアイコン222a-1へのフローを示す矢印が削除され、代わりに納入材料の数量・特性確認機能#2のアイコン222a-2へのフローを示す矢印が表示される。同様に、部品寸法・性能の測定・入力機能のアイコン222c-1からデータ解析・良否判定機能のアイコン222hへのフローを示す矢印が削除され、代わりに部品寸法・性能の測定・入力機能#2のアイコン222c-2からデータ解析・良否判定機能のアイコン222hへのフローを示す矢印が表示され、データ解析・良否判定機能のアイコン222hから良品選別機能のアイコン222d-1へのフローを示す矢印が削除され、代わりにデータ解析・良否判定機能のアイコン222hから良品選別機能#2のアイコン222d-2へのフローを示す矢印が表示され、良品選別機能のアイコン222d-1から部品組立て機能のアイコン222eへのフローを示す矢印が削除され、代わりに良品選別機能#2のアイコン222d-2から部品組立て機能のアイコン222eへのフローを示す矢印が表示される。これに応じて、機能フロー情報も変更される。
【0084】
図24は機能マップ132の表示態様の変形例を示す。今までの機能マップでは、機能のフローを示す矢印は機能の実現順番の前後関係のみを示していた。
図24の機能マップでは、機能のフローを示す矢印は機能間の処理の遅延・混雑状況を矢印の太さで示す。矢印が細いフローの前後の機能間では処理が渋滞していることを示す。この機能マップを見ることにより、工程管理者は、細い矢印で接続されている機能の代替機能を設定することを検討することができる。
【0085】
さらに、機能を示すアイコンは機能のラベルのみならず、機能を実現する装置の動作状況をバーグラフの形で表示しても良い。装置の動作状況はCPU使用率、装置の稼働率、平均処理時間、歩留り等でも良い。さらに、機能の実現が完了した機能のアイコンを機能実現未完了のアイコンと差別化できるように、例えば太枠のアイコンとして表示しても良い。
【0086】
これにより、工程管理者は、機能が実現できなくなる前に、未然に機能フローを変更して、製造に支障が出ないようにすることができる。
【0087】
図25を参照してリンク情報の一例を説明する。リンク情報は、装置毎にどの機能とリンクが設定されており、どの機能とのリンクが解除されているかを示す。機能フローが作成され、機能#iが装置#jに割り当てられると、装置#jの機能#iに関する機能フロー作成日時の欄に作成日時を示すデータが入力される。装置#jの機能#iに関する機能フロー作成日時がブランクであると、機能#iが装置#jに割り当てられていないことを示す。機能フローが変更され、機能#iの装置#jへのリンクが解除されると、装置#jの機能#iに関するリンク解除日時の欄に解除日時を示すデータが入力される。装置#jの機能#iに関するリンク解除日時がブランクであると、機能#iが装置#jに割り当てられていることを示す。すなわち、装置#jの機能#iに関する機能フロー作成日時とリンク解除日時はいずれかにデータが入力され、他方はブランクである。
【0088】
機能フローに機能が追加される毎に、リンク情報に機能欄が追加される。
【0089】
リンク情報は装置毎の装置識別情報、ドメイン識別情報、性能、付加性能、属性も管理する。着目する装置識別情報は、IPアドレスでも良い。ここでドメイン識別情報は、装置が所属する組織名を表す。着目する性能は、CPUパワーについては内蔵メモリの容量等でも良い。着目する付加性能は、増設メモリの空き容量でも良い。
【0090】
図26は、異なる企業の製造業者を含む製造システムにおける機能フローの変更の一例を示す。ある装置の故障によりある機能(例えば、穴あけ機能)が実現不能になり、工程管理者が機能フローを変更しようとしたが、当該機能を実現できる装置が自社内に存在せず、工程管理者は、当該機能を他会社に外注することを想定する。
図26の第1工場142は、実現不能になった機能にリンクされている故障装置を含む工場である。工程管理者は、第2サーバ114に穴あけ機能の外注を依頼するとともに、サーバ40(
図15)に機能フロー情報とリンク情報を第2サーバ114に送信するように依頼する。第2サーバ114は物流を含む物品加工/製造請負エージェント会社のサーバである。
【0091】
第2サーバ114の管理者は、穴あけ機能を実現できる外注先業者を探し、実現不能の機能の第1工場142内の故障装置へのリンクを解除し、実現不能の機能の外注先業者の装置150へのリンクを設定し、リンク情報を更新する。第2サーバ114の管理者は、外注先業者のサーバ146に穴あけ機能の外注を依頼するとともに、更新した機能フロー情報をサーバ146に送信する。さらに、第2サーバ144は、配送業者154に対して、第1工場142にある部品を外注先業者へ搬送すること及び外注先業者から加工済み部品を第2工場158へ搬送することを依頼する。第2工場は、第1工場が実現する機能(穴あけ機能)の次の機能を実現する工場である。第2工場は第1工場である場合もある。
【0092】
外注先のサーバ146は、機能フロー情報をパーサー148に送信する。パーサー148は、仕様書/図面に対するパーサーであり、外注先業者の装置150が機能フロー情報に基づいて機能フローを実行できるかを判定する。実行できないと判定した場合、パーサー148はサーバ146を介して第2サーバ144にエラーを送信する。実行できると判定した場合、パーサー148は機能フロー情報を装置150へ送信する。
【0093】
これにより、第1工場142にある部品が他の企業の装置150に搬送され、装置150は第1工場142内の装置の代わりに穴あけ機能を実現する。穴あけ機能の実現後の部品が第2工場158へ搬送され、穴あけ機能の次の機能が実現される。
【0094】
装置20間あるいはサーバ40と装置20間で機能の連携のための引継ぎデータが伝送される。引継ぎデータの一例を
図27、
図28を参照して説明する。第1の装置による機能が実現されると、実現結果である加工済み部品が第2の装置に搬送される。物品の搬送とともに、機能フローの実現過程を示す引継ぎデータがネットワーク10を介して第1の装置から第2の装置に送信されるとともにサーバ40にも送信される。第2の装置はこの引継ぎデータに基づいて機能の実現を開始する。
【0095】
図27(a)(又は
図28(a)又は
図29(a))に示すように、引継ぎデータは、物理層ヘッダ、MAC層ヘッダ、IPヘッダ、TCPヘッダ(又はUDPヘッダ)、ペイロードからなるパケットとして伝送される。IPヘッダは、
図27(b)に示すように、IPパケット関連情報、送信者IPアドレス、受信者IPアドレスからなる。ペイロードは、
図28(b)(又は
図29(b))に示すように、機能フローヘッダと、機能実現後に得られた製品に関するデータからなる。
【0096】
機能フローヘッダは、
図28(c)に示すように、機能フローID、製品数、サブ機能フローID、機能ID、機能フロー作成日時、サーバURL、機能フロー管理情報、納期管理情報からなる。機能フローの例は「○月○日〇時までに材料を切削して部品Aを作り、○月○日〇時までに部品Aに穴をあけて部品Bを作り、○月○日〇時までに部品Bと部品Cを組立てて製品Dを1000個作る」である。サブ機能フローは個々の製品毎の機能フロー(サブ機能フローと称する)である。
【0097】
上記の機能フローは1000個のサブ機能フローからなる。機能IDは切削、穴あけ、組立て等の機能を示す。サーバURLは製品に関するサーバのURLであり、製品の進捗状況の報告先や問い合わせ先を示す。機能フロー管理情報は、機能フローの流れを示す管理情報であり、この例では当該機能の進捗状況(処理済みフラグ等)、納期情報等を含む。ここで、納期管理情報は実際の納期を示す。これらの情報は、Linux(登録商標)やJave Script(登録商標)により記述される。
【0098】
機能実現後に得られた製品に関するデータは、
図16等に示すような部品の寸法・性能、製品の特性、良否判定データ、良否部品数データ、良否製品数データ、歩留りデータ等を含む。
【0099】
図29は機能フローヘッダの他の例を示す。
図29(c)に示すように、機能フローヘッダは
図28(c)に示す情報に加えて、データを送信する対応装置の動作状況、例えばCPU使用率を含んでも良い。動作状況はCPU使用率には限られず、平均処理時間、歩留り等でも良い。
【0100】
引継ぎデータのデータ構造の他の例を
図30、
図31を参照して説明する。
図30(a)と
図31(a)は
図27(a)、
図28(a)又は
図29(a)と同じである。
図30と
図31の例は、製造業のデジタル化のためのインダストリー4.0で定義されている管理シェルの概念を適用した引継ぎデータを示す。インダストリー4.0は、企業の壁を超えてビジネスプロセスをネットワーク化するものである。インダストリー4.0の世界につなぐ必要のある「もの」全てがアセットと称される。生産システムの全ての階層レベルがネットワークでつながり、全階層の「もの」の間で通信が行われる。アセットをネットワークへ接続するインターフェースを管理シェルと称する。管理シェルの中に、そのアセットに関する全ての重要な情報やデータが収集・保存される。管理シェルはインターネット上でアドレスで呼び出すことができ、そのアセットが一意に識別される。管理シェルはアセットの全情報への制御可能なアクセスを可能にする。
【0101】
この管理シェルの構造を模式化したものを
図32に示す。管理シェル401の構造としては、まず機能フローヘッダ(ヘッダ)402と機能フローボディー(ボディー)404で構成されている。ヘッダ402では、管理シェ401とアセット412を識別できる情報として管理シェル識別子(ID)406とアセット識別子(ID)408が割り振られる。管理シェルID406とアセットID408としては各々に対応したURLを用いることができる。管理シェルを構成するボディー404は複数のサブモデル410A、410B、…から構成される。管理シェル401が付け加えられ、インダストリー4.0の世界とつながったアセット412はインダストリー4.0コンポーネント444と称される。
【0102】
これらのサブモデル410A、410B、…を通じて、セキュリティ面や安全面、エネルギー面、製造能力などアセット412の様々な側面について記述する(情報を取得する)ことが可能となる。サブモデル410A、410B、…は階層に分類された属性の集合から構成され、アセット412のデータ(仕様、性能)や機能等、アセット412に関するデータの全てが属性となり得る。
【0103】
この属性は、「基礎属性」、「必須属性」、「任意属性」、「自由属性」として区別されている。「基礎属性」は、標準化された必須の属性で全ての管理シェルに適用される。「必須属性」は、標準化された必須の属性でサブモデルに適用される。「任意属性」は、標準化された属性であってもサブモデルへの適用は任意である。「自由属性」は、メーカーが独自に設定できる限定された用途の属性である。
【0104】
アセットの代表例は機械であるが、上述したように、工場全体、作業ステーション、機械の内部の部品等の物理的な「もの」に限らず、文書(生産計画書、注文書等)等の非物質的な「もの」も含めて全ての階層のありとあらゆる「もの」がアセットとなり得る。管理シェルは、標準化された通信インターフェースで、全てのアセットとアセットとが互いに通信できるようにできる。例えば、
図33のように、複数のコンポーネント444A、444B、444C、…に含まれる管理シェルは、WebAPIやサービスAPIを介して、ネットワーク446経由でお互いに情報をやり取りして連携できる。ネットワーク446側は管理シェルの持つ情報にオープンな構造であり、管理シェル内は自身の持つ情報にクローズな構造となっている。WebAPIやサービスAPIを介して連携できるので、サービスとして管理シェルを介して情報をネットワーク446上で流通させることも可能である。
【0105】
図30と
図31は、このような特徴を持つ管理シェルの通信インターフェースを模式的に表したものである。
図30(b)に示すように、
図30(a)のペイロードは、機能フローヘッダと機能フローボディからなる。機能フローヘッダと機能フローボディはインダストリー4.0の管理シェルを構成するものである。機能フローヘッダは、
図30(c)に示すように、アセットIDと管理シェルIDからなる。アセットIDには機能フローIDが記述される。これらのIDには上述したようにURLを対応づけて使用することが可能である。
機能フローボディは、
図31(c)に示すように、分野/テーマ別の分野属性、機能属性、通信プロトコル情報・送信データからなる。機能フローボディは多数のサブモデルから構成される。これらのサブモデルを介して、アセットの様々な側面についての記述が可能である。ある1つの側面に関する情報は、1つのサブモデルに纏められる。ある1つの側面につき、サブモデルが1つ存在する。これにより、例えばサブモデル「ドリル」を介してインダストリー4.0のネットワーク上で適した性能・特徴を備えたドリルを見つけることができる。
【0106】
各サブモデルは、明確に定義された1つの分野(テーマ)を扱う。各サブモデルは、階層に分類された多数の属性から構成される。この属性の中身については、アセットのデータ(機器の構成、仕様、性能等)や機能等、アセットに関するあらゆる情報が属性となり得る。
【0107】
その属性を介してアセットの情報を提供することができる。属性の例は、製品特性、プロセス特性、外部のデータソースやファイルへのリンク(参照先)、他の管理シェルや他のサブモデルや属性へのリンク(参照先)、アセットの能力、性能、呼び出し方法の記述、属性の集合を含む。属性はXML言語で記述される。これらには、図面、CAD、写真等によって得られる電気系統・配管・配置等の関係なども該当する。運転や保守の際もこの属性として、例えば、状態データや運転データそしてメンテナンス履歴等も挙げることができる。これらアセットのデータは、ネットワーク上を流通させて利活用を図ることもできる。
【0108】
上記を換言すると、取得(もしくは制御)したい側面ごとに1つのサブモデルが存在している。これらのサブモデルにより、例えば、特定の工作機械のドリル情報についてだけ取得したり、制御したりすることができるようになる。
【0109】
サブモデルは明確に定義された何か1つの分野やテーマを扱う。管理シェル内にはこのサブモデルが複数含まれる。更に、サブモデルにはインダストリー4.0におけるアセットに多く適用される共通のサブモデルがあり、これらは「基礎サブモデル」とされている。一方で、バリューチェーン上の取引企業の間で具体的な用途のために新たに作られるサブモデルは「自由サブモデル」と位置づけられている。これらのサブモデルは、アセットのあらゆる側面に応じた形で作成されるが、全てを自社のみで開発するのは現実的ではないため、既に多く存在する様々な国際標準やコンソーシアムが策定した仕様が管理シェルに反映されている。
【0110】
ここで、ある装置による機能の実施中に装置が故障して、対応する機能に迂回路が作成されると、
図34に示すように、1つの機能に対応する装置から送信される引継ぎデータも分割される。例えば、データ解析・良否判定機能122hが実現不能になり、代替機能としてデータ解析・良否判定機能122h-2が設定されると、データ解析・良否判定機能122hに対応する装置から送信される引継ぎデータは、データ解析・良否判定機能122hに対応する故障前の装置から送信される引継ぎデータと、データ解析・良否判定機能122h-2に対応する他の装置から送信される引継ぎデータとに分割される。
【0111】
図35は、装置間の引継ぎデータの伝送例を示す。データは1個の部品/製品の加工が完了する毎に送信しても良いが、実施形態では、装置間で伝送されるデータ送信はパケットに纏められ間欠的に送信されるように機能フローが設定される。例えば、製品Aのための1個目から500個目までの部品Aの切削(機能A1)が完了すると、1個目から500個目までの部品Aについての引継ぎデータが送信される。同様に、製品Aのための501個目から1000個目までの部品Aの切削(機能A2)が完了すると、501個目から1000個目までの部品Aについての引継ぎデータが送信される。
【0112】
このように引継ぎデータが間欠的に送信されるように機能フローが設定されているので、引継ぎデータが送信されていない間に機能フローの変更(迂回路作成等)ができ、故障対応が可能である。
【0113】
図36は、工場内で製造装置から他の製造装置へ加工済み部品を移動する搬送装置20の一例としての台車162の表示部164の表示内容の一例を示す。製造装置は、次の機能を実現する製造装置に
図27~
図31に示すような引継ぎデータを送信するとともに、同じデータを台車162にも送信する。台車162の表示部164は、機能フローID、サブ機能フローID、機能ID、次工程、問い合わせ先、納期等を表示する。装置20の作業員は表示されている次工程の内容を見て、加工済み部品を次工程の装置20へ確実に搬送することができる。
【0114】
図37は、機能フローの更なる他の例を示す。この機能フローでは、同じ機能でもリンクされている装置が異なると、異なる機能IDが設定される。例えば、1000個の部品に対して所定位置に所定深さの所定径の穴をあける場合、1個目から500個目までの部品はドリルD1で穴をあけ、501個目から1000個目までの部品はドリルD2で穴をあけることを想定する。機能フローで、1個目から500個目までの穴あけ機能を機能a1-1とし、501個目から1000個目までの穴あけ機能を機能a1-2とする。穴あけ機能a1-1をドリルD1にリンクさせ、穴あけ機能a1-2をドリルD2にリンクさせるようにリンク情報を定義する。このようにすると、ドリルD1又はD2が故障したときに、故障した装置にリンクされた機能が機能マップ上で特定できる。
【0115】
[工程管理に必要な各種処理の動作例]
図38、
図39は機能フロー作成の一例を示すフローチャートである。
【0116】
ステップS102で、工程管理者は、端末30を操作してサーバ40にメニュー表示を要求する。ステップS104で、端末30は、サーバ40から送信されるメニューを表示する。メニューは、端末30で実行できる種々の処理のアイコン、例えば機能フロー新規作成アイコンを含む。ステップS106で、工程管理者は、メニューの中の機能フロー新規作成アイコンを選択する。この選択結果はサーバ40に送信され、ステップS108で、端末30は、この選択結果に応じてサーバ40から送信される機能テンプレートを表示する。機能テンプレートは機能の一覧である。ステップS110で、工程管理者は、機能テンプレートの中の機能を選択する。ステップS112で、端末30は、選択された機能の情報をサーバ40に送信する。ステップS114で、端末30は、サーバ40から送信される「選択された機能を実現する装置(制御プログラムはインストール済み)20」の推奨候補を表示する。
【0117】
ステップS116で、工程管理者は、推奨候補に同意するか否かを決定し、決定結果を端末30に入力する。推奨候補に同意した場合、ステップS117で、サーバ40は、選択された機能を推奨候補の装置20に割り当て、リンク情報を更新する。推奨候補に同意しない場合、ステップS118で、端末30は、サーバ40から送信されるドメインマップを表示する。ドメインマップの表示例は
図21でも良い。ステップS120で、工程管理者は、ドメインマップ内で「選択された機能を実現する装置20」を選択する。ステップS122で、端末30は、ドメインマップ内で選択された装置20の情報をサーバ40へ送信する。ステップS124で、サーバ40は、選択された機能を選択された装置20に割り当て、リンク情報を更新し、選択された装置20に制御プログラムをインストールさせる。
【0118】
ステップS117又はS124の次に実行されるステップS126で、工程管理者は、機能マップ上に選択された機能のアイコンを新たに配置する。他のアイコンが既に配置済みの場合は、工程管理者は、新たに配置したアイコンと既存のアイコンを結線する。アイコンの結線状態は機能フロー情報としてサーバ40に格納される。ステップS128で、工程管理者は、機能フローの完成か否かを示す情報を端末30に入力する。機能フローの未完成を示す情報が入力されると、ステップS106の処理が繰り返される。機能フローの完成を示す情報が入力されると、ステップS130で、端末30は、機能フローに含まれる全ての装置20に
図2に示すような機能フロー情報を送信するようにサーバ40に依頼し、機能フロー情報がサーバ40から装置20に送信される。
【0119】
図40は、ステップS124における制御プログラムのインストールの一例を示すシーケンスチャートである。端末30は、リンク情報とドメインマップの送信をサーバ40へ要求する(S42)。サーバ40は、リンク情報とドメインマップを端末30へ送信する(S44)。端末30は、通信接続要求を装置20へ送信する(S46)。端末30と装置20の間で通信接続が確立する(S48)。
【0120】
端末30は、制御プログラム入手指示を装置20へ送信する(S50)。装置20は、制御プログラム入手要求をサーバ40へ送信する(S52)。サーバ40は、制御プログラムを装置20へ送信する(S54)。装置20は、制御プログラムをインストールする(S56)。装置20は、制御プログラムのインストール完了通知をサーバ40へ送信する(S58)。サーバS40は、リンク情報を更新し(S60)、端末30へリンク情報の更新通知を送信する(S62)。
【0121】
図41は、ドメインマップの更新の一例を示すフローチャートである。
図41の処理は、機能マップ上に新機能が追加され、新機能に割り当てられる装置が選択されたときに開始される。例えば、
図39のステップS120で装置が選択されたときに開始される。ステップS142で、サーバ40は、選択された装置がプログラム自動インストールに対応しているか否かを判定する。
【0122】
対応していると判定した場合、ステップS144で、サーバ40は選択された装置20に制御プログラムのインストール要求を送信する。ステップS146で、選択装置はサーバ40からインストールファイルを取得し、実行し、制御プログラムをインストールし、サーバ40にインストール完了を通知する。
【0123】
対応していないと判定した場合、ステップS148で、サーバ40は選択装置あるいはそのオペレータの端末に制御プログラムのインストール要求をメールする。ステップS150で、選択装置20のオペレータは制御プログラムをインストールする。
【0124】
ステップS146又はS150の次のステップS152で、サーバは選択装置をドメインマップに追加し、ドメインマップを更新する。
【0125】
図42は、装置20の処理が終了したときのデータ送信、部品搬送の一例を示すフローチャートである。ステップS162で、装置20は、1機能フローのうちの1機能の処理が終了したか否かを判定する。機能フローが「材料を切削して部品Aを作り、部品Aに穴をあけて部品Bを作り、部品Bと部品Cを組立てて1000個の製品を作る」である場合、1000個の切削、穴あけ又は組立てが終了すると、ステップS162での判定結果はイエスとなる。
【0126】
1機能の処理が終了すると、ステップS164で、装置20は、サーバ40にアクセスして機能フロー情報を参照することにより、機能フロー上の次の機能を実現する装置が何であるかを確認する。ステップS166で、装置20は、サーバ40にアクセスしてリンク情報を参照することにより、次の装置の識別番号(IPアドレス)を取得する。ステップS168で、装置20は次の装置との通信を確立させる。ステップS170で、装置20は次の装置の電源がオンしているか判定する。次の装置の電源がオンしていると判定した場合、ステップS172で、装置20は、サーバ40にアクセスしてリンク情報を参照することにより、次の機能が次の装置にリンク設定されているか否かを判定する。
【0127】
ステップS170で次の装置の電源がオンしていないと判定した場合及びステップS172で次の機能が次の装置にリンク設定されていないと判定した場合、装置20はサーバ40に判定結果を通知する。サーバ40は判定結果の通知を受けると、ステップS174で、サーバ40は端末30へ迂回路作成を示唆する。端末30が工程管理者へサーバからの示唆を伝える。これにより、工程管理者は必要な場合に迂回路を作成することができる。
【0128】
ステップS172でリンク設定されていると判定した場合及びステップS714で迂回路作成が示唆されてから迂回路作成に十分な時間が経過した後、ステップS176で、装置20は機能フロー管理情報を含む引継ぎデータを次の装置へ送信する。装置20のオペレータは加工済み部品を次の装置20へ搬送する。ステップS178で、装置20は、データ送信が成功したか否かを判定する。データ送信が失敗したと判定した場合、処理はステップS174に戻り、サーバ40により迂回路作成が端末30に示唆される。
【0129】
図43は、1機能フローの処理が完了したときのフローチャートの一例である。
【0130】
ステップS202で、装置20は端末30へ1機能フローの処理の完了を通知する。ステップS204で、端末30は、サーバ40にアクセスしてリンク情報を参照することにより、処理が完了した機能フロー(処理完了機能フロー)に含まれる機能とリンクされている装置20を検出し、それらの装置20が処理完了機能フローに含まれない他機能とのリンク状態を確認する。
【0131】
ステップS206で、端末30は、処理完了機能フローに含まれる機能とリンクされている装置20が処理完了機能フローに含まれない他機能とリンクされているか否か判定する。処理完了機能フローに含まれる機能とリンクされている装置20が処理完了機能フローに含まれない他機能とリンクされていないと判定すると、ステップS208で、端末30は、処理完了機能フローに含まれる機能とリンクされている装置20のリンク解除日時に現在日時を入力し、リンク情報を更新する。端末30は、リンク情報に基づきリンクテーブルを表示する。
【0132】
リンクテーブルを見た工程管理者は、ステップS210で、リンクテーブルにどの装置ともリンクされていない機能欄がある場合、その機能欄を削除するか否かを決定し、端末30に決定結果を入力する。工程管理者が、どの装置ともリンクされていない機能欄を削除すると決定した場合、ステップS212で、端末30は、どの装置ともリンクされていない機能欄を削除して、リンク情報を更新する。
【0133】
図44、
図45は迂回路形成処理の一例を示すフローチャートである。
【0134】
ステップS232で、工程管理者は、端末30を操作してサーバ40にメニュー表示を要求する。ステップS234で、端末30は、サーバ40から送信されるメニューを表示する。メニューは、端末30で実行できる種々の処理のアイコン、例えば迂回路作成を含む。ステップS236で、工程管理者は、メニューの中の迂回路作成アイコンを選択する。この選択結果はサーバ40に送信され、ステップS238で、端末30は、この選択結果に応じてサーバ40から送信される機能マップを表示する。ステップS240で、工程管理者は、
図18や
図19等に示すように、機能マップ上で代替機能を設定する。ステップS242で、端末30は、設定された代替機能の情報をサーバ40に送信する。ステップS244で、端末30は、サーバ40から送信される「設定された代替機能を実現する装置20(制御プログラムはインストール済み)」の推奨候補を表示する。
【0135】
ステップS246で、工程管理者は、推奨候補に同意するか否かを決定し、決定結果を端末30に入力する。推奨候補に同意した場合、ステップS247で、サーバ40は、選択された機能を推奨候補の装置20に割り当て、リンク情報を更新する。推奨候補に同意しない場合、ステップS248で、端末30は、サーバ40から送信されるドメインマップを、例えば
図21に示すような態様で表示する。ステップS250で、工程管理者は、ドメインマップ内で「設定された代替機能を実現する装置20」を選択する。ステップS252で、端末30は、選択された装置20の情報をサーバ40へ送信する。ステップS254で、サーバ40は、設定された機能を選択された装置20へ割り当て、リンク情報を更新し、選択された装置20に制御プログラムをインストールさせる。
【0136】
ステップS247又はS254の次に実行されるステップS256で、端末30は、代替機能を含む機能フロー情報をオリジナルの機能フローに含まれる全ての装置20へ送信するようにサーバ40に依頼し、データがサーバ40から装置20へ送信される。ステップS258で、データを受信した全ての装置20は受信完了の信号を端末30へ送信する。ステップS260で、端末30は、全ての装置20から受信完了の信号を受信したか否かを判定する。少なくとも1つの装置20から受信完了の信号を受信していないと判定した場合、ステップS256が繰り返される。
【0137】
第1実施形態によれば、機能フロー情報とリンク情報を用いて工程管理がなされるので、多数の装置が効率よく使用され、工程管理が簡単に変更される。
【0138】
実施形態では、複数の異なる機能が互いに連携して処理される統合処理が実現される。統合処理においては、複数の異なる装置が複数の異なる機能を分担する。1つの装置が担当する機能の処理を終了すると、その処理結果を示す引継ぎデータを次の機能を担当する装置にネットワークを介して送信する。機能の達成手段として特定のハードウェアからなる装置が用いられても良いし、パーソナルコンピュータなどの汎用の装置にインストールされたプログラムが用いられても良い。実施形態では、機能と装置との関係は自由に変更可能である。そのため、システムの適応における迅速化やシステム内での構成要素毎の自律動作が容易である。
【0139】
[第2実施形態]
第1実施形態は、製造システムに応用された制御システムの例を説明したが、制御システムの第2実施形態として、社会インフラストラクチャの管理、ここではビル管理システムを説明する。
図46は、ビル管理システムにおける機能フローの一例を示す。機能層は、ビルの所定領域の照度検出機能182a、ビルの所定領域の照明制御機能182b、ビルの所定領域の温度制御機能182c、ビルの所定領域の温度検出機能182d、集中制御機能182eからなる機能フローを管理する。
【0140】
第1実施形態では、複数の機能が実現される順番に直列に接続されていたが、第2実施形態では、複数の機能は1つの集中制御機能に接続され、複数の機能は互いには接続されていない。照度検出機能182aで検出された照度データは集中制御機能182eに送信される。集中制御機能182eからの照度制御データは照明制御機能182bに送信される。温度検出機能182dで検出された温度データは集中制御機能182eに送信される。集中制御機能182eからの温度制御データは温度制御機能182cに送信される。
【0141】
機能フローの各機能は装置層の各装置にリンク設定されており、リンク設定の状態はリンク情報で管理されている。リンク設定の一例では、照度検出機能182aは照度センサ184aに割り当てられ、照明制御機能182bは蛍光灯と電源供給部184bに割り当てられ、温度制御機能182cはエアコン184cに割り当てられ、温度検出機能182dは温度センサ184dに割り当てられている。照度センサ184a、蛍光灯と電源供給部184b、エアコン184c、温度センサ184dは
図15の各装置20に対応する。集中制御機能182eは複数の装置20内の専用の装置に割り当てられる。
【0142】
蛍光灯と電源供給部184bが老朽化した場合を想定する。蛍光灯と電源供給部184bが老朽化されたことが検知されると、工程管理者の端末30に検知結果が送信される。これにより、端末30が機能マップを表示すると、蛍光灯と電源供給部184bにリンクされている照明制御機能182bが機能マップ上で他の機能と識別可能に表示される。工程管理者は、照明制御機能182bの代替機能である照明制御機能182b-2を機能マップ上で作成し、集中制御機能182eからの照度制御データが照明制御機能182bに送信されず、代わりに集中制御機能182eからの照度制御データが照明制御機能182b-2に送信されるように機能フロー(機能フロー情報)を変更する。端末30がリンクテーブルを表示すると、工程管理者は、リンクテーブル上で照明制御機能182b-2をLED照明と駆動回路184b-2にリンクさせるようにリンク情報を更新する。
【0143】
図47は、ビル管理システムの動作の一例を示すフローチャートである。各装置20のセンサ26は各装置20が老朽又は故障したかを常時判定し、老朽又は故障を発見すると、ステップS282で、装置20(この場合、蛍光灯と電源供給部184b)はサーバ40に老朽品・故障品の発見を通知する。ステップS284で、サーバ40は、老朽品・故障品の代替品の性能を調査する。代替品の例としては、蛍光灯又はLEDが存在する。ステップS286で、サーバ40は、代替品の性能が現行品と同じか否かを判定する。代替品の性能が現行品と同じであると判定した場合(代替品が蛍光灯の場合)、ステップS306で、代替品の設置作業(現行品を代替品に交換)が行われる。
【0144】
代替品の性能が現行品と同じではないと判定した場合(代替品がLEDの場合)、ステップS288で、サーバ40は、機能マップに現行の機能(照明制御機能182b)を暫定的に残すことを決定する。その後、ステップS290で、代替品(LED照明と駆動回路184b-2)の設置作業が行われる。ステップS292で、サーバ40は、LED照明と駆動回路184b-2に制御プログラムをインストールさせる。その後、ステップS294で、LED照明と駆動回路184b-2の動作確認が行われる。正常動作が確認されない場合、他の代替品があれば、他の代替品についての調査(ステップS284)を行う。他の代替品が無ければ、処理は終了する。
【0145】
正常動作が確認された場合、ステップS296で、老朽品・故障品の撤去作業が行われる。ステップS298で、撤去した老朽品・故障品から制御プログラムがアンインストールされる。ステップS300で、サーバ40は、工程管理者へ機能フローの更新を行わせる。工程管理者は、機能マップ上で照明制御機能182bのアイコンをドラッグ&ドロップして、第2照明制御機能(迂回路)182b-2のアイコンを作成して、機能フロー情報が更新される。更新された機能フロー情報はネットワーク上で公開される。公開された機能フロー情報は他の工程管理者によってさらに更新される場合もある。ステップS302で、サーバ40は、工程管理者へリンク情報の更新を行わせる。工程管理者は、リンクテーブル上で照明制御機能182bから蛍光灯と電源供給部184bへのリンクを解除し、第2照明制御機能182b-2からLED照明と駆動回路184b-2へのリンクを設定し、リンク情報を更新する。更新されたリンクテーブルはネットワーク上で公開される。公開されたリンク情報は他の工程管理者によってさらに更新される場合もある。ステップS304で、サーバ40は、サーバ40へドメインマップの更新を依頼する。更新されたドメインマップもネットワーク上で公開される。公開されたドメインマップも他の工程管理者によってさらに更新される場合もある。
【0146】
第2実施形態によれば、工程管理の概念が施設管理に適用され、機能フローとリンクテーブルを用いて多数の設備が制御されるとともに、工程管理が簡単に変更される。
【0147】
[第3実施形態]
制御システムの第3実施形態としての製造技能基盤システムを説明する。
図48は、本実施形態の製造技能基盤システムの概念を説明するための図である。この製造技能基盤システムを、以下、『デジタル「匠」プラットフォーム』と称する。
【0148】
デジタル「匠」プラットフォームは、たとえば、IoT(Internet of Things)技術とAI(Artificial Intelligence)技術とを融合させて実現するシステムである。デジタル「匠」プラットフォームには、大きく分けて、後述するデジタル「匠」530を作成するフェーズと、デジタル「匠」530を活用するフェーズとが存在する。
【0149】
まず、デジタル「匠」530を作成するフェーズの概要について以下に説明する。
【0150】
デジタル「匠」プラットフォームは、例えば実際の製造ラインJなどのフィジカル空間501における作業員(優れた技能を有する匠510(実在の『匠』と称される作業員)を含む)による作業をサイバー空間上において再現するデジタルツイン502を構築する。製造ラインJは第1実施形態で説明した複数の装置20からなる製造システムである。第1実施形態及び第2実施形態では、機能の実現に際して作業員が装置を操作しなくてもよいが、第3実施形態では作業員が装置を操作することがある。この操作には技能が必要であり、第3実施形態は匠510の技能を活かすシステムに関する。デジタル「匠」プラットフォームは、このデジタルツイン502の構築のために取得されるデータw1の中の匠510による作業に関するデータw2を用いて、フィジカル空間501における匠510による作業をサイバー空間上において再現する「匠」デジタルツイン503を構築する。ここで、匠510の技能は、一般的に「ノウハウ」とも称される可視化されていないものを含む。
【0151】
匠510の技能については、日報やトラブル報告(自然言語による)や音や振動の解析によって導き出すことができる。それに加えて、匠510が五感により把握する状況をセンシングすることで技能のデジタル化が可能である。また、匠510の動きも音声認識・画像認識によって把握でき、その他にもリストバンド等の手段で匠510の動きを把握して匠510の行動を分析することにより、経験を踏まえた匠510の技能を考察できる。つまり、IoTやAIを利用することで、匠510の技能を数値化・形式知化できる。
【0152】
次に、デジタル「匠」530を活用するフェーズを説明する。匠510のような熟練者(熟達者)の技能のデジタル化により、これらの者の技能を継承でき、人材育成を図るとともに、必要に応じて自動化や自律化も行なうことができる。即ち、匠510の経験や暗黙知をデジタル化によって後世に継承できる。このように数値化・形式知化された匠510の技能は情報として匠以外の作業員へ伝達すると、技能情報を伝えられた作業員は、匠と同じような適切なアクションを判断し、かつ適切なアクションを正確・迅速に実行することができる。
【0153】
ここで、フィジカル空間501の情報を、IoTなどを活用して、ほぼリアルタイムでサイバー空間に送り、サイバー空間内にフィジカル空間501の環境を再現することを「デジタルツイン」と称されている。そして、このサイバー空間内で形成されるデジタルツイン502,503を構築する手法については、特定の手法に限定されず、既知の種々の手法を採用し得る。また、デジタルツイン502,503を構築するためのデータの取得において、IoT技術を適用し得る。
【0154】
具体的には、デジタルツイン502,503を構築するためのデータは、例えば、作業員が視たり聴いたり触ったりなど五感によって認識する事象に関する情報、作業員の視線や特定の部位の動きに関する情報、作業員が扱う装置の状態に関する情報または作業員の成果物(生産品に限らず、計画などを含む)に関する情報などである。作業員の視線や特定の部位の動きは、例えば、作業員にセンサを装着して検知してもよいし、カメラによって撮像した作業員の画像から検知してもよい。つまり、デジタルツイン502,503を構築するためのデータの1つは、作業員を撮像した画像であってもよい。また、作業員の視線の動きを画像から検知する場合、その画像を撮像するためのカメラを作業員に装着させるメガネに搭載してもよい。
これらのように、デジタルツイン502,503を構築するためのデータを取得する手法については、特定の手法に限定されず、既知の種々の手法を採用し得る。また、IoT技術の進化に伴って、その手法を変更していくことも可能である。
【0155】
また、デジタルツイン502,503を構築するために取得されるデータには、作業員の入力に属するデータと、作業員の出力に属するデータとが含まれる。例えば、作業員が視たり聴いたり触ったりなど五感によって何らかの事象を認識して何らかの行動を採ったとした場合を考える。その際、作業員が視たり聴いたり触ったりなど五感によって認識した何らかの事象に関する情報が、作業員の入力に属するデータとして取得される。並行して、作業員が採った何らかの行動に関する情報が、作業員の出力に属するデータとして取得される。このように取得される作業員の入力または出力に属するデータには、例えば、生産拠点や個人を識別可能な識別情報などが付加される。この識別情報は、デジタルツイン502のデータの中から(「匠」デジタルツイン503を構築するための)匠510による作業に関するデータを抽出する処理などで利用され得る。
【0156】
なお、
図48においては、説明を判り易くするために、1つの生産拠点(製造ラインJ)に匠510が存在している様子を示しているが、匠510は場所を変えて複数の生産拠点に点在し得る。また、1つの生産拠点に複数の匠510が存在することも考えられる(
図48は、製造ラインJに匠510が1人のみ存在することを示すことを意図していない)。これら複数の匠510は、例えば、「稼働」、「品質」、「生産計画」、「在庫」などの様々な分野や工程において優れた技能を有する者が混在している。もちろん、これらの優れた技能が各々の作業者に由来する場合はあるが、一人で複数の優れた技能を有する作業者の場合もある。
【0157】
「匠」デジタルツイン503上の複数の匠520(520-1,520-2,520-3,…,520-N)は、これら複数の匠510による作業に関するデータの集合体である。デジタル「匠」プラットフォームは、例えば、この「匠」デジタルツイン503上の複数の匠520のデータを学習データとするディープラーニングによって、これら複数の匠510の技能を各々モデル化する。デジタル「匠」530は、このモデル化によって作成されるニューラルネットワーク(「匠」モデル)を使って複数の匠510の技能を流通させるためのモジュールである。デジタル「匠」530を作成することは、実質的には、複数の匠510の技能をモデル化することである。換言すれば、『「匠」モデル』を作成することである。
【0158】
例えば、製造ラインJで作業する匠510の技能をモデル化した「匠」モデル、つまり、デジタル匠530を作成するときを考える。その際、匠510が不在の製造ラインKにおいて作業員が視たり聴いたり触ったりなど五感によって認識した何らかの事象に関する情報(入力)から、匠510ならば採るであろう何らかの行動(出力)を推定し、その推定結果を製造ラインKへ反映させることができる。つまり、デジタル「匠」プラットフォームの制御部(図示せず)を通じてネットワーク上で匠510の技能を示す技能情報w3を流通させることができる。
図33に示すように、管理シェルは、WebAPIやサービスAPIを介して連携できるので、サービスとして管理シェルを介して情報をネットワーク上で流通できる。
【0159】
本実施形態では、機能フロー情報に加えて、匠510(複数の匠510による作業に関するデータの集合体である匠520)の各技能情報w3もアセットとして、管理シェルを用いて管理されている。即ち、管理シェルにより、機能フロー情報及び技能情報w3を標準化された通信インターフェースによりネットワークに接続することができるとともに、アセット同士が通信できる。これにより、製造ラインJ以外のどの製造ライン、例えば製造ラインKにおいても、機能フローに従い、かつ匠の技能情報w3を用いる効率良い製造が可能となる。技能情報w3は装置20の表示部28又は端末30の表示部で表示される。
【0160】
デジタル匠530を作成するにあたり収集する情報、例えば、「稼働」、「品質」、「生産計画」、「在庫」など全ての階層のありとあらゆる「組織にとって価値のあるもの」がアセットとなり得る。その際、設備や機械などの「もの」と紐づけて管理しても構わない。
【0161】
図32に示すように、管理シェル401の機能フローボディ404は多数のサブモデル410A、410B、…から構成され、これらのサブモデル410A、410B、…を介して、アセット412の様々な側面についての記述が可能である。各サブモデル410A、410B、…は、明確に定義された1つの分野(テーマ)を扱い、これらのサブモデルは、階層に分類された多数の属性から構成される。従って、アセット412のデータ(匠510から採取した、デジタル匠530を構成する様々なデジタルデータ)等、アセット412に関するあらゆる情報が属性となり得る。その属性を介してアセット412の情報を提供することができる。複数のサブモデル410A、410B、…を有している管理シェル401を通じて、デジタル匠530をネットワーク上で流通させて利用・活用を図ることもできる。
【0162】
なお、製造ラインKは、匠510が引退後の将来の製造ラインJと捉えることもできる。また、匠510の技能のモデル化においては、AI技術を適用して実現することも可能である。
【0163】
第3実施形態によれば、匠の技能の次世代への継承や、匠の技能の海外への伝達など、匠の技能を時間的にも空間的にも流通させることができる。
【0164】
[第4実施形態]
制御システムの第4実施形態としての資産運用システムを説明する。
図49は資産運用システムの一例を示すブロック図である。
【0165】
複数の装置60-1~60-m1(装置60と総称する場合もある)と、サーバ70-1~70-m3がネットワーク10に接続される。金融取引を行う資産運用者は、装置60を操作してサーバ70と連携し、サーバ70から資産運用のためのデータを受信し、資産運用のための取引を行う。装置60はノートブック型・タブレット型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン等からなる。装置60の各々はコントローラ22、表示部28、入力部29を含む。入力部29はマウス、キーボード等を含む。表示部28は、タッチパネル式の表示・入力装置を備えても良い。サーバ70は金融機関毎に設けられ、機能フロー情報42やリンク情報44を格納する。
【0166】
図50は資産運用システムの概要の一例を示す。資産運用は、機能層と、手段層と、中間層からなる。機能層は機能フローを管理し、手段層は現実の資産を管理する。機能層が備える機能の一例は、銀行口座内預金機能、ネット上国債購入機能、ネット上株券売買機能、仮想通過の売買機能、ネット上為替手続き機能がある。銀行口座内預金機能は現実世界の金融取引であり、それ以外のネット上国債購入機能、ネット上株券売買機能、仮想通過の売買機能、ネット上為替手続き機能はネットワーク上の仮想世界の金融取引である。現実世界の金融取引をしている資産運用者が仮想世界の金融取引に切り替えることは、機能の迂回と見なすことができる。なお、第1、第2実施形態とは異なり、機能を実現する時間的な順番は機能フローには定義されておらず、全ての機能の実現タイミングは資産管理者が適宜切り替える。
【0167】
製造システムでは機能を実現するものは装置と称されるが、金融システムでは機能を実現するものは手段と称される。手段層は、機能層の各機能の実現のために必要な手段を備え、例えば自国通貨、仮想通過、国債証、株券、他国通貨等を備える。そのため、手段層は、上述した装置層に対応した役割を担っていて、装置層としての概念に当てはまるものである。
【0168】
中間層は、第1実施形態、第2実施形態と同様に通信プロトコルとリンク情報を備え、さらに迂回評価部を備える。リンク情報は、銀行口座内預金機能は自国通貨にリンクされ、ネット上国債購入機能は国債証にリンクされ、ネット上株券売買機能は株券にリンクされ、仮想通過の売買機能は仮想通過にリンクされ、ネット上為替手続機能は他国通貨にリンクされていることを定義する。資産管理者が機能層の機能を適宜実現すると、機能にリンクされている手段層内の手段が実行され、金融取引が行われる。
【0169】
各機能には機能の価値に関する属性が設定されている。属性の例は、銀行口座内預金機能については預金利率であり、ネット上国債購入機能については国債利率であり、ネット上株券売買機能については株価であり、仮想通過の売買機能については仮想通貨レートであり、ネット上為替手続機能については為替レートである。
【0170】
迂回評価部は、各機能の実現により得られた金融取引の商品価値を計算する。
図51は、迂回評価部の一例を示す。換算部は、預金利率、国債利率、株価、仮想通貨レート、為替レートを記憶しており、資産管理者が銀行口座に預金すると、預金利率に基づいて預金の価値を計算し、資産管理者がネット上で国債を購入すると、国債利率に基づいて国債の価値を計算し、資産管理者がネット上で株券を購入すると、株価に基づいて株券の価値を計算し、資産管理者が仮想通貨を売買すると、仮想通貨レートに基づいて仮想通貨の売買の価値を計算し、資産管理者がネット上で為替取引を行うと、為替レートに基づいて取引の価値を計算する。換算部は、各取引の価値を計算する際、価値を同一の貨幣価値に換算する。
【0171】
第4実施形態によれば、資産管理者はどのような取引を行うと、資産が最も増えるかを的確に判断することができる。
【0172】
なお、本発明は上記の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0173】
10…ネットワーク、20…装置、22…コントローラ、24…駆動部、26…センサ、28…表示部、30…端末、40…サーバ、42…機能フロー情報、44…リンク情報。