(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】画像処理装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240115BHJP
G06T 15/20 20110101ALI20240115BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G06T15/20 500
(21)【出願番号】P 2019117209
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀憲
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523868(JP,A)
【文献】特開2019-036791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06T 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段による複数の方向からの撮像によって得られた撮像画像の画像データに基づいて生成された
対象物の三次元モデルであって、仮想視点画像の生成に用いられる三次元モデルのデータを取得する取得手段と、
前記三次元モデルのうち、注目対象物の
三次元モデルの位置を示す三次元の座標を検出する検出手段と、
前記
注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち少なくとも1つの成分が固定値になるように前記座標の値を修正する修正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記
複数の成分は、原点からの距離成分、角度成分、および高さを示す成分であり、
前記修正手段は、前記角度成分
が固定値になるように前記座標の値を修正する
ことを特徴とする請求項
1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記修正手段によって前記座標
の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを少なくとも含む2以上の三次元モデルを重畳するモデル重畳手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記修正手段によって前記座標の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを用いて仮想視点画像を生成する生成手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記修正手段によって前記座標
の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを用いて生成された仮想視点画像を少なくとも含む2以上
の仮想視点画像を重畳する重畳手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項
4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記修正手段は、
第1の三次元モデルに対応する第1の注目対象物
の移動方向に関する複数の成分のうち第1の成分と、
前記第1の三次元モデルと前記モデル重畳手段によって重畳される第2の三次元モデルに対応する第2の注目対象物の
移動方向に関する前記第1の成分と
が同じ固定値に
なるように、前記第1の注目対象物及び前記第2の注目対象物の座標の値を修正する
、ことを特徴とする請求項
3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記修正手段は、
第1の仮想視点画像に含まれる第1の注目対象物
の移動方向に関する複数の成分のうち第1の成分と、
前記第1の仮想視点画像と前記重畳手段によって重畳される第2の仮想視点画像に含まれる第2の注目対象物の前記第1の成分と
が同じ固定値になるように、前記第1の注目対象物及び前記第2の注目対象物の座標の値を修正する
、ことを特徴とする請求項
5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記座標の値の修正方法を指定する方法指定手段をさらに有し、
前記方法指定手段は、複数フレームにより構成される前記仮想視点画像に含まれる、前記複数フレームそれぞれの前記注目対象物の前記座標の
値の修正方法については同一の修正方法を指定する
ことを特徴とする請求項1
乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記
複数の成分は時間によって変化する
成分であり、
前記修正手段は、それぞれの時間における前記注目対象物の前記座標
の値を修正する
ことを特徴とする請求項1
乃至8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
撮像手段による複数の方向からの撮像によって得られた撮像画像の画像データに基づいて生成された
対象物の三次元モデルであって、仮想視点画像の生成に用いられる前記三次元モデルのデータを取得する取得ステップと、
前記三次元モデルのうち、注目対象物の
三次元モデルの位置を示す三次元の座標を検出する検出ステップと、
前記
注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち少なくとも1つの成分が固定値になるように前記座標の値を修正する修正ステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1
乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
撮像手段による複数の方向からの撮像によって得られた撮像画像の画像データに基づいて生成された対象物の三次元モデルであって、仮想視点画像の生成に用いられる三次元モデルのデータを取得する取得手段と、
前記三次元モデルのうち、注目対象物の三次元モデルの位置を示す三次元の座標を検出する検出手段と、
前記注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち少なくとも1つの成分に関する前記座標の値を修正する修正手段と、
前記修正手段によって前記座標の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを少なくとも含む2以上の三次元モデルを重畳するモデル重畳手段とを有し、
前記修正手段は、第1の三次元モデルに対応する第1の注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち第1の成分に関する前記座標を、前記第1の三次元モデルと前記モデル重畳手段によって重畳される第2の三次元モデルに対応する第2の注目対象物の移動方向に関する前記第1の成分に基づいて、修正する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
撮像手段による複数の方向からの撮像によって得られた撮像画像の画像データに基づいて生成された対象物の三次元モデルであって、仮想視点画像の生成に用いられる三次元モデルのデータを取得する取得ステップと、
前記三次元モデルのうち、注目対象物の三次元モデルの位置を示す三次元の座標を検出する検出ステップと、
前記注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち少なくとも1つの成分に関する前記座標の値を修正する修正ステップと、
前記修正ステップによって前記座標の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを少なくとも含む2以上の三次元モデルを重畳するモデル重畳ステップとを有し、
前記修正ステップでは、第1の三次元モデルに対応する第1の注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち第1の成分に関する前記座標を、前記第1の三次元モデルと前記モデル重畳ステップによって重畳される第2の三次元モデルに対応する第2の注目対象物の移動方向に関する前記第1の成分に基づいて、修正する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
撮像手段による複数の方向からの撮像によって得られた撮像画像の画像データに基づいて生成された対象物の三次元モデルであって、仮想視点画像の生成に用いられる三次元モデルのデータを取得する取得手段と、
前記三次元モデルのうち、注目対象物の三次元モデルの位置を示す三次元の座標を検出する検出手段と、
前記注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち少なくとも1つの成分に関する前記座標の値を修正する修正手段と、
前記修正手段によって前記座標の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを用いて仮想視点画像を生成する生成手段と、
前記修正手段によって前記座標の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを用いて生成された仮想視点画像を少なくとも含む2以上の仮想視点画像を重畳する重畳手段とを有し、
前記修正手段は、第1の三次元モデルに対応する第1の注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち第1の成分に関する前記座標を、前記第1の三次元モデルと前記重畳手段によって重畳される第2の三次元モデルに対応する第2の注目対象物の移動方向に関する前記第1の成分に基づいて、修正する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項15】
撮像手段による複数の方向からの撮像によって得られた撮像画像の画像データに基づいて生成された対象物の三次元モデルであって、仮想視点画像の生成に用いられる三次元モデルのデータを取得する取得ステップと、
前記三次元モデルのうち、注目対象物の三次元モデルの位置を示す三次元の座標を検出する検出ステップと、
前記注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち少なくとも1つの成分に関する前記座標の値を修正する修正ステップと、
前記修正ステップによって前記座標の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを用いて仮想視点画像を生成する生成ステップと、
前記修正ステップによって前記座標の値が修正された前記注目対象物の三次元モデルを用いて生成された仮想視点画像を少なくとも含む2以上の仮想視点画像を重畳する重畳ステップとを有し、
前記修正ステップでは、第1の三次元モデルに対応する第1の注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち第1の成分に関する前記座標を、前記第1の三次元モデルと前記重畳ステップによって重畳される第2の三次元モデルに対応する第2の注目対象物の移動方向に関する前記第1の成分に基づいて、修正する
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オブジェクトの座標情報を処理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のカメラを異なる位置に設置して複数視点で同期撮像し、その撮像により得られた複数視点画像を用いて三次元モデルを生成し、三次元モデルのデータを基に仮想視点画像を生成する技術がある。
【0003】
一方、二つの画像を重畳表示して効果的に視聴者に提供する技術として、特許文献1には、あらかじめ蓄積した過去の競技映像を現在の競技映像に重ね合わせて表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仮想視点画像をより効果的に視聴者に提供するための方法の一つとして、二つの仮想視点画像を重畳して表示させる方法が考えられる。例えば、陸上の投てき競技における複数の試技の仮想視点画像を重畳表示することで、複数の試技の比較を容易にすることができる。ここで、陸上の投てき競技において視聴者が注目するのは投てき物のような注目対象物の飛距離である。つまり、注目対象物の移動に関して、視聴者が注目する方向(注目方向)は、主に注目対象物の飛距離の測定方向である。しかしながら、仮想視点画像における注目対象物の移動方向の成分には注目方向の成分以外の成分が含まれることがある。このため、例えば、比較のために、投てき競技の二つの異なる試技の仮想視点画像を重畳して表示させても、視聴者がそれぞれの試技の注目対象物の注目方向における動きを比較するのが難しくなることがある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑み、注目対象物の動きを効果的に示すための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係わる画像処理装置は、撮像手段による複数の方向からの撮像によって得られた撮像画像の画像データに基づいて生成された対象物の三次元モデルであって、仮想視点画像の生成に用いられる三次元モデルのデータを取得する取得手段と、前記三次元モデルのうち、注目対象物の三次元モデルの位置を示す三次元の座標を検出する検出手段と、前記注目対象物の移動方向に関する複数の成分のうち少なくとも1つの成分が固定値になるように前記座標の値を修正する修正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、注目対象物の動きを効果的に示すための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図10】修正処理前後の注目対象物の軌跡を示す図。
【
図11】画像処理装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。以下の実施形態の説明では、陸上の投てき競技を撮像対象として説明するが、これに限定されるものではなく、ある空間内を移動する物体に注目する任意のケースに対し適用可能である。
【0011】
また、以下の実施形態では、参照符号において番号の後ろに付与したアルファベットのみが異なる用語については、同一機能を持つ装置の別インスタンスを示すものとする。例えば、カメラ102Aとカメラ102Bは同一の機能を持つ別インスタンスを示している。なお、同一の機能を持つとは、少なくとも特定の機能(撮像機能など)を有することを指すものであり、例えばカメラ102Aとカメラ102Bが有する機能及び性能の一部が異なっていてもよい。
【0012】
<実施形態1>
はじめに、仮想視点画像の概要を簡単に説明する。複数のカメラを異なる位置に設置して複数視点で同期撮像し、その撮像により得られた複数視点画像を用いて、実在しないカメラの視点から見た仮想視点画像を生成する技術がある。この技術によれば、例えば、陸上競技のハイライトシーンを様々な角度から視聴閲覧することが出来るため、通常の画像と比較してユーザに高臨場感を与えることができる。なお、仮想視点画像は、動画であっても、静止画であってもよい。以下の実施形態では、仮想視点画像は動画であるものとして説明を行う。
【0013】
本実施形態では、仮想視点画像の生成に用いられる三次元モデルに含まれる注目対象物の移動方向の特定の成分を修正する例を説明する。注目対象物は、例えば、陸上の投てき競技における投てき物のようなオブジェクトである。注目対象物の座標変化のうち特定の方向の成分を修正することで、視聴者が注目する方向における注目対象物の移動を視聴者が比較しやすくすることができる。
【0014】
[システム構成]
図1は、仮想視点画像を生成するシステム100の一例を示す図である。システム100は、競技場を撮像対象とした撮像対象フィールド101の周囲に配置されている撮像手段であるカメラ102A~102Lと、画像処理装置200とを有する。
【0015】
カメラ102は、注目対象物が存在する撮像対象フィールド101を撮像し、撮像画像を生成する撮像手段である。この撮像画像は、三次元モデル生成のために用いる画像であるため、撮像対象フィールド101における複数の異なる位置から撮像した画像である。システム100は複数のカメラを有する。カメラ102は、データ伝送のための入出力ハードウェアを備えている。カメラ102同士は例えばネットワークケーブルを使ってリング型の接続(不図示)がされており、ネットワークを介して隣のカメラへ画像を順次伝送するように構成されている。カメラ102のうちの一つは画像処理装置200に接続されている。カメラ102と画像処理装置200との接続は、例えば映像信号そのものを伝送するSDIケーブルでもよいし、撮像画像を画像データとしてネットワーク伝送するためのEthernetケーブルまたは無線LAN接続でもよい。SDIはSerial Digital Interfaceの略称であり、LANはLocal Area Networkの略称である。
【0016】
[ハードウェア構成]
図2は、本実施形態における画像処理装置200のハードウェア構成の一例を示す図である。本実施形態の画像処理装置200は、CPU201、ROM202、RAM203、補助記憶装置204、表示部205、操作部206、通信I/F207、及びバス208を有する。
【0017】
CPU201は、RAM203をワークメモリとして、ROM202に格納されたプログラムを実行し、画像処理装置200の各構成部を統括的に制御するプロセッサである。
CPU201は、画像処理装置200の全体を制御することで、
図3に示す画像処理装置200の各部を実現する。なお、画像処理装置200は、CPU201とは異なる1又は複数の専用のハードウェアあるいはGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。そしてCPU201による処理の少なくとも一部を専用のハードウェアが実行してもよい。専用のハードウェアの例としては、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、およびDSP(デジタルシグナルプロセッサ)などがある。
【0018】
ROM202は、変更を必要としないプログラムなどを格納する。またROM202は、後述する座標を変更する上で必要なデータを格納する。例えば、座標の変更方法を示すデータを格納する。
【0019】
RAM203は、ROM202または補助記憶装置204から供給されるプログラム、データ、及び通信I/F207を介して外部から供給されるデータなどを一時記憶する。
【0020】
補助記憶装置204は、例えばハードディスクドライブ等で構成され、画像データや音声データなどの種々のデータを記憶する。
【0021】
表示部205は、例えば液晶ディスプレイやLED等であり、ユーザが画像処理装置200を操作するためのGUI(Graphical User Interface)などを表示する。操作部206は、例えばキーボードやマウス、ジョイスティック、タッチパネル等であり、ユーザによる操作を受けて各種の指示をCPU201に入力する。
【0022】
通信I/F207は、画像処理装置200の外部の装置との通信に用いられる。例えば、画像処理装置200が外部の装置と有線で接続される場合には、通信用のケーブルが通信I/F207に接続される。画像処理装置200が外部の装置と無線通信する機能を有する場合には、通信I/F207はアンテナを備える。バス208は、画像処理装置200の各部をつないで情報を伝達する。
【0023】
本実施形態では、画像処理装置200は表示部205と操作部206とを有するものとして説明するが、表示部205と操作部206との少なくとも一方は画像処理装置200の外部に別の装置として存在していてもよい。CPU201は表示部205を制御する表示制御部、及び操作部206を制御する操作制御部として動作してもよい。
【0024】
[機能構成]
図3は本実施形態における画像処理装置200の機能構成を示す図である。本実施形態の画像処理装置200は、三次元モデル生成部301と、座標検出部302と、 座標修正部305と、修正座標決定部304と、修正方法指定部303と、仮想視点画像生成部306と、を有する。
【0025】
三次元モデル生成部301は、カメラ102が撮像して生成した撮像画像の画像データを取得し、仮想視点画像を生成するための三次元モデルを生成する。画像データの取得方法はカメラ102からの入力に限らない。他にも例えば、三次元モデル生成部301は、任意の記憶装置に予め記憶されている動画データまたは画像データを三次元モデル生成のために用いてもよい。三次元モデル生成部301は、生成した三次元モデルを座標検出部302および座標修正部305に出力する。
【0026】
本実施形態では三次元モデルの生成方法については特に限定しないが、ここで一例として視体積交差法による三次元モデルの生成方法について説明する。視体積交差法では、まず三次元モデルの生成対象の三次元空間にボクセル(Voxel)と呼ばれる単位体積の直方体を敷き詰める。そして、各カメラの撮像画像により抽出された注目対象の前景シルエットを各カメラの撮像範囲のボクセル群に投影し、前景シルエットから外れるボクセルを削り落とす。この処理を全カメラについて行うことで、三次元モデルを生成する。また、同時に各カメラの前景シルエットに含まれる画像情報をテクスチャ画像として生成された三次元モデルに貼り付けることで三次元モデルの着色を行う。前景シルエットの抽出方法の一例としては背景差分法がある。背景差分法では、ある期間内の撮像画像を取得し、画素値の変化が閾値以内である画素情報により背景画像を生成する。そして背景画像と撮像画像を比較することで前景シルエットを抽出する。なお、本実施形態では三次元モデルをボクセルとして表すがこれに限られない。他にも例えば、三次元空間を構成する要素として点を用いて、三次元モデルを点群で表してもよい。
【0027】
座標検出部302は、三次元モデルの注目対象物の座標を検出する。注目対象物は、三次元モデル内に複数のボクセルの集合として存在する。座標検出部302は、検出した注目対象物の座標を修正座標決定部304に対して出力する。
【0028】
注目対象物の座標を検出するためには、1つまた複数のオブジェクトを含む三次元モデルから注目対象物であるオブジェクトを抽出する。注目対象物の抽出手法については特に限定しない。例えば一例として、注目対象物の特徴量をあらかじめ抽出して複数のパターンを作成しておき、パターンマッチングによって画像内から注目対象物を抽出する手法がある。この手法を用いる場合は三次元モデル生成時の各カメラの撮像画像から注目対象物を抽出する方がより好適に注目対象物を抽出することが可能である。また、別の方法として、注目対象物が時間経過により連続した座標となることを利用したトラッキングによる方法を用いてもよい。
【0029】
修正方法指定部303は、注目対象物の座標の成分の修正方法を指定する。即ち、注目対象物を構成するボクセル群の座標を修正する方法を指定する。注目対象物の座標および座標の修正方法については後述する。
【0030】
修正座標決定部304は、注目対象物の座標および修正方法に基づき、三次元モデル空間内で注目対象物を構成するボクセル群の座標の修正値を算出し、修正後の座標を決定する。修正座標決定部304が決定した修正後の座標は座標修正部305に出力される。
【0031】
座標修正部305は、三次元モデルおよび注目対象物の修正後の座標に基づき、三次元モデル空間内で注目対象物を構成するボクセル群の位置変化を示す座標の成分値を修正して、位置を変更する。座標修正部305は、座標が修正された注目対象物を含む三次元モデルを仮想視点画像生成部306に出力する。
【0032】
仮想視点画像生成部306は、位置座標が変更された注目対象物を含む三次元モデルに基づき仮想視点画像を生成する。仮想視点画像の生成方法については特に限定しないが、例えばレイトレーシング法により、三次元モデル空間内のある仮想視点から三次元モデルを撮像することを模擬することにより生成する方法を用いてよい。また、仮想視点の位置は、不図示の仮想視点位置指示入力により三次元モデル空間内の任意の位置に移動できるものとする。
【0033】
なお、本実施形態では三次元モデルの生成は、画像処理装置200の三次元モデル生成部301によって行われる。他にも画像処理装置200は、他の画像処理装置によって生成された三次元モデルを取得し、その三次元モデルの位置座標を修正する形態でもよい。
【0034】
また、本実施形態では仮想視点画像の生成は、画像処理装置200の仮想視点画像生成部306によって行われるものとして説明するが、仮想視点画像生成部と同様の機能が含まれる他の画像処理装置によって行われてもよい。
【0035】
[注目対象物の位置の座標]
図4は、陸上競技の投てき競技を撮像した撮像対象空間401に対して円筒座標系を適用して、注目対象物402の位置の座標404を表現する方法を説明するための図である。
【0036】
注目対象物402は、投てき競技における投てき物(円盤)である。また、本実施形態では、注目対象物の位置の座標404を表すために、距離成分(動径成分)、角度成分、高さ成分で表される円筒座標系を適用する。陸上競技の投てき競技を撮像した撮像対象空間401に対して円筒座標系を適用した場合、原点は、選手が投てきを行うサークルの中心403である。距離成分405は、原点を起点として投てき競技の飛距離の測定方向の成分である。角度成分406は、フィールドの有効区域を形成するラインの右側を基準として反時計まわり方向の角度成分である。高さ成分407は、投てき競技のフィールドが存在する平面を基準としてその上面への長さ方向の成分である。
【0037】
この座標系において、例えば
図4に示した注目対象物402の位置の座標404は、距離成分405の値はr(t)、角度成分406の値はθ(t)、高さ成分407の値はz(t)である。このように、夫々の成分は時間tにより一意に決まる値として表現することが出来る。即ち、注目対象物の時間tにおける座標p(t)は、式1のように示すことが出来る。
【0038】
【0039】
注目対象物402の座標404は、注目対象物402を構成するボクセルの幾何平均値を求めることにより算出する。なお、注目対象物402の座標404の算出方法はこれに限るものではなく、例えば構成ボクセルの内、原点からのユークリッド距離が最大となるボクセルの座標を採用する方法も用いてもよい。
【0040】
図5は、
図4で示した円筒座標系が適用された投てき競技の撮像対象空間401の、z=0における平面を示す図である。
図5の平面に注目対象物である投てき物の移動の軌跡が投影されている。
【0041】
図5(a)が示す注目対象物Aの軌跡および
図5(b)が示す注目対象物Bの軌跡は異なる投てき競技における試技の注目対象物の軌跡を示している。
図5に示すように、異なる試技において、それぞれの注目対象物の軌跡の方向が大きく異なると、視聴者は、注目する中心からの距離成分405の大きさを視覚的に比較することが難しくなる。そこで、本実施形態は、投てき物の座標における距離成分405のような視聴者が注目する座標成分(注目方向の成分)を比較し易くなるように注目対象物の位置座標の修正を行う形態を説明する。
【0042】
[フローチャート]
図6は、注目対象物の移動方向の成分を修正する一連の処理を示すフローチャートである。
図6のフローチャートで示される一連の処理は、CPUがROMに記憶されているプログラムコードをRAMに展開し実行することにより行われる。また、
図6におけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路等のハードウェアで実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味し、以後のフローチャートにおいても同様とする。
【0043】
S601において修正方法指定部303は、注目対象物の座標の修正方法の指定を行う。修正方法は、例えば、ユーザが指示した修正方法が指定される。複数のフレームにより構成される仮想視点画像のように、生成される仮想視点画像が動画である場合がある。この場合、修正方法指定部303は、一連の複数フレーム画像のそれぞれに含まれる注目対象物の座標の修正方法には、同一の修正方法を適用する。一連の複数フレームにより構成される仮想視点画像(仮想視点映像)は、例えば、投てき競技において、注目対象物である投てき物が投げられる瞬間から、投てき物がフィールド上に着地する瞬間までの動画のことである。
【0044】
本実施形態で指定される修正方法は、注目対象物の位置の座標p(t)のうちの少なくとも1つの成分を固定値とする方法である。詳細は後述する。
【0045】
S602では、指定された修正方法を用いて注目対象物の座標を修正し、仮想視点画像を生成する処理をする。
図6(b)は本実施形態におけるS602の処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0046】
S603において三次元モデル生成部301は、カメラ102の撮像によって生成された撮像画像の画像データを取得する。S604において三次元モデル生成部301は、S603において取得された画像データに基づき三次元モデルを生成する。なお、他の画像処理装置で生成された三次元モデルの注目対象物の座標を修正する場合は、S603およびS604の代わりに修正する三次元モデルが取得される。
【0047】
S605において座標検出部302は、三次元モデルに含まれる注目対象物の位置の座標を、式1に示すように円筒座標系によって検出する。
【0048】
S606において修正座標決定部304は、S601において指定された修正方法に基づき注目対象物の座標の修正値を算出して決定する。本実施形態の修正座標決定部304は、座標p(t)を構成する3つ成分の内の注目方向の成分以外の成分を固定値とする。注目方向の成分をどの成分とするかは、例えば修正座標決定部304が受け付けたユーザ操作に基づいて指定する。ただし注目方向の成分の指定方法はこれに限定されない。
【0049】
投てき競技を例に説明すると、注目対象物である投てき物の位置を示す座標p(t)のうち注目方向の成分は、距離成分405および高さ成分407である。この場合、注目成分以外の成分である角度成分406は、視聴者にとって注目対象物の注目方向の成分を比較する妨げとなる。このため、投てき競技では角度成分406の値θ(t)を、時間tによって変化する値ではなく、時間tに関らず一定の値である固定値θ0に修正する。θ0は、例えば、有効フィールドの中心を示す角度とする。修正後の時間tにおける注目対象物の座標は式2に示すp’(t)となる。
【0050】
【0051】
なお、本実施形態では、角度成分406を固定値するものとして説明するが、固定値にする成分は角度成分406に限られない。また、本実施形態では位置の座標の3つの成分のうちの1つを修正するが、2つの成分を修正してもよい。
【0052】
S607において座標修正部305は、注目対象物の座標の修正を行う。本ステップではS606で求められた式2の座標p’(t)を用いて、時間tにおける注目対象物を構成するボクセル群の三次元モデルにおける空間内の位置の座標を修正する。p’(t)はボクセル群の幾何平均による座標を示すものであるため、幾何平均座標からの相対位置により各ボクセルの座標修正後の座標が決まる。
【0053】
複数フレームにより構成される一連の画像から得られた三次元モデルにおいては、座標の修正方法は、一連の複数フレームに対し同一の修正方法が適用される。動画の仮想視点画像を生成する場合、座標修正部305は指定された修正方法によって、フレーム単位で注目対象物の座標の修正を行う。即ち、フレームのそれぞれの時間に応じた座標p(t)をp’(t)に修正される。こうして、注目対象物を構成するボクセル群の三次元モデル空間の移動方向のうち、視聴者が注目方向の成分を比較しやすくなるように座標が修正されることになる。
【0054】
図7は、座標の修正が行われる前の注目対象物の軌跡と、本ステップによって座標が修正された後の注目対象物の軌跡と、を円筒座標のz=0の平面に投影して示した図である。
図7(a)は、
図5(a)で示した注目対象物Aの座標が修正された結果を示す図であり、
図7(b)は、
図5(b)で示した注目対象物Bの座標が修正された結果を示す図である。
【0055】
図7(a)における修正される前の注目対象物Aの位置の軌跡501は、投てきを行った瞬間である時間t0の座標705から、時間t1の座標502、時間t2の座標503を経由して、着地の瞬間である時間t3の座標504まで移動を示す。この注目対象物Aの軌跡を示す座標について、角度成分406の値を有効フィールドの中心になるθ
0に修正した後の軌跡が、軌跡701である。時間t0における注目対象物Aの座標の距離成分405はr(t0)=0であるため修正前後で位置は変わらない。時間t1における座標502は座標702に、時間t2における座標503は座標703に、時間t3における座標504は座標704にそれぞれ修正されている。
図7(b)に示す注目対象物Bついても同様である。この座標が修正された注目対象物を有する三次元モデルを用いることで、注目対象物が注目方向以外の方向成分は時間tによって変化しないで移動する仮想視点画像を生成することができる。
【0056】
S608において仮想視点画像生成部306は、位置が修正された注目対象物を含む三次元モデルを用いて仮想視点画像を生成する。生成された仮想視点画像は、画像処理装置の不図示の表示制御部によって、表示部205または画像処理装置200の外部にある他の表示装置に表示される。
【0057】
以上説明したように本実施形態によれば、視聴者が注目対象物の注目方向の成分の比較が容易となるような三次元モデルを生成することが出来る。このため、三次元モデルを用いて仮想視点画像を生成することにより、視聴者が、それぞれの仮想視点画像に含まれる注目対象物の注目方向を比較することが容易にすることができる。
【0058】
<実施形態2>
実施形態2では、2つの仮想視点画像それぞれに存在する注目対象物の注目方向以外の座標成分を同じ固定値に変更し、重畳して表示する形態について説明する。本実施形態については、実施形態1からの差分を中心に説明する。特に明記しない部分については実施形態1と同じ構成および処理である。
【0059】
図8は、本実施形態における画像処理装置800の機能構成を示すブロック図である。実施形態1と同一の処理ブロックについては同じ番号を付して説明を省略する。本実施形態の画像処理装置800は、重畳部801を有する。重畳部801は、生成された複数の仮想視点画像を重畳する処理を行う。
【0060】
重畳されるそれぞれの仮想視点画像の三次元モデル空間は、その座標系が合うように生成される。例えば、投てき競技を例に説明すると、重畳されるそれぞれの仮想視点画像の三次元モデル空間の座標系は、
図4に示した円筒座標系を用いて同一の軸設定が行われる。つまり、それぞれ三次元モデル空間のサークルの中心403がそれぞれの座標系の原点として設定される。そして角度成分406は、フィールドの有効区域を形成するラインの右側を基準として反時計まわり方向の成分とする。距離成分405は原点からフィールドが存在する平面と平行な方向の成分とし、高さ成分407は、フィールドが存在する平面を基準としてその上面方向の成分となるようにそれぞれの座標軸を設定する。重畳されるそれぞれの仮想視点画像の三次元モデル空間の座標系が同じように設定されるため、座標の修正方法について、重畳される仮想視点画像の三次元モデルに共通した方法を用いることができる。
【0061】
また、重畳される仮想視点画像が一連の仮想視点画像で構成される動画である場合、その重畳される仮想視点画像のスタートタイミングを合わせておくものとする。例えば、投てき競技の場合は、仮想視点画像生成部306は投てき物が競技者から離れたタイミングをスタートタイミングとするように重畳されるそれぞれの仮想視点画像を生成する。これにより、2つの一連の仮想視点画像を重畳することによる比較効果が得られる。
【0062】
重畳部801が2つの仮想視点画像を重畳する場合、画像処理装置200と同一の機能を有する複数の画像処理装置でそれぞれ、重畳される仮想視点画像を生成し、画像処理装置800が2つの仮想視点画像を取得して重畳してもよい。2つの仮想視点画像を比較することを目的として重畳処理する場合は、2つの仮想視点画像は同一の仮想視点から見た仮想視点画像である。この場合は、仮想視点画像を生成するそれぞれの画像処理装置が指示する仮想視点の位置および向きは、同一の位置および向きとなるように指示される。
【0063】
図9は、仮想視点画像を生成して仮想視点画像を重畳処理するまでの本実施形態における一連の処理を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、注目対象物Aを含む三次元モデルを用いて仮想視点画像Aを生成し、注目対象物Bを含む三次元モデルを用いて仮想視点画像Bを生成する。そして、仮想視点画像Aと仮想視点画像Bとを重畳する場合について説明する。また、本実施形態においても撮像対象は投てき競技であるものとして説明する。
【0064】
S901はS601と同様の処理であり、修正方法指定部303は、注目対象物の座標の修正方法を指定する。本実施形態では、以後のステップによって仮想視点画像が2つ生成され、2つの仮想視点画像を重畳する処理が行われる。このため、一方の仮想視点画像Aに含まれる注目対象物Aと、他方の仮想視点画像Bに含まれる注目対象物Bのそれぞれの座標の修正方法を修正方法指定部303は指定する。修正方法指定部303は、注目対象物Aの修正方法と注目対象物Bの修正方法を同一の方法に指定する。
【0065】
また、本実施形態で指定される修正方法は、実施形態1と同様に注目対象物の位置の座標の成分のうち角度成分406を固定値θ0とする方法を指定するものとして説明する。
【0066】
S902は、注目対象物Aを含む三次元モデルを生成し、その三次元モデルに基づき仮想視点画像Aを生成するステップである。処理の詳細は、
図6(b)の処理と同一である。S902では座標検出部302は、注目対象物Aの位置の座標を検出する。時間tにおける注目対象物Aの座標p
A(t)は式3のように示すことができる。なお、時間tは、注目対象物Bを含む三次元モデルとスタートタイミングを合わせたあとの時間である。
【0067】
【0068】
そして、修正座標決定部304は、S901において指定された修正方法に基づき、角度成分θA(t)を固定値θ0に置き換えて、注目対象物Aの座標の修正値を決定する。修正後の注目対象物Aの座標は式4に示すp’A(t)となる。
【0069】
【0070】
座標修正部305は式4の座標pA’(t)を用いて、時間tにおける注目対象物Aの三次元モデル空間内の位置の座標を修正する。仮想視点画像生成部306は、位置が修正された注目対象物Aを含む三次元モデルを用いて仮想視点画像Aを生成する。
【0071】
S903は、注目対象物Bを含む三次元モデルを生成し、その三次元モデルに基づき仮想視点画像Bを生成するステップである。処理の詳細は、
図6(b)の処理と同一である。S903では座標検出部302は、注目対象物Bの位置の座標を検出する。時間tにおける注目対象物Bの座標p
B(t)は式5のように示すことができる。
【0072】
【0073】
修正座標決定部304は、S901において指定された修正方法に基づき角度成分θB(t)を固定値θ0に置き換えて注目対象物Bの座標の修正値を決定する。修正後の注目対象物Bの時間tにおける座標は式6に示すp’B(t)となる。
【0074】
【0075】
座標修正部305は式6の座標pB’(t)を用いて、時間tにおける注目対象物Bの三次元モデル空間内の位置の座標を修正する。仮想視点画像生成部306は、位置が修正された注目対象物Bを含む三次元モデルを用いて仮想視点画像Bを生成する。
【0076】
なお、本フローチャートではS902とS903は並列して処理を行うもとして示しているが、S902からS903の順番に処理を行ってもよい。またはS903からS902の順に処理を行ってもよい。
【0077】
S904において重畳部801は、仮想視点画像Aと仮想視点画像Bとの重畳を行う。そして、重畳された仮想視点画像は、画像処理装置800の不図示の表示制御部によって、表示部205または画像処理装置200の外部にある他の表示装置に表示される。
【0078】
図10は、注目対象物Aおよび注目対象物Bの位置の軌跡を、円筒座標におけるz=0の平面に投影して示した図である。
図10(a)は、座標の修正が行われる前の注目対象物AおよびBの位置の軌跡を示す図である。軌跡1001は、座標の修正が行われる前の注目対象物Aの軌跡である。軌跡1001は、投てきを行った瞬間である時間t0の座標1002から、時間t1における座標1003、時間t2における座標1004を経由して、着地の瞬間である時刻t3における座標1005まで移動する軌跡である。軌跡1006は座標の修正が行われる前の注目対象物Bの軌跡である。軌跡1006は、投てきを行った瞬間である時間t0における座標1002から、時間t1における座標1007、時間t2における座標1008を経由して、着地の瞬間である時刻t4の座標1009まで移動する軌跡である。
【0079】
図10(b)は、重畳処理され、座標の修正が行われた後の注目対象物AおよびBの位置の軌跡を示す図である。
図10(b)に示す軌跡1010および1015は、
図10(a)の注目対象物Aおよび注目対象物Bのそれぞれの座標の時間tにおける角度成分の値θ(t)を、有効フィールドの中心であるθ
0に修正した後の軌跡を示している。座標の修正が行われた後の注目対象物Aの軌跡は軌跡1010であり、座標の修正が行われた後の注目対象物Bの軌跡が軌跡1015である。
【0080】
注目対象物Aの軌跡1010について説明する。時間t0における座標1011は、距離成分の値がr(t0)=0であるため修正前の座標1002と同じである。時間t1における修正前の座標1003は座標1012に、時間t2における修正前の座標1004は座標1013に、時間t3における修正前の座標1005は座標1014にそれぞれ修正されている。
【0081】
次に、注目対象物Bの軌跡1015について説明する。時間t0における座標1016は距離成分の値がr(t0)=0であるため修正前の座標1002と同じである。時間t1における修正前の座標1007は座標1017に、時間t2における修正前の座標1008は座標1018に、時間t4における修正前の座標1009は座標1019にそれぞれ修正されている。
図10(b)のように、位置の座標が修正された、注目対象物Aが存在する仮想視点画像A、および注目対象物Bが存在する仮想視点画像Bが重畳され、表示制御手段によって表示される。
【0082】
以上の説明したとおり本実施形態によれば、注目対象物AおよびBが、距離成分、高さ成分のような注目方向の成分のみが時間変化して移動するような仮想視点画像を表示することができる。よって視聴者が複数の注目対象物の注目方向を比較しやすくすることができる。
【0083】
<実施形態3>
実施形態3では、重畳する2つの仮想視点画像のうち、一方の仮想視点画像の注目対象物の注目方向の成分以外の成分の値を、他方の仮想視点画像の同一の成分の値に合わせるようにして注目対象物の座標を修正する形態を説明する。
【0084】
本実施形態の画像処理装置の機能構成は画像処理装置800と同様であるため説明は省略する。ただし、本実施形態では、後述するように、三次元モデルに含まれる注目対象物の座標の修正を行わない場合がある。その場合は、座標検出部302によって座標が検出された後の三次元モデルは、仮想視点画像生成部306に出力され、仮想視点画像生成部306は座標が修正されていない三次元モデルを用いて仮想視点画像を生成する。すなわち、修正方法指定部303、修正座標決定部304および座標修正部305が不要な場合がある。
【0085】
また、重畳される2つの仮想視点画像を、2つの異なる画像処理装置がそれぞれ生成し、画像処理装置800が2つの仮想視点画像を取得して仮想視点画像を重畳してもよい。この場合も、注目対象物の座標の修正を行わないで仮想視点画像を生成する画像処理装置には、修正方法指定部303、修正座標決定部304、および座標修正部305は無くてもよい。
【0086】
図11は、本実施形態における仮想視点画像を生成し仮想視点画像を重畳処理するまでの一連の処理を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、注目対象物Aを含む三次元モデルを用いて仮想視点画像Aを生成し、注目対象物Bを含む三次元モデルを用いて仮想視点画像Bを生成する。そして、仮想視点画像Aと仮想視点画像Bとを重畳する場合について説明する。また、本実施形態においても撮像対象空間は投てき競技であるものとして説明する。
【0087】
S1101はS601と同様の処理であり、修正方法指定部303は、注目対象物の座標の修正方法を指定する。本実施形態では修正方法指定部303は、注目対象物の注目方向の成分以外の座標成分を、重畳される他方の仮想視点画像に含まれる注目対象物の同一座標成分に合わせる方法を指定する。このため、座標の修正は、重畳する2つの仮想視点画像のうちどちらか一方の仮想視点画像に含まれる注目対象物に対してのみ行われる。本フローチャートでは注目対象物Aの注目方向の成分以外の座標成分を、注目対象物Bの同一座標成分に合わせるように修正を行うものとして説明する。このため、修正方法指定部303は、注目対象物Aの座標の修正方法を本実施形態の修正方法に指定する。本実施形態の修正方法の詳細は後述する。
【0088】
S1102は、注目対象物Bを含む仮想視点画像Bを生成するステップである。本ステップの処理の詳細は
図6(b)のフローチャートと同様である。ただし、本ステップでは注目対象物Bの座標成分の修正値を決定し(S606)、注目対象物の座標を修正する(S607)処理は行われないでスキップする。また、S1102によって座標検出部302が検出する注目対象物Bの時間tにおける座標p
B(t)は、式5と同一である。
【0089】
S1103は、注目対象物Aを含む仮想視点画像Aを生成するステップである。処理の詳細は、
図6(b)の処理と同様であるが、注目対象物Aの座標の修正方法が実施形態1と異なる。S1103において座標検出部302は、注目対象物Aの時間tにおける位置の座標p
A(t)を検出する。座標p
A(t)は式3と同じである。
【0090】
修正座標決定部304は、座標pA(t)を修正するための修正値をS1101において指定された修正方法に基づき算出して決定する。本実施形態の修正方法は、注目対象物Aの注目方向の成分以外の座標成分を、注目対象物Bの同一座標成分に合わせるように修正する方法である。また本実施形態では、注目方向の成分以外の座標成分として角度成分406を修正する方法を説明する。具体的には、修正座標決定部304は、注目対象物Aの角度成分406の修正値θA’(t)を式7に基づき算出する。
【0091】
【0092】
式7に基づき算出される修正値θA’(t)は、注目対象物の距離成分405が比較しやすくなるように定められた修正値である。このため、θA’(t)は距離成分405に基づき算出される。
【0093】
修正座標決定部304は角度成分θA(t)を、式7で示したθA’(t)に置き換えて、修正後の注目対象物Aの座標pA’(t)を決定する。pA’(t)は式8のとおりである。
【0094】
【0095】
座標修正部305は式8の座標pA’(t)を用いて、時間tにおける注目対象物Aの三次元モデル空間内の位置の座標pA(t)を座標pA’(t)に修正する。
【0096】
図12は、座標の修正がされていない注目対象物Bと、座標の修正が行われた注目対象物Aとの位置の軌跡を、円筒座標におけるz=0の平面に投影した図である。注目対象物Aの修正が行われる前の注目対象物Aの軌跡は、
図10(a)の注目対象物Aの軌跡1001と同一である。時間t2、即ちt=t2における注目対象物Aの角度成分の値θ
A(t2)の修正値θ
A’(t2)を算出する場合を例にとって、本実施形態における式7による座標の修正について説明する。
【0097】
注目対象物Aの修正前の座標1004における距離成分の値r
A(t2)が、注目対象物Bの距離成分の値と同じであるときの注目対象物Bの座標は
図12の座標1020である。つまり、注目対象物Bが座標1020に位置する時間をt2aとすると、時間t2aが式7における時間t
rA=rBである。従って、注目対象物Bの座標1020の角度成分の値であるθ
B(t2a)が、注目対象物Aの座標1004における角度成分の値θ
A(t2)に置き換えられ、注目対象物Aの座標1004が座標1204に修正されている。
【0098】
言い換えると、修正座標決定部304は、注目対象物Bの座標の距離成分の値が注目対象物Aの時間t2における距離成分の値rA(t2)と等しくなるときの注目対象物Bの座標を求める。注目対象物Bがその座標に位置するときの時間t2aが式7におけるtrA=rBである。よって、時間t2aにおける注目対象物Bの角度成分の値θB(t2a)を導出し、θB(t2a)を時間t2における注目対象物の角度成分の修正値θ’A(t2)として決定する。なお、注目対象物Aの飛距離が注目対象物Bの飛距離より長く、距離成分rB(t)が距離成分rA(t2)と等しくなる時間が無い場合は、θ’A(t2)は例えばθA(t)をそのまま用いればよい。また例えば、注目対象物Aの飛距離が注目対象物Bの飛距離を超える場合において注目対象物Aの位置が不連続に変化することを避けるために、θ’A(t2)には、注目対象物Bが着地した時刻txにおけるθB(tx)を用いてもよい。
【0099】
時間t1における修正前の座標1003、時間t3における座標1005についても同様の方法により、それぞれ時間t1の座標は座標1203に、時間t3の座標は座標1205に修正されている。
【0100】
図10(a)に示した注目対象物Aの軌跡に対し、
図12の注目対象物Aの軌跡は、距離成分のr
A(t)は修正前と変わらないが、角度成分のθ
A(t)が注目対象物Bに合わせて修正されている様子が分かる。
【0101】
図12のように、位置の座標が修正された注目対象物Aが存在する仮想視点画像Aと、および位置が修正されていない注目対象物Bが存在する仮想視点画像Bとが重畳された仮想視点画像が表示制御手段によって表示部に表示される。
【0102】
動画の仮想視点画像を生成する場合、座標修正部305はS1101において指定された修正方法によって、フレーム単位で注目対象物Aの座標の修正を行う。仮想視点画像生成部306は、位置が修正された注目対象物Aを含む三次元モデルを用いて仮想視点画像Aを生成する。
【0103】
S1104において重畳部801は、仮想視点画像Aと仮想視点画像Bとの重畳を行う。なお、本フローチャートではS1101とS1102は並列して処理を行うもとして示しているが、S1101からS1102の順番に処理を行ってもよい。
【0104】
以上説明したように本実施形態によれば、視聴者が注目方向の移動量の認識が容易な仮想視点画像を生成することが出来る。さらに重畳処理をすることによって、視聴者が2つの注目対象物AおよびBの注目方向を比較しやすい仮想視点画像を生成することが出来る。
【0105】
<その他の実施形態>
実施形態2および実施形態3では、2つの仮想視点画像を重畳する例について説明したが、3以上の仮想視点画像を重畳するケースに対しても適用可能である。例えば、実施形態2においては、3つ目以降の仮想視点画像の注目対象物の座標についても他の仮想視点画像と同様に角度成分を固定値するように修正する。また、実施形態3においては、注目対象物Bの角度成分を基準として、3つ目以降の仮想視点画像に存在する注目対象物の角度成分を修正する。このように処理することで、3つ目以降の注目対象物の注目方向についても、視聴者が認識しやすい仮想視点画像を生成することが出来る。
【0106】
実施形態2および実施形態3では、複数の仮想視点画像を重畳する例について説明したが、三次元モデルを重畳するモデル重畳部をさらに有し、三次元モデルの段階で、2以上の三次元モデルを重畳してから、仮想視点画像を生成してもよい。この場合、モデル重畳部は、座標修正後の注目対象物を含む三次元モデルを取得して三次元モデルを重畳する。そして、仮想視点画像生成部306は、重畳処理された三次元モデルを取得して重畳処理された三次元モデルに基づきによる仮想視点画像を生成する。このように三次元モデルを重畳してから仮想視点画像を生成しても、実施形態2または3と同等の効果が得られる。
【0107】
また、仮想視点画像において複数の注目対象物を表示する場合に、それらの位置を合わせて重畳してもよいし、それらの位置を所定量ずらして重畳してもよい。これにより、それぞれの注目対象物の状態を認識しやすくできる。また、複数の注目対象物に対応する複数の3次元モデルや複数の仮想視点画像を並べて表示させてもよい。
【0108】
上記の実施形態では座標系には円筒座標を用いて注目対象物の位置を特定する方法を説明したが、高さを示す成分を角度φで示す球座標系によって注目対象物の位置の座標を示してもよい。または、デカルト座標系で注目対象物の位置を表してもよい。
【0109】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0110】
200 画像処理装置
102 カメラ
301 三次元モデル生成部
302 座標検出部
305 座標修正部
402 注目対象物