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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
B60T8/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019127303
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021011220
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】大高 順
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127117(JP,A)
【文献】特開平05-135684(JP,A)
【文献】実開昭57-072546(JP,U)
【文献】特開平10-006970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
B60T 13/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(100)用のブレーキシステム(10)の液圧制御ユニット(5)であって、
基体(51a)と、当該基体(51a)に組み込まれ、前記鞍乗り型車両(100)に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントと、を含む液圧制御機構(51)と、
前記コンポーネントの動作を制御する制御回路(52a)を含む制御基板(52)と、
を備え、
前記制御回路(52a)は、
前記鞍乗り型車両(100)に搭載される電源(6)と前記コンポーネントとを接続して当該コンポーネントに電源を供給する電源ライン(91)を有し、
前記制御回路(52a)の前記電源ラインには、当該電源ラインに流れる電流に応じて当該電源ラインを遮断する電流ヒューズ(80)が設けられている、
液圧制御ユニット。
【請求項2】
前記電流ヒューズ(80)は、前記制御基板(52)上に設けられている、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項3】
前記電源ラインにおける前記電源(6)と前記コンポーネントとの間に、当該電源ラインを開閉制御するスイッチング素子(73)が設けられており、
前記電流ヒューズ(80)は、前記電源ラインにおける前記電源(6)と前記スイッチング素子(73)との間に設けられている、
請求項1または2に記載の液圧制御ユニット。
【請求項4】
前記電流ヒューズ(80)は、前記制御回路(52a)に流れる電流が、前記コンポーネントを駆動させる電流値よりも大きな値に設定される基準電流を超えた場合に、溶断することによって当該制御回路(52a)を遮断する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【請求項5】
前記電流ヒューズ(80)は、基板に搭載可能なチップヒューズ(81)である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【請求項6】
前記制御回路(52a)には、前記液圧制御ユニット(5)の外部の前記電源(6)と接続される接続部(71、72)が設けられ、
前記電流ヒューズ(80)は、前記制御回路(52a)の導通経路において、前記接続部(71、72)に隣設されている、
請求項1~のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの制御基板を過電流から適切に保護する
ことができる液圧制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータサイクル等の鞍乗り型車両のブレーキシステムは、鞍乗り型車両の車輪を制動する制動力を制御するための液圧制御ユニットを備えている。具体的には、液圧制御ユニットは、基体と、当該基体に組み込まれ、鞍乗り型車両に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネント(例えば、制御弁等)とを含む液圧制御機構を備えている。また、液圧制御ユニットには、液圧制御機構のコンポーネントの動作を制御する制御回路を含む制御基板が設けられている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-008674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鞍乗り型車両では、鞍乗り型車両以外の車両(例えば、四輪の自動車)と異なり、例えば、液圧制御ユニットが露出して取り付けられる場合があり、液圧制御ユニットに水が掛かりやすい。また、液圧制御ユニットでは、制御基板を収容するケースは基体に保持されているので、基体に組み込まれているコンポーネントの動作に応じてケース内の温度が変化しやすい。ゆえに、ケース内に生じる負圧によってケースの外部から内部へ水が吸い込まれやすい。よって、鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの制御基板では、水の付着による短絡が生じやすいので、当該制御基板を過電流から適切に保護することが望ましい。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗り型車両の液圧制御ユニットの制御基板を過電流から適切に保護することができる液圧制御ユニットを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液圧制御ユニットは、鞍乗り型車両用のブレーキシステムの液圧制御ユニットであって、基体と、当該基体に組み込まれ、前記鞍乗り型車両に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントと、を含む液圧制御機構と、前記コンポーネントの動作を制御する制御回路を含む制御基板と、を備え、前記制御回路には、当該制御回路に流れる電流に応じて当該制御回路を遮断する電流ヒューズが設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る液圧制御ユニットでは、制御基板は、鞍乗り型車両に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントを制御する制御回路を含み、当該制御回路には、当該制御回路に流れる電流に応じて当該制御回路を遮断する電流ヒューズが設けられる。それにより、制御基板において短絡が生じた場合に、制御回路を適切に遮断することができる。さらに、制御回路を適切に遮断することができることにより、制御基板の耐熱性を向上させるために制御基板が大型化することを抑制することができる。ゆえに、液圧制御ユニットの制御基板を過電流から適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る液圧制御ユニットを備えるブレーキシステムが搭載されるモータサイクルの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る液圧制御ユニットを示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る液圧制御ユニットの制御基板を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る液圧制御ユニットの制御基板及び当該制御基板と接続される構成要素を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る電流ヒューズの一例に相当するチップヒューズを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニットについて、図面を用いて説明する。なお、以下では、二輪のモータサイクル用のブレーキシステムの液圧制御ユニットについて説明しているが、本発明に係る液圧制御ユニットは、二輪のモータサイクル以外の他の鞍乗り型車両(例えば、三輪のモータサイクル、バギー車、自転車等)のブレーキシステムに用いられるものであってもよい。なお、鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味し、スクーター等も含む。
【0010】
また、以下では、前輪制動機構及び後輪制動機構が、それぞれ1つずつである場合を説明しているが、前輪制動機構及び後輪制動機構の少なくとも一方が複数であってもよく、また、前輪制動機構及び後輪制動機構の一方が設けられていなくてもよい。また、以下では、各制動機構に主流路、副流路及び供給流路が設けられている場合を説明しているが、各制動機構の流路から供給流路が省略されていてもよい。
【0011】
また、以下で説明する構成等は一例であり、本発明に係る液圧制御ユニットは、そのような構成等である場合に限定されない。
【0012】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0013】
<液圧制御ユニットの概略構成>
本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5の概略構成について説明する。
【0014】
液圧制御ユニット5は、鞍乗り型車両の車輪を制動する制動力を制御するためのものである。本実施形態では、液圧制御ユニット5は、鞍乗り型車両としてのモータサイクル100のブレーキシステム10に設けられる。
【0015】
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係るブレーキシステム10の全体構成について説明する。
【0016】
図1は、液圧制御ユニット5を備えるブレーキシステム10が搭載されるモータサイクル100の概略構成を示す模式図である。図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。
【0017】
図1及び図2に示されるように、ブレーキシステム10は、モータサイクル100に搭載される。モータサイクル100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4とを備える。モータサイクル100は、例えば、エンジン(図示省略)を備えており、当該エンジンから出力される動力を用いて走行する。なお、モータサイクル100は、モータから出力される動力を用いて走行するものであってもよい。
【0018】
ブレーキシステム10は、第1ブレーキ操作部11と、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する後輪制動機構14とを備える。また、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット5を備え、前輪制動機構12の一部及び後輪制動機構14の一部は、当該液圧制御ユニット5に含まれる。液圧制御ユニット5は、前輪制動機構12によって前輪3に付与される制動力及び後輪制動機構14によって後輪4に付与される制動力を制御する機能を担うユニットである。
【0019】
第1ブレーキ操作部11は、ハンドル2に設けられており、ライダーの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。第2ブレーキ操作部13は、胴体1の下部に設けられており、ライダーの足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。
【0020】
前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26と、マスタシリンダ21のブレーキ液を副流路26に供給する供給流路27とを備える。
【0021】
主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34とが設けられている。主流路25のうちの、マスタシリンダ21側の端部と、副流路26の下流側端部が接続される箇所との間には、第1弁(USV)35が設けられている。供給流路27は、マスタシリンダ21と、副流路26のうちのポンプ34の吸込側との間を連通させる。供給流路27には、第2弁(HSV)36が設けられている。
【0022】
込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。第1弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0023】
込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36は、モータサイクル100に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントに相当し、液圧制御ユニット5に含まれる。また、これらのコンポーネントの動作は、液圧制御ユニット5の制御基板52によって制御される。それにより、前輪制動機構12によって前輪3に付与される制動力及び後輪制動機構14によって後輪4に付与される制動力が制御される。制御基板52は、上記のコンポーネントの動作を、例えば、モータサイクル100の走行状態に応じて制御する。
【0024】
例えば、通常状態、つまり、後述されるABS動作又は自動制動動作等が実行されない状態では、制御基板52によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3に制動力が付与される。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4に制動力が付与される。
【0025】
ABS動作は、例えば、車輪(具体的には、前輪3又は後輪4)にロック又はロックの可能性が生じた場合に実行され、当該車輪に付与される制動力をライダーによるブレーキ操作部(具体的には、第1ブレーキ操作部11又は第2ブレーキ操作部13)の操作によらずに減少させる動作である。例えば、ABS動作が実行されている状態では、まず、制御基板52によって、込め弁31が閉鎖され、弛め弁32が開放され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。その状態で、制御基板52によってポンプ34が駆動されることにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が減少し、車輪に付与される制動力が減少する。そして、制御基板52によって、上記の状態から込め弁31及び弛め弁32の双方が閉鎖されることにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が維持されて車輪に付与される制動力が維持される。その後、制御基板52によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖されることにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増大し、車輪に付与される制動力が増大する。
【0026】
自動制動動作は、例えば、モータサイクル100の旋回時等にモータサイクル100の姿勢を安定化する必要性が生じた場合に実行され、車輪(具体的には、前輪3又は後輪4)に付与される制動力をライダーによるブレーキ操作部(具体的には、第1ブレーキ操作部11又は第2ブレーキ操作部13)の操作によらずに生じさせる動作である。例えば、自動制動動作が実行されている状態では、制御基板52によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が閉鎖され、第2弁36が開放される。その状態で、制御基板52によってポンプ34が駆動されることにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、車輪を制動する制動力が生じる。
【0027】
ここで、図3及び図4を参照して、本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5のより詳細な構成について説明する。
【0028】
図3は、液圧制御ユニット5を示す斜視図である。図4は、液圧制御ユニット5の制御基板52を示す斜視図である。なお、図4では、理解を容易にするために、ケース62を透過して制御基板52が示されている。
【0029】
図3及び図4に示されるように、液圧制御ユニット5は、基体51a及び当該基体51aに組み込まれモータサイクル100に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントを含む液圧制御機構51と、液圧制御機構51の動作を制御する制御回路52aを含む制御基板52と、ケーブルが取り付けられるコネクタ部53とを備える。
【0030】
基体51aは、例えば、略直方体形状を有し、金属材料によって形成されている。液圧制御機構51の基体51aの内部には、具体的には、主流路25、副流路26及び供給流路27が形成されており、込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36が、モータサイクル100に生じさせるブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントとして組み込まれている。基体51aの外面には、各流路と連通している複数のポート61が形成されており、各ポート61には、マスタシリンダ21又はホイールシリンダ24と接続されているブレーキ液管が取り付けられる。
【0031】
なお、基体51aは、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体51aが複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、互いに異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
【0032】
制御基板52は、液圧制御機構51の動作を制御する制御回路52aを含む。
【0033】
制御回路52aは、例えば、制御基板52上にプリントされた導電体により形成される電力線と、制御基板52に設けられるスイッチング素子、抵抗器、コンデンサ等の電子部品とを含む。なお、制御回路52aの構成の詳細については、後述する。
【0034】
制御回路52aは、具体的には、液圧制御機構51の基体51aに組み込まれているコンポーネントの動作を制御することによって、前輪制動機構12によって前輪3に付与される制動力及び後輪制動機構14によって後輪4に付与される制動力を制御することができる。例えば、制御回路52aは、上記のコンポーネントにモータサイクル100の走行状態に応じて、上述したように、ABS動作又は自動制動動作等の各動作を実行させる。
【0035】
制御回路52aが搭載される制御基板52は、液圧制御機構51の基体51aに保持されているケース62に収容されている。ケース62は、例えば、一端側に開口を有する中空の略四角筒形状を有しており、樹脂によって形成される。ケース62は、当該ケース62の開口が基体51aに塞がれた状態で、基体51aに保持されている。例えば、ケース62は、基体51aに直接的に保持されていてもよく、他の部材を介して間接的に保持されていてもよい。
【0036】
コネクタ部53は、具体的には、液圧制御ユニット5の外部の装置である外部装置と接続されるケーブルが取り付けられる部分である。コネクタ部53は、ケーブルと接続される複数のピン63を含む。
【0037】
例えば、コネクタ部53は、ケース62の内側の空間と外側の空間とを連通するように当該ケース62に形成される筒状部62aを含み、複数のピン63は、筒状部62aの内側に位置し、筒状部62aの延在方向に沿って延在している。また、複数のピン63の一端部は、制御基板52と接続されており、制御回路52aは、各ピン63を介して外部装置と電気的に接続される。
【0038】
本実施形態に係る液圧制御ユニット5では、制御基板52の制御回路52aに工夫を施すことにより、制御基板52を過電流から適切に保護することが実現される。このような制御回路52aの詳細については、後述にて説明する。
【0039】
<制御回路の構成>
図5及び図6を参照して、本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5の制御基板52の制御回路52aの構成について、より詳細に説明する。
【0040】
図5は、液圧制御ユニット5の制御基板52及び当該制御基板52と接続される構成要素を示す模式図である。なお、図5に示される例は、理解を容易にするために、制御回路52aの回路構成をあくまでも概略的に示したものに過ぎず、実際には、制御回路52aにはコンデンサ等の種々の電子部品が設けられ得る。
【0041】
図5に示されるように、制御基板52は、制御回路52aと、制御回路52aへの電力の供給を制御する制御部52bとを含む。
【0042】
制御回路52aは、液圧制御ユニット5の外部の電源6及び液圧制御機構51における制御対象であるコンポーネントC1とそれぞれ接続される。具体的には、制御回路52aは、正極側の電源ラインである正極側ライン91と、負極側の電源ラインである負極側ライン92とを含み、正極側ライン91及び負極側ライン92の一端側に電源6が接続され、正極側ライン91及び負極側ライン92の他端側にコンポーネントC1が接続される。それにより、電源6とコンポーネントC1とを含む閉回路が形成され、電源6の電力を用いたコンポーネントC1の駆動が実現される。
【0043】
コンポーネントC1は、具体的には、込め弁31、弛め弁32、ポンプ34、第1弁35又は第2弁36である。なお、図5では、理解を容易にするために、1つのコンポーネントC1のみ示されているが、実際には、各コンポーネントC1が互いに並列に電源6と接続されるように制御回路52aが形成されている。例えば、正極側ライン91は、各コンポーネントC1の正極側と接続されるように分岐しており、負極側ライン92は、各コンポーネントC1の負極側と接続されように分岐している。なお、正極側ライン91及び負極側ライン92は、制御回路52a内で分岐していてもよく、制御回路52aより電源6側で分岐していてもよい。
【0044】
制御回路52a(具体的には、正極側ライン91)には、スイッチング素子73が設けられている。スイッチング素子73は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、スイッチング素子73のゲート電圧が制御されることによって、スイッチング素子73において電流が流れる状態(以下、閉状態とも呼ぶ)と電流が遮断される状態(以下、開状態とも呼ぶ)とが切り替えられる。
【0045】
制御部52bは、スイッチング素子73を開状態と閉状態との間で切り替えることにより、制御回路52aへの電力の供給を制御する。制御部52bの一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、制御部52bの一部又は全ては、例えば、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0046】
制御回路52aには、液圧制御ユニット5の外部の電源6と接続される接続部71,72が設けられている。具体的には、接続部71は、正極側ライン91に設けられており、電源6の正極側と接続される。詳細には、接続部71は、制御回路52aにおいて、コネクタ部53の複数のピン63のうち電源6の正極側と接続されるピン63と接続されている部分である。また、接続部72は、負極側ライン92に設けられており、電源6の負極側と接続される。詳細には、接続部72は、制御回路52aにおいて、コネクタ部53の複数のピン63のうち電源6の負極側と接続されるピン63と接続されている部分である。
【0047】
電源6と接続部71との間には、液圧制御ユニット5の外部(つまり、車体側)のヒューズ7が介在している。車体側のヒューズ7は、電源6とコンポーネントC1とを含む閉回路において短絡が生じて過電流が流れた場合に、例えば溶断することによって、当該閉回路を遮断する(つまり、電流が流れない状態にする)。
【0048】
ここで、車体側のヒューズ7を溶断させるために必要な電流は比較的大きい場合がある。ゆえに、車体側のヒューズ7のみによっては、液圧制御ユニット5の制御基板52において短絡が生じた場合に、制御基板52の制御回路52aが迅速に遮断されない等、制御回路52aが適切に遮断されない状況が生じ得る。また、制御基板52の耐熱性を向上させるために車体側のヒューズ7の仕様に合わせて制御基板52の各部品の寸法等を設計した場合には、制御基板52が大型化してしまう。
【0049】
そこで、制御回路52aには、上記の問題を解決するための工夫として、制御回路52aに流れる電流に応じて当該制御回路52aを遮断する電流ヒューズ80が設けられる。詳細には、電流ヒューズ80は、制御回路52aに流れる電流が基準電流を超えた場合に、溶断することによって当該制御回路52aを遮断する。基準電流は、コンポーネントC1を駆動させるために必要な電流より大きな値に設定され、制御基板52の耐熱性に応じて適宜設定される。制御基板52を小型化する観点では、基準電流をできる限り小さくし、当該基準電流に合わせて制御基板52の各部品の寸法等を設計することが好ましい。電流ヒューズ80としては、後述するように、例えば、チップヒューズ81等が用いられる。
【0050】
電流ヒューズ80の設置位置は特に限定されないが、図5に示される例では、電流ヒューズ80は、正極側ライン91上において、接続部71とスイッチング素子73との間に設けられている。なお、制御回路52aに設けられる電流ヒューズ80の数は複数であってもよい。また、複数の電流ヒューズ80が互いに並列に設けられていてもよい。
【0051】
上記のように、制御基板52の制御回路52aに、車体側のヒューズ7とは別に、電流ヒューズ80を設けることにより、制御回路52aにおいて短絡が生じた場合に、当該制御回路52aを適切に遮断することができる。
【0052】
制御基板52において短絡が生じた場合に制御回路52aをより適切に遮断する観点では、電流ヒューズ80は、制御回路52aの導通経路において、接続部71,72に隣設されている(つまり、直接的に接続されている)ことが好ましい。換言すると、制御回路52aの導通経路において、電流ヒューズ80と接続部71,72との間には、他の電子部品が介在しないことが好ましい。ここで、制御回路52aの導通経路において、電流ヒューズ80と接続部71,72との間に他の電子部品が介在する場合には、電流ヒューズ80と接続部71,72との間に介在する他の電子部品の数はできるだけ少ないことが好ましい。なお、図5では、電流ヒューズ80が制御回路52aの導通経路である正極側ライン91において接続部71に隣設されている例が示されているが、電流ヒューズ80は、制御回路52aの導通経路である負極側ライン92において接続部72に隣設されていてもよい。
【0053】
ここで、図6を参照して、電流ヒューズ80の具体例について説明する。
【0054】
図6は、電流ヒューズ80の一例に相当するチップヒューズ81を示す模式図である。
【0055】
チップヒューズ81は、基板に搭載可能な電流ヒューズである。詳細には、チップヒューズ81は、基板への搭載性を向上させるために他の電流ヒューズ80と比較して小型化されたものである。ゆえに、電流ヒューズ80としてチップヒューズ81を用いることによって、制御基板52を小型化しつつ、制御基板52における電流ヒューズ80の搭載位置の自由度を向上させることができる。
【0056】
図6に示される例では、チップヒューズ81は、正極側ライン91を形成する電力線である電力線91aと電力線91bとの間に亘って設けられている。具体的には、チップヒューズ81は、図6に示されるように、基部81aと、第1電極81bと、第2電極81cと、接続部81dとを含む。
【0057】
基部81aは、アルミナ等の絶縁性の材料から形成されている。第1電極81bは、導電性を有しており、基部81aの一端側に設けられ、電力線91aと接続されている。第2電極81cは、導電性を有しており、基部81aの他端側に設けられ、電力線91bと接続されている。接続部81dは、導電性を有しており、基部81aの表層において、第1電極81bと第2電極81cとの間に亘って設けられている。それにより、電力線91aと電力線91bとが、第1電極81b、接続部81d及び第2電極81cを介して電気的に接続される。
【0058】
ここで、接続部81dは、第1電極81bから第2電極81cに向かう方向に沿って延在しており、接続部81dの中央部には、当該接続部81dの延在方向に交差する断面での断面積が他の部分と比べて小さくなっている狭小部81eが形成されている。狭小部81eの断面積が他の部分と比べて小さくなっていることによって、接続部81dに電流が流れる際に、狭小部81eにおける電気抵抗は大きくなり、狭小部81eが発熱しやすくなっている。ゆえに、接続部81dに流れる電流が基準電流を超えた場合に、図6において二点鎖線で示されるように、狭小部81eが溶断し、電力線91aと電力線91bとの間で電流が流れなくなる。よって、制御回路52aに流れる電流が基準電流を超えた場合に、当該制御回路52aを適切に遮断することができる。
【0059】
<液圧制御ユニットの効果>
本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット5の効果について説明する。
【0060】
液圧制御ユニット5は、液圧制御機構51のコンポーネントの動作を制御する制御回路52aを含む制御基板52を備え、制御回路52aには、当該制御回路52aに流れる電流に応じて当該制御回路52aを遮断する電流ヒューズ80が設けられている。それにより、制御基板52において短絡(具体的には、主に制御基板52への水の付着による短絡)が生じた場合に、制御回路52aを適切に遮断することができる。さらに、制御回路52aを適切に遮断することができることにより、制御基板52の耐熱性を向上させるために制御基板52が大型化することを抑制することができる。ゆえに、液圧制御ユニット5の制御基板52を過電流から適切に保護することができる。
【0061】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、電流ヒューズ80は、制御回路52aに流れる電流が基準電流を超えた場合に、溶断することによって当該制御回路52aを遮断する。それにより、制御回路52aにおいて短絡が生じた場合に、当該制御回路52aを遮断することを適切に実現することができる。
【0062】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、電流ヒューズ80は、基板に搭載可能なチップヒューズ81である。それにより、制御基板52を小型化しつつ、制御基板52における電流ヒューズ80の搭載位置の自由度を向上させることができる。
【0063】
好ましくは、液圧制御ユニット5では、制御回路52aには、液圧制御ユニット5の外部の電源6と接続される接続部71,72が設けられ、電流ヒューズ80は、制御回路52aの導通経路において、接続部71,72に隣設されている。それにより、制御回路52aにおいて短絡が生じた場合に、短絡経路が電流ヒューズ80を迂回して形成されることを抑制することができる。ここで、短絡経路が電流ヒューズ80を迂回して形成される場合、短絡電流が電流ヒューズ80に流れないことに起因して制御回路52aが遮断されない状況が生じ得る。ゆえに、電流ヒューズ80を制御回路52aの導通経路において接続部71,72に隣設することによって、制御基板52において短絡が生じた場合に、制御回路52aをより適切に遮断することができる。
【0064】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、5 液圧制御ユニット、6 電源、7 ヒューズ、10 ブレーキシステム、11 第1ブレーキ操作部、12 前輪制動機構、13 第2ブレーキ操作部、14 後輪制動機構、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、26 副流路、27 供給流路、31 込め弁、32 弛め弁、33 アキュムレータ、34 ポンプ、35 第1弁、36 第2弁、51 液圧制御機構、51a 基体、52 制御基板、52a 制御回路、52b 制御部、53 コネクタ部、61 ポート、62 ケース、62a 筒状部、63 ピン、71 接続部、72 接続部、73 スイッチング素子、80 電流ヒューズ、81 チップヒューズ、81a 基部、81b 第1電極、81c 第2電極、81d 接続部、81e 狭小部、91 正極側ライン、91a 電力線、91b 電力線、92 負極側ライン、100 モータサイクル、C1 コンポーネント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6