(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240115BHJP
A61B 5/349 20210101ALI20240115BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/349
A61B5/055 390
(21)【出願番号】P 2019128701
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 英
(72)【発明者】
【氏名】金澤 仁
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-173887(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017784(WO,A1)
【文献】特開2007-000280(JP,A)
【文献】Nadja Razavi, et al.,Shifted Coupling of EEG Driving Frequencies and fMRI Resting State Networks in Schizophrenia Spectrum Disorders,PLOS ONE,2013年,Volume 8 | Issue 10 | e76604,1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の第1の生理学的情報を取得し、前記第1の生理学的情報に基づいて覚醒状態を推定する推定部と、
前記第1の生理学的情報を取得した時間範囲と重複する時間範囲でパルスシーケンスを実行して磁気共鳴信号を収集するシーケンス制御部と、
前記磁気共鳴信号に基づいて第2の生理学的情報を生成する生成部と、
前記第1の生理学的情報と前記第2の生理学的情報とを関連付ける解析部と
、
を備え、
前記解析部は、前記覚醒状態に係る情報に基づいたデータの分離を行った上で、自律神経活動としての前記第1の生理学的情報と自発性脳活動としての前記第2の生理学的情報とのカップリング(相互作用)について相関解析を行い、当該相関解析の結果に基づいて、前記被検体が疾患を有している可能性に関する情報を生成
し、
前記推定部は、前記被検体が覚醒状態にある時間の合計値を算出し、前記合計値と、予定された撮像時間とに基づいて、データ収集の進捗状況を算出する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
被検体の第1の生理学的情報を取得し、前記第1の生理学的情報に基づいて覚醒状態を推定する推定部と、
前記第1の生理学的情報を取得した時間範囲と重複する時間範囲でパルスシーケンスを実行して磁気共鳴信号を収集するシーケンス制御部と、
前記磁気共鳴信号に基づいて第2の生理学的情報を生成する生成部と、
前記第1の生理学的情報と前記第2の生理学的情報とを関連付ける解析部と、
を備え、
前記解析部は、前記覚醒状態に係る情報に基づいたデータの分離を行った上で、自律神経活動としての前記第1の生理学的情報と自発性脳活動としての前記第2の生理学的情報とのカップリング(相互作用)について相関解析を行い、当該相関解析の結果に基づいて、前記被検体が疾患を有している可能性に関する情報を生成し、
前記解析部は、心拍変動解析(HRV:Heart Rate Variation)または内因性脳活動結合ネットワーク(ICN:Intrinsic Connectivity Network)に基づく解析を行う、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記シーケンス制御部は、プロスぺクティブな覚醒状態モニタリングを行いながら、BOLD(Blood Oxygenation LevelDependent)信号を前記磁気共鳴信号として収集する、請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記推定部が推定した結果に基づいて測定環境を制御する制御部を更に備える、
請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記制御部は、照度または風量のうち少なくとも一方を制御することにより、前記測定環境を制御する、請求項
4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記第1の生理学的情報に基づいてレトロスぺクティブに前記被検体の覚醒状態について解析を行い、解析結果を基に前記第2の生理学的情報について更に解析を行う、請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記第1の生理学的情報は、自律神経活動を表す情報である、請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記推定部は、少なくとも前記第1の生理学的情報に基づいて心拍変動解析を行うことにより前記覚醒状態を推定する、請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第2の生理学的情報は、自発性脳活動ネットワークの結合度を表す情報である、請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記解析部は、前記シーケンス制御部が収集した前記第2の生理学的情報から、前記被検体が覚醒状態における前記第2の生理学的情報を抽出する、請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記推定部は、第1の周波数帯域の周波数成分のフーリエ振幅と、前記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域の周波数成分のフーリエ振幅との比率に基づいて、前記覚醒状態を推定する、請求項
8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記進捗状況を、ディスプレイに表示させる制御部を更に備える、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記解析部は、当該相関解析の結果に基づいて、健常者群のデータと疾患群のデータとを分離する、請求項1
又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳領域の磁気共鳴イメージング方法の一つとして、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging: fMRI)が知られている。fMRIでは、酸素と結合したオキシヘモグロビンと酸素を放出したデオキシヘモグロビンの比率によって強度が変化するMRIの信号(BOLD(blood oxygenation level dependent)信号)を基に、神経活動の観察が行われる。
【0003】
近年、安静時のBOLD信号を取得する、安静時fMRI(resting state fMRI(rs-fMRI))が注目されている。rs-fMRIでは、安静時にBOLD信号の経時的変化の相関関係を調べることで、異なる脳領域間での機能的結合を評価する。ここで、機能的結合とは脳領域間の神経活動の同調を意味し、安静時においても機能的に関連した複数の脳領域は同調した活動を行っていることが知られている。これは安静時ネットワークと呼ばれ、脳内領域の機能的結合性の強さの客観的指標となる。
【0004】
rs-fMRIにおいては、撮像中にいくつかの条件が被検体に対して課せられる。例えば、rs-fMRIにおいては、被検体は、撮像中にリラックスしていることが要求される。また、被検体は、撮像中に覚醒状態にあることが要求される。
【0005】
しかしながら、被検体が覚醒状態にあるか否か、被検体がリラックスしているか否かに関して客観的な観測・評価手段がない場合、得られたデータの信頼性及び再現性を定量的に評価できない問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Taqliazucci E .etc, "Decoding wakefulness levels from typical fMRI resting-state daa reveals reliable drifts between wakefulness and sleep", Neuron,2014年5月7日、第82巻、第3号、p695-708
【文献】Florian Chouchou and Martin Desseilles, Heart rate variability: a tool to explore the sleeping brain?, frontiers in Neuroscience, 2014年12月11日、第8巻、p402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、データ収集の信頼性・再現性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、推定部と、シーケンス制御部と、生成部と、解析部とを備える。推定部は、被検体の第1の生理学的情報を取得し、前記第1の生理学的情報に基づいて覚醒状態を推定する。シーケンス制御部は、前記第1の生理学的情報を取得した時間範囲と重複する時間範囲でパルスシーケンスを実行して磁気共鳴信号を収集する。生成部は、前記磁気共鳴信号に基づいて第2の生理学的情報を生成する。解析部は、前記第1の生理学的情報と前記第2の生理学的情報とを関連付ける。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置に係る照明コントロールについて説明した図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う心拍変動解析について説明した図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う心拍変動解析について説明した図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【
図7】
図7は、実施形態の背景について説明した図である。
【
図8】
図8は、実施形態の背景について説明した図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【
図10】
図10は、
図3のステップS160の処理の手順についてより詳細に説明したフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、互いに同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源(図示しない)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120(シーケンス制御部)と、画像処理装置130とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、
図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及び画像処理装置130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0012】
なお、センサ113、スピーカー117a、照明装置117b、ディスプレイ117c、送風装置117dなどの付属品が、磁気共鳴イメージング装置100に適宜取り付けられる。なお、これらのセンサ113、スピーカー117a、照明装置117b、ディスプレイ117c、送風装置117d等は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられて構成されてもよいし、磁気共鳴イメージング装置100の構成要素の一部として備えられていてもよい。
【0013】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源は、静磁場磁石101に電流を供給する。別の例として、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくてもよい。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
【0014】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0015】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、画像処理装置130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0016】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0017】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、必要に応じて、「MR信号」と呼ぶ)を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0018】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0019】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
【0020】
シーケンス制御回路120は、画像処理装置130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
【0021】
さらに、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを画像処理装置130へ転送する。
【0022】
センサ113は、被検体の生体信号を検出するためのセンサであり、例えばECG(Electrocardiogram)信号を検出するためのECGセンサである。また、別の例として、センサ113は、脈波信号を検出するための脈波センサである。センサ113は、検出したECG信号や脈波信号等の生体信号を、画像処理装置130に送信する。
【0023】
スピーカー117aは、被検体に向けて音声を流すためのスピーカーである。照明装置117bは、ボア内の明るさを調節するための照明である。照明装置117bの一例が、
図2に示されている。ディスプレイ117cは、ボア内の被検体に向けてメッセージを表示するためのディスプレイである。送風装置117dは、被検体に風を送る装置であり、例えばファンで構成される。スピーカー117a、照明装置117b、ディスプレイ117c及び送風装置117dの役割については後述する。
【0024】
画像処理装置130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。画像処理装置130は、記憶装置132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、推定機能140及び解析機能141を備える。
【0025】
実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、推定機能140、解析機能141にて行われる各処理機能は、コンピューターによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置132へ記憶されている。処理回路150はプログラムを記憶装置132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、
図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、推定機能140、解析機能141にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよい。別の例として、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、
図1において、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136、推定機能140、解析機能141は、それぞれ受付部、制御部、生成部、推定部、解析部の一例である。また、シーケンス制御回路120は、シーケンス制御部の一例である。
【0026】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶装置132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0027】
また、記憶装置132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0028】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、磁気共鳴データを受信すると、インタフェース機能131を有する処理回路150は、受信した磁気共鳴データを記憶装置132に格納する。
【0029】
記憶装置132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、記憶装置132は、k空間データを記憶する。
【0030】
記憶装置132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶装置132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0031】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0032】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
処理回路150は、生成機能136により、k空間データを記憶装置132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0033】
また、推定機能10及び解析機能141の詳細については後述する。
【0034】
次に、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の背景について簡単に説明する。
【0035】
(実施形態に係る背景:rs-fMRIにおける覚醒状態の推定)
脳領域の磁気共鳴イメージング方法の一つとして、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging: fMRI)が知られている。fMRIでは、酸素と結合したオキシヘモグロビンと酸素を放出したデオキシヘモグロビンの比率によって強度が変化するMRIの信号(BOLD(blood oxygenation level dependent)信号)を基に、神経活動の観察が行われる。
【0036】
近年、安静時のBOLD信号を取得する安静時fMRI(resting state fMRI(rs-fMRI))が注目されている。rs-fMRIでは、BOLD信号の経時的変化の相関関係を調べることで、異なる脳領域間での機能的結合を評価する。rs-fMRIの臨床応用例として、例えば、アルツハイマー病等の神経変性疾患では自発性脳活動ネットワークの一つであるDMN(Default Mode Network)の機能的結合が低下することが報告されており、認知症の早期発見や鑑別に有用である可能性が示唆されている。
【0037】
rs-fMRIにおいては、撮像中にいくつかの条件が被検体に対して課せられる。例えば、rs-fMRIにおいては、被検体は、撮像中に、リラックスしていることが必要である。また、睡眠状態になってしまうと正しいデータの取得に影響するため、被検体は、撮像中に、眠らない、すなわち覚醒状態にあることが必要である。また、自発性脳活動が測定対象となるため、被検体は、撮像中に、特定のことを深く考えないことが必要である。
【0038】
しかしながら、被検体が覚醒状態にあるか否か、被検体がリラックスしているか否かに関して客観的な観測・評価手段がない場合、得られたデータの信頼性及び再現性を定量的に評価できない問題がある。例えば、被検体が覚醒状態にあるか否か、被検体がリラックスしているか否かについて、データ収集後、被検体が要求を守っていたかを、被検体へのアンケートを用いた聴取などの主観的な手段を用いて観測・評価した場合、得られたデータの信頼性及び再現性を定量的に評価できない問題がある。また、例えば、脳波計などを用いて被検体が覚醒状態にあるか否かなどを判断する方法も考えられるが、導入コスト等の課題があり、臨床使用が難しい場合がある。
【0039】
加えて、前述の被検体依存の観測条件を維持・制御する手段がない場合、期待するデータが得られない場合もある。例えば、被検体の覚醒状態を維持・制御する手段がない場合、例えば測定開始後3分以内に30%の被験者が睡眠状態になり、測定時間に比例して睡眠状態の確率が上昇するため、期待するデータが得られない。
【0040】
加えて、既存のrs-fMRIのデータベースには、被検体の覚醒状態が不明なデータが存在し、現状のまま解決策を講じなければ、これらの被検体の覚醒状態が不明なデータが増加し続けることになる。これら、被検体の覚醒状態が不明なデータを用いて解析を行って、例えば神経変性疾患診断向けのバイオマーカー開発などを行った場合、偽陽性や偽陰性として解釈される恐れがある。
【0041】
かかる背景に鑑みて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、シーケンス制御回路120と、処理回路150とを備える。処理回路150は、推定機能140により、被検体の第1の生理学的情報を取得し、第1の生理学的情報に基づいて覚醒状態を推定する。シーケンス制御部120は、第1の生理学的情報を取得した時間範囲と重複する時間範囲でパルスシーケンスを実行して磁気共鳴信号を収集する。処理回路150は、生成機能136により、磁気共鳴信号に基づいて第2の生理学的情報を生成する。処理回路150は、解析機能141により、第1の生理学的情報と第2の生理学的情報とを関連付ける。
【0042】
このように、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、rs-fMRIにより得られた第2の生理学的情報が、覚醒状態を推定する基礎となる情報である第1の生理学的情報と関連付けられることにより、rs-fMRIにおけるデータ収集の再現性・信頼性が向上し、データの品質向上に寄与する。加えて、データ活用時における使用適合性が向上する。
【0043】
加えて、後述するように、処理回路150は、解析機能141により、覚醒状態のデータと睡眠状態のデータとを分離した上で、自発性脳活動と自律神経活動とのカップリング(相互作用)に関する知見に基づき、心拍変動解析(HRV:Heart Rate Variation)及び内因性結合ネットワーク(ICN:Intrinsic Con
nectivity Network)という観点から解析を行い、当該データを健常者群と疾患群とに分離する。これにより、診断に有用な情報を得ることができる。
【0044】
(実施形態に係る処理の詳細:ステップS100~ステップS125)
続いて、
図3~
図12を用いて、かかる処理の詳細について説明する。
図3は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
【0045】
はじめに、センサ113が、被検体から、自律神経活動を表す情報である第1の生理学的情報を取得する。第1の生理学的情報は、自律神経活動由来の覚醒状態を反映した情報であり、例示的には、ECG信号、脈波信号、呼吸信号、血圧信号、脳波信号等である。一例として、ECGセンサがセンサ113として用いられ、被検体からECD信号を第1の生理学的情報として取得する。また別の例として、脈拍センサがセンサ113として用いられ、被検体から脈拍信号を第1の生理学的情報として取得する。センサ113は、取得した第1の生理学的情報を処理回路150に送信する。続いて、処理回路150は、推定機能140により、センサ113から、センサ113が被検体から取得した第1の生理学的情報を取得する(ステップS100)。
【0046】
続いて、処理回路150は、推定機能140により、ステップ100においてセンサ113から取得した第1の生理学的情報に基づいて覚醒状態を推定する(ステップS110)。例えば、処理回路150は、推定機能140により、第1の生理学的情報を解析し、被検体が安静且つ覚醒しているか否かを判定する。具体的には、処理回路150は、一例として、推定機能140により、少なくとも第1の生理学的情報に基づいて心拍変動(HRV:heart rate variability)解析を行うことにより(またはあわせて血圧変動、呼吸変動解析などを併用することにより)、覚醒状態を推定する。
【0047】
ここで、心拍変動とは、心拍の変化を示す尺度であり、例えばECG信号などから、連続する心拍間隔を分析することにより算出される。心拍変動は、循環機能の自律調節活動を反映する量である。心拍変動解析のより具体的な方法としては、時間領域解析、周波数領域解析、非線形解析などが挙げられる。時間領域解析を行う場合、処理回路150は、推定機能140により、例えば連続する心拍間隔の差の二乗平均平方根を算出する。また、周波数領域の解析を行う場合、処理回路150は、推定機能により、センサ113から取得したデータに対してフーリエ変換を行い周波数領域解析を行う。
【0048】
図4及び
図5に、心拍変動解析として、周波数領域解析を行う場合における、心拍変動解析の例が示されている。
図4及び
図5は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が行う心拍変動解析について説明した図である。
【0049】
図4は、覚醒時における心拍変動解析の一例であり、横軸は周波数を示し、縦軸は、被検体が覚醒時にある場合における、各周波数における各周波数成分の大きさを示している。また、
図5は、睡眠時における心拍変動解析の一例であり、横軸は周波数を示し、縦軸は、被検体が睡眠時にある場合における、各周波数における各周波数成分の大きさを示している。
【0050】
図4及び
図5の高周波数帯域5cは、それぞれ覚醒時及び睡眠時における、高周波帯域の周波数成分を示している。これらの周波数成分は呼吸が原因であり、これらの周波数成分は、主に迷走神経活性または副交感神経系から生じる。また、
図4及び
図5の低周波数帯域5bは、それぞれ覚醒時及び睡眠時における、低周波数帯域の周波数成分を示している。これらの周波数成分は、交感神経活性から生じる。また、
図4及び
図5の超低周波数帯域5aは、超低周波数帯域の周波数成分を示している。これらの周波数成分は、生体内系の熱調節等から生じる。なお、典型的には、高周波数帯域5cは、例えば0.15Hzから0.4Hz程度の周波数領域であり、低周波数帯域5bは、例えば0.04Hzから0.15Hz程度の周波数領域であり、超低周波数帯域5aは、例えば0.0033Hzから0.04Hz程度の周波数領域である。
【0051】
図4と
図5とを比較するとわかるように、覚醒時においては、高周波数帯域5cの周波数成分の、低周波数帯域5bの周波数成分に対する比率は比較的小さい。これに対して、睡眠時においては、高周波数帯域5cの周波数成分の、低周波数帯域5bの周波数成分に対する比率は比較的大きい。従って、処理回路150は、推定機能140により、第1の生理学的情報に基づいて心拍変動解析を行うことにより、覚醒状態や、安静度に関する情報を推定することができる。例えば、処理回路150は、推定機能140により、第1の生理学的情報に基づいて心拍変動解析を行い、例えばセンサ113から得られた信号をフーリエ変換した後の、高周波数帯域の周波数成分のフーリエ振幅と、低周波数帯域の周波数成分のフーリエ振幅との比率に基づいて、覚醒状態等を推定することができる。
【0052】
なお、高周波数帯域5cの周波数成分と、低周波数帯域5bの周波数成分との比率は、交感神経と副交感神経という2つの自律神経系のバランスを反映すると考えられている。
【0053】
図3に戻り、ステップS110で処理回路150が推定機能140により算出した覚醒状態や安静度に関する情報が、被検体が安静且つ覚醒していることを示すものであった場合、(ステップS120 Yes)、処理回路150は、制御機能133により、ステップS100において処理回路150がセンサ113から取得した第1の生理学的情報、ステップS110において処理回路150が推定機能140により行った心拍変動解析の解析結果及び推定した覚醒状態等、及びその時点での測定環境に関する情報等を、記憶装置132に送信する(ステップS125)。
【0054】
一方、処理回路150が推定機能140により算出した情報や安静度に関する情報が、被検体が安静且つ覚醒していることを示すものでない場合であり(ステップS120 No)、かつ覚醒状態維持が困難な場合(ステップS170 Yes)、処理を終了し、それ以外の場合(ステップS170 No)、処理回路150は、制御機能133により、ステップS110において処理回路150が推定機能140に基づいて推定した結果である覚醒状態や安静度に関する情報に基づいて、測定環境を制御する(ステップS200)。
【0055】
具体的には、例えば被検体が睡眠状態にあると判断される場合、処理回路150は、制御機能133により、スピーカー117aを制御して被検体に対して発せられる音声を制御することにより、測定環境を制御し、被検体の覚醒を促す。具体的には、例えば、処理回路150は、制御機能133により、スピーカー117aを通じて被検体の覚醒を促すための音声をスピーカー117aに流させるための制御信号を、スピーカー117aに送信する。また別の例として、処理回路150は、制御機能133により、照明装置117bを制御して照度を制御することにより、測定環境を制御し、被検体の適切な安静度を維持管理しながら覚醒を促す。具体的には、例えば、処理回路150は、制御機能133により、照明装置117bの照明を明るくする旨の制御信号を照明装置117bに送信し、被検体の覚醒を促す。別の例として、処理回路150は、制御機能133により、送風装置117dを制御して被検体に対して送られる風の風量を制御することにより、測定環境を制御し、被検体の適切な安静度を維持管理しながら覚醒を促す。具体的には、処理回路150は、制御機能133により、被検体に対して送風する処理を行う旨を送風装置117dに送信し、被検体の覚醒を促す。また、処理回路150は、制御機能133により、ディスプレイ117cを通じて被検体にメッセージを送信する。処理回路150が、制御機能133により、測定環境の制御を一定時間の間行なったのち、処理はステップS100へと戻る。
【0056】
(実施形態に係る処理の詳細:ステップS130~ステップS160)
ステップS125に戻り、処理回路150が、制御機能133により、第1の生理学的情報、心拍変動解析の解析結果や推定した覚醒状態等を記憶装置132に送信する処理が完了すると、処理はステップS130に進み、シーケンス制御回路120は、rs-fMRIのパルスシーケンスを実行して磁気共鳴信号の計測の実行を行う(ステップS130)。この時、シーケンス制御回路120は、プロスぺクティブな覚醒状態モニタリングを行いながら、第1の生理学的情報を取得した時間範囲と重複する時間範囲でBOLD(Blood Oxygenation LevelDependent)信号を収集するためのパルスシーケンスを実行してBOLD信号を収集する。ここで、プロスぺクティブに覚醒状態をモニタリングするとは、パルスシーケンスの実行の完了を待たずに、覚醒状態のモニタリングを行うことを意味する。
【0057】
実施形態では、ステップS110で覚醒しているかどうか、安静かどうかの判断がされた場合であっても、ステップS130においては、センサ113を通じた第1の生理学的情報の取得は行われ続ける。シーケンス制御回路120及び処理回路150は、センサ113を通じて取得された第1の生理学的情報を基にプロスぺクティブな覚醒状態モニタリングを行い、時々刻々と変化する被検体の覚醒状態をリアルタイムでモニタリングを行いながら、被検体の制御を行う。すなわち、処理回路150は、推定機能140により、シーケンス制御回路120によるrs-MRIのパルスシーケンスを実行中においても、ステップS110と同様の処理を実行しつづけており、心拍変動解析等に基づいて、被検体の覚醒状態や、安静度に関する情報の推定を行っている。これらの推定結果に基づいて、処理回路150は、制御機能133により、シーケンス制御回路120によるrs-MRIのパルスシーケンスを実行中においても、測定環境を制御し、例えば必要に応じて被検体の覚醒を促す。例えば、被検体が睡眠状態に入っていると判断される場合、シーケンス制御回路120は、パルスシーケンスの実行を一時停止し、被検体の撮像を一時中断する。なお、被検体の撮像の中断は任意的であり、パルスシーケンスの実行は一時中断されなくてもよい。その後、処理回路150は、制御機能133により、スピーカー117aを通じて被検体に音声を流し、照明装置117bの照明を明るくし、または送風装置117dを通じて送風を行うことにより、測定環境を制御する。
【0058】
また、同時に、処理回路150は、推定機能140により、被検体が覚醒状態にある時間の合計値、及び被検体が睡眠状態にある時間の合計値等を推定する。これらの推定値は、例えば後述するステップS180において、処理回路150が制御機能133によりデータ収集の進捗状況をディスプレイ135に表示する際に利用される。
【0059】
続いて、予定された撮像時間が経過し、シーケンス制御回路120が、データ収集を完了したと判断すると、(ステップS150 Yes)、処理はステップS155に進み、処理回路150は、推定機能133により、計測された磁気共鳴信号に基づいて解析を行う。一方、予定された撮像時間が経過するまでは、(ステップS150 No)、処理回路150は、制御機能133により、被検体の覚醒状態のモニタリングを行っている。前述したように、処理回路150は、推定機能140により、被検体が覚醒状態にある時間の合計値、及び被検体が睡眠状態にある時間の合計値等を推定している。処理回路150は、推定機能140により、これらの値に基づいて、データ収集の進捗状況を算出する。
【0060】
ここで、データ収集の進捗状況とは、被検体が覚醒状態かつ安静状態でデータが収集された時間の、予定された撮像時間に対する割合を示す。例えば、予定された撮像時間が20分であり、被検体が覚醒状態かつ安静状態でデータが収集された時間が15分であれば、データ収集の進捗状況は75%となる。また、予定された撮像時間が20分であり、データが収集された時間が15分であるが、そのうち被検体が5分間睡眠状態に入っていた場合、データ収集の進捗状況は50%となる。
【0061】
処理回路150が推定機能140によりこのようにデータ収集の進捗状況の算出を完了すると、処理回路150は、制御機能133により、データ収集の進捗状況をディスプレイ135に表示させる(ステップS180)。また、処理回路150は、インタフェース機能131により、例えば入力装置134を通じて、ユーザから撮像終了する旨の入力を必要に応じて適宜受け付ける。処理回路150がインタフェース機能131を通じてユーザから撮像終了する旨の入力を受け付けた場合(ステップS190 Yes)、処理はステップS155へと進み、処理回路150は、解析機能141により、第2の生理学的情報の算出を行う。一方、ユーザから撮像終了する旨の入力がない場合(ステップS190 No)、撮像は引き続き行われる。
【0062】
ステップS155に戻り、パルスシーケンスの実行が終了すると、処理回路150は、
生成機能136により、ステップS155で生成された磁気共鳴イメージング信号であるBOLD信号に基づいて、第2の生理学的情報を生成する(ステップS155)。ここで、第2の生理学的情報の例としては、自発性脳活動ネットワーク(Default Mode Network: DMN)の結合度を表す情報、例えば、所定の異なる領域間の結合度(Connectivity Strength)を表す情報が挙げられる。ここで、所定の異なる領域とは、DMN(Default Mode Network)の場合には、内側前頭前野(Medial Prefrontal Cortex:MPFC)や後部帯状回(Posterior Cingulate Cortex: PCC)が当該所定の異なる領域となる。例えば、処理回路150は、解析機能141により、ステップS130で収集された磁気共鳴イメージング信号であるBOLD信号に基づいて、内側前頭前野や後部帯状回等の領域間の結合度を表す情報を、第2の生理的情報として生成する。
【0063】
図6に、かかる状況が示されている。領域10a、10b、11及び別の断面で示された領域12a、12b、12c、12dは、安静時に血流が増加する領域の一例を示している。これら、安静時に血流が増加する領域の脳領域は、互いに連関し、一つのネットワークとして同期しながら、DMN(Default Mode Network)と呼ばれる一つのネットワークを形成し、これらは安静時の脳活動を構成する。例えばアルツハイマー型認知症では、認知症の早期の段階から、DMNに異常が生じることが知られており、rs-fMRIにおいてDMNを調べることの臨床的応用が期待されている。また、自閉症等の例についても、同様にrs-fMRIにおいて臨床的応用が期待されている。ステップS155では、処理回路150は、解析機能141により、これら臨床的価値の高いと考えられる第2の生理学的情報を生成する。
【0064】
続いて、処理回路150は、解析機能141により、例えば第1の生理学的情報と第2の生理学的情報との相関解析を行い、第1の生理学的情報と第2の生理学的情報とを関連づける(ステップS160)。一例として、処理回路150は、解析機能141により、第1の生理学的情報に基づいてレトロスぺクティブに被検体の覚醒状態について解析を行い、解析結果を基に第2の生理学的情報について更に解析を行う。一例として、処理回路150は、解析機能141により、覚醒状態のデータと睡眠状態のデータとを分離した上で、自発性脳活動と自律神経活動とのカップリング(相互作用)に関する知見に基づき、覚醒状態及び睡眠状態のデータそれぞれのデータに対して、心拍変動解析(HRV:Heart Rate Variation)及び内因性脳活動結合ネットワーク(ICN:Intrinsic Connectivity Network)という観点から解析を行い、当該データを健常者群と疾患群とに分離する。ステップS160が完了すると、一連の処理が終了する。以下、ステップS160の処理について詳しく説明する。
【0065】
(ステップS160の処理について:自発性脳活動と自律神経活動との関係)
まずはじめに、
図7及び
図8を用いて、自発性脳活動と自律神経活動との関係について説明する。
【0066】
図7は、実施形態の背景について説明した図であり、(A)覚醒状態(B)ノンレム睡眠状態(C)レム睡眠状態における脳の状態及び自律神経活動と、心臓活動の調整について説明した図である。
【0067】
まず、(A)に示されるように、覚醒状態では、脳幹23a及びその反射に関するループ、例えば血液反射24a、呼吸25a及び化学反射26aにより、心臓27aの活動が活発化され、心拍数が増加する。また、中帯状皮質20a、島皮質21a、扁桃体22a等を含む自律神経ネットワークは、心臓27aの活動に影響を与える。例えば、扁桃体22aは、心拍数の増加、交感神経活動の増加、副交感神経活動の減少等を通じて、心臓27aの活動に影響を与える。
【0068】
また、(B)に示されるように、ノンレム睡眠状態では、脳幹23b及びその反射に関するループである血液反射24b、呼吸25b及び化学反射26bは依然として心臓27aの活動を活発化させ心拍数を増加させる一方で、ノンレム睡眠状態では、ANS活動の反射ループが優位であり、中帯状皮質20b、島皮質21b、扁桃体22b等を含む自律神経ネットワークは、心拍数を低下させ、交感神経活動を減少させ、副交感神経活動を増加させる。
【0069】
また、(C)に示されるように、レム睡眠状態では、脳幹23c及びその反射に関するループである血液反射24c、呼吸25c及び化学反射26cは心臓27cの活動を抑制し、心拍数を低下させる。一方で、レム睡眠状態では、島皮質21c及び扁桃体22cは、心拍数を増加させる。このように、島皮質21c及び扁桃体22cによる中央制御と、反射ループによる心血管系の恒常性制御との間で調整機能が働いており、これにより心拍数が減少し、交感神経活動が優位になるとともに、副交感神経活動が低下する。
【0070】
このように、健常者群において、覚醒状態と、第1の生理学的情報は、互いに密接に連関している。
【0071】
また、覚醒状態により、異なる部位の脳活動が支配的になる。
図8は、かかる実施形態の背景について説明した図であり、(A)ノンレム睡眠状態(B)レム睡眠状態における脳活動について説明した図である。
【0072】
まず、(A)に示されるように、ノンレム睡眠状態においては、脳幹31を除き、前頭前皮質30a、前帯状皮質30b、前頭前野30c、前大脳基底核30d、視床30e、前弓30fなどで、脳活動が軒並み低下する。一方、(B)に示されるように、レム睡眠状態においては、前帯状皮質33a、側頭部33b、扁桃体33c、視床33d、海馬33e、前脳底33f、橋脚部33g等では脳活動が増加する一方、背側前頭前皮質32a、後帯状皮質32b、前頭前野32c、下頭頂皮質32d、脳幹32e等では脳活動が低下する。このように、健常者群において、覚醒状態と、自発性脳活動とは、互いに密接に連関しており、健常者群において、覚醒状態と、第2の生理学的情報は、互いに密接に連関している。
【0073】
加えて、第1の生理学的情報及び第2の生理学的情報は、特定の神経疾患の判定に有効な情報となりうる。例えば、アルツハイマー病の初期の段階で、DMNに異常が起こり、自発性脳活動ネットワークの結合度が低下する。従って、これらの生理学的情報は、例えばアルツハイマー病の早期発見に有効な情報となりうる。
【0074】
(ステップS160の処理について:覚醒状態及び疾患状態の判定)
以上の知見が、
図9にまとめられている。
図9は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理について説明した図である。
【0075】
図9の各列は、どのようなデータに基づいて解析を行うかを表しており、心拍数変動(HRV:Heart Rate Variability)及び内因性脳活動結合ネットワーク(ICN:Intrinsic Connectivity Network)の例が示されている。また、心拍数変動を用いる場合においては、低周波数領域(LF:Low Frequency)、高周波数領域(HF:High Frequency)、LF/HF(低周波数領域での周波数成分の大きさを、高周波数領域での周波数成分の大きさで除したもの)を用いる場合が示されている。また、内因性脳活動結合ネットワークに係る情報を用いる場合としては、DMNを用いる場合、DMNの特定領域(subregion)の情報を用いる場合が示されている。また、実施形態においては詳細な説明は省略するが、聴覚刺激(Auditory)や、実行制御ネットワーク(executive control network)を用いてもよい。
【0076】
また、
図9の各行は、何の判定を行うかを表しており、覚醒/睡眠(wake/sleep state)についての判定を行う場合が上段に、主にアルツハイマー病を想定して、病気の状態(disease condition)についての判定を行う場合が示されている。覚醒/睡眠(wake/sleep state)についての判定を行う場合、病気の状態(disease condition)についての判定を行う場合それぞれについて、より詳細な判定が行われる。例えば、覚醒/睡眠判定においては、睡眠状態(Wake)、ノンレム睡眠状態(NREM)、レム睡眠状態(REM)について判定が行われ、更にノンレム睡眠状態は、浅い睡眠状態から深い睡眠状態までN1睡眠状態、N2睡眠状態及びN3睡眠状態に分けられる。また、病気の状態を判定する場合、健常者老人(Normal Elderly)とアルツハイマー病(Alzheimer’s disease)に分けられ、さらにアルツハイマー病は、ステージ1~3の3段階に分かれる。ステージ1は前臨床(preclinical)段階であり、ステージ2は軽度認知障害(mild cognitive impairment)段階であり、ステージ3はアルツハイマー型痴呆(Alzheimer’s dementia)段階である。
【0077】
まず、心拍数変動(HRV)を用いて覚醒/睡眠判定を行う場合について、低周波数領域(LF)のデータを用いる場合について説明する。
図9の表からわかるように、低周波数領域(LF)において、N1睡眠状態の方が、覚醒状態よりも信号強度が大きい。また、N2睡眠状態の方が、覚醒状態よりも信号強度が大きい。また、N1睡眠状態及びN2睡眠状態の方が、N3睡眠状態よりも信号強度が大きい。また、レム睡眠状態の方が、N1睡眠状態、N2睡眠状態、N3睡眠状態よりも信号強度が大きい。従って、処理回路150は、解析機能141により、低周波数領域(LF)の心拍数変動(HRV)に係るデータに基づいて、覚醒状態、N1睡眠状態、N2睡眠状態、N3睡眠状態、レム睡眠状態の判定を行うことができる。同様にして、処理回路150は、解析機能141により、高い周波数領域(HF)の心拍数変動(HRV)に係るデータや、LF/HFのデータに基づいて、覚醒状態、N1睡眠状態、N2睡眠状態、N3睡眠状態、レム睡眠状態の判定を行うことができる。かかる手続きの詳細は、例えば
図4及び
図5を用いてすでに説明している。
【0078】
次に、内因性脳活動結合ネットワーク(ICN)を用いて覚醒/睡眠判定を行う場合について、DMNのデータを用いる場合について説明する。
図9の表からわかるように、覚醒状態及びREM状態ではDMNは発現しない。また、N1睡眠状態では、覚醒状態より、DMNに係る信号強度は大きい。また、N2睡眠状態では、N1睡眠状態より、DMNに係る信号強度は大きい。また、N3睡眠状態では、N1睡眠状態及びN2睡眠状態より、DMNに係る信号強度は大きい。すなわち、DMNの信号強度は、覚醒状態から、N1睡眠状態、N2睡眠状態と睡眠が深くなるにつれて増加するが、さらに睡眠が深くなりN3睡眠状態になると信号強度は低下し、レム睡眠状態に至ると信号強度は消失する。従って、処理回路150は、解析機能141により、DMNの信号強度に基づいて、ノンレム睡眠の睡眠段階の判定を行うことができる。また、
図9の最右列に示されているように、処理回路150は、解析機能141により、特定の領域のDMNの信号強度に基づいて、睡眠段階の判定を行うことができる。
【0079】
なお、覚醒/睡眠判定を行うに当たっては、実施形態は、心拍数変動(HRV)、内因性結合ネットワーク(ICN)いずれか片方のみを用いて覚醒/睡眠判定を行うことも可能であるが、心拍数変動(HRV)及び内因性脳活動結合ネットワーク(ICN)の両方の情報を用いて総合的に覚醒/睡眠判定がなされるのが望ましい。
【0080】
続いて、心拍数変動(HRV)を用いてアルツハイマー病の病気の状態の判定を行う場合について、低周波数領域(LF)のデータを用いる場合について説明する。
図9の表からわかるように、低周波数領域(LF)において、ステージ1の疾患群の方が、健常者群よりも信号強度が大きい。また、ステージ2の疾患群の方が、ステージ1の疾患群と比較して信号強度が大きい。また、ステージ3の疾患群の方が、ステージ2の疾患群と比較して信号強度が大きい。従って、処理回路150は、解析機能141により、低周波数領域(LF)の心拍数変動(HRV)に係るデータに基づいて、健常者群と疾患群とを分離することができ、また疾患群のうち、疾患がどのステージにあるかを判定することができる。同様にして、処理回路150は、解析機能141により、高い周波数領域(HF)の心拍数変動(HRV)に係るデータや、LF/HFのデータに基づいて、健常者群と疾患群とを分離することができ、また疾患群のうち、疾患がどのステージにあるかを判定することができる。
【0081】
次に、内因性脳活動結合ネットワーク(ICN)を用いてアルツハイマー病の病気の状態の判定を行う場合について、DMNのデータを用いる場合について説明する。
図9に示されているように、ステージ2の疾患群において、健常者やステージ1の疾患群と比較して、DMNに係る信号強度が、例えば楔前部、左海馬、前帯状皮質、直回等で低下することがしられている。従って、処理回路150は、解析機能141により、内因性脳活動結合ネットワーク(ICN)に係るデータに基づいて、健常者群と疾患群とを分離することができ、また疾患群のうち、疾患がどのステージにあるかを判定することができる。
【0082】
なお、病気の状態の判定を行うに当たっては、同様に、実施形態は、心拍数変動(HRV)、内因性脳活動結合ネットワーク(ICN)いずれか片方のみを用いて覚醒/睡眠判定を行うことも可能であるが、たとえば、ICNの変化のみを評価対象とした場合、疾患特異的な変化なのか、覚醒状態に依存した変化なのかの判定が難しい場合もあるため、心拍数変動(HRV)及び内因性結合ネットワーク(ICN)の両方の情報を用いて総合的に覚醒/睡眠判定がなされることがより望ましい。
【0083】
(ステップS160の処理の詳細)
続いて、ステップS160の処理について、
図10を用いてより具体的に説明する。
図10は、かかるフローチャートであり、
図3のステップS160の処理の手順についてより詳細に説明したフローチャートである。
【0084】
はじめに、ステップS161において、処理回路150は、解析機能141により、覚醒状態のデータと睡眠状態のデータを分離し、睡眠状態のデータが、疾患群のデータと誤って認識されるのを防止する。例えば、処理回路150は、解析機能141により、第1の生理学的情報に基づいて、例えばステップS110及びステップS130等で説明した心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)解析を実行し、レトロスぺクティブに被検体の覚醒状態等について評価を行う。また、別の例として、処理回路150は、処理回路150は、解析機能141により、心拍変動(HRV)解析と内因性結合ネットワーク(ICN)に係る情報に係る解析との両方の解析を行って、被検体の覚醒状態等についての評価を行い、覚醒状態のデータと睡眠状態のデータを分離する。
【0085】
この結果を基に、処理回路150は、解析機能141により、シーケンス制御回路120が収集した第2の生理学的情報から、被検体が覚醒状態における第2の生理学的情報を抽出する。
【0086】
続いて、ステップS162において、処理回路150は、解析機能141により、覚醒状態のデータを、心拍変動解析(HRV)及び内因性結合ネットワーク(ICN)の観点から解析する。一例として、処理回路150は、解析機能141により、同一計測時間における心拍変動(HRV)解析の結果とBOLD信号との関係性を、相互相関解析や回帰分析等の手法により比較する。
【0087】
図11及び
図12に、かかる解析の例が示されている。
図11及び
図12は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置に係る処理について説明した図である。
【0088】
図11において、グラフ1aは、処理回路150が推定機能140によりステップS100で第1の生理学的情報として生成した、心拍数の時系列データの一例を表す。すなわち、グラフ1aに関して、
図11の横軸は時刻であり、縦軸は心拍数である。また、グラフ1bは、ステップS155において処理回路150が生成機能136により第2の生理学的情報として生成した、BOLD信号の信号強度の一例を示す。すなわち、グラフ1bに関して、
図11の横軸は時刻であり、縦軸はBOLD信号の強度である。
【0089】
また、タイムウィンドウ4a及び4bは、一つのタイムウィンドウにおいて解析対象となる時間の幅を示している。すなわち、ある一つのタイムウィンドウにおいては、例えばタイムウィンドウ4aで示されている範囲のグラフ1a及びグラフ1bのデータが、解析の対象となる。また、別のタイムウィンドウにおいては、例えばタイムウィンドウ4bで示されている範囲のグラフ1a及びグラフ1bのデータが、解析の対象となる。処理回路150は、解析機能141により、各タイムウィンドウごとに第1の生理学的情報に係るグラフ1aと第2の生理学的情報に係るグラフ1bについて解析を行い、少しずつタイムウィンドウをずらしながら、タイムウィンドウの位置の関数として、第1の生理学的情報に関する指標値及び第2の生理学的情報に関する指標値を算出する。
【0090】
図12において、グラフ2aは、算出された、第1の生理学的情報に関する指標値を、タイムウィンドウの位置の関数として示したものである。すなわち、グラフ2aに関して、
図12の横軸はタイムウィンドウの位置であり、縦軸は第1の生理学的情報に関する指標値である。ここで、第1の生理学的情報に関する指標値は、例えば以下の式(1)で与えられるRMSSD(Root Mean Square of Successive Differ)である。
【0091】
【0092】
ここで、RRiはi番目のRR間隔であり、Nはタイムウィンドウに含まれるサンプル点の数である。この式からわかるように、RMSSDは、心拍数の分散を表す指標である。
【0093】
また、
図12において、グラフ2bは、算出された、第2の生理学的情報に関する指標値を、タイムウィンドウの位置の関数として示したものである。すなわち、グラフ2bに関して、
図12の横軸はタイムウィンドウの位置であり、縦軸は第2の生理学的情報に関する指標値である。ここで、第2の生理学的情報に関する指標値は、例えば異なる自発性脳活動ネットワークの結合度を表す指標値であって、例えばFisherのz変換後の単位で表される指標値である。処理回路150は、生成機能136により、第2の生理学的情報に関する指標値を、例えば所定の異なる領域間で、BLOD信号の信号値の相関をとることにより算出する。
【0094】
処理回路150は、これらの解析結果、例えば、心拍変動解析の結果とBOLD信号との比較結果、抽出された被検体が覚醒状態における第2の生理学的情報のデータ等を、記憶装置132に送信し、解析結果をデータベースとして登録する。
【0095】
続いて、処理回路150は、解析機能141により、更に解析を行う。例えば、上述したように、処理回路150は、解析機能141により、第1の生理学的情報及び第2の生理学的情報に基づいて、被検体がアルツハイマー病等の疾患を有している可能性に関する情報を生成する。
【0096】
例えば、第1の生理学的情報に基づいた解析により被検体が覚醒状態にあると考えられるが、第2の生理学的情報に基づいた解析により自発的脳活動ネットワークの結合度が閾値を下回る場合、処理回路150は、解析機能141により、被検体がアルツハイマー病等の疾患を有している可能性が高い旨の情報を生成する。このことにより、診断の精度を向上させることができる。
【0097】
続いて、ステップS163において、処理回路150は、解析機能141により、ステップS161で睡眠状態のデータであると判定されたデータを基に、心拍変動解析(HRV)及び内因性脳活動結合ネットワーク(ICN)の観点から解析する。なお、本ステップの適用は任意であり、必要に応じて本ステップの適用は省略されてもよい。
【0098】
続いて、ステップS164において、ステップS162及びステップS163で行われた解析に基づいて、処理回路150は、健常者群と疾患群とを分離する。すなわち、処理回路150は、解析機能141により、得られたデータが、健常者群に含まれるデータか、疾患群に含まれるデータであるかを判定する。これにより、診断に有用な知見を得ることが可能となる。
【0099】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述の例に限られない。
【0100】
上述の例では、処理回路150が、プロスぺクティブに覚醒状態をモニタリングしつつ測定環境の制御を行いながら、診断のための覚醒状態の解析についてはレトロスぺクティブに行う場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。処理回路150がプロスぺクティブに覚醒状態を評価し、その結果を基にレトロスぺクティブな評価を行うことなく解析を行っても良いし、またプロスぺクティブな覚醒状態のモニタリングによる測定環境の制御を行わなくても良い。
【0101】
実施形態では、ステップS155において処理回路150が解析機能141により生成する第2の生理学的情報の例として、DMN(Default Mode Network)について調べる場合について説明した。実施形態はこれに限られず、第2の生理学的情報の例としては、その他のネットワークに対応する異なる領域間の結合後を示す情報であってもよい。例えば、当該その他のネットワークがWMN(Working Memory Network)である場合に、第2の生理学的情報は、例えば外側前頭前野(Lateral Prefrontal Cortex)や後部頭頂葉(Posterior Parietal Cortex: PPC)の結合度を表す情報となる。すなわち、処理回路150は、解析機能141により、ステップS155で生成された磁気共鳴イメージング信号であるBOLD信号に基づいて、外側前頭前野や後部頭頂葉等の領域間の結合度を表す情報を、第2の生理的情報として生成する。また、例えば、当該その他のネットワークがDAN(Dorsal Attentional Network)である場合に、第2の生理学的情報は、例えば前頭眼野(Frontal Eye Field: FEF)や上部頭頂葉(Superior Parietal Lobe: SPL)の結合度を表す情報となる。すなわち、処理回路150は、解析機能141により、ステップS155で生成された磁気共鳴イメージング信号であるBOLD信号に基づいて、前頭眼野や上部頭頂葉等の領域間の結合度を表す情報を、第2の生理的情報として生成する。
【0102】
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用コンピューターが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100による効果と同様の効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピューターに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピューター又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピューターは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100と同様の動作を実現することができる。また、コンピューターがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
【0103】
また、記憶媒体からコンピューターや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピューター上で稼働しているOS(Operating System)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(Middleware)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。更に、記憶媒体は、コンピューターあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0104】
なお、実施形態におけるコンピューター又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。また、実施形態におけるコンピューターとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0105】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置によれば、データ収集の信頼性・再現性を向上させることができる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
120 シーケンス制御回路
150 処理回路
133 制御機能
136 生成機能
140 推定機能
141 解析機能