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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ペット用排尿処理材
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
A01K1/015 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019141780
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021023163
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598167213
【氏名又は名称】黒崎白土工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】黒▲崎▼ 英和
(72)【発明者】
【氏名】星野 正輝
(72)【発明者】
【氏名】長井 雄希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悌治
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-044823(JP,A)
【文献】米国特許第05647300(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装して提供されるペット用排尿処理材であって、
吸水性粒状物と、非崩壊性の調湿性粒状物と、を含み、
前記2種の粒状物は、粒状物全体を100重量部とした場合に、吸水性粒状物:非崩壊性の調湿性粒状物=95:5~80:20の重量比で含まれ、
前記吸水性粒状物は、膨潤性スメクタイト系粘土を原料とし、
前記非崩壊性の調湿性粒状物は、ゼオライトを主体とし、
前記非崩壊性の調湿性粒状物の外表面には消臭添加剤が偏在し、
前記消臭添加剤には、銅化合物が含まれており、
包装開封後にRH50%の湿度下で10日経過後の含有水分の増分が4%以内である、調湿機能を有するペット用排尿処理材。
【請求項2】
前記非崩壊性の調湿性粒状物は、ゼオライトを0.5~10mmの大きさに破砕または成形した粒状物であることを特徴とする請求項1に記載の調湿機能を有するペット用排尿処理材。
【請求項3】
前記膨潤性スメクタイト系粘土は、該膨潤性スメクタイト系粘土1kg当たり0.3~1.5当量(eq)の交換性ナトリウム成分を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の調湿機能を有するペット用排尿処理材。
【請求項4】
前記膨潤性スメクタイト系粘土は、膨潤度が15mL/2g以上であることを特徴とする請求項1またはに記載の調湿機能を有するペット用排尿処理材。
【請求項5】
前記ゼオライトは、天然ゼオライトであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の調湿機能を有するペット用排尿処理材。
【請求項6】
前記銅化合物は、二価の銅と酸との塩化合物である請求項に記載の調湿機能を有するペット用排尿処理材。
【請求項7】
前記調湿性粒状物のうち90重量量%以上は、目開きが11mmの篩を通過し、且つ0.6mmの篩を通過しないものであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の調湿機能を有するペット用排尿処理材。
【請求項8】
ゼオライトを主体とする非崩壊性の調湿性粒状物の外表面に消臭添加剤が偏在し、
前記消臭添加剤には、銅化合物が含まれており、
膨潤性スメクタイト系粘土を原料とする吸水性粒状物と、吸水性粒状物:非崩壊性の調湿性粒状物=95:5~80:20の重量比で混合した混合物を包装状態で提供した場合に、
包装開封後にRH50%の湿度下で10日経過後の含有水分の増分が4%以内である、ことを特徴とするペット用排尿処理材用の調湿性粒状物。
【請求項9】
膨潤性スメクタイト系粘土から吸水性粒状物を製造するステップと、
消臭添加剤を製造するステップと、
ゼオライトを主体とする非崩壊性の調湿性粒状物の外表面に前記消臭添加剤を偏在させるステップと、
前記2種の粒状物を、吸水性粒状物:調湿性粒状物=95:5~80:20の重量比となるように混合するステップと、
包装するステップと、を含み、
前記消臭添加剤には、銅化合物が含まれており、
包装開封後にRH50%の湿度下で10日経過後の含有水分の増分が4%以内である、ことを特徴とする調湿機能を有するペット用排尿処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペット用排尿処理材に係り、特に、吸湿抑制能に優れ包装開封後であっても比較的長い期間品質が保持されるペット用排尿処理材に関する。
【背景技術】
【0002】
従前よりペット用トイレに使用されるペット用の排尿処理材としては様々なものがある。形状としては、ペレット形状、シート形状等のものがあり、その原料についても粘土、おがくず、紙等の様々な種類のものがある。
【0003】
このようなペット用排尿処理材に関しては様々な提案がなされている。例えば特許文献1には、悪臭ガスに対する脱臭能が高く、吸水時の凝集固化性にも優れたペットのトイレ砂用基材が開示されている。また特許文献2には、適度に除湿機能を有し、吸水性、アンモニア臭の除去能力、微生物の増殖抑制能力を有する安定した廉価な粒上の動物用排泄物処理材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-117169号公報
【文献】特開2009-284881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなペット用排尿処理材の中でも、粘土製のものは吸湿することで性能が劣化することが知られている。吸湿により性能が劣化するタイプのペット用排尿処理材は一般的に吸湿が起こりにくいように袋詰め等の包装状態で販売されるが、包装が開封された後は周囲の水分を吸って徐々に吸水性能が低下してしまい使用されるときに十分な吸水性能が得られないこともあった。特に、梅雨時などの湿度が高い時期には吸水性能の低下がより顕著である。
【0006】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、吸湿によるペット用排尿処理材の品質の劣化が抑制されたペット用排尿処理材を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するために、本発明に係るペット用排尿処理材は、吸水性粒状物と、非崩壊性の調湿性粒状物と、を含み、前記2種の粒状物は、粒状物全体を100重量部とした場合に、吸水性粒状物:非崩壊性の調湿性粒状物=95:5~80:20の重量比で含まれ、前記非崩壊性の調湿性粒状物は、ゼオライトを主体とするものである。
【0009】
ここで「吸水性粒状物」とは、水分を吸収する物質を主成分とした粒状物を意味し、例えばベントナイトや紙(パルプ)等を主成分とした粒状物が挙げられる。「非崩壊性の調湿性粒状物」とは、調湿性を有し、吸水時に自己接着性を有さず、更に水中に投下して1時間が経過しても実質的な崩壊が起こらないものを意味する。また「ゼオライトを主体とする」とは、非崩壊性の非自己接着性粒状物全体の80%以上がゼオライトであることを意味する。
【0010】
そしてこのような構成によれば、包装が開封された後であっても調湿性粒状物に含まれるゼオライトが周囲の水分を吸収することにより吸水性粒状物の吸湿が起こりにくく、吸水性能が低下しにくいペット用排尿処理材となる。
【0011】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記非崩壊性の調湿性粒状物の外表面には消臭添加剤が偏在する。
【0012】
このような構成によれば、調湿性能と吸水性能に加えて消臭性能にも優れたペット用排尿処理材となる。
【0013】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記非崩壊性の調湿性粒状物は、ゼオライトを0.5~10mmの大きさに破砕または成形した粒状物である。
【0014】
このような構成によれば、吸水性粒状物との偏析が起こりにくく、均一に混合されたペット用排尿処理材が得られる。
【0015】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記吸水性粒状物は、膨潤性スメクタイト系粘土を原料とするものである。
【0016】
このような構成によれば、実用に充分な吸尿固化性を有しながらも、消臭性能に優れたペット用排尿処理材が得られる。
【0017】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記膨潤性スメクタイト系粘土は、該膨潤性スメクタイト系粘土1kg当たり0.3~1.5当量(eq)の交換性ナトリウム成分を含むものとする。
【0018】
このような構成によれば、スメクタイト粒子の層間乃至は近傍に好適な量の交換性ナトリウムが存在するため膨潤固化性がより向上し、尿を吸収した粒状物が素早く膨潤、固結することでまとまった固化塊状物が得られる。
【0019】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記膨潤性スメクタイト系粘土から成る接着性粒状物は、膨潤度が15mL/2g以上である。
【0020】
ここで、膨潤度は次の手順で測定されたものである。粉末試料2gを、純水100mLを入れたメスシリンダーに、内壁に殆ど付着しないようにしながら先に加えた試料が殆ど沈着した後に次の試料を加えるようにして分け入れ、試料を加え終わった後に24時間静置した後に、容器内に堆積した試料の見掛け容積を読み取り膨潤度(ml/2g)とした。
【0021】
そしてこのような構成によれば、膨潤度が適切な範囲であるため尿の吸収が速やかに進行することに加え、半乾燥乃至乾燥後においても崩れにくい硬い塊状物が形成されやすくなる。
【0022】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記ゼオライトは、天然ゼオライトである。
【0023】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記消臭添加剤には、銅化合物が含まれている。
【0024】
このような構成によれば、調湿能に加えて消臭能にも優れたペット用排尿処理材が得られる。
【0025】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記銅化合物は、二価の銅と酸との塩化合物である。
【0026】
このような構成によれば、硫黄系悪臭物質の脱臭、特にメルカプト化合物の化学的吸着による捕捉が促進され、より優れた消臭性能が発揮される。
【0027】
また本発明の好ましい実施の形態においては、前記調湿性粒状物のうち90重量量%以上は、目開きが11mmの篩を通過し、且つ0.6mmの篩を通過しないものとする。
【0028】
このような構成によれば、調湿性粒状物の大部分の粒径が0.6~11mmの範囲であることにより、消臭剤の担持表面積が大きくなることで消臭性能がより向上し、更に、包装袋やペット用トイレへの充填時にも偏りが起こりにくく粉立ちも抑制できる。
【0029】
また、本願発明は、ペット用排尿処理材用の消臭性粒状物に関する発明としても捉えることができる。
【0030】
本発明に係るペット用排尿処理材用の調湿性粒状物は、ゼオライトを主体とする非崩壊性の調湿性粒状物の外表面に消臭添加剤が偏在し、前記消臭添加剤には、銅化合物が含まれていることを特徴とするものである。
【0031】
このような構成によれば、この調湿性粒状物を市販のペット用排尿処理材に混合することで市販のペット用排尿処理材であっても本発明品のように吸湿抑制効果が得られる。
【0032】
また、本願発明は、ペット用排尿処理材の製造方法としても捉えることができる。
【0033】
本発明に係るペット用排尿処理材の製造方法は、吸水性を有する素材から吸水性粒状物を製造するステップと、ゼオライトを主体とする非崩壊性の調湿性粒状物を調製するステップと、必要に応じて調湿性粒状物の外表面に消臭添加剤を偏在させるステップと、前記2種の粒状物を、吸水性粒状物:調湿性粒状物=95:5~80:20の重量比となるように混合するステップと、を含むことを特徴とする。
【0034】
このような構成によれば、吸湿抑制効果と吸水性のバランスが良く、消臭能にも優れたペット用排尿処理材が得られる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るペット用排尿処理材によれば、包装が開封された後であっても調湿性粒状物に含まれるゼオライトが周囲の水分を吸収することにより吸水性粒状物の吸湿が起こりにくく、吸水性能も低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例1:含有水分量の推移を示す図である。
図2】実施例1:固化長の測定結果を示す図である。
図3】実施例2:含有水分量の推移を示す図である。
図4】実施例2:吸水性粒状物の含有水分量の推移を示す図である。
図5】実施例2:調湿性粒状物の含有水分量の推移を示す図である。
図6】実施例2:固化長の測定結果を示す図(その1)である。
図7】実施例2:固化長の測定結果を示す図(その2)である。
図8】実施例3:被検体の詳細を示す図である。
図9】実施例3:サンプル1の経時による変化を示す図である。
図10】実施例3:サンプル2の経時による変化を示す図である。
図11】実施例3:含有水分量の推移を示す図である。
図12】実施例4:含有水分量の推移を示す図(その1)である。
図13】実施例4:含有水分量の推移を示す図(その2)である。
図14】実施例5:含有水分量の推移を示す図である。
図15】実施例5:吸水性粒状物の含有水分量の推移を示す図である。
図16】実施例5:固化長の測定結果を示す図(その1)である。
図17】実施例5:固化長の測定結果を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明に係るペット用排尿処理材の好適な一実施例を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
本発明に係るペット用排尿処理材は、吸水性粒状物と、非崩壊性の調湿性粒状物と、を含み、前記2種の粒状物は、粒状物全体を100重量部とした場合に、吸水性粒状物:非崩壊性の調湿性粒状物=95:5~80:20の重量比で含まれ、前記非崩壊性の調湿性粒状物は、ゼオライトを主体とするものである、ことを特徴とするものである。
【0039】
<本発明の経緯>
出願人は以前より消臭性能を有する消臭性粒状物を配合したペット用排尿処理材を製造している。そこで、消臭性能の向上を目的としてゼオライトを消臭剤でコーティングしたものを製造し吸水性粒状物と混合して各種性能評価試験を行った。その結果、当初の目的であった消臭性能については著しい効果は認められなかったものの、ペット用排尿処理材自体がへたりにくい、即ち品質劣化が起こりにくく吸水性能や消臭性能の劣化が従来品よりも抑制されることを知見した。
【0040】
<吸水性粒状物>
本発明において「吸水性粒状物」とは、水分を吸収する物質を主成分とした粒状物を意味し、このような吸水性粒状物の原料としては、酸性白土、サブベントナイト、ベントナイト等のジオクタヘドラル型スメクタイトを主要成分とし必要に応じてアルカリ処理した膨潤性粘土、パルプ、紙(再生紙)、等を用いることが出来る。
【0041】
吸水性粒状物の原料としてジオクタヘドラル型スメクタイトを主要成分とした粘土を用いる場合には、これらの原料粘土ではその種類毎にスメクタイトの層間内や層間外に付着しているイオン交換性のナトリウム成分量が異なり、一般的には酸性白土、サブベントナイト、ベントナイトの順に、pH、該Na成分量ともに高くなる。具体的には、酸性白土では、pHは5、該Na成分量は0ミリ当量/100g程度であるのに対して、サブベントナイト~ベントナイトではpHは8~10、該Na成分量は1~20ミリ当量/100g程度となる。したがって、後述するアルカリ化合物の添加については、その原料粘土毎に適したアルカリ量とすることが好ましい。スメクタイト系粘土にアルカリ剤を添加して混練することでスメクタイト系粘土のスメクタイト層間にアルカリ化合物の陽イオンが導入され、スメクタイト系粘土の膨潤性と固化性が向上する。
【0042】
ここで用いるアルカリ化合物としては、炭酸塩、ケイ酸塩、水酸化物等既知のものを適宜選択して用いることができるが、充分な膨潤性向上効果が得られ、安価であるという理由から炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のナトリウム化合物が好ましい。
【0043】
また、ナトリウム化合物の添加量は、原料粘土に元々含有されている交換性ナトリウム量と添加した交換性ナトリウム量の合量が0.3~1.5当量(eq)、特に0.5~1.0当量(eq)となるように調整することが好ましい。このとき、得られる接着性粒状物の懸濁液pHは10以上となる。
【0044】
スメクタイト粒子の層間乃至は近傍に交換性ナトリウムが好適な量だけ存在することで、猫等の尿を吸収した部分が素早く膨潤・泥状化し、やがてゲル化して、該泥状化域で接触している粒状物同士が固結して固化塊状物を生成する。このとき、上述の範囲で交換性ナトリウム成分を含むことにより、「尿で固まる排尿処理材」として実用上充分な固化性を有することとなる。但し、交換性ナトリウム成分の量が少なすぎると尿を吸収した粒状物同士の接触域での膨潤→泥状化が充分でなく、逆に交換性ナトリウムの量が多すぎると泥状→ゲル化の進行が充分でなくなる。
【0045】
また、膨潤性スメクタイト粘土から成る吸水性粒状物同士の吸尿固化に関するメカニズムは大凡このように説明できるが、吸水性粒状物:調湿性粒状物=95:5~80:20(重量部)の割合で配合されている場合には、先ず吸尿により吸水性粒状物の表層が膨潤・泥状化し、その泥状部分が調湿粒状物の親水性表面と接触して異種の粒状物同士を接着するようにゲル化するため異種の粒状物が混じり合った硬い固化塊状物が生成することが見出された。意外にも、吸水性粒状物の表面に生じる泥状化部分があたかも接着剤のように働いて、該粒状物自らの表面と自らは接着性も接着成分も有しない調湿性粒状物の表面を接着するように進行する現象が認められた。吸水性粒状物(A)と調湿製粒状物(B)の混合物であっても、或る配合比率(A>B)では、2種の粒状物の混じり合った状態で硬い塊状物に固化することが発明者等により発見されている。
【0046】
また、本発明の吸水性粒状物の粒径範囲は、90重量%以上が目開きが11mmの篩を通過し、且つ0.6mmの篩を通過しない範囲にあることが好ましい。
【0047】
<調湿性粒状物>
本発明において用いる調湿性粒状物はゼオライトを主体とするものであり、必要性に応じて外表面に消臭性添加剤を偏在させてもよい。
【0048】
ここで「調湿性粒状物」とは、ゼオライトを主体とするものであり前述の吸水性を有する吸水性粒状物とは異なり吸水時にも自己接着性を有さず、更に水中に投下して1時間が経過しても実質的な崩壊が起こらないものを意味する。このような調湿性粒状物の主原料となるゼオライトとしては、例えば斜プチロル沸石(クリノプチロライト)、モルデン沸石(モルデナイト)、濁沸石(ローモンタイト)、菱沸石(チャバサイト)、十字沸石(フィリップサイト)、方沸石(アナルサイム)等の天然ゼオライト類や、各種の合成ゼオライトが挙げられる。これらの中でも安価かつ大量に市場に流通している為、入手しやすいという理由から、天然の斜プチロル沸石またはモルデン沸石が好ましい。
【0049】
天然産出の斜プチロル沸石またはモルデン沸石の粗砕物の外表面を形成する破砕面は、親水性であるにも拘らず水と接触しても崩壊して泥状化することもなく、且つ内部への水の吸収が液体状または気体状で適度にバランスよく起こるため、消臭剤成分である消臭剤水溶液を噴霧等により吹き付ける際においても、各種濃度の水溶液を各種容量で容易に効果的に吹き付けることが可能となる。例えば、消臭剤水溶液をやや多めに吹き付けた場合でも、該粒状物の外表面の崩壊も泥状化も全く起こらず、やがて水分を液状でのみならず気体状でも吸収するため、消臭剤の担持面は迅速に風乾状態となる。このとき、沸石類から成る該粒状物は内部に約7.5Å前後の最小径からなり所謂ゼオライト孔と呼ばれる孔路が縦横に伸びており、その内部に水分子は容易に取り込むが銅イオン(Cu2+)からなる消臭剤自体は内部の奥深くまでは取り込まないので、粒状物の外表面に適度の濃度で有効に担持される。
【0050】
天然ゼオライト類の粗砕物は目的や用途によって特定の粒径範囲に分級して市販されることが多いため篩分け等の手間が不要であり、また市販されている状態のままで既に非崩壊性で非自己接着性の性質を持っているためそれ以上の加工を加える必要もなく、本発明における利用上の便宜性は極めて大きい。中でも、斜プチロル沸石とモルデン沸石、特に斜プチロル沸石は我が国での産地も多く、園芸用や農業用の土壌改良材等としての粗砕粒状物は大量に市販されており入手が容易であるため、本発明においても好適に利用できる。
【0051】
本発明において吸水性粒状物は直径2~4mm、長さ4~7mm程度の大きさであることが好ましく、調湿性粒状物として用いるゼオライトは吸水性粒状物と混合しやすくするために同程度の大きさの破砕品を用いることが好ましい。
【0052】
本発明において、消臭添加剤を用いる際にはその構成は適宜調製することが可能であるが、銅化合物を含むものであることが好ましい。ここで用いる銅化合物としては、例えば硫酸銅(CuSO4)、塩化銅(CuCl2)、硝酸銅(Cu(NO32)、及び之等の水和物などの水溶性銅化合物のみならず、クエン酸銅(Cu2647)、フマール酸銅(CuC444)、及びこれらの水和物等の難溶性銅化合物などが挙げられる。これらの中でも、安全性や作業性、低コスト性に優れ、糞から発生する悪臭であるEMPや、尿から発生する悪臭である3-MMB等の硫黄系悪臭への吸着による脱臭効果と抗菌性、抗酵素機能によるアンモニア等の発生抑制能、噴霧機をはじめとする周辺装置の腐食防止等の点から無機塩が好ましく、硫黄系悪臭物質の脱臭効果から二価の酸と銅との塩化合物であればより好ましく、中でも優れた脱臭効果が得られることから硫酸銅が特に好ましい。
【0053】
本発明において消臭添加剤を用いる場合には、調湿性粒状物の外表面に偏在するように添加することが好ましい。具体的には、消臭添加剤を消臭成分を含んだ水溶液若しくは微細に分散した懸濁液として調製し、調湿製粒状物の表面に噴霧または滴加して担持する方法で用いる。本願発明者等の知見によれば、消臭添加剤を粒状物の外表面付近に偏在させることで少量の添加であっても周囲の悪臭成分を消臭しやすく、吸水固化性への影響も少なくて済み、好ましい。
【0054】
また、調湿性粒状物の表面にイオン化した二価の銅(Cu2+)を偏在させることにより、銅イオンによって或る種の分解酵素に対する抗酵素作用や該分解酵素保有菌に対する抗菌作用が働き、該分解酵素活性の抑制乃至失活が起こり、結果として悪臭の発生自体を防ぐ防臭状態が具現される。すなわち、ウレアーゼ保有菌に対しては菌への抗菌作用やウレアーゼ自体への抗酵素作用が働きウレアーゼ活性の抑制乃至失活が起こり、尿素の加水分解によるアンモニアの発生が抑制乃至防止され、β-リアーゼ等のフェリニン分解酵素保有菌に対しては菌への抗菌作用や分解酵素自体への抗酵素作用が働き、体内で分解されずに尿中に排泄されたフェリニンの分解による3-MMB等の発生が抑制乃至防止され、結果として悪臭の発生自体を防ぐ防臭状態が具現される。
【0055】
さらに、調湿性粒状物の表層部のpHが消臭添加剤により酸性側にある事で、アンモニアやアミン類といった塩基性悪臭ガスをより多く吸着できることとなり、その事によってもより高い脱臭力を得ることに寄与している。
【0056】
本発明において銅化合物の配合量は、粒状物全体に対して銅(Cu)換算で20ppm以上の範囲で含まれ、30~300ppmの範囲であればより好ましく、50~250ppmの範囲であれば特に好ましい。銅化合物の配合割合をこのような範囲とすることで、排尿処理材を構成している粒状物全体が十分な消臭能が得られる。上記のような粒状物全体に対する銅化合物の添加範囲は、調湿性粒状物に対して少なくとも銅(Cu)換算で50ppm以上添加されておれば、該調湿性粒状物と吸水性粒状物の配合割合により適宜調整して実現することが可能である。
【0057】
本発明において、銅化合物が調湿性粒状物の外表面に偏在している点については、X線回折法において確認を行っている。具体的には、ゼオライトとして斜プチロル沸石(クリノプチロライト)を用いて銅化合物担持前後の粒状物のそれぞれを粉末X線回折法において分析し、銅化合物の担持前後で実質的なピーク位置の変化やピークの減失が生じていないことから、銅イオン(Cu2+)は粒の表面乃至表層に留まり、細孔の内部までは侵入していないと考えられる。
【0058】
また本発明においては、発明の効果を損なわない範囲において銅化合物以外の、銀化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物等の消臭能を持つ金属塩を添加しても良い。このような金属塩としては、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等が挙げられる。さらに、消臭性粒状物の表面酸性度を増強して特にアンモニア等の塩基性悪臭ガスに対する脱臭能をより向上させる目的で、銅化合物以外に硫酸や硫酸アルミニウム等の酸や酸性塩化合物を併用することもできる。
【0059】
本発明において消臭性粒状物は、90重量量%以上は目開きが11mmの篩を通過し、且つ0.6mmの篩を通過しない粒度分布であることが好ましい。大部分の粒径が11mm以下であることより消臭性粒状物の消臭剤担持表面積が全体的に大きくなり消臭性能を有効に発揮でき、一方、大部分の粒径が0.6mm以上であることより包装袋またはトイレへの充填状態における消臭性粒状物の偏析が起こりにくく粉立(粉舞)も抑制される。
【0060】
また、本発明において吸水性粒状物と調湿性粒状物は、粒状物全体を100重量部とした場合に、吸水性粒状物:調湿性粒状物=95:5~80:20の重量比で含まれ、95:5~90:10の範囲であればより好ましい。調湿性粒状物は前述の通り非自己接着性であり、後述の実施例でも述べるが調湿性粒状物の配合比が略30重量部を超えると吸尿固化性は低下していくので、優れた消臭性能の発現と実用的な固化性の維持を目的とする本発明の意図から上述の範囲で配合するものである。このような範囲で2種の粒状物を混合することで、吸湿抑制機能に優れながらも十分な吸水性と固化性を有するペット用排尿処理材とすることができる。
【0061】
本発明において、接着性粒状物として膨潤性スメクタイト系粘土を採用する際には、膨潤度が15mL/2g以上であることが好ましい。ここで、膨潤度は次の手順で測定されたものである。粉末試料2gを、純水100mLを入れたメスシリンダーに、内壁に殆ど付着しないようにしながら先に加えた試料が殆ど沈着した後に次の試料を加えるようにして分け入れ、試料を加え終わった後に24時間静置した後に、容器内に堆積した試料の見掛け容積を読み取り膨潤度(ml/2g)とした。
【0062】
膨潤性スメクタイト系粘土から成る接着性粒状物の膨潤と固化の機構は以下の通りである。該接着性粒状物の表層が吸尿により適度に膨潤し、隣接の粒状物同士の接触域が泥状化しゲル化することにより、硬い塊状物を形成する固化メカニズムが適度に進行する効果が期待できるのである。このとき、膨潤度が低すぎて15mL/2g以下となると固化機構を促進するに充分な膨潤→泥状化が起こりにくく、逆に膨潤度が高すぎて35mL/2g以上の場合は粒状物の表層部に初めに吸収された水による膨潤ベントナイト粒子の遮水層が形成されてそれ以上水が吸収されにくくなる。
【0063】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0064】
先ずはじめに、本願に係るペット用排尿処理材と従来のペット用排尿処理材の調湿性能について比較実験を行う。
【0065】
[吸水性粒状物の調製]
新潟県新発田市所在のサブベントナイト粘土鉱床から採掘したスメクタイト系粘土を原料とし、必要に応じて水を添加し、水分含有率が33%の粗砕物を得た。150℃乾物換算で10kgの該粗砕物と活性ベントナイト化剤の炭酸ナトリウム粉末をNa2CO3として300g(=5.7当量)を同一ポリエチレン製袋に入れてよく振り混ぜてから、孔径10mmの成形板の付いた単軸式横型押出造粒機に3回かけて混合・捏和する。該粗造粒物を孔径3mmの成形板の付いたデスクペレッター(回転ロール式縦型押出造粒機)を用いて造粒し、回転式小型乾燥炉により170℃で乾燥し、解砕機と篩分機にかけて自己接着性を有する吸水性粒状物を得た。
[消臭添加剤水溶液の調製]
硫酸銅(CuSO4)0.2gを100mlの純水に溶かして撹拌することで消臭添加剤水溶液を得た。
[調湿性粒状物の調製]
市販の天然ゼオライトである斜プチロル沸石の粗砕調湿性粒状物(破砕状、不定形)1kgを回転式円筒容器に容れ、該粒状物全体が均質に流動・混合するように適宜回転させながら、前述の消臭添加剤水溶液50gを噴霧により該粒状物の表面に吹き付けることで、該粒状物当たり3000ppmの消臭添加剤が表面に添着された調湿性粒状物が得られた。
[混合調製]
得られた吸水性粒状物と調湿性粒状物を、吸水性粒状物:調湿性粒状物の重量比が90:10となるように混合し、サンプル1に相当するペット用排尿処理材を得た。混合粒状物全体に対する消臭添加剤の添加量は300ppmである。
【0066】
[サンプル2:吸水性粒状物の調製]
新潟県新発田市所在のサブベントナイト粘土鉱床から採掘したスメクタイト系粘土を原料とし、必要に応じて水を添加し、水分含有率が33%の粗砕物を得た。150℃乾物換算で10kgの該粗砕物と活性ベントナイト化剤の炭酸ナトリウム粉末をNa2CO3として300g(=5.7当量)を同一ポリエチレン製袋に入れてよく振り混ぜてから、孔径10mmの成形板の付いた単軸式横型押出造粒機に3回かけて混合・捏和する。該粗造粒物を孔径3mmの成形板の付いたデスクペレッター(回転ロール式縦型押出造粒機)を用いて造粒し、回転式小型乾燥炉により170℃で乾燥し、解砕機と篩分機にかけて自己接着性を有する吸水性粒状物を得た。
[サンプル2:消臭添加剤水溶液の調製]
硫酸銅(CuSO4)0.2gを100mlの純水に溶かして撹拌することで消臭添加剤水溶液を得た。
[サンプル2:消臭性粒状物の調製]
得られた吸水性粒状物1kgを回転式円筒容器に容れ、該粒状物全体が均質に流動・混合するように適宜回転させながら、前述の消臭添加剤水溶液50gを噴霧により該粒状物の表面に吹き付けることで、該粒状物当たり3000ppmの消臭添加剤が表面に添着された調湿性粒状物が得られた。
[サンプル2:混合調製]
得られた吸水性粒状物と消臭性粒状物を、吸水性粒状物:消臭性粒状物の重量比が90:10となるように混合し、サンプル2に相当するペット用排尿処理材を得た。混合粒状物全体に対する消臭添加剤の添加量は300ppmである。なお、サンプル2は従来品に相当する構成である。
【0067】
[含有水分の測定]
あらかじめ秤量した試料を秤量瓶にいれ、150℃に設定した乾燥機で2時間乾燥した後、デシケータに移して放冷し、再度重量を測定した。乾燥前後の重量変化から含有水分(%)を求めた。
【0068】
[疑似尿溶液の調製]
猫の実尿を模して各種性能試験用に供した疑似尿溶液は以下の処方で調製した。
容量2Lのビーカーに約500mlの脱イオン水を入れ、撹拌下、各々別々に秤取した下記7種の無機試薬(1~7)を順次加え入れて溶解した後、下記2種の有機試薬(8,9)も秤り入れ、脱イオン水を加えて全量を1kgとした。

1_塩化カルシウム(CaCl2・2H2O=147.01;≧99%):74mg
2_塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O=203.30;≧97%):943mg
3_塩化カリウム(KCl=74.55;≧99%):9.0g
4_塩化ナトリウム(NaCl=58.44;≧99%):1.2g
5_硫酸ナトリウム(Na2SO4=142.04;≧99%):5.7g
6_炭酸水素ナトリウム(NaHCO3=84.01;≧99.5%):4.2g
7_リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4・2H2O=155.99;≧99%):15.8g
8_尿素(Urea;CH42O=60.06;≧99%):60.7g
9_アラントイン(Allantoin;C4643=158.12;≧98%):3.1g

さらに撹拌して均質な溶液となしてpHを測定したところ、pH:6.3~6.4(20~30℃)であった。本水溶液を本発明の各種性能試験に用いる疑似尿溶液とした。
【0069】
本発明に係るペット用排尿処理材と対象品の室内での水分変化を示すグラフが図1に、試験前後での固化長の測定結果が図2に、それぞれ示されている。
【0070】
サンプル1,2のペット用排尿処理材をそれぞれ4kg×2セット秤量し、猫用トイレなどに用いられる深型トレイに4kg分のペット用排尿処理材を敷き詰めたものを各サンプル毎に2つずつ準備する。これは、同じ室内であっても壁や窓から近いか、出入り口から近いか、空調が当たりやすいか、等の様々な要件によって湿度にはばらつきがあるからである。含有水分の計測を行う際にはこの深型トレイに敷き詰められた猫砂全体を撹拌した上でトレイ内の5カ所から試料を取り出してこれを全て混合して含有水分量の測定を行い、各サンプルの含有水分量とする。含有水分量の測定後に2つのトレイの配置を入れ替える。なお、固化長の測定については0日目の試験開始前と12日目の試験終了後に行った。
【0071】
全体の推移としてサンプル2は経時に伴い右肩上がりに含有水分量が増えているのに対して、サンプル1は4日目までは緩やかに含有水分量が増えているものの以降は横ばいとなっており、サンプル2と比べて吸湿が抑制されていることがわかる。このため、0日目の時点ではサンプル2よりもサンプル1の方がやや含有水分量が多いものの経時と共にその差が縮まって、6日目の時点で逆転している。なお0日目の時点ではサンプル1の方が含有水分量が多いのは、サンプル2については製造工程の終盤で調湿性粒状物に消臭剤水溶液を吹き付けているため、この消臭剤水溶液の水分が飛びきっておらずサンプル2よりも含有水分量が多かったものと推測される。
【0072】
吸湿試験開始時である0日目と、終了時である12日目とにおけるサンプル1,2の固化性試験の結果が図2に示されている。0日目の時点では、1%NaCl水溶液と疑似尿溶液のいずれについてもサンプル1,2で明確な差は認められない。一方、12日目における計測ではNaCl水溶液での計測ではいずれの試料も0日目と明確な差は認められなかったものの、疑似尿溶液については固化長が明らかに伸びていることがわかる。これは含有水分量が増えたことで吸水能が低下したことによるものと考えられ、サンプル1,2共に固化長が伸びているもののサンプル1の方が固化長の伸長を抑制できていることが見て取れる。含有水分量の数値上の差異よりも性能の差がより顕著に表れているように見えるが、この理由については不明である。
【実施例2】
【0073】
次に、吸水性粒状物と調湿性粒状物の混合割合について比較検討を行う。
【0074】
サンプル1の混合調製の工程において、吸水性粒状物100%のものをサンプル3、吸水性粒状物と調湿性粒状物の混合割合を95:5にしたものをサンプル4、80:20にしたものをサンプル5、70:30にしたものをサンプル6、60:40にしたものをサンプル7として調製した。図3には各サンプルの含有水分量の推移が、図4には各サンプル中の吸水性粒状物のみの含有水分量の推移が、図5には各サンプル中の調湿性粒状物のみの含有水分量の推移が、図6,7には固化性比較試験の結果が、それぞれ示されている。なお、各サンプル全体の含有水分量と、吸水性粒状物の含有水分量と、調湿性粒状物の含有水分量は、それぞれ個別に試料をサンプリングして計測を行っている。
【0075】
図3に示された各サンプル全体での含有水分量の推移を見ると、調湿性粒状物を配合しなかったサンプル3は試験開始直後から右肩上がりに含有水分量が増え続け、7~8日目に含有水分量が8.8%になったあたりからは横ばいとなっている。一方、調湿性粒状物を配合したサンプル1,4~7については、含有水分量には1~1.5%程度の差異はあるもののグラフの傾きに大きな違いはなく、全体的な含有水分量の推移は似たような傾向を示している。この結果から、ペット用排尿処理材全体に対して5%以上の調湿性粒状物を配合することで吸湿抑制機能については十分な効果が得られるものと考えられる。
【0076】
次に各粒状物毎の含有水分量について検討すると、図5に示された各サンプル中の調湿性粒状物の含有水分量は、多少のばらつきはあるもののいずれのサンプルについても大差ないことがわかる。一方、図4に示された吸水性粒状物の含有水分量については、調湿性粒状物を配合していないサンプル3以外は似たような推移を示しているものの、15日目の試験終了時点ではわずかな差ではあるが調湿性粒状物の配合割合が高いサンプルほど含有水分量が高い結果となった。調湿性粒状物の配合割合が高いと吸水性粒状物の含有水分量が増える理由は不明であるが、吸水性粒状物よりも調湿性粒状物の方が含有水分量が多いために吸水性粒状物に接する調湿性粒状物の量が増えたことで吸水性粒状物の含有水分量増えたということも可能性の一つとして考えられる。
【0077】
固化性については、サンプル7は0日目の時点で固化長が他のサンプルよりも長く、この時点で十分な吸水性を有してないものと考えられる。また、15日目時点での固化長を比較すると、サンプル4、サンプル1、サンプル5が同程度の結果であり、サンプル3、サンプル6、サンプル7は先の3つよりも劣る吸水性能であった。サンプル6,7の吸水性能が劣ったのは、吸湿により吸水性粒状物の吸水性能が低下したことに加えて吸水性粒状物の配合割合がサンプル1,4,5よりも少ないためにペット用排尿処理材全体として十分な吸水性能が得られなかったものと推測される。サンプル3については調湿性粒状物による調湿が行われず吸湿により吸水性粒状物の吸水能が低下したために吸水性粒状物の割合が高いにも拘わらず15日経過後には吸水性能に劣るものになったと推測される。これらの結果より、調湿性粒状物の配合割合がペット用排尿処理材全体に対して5~20%の範囲であれば調湿性能、吸水性能の双方について好ましいペット用排尿処理材となるものと考えられる。
【実施例3】
【0078】
次に、本発明に係るペット用排尿処理材を実際にペットのトイレに使用した際の固化性能等の推移について比較検討を行う。
【0079】
前述のサンプル1とサンプル2について、猫トイレ(商品名:上から猫トイレ、アイリスオーヤマ製)に二袋分のサンプル(10L)を投入し、以降継ぎ足しを行わず、凝固部分と汚染部分のみを回収して固化性能や消臭性能等の変化を観察した。比較実験を行った室内は、温度23℃、湿度55%の環境であった。図8には被検体となる猫の情報、図9にはサンプル1の外観の推移、図10にはサンプル2の外観の推移、図11には含有水分量の推移を示すグラフがそれぞれ示されている。なお、含有水分測定時のサンプリング方法は実施例1と同様であり、図8における「トイレ数:2箇所」とは、2箇所のトイレを2匹の猫が共同使用していることを意味している。
【0080】
サンプル2を使った試験の結果が図10に示されている。サンプル2については使用開始から4日目頃までは吸尿時にしっかりと凝集固化して臭いも気にならなかった。7日目頃から吸尿後にしっかりと凝集しない固化物や崩れやすい固化物が見られるようになってトイレ全体に汚染が広がり始め、9日目には湿るだけで凝集を起こさない粒状物が目立つようになった。図9からはややわかりにくいが、9日目の時点では1~4日目のようなしっかりとした固化物は形成されず、小ぶりな固まりが幾つか散らばっているような状態となっている。14日目の時点では臭いもひどくなり、吸水性、凝集固化性、消臭性のいずれについてもペット用排尿処理材としての機能が損なわれている。
【0081】
サンプル1を使った試験の結果が図9に示されている。使用開始から17日目頃までは吸尿時にしっかりと凝集固化し、臭いも気にならなかった。その後、固化物から少しずつ臭いが感じられるようになり、固化物自体も少しずつ脆くなった。20日目にはペット用排尿処理材全体から臭いが感じられるようになったものの、ある程度の凝集固化性は維持しており使用済み部分は固化物の状態で回収可能であった。
【0082】
実施例3におけるサンプル1,2の含有水分量の推移が図11に示されている。2日目以降の計測においては、サンプル1はサンプル2よりも常に含有水分量が少なく6日目以降は全体としての含有水分量も減少している。なお、0日目の時点でサンプル1の含有水分量がサンプル2の含有水分量よりも多いのは、前述したように消臭添加剤の影響によるものと考えられる。
【0083】
これらの比較結果から明らかなように、本発明に係るサンプル1は、凝集固化性、消臭性のいずれについても従来品であるサンプル2よりも長い期間衰えず、実用性を保つことが出来る。実際にペットが使用する場合には、単に室内に放置しただけの実施例1よりも湿り気や汚れが多い環境で使用されることになるためペット用排尿処理材の性能劣化の進行が早くなるが、本発明に係るペット用排尿処理材であれば従来品と比べて固化性能や消臭性能が長持ちすることは明らかである。
【実施例4】
【0084】
次に、市販のペット用排尿処理材と本発明に係る調湿性粒状物を混合した際の吸湿抑制能について比較検討を行う。
【0085】
前述の混合調製工程において吸水性粒状物の代わりにそれぞれの市販ペット用排尿処理材を用いて、各サンプル全体に対して10%の調湿性粒状物を配合して撹拌した。各サンプルはそれぞれ、サンプル12は鉱物製のペット用排尿処理材(商品名:猫砂1番、クニミネ社製)、サンプル13は鉱物製のペット用排尿処理材(商品名:猫砂、ヘルスタージャパン社製)、サンプル14は鉱物製のペット用排尿処理材(商品名:ニオイをのこサンド、アイリスオーヤマ社製)、サンプル15は紙製のペット用排尿処理材(商品名:お花畑ペーパーサンド、ペットライン社製)、サンプル16はおから製のペット用排尿処理材(商品名:トップサンド21、サンメイト社製)、サンプル17は木製のペット用排尿処理材(商品名:パインウッド、スノーフレイク社製)である。またサンプル1は実施例1,2のサンプル1と同様のものでありブランク品はサンプル3に相当する。各ペット用排尿処理材に調湿性粒状物を配合したサンプル11~17と、それぞれのペット用排尿処理材をそのまま用いるブランク品とを、高さ8cm、直径2.5cmの広口瓶に2gずつ入れ、各試料について3組ずつ準備する。これをRH20%、RH50%、RH90%に調整した3種のデシケータに1瓶ずつ入れて、各サンプルとブランク品の含有水分の推移を18日間測定した。図12にはサンプル1,12~14の試験結果が、図13にはサンプル15~17の試験結果がそれぞれ示されている。
【0086】
鉱物製のサンプル1,12~14については、いずれも本発明の調湿性粒状物による吸湿抑制効果が認められた。サンプル毎に差はあるものの、特にRH50%、RH90%の高湿度環境下では調湿性粒状物を添加したサンプルとブランク品との間で顕著な差が見られた。紙製のサンプル15については調湿性粒状物による吸湿抑制効果はほとんど見られなかった。おから製のサンプル16については高湿度環境下では多少の吸湿抑制効果が見られたものの、鉱物製のサンプル程の効果は見られなかった。木製のサンプル17についてはいずれの湿度条件でも吸湿抑制効果が見られたが、鉱物製に比べ、水分の固まり性への影響は小さいことから実用にはあまり影響がないものと考えられる。
【実施例5】
【0087】
次に、ゼオライトの種類毎の吸湿抑制効果と固化性について比較検討を行う。
【0088】
この実施例では前述のサンプル1,3と、サンプル18~20を用いて検討する。サンプル18~20は、前記混合調製工程において調湿性粒状物の代わりに、サンプル18は天然ゼオライト破砕品(斜プチロル沸石破砕品、不定形)、サンプル19は天然ゼオライト粉末(斜プチロル沸石粉砕品)10%を練り込んだ吸水性粒状物、サンプル20は合成ゼオライト粉末(商品名:合成ゼオライトA-4、富士フイルム和光純薬社製)10%を練り込んだ吸水性粒状物を用いたものである。なおサンプル18の調湿性粒状物は、はサンプル1の調湿性粒状物調製工程において、消臭添加剤を用いなかったものである。また、サンプル19,20については、吸水性粒状物の調製の混合工程において各ゼオライト粉末を加えることで調製したものである。図14には各サンプルの含有水分量の推移が、図15にはサンプル1,3,18の吸水性粒状物のみの含有水分量の推移が、図16,17には固化性比較試験の結果がそれぞれ示されている。
【0089】
図1より明らかなように、サンプル1,3,18,19,20の中ではサンプル1が最も吸湿抑制作用が大きく、次いでサンプル18、サンプル19、サンプル3、の順となり、理由は不明であるがサンプル20が最も含有水分量が多かった。またグラフ全体の推移を見ると、ゼオライト粉末を練り込んだサンプル19,20は調湿性粒状物不使用のサンプル3と似た挙動を示している。これは、調湿性粒状物外表面に露出しているゼオライトの量が少ないため吸湿抑制機能が十分に得られなかったためであると考えられる。吸水性粒状物のみで構成されたサンプル3よりも合成ゼオライトを練り込んだサンプル20の方が含有水分量が高い結果となった理由は合成ゼオライトの吸湿能力が天然ゼオライトよりも高く、吸水性粒状物の吸湿抑制効果以上に、合成ゼオライト自身の水分が増えたためと考える。一方、サンプル1とサンプル18とで天然ゼオライトをそのまま配合したサンプル18よりも、調湿性粒状物の外表面を消臭添加剤でコーティングしたサンプル1の方が吸湿抑制機能に優れていた理由は不明であるが、消臭性能向上だけでなく、吸湿抑制効果も向上することから、調湿性粒状物の外表面を消臭添加剤を偏在させた方がより好ましい、という知見が得られた
【0090】
次いで、吸水性粒状物のみの含有水分量を比較した結果が図15に示されている。サンプル19,20についてはゼオライトを粉末で練り込んだため分離できないのでこのグラフには含まれていない。吸水性粒状物の含有水分量の推移についても、図14の全体の含有水分量の推移とほぼ同様の傾向を示している。
【0091】
図16,17には実施例5に係るサンプルの固化性試験を行った結果が示されている。この例においては疑似尿水溶液を用いて固化性試験を行っている。試験開始時点の0日目ではいずれのサンプルもほとんど差が見られないが、試験終了の12日目にはサンプル1とサンプル18がある程度まとまりのある形状を示しているのに対して、サンプル3,19,20は著しく固化性が低下している。この結果から、吸湿抑制効果については、ゼオライト単体の配合、若しくはゼオライトの消臭性水溶液吹き付け品が優れているものと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17