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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20240115BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240115BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240115BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20240115BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240115BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L91/00
C08K3/36
C08L57/02
B60C1/00 A
C08L7/00
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019160961
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2020045482
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】16/120,815
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・パトリック・シュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】フリダ・ズル
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ジョエル・ダニエル・デルビル
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ・ポンペイ
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065887(JP,A)
【文献】国際公開第2005/085343(WO,A1)
【文献】特開2018-123260(JP,A)
【文献】特開2013-227375(JP,A)
【文献】特開2014-009251(JP,A)
【文献】特開2014-189697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫可能なゴム組成物を含むことを特徴とするトレッドを有する空気入りタイヤであって、該加硫可能なゴム組成物がエラストマー100重量部(phr)を基準にして、
(A)-80℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム30~50phr;
(B)-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム30~50phr;
(C)天然ゴムおよび合成ポリイソプレンからなる群から選択される、95パーセントを超えるcis 1,4含有率を有するポリイソプレン、10~40phr;
(D)少なくとも30℃のTgを有する炭化水素樹脂20~60phr;
(E)油40~80phr;ならびに
(F)シリカ120~180phr
を含むことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基およびチオール基で官能化されており、前記第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化されており、前記第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基およびチオール基で官能化されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記炭化水素樹脂が25~35phrの範囲の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
シリカの量が145~175phrの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
シリカの量が155~165phrの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
ゴム組成物が、35~45phrの前記第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、35~45phrの前記第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、および10~30phrの前記ポリイソプレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記炭化水素樹脂が、スチレン/アルファメチルスチレンコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂および芳香族ジシクロペンタジエン樹脂からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記樹脂が芳香族改質ジシクロペンタジエン樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記樹脂がスチレン/アルファメチルスチレンコポリマー樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タイヤが良好な湿潤スキッド抵抗、低い転がり抵抗および良好な摩耗特性を有することは非常に望ましい。
【背景技術】
【0002】
湿潤スキッド抵抗および牽引特性を犠牲にすることなく、タイヤの摩耗特性を改善するのは従来非常に困難であった。これらの性質は、タイヤを製造する際に用いられるゴムの動的粘弾性に大いに依存する。
【0003】
転がり抵抗を減少させてタイヤのトレッド摩耗特性を改善するために、高反発性のゴムが、タイヤトレッドゴムコンパウンドを製造する際に従来から利用されてきた。他方、タイヤの湿潤スキッド抵抗を上げるために、大きいエネルギー損を受けるゴムが、一般にタイヤのトレッドに利用されてきた。これら2つの粘弾性的に一致しない性質のバランスを取るために、様々な種類の合成と天然ゴムの混合物が通常、タイヤトレッドに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7,342,070号
【文献】国際公開第2007/047943号
【文献】米国特許第5,504,135号
【文献】米国特許第6,103,808号
【文献】米国特許第6,399,697号
【文献】米国特許第6,410,816号
【文献】米国特許第6,248,929号
【文献】米国特許第6,146,520号
【文献】米国特許出願公開第2001/00023307号
【文献】米国特許出願公開第2002/0000280号
【文献】米国特許出願公開第2002/0045697号
【文献】米国特許出願公開第2001/0007049号
【文献】欧州特許出願公開第0839891号
【文献】特開2002097369号
【文献】スペイン特許第2122917号
【文献】米国特許第6,608,125号
【文献】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0005】
【文献】the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts, 2003年、62版
【文献】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978), 344~346頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、エラストマー100重量部(phr)を基準にして、
(A)-80℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(B)-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(C)95パーセントを超えるcis 1,4含有率を有するポリイソプレン0~約40phr;
(D)少なくとも30℃のTgを有する炭化水素樹脂20~60phr;
(E)油40~80phr;ならびに
(F)シリカ120~180phr
を含む、空気入りタイヤを対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、エラストマー100重量部(phr)を基準にして、
(A)-80℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(B)-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(C)95パーセントを超えるcis 1,4含有率を有するポリイソプレン0~約40phr;
(D)少なくとも30℃のTgを有する炭化水素樹脂20~60phr;
(E)油40~80phr;ならびに
(F)シリカ120~180phr
を含む、空気入りタイヤが開示される。
【0008】
ゴム組成物は、-80℃~-50℃の範囲のTgを有する、30~50phrの第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、および-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、30~50phrの第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムを含む。第1および第2のスチレン-ブタジエンゴムのそれぞれは、独立してアルコキシシラン基ならびに第一級アミン基およびチオール基の少なくとも1つで官能化されている。一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、スチレンおよびブタジエンを共重合することにより得られ、スチレン-ブタジエンゴムが、鎖内または鎖末端のいずれかでポリマー鎖に結合した第一級アミノ基および/またはチオール基ならびにアルコキシシリル基を有することを特徴とする。一実施形態において、アルコキシシリル基はエトキシシリル基である。
【0009】
第一級アミノ基および/またはチオール基は、それがスチレン-ブタジエンゴム鎖に結合している限り、重合開始末端、重合停止末端、スチレン-ブタジエンゴムの主鎖および側鎖のいずれに結合されていてもよい。しかし、ポリマー末端でのエネルギーの消失が抑制されて、ヒステリシス損特性が改善されるので、第一級アミノ基および/またはチオール基は、好ましくは、重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0010】
さらに(コ)ポリマーゴムのポリマー鎖に結合したアルコキシシリル基の含有率は、好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの0.5~200mmol/kgである。含有率は、より好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの1~100mmol/kg、特に好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの2~50mmol/kgである。
【0011】
アルコキシシリル基は、それが(コ)ポリマー鎖に結合している限り、重合開始末端、重合停止末端、(コ)ポリマー鎖の主鎖および側鎖のいずれに結合されていてもよい。しかし、(コ)ポリマー末端からのエネルギーの消失が抑制されてヒステリシス損特性を改善することができるので、アルコキシシリル基は、好ましくは、重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0012】
スチレン-ブタジエンゴムは、炭化水素溶媒中でスチレンおよびブタジエンの重合によって、開始剤として有機アルカリ金属および/または有機アルカリ土類金属を使用し、保護基で保護された第一級アミノ基および/または保護基で保護されたチオール基ならびにアルコキシシリル基を有する停止剤化合物を加えて、重合が実質的に完了した時点でリビングポリマー鎖末端とそれを反応させ、次いで、例えば加水分解または他の好適な手順によるブロック解除を行うアニオン重合によって作製することができる。一実施形態において、米国特許第7,342,070号に開示されているようにスチレン-ブタジエンゴムを作製することができる。別の実施形態において、国際公開第2007/047943号に開示されているようにスチレン-ブタジエンゴムを作製することができる。
【0013】
一実施形態において、また、米国特許第7,342,070号に教示されるように、スチレン-ブタジエンゴムは式(I)または(II)のものである。
【0014】
【化1】
【0015】
[式中、Pは、共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖であり、Rは、1~12炭素原子を有するアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立して、1~20炭素原子を有するアルキル基、アリル基またはアリール基であり、nは整数1または2であり、mは整数1または2であり、kは整数1または2であるが、ただし、n+m+kは整数3または4である]
【0016】
【化2】
【0017】
[式中、P、R、RおよびRは、上記に挙げた式Iついて示したのと同一の定義を有し、jは整数1~3であり、hは整数1~3であるが、ただし、j+hは整数2~4である]
保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する停止剤化合物は、当業界で公知である様々な化合物のいずれかであってもよい。一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、例えばN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランなどを含んでもよく、1-トリメリルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、N,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0018】
一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、式III
RN-(CHSi(OR’), III
[式中、Rは、窒素(N)原子と組み合わさって、好適な後処理時に第一級アミンを生じる、保護されたアミン基であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリルまたはアリールから選択される、1~18炭素原子を有する基を表し;Xは整数1~20である]
の任意の化合物であってもよい。一実施形態において、少なくとも1個のR’基はエチルラジカルである。第一級アミンを生じる好適な後処理によって、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物とのリビングポリマーの反応の後に続いて、保護基が除去されることを意味する。例えばN,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン中のようなビス(トリアルキルシリル)保護基の場合には、加水分解は、トリアルキルシリル基を除去し、第一級アミンを残すために使用される。
【0019】
一実施形態において、ゴム組成物は、アルコキシシラン基および第一級アミン基またはチオール基で官能化された、約50~約90phrのスチレン-ブタジエンゴムを含む。
アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化された適切なスチレン-ブタジエンゴムは、Japan Synthetic Rubber(JSR)からHPR 340のように市販されている。
【0020】
一実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、国際公開第2007/047943号に開示されている通りであり、アルコキシシラン基およびチオールで官能化され、リビングアニオンポリマーと式VII
(RO) Si-R-S-SiR VII
[式中、Siはシリコンであり;Sは硫黄であり;Oは酸素であり;xは、1、2および3から選択される整数であり;yは、0、1および2から選択される整数であり;x+y=3であり;Rは同一または異なり、(C-C16)アルキルであり;R’は、アリールおよびアルキルアリール、または(C-C16)アルキルである]
によって表わされるシランスルフィド改質剤との反応生成物を含む。一実施形態において、Rは(C-C16)アルキルである。一実施形態において、各R基は、同一または異なり、それぞれは独立して、アルキルC-Cであり、RはC-Cアルキルである。
【0021】
-80℃~-50℃の範囲のTgを有する第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、および-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム。本明細書において言及したエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度またはTgへの言及は、エラストマー組成物の事例の未硬化状態またはことによると硬化状態におけるそれぞれのエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度を表わす。Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、例えばASTM D7426または同等のものに従って毎分10℃の昇温速度でピーク中央値として適切に求めることができる。
【0022】
アルコキシシラン基およびチオール基で官能化された適切なスチレン-ブタジエンゴムは、TrinseoからのSprintan SLR 3402およびSLR 4602のように市販されている。
【0023】
ゴム組成物の別の成分は、95パーセントを超えるcis 1,4含有率を有する約0~約40phrのイソプレンゴムである。適切なイソプレンゴムは、例えばイソプレンの有機溶液重合によって合成的に、または天然ゴムとして調製されてもよい。
【0024】
ゴム組成物は40~80phrのプロセスオイルを含む。通常、エラストマーを増量するために使用される増量油として、プロセスオイルが、ゴム組成物に含まれていてもよい。プロセスオイルはまた、ゴム配合時の油の直接添加によってゴム組成物に含まれていてもよい。使用されるプロセスオイルは、エラストマー中に存在する増量油、および配合時に加えられるプロセス油の両方に含まれてもよい。適切なプロセス油は、芳香族、パラフィン、ナフテン、ならびにMES、TDAEおよび重質ナフテン油などの低PCA油、ならびにヒマワリ、大豆およびサフラワー油などの植物油を含む、当業界で公知である様々な油を含む。
【0025】
一実施形態において、ゴム組成物は低PCA油を含む。適切な低PCA油は、業界で公知である、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理蒸留物芳香族系抽出物(TDAE)、および重質ナフテン油を含むがこれらに限定されない;例えば以下を参照すること:米国特許第5,504,135号;第6,103,808号;第6,399,697号;第6,410,816号;第6,248,929号;第6,146,520号;米国特許出願公開第2001/00023307号;第2002/0000280号;第2002/0045697号;第2001/0007049号;欧州特許出願公開第0839891号;特開2002097369号;スペイン特許第2122917号。一般に、適切な低PCA油は、約-40℃~約-80℃の範囲のガラス転移温度Tgを有するものを含む。MES油は、一般に約-57℃~約-63℃の範囲のTgを有する。TDAE油は、一般に約-44℃~約-50℃の範囲のTgを有する。重質ナフテン油は、一般に約-42℃~約-48℃の範囲のTgを有する。TDAE油のTgについての適切な測定は、ASTM E1356によるDSC、または同等のものである。
【0026】
適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含む。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts, 2003年、62版に見つけることができる。
【0027】
適切な植物油は、例えば一定の不飽和度を含有するエステルの形態である大豆油、ひまわり油およびキャノーラ油を含む。
ゴム組成物は、30℃を超えるTgを有する20~60phrの炭化水素樹脂を含む。
【0028】
代表的な炭化水素樹脂は、クマロン-インデン樹脂、石油樹脂、C5/C9樹脂、テルペンポリマー、アルファメチルスチレン樹脂およびこれらの混合物を含む。
クマロン-インデン樹脂は、10~160℃の範囲の融点(環球法によって測定して)を有する多くの形態で市販されている。好ましくは、融点は30~100℃の範囲である。クマロン-インデン樹脂はよく知られている。様々な分析によると、そのような樹脂が主としてポリインデンであることを示す;しかし、一般にメチルインデン、クマロン、メチルクマロン、スチレンおよびメチルスチレンに由来するランダムポリマー単位を含む。
【0029】
10℃~120℃の範囲の軟化点を有する石油樹脂が市販されている。好ましくは、軟化点は30~100℃の範囲である。適切な石油樹脂は、芳香族および非芳香族両方の種類を含む。いくつかの種類の石油樹脂は入手可能である。幾つかの樹脂は、低い不飽和度および高い芳香族含有率を有するが、しかし幾つかは非常に不飽和であるが、なお幾つかは芳香族構造を全く含まない。樹脂における差異は、概して樹脂に由来する供給原料中のオレフィンによる。そのような樹脂中の従来の誘導体には、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、それらの二量体、ならびにイソプレンおよびピペリレンなどのジオレフィンを含む。これらモノマー同士の、またはスチレンおよびアルファメチルスチレンなどの芳香族とのコポリマーもまた含まれる。
【0030】
一実施形態において、樹脂は、芳香族改質ポリジシクロペンタジエンである。
テルペンポリマーは、ミネラルスピリット中のベータピネンの混合物の重合から工業的に作製される。通常、10℃~135℃の範囲の様々な融点の樹脂が供給される。
【0031】
一実施形態において、樹脂はスチレンおよびアルファメチルスチレンに由来する。一態様において、分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)と組み合わせた、そのガラス転移温度(Tg)特性によって、ゴム組成物中の樹脂の適切な相溶性、ゴム組成物の性質と直接関係している相溶性の程度がもたらされると考えられる。
【0032】
スチレン-ブタジエンエラストマーの存在を含むゴムブレンドとのスチレン/アルファメチルスチレン樹脂の存在は、本明細書において以下に一般的に記載されるように、異なる温度/周波数/ひずみでの、複素および貯蔵弾性率、損失弾性率、タンジェントデルタならびに損失コンプライアンスなどの、観察されるトレッドゴム組成物の粘弾性のため、有益であると考えられる。
【0033】
複素および貯蔵弾性率、損失弾性率、タンジェントデルタならびに損失コンプライアンスの性質は、一般にそのような当業者に周知のことと理解されている。それらは一般に以下に記載される。
【0034】
樹脂の分子量分布は、本明細書において樹脂の分子量平均(Mw)と分子量数平均(Mn)値の比として視覚化され、比較的小幅であると考えられる約1.5/1~約2.5/1の範囲にあると考えられる。これは、ポリマーマトリクスとの選択的な相溶性のため、また広い温度範囲にわたる湿潤条件および乾燥した条件におけるタイヤの企図された使用のために有利であると考えられる。
【0035】
コポリマー樹脂のガラス転移温度Tgは、本明細書において製造されるタイヤの意図する使用およびタイヤトレッド用のポリマーブレンドの性質に多少依存して、約20℃~約100℃、あるいは約30℃~約80℃の範囲にあると考えられる。樹脂についてのTGの適切な測定は、ASTM D6604によるDSCまたは同等のものである。
【0036】
スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、本明細書において約0.40~約1.50の範囲のスチレン/アルファメチルスチレンモル比を有するスチレンおよびアルファメチルスチレンの比較的短鎖コポリマーであると考えられる。一態様において、そのような樹脂は、例えば炭化水素溶媒中でのスチレンおよびアルファメチルスチレンのカチオン共重合によって適切に調製することができる。
【0037】
このようにして、企図されたスチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、例えばその化学構造、すなわちそのスチレンおよびアルファメチルスチレンの含有率、および軟化点、ならびにまた、所望の場合、そのガラス転移温度、分子量および分子量分布を特徴とすることができる。
【0038】
一実施形態において、スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、スチレンに由来する約40~約70パーセント単位、および対応してアルファメチルスチレンに由来する約60~約30パーセント単位で構成される。一実施形態において、スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、約80℃~約145℃の範囲の、ASTM No. E-28による軟化点を有する。
【0039】
適切なスチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、EastmanからResin 2336、またはArizona ChemicalからSylvares SA85として市販されている。
【0040】
語句「オレフィン性不飽和を含有するゴムまたはエラストマー」は、様々な合成ゴムだけでなく天然ゴムとその様々な未加工および再生形態の両方を含むように意図される。本発明の記載において、「ゴム」、「エラストマー」という用語は、ほかに規定されなかったなら、交換可能に使用されてもよい。用語「ゴム組成物」、「配合ゴム」および「ゴムコンパウンド」は、様々な原料および材料とブレンドまたは混合されたゴムを指すために交換可能に使用され、そのような用語は、ゴム混合またはゴム配合技術の当業者に周知である。
【0041】
加硫可能なゴム組成物は、約120~約180phrのシリカを含んでもよい。
ゴムコンパウンドにおいて使用されてもよい、一般に用いられる珪質顔料は、従来の火成および沈殿させた珪質顔料(シリカ)を含むが、沈殿されたシリカが好ましい。本発明において好ましく用いられる従来の珪質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られたものなどの沈殿させたシリカである。
【0042】
そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定して、好ましくは1グラム当たり約40~約600平方メートルの範囲、より普通には約50~約300平方メートルの範囲のBET表面積を有することを特徴とすることができる。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。
【0043】
また従来のシリカは、通常、約100~約400、より普通には約150~約300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することを特徴としてもよい。
従来のシリカは、例えば電子顕微鏡によって求めて0.01~0.05ミクロンの範囲の平均究極粒子寸法を有すると予想されてもよいが、シリカ粒子は、寸法がさらに小さくてよく、またはことによるとより大きくてもよい。
【0044】
様々な市販のシリカ、例えば本明細書において例示のみでありこれらに限定されないが、PPG Industriesからの名称210、243、315などを有するHi-Sil商標の下で市販されているシリカ;Rhodiaからの、例えばZ1165MPおよびZ165GRの名称を有する、入手可能なシリカ、およびDegussa AGから入手可能な、例えば名称VN2およびVN3を有するシリカなどが使用されてもよい。
【0045】
加硫可能なゴム組成物は、1~10、あるいは最大約5phrのカーボンブラックを含んでもよい。
一般に用いられるカーボンブラックは、従来の充填剤として使用することができる。カーボンブラックの代表的な例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、M332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991を含む。これらのカーボンブラックは、9~145g/kgの範囲のヨウ素吸収量、および34~150cm/100gの範囲のDBP数を有する。
【0046】
好ましくは、タイヤ成分で使用されるゴム組成物は、従来の硫黄含有有機ケイ素化合物をさらに含んでもよい。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
Z - Alk - S - Alk - Z VIII
[式中、Zは、
【0047】
【化3】
【0048】
(式中、Rは、1~4炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;Rは、1~8炭素原子のアルコキシまたは5~8炭素原子のシクロアルコキシである)
からなる群から選択され、
Alkは、1~18炭素原子の二価炭化水素であり、
nは2~8の整数である]
を有するものである。
【0049】
本発明に従って使用されてもよい硫黄含有有機ケイ素化合物の特別の例としては、以下のものを含む:3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-2”-エチルヘキソキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリイソオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(メトキシジエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリプロポキシシリルエチル)ペンタスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロネキソキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロペントキシシリルプロピル)トリスルフィド、2,2’-ビス(トリ-2”-メチルシクロヘキソキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3-メトキシエトキシプロポキシシリル3’-ジエトキシブトキシ-シリルプロピルテトラスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルsec.ブトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(メチルブチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジt-ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(フェニルメチルメトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルイソプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメチルエチルメルカプトシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(メチルジメトキシシリルエチル)トリスルフィド、2,2’-ビス(メチルエトキシプロポキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジエチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(エチルジ-sec.ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ブチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(フェニルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-フェニルエトキシブトキシシリル3’-トリメトキシシリルプロピルテトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、6,6’-ビス(トリエトキシシリルヘキシル)テトラスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルドデシル)ジスルフィド、18,18’-ビス(トリメトキシシリルオクタデシル)テトラスルフィド、18,18’-ビス(トリプロポキシシリルオクタデセニル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリル-ブテン-2-イル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルシクロヘキシレン)テトラスルフィド、5,5’-ビス(ジメトキシメチルシリルペンチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリル-2-メチルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド
好ましい硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)スルフィドである。最も好ましい化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドおよび3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって式VIIIに関して、好ましくはZは、
【0050】
【化4】
【0051】
[式中、Rは、2~4炭素原子の、特に好ましくは2炭素原子を有するアルコキシであり;alkは2~4炭素原子の、特に好ましくは3炭素原子を有する二価炭化水素であり;nは、整数2~5、特に好ましくは2および4である]
である。
【0052】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)-S-CHCHCHSi(OCHCHを含み、これはMomentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されている。
【0053】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、DegussaからのSi-363である。
【0054】
ゴム組成物中の式Iの硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤の水準に応じて様々である。概して言えば、式Iの化合物の量は、0.5~20phrの範囲である。好ましくは、量は5~15phrの範囲である。
【0055】
ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、ならびに加工添加剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な硫黄加硫可能なの構成要素ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合されることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫可能な材料および硫黄加硫された材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。好ましくは、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5~8phrの範囲、好ましくは1.5~6phrの範囲の量が使用されてもよい。典型的な量の抗酸化剤は約1~約5phrを含む。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978), 344~346頁に開示されているものなどであってもよい。典型的な量のオゾン劣化防止剤は約1~5phrを含む。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる典型的な量の脂肪酸は、約0.5~約3phrを含む。典型的な量の酸化亜鉛は約2~約5phrを含む。典型的な量のワックスは約1~約5phrを含む。多くの場合、微晶質のワックスが使用される。典型的な量の釈解剤は約0.1~約1phrを含む。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0056】
促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の性質を改善するために使用される。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤は、約0.5~約4phr、好ましくは約0.8~約1.5phrの範囲の合計量で使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の性質を改善するために約0.05~約3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な性質に相乗効果を生み出すと予想されてもよく、どちらかの促進剤の単独使用によって作製されたものより多少良好である。さらに、通常の加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤が使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。好ましくは、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、好ましくはグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物である。
【0057】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、通常、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な段階、続いて生産的混合段階において混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、通常、従来、「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合され、ここで、通常、先行する非生産的混合段階の混合温度より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知である。ゴム組成物は、熱力学的混合ステップにかけられてもよい。熱力学的混合ステップは、一般に、140℃~190℃の間のゴム温度を生ずるように適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱力学的作業の好適な継続時間は、運転条件および成分の量および性質の関数として変わる。例えば、熱力学的作業は1~20分であってもよい。
【0058】
ゴム組成物は、タイヤのトレッド中に組み込まれてもよい。
本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用、土木機械用、オフロード用、トラック用タイヤなどであってもよい。好ましくは、タイヤは、乗用車用またはトラック用タイヤである。また、タイヤは、ラジアルでもバイアスであってもよいが、ラジアルが好ましい。
【0059】
本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般に約100℃~200℃の範囲の従来の温度で行なわれる。好ましくは、加硫は、約110℃~180℃の範囲の温度で遂行される。プレスまたは金型での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫プロセスのいずれが使用されてもよい。そのようなタイヤは、そのような技術の当業者に公知であり、容易に明白になる様々な方法によって、構築、成形、成型、硬化することができる。
【0060】
以下の実施例は、説明する目的で提示され、本発明を限定するものではない。部はすべて、ほかに特別に確認されない限り、重量部である。
【実施例1】
【0061】
この実施例によって、本発明によるゴム組成物の利点を説明する。表1に示す調合に従ってゴムコンパウンドを混合した。量はphrで表す。各化合物はまた、硬化薬の標準量を含んでいた。化合物を硬化させ、表2に示すような物理的性質について試験した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
主題発明を説明する目的で特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、主題発明の範囲から離れることなく様々な変更および修正を本明細書において行なうことができることはこの技術の当業者には明白であろう。
[発明の実施形態]
1.加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、エラストマー100重量部(phr)を基準にして、
(A)-80℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(B)-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基ならびに第一級アミンおよびチオールからなる群から選択される少なくとも1個の官能基で官能化されている第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(C)天然ゴムおよび合成ポリイソプレンからなる群から選択される、95パーセントを超えるcis 1,4含有率を有するポリイソプレン0~約40phr;
(D)少なくとも30℃のTgを有する炭化水素樹脂20~60phr;
(E)油40~80phr;ならびに
(F)シリカ120~180phr
を含む、空気入りタイヤ。
【0065】
2. 第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基およびチオール基で官能化され、第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
【0066】
3. 第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化され、第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基およびチオール基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
【0067】
4. 組合せ樹脂が25~35phrの範囲の量で存在する、1に記載の空気入りタイヤ。
5. シリカの量が145~175phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
【0068】
6. シリカの量が155~165phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
8. 炭化水素樹脂が、スチレン/アルファメチルスチレンコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂および芳香族ジシクロペンタジエン樹脂からなる群から選択される、1に記載の空気入りタイヤ。
【0069】
9. 樹脂が芳香族改質ジシクロペンタジエン樹脂である、1に記載の空気入りタイヤ。
10. 樹脂がスチレン/アルファメチルスチレンコポリマー樹脂である、1に記載の空気入りタイヤ。
【0070】
11. 溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化され、式(1)または(2)によって表わされる、1に記載の空気入りタイヤ。
【0071】
【化5】
【0072】
[式中、Pは、共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖であり、Rは1~12炭素原子を有するアルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立して、1~20炭素原子を有するアルキル基、アリル基またはアリール基であり、nは、整数1または2であり、mは、整数1または2であり、kは、整数1または2であるが、ただし、n+m+kは整数3または4である]
【0073】
【化6】
【0074】
[式中、P、R、RおよびRは、上記に挙げられた式(1)について示したのと同一の定義を有し、jは、整数1~3であり、hは、整数1~3であるが、ただし、j+hは整数2~4である]
12. 溶液重合スチレン-ブタジエンゴムがアルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化され、リビングポリマー鎖と式
RN-(CH-Si-(OR’)
[式中、Rは、窒素(N)原子と組み合わさって、好適な後処理時に第一級アミンを生じる、保護されたアミン基であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリルまたはアリールから選択される、1~18炭素原子を有する基を表し;Xは整数1~20である]
の停止剤との反応生成物を含む、1に記載の空気入りタイヤ。
【0075】
13. 溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基およびチオールで官能化され、リビングアニオンポリマーと式
(RO) Si-R-S-SiR
[式中、Siはシリコンであり;Sは硫黄であり;Oは酸素であり;xは、1、2および3から選択される整数であり;yは、0、1および2から選択される整数であり;x+y=3であり;Rは同一または異なり、(C-C16)アルキルであり;R’は、アリールおよびアルキルアリール、または(C-C16)アルキルである]
によって表わされるシランスルフィド改質剤との反応生成物を含む、1に記載の空気入りタイヤ。
【0076】
14. ゴム組成物が、35~45phrの第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、35~45phrの第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、および10~30phrのポリイソプレンを含む、1に記載の空気入りタイヤ。
【0077】
15.加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、エラストマー100重量部(phr)を基準にして、
(A)-80℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基およびチオール基で官能化されている第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(B)-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化されている第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(C)天然ゴムおよび合成ポリイソプレンからなる群から選択される、95パーセントを超えるcis 1,4含有率を有するポリイソプレン0~約40phr;
(D)少なくとも30℃のTgを有する炭化水素樹脂20~60phr;
(E)油40~80phr;ならびに
(F)シリカ120~180phr
を含む、空気入りタイヤ。
16.加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤであって、エラストマー100重量部(phr)を基準にして、
(A)-80℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化されている第1の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(B)-40℃~-10℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、アルコキシシラン基およびチオール基で官能化されている第2の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム約30~約50phr;
(C)天然ゴムおよび合成ポリイソプレンからなる群から選択される、95パーセントを超えるcis 1,4含有率を有するポリイソプレン0~約40phr;
(D)少なくとも30℃のTgを有する炭化水素樹脂20~60phr;
(E)油40~80phr;ならびに
(F)シリカ120~180phr
を含む、空気入りタイヤ。