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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】定寸装置及びこれを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 25/06 20060101AFI20240115BHJP
   B23B 5/46 20060101ALI20240115BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240115BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B23B25/06
B23B5/46
B23Q17/20 A
B23Q11/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019162084
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021037604
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】藤木 正寛
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕正
(72)【発明者】
【氏名】日永 健斗
(72)【発明者】
【氏名】中川 光司
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-056811(JP,A)
【文献】特開2008-161961(JP,A)
【文献】特開2009-190130(JP,A)
【文献】特表2014-533207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 25/06
B23B 5/46
B23Q 17/20
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持して回転させる主軸を備え、工具を用いて前記ワークの外周面を加工するように構成された工作機械に付設される定寸装置であって、
相互に接近するように付勢された2つの測定子を有し、該2つの測定子を前記ワークの外周面に接触させることによって該ワークの外径を測定するように構成された測定ヘッドと、該測定ヘッドを移送して前記測定子を前記ワークの外周面に接触させる移送装置とを備え、
前記移送装置は、前記2つの測定子の前記ワークとの接触部を含む平面が前記主軸の軸線と直交するように前記測定ヘッドを支持するように構成されると共に、前記測定ヘッドを前記主軸の軸線に沿って、加工領域内に設定された旋回位置と、加工領域外に設定された待機位置との間で進退させる直線移送機構と、前記旋回位置において、前記測定ヘッドを前記主軸の軸線と平行な軸線を中心として、前記ワークに対して離接させる方向に旋回させて、前記2つの測定子が前記ワークの外周面に接触する測定位置と、前記2つの測定子が前記ワークから離反した退避位置とに移動させる旋回機構とを備えて構成されており、
前記待機位置は前記主軸の基端側に設定されており、前記旋回位置は前記主軸の先端側に設定されていることを特徴とする定寸装置。
【請求項2】
前記旋回機構は、前記測定ヘッドをその2つの測定子の前記ワークとの接触部を含む平面が前記主軸の軸線と直交するように支持する旋回アームと、前記主軸の軸線と平行に配
設され、前記旋回アームが連結される回転軸と、該回転軸を軸中心に回転させるアクチュエータとから構成され、
前記直線移送機構は、前記旋回機構を前記主軸の軸線に沿った方向に進退させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の定寸装置。
【請求項3】
ワークを保持して回転させる主軸と、工具を保持する工具保持部と、請求項1又は2に記載した定寸装置とを備え、
前記定寸装置は、主軸の近傍に配設されると共に、カバー体によって加工領域から隔離された格納領域に格納され、前記カバー体に形成された開口部から、前記加工領域に対して前記測定ヘッドを前記直線移送機構により進退させるように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項4】
前記カバー体の開口部を開閉する蓋体を備えていることを特徴とする請求項3記載の工作機械。
【請求項5】
ワークを保持して回転させる主軸と、工具を保持する工具保持部と、定寸装置とを備え、
前記定寸装置は、ワークを保持して回転させる主軸を備え、工具を用いて前記ワークの外周面を加工するように構成された工作機械に付設される定寸装置であって、
相互に接近するように付勢された2つの測定子を有し、該2つの測定子を前記ワークの外周面に接触させることによって該ワークの外径を測定するように構成された測定ヘッドと、該測定ヘッドを移送して前記測定子を前記ワークの外周面に接触させる移送装置とを備え、
前記移送装置は、前記2つの測定子の前記ワークとの接触部を含む平面が前記主軸の軸線と直交するように前記測定ヘッドを支持するように構成されると共に、前記測定ヘッドを前記主軸の軸線に沿って、加工領域内に設定された旋回位置と、加工領域外に設定された待機位置との間で進退させる直線移送機構と、前記旋回位置において、前記測定ヘッドを前記主軸の軸線と平行な軸線を中心として、前記ワークに対して離接させる方向に旋回させて、前記2つの測定子が前記ワークの外周面に接触する測定位置と、前記2つの測定子が前記ワークから離反した退避位置とに移動させる旋回機構とを備えており、
前記定寸装置は、主軸の近傍に配設されると共に、カバー体によって加工領域から隔離された格納領域に格納され、前記カバー体に形成された開口部から、前記加工領域に対して前記測定ヘッドを前記直線移送機構により進退させるように構成されていることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工中のワークの外径寸法を測定して、当該ワークの外径寸法が予め定められた寸法となった時、その信号を出力するように構成された定寸装置、及びこれを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
上記定寸装置は、主に円筒研削盤に設けられるもので、相互に接近するように付勢された2つの測定子を有し、この2つの測定子を研削加工中のワークの外周面に接触させることによって、当該ワークの外径を測定するように構成された測定ヘッドを備えている(特開2012-196740号公報参照)。そして、測定ヘッドは、加工中のワークの外径寸法が予め定められた寸法となった時、その検出信号を円筒研削盤の制御装置に出力し、制御装置は、この検出信号を受信したとき、研削加工を終了する。
【0003】
このような定寸装置は、従来、一般的に、円筒研削盤のベッド上に配設され、ワークを保持して回転させる主軸の軸線を挟んで、研削砥石とは反対側の位置に配置されている(特開2019-34390号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-196740号公報
【文献】特開2019-34390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工作機械の分野では、従来より、旋盤とマシニングセンタとの両機能を合わせ備えた複合加工型の加工機械(複合加工機械)が知られている。この複合加工機械は、ワークを把持して回転させるワーク主軸と、工具を保持して回転させる工具主軸とを備えており、ワーク主軸を回転させて行う旋削加工、並びに工具主軸を回転させ、切削工具を用いて行う平面加工、曲面加工や穴あけ加工といった切削加工、及び研削工具を用いて行う円筒研削や平面研削といった研削加工など、複数の加工工程を行うことができるようになっている。
【0006】
この複合加工機械は、上記のように複数の加工工程を一台で行うことができる加工集約型の加工機械であり、加工工程を集約することによって、ワークの取付・取外に関するハンドリング回数を低減することができ、その結果、加工工程毎に異なる加工機械を用いて加工する場合に比べて、総加工時間を短縮することができ、また、ハンドリングを繰り返すことによって加工精度が累積的に悪化するのを防止することができるというメリットを有する。
【0007】
ところが、この複合加工機械では、円筒研削を行う際に、上述した従来の定寸装置を用いることができないという問題があった。即ち、この複合加工機械では、上述したように、工具主軸を用いた旋削加工や工具主軸を用いた切削加工など、各種の加工を行うように構成されているため、上記従来の円筒研削盤と同様に、定寸装置をベッド上に配設すると、他の加工の際に、当該定寸装置と、刃物台、工具主軸及び工具といった複合加工機械の構成物とが干渉するという不都合を生じるからである。
【0008】
また、旋盤によりワークの外周面を仕上加工する際にも、上記定寸装置を用いることができれば便利である。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、工作機械を構成する他の構成物と干渉しないように当該工作機械に配設することができる定寸装置、及びこれを備えた工作機械の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、ワークを保持して回転させる主軸を備え、工具を用いて前記ワークの外周面を加工するように構成された工作機械に付設される定寸装置であって、
相互に接近するように付勢された2つの測定子を有し、当該2つの測定子を前記ワークの外周面に接触させることによって当該ワークの外径を測定するように構成された測定ヘッドと、該測定ヘッドを移送して前記測定子を前記ワークの外周面に接触させる移送装置とを備え、
前記移送装置は、前記2つの測定子の前記ワークとの接触部を含む平面が前記主軸の軸線と直交するように前記測定ヘッドを支持するように構成されると共に、前記測定ヘッドを前記主軸の軸線に沿って、加工領域内に設定された旋回位置と、加工領域外に設定された待機位置との間で進退させる直線移送機構と、前記旋回位置において、前記測定ヘッドを前記主軸の軸線と平行な軸線を中心として、前記ワークに対して離接させる方向に旋回させて、前記2つの測定子が前記ワークの外周面に接触する測定位置と、前記2つの測定子が前記ワークから離反した退避位置とに移動させる旋回機構とを備えた定寸装置に係る。
【0011】
この定寸装置は、上述のように、ワークを保持して回転させる主軸を備え、工具を用いて前記ワークの外周面を加工するように構成された工作機械に付設され、その測定ヘッドが前記移送装置によって移送される。具体的には、前記測定ヘッドは、前記2つの測定子の前記ワークとの接触部を含む平面が前記主軸の軸線と直交するように前記移送装置によって支持され、更に、前記直線移送機構によって、前記主軸の軸線に沿った方向に進退動作し、また、旋回機構によって、前記主軸の軸線と平行な軸線を中心として、前記ワークに接近する方向と、前記ワークから離反する方向に旋回動作する。
【0012】
より具体的には、前記測定ヘッドは、前記直線移送機構により、加工領域内に設定された旋回位置と、加工領域外に設定された待機位置との間で進退し、旋回位置に在るときに、前記旋回機構により、前記ワークから離反した退避位置から、前記2つの測定子がワークの外周面に接触する測定位置に旋回し、逆に、測定位置から退避位置に旋回する。
【0013】
斯くして、この定寸装置によれば、定寸動作が必要なときに、直線移送機構により、測定ヘッドを加工領域外の待機位置から加工領域内の旋回位置に移動させ、ついで、この旋回位置において、旋回機構により、測定ヘッドを退避位置から測定位置に旋回させることにより、ワークの外径を測定することができるようになる。そして、定寸動作を終了すると、旋回機構により、測定ヘッドを測定位置から退避位置に旋回させた後、直線移送機構により、旋回位置から加工領域外の待機位置に移送する。
【0014】
以上のように、この定寸装置によれば、当該定寸装置が必要な加工のときにのみ、その測定ヘッドを加工領域外の退避位置から加工領域内の旋回位置に進出させることができるので、言い換えれば、定寸装置を必要としない他の加工のときには、当該測定ヘッドを加工領域外の退避位置に退避させることができるので、当該他の加工の際に、工作機械を構成する構成物と定寸装置とが干渉するといった不都合が生じるのを防止することができる。
【0015】
そして、本発明において、前記定寸装置が配設される工作機械は、当該定寸装置を主軸の近傍に備えた態様を採ることができ、更に、当該定寸装置を、カバー体によって加工領域から隔離された格納領域に格納すると共に、前記カバー体に形成された開口部をから、前記加工領域に対して前記測定ヘッドを進退させるように構成された態様を採ることができる。このようにすれば、定寸装置を加工領域から隔離された格納領域内に格納することができるので、前記他の加工の際に生じる切屑や当該他の加工に用いられるクーラント液等によって、定寸装置が汚損されるのを防止することができる。
【0016】
尚、前記定寸装置を設けることができる工作機械には何ら制限は無く、当該工作機械には、前記ワーク主軸及び工具主軸を備えた複合加工機械、旋盤の他、円筒研削盤なども含まれる。
【0017】
また、前記カバー体を設ける場合に、当該カバー体の開口部を開閉する蓋体を設ければ、前記切屑やクーラント液等によって、当該定寸装置が汚損されるのをより確実に防止することができる。
【0018】
また、前記旋回機構は、前記測定ヘッドをその2つの測定子の前記ワークとの接触部を含む平面が前記主軸の軸線と直交するように支持する旋回アームと、前記主軸の軸線と平行に配設され、前記旋回アームが連結される回転軸と、該回転軸を軸中心に回転させるアクチュエータとから構成された態様を採ることができ、前記直線移送機構は、前記旋回機構を前記主軸の軸線に沿った方向に進退させるように構成された態様を採ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る定寸装置によれば、当該定寸装置が必要な加工のときには、その測定ヘッドを加工領域外の退避位置から加工領域内の旋回位置に進出させることができ、一方、定寸装置を必要としない他の加工のときには、当該測定ヘッドを加工領域外の退避位置に退避させることができるので、当該他の加工の際に、工作機械を構成する構成物と定寸装置とが干渉するといった不都合が生じるのを防止することができる。
【0020】
また、定寸装置を、カバー体により加工領域から隔離された格納領域に格納するようにすれば、前記他の加工の際に生じる切屑や当該他の加工に用いられるクーラント液等によって、定寸装置が汚損されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る複合加工装置の主要構成を示した斜視図である。
図2】本実施形態に係る複合加工装置によるねじ軸の加工方法説明するための説明図である。
図3】本実施形態に係る複合加工装置によるねじ軸の加工方法説明するための説明図である。
図4図3における矢視A方向から見た説明図である。
図5】本実施形態に係る研削ユニットを示した断面図である。
図6】本実施形態に係る研削ユニット用の収容装置を示した斜視図である。
図7】本実施形態に係る研削ユニットの使用方法を説明するための説明図である。
図8】本実施形態に係る研削ユニットの使用方法を説明するための説明図である。
図9】本実施形態に係る収容装置の動作を説明するための説明図である。
図10】本実施形態に係る収容装置の動作を説明するための説明図である。
図11】本実施形態に係る振れ止めユニットを示した斜視図である。
図12図11における矢視B-B方向の断面図である。
図13図11における矢視C方向から見た斜視図である。
図14】本実施形態に係るチャックを示した斜視図である。
図15】本実施形態に係るチャックの把持爪を示した斜視図である。
図16】本実施形態に係るチャックの動作を説明するための説明図である。
図17】本実施形態に係る定寸装置を格納するカバー体を示した斜視図である。
図18】本実施形態に係る定寸装置の一部を示した斜視図である。
図19】本実施形態に係る定寸装置を示した平断面図である。
図20】本実施形態に係る定寸装置を示した正断面図である。
図21】本実施形態に係るロータリドレッサが設けられる部分を示した斜視図である。
図22】本実施形態に係るロータリドレッサを用いた研削砥石の形状修正を説明するための説明図である。
図23】本実施形態に係るポイントドレッサを用いた研削砥石の形状修正を説明するための説明図である。
図24】本実施形態に係るポイントドレッサを用いた研削砥石の形状修正を説明するための説明図である。
図25】本実施形態に係る研削砥石を用いた加工方法を説明するための説明図である。
図26】本実施形態に係るねじ軸測定装置が測定位置に配置された状態を示す斜視図である。
図27】本実施形態に係るねじ軸測定装置の構成を説明するための説明図である。
図28】本実施形態に係るねじ軸測定装置の構成を示したブロック図である。
図29】本実施形態に係るねじ軸測定装置における測定方法を説明するための説明図である。
図30】本発明の他の実施形態に係るねじ軸測定装置における測定方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図1図29を参照しながら説明する。図1は、ねじ軸を加工可能に構成されたNC工作機械である本例の複合加工装置の主要構成を示した斜視図である。尚、以下では、ボールねじのねじ軸を加工対象として説明するが、本例の複合加工装置で加工可能な対象物はこれに限られるものではない。特に、ねじ軸としては、ボールねじの他、台形ねじなど各種のねじ軸を加工可能である。また、以下では、ねじ軸を製作するための材料を軸状ワークと称する。
【0023】
本例の複合加工装置1は、複合加工機2、制御装置3、定寸装置90及びねじ軸測定装置110を備えて構成される。以下、各部の詳細について説明する。
[複合加工機]
<複合加工機の基本的構成>
前記複合加工機2は、ベッド(図示せず)と、このベッド(図示せず)上に、図1に示した矢示Z軸方向に移動可能に配設されたコラム(図示せず)と、同じくベッド(図示せず)上に配設された第1主軸台8、第2主軸台10及び刃物台15などから構成される汎用の加工機であって、更に、第2主軸台10の上方に配設された収容装置60などを備えている。
【0024】
<工具主軸>
前記コラム(図示せず)は、X軸及びY軸方向に移動可能にクイル6を保持しており、このクイル6には工具主軸7が設けられ、工具主軸7には、研削ユニット40の他各種工具が装着されるようになっている。そして、研削ユニット40は、前記収容装置60に収容されるようになっており、所定の動作によって工具主軸7への着脱が行なわれる。また、研削ユニット40以外の工具は適宜位置に設けられた工具マガジン(図示せず)に格納されており、この工具マガジン(図示せず)の近傍の工具交換位置に配設された工具交換装置(図示せず)によって、工具主軸7への着脱が行なわれる。また、この工具主軸7は、Y軸と平行な回転軸を中心に回転可能にクイル6に保持されている。
【0025】
<主軸台>
前記第1主軸台8は第1主軸9を回転自在に保持するとともに、内部に第1主軸9を回転させる駆動モータを備えており、同様に第2主軸台10は第2主軸11を回転自在に保持するとともに、内部に第2主軸10を回転させる駆動モータを備えている。そして、これら第1主軸台8及び第2主軸台10は相互に対向し、且つ第1主軸9と第2主軸11の軸線が同軸となるように配設され、また、第2主軸台10は第1主軸台8に対して、Z軸方向に進退可能になっている。
【0026】
<チャック>
前記第1主軸9には第1チャック20が装着され、また、前記第2主軸11には第2チャック25が装着されており、これら第1チャック20及び第2チャック25により、軸状ワークWを把持する。尚、第1チャック20及び第2チャック25は同じ構成を備えている。したがって、以下では、代表して第1チャック20についてその構成を説明し、第2チャック25の対応する構成要素については括弧書きでその符号を付す。
【0027】
図14に示すように、第1チャック20(25)は、チャック本体21(26)と、このチャック本体21(26)の前端面から突出するように、その中心位置に設けられる心押軸24(29)と、同じくチャック本体21(26)の前端面から突出するように、周方向に等間隔に配設された3つ把持爪22(27)とを備えている。この把持爪22(27)は図示しない駆動機構によって、チャック本体21(26)の中心軸に沿った方向に進退するように構成されると共に、進出時(閉じる時)には前進端まで進出した後、中心軸に対し接近する方向に揺動して軸状ワークWを把持するように構成され、後退時(開く時)には、中心軸から径方向外方に揺動して軸状ワークWの把持を解除した後、中心軸に沿った方向に後退端まで後退するように構成されている。
【0028】
斯くして、この第1チャック20(25)チャックによれば、把持爪22(27)がチャック本体21(26)の中心軸に向けて揺動することにより、軸状ワークWがチャック本体21(26)の端面側に向けて引き込まれるように把持される。そして、このような把持動作によって、軸状ワークWを寸法精度良く加工することが可能となる。
【0029】
前記各把持爪22(27)の把持面23(28)は、把持する軸状ワークWの外径に応じて円弧状に形成され、且つチャック本体21(26)の端面から離反する方向に順次シフトした位置に設けられる複数の把持面(本例では、4つの把持面23a-23d(28a-28d))からなる。そして、各把持面23a-23d(28a-28d)は、各把持爪22(27)が開状態のときに、前記チャック本体21(26)の中心軸に対して径方向外方に傾斜した状態となり、チャック本体21(26)の端面に最も近い把持面23a(28a)は、当該チャック本体21(26)の中心軸に対する傾斜角が最も小さく、チャック本体21(26)の端面から遠ざかる把持面ほどその傾斜角が大きく設定され、最も遠い把持面23d(28d)は、その傾斜角が最も大きくなっている。
【0030】
また、各把持面23a-23d(28a-28d)は、チャック本体21(26)の端面から遠ざかる方向に向けて順次曲率が異なっており、チャック本体21(26)の端面に最も近い把持面23a(28a)は、その曲率が最も小さく、チャック本21(26)の端面から遠ざかる把持面ほどその曲率が大きくなっており、最も遠い把持面23d(28d)は、その曲率が最も大きくなっている。
【0031】
斯くして、以上の構成を備えた本例の第1チャック20及び第2チャック25では、1種類の把持爪22,27によって、異なる4つの外径の軸状ワークWを把持することできる。そして、この第1チャック20及び第2チャック25によれば、従来に比べて、用意すべき把持爪の個数を減らすことができ、この結果、当該第1チャック20及び第2チャック25に係る設備コストを低減することができるとともに、その管理の複雑さを緩和することができ、効率の良い運用を行うことができる。また、軸状ワークWの外径に合わせて把持爪22(27)を交換する回数が減少するので、段取り時間を低減することができ、これに伴って加工時間を短縮することができる。
【0032】
また、この第1チャック20及び第2チャック25では、軸状ワークWの両端面に穿孔されたセンタ穴に前記心押軸24,29の先端が挿入されることにより、当該軸状ワークWを保持した状態で、前記把持爪22,27によって当該軸状ワークWの端部を把持することができる。
【0033】
また、図23及び図24に示すように、第1チャック20の外周寄りの端面には、第1ポイントドレッサ32及び第2ポイントドレッサ33が取り付けられている。第1ポイントドレッサ32は、その軸部が第1チャック20の中心軸に向けて傾斜するように配設され、第2ポイントドレッサ33はその軸部が第1チャック20の径方向外方に延出するように配設され、各軸部の先端に設けられたダイヤモンドによって研削砥石Tの形状が修正されるようになっている。
【0034】
尚、本例の研削砥石Tは軸部の先端に砥石部を形成した構造を有しており、砥石部は先端に向けて先細となる順テーパ部Gaと、この順テーパ部Gaから軸側に向けて先細となる逆テーパ部Gbからなり、前記第1ポイントドレッサ32により逆テーパ部Gbの形状が修正され、第2ポイントドレッサ33により順テーパ部Gaの形状が修正される。この研削砥石Tでは、図25に示すように、順テーパ部Gaを用いて軸状ワークWの外周面を研削加工することができ、逆テーパ部Gbを用いて軸状ワークWの端面を研削加工することができる。
【0035】
斯くして、本例では、第1チャック20の外周寄りの端面に、第1ポイントドレッサ32及び第2ポイントドレッサ33を配設しており、第1チャックの端面側の領域は、通常、干渉領域に設定され、工具を用いた加工の際に当該工具を侵入させることができない領域に設定されているので、研削砥石Tを用いた研削加工以外の他の加工を行う際に、刃物台15、工具主軸7及び他の工具などの構成物と第1ポイントドレッサ32及び第2ポイントドレッサ33とが干渉するのを確実に防止することができる。
【0036】
尚、前記第1チャック20の把持爪22が把持した軸状ワークWの端部を加工する場合に、把持爪22と研削砥石Tとが干渉する場合には、把持爪22を後退端まで後退させることにより、把持爪22と研削砥石Tとが干渉しない状態にすることで、当該端部を加工することができる。同様に、前記第2チャック25の把持爪27が把持した軸状ワークWの端部を加工する場合に、把持爪27と研削砥石Tとが干渉する場合には、把持爪27を後退端まで後退させることにより、把持爪27と研削砥石Tとが干渉しない状態にすることで、当該端部を加工することができる。
【0037】
<刃物台>
前記刃物台15は、図1に示すように、矢示X軸方向、Z軸方向及びY’軸方向に移動可能になっており、第1チャック20側の端面に、前記Z軸に平行な回転軸を中心として回転可能にタレット16を保持している。タレット16は周面が平面状の取付面となった多角柱体から構成され、図1及び図2等に示すように、当該取付面に振れ止めユニット70が取り付けられている。尚、Y’軸は前記Y軸に対して所定の角度だけ、操作側に向けて前下がりとなるように傾斜している。また、刃物台15はX軸方向の移動とY’軸方向の移動との複合動作によってY軸方向(水平方向)への移動が創成されるようになっている。
【0038】
<振れ止めユニット>
前記振れ止めユニット70は、図11及び図13に示すように、一組の振れ止め装置72と、この振れ止め装置72を適宜間隔を空けて連結する連結板71と、前記振れ止め装置72に圧力流体を供給する圧力流体供給源とを備えて構成され、前記一組の振れ止め装置72は前記Z軸に沿って配設されている。尚、図11では、軸状ワークWの図示を省略している。
【0039】
図12に示すように、前記振れ止め装置72は、基台73と、この基台73上に設けられた受部材74と、受部材74の上方にこれと対向するように設けられた押え部材75と、この押え部材75を支持するとともに、当該押え部材75を受部材74に対して離接させるクランプ機構77などを備えて構成される。
【0040】
前記一組の振れ止め装置72の受部材74はそれぞれ上面にV字状の溝74aを備えており、一組の振れ止め装置72は、各受部材74のV字状溝74aの底部条線が同一の線上に位置するように、所定の間隔を空けて前記連結板71に取り付けられている。そして、振れ止めユニット70は、受部材74のV字状溝74aの底部条線が前記Z軸と平行になるように前記タレット16に取り付けられる。また、前記押え部材75は前記受部材74と対向する下面に、当該受部材74のV字状溝74aに一致した、即ち、底部条線が上下で一致した同じくV字状の溝75aが形成されている。また、前記基台73には、前記受部材74から所定間隔を空けてガイド穴73aが穿設されており、このガイド穴73aには、上端部が前記押え部材75の下面に連結されガイドピン76が嵌挿されている。
【0041】
前記クランプ機構77は、前記ガイド穴73aと前記受部材74との間において、前記基台73の上面に開口するように形成されたシリンダ穴78と、このシリンダ穴78に嵌挿され、その上端部が前記押え部材75の下面に連結されたピストン79と、前記シリンダ穴78内において上下に形成される2つの圧力流体室78a,78bに選択的に圧力流体を供給する圧力流体供給部(図示せず)などから構成される。斯くして、このクランプ機構77では、圧力流体室78aに圧力流体を供給することにより、ピストン79及びこれに連結される押え部材75が下降して、軸状ワークWが受部材74のV字状溝74aの2つの内面と押え部材75のV字状溝75aの2つの内面とに当接した状態で、これら受部材74と押え部材75とによってクランプされ、圧力流体室78bに圧力流体を供給することにより、ピストン79及び押え部材75が上昇して、受部材74及び押え部材75による軸状ワークWのクランプが解除、即ち、アンクランプされる。その際、ガイド穴73aに嵌挿されたガイドピン76を設けているので、ピストン79の昇降動作はこのガイドピン76によって案内され、これにより当該ピストン79及び押え部材75はスムーズに昇降することができる。尚、圧力流体としては圧縮空気や圧油を用いることができる。
【0042】
また、前記基台73の上面には、前記シリンダ穴78及びガイド穴73aを挟んで前記受部材74とは反対側の位置に取付板80aが立設され、更に、この取付板80aには、前記押え部材75の上方にこれと平行になるように保持板80bが固設されている。そして、この保持板80bと押え部材75との間には、前記ピストン79が連結される位置、押え部材75のV字状溝75aに対応する位置及び前記ガイドピン76が連結される位置において、それぞれ押え部材75を受部材74側に付勢するバネ体81(第1付勢部材)、バネ体82(第2付勢部材)及びバネ体83(第3付勢部材)が設けられている。斯くして、押え部材75には、ピストン79によるクランプ力に加えて、バネ体81,82,83の各付勢力が作用するため、軸状ワークWはより強固な力で受部材74及び押え部材75によって挟持される。
【0043】
また、前記受部材74及び押え部材75は、それぞれ、前記V字状溝74a,75aに沿った一方の側面が、平面から視て、クランプした軸状ワークWの径方向の端部よりも該軸状ワークWの軸線側に位置している。
【0044】
<研削ユニット>
前記研削ユニット40は、図5に示すように、回転軸45と、この回転軸45を、その一方端が外部に延出した状態で、ベアリング46によって回転自在に支持するハウジング41と、回転軸45の前記一方端に取り付けられたねじ溝研削砥石55と、回転軸45に装着されたロータ49と、ロータ49の径方向外方に位置するようにハウジング41に保持されたステータ50などを備えて構成される。このロータ49及びステータ50は駆動モータを構成するもので、外部から供給される電力によって、ロータ49、このロータ49が取り付けられる回転軸45、及び回転軸45に取り付けられたねじ溝研削砥石55が回転する。尚、ステータ50には、可撓性を有する保護チューブ56により保護されたケーブルが接続されており、このケーブルを介して前記ステータ50に電力が供給される(図6図8等参照)。
【0045】
前記ハウジング41は、前記ステータ50が挿入された本体部42と、この本体部42の両端に取り付けられて、それぞれ前記ベアリング46を保持する環状部材43,44とから構成される。そして、環状部材44から外方に延出される回転軸45には蓋体47a,47bが外嵌され、更に当該回転軸45の端部には第1挟持部材54が外嵌され、この第1挟持部材54と共に前記回転軸45の端部に連結される第2挟持部材53によってねじ溝研削砥石55が挟持される。また、環状部材43の端面にはカバー体48が設けられている。
【0046】
前記本体部42の外面には、当該研削ユニット40を前記工具主軸7に装着するための第1被保持部51が設けられ、この第1被保持部51とは反対側の前記本体部42の外面に、第2被保持部52が設けられている。尚、図5において、この第2被保持部52については、その断面の図示を省略している。
【0047】
ところで、図21に示すように、前記第2主軸台10の上方には、ねじ溝研削砥石55の研削作用面の形状を修正するロータリドレッサ30が設けられており、更に、ねじ溝研削砥石55が形状を修正するための修正位置に在るときに、当該ねじ溝研削砥石55を検出する渦流センサ31が設けられており、この渦流センサ31によって、ねじ溝研削砥石55が修正位置に位置していることが検出されるようになっている。
【0048】
斯くして、研削ユニット40をその回転軸45の軸線がX軸方向においてロータリドレッサ30の軸線と一致する位置に移動させ、ついで、Z軸方向に研削ユニット40を移動させて、当該研削ユニット40を前記渦流センサ31によって検出される位置に位置決めした後、ロータリドレッサ30に接近するようにY軸方向に移動させて、回転しているねじ溝研削砥石55の外周面を、同じく回転しているロータリドレッサ30の外周面に当接させることより、ねじ溝研削砥石55の外周面である研削作用面の形状を修正することができる。
【0049】
この研削ユニット40は、図1図6図10に示す収容装置60に収納されており、当該研削ユニット40を用いて軸状ワークWを加工する際に、収容装置60から取り出されて前記工具主軸7に装着される。
【0050】
<収容装置>
前記収容装置60は、図1に示すように、第2主軸台10の上方に配設されている。この収容装置60は、図1図6図10に示すように、研削ユニット40を出し入れするための開口を有し、内部に研削ユニット40が収容される空間を有する収容体61と、収容体61の開口部を開閉する蓋体63と、前記収容体61内に配設される開閉機構62、進退機構67、プーリ65、スライド・付勢部66及び係止部材69などから構成される。
【0051】
前記進退機構67は、前記研削ユニット40の第2被保持部52を介して当該研削ユニット40を着脱自在に保持する保持機構としてのツール保持部67aと、このツール保持部67aを、前記収容体61内に設定された収容位置(図6及び図9参照)と、前記収容体61の外部に設定された取出位置(図7及び図10参照)との間で、前記開口を通して矢示Z軸方向に進退させるエアシリンダ67bとから構成される。そして、図10に示すように、研削ユニット40は、そのねじ溝研削砥石55が上側となるとともに、第2被保持部52が収容体61側に位置し、且つ第1被保持部51が収容体61とは反対側に位置する姿勢でツール保持部67aに保持される。尚、前記エアシリンダ67bは、外部に設けられた適宜圧縮空気供給源に接続されており、この圧縮空気供給源から加圧された圧縮空気が当該エアシリンダ67bに供給される。
【0052】
前記スライド・付勢部66は、その長手方向が前記Z軸に沿って配設されると共に、前記プーリ65をZ軸方向に移動可能に保持すると共に、封入された圧縮空気(圧力流体)の作用によって前記開口とは反対側に向けて前記プーリ65を付勢するように構成されている。そして、このプーリ65には前記研削ユニット40に接続された前記保護チューブ56が巻き掛けられており、この保護チューブ56の他方の端部は前記収容体61内に設けられた係止部材69aによって係止され、その中間部は前記スライド・付勢部66を挟んで係止部材69aの上方に設けられたガイドリング69bに挿通されている。
【0053】
前記開閉機構62は、図9及び図10にその構成を部分的に示すように、長手方向が前記Z軸に沿って配設されたエアシリンダ(図示を省略)と、このエアシリンダ(図示せず)のピストンロッド62a及び前記蓋体63の接続部63aに接続したリンク部(図示を省略)とから構成され、ピストンロッド62aが進出することによって、前記蓋体63が開き、ピストンロッド62aが後退することによって蓋体63が閉じる。尚、前記エアシリンダ(図示を省略)は、前記圧縮空気供給源に接続されており、この圧縮空気供給源から加圧された圧縮空気が当該エアシリンダ(図示を省略)に供給される。
【0054】
この収容装置60によれば、図6及び図7に示すように、前記研削ユニット40は、その第2被保持部52が進退機構67のツール保持部67aに保持された状態で、収容体61内の収容位置に収容される。尚、ツール保持部67aが収容位置に在るとき、スライド・付勢部66はその付勢力により前記プーリ65を前記開口とは反対側の後退端に移動させている。これにより、保護チューブ56は弛むことなくプーリ65に巻き掛けられた状態で、研削ユニット40とともに収容体61内に収容される。
【0055】
[定寸装置]
前記定寸装置90は、図17図20に示すように、前記第1主軸台8に沿って配設され、加工領域から隔離された格納領域を有するカバー体107内に格納される。このカバー体107は蓋体108によって開閉される開口を備えており、蓋体108はエアシリンダなどの適宜駆動源(図示せず)により駆動されて前記開口を開閉する。
【0056】
前記定寸装置90は、測定ヘッド91と、この測定ヘッド91を前記カバー体107の開口を介して出し入れする移送装置93などから構成される。測定ヘッド91は、相互に接近するように付勢された2つの測定子92を有し、この2つの測定子92が軸状ワークWの外周面に接触することによって当該軸状ワークWの外径を測定するように構成される。
【0057】
前記移送装置93は、前記測定ヘッド91を移送してその測定子92を軸状ワークWの外周面に接触させるもので、測定ヘッド91を保持し、当該測定ヘッド91を第1主軸9の軸線と平行な軸線を中心として、軸状ワークWに接近させる方向(矢示E方向)と、当該軸状ワークWから離反させる方向(矢示F方向)に旋回させる旋回機構103と、この旋回機構103を第1主軸9の軸線に沿った方向(Z軸方向)に進退させる直線移送機構94とから構成される。
【0058】
前記直線移送機構94は、第1主軸9の軸線と直交する直交部95a及び第1主軸9の軸線と平行な平行部95bを有する平面視L字状をしたフレーム95と、このフレーム95の平行部95bにZ軸に沿って平行に配設された2本のガイドレール96と、各ガイドレール96に係合して当該ガイドレール96に沿って移動するスライダ97と、このスライダ97上にこれらに跨るように取り付けられた基台98と、この基台98上にZ軸方向に所定間隔を空けて立設された1組のブラケット99,100と、前記フレーム95の直交部95aの背面(前記平行部95bとは反対側の面)に取り付けられた支持板101と、この支持板101に取り付けられ、そのピストンロッド102aが前記直交部95aを貫通して前記基台98に連結されたエアシリンダ102などから構成される。
【0059】
前記旋回機構103は、前記2つの測定子92の前記軸状ワークWに対する接触部を含む平面が前記第1主軸9の軸線と直交するように前記測定ヘッド91を支持する旋回アーム105と、軸線が第1主軸9の軸線に沿って配設され、且つ前端部の外周面に前記旋回アーム105が連結されるとともに、前記ブラケット99に回転自在に保持される回転軸104と、前記ブラケット100に取り付けられるとともに前記回転軸104に連結され、前記回転軸104を回転させるアクチュエータ106とから構成される。このアクチュエータ106は外部から供給される圧縮空気により動作して、前記回転軸104を矢示E-F方向に回転させ、測定ヘッド91をその測定子92が軸状ワークWの外周面に接触する測定位置と、軸状ワークWから遠ざかった退避位置との間で旋回移動させる。尚、この測定ヘッド91は、退避位置に旋回した状態で前記カバー体107内に格納される。
【0060】
斯くして、この定寸装置90によれば、適宜駆動源(図示せず)により蓋体108を駆動してカバー体107の前記開口を開いた状態で、前記直線移送機構94のエアシリンダ102を駆動して基台98を前進させると、旋回機構103及びこれに支持される測定ヘッド91がカバー体107の開口から進出して加工領域内の旋回位置に移動し、ついで、旋回機構103のアクチュエータ106を駆動して測定ヘッド91を矢示E方向の前記測定位置に旋回させると、その測定子92が軸状ワークWの外周面に接触して、当該軸状ワークWの外径を測定可能となる。
【0061】
そして、軸状ワークWの外径測定を終えた後、旋回機構103のアクチュエータ106を駆動して測定ヘッド91を矢示F方向の前記退避位置に旋回させ、ついで、前記直線移送機構94のエアシリンダ102を駆動して基台98を後退させると、旋回機構103及びこれに支持される測定ヘッド91が前記旋回位置からカバー体107内の待機位置に格納される。そして、カバー体107の開口を蓋体108によって閉じることにより、カバー体107内の格納領域が加工領域から隔離される。
【0062】
この定寸装置90は、これを使用しないときに、加工領域から隔離された格納領域を有するカバー体107内に格納されるので、他の加工時に用いられるクーラント液やその際に生じる切屑等によって定寸装置90が汚損されるのを防止することができ、また、当該他の加工時に、この加工に用いられる工具等と定寸装置90とが干渉するといった不都合が生じるのを防止することができる。
【0063】
[ねじ軸測定装置]
ねじ軸測定装置110は、図26及び図28に示すように、測定位置において、ねじ溝が形成された軸状ワークWと対峙し、且つ光軸が相互に平行になるように配設された第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112、ねじ軸Wを挟んで前記第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112の撮像方向とはそれぞれ逆方向から撮像部位を照明する第1照明装置113及び第2照明装置114、並びに、これら第1、第2撮像カメラ111,112及び第1、第2照明装置113,114を保持するフレーム115から構成される測定ユニットと、前記第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112によって撮像される画像を取り込む画像入力部116と、この画像入力部116の取り込みを制御する測定動作制御部117と、画像入力部116によって取り込まれた画像データを基に、ねじ軸Wのねじ部の寸法を算出する寸法算出部118とから構成される。尚、以下において、ねじ溝が形成された軸状ワークWを特に「ねじ軸W」という。
【0064】
前記画像入力部116、測定動作制御部117及び寸法算出部118は制御装置3内で構築されており、この制御装置3には前記複合加工機2の動作を制御するための複合加工機制御部4が設けられている。また、前記寸法算出部118によって算出された寸法は適宜出力装置5、例えば、操作盤に設けられたディスプレイに出力される。
【0065】
尚、前記制御装置3は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記複合加工機制御部4、画像入力部116、測定動作制御部117及び寸法算出部118は、コンピュータプログラムによってその機能が実現される。
【0066】
前記第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112は、当該第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112側から見た平面において、ねじ軸Wの軸線を境とした一方側の外周部に位置するねじ溝のリードと、両光軸の角度が一致するように、所定の間隔で並設される(図27参照)。図27は、ねじ軸Wと、第1、第2撮像カメラ111,112及び第1、第2照明装置113,114との関係を示した正面図である。同図に示すように、第1、第2照明装置113,114は、その照明光軸が第1、第2撮像カメラ111,112の撮像光軸とそれぞれ一致している。
【0067】
そして、前記測定動作制御部117は、前記複合加工機制御部4を介し前記複合加工機2の第1主軸9及び第2主軸11の回転を制御して、ねじ軸Wを初期の回転位置として設定された角度位置に割り出した後、前記画像入力部116を介して、前記第1撮像カメラ111から一方側のねじ溝を含んだ第1の画像を入力すると共に、第2撮像カメラ112からねじ軸Wの軸線を挟んで前記一方側とは反対側の他方側に位置するねじ溝を含んだ第2の画像を入力する処理を行う。
【0068】
図29(a)に、入力される第1の画像及び第2の画像を示しており、第1撮像カメラ111によって撮像された第1の画像が上側の画像であり、第2撮像カメラ112によって撮像された第2の画像が下側の画像である。尚、図29(a)は、それぞれねじ軸Wの輪郭線を図示している。この第1の画像におけるねじ溝の輪郭画像は、第1撮像カメラ111の光軸が前記一方側のねじ溝のリード角と一致しているため、正確なねじ溝の断面に相当する輪郭画像となっている。一方、第2の画像におけるねじ溝の輪郭画像は、第2撮像カメラ112の光軸が他方側のねじ溝のリード角と一致していないため、ねじ溝の輪郭が歪んだ画像となっている。
【0069】
次に、測定動作制御部117は、前記複合加工機制御部4を介し前記複合加工機2の第1主軸9及び第2主軸11を回転させて、前記ねじ軸Wを、その軸線を中心として180°反転させた後、前記画像入力部116を介して、前記第1撮像カメラ111から、前記一方側の領域に回転された前記他方側のねじ溝を含んだ第3の画像を入力する処理を実行する。第1撮像カメラ111によって撮像された第3の画像(ねじ軸Wの輪郭線)を図29(b)に示している。前記他方側のねじ溝は、これを前記一方側の領域に180°回転されることで、第1撮像カメラ111の光軸と当該他方側のねじ溝のリード角と一致した状態となるため、第3の画像における前記他方側のねじ溝の輪郭画像は、正確なねじ溝の断面に相当する輪郭画像となる。
【0070】
前記寸法算出部118は、上記のようにして撮像された第1の画像に基づいて、前記一方側のねじ溝の輪郭を抽出した後、少なくとも隣接する2つのねじ溝の中心位置を算出して、当該隣接するねじ溝の中心位置の前記軸線に沿った方向の間隔であるピッチを算出すると共に、第1の画像において予め設定された第1の基準位置と前記一方側のねじ溝の中心位置との間の距離であって、ねじ軸Wの径方向の距離を算出する処理を行う。
【0071】
図29(a)において、第1撮像カメラ111により撮像される第1の画像はYa軸-Za軸を基準軸とした座標系で表わされ、このYa軸-Za軸座標系における原点は前記第1の基準位置であり、第1撮像カメラ111の撮像光軸と一致する。また、Ya軸はねじ軸の径方向(前記Y軸)と一致し、Za軸はねじ軸の長手方向(前記Z軸)と一致している。前記寸法算出部118は抽出したねじ溝の輪郭形状から各ねじ溝の中心位置(Ya,Za)、(Ya,Za)を算出し、ついで、隣接するねじ溝の中心位置のZ軸方向の間隔をピッチP(=Za-Za)として算出する。そして、寸法算出部118は、上述した第1の基準位置と一方側のねじ溝の中心位置との間の距離として、算出したYa(=Ya)の値を割り当てる。
【0072】
次に、寸法算出部118は、上述のようにして撮像された第2の画像に基づいて、前記他方側に位置するねじ軸Wの外周に対応した外周輪郭を抽出して、該第2の画像において予め設定された第2の基準位置と前記他方側の外周輪郭との間の距離であって、ねじ軸Wの径方向の距離を算出する処理を行う。
【0073】
図29(a)において、第2撮像カメラ112により撮像される第2の画像はYb軸-Zb軸を基準軸とした座標系で表わされ、このYb軸-Zb軸座標系における原点は前記第2の基準位置であり、第2撮像カメラ112の撮像光軸と一致する。また、Yb軸はねじ軸の径方向(前記Y軸)と一致し、Zb軸はねじ軸の長手方向(前記Z軸)と一致している。前記寸法算出部118は抽出したねじ溝の外周輪郭形状からその径方向の位置であるYbを算出し、第2の基準位置と前記他方側の外周輪郭との間の距離として、算出したYbの値を割り当てる。尚、Ypは第1撮像カメラ111の撮像光軸と第2撮像カメラ112の撮像光軸との間の前記半径方向の距離(軸間距離)であり、適宜キャリブレーションによって、予め導出されている。
【0074】
次に、寸法算出部118は、上述のようにして撮像された第3の画像に基づいて、前記他方側のねじ溝の輪郭を抽出して、該他方側のねじ溝の中心位置を算出するとともに、前記ねじ軸の他方側の外周に対応した外周輪郭を抽出して、前記他方側のねじ溝の中心位置と前記他方側の外周輪郭との間の前記径方向における距離を算出する処理を行う。
【0075】
図29(b)において、第1撮像カメラ111により撮像される第3の画像は、上述したように、Ya軸-Za軸を基準軸とした座標系で表わされる。前記寸法算出部118は、第3の画像において、前記他方側のねじ溝の輪郭を抽出し、抽出したねじ溝の輪郭形状から当該ねじ溝の中心位置(Ya,Za)を算出するとともに、ねじ軸Wの前記他方側の外周輪郭を抽出し、抽出した前記他方側の外周輪郭と前記他方側ねじ溝の中心位置(Ya,Za)との間の径方向(即ち、Ya軸方向)の距離Δ(=Ya-Ya)を算出する。
【0076】
ついで、寸法算出部118は、得られた前記第1の基準位置と前記一方側のねじ溝の中心位置との間の径方向の距離、前記第2の基準位置と前記他方側の外周輪郭との間の径方向の距離、及び前記他方側のねじ溝の中心位置と前記他方側の外周輪郭との間の径方向の距離、並びに予め得られた第1の基準位置と第2の基準位置との間の径方向の距離に基づいて、ねじ溝の有効径を算出する処理を行う。
【0077】
図29(c)は、この処理を分かり易く説明するための説明図であり、図29(a)における第2の画像を、相互の外周輪郭が一致するように第3の画像で置き換えたものである。即ち、図29(a)において、第2の画像における前記他のねじ溝の中心位置は、その外周輪郭からΔだけ半径方向にシフトした位置に在る。したがって、前記一方側のねじ溝の中心位置と前記他方側のねじ溝の中心位置との間の前記半径方向の距離で表わされる有効径Dは、図29(c)にも示すように、次式によって算出される。
D=Ya+Yp+Yb+Δ
寸法算出部118は、この算出式によってねじ溝の有効径Dを算出する。
【0078】
尚、この第1、第2撮像カメラ111,112、第1、第2照明装置113,114及びフレーム115から構成される測定ユニットは、前記測定動作制御部117による制御の下で、適宜移送装置により、測定位置と、加工領域外に設定された退避位置との間で移送されるようになっている。
【0079】
以上の構成を備えた本例の複合加工装置1によれば、前記複合加工機制御部4による制御の下で、以下のようにして、前記複合加工機2により軸状ワークWからねじ軸Wが加工され、また、前記測定動作制御部117による制御の下で、複合加工機2上においてねじ軸Wが測定される。
【0080】
[ねじ軸の加工]
まず、本例では、ねじ軸Wを加工するための材料として、一般的な材質の長尺の軸状ワークWが用いられる。この軸状ワークWは、両端面にセンタ穴が穿孔され、且つ予めその表面に焼き入れ加工が施されており、その径方向の所定深さにおいて、設定された硬度を有している。また、この軸状ワークWは、少なくともねじ溝が形成されるべき外周面に研削加工が施されている。
【0081】
まず、この軸状ワークWの両端を前記第1チャック20及び第2チャック25によって把持する。その際、軸状ワークWのセンタ穴に第1チャック20及び第2チャック25の心押軸24,29が押し当てられ、軸状ワークWはこの心押軸24,29によって支持された状態で、更に、把持爪22,27によって把持される。尚、上述したように、第1チャック20及び第2チャック25の各把持爪22,27には曲率が異なる4つの把持面23a-23d,28a-28dが形成されているので、1種類の把持爪22,27によって異なる4つの外径の軸状ワークWを把持することできる。
【0082】
また、軸状ワークWはタレット16に装着された一組の振れ止め装置72の受部材74及び押え部材75によって上下からクランプされる。尚、前記刃物台15のY’軸方向の位置は、受部材74のV字状溝74a及び押え部材75のV字状溝75aの底部条線と、前記第1主軸9及び第2主軸11の軸線(言い換えれば、軸状ワークWの軸線)とが上下に一致するように、予め調整されている。このような状態で、軸状ワークWは第1チャック20及び第2チャック25によって把持され、一組の振れ止め装置72によってクランプされる。
【0083】
次に、軸状ワークWは、図2に示すように、回転切削工具であるミーリング工具Tを用いて、そのねじ溝が加工される。この加工は、工具主軸7の軸線が、軸状ワークWの軸線及びX軸を含む平面内に位置し、且つ、この平面内において所定角度で傾斜することにより、当該ミーリング工具Tの軸線が当該平面内で傾斜した状態で実行される。また、この加工は一組の振れ止め装置72の間を加工位置として実行され、前記ミーリング工具Tを軸状ワークWに対してX軸方向に所定の切り込み量で切り込ませた状態で、当該軸状ワークWを所定の回転速度で回転させるとともに、当該ミーリング工具TをZ軸方向に所定の送り量で移動させることによって、当該軸状ワークWにねじ溝が形成される。
【0084】
そして、ミーリング工具Tを軸状ワークWに対してX軸方向に徐々に切り込ませながら当該切削動作を繰り返して実行することにより、軸状ワークWに所定形状のねじ溝を形成する。その際、軸状ワークWの回転速度とミーリング工具TのZ軸方向の送り速度とは、形成するねじ溝のピッチによって決定され、軸状ワークWの1回転当たりのミーリング工具TのZ軸方向の送り量がねじ溝のピッチと同じ値となる。そして、これにより、形成されるねじ溝のリード角が所定の角度となる。
【0085】
また、ミーリング工具TのZ軸方向への移動と同期させて、刃物台15、即ち、一組の振れ止め装置72を同じ送り速度で同じ移動方向(Z軸方向)に移動させる。ミーリング工具Tを用いた加工では、断続切削になるため、長尺の軸状ワークWの場合には、当該軸状ワークWに振動や変位が発生する虞があるが、一組の振れ止め装置72によって軸状ワークWをクランプした状態で加工することにより、安定した加工を実現することができ、その結果、ねじ溝を高精度に加工することができる。即ち、前記受部材74及び押え部材5は、それぞれ一つの部材から構成され、高い剛性を有するので、軸状ワークWは断続切削による大きな切削負荷が作用しても、変位や振動を生じることなく、振れ止め装置72によって安定した状態で支持される。また、ミーリング工具Tの移動と同期させて振れ止め装置72を移動させるようにしているので、ミーリング工具Tの加工位置の近傍を常に振れ止め装置72によって支持することができ、この意味においても、軸状ワークWを安定した状態で支持することができる。
【0086】
また、このミーリング工具Tを用いたねじ溝加工は、荒加工及び仕上加工から構成され、本例では、荒加工には荒加工用のミーリング工具Tを用い、仕上加工には仕上加工用のミーリング工具Tを用いる。尚、仕上加工用のミーリング工具Tには、ねじ溝の形状に適合した丸型のチップを用いるのが好ましい。荒加工用及び仕上加工用のミーリング工具Tは上述した工具マガジン(図示せず)に格納され、適宜工具交換装置(図示せず)によって、工具主軸7への着脱が行なわれる。
【0087】
前記ミーリング工具Tを用いたねじ溝の仕上加工後、次に、前記研削ユニット40を用いて、ねじ溝に対して研削加工を行う。
【0088】
まず、仕上加工用のミーリング工具Tを、上述した工具交換装置(図示せず)により工具主軸7から取り外して工具マガジン(図示せず)に格納するとともに、前記収納装置60を動作させて、研削ユニット40を収容体61内から取出位置に移動させる。具体的には、開閉機構62を駆動して蓋体63を開状態にした後、進退機構67を駆動して研削ユニット40を保持したツール保持部67aを前記取出位置に移動させる(図7及び図10参照)。尚、図10に示すように、研削ユニット40は、そのねじ溝研削砥石55が上側となり、第2被保持部52が収容体61側に位置し、且つ第1被保持部51が収容体61とは反対側に位置する姿勢でツール保持部67aに保持されている。
【0089】
次に、工具主軸7をその軸線が水平となり、且つその工具保持部が収容装置60側に向くように旋回させた後、当該工具主軸7をY軸方向及びX軸方向に移動させて、当該工具主軸7の軸線と前記取出位置に在る研削ユニット40の第1被保持部51の軸線が同軸となるように位置決めする。そして、この後、工具主軸7を研削ユニット40に近づくように、その工具保持部が第1被保持部51を保持可能な位置までZ軸プラス方向に移動させた後、当該工具保持部により第1被保持部51を保持させるとともに、ツール保持部67aによる第2被保持部52の保持を解除する。
【0090】
次に、工具主軸7を収容体61から遠ざかるように移動させることで、研削ユニット40が取出位置から加工領域内に取り出される。その際、研削ユニット40に接続された保護チューブ56が当該研削ユニット40とともに引き出されるが、保護チューブ56は前記開口とは反対側に付勢されたプーリ65に巻き掛けられ、当該プーリ65は保護チューブ56の引き出しに伴って付勢状態を保ったまま開口側に移動するので、当該保護チューブ56には常にテンションが付与され、弛緩が防止された状態で引き出される(図8参照)。また、工具主軸7が前記Z軸方向に移動する際にも、プーリ65は常に前記開口側とは反対側に付勢されているので、保護チューブ56には常にテンションが付与され、これが弛緩することは無い。したがって、工具主軸7のZ軸方向への移動によって、保護チューブ56が他の構造物に絡みつくといった不都合が生じる虞は無い。
【0091】
そして、この研削工具55を用いて、軸状ワークWに形成されたねじ溝を研削加工する。具体的には、図3及び図4に示すように、一組の振れ止め装置72により軸状ワークWをクランプした状態で当該一組の振れ止め装置72の間を研削加工位置として、ねじ溝を研削加工する。その際、工具主軸7は、X軸-Z軸平面内において、ねじ溝研削砥石55の回転軸がZ軸に対してねじ溝のリード角と同じ角度になるように当該ねじ溝研削砥石55を傾斜させるとともに、ねじ溝研削砥石55の回転中心位置が軸状ワークWの軸線を含むY軸-Z軸平面に位置するように、ねじ溝研削砥石55のX軸方向の位置を位置決めする。その際、工具主軸7は、その回転軸が鉛直方向から僅かな角度だけ旋回した状態であるので、工具主軸7と他の構造物との干渉が生じることなく、ねじ溝の研削を行うことができる。
【0092】
そして、ねじ溝研削砥石55を軸状ワークWのねじ溝に対してY軸方向に所定の切り込み量で切り込ませた状態で、軸状ワークWを所定の回転速度で回転させ、且つ当該ねじ溝研削砥石55をZ軸方向に所定の送り速度で移動させることによって、軸状ワークWのねじ溝を研削加工する。尚、軸状ワークWの回転速度及びねじ溝研削砥石55の送り速度はねじ溝のピッチによって決定され、軸状ワークWの1回転当たりのねじ溝研削砥石55の送り量がねじ溝のピッチと同じ値となる。そして、これにより、形成されるねじ溝のリード角が所定の角度となる。
【0093】
斯くして、ねじ溝研削砥石55を軸状ワークWに対してY軸方向に徐々に切り込ませながら当該研削動作を繰り返して実行することにより、軸状ワークWに形成されたねじ溝の形状を所定形状に仕上げる。その際、ねじ溝研削砥石55のZ軸方向への移動に同期させて、刃物台15を同じ送り速度で同じ移動方向(Z軸方向)に移動させることにより、振れ止めユニット70をねじ溝研削砥石55の移動に追随させる。このようにすることで、上述したミーリング工具Tを用いた加工と同様に、ねじ溝研削砥石55による加工位置の近傍を常に振れ止め装置72によって支持することができ、軸状ワークWを安定した状態で支持することができる。
【0094】
尚、このねじ溝研削砥石55は、必要に応じて、上述したロータリドレッサ30により、その研削作用面である外周面の形状が修正される。
【0095】
そして、軸状ワークWのねじ溝の研削加工を終了すると、前記進退機構67を駆動して前記ツール保持部67aを取出位置に移動させるとともに、工具主軸7をその軸線が水平となり、且つ研削ユニット40がツール保持部67a側に位置するように旋回させた後、当該工具主軸7をY軸方向及びX軸方向に移動させて、当該工具主軸7の軸線と前記取出位置に在るツール保持部67aの軸線が同軸となるように位置決めする。
【0096】
この後、工具主軸7をツール保持部67aに近づくように、研削ユニット40の第2被保持部52をツール保持部67aと係合する位置までZ軸プラス方向に移動させた後、当該ツール保持部67aにより第2被保持部52を保持させるとともに、工具保持部による第1被保持部51の保持を解除する。ついで、工具主軸7を収容装置60から遠ざかる方向に移動させるとともに、進退機構67を駆動してツール保持部67aを収容位置に移動させた後、開閉機構62を駆動して蓋体63を閉状態にする。その際、保護チューブ56は前記開口とは反対側に付勢されたプーリ65に巻き掛けられ、当該プーリ65はツール保持部67aの後退に伴って付勢状態を保ったまま前記開口とは反対側に移動するので、当該保護チューブ56には常にテンションが付与され、弛緩状態となるのが防止される。
【0097】
以上の動作により、研削ユニット40を収容装置60内に収容する。尚、このように研削ユニット40は、これを使用しないときに、加工領域外に設けられた収容装置60内に収容されるので、他の加工時に用いられるクーラント液やその際に生じる切屑等によって研削ユニット40が汚損されるのを防止することができ、また、当該他の加工時に、この加工に用いられる工具等と研削ユニット40とが干渉するといった不都合が生じるのを防止することができる。
【0098】
[ねじ軸の測定]
以上ようにして、軸状ワークWにねじ溝が形成され、ねじ軸Wとなると、次に、上述したねじ軸測定装置110により、ねじ溝の加工精度が測定される。即ち、まず、前記測定動作制御部117による制御の下で、適宜移送装置により、測定ユニットが測定位置に移送される。そして、この測定動作制御部117による制御の下で、複合加工機2の第1主軸9及び第2主軸11の回転を制御して、ねじ軸Wを初期の回転位置として設定された角度位置に割り出した後、画像入力部116を介して、第1撮像カメラ111から第1の画像を入力すると共に、第2撮像カメラ112から第2の画像を入力する。ついでねじ軸Wを、その軸線を中心として180°反転させた後、第1撮像カメラ111から第3の画像を入力する。
【0099】
そして、入力された第1の画像、第2の画像及び第3の画像に基づいて、寸法算出部118により、上述した処理によって、ねじ溝のピッチP及び有効径Dが算出され、算出されたねじ溝のピッチP及び有効径Dが前記出力装置5に出力される。
【0100】
尚、ねじ軸測定装置110による測定の結果、ねじ溝のピッチP、有効径Dが所定の寸法に仕上がっておらず、その修正が可能な場合には、前記研削ユニット40を用いた修正加工を行うことができる。
【0101】
また、本例の複合加工装置1では、上述したように、図23及び図24に示した研削砥石Tを用いて、軸状ワークWの外周面及び端面の研削加工を行うことができる。外周面の加工を行う場合、上述した定寸装置90を用いて、測定ヘッド91により加工外径を測定しながら研削加工を行うことができる。
【0102】
以上のように、本例の複合加工装置1によれば、ねじ軸のねじ溝の加工を汎用の一台の複合加工装置1によって加工することができるので、工程ごとに設定された複数の専用加工機を用いて加工していた従来に比べて、その初期の設備費用を削減することができ、ひいては、ねじ軸の製造コストの低廉化を図ることができる。
【0103】
また、第1チャック20及び第2チャック25による1回の把持によってねじ溝の荒切削加工、仕上切削加工、及び研削加工を行うことができるので、複数回の把持の繰り返しによって、加工精度が悪化するのを防止することができる。
【0104】
また、長尺の軸状ワークWを一組の振れ止め装置72によってクランプした状態で、ねじ溝の荒切削加工、仕上切削加工、及び研削加工を行うことができるので、安定した加工を実現することができ、その結果、ねじ溝を高精度に加工することができる。
【0105】
そして、ねじ溝の研削加工を、前記研削ユニット40を用いて加工するようにしたので、汎用される複合加工機2を用いて、当該研削加工を行うことができる。そして、この研削ユニット40を収容装置60に収容し、研削加工を行うときにのみ、この収容装置60から当該研削ユニット40を取り出して使用するようにしたので、他の加工を行う際に、この研削ユニット40が邪魔になることがなく、一連の加工を効率的に行うことができる。また、研削ユニット40に接続される保護チューブ56には常にテンションが付与されているので、当該保護チューブ56が研削ユニット40の移動の障害になるのが防止される。
【0106】
また、本例では、汎用の複合加工機2に定寸装置90を設けているので、軸状ワークW(或いはねじ軸W)の外周面を研削加工する場合に、この定寸装置90を用いて当該研削加工を行うことできるので、当該研削加工を高精度且つ効率的に行うことできる。
【0107】
また、本例の複合加工装置1では、加工したねじ軸Wのねじ溝の精度を、ねじ軸測定装置110により機上で測定することができるので、ねじ溝が所定の寸法に仕上がっていない場合に、その修正が可能な場合には、研削ユニット40を用いた修正加工を行うことができる。そして、このようにすることで、高精度なねじ軸Wを効率的に製造することができる。
【0108】
以上、本発明に係る一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は何らこれに限定されるものではない。
【0109】
例えば、上例のねじ軸測定装置110では、ねじ溝の輪郭が明瞭になった画像を得るために、第1照明装置113及び第2照明装置114を、ねじ軸Wを挟んで第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112とは反対側に設けたが、これに限られるものではなく、ねじ溝の輪郭がある程度明瞭な画像を得ることができれば、第1照明装置113及び第2照明装置114を第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112と同じ側に設けても良い。
【0110】
また、上例のねじ軸測定装置110では、2つの第1撮像カメラ111及び第2撮像カメラ112、並びに2つの第1照明装置113及び第2照明装置114を設けた構成としたが、これに限られるものではなく、撮像カメラが、ねじ軸Wの径方向全体を撮像する視野を有するものであれば、1つの撮像カメラを備えていれば良く、この場合、撮像カメラに対応した1つの照明装置が備えられていれば良い。
【0111】
そして、この場合、前記測定動作制御部117は、前記複合加工機制御部4を介し複合加工機2の第1主軸9及び第2主軸11の回転を制御して、ねじ軸Wを初期の回転位置として設定された角度位置に割り出した後、前記画像入力部116を介して、撮像カメラからねじ軸Wの径方向の全体を含む第1の画像を入力する処理を行う。
【0112】
図30(a)に、入力される第1の画像を示しており、この図30(a)には、第1の画像におけるねじ軸Wの輪郭線を図示している。この第1の画像におけるねじ溝の輪郭画像において、上側の輪郭画像は、撮像カメラの光軸が前記一方側のねじ溝のリード角と一致しているため、正確なねじ溝の断面に相当する輪郭画像となっている。一方、下側の輪郭画像は、撮像カメラの光軸が他方側のねじ溝のリード角と一致していないため、ねじ溝の輪郭が歪んだ画像となっている。
【0113】
次に、測定動作制御部117は、前記複合加工機制御部4を介し前記複合加工機2の第1主軸9及び第2主軸11を回転させて、前記ねじ軸Wを、その軸線を中心として180°反転させた後、前記画像入力部116を介して、撮像カメラから、ねじ軸Wの径方向の全体を含む第2の画像を入力する処理を実行する。
【0114】
図30(b)に、撮像カメラによって撮像された第2の画像(ねじ軸Wの輪郭線)の内、前記一方側に位置するねじ溝の輪郭画像を示している。前記他方側のねじ溝は、これを前記一方側の領域に180°回転されることで、撮像カメラの光軸と当該他方側のねじ溝のリード角と一致した状態となるため、第2の画像における前記他方側のねじ溝の輪郭画像は、正確なねじ溝の断面に相当する輪郭画像となる。
【0115】
前記寸法算出部118は、上記のようにして撮像された第1の画像に基づいて、前記一方側のねじ溝の輪郭を抽出した後、少なくとも隣接する2つのねじ溝の中心位置を算出して、当該隣接するねじ溝の中心位置の前記軸線に沿った方向の間隔であるピッチを算出すると共に、前記軸線を挟んで前記一方側とは反対側の他方側に位置するねじ軸の外周に対応した外周輪郭を抽出して、前記一方側のねじ溝の中心位置と前記他方側の外周輪郭との間の距離であって、ねじ軸Wの径方向の距離を算出する処理を行う。
【0116】
図30(a)において、撮像カメラにより撮像される画像はYa軸-Za軸を基準軸とした座標系で表わされ、このYa軸-Za軸座標系における原点は撮像カメラの撮像光軸と一致する。また、Ya軸はねじ軸の径方向(前記Y軸)と一致し、Za軸はねじ軸の長手方向(前記Z軸)と一致している。前記寸法算出部118は第1の画像から抽出したねじ溝の輪郭形状に基づいて各ねじ溝の中心位置(Ya,Za)、(Ya,Za)を算出し、ついで、隣接するねじ溝の中心位置のZ軸方向の間隔をピッチP(=Za-Za)として算出する。また、寸法算出部118は、他方側に位置するねじ軸Wの外周に対応した外周輪郭を抽出して、前記一方側のねじ溝の中心位置と前記他方側の外周輪郭との間の距離であって、ねじ軸Wの径方向の距離(=Ya+Ya)を算出する処理を行う。但し、Ya=Ya
【0117】
次に、寸法算出部118は、上述のようにして撮像された第2の画像に基づいて、前記他方側のねじ溝の輪郭を抽出して、該他方側のねじ溝の中心位置を算出するとともに、ねじ軸Wの他方側の外周に対応した外周輪郭を抽出して、前記他方側のねじ溝の中心位置と前記他方側の外周輪郭との間の距離であって、ねじ軸Wの径方向の距離を算出する処理を行う。
【0118】
図30(b)において、前記寸法算出部118は抽出した他方側のねじ溝の輪郭形状から当該他方側のねじ溝の中心位置(Ya,Za)を算出するとともに、ねじ軸Wの他方側の外周に対応した外周輪郭を抽出して、前記他方側のねじ溝の中心位置(Ya,Za)記他方側の外周輪郭との間の径方向(即ち、Ya軸方向)の距離Δ(=Ya-Ya)を算出する。
【0119】
ついで、寸法算出部118は、得られた前記一方側のねじ溝の中心位置と前記他方側の外周輪郭との間の前記径方向の距離、及び前記他方側のねじ溝の中心位置と前記他方側の外周輪郭との間の前記径方向の距離に基づいて、ねじ溝の有効径を算出する処理を行う。
【0120】
図30(c)は、この処理を分かり易く説明するための説明図であり、図30(a)における下側の輪郭画像を、相互の外周輪郭が一致するように第2の画像(図30(b))で置き換えたものである。即ち、図30(a)において、下側の輪郭画像における前記他のねじ溝の中心位置は、その外周輪郭からΔだけ半径方向にシフトした位置に在る。したがって、前記一方側のねじ溝の中心位置と前記他方側のねじ溝の中心位置との間の前記半径方向の距離で表わされる有効径Dは、図30(c)にも示すように、次式によって算出される。
D=Ya+Ya+Δ
寸法算出部118は、この算出式によってねじ溝の有効径Dを算出する。
【0121】
また、上例では同じ構成を有する第1主軸台8及び第2主軸台10を設けた構成としたが、これに限られるものではなく、その一方を、単に前記軸状ワークWを回転可能に支持する支持装置としての心押装置としても良い。
【0122】
また、上例では、収容装置60に研削ユニット40を収容するようにしたが、これに限られるものではなく、この収容装置60には、切削加工や研削加工などに用いられる他の加工工具、レーザ加工ヘッド、並びに放電加工用のヘッド、更には、タッチプローブといった測定ツールなどのツールを収容するようにしても良い。そして、これらのツールにも線条部材、即ち、配線などのケーブル類、流体や粉体を供給するための配管、並びにこれらが内挿された保護チューブなどが接続される。
【0123】
また、上例では、押え部材75にV字状溝75aを設けたが、軸状ワークWを十分に安定して挟持することができれば、このV字状溝75aを設けには及ばない。また、押え部材75を付勢するバネ体81,82,83はピストン79のクランプ力に応じて、適宜選択的に、或いは全てを省略しても良い。また、上例では、2台の振れ止め装置72からなる振れ止めユニット70をタレット16に装着するようにしたが、これに限られるものではなく、単体の振れ止め装置72をタレット16に装着するようにしても良い。
【0124】
また、上例では、ミーリング工具Tを用いた切削によって軸状ワークWにねじ溝を形成するようにしたが、これに限られるものではなく、所謂旋削によってねじ溝を形成するようにしても良い。
【0125】
繰り返しになるが、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、何ら制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0126】
1 複合加工装置
2 複合加工機
3 制御装置
4 複合加工機制御部
7 工具主軸
8 第1主軸台
9 第1主軸
10 第2主軸台
11 第2主軸
15 刃物台
16 タレット
20 第1チャック
22 把持爪
23 把持面
25 第2チャック
27 把持爪
28 把持面
30 ロータリドレッサ
31 渦流センサ
32 第1ポイントドレッサ
33 第2ポイントドレッサ
40 研削ユニット
41 ハウジング
45 回転軸
49 ロータ
50 ステータ
55 研削砥石
60 収納装置
61 収容体
62 開閉機構
63 蓋体
65 プーリ
66 スライド・付勢部
67 進退機構
67a ツール保持部
70 振れ止めユニット
72 振れ止め装置
73 基台
74 受部材
74a V字状溝
75 押え部材
75a V字状溝
76 ガイドピン
77 クランプ機構
90 定寸装置
91 測定ヘッド
92 測定子
93 移送装置
94 直線移送機構
103 旋回機構
104 回転軸
105 旋回アーム
106 アクチュエータ
110 ねじ軸測定装置
111 第1撮像カメラ
112 第2撮像カメラ
113 第1照明装置
114 第2照明装置
115 画像入力部
116 測定動作制御部
117 寸法算出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30