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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
F15B11/00 B
F15B11/00 E
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019163615
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2020041701
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】18193574.3
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509066031
【氏名又は名称】アルテミス インテリジェント パワー リミティド
【氏名又は名称原語表記】ARTEMIS INTELLIGENT POWER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナイル・ジェイムズ・カルドウェル
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-050871(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122024(WO,A1)
【文献】特開平05-079502(JP,A)
【文献】特開昭62-251502(JP,A)
【文献】特開2008-255699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動力および複数の油圧アクチュエータと、前記原動力と駆動中係合する回転軸を有し、前記回転軸の回転によって周期的に変化する体積を有する複数の作業チャンバを備える油圧機械と、前記油圧機械の1または複数の作業チャンバのグループと前記油圧アクチュエータの1または複数との間に伸長する油圧回路とを備える装置であって、
前記油圧機械の各作業チャンバは、前記作業チャンバと低圧マニホールドとの間で作動油の流れを調整する低圧弁と、前記作業チャンバと高圧マニホールドとの間で作動油の流れを調整する高圧弁とを備え、前記油圧機械は、デマンド信号に応答して、作業チャンバ体積の各サイクルにおける各作業チャンバによる作動油の正味変位を選択することによって前記1または複数の作業チャンバのグループによる前記作動油の正味変位を選択するために前記1または複数の作業チャンバのグループの少なくとも前記低圧弁を能動的に制御するように構成され、前記装置は、原動力制御信号に応答して原動力速度を調整するように動作可能な原動力速度ガバナを備え、トルクデマンドに関連する信号のフィードフォワードによって前記原動力制御信号を調整するように構成され
前記装置は、前記原動力ガバナに前記原動力の印加トルクを増加させるために前記原動力制御信号を調整し、その後、遅延期間の後、前記1または複数の作業チャンバによって加わるトルクにおける増加が前記原動力のトルクにおける前記増加と同時に適用されるように、前記作動油の変位および前記1または複数の作業チャンバのグループによって加わる前記トルクを増加させるために前記デマンド信号を調整するように構成される、装置。
【請求項2】
前記装置は、前記トルクデマンドにおける増加に応答して前記原動力ガバナに前記原動力の印加トルクを増加させるために前記原動力制御信号を調整するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記トルクデマンドに関連する信号は、前記油圧回路または1または複数の油圧アクチュエータの測定された特性、または操作入力である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記油圧回路または1または複数の油圧アクチュエータの測定された特性に応答してデマンド信号を計算するように構成されたコントローラを備える、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記デマンド信号は、回転軸の回転ごとに変位される前記1または複数の作業チャンバのグループによる作動油の最大変位の分数を示す、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記測定された特性は、前記1または複数の油圧アクチュエータのグループの圧力および/または流量デマンドに基づく要求圧力または流量である、請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
装置を動作させる方法であって、前記装置は、原動力および複数の油圧アクチュエータと、前記原動力と駆動中係合する回転軸を有し、前記回転軸の回転によって周期的に変化する体積を有する複数の作業チャンバを備える油圧機械と、前記油圧機械の1または複数の作業チャンバのグループと前記油圧アクチュエータの1または複数との間に伸長する油圧回路とを備え、
前記油圧機械の各作業チャンバは、前記作業チャンバと低圧マニホールドとの間で作動油の流れを調整する低圧弁と、前記作業チャンバと高圧マニホールドとの間で作動油の流れを調整する高圧弁とを備え、前記油圧機械は、デマンド信号に応答して、作業チャンバ体積の各サイクルにおける各作業チャンバによる作動油の正味変位を選択することによって前記1または複数の作業チャンバのグループによる前記作動油の正味変位を選択するために前記1または複数の作業チャンバのグループの少なくとも前記低圧弁を能動的に制御するように構成され、前記方法は、原動力制御信号に応答して原動力速度を調整することによって特徴付けられ、前記原動力制御信号は、トルクデマンドに関連する信号のフィードフォワードによって調整され
前記原動力制御信号は、前記原動力ガバナに前記原動力の印加トルクを増加させ、その後、遅延期間の後、前記1または複数の作業チャンバによって加わるトルクにおける増加が前記原動力のトルクにおける前記増加と同時に適用されるように、前記作動油の変位および前記1または複数の作業チャンバのグループによって加わる前記トルクを増加させるために前記デマンド信号を調整するために調整される、方法。
【請求項8】
前記原動力制御信号は、前記トルクデマンドにおける増加に応答して前記原動力ガバナに前記原動力の印加トルクを増加させるために調整される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記トルクデマンドに関連する信号は、前記油圧回路または1または複数の油圧アクチュエータの測定された特性、または操作入力である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記デマンド信号は、前記油圧回路または1または複数の油圧アクチュエータの測定された特性に応答して計算される、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記デマンド信号は、回転軸の回転ごとに変位される前記1または複数の作業チャンバのグループによる作動油の最大変位の分数を示す、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定された特性は、前記1または複数の油圧アクチュエータのグループの圧力および/または流量デマンドに基づく要求圧力または流量である、請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記装置は車両であり、前記油圧機械は、1または複数の電子整流式機械を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は車両であり、前記油圧機械は、1または複数の電子整流式機械を備える、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動力によって駆動される電子整流式油圧機械によって駆動される油圧アクチュエータを有する、産業機械およびたとえば掘削機などの車両に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の油圧作動アクチュエータを有する産業車両は、世界中で一般的に用いられている。たとえば掘削機などの産業車両は一般に、移動のための少なくとも2つのトラック、トラックを備える基部に対して車両の運転台を回転させるための回転アクチュエータ(たとえばモータ)、ブームに関する少なくとも1つのラムおよびスティック(アーム)に関する少なくとも1つのラムを含む、アーム(たとえば掘削機アーム)の動きを制御するためのラム、および、たとえばバケツなどのツールの動きを制御するための少なくとも2つのアクチュエータを有する。
【0003】
これらのアクチュエータの各々は、車両の原動力(たとえば、電気モータなどのエンジン、またはより一般的にはディーゼルエンジン)への何らかの油圧負荷を表し、原動力によって駆動される油圧機械の1または複数の作業チャンバ(たとえば、使用中ピストンが往復運動するシリンダによって画定されたチャンバ)によって供給される必要がある。
【0004】
本発明は、複数の油圧作動アクチュエータを制御するための改善された油圧制御システムを提供しようとするものである。本発明のいくつかの態様は、エネルギ効率の利点を有する油圧制御システムを提供しようとするものである。有利には、改善された油圧制御システムを実現することは、原動力によって提供されるエネルギが作業機能を実行するためにより効率的に用いられ、それによって燃料の節減を提供することを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、原動力(たとえばエンジン)および複数の油圧アクチュエータと、原動力と駆動中係合する回転軸を有し、回転軸の回転によって周期的に変化する体積を有する複数の作業チャンバ(たとえば各チャンバは、使用中ピストンが往復運動するシリンダによって画定される)を備える油圧機械と、
油圧機械の1または複数(任意選択的2つ以上)の作業チャンバのグループと油圧アクチュエータの1または複数(任意選択的に2つ以上)との間に伸長する油圧回路とを備える装置が提供され、
油圧機械の各作業チャンバは、作業チャンバと低圧マニホールドとの間で作動油の流れを調整する低圧弁と、作業チャンバと高圧マニホールドとの間で作動油の流れを調整する高圧弁とを備え、
油圧機械は、デマンド信号に応答して、作業チャンバ体積の各サイクルにおける各作業チャンバによる作動油の正味変位を選択することによって1または複数の作業チャンバのグループによる作動油の正味変位を選択するために1または複数の作業チャンバのグループの少なくとも低圧弁を能動的に制御するように構成される。
【0006】
油圧機械は、1または複数の電子整流式機械(ECM)であってよい。ECMとは、回転軸と、回転軸の回転によって周期的に変化する体積を有する1または複数の作業チャンバ(たとえば、使用中ピストンが往復運動するシリンダによって画定されたチャンバ)とを備える作動油作業機械を指し、各作業チャンバは、作業チャンバと低圧マニホールドとの間で作動油の流れを調整する低圧弁と、作業チャンバと高圧マニホールドとの間で作動油の流れを制御する高圧弁とを有する。ピストンの往復運動は、回転軸上の偏心器との、または第2の回転軸との直接相互作用によって生じてよく、第2の回転軸は、回転軸に回転可能に連結される。原動力によって駆動される連結された回転軸(たとえば共通軸)を有する複数のECMは、油圧機械として一体的に機能してよい。
【0007】
装置は、車両、一般に産業車両であってよい。たとえば装置は、掘削機、テレハンドラ、またはバックホーローダであってよい。
【0008】
エンジンおよびポンプは、デマンドの変化に応答するために有限時間を要する。ポンプ(たとえばECM)は一般に、エンジンが可能であるよりも迅速に応答する。
【0009】
本発明によると、装置は、原動力制御信号に応答して原動力速度を調整するように動作可能な原動力速度ガバナを備え、装置は、トルクデマンドに関連する信号のフィードフォワードによって原動力制御信号を調整するように構成される。
【0010】
本発明は、原動力制御信号に応答して原動力速度を調整することを備える、装置を動作させる方法に及び、原動力制御信号は、トルクデマンドに関連する信号のフィードフォワードによって調整される。
【0011】
トルクデマンドは一般に、油圧機械のトルクデマンドであるが、たとえば油圧機械によって駆動される部品など、他の部品のトルクデマンドであってもよい。
【0012】
方法は、オペレータの(一般に目標速度を設定する)入力に応答して原動力を目標速度に調整することを備えてよい。一般に、原動力速度ガバナは、オペレータの(一般に目標速度を設定する)入力に応答して原動力を目標速度に調整する。トルクデマンドに関連する信号は、油圧機械または1または複数のアクチュエータの測定された特性、または操作入力であってよい。原動力トルクデマンドに関連する信号は、所与の圧力または流量に関連してよい。原動力トルクデマンドに関連する信号は、フィルタされた信号であってよい。原動力速度ガバナは、(たとえば、格納されたプログラムコードを実行する1または複数のプロセッサを備える)原動力コントローラであってよい。
【0013】
一般に、原動力制御信号は、原動力ガバナに、トルクデマンドにおける増加に応答して原動力の印加トルクを増加させるように調整される。
【0014】
一般に、方法は、原動力ガバナに原動力の印加トルクを増加させるために原動力制御信号を調整し、その後、遅延期間の後(任意選択的に、測定された速度および/または圧力および/またはFdなどに依存して)、作動流体の変位および1または複数の作業チャンバのグループによって加わるトルクを増加させるようにデマンド信号を調整することを備え、装置はそのように構成される。これは一般に、1または複数の作業チャンバによって加わるトルクにおける増加が、原動力のトルクにおける増加と同時(たとえば同じ時間に)に適用されるようする。
【0015】
方法は、油圧機械デマンドを計算することと、デマンドを満たすために原動力にトルクを増加させることと、原動力がデマンドを満たすことができる時点まで油圧機械トルクデマンドを遅延させることと、その後、ポンプ負荷および原動力トルクの両方が同時に適用され、軸に正味トルクがもたらされないことにより、原動力速度を維持することとを備えてよい。装置は、油圧機械デマンドを計算し、デマンドを満たすために原動力にトルクを増加させるように構成され、原動力がデマンドを満たすことができる時点まで油圧機械トルクデマンドを遅延させながら、その後、ポンプ負荷および原動力トルクの両方が同時に適用されることにより軸に正味トルクがもたらされず、それによって原動力速度を維持する。
【0016】
原動力がエンジンである場合、これは、エンジンドループを回避することによってエンジン安定性を高めるという利点を有する。
【0017】
場合によっては、装置は、油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に応答してデマンド信号を計算するように構成される。一般に装置は、油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に応答してデマンド信号を計算するように構成されたコントローラを備える。
【0018】
また本発明は、油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に応答してデマンド信号を計算することを備える、上記装置を動作させる方法にも及ぶ。
【0019】
一般に方法は、油圧アクチュエータのグループの少なくとも1つの流量および/または圧力要件を検出することと、または1または複数の油圧アクチュエータのグループの圧力および/または流量デマンドに基づいて要求圧力または流量を示すデマンド信号を受信することと、それに応じて、1または複数の油圧アクチュエータのグループに流体接続された1または複数の作業チャンバのグループの各々からの、またはそれらへの作動油の流量を制御することとを備える。
【0020】
装置(一般に掘削機)は、上記1または複数の作業チャンバのグループから上記油圧アクチュエータのグループへ、およびスロットルを介して流体コンテナ(たとえばタンクまたは導管)へ伸長する流体マニホールドと、スロットルと1または複数の上記油圧アクチュエータのグループとの間でマニホールド内の作動油の圧力を測定するように構成された圧力モニタとを備えてよい。コントローラは、測定された圧力に応答して、1または複数の上記油圧アクチュエータのグループと(たとえば流体マニホールドを介して)連通している1または複数の上記作業チャンバのグループの変位を調整し、それによって圧力モニタにおける作動油の圧力を(たとえばフィードバック制御によって)調整するように構成され得る。方法は、測定された圧力に応答して、1または複数の作業チャンバのグループの変位を調整し、それによって圧力モニタにおける作動油の圧力を調整することを備えてよい。したがって装置は一般に、負の流量制御ループを有する。任意選択的に、装置は、(たとえば、油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性のフィードバックに応答してデマンド信号を計算するように構成されたフィードバックコントローラに加えて、またはその代わりに)油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性のフィードフォワードに応答してデマンド信号を計算するように構成されたフィードフォワードコントローラを備えてよい。
【0021】
装置は、1または複数のオープンセンタ制御弁のオープンセンタと(油圧で)直列に接続されたスロットルを備えてよく、上記オープンセンタ制御弁は、1または複数の作業チャンバのグループと1または複数のアクチュエータとの中間にある油圧回路内に位置する。一般に、オープンセンタ制御弁は、作動時、スロットルから1または複数のアクチュエータへ流体の流れを分流する。すなわち、デマンド信号は、スロットルにおける作動油の圧力の測定値に応答して決定される。
【0022】
たとえばデマンド信号は、圧力測定値および/または流量測定値に応答して決定され得る。デマンド信号は、圧力測定値を備えてよく、圧力測定値は、スロットルにおいて測定される。デマンド信号は、1または複数の作業チャンバのグループによって回転軸の回転ごとに変位される作動油の最大変位の分数を示してよい。これは、本明細書においてF(回転ごとの最大変位の分数)と称される。
【0023】
一般に、(フィードバックコントローラであってよい)コントローラはフィルタを備える。コントローラは、油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に基づいて制御信号をフィルタすることによって油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に応答してデマンド信号を計算してよい。方法は、油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に基づいて制御信号をフィルタすることによって油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に応答してデマンド信号を計算することを備えてよい。たとえば、フィルタされた制御信号は、圧力信号、流量信号、アクチュエータ位置信号などであってよい。
【0024】
フィルタは、測定された特性における周波数を除去し、および/または測定された特性における雑音(たとえば脈動雑音)を減衰し、それによってフィルタされた入力を生成し、その後、上記フィルタされた入力に依存してデマンド信号を決定するように選択され得る。
【0025】
方法は、原動力の動作パラメータを測定および/または変調し、それによって原動力速度を制御することを備えてよい。一般に原動力(一般にエンジン)は、原動力制御ユニット(PMCU)を備え、PMCUは一般に、原動力速度ガバナを備える。原動力速度ガバナは、原動力の動作パラメータを測定および/または変調し、それによって原動力速度を制御するように動作可能であってよい。原動力速度ガバナは、ユーザからの(任意選択的にジョイスティックを介した)および/または所定の(たとえば、原動力速度が所定の上限閾値を超えることを防ぐため、任意選択的に、原動力が所定の下限閾値を下回ることを防ぐための)命令のセットからの1または複数の入力を受信するように動作可能であってよい(方法は、これを受信することを備えてよい)。
【0026】
方法は、1または複数のセンサから受信した電気信号に応答して、装置の1または複数の動作パラメータ(たとえば、原動力または油圧機械の1または複数のパラメータ)を変えることを備えてよい。PMCUは、1または複数のセンサからの電気信号を受信し、任意選択的にその後、信号を評価し、任意選択的に車両の1または複数の動作パラメータ(任意選択的に原動力(たとえばエンジン)の1または複数のパラメータおよび/または油圧機械の1または複数のパラメータ)を変えるように構成され得る。たとえばPMCUは、(たとえば軸センサを用いて測定されたような)回転軸のクランク軸位置および/または回転速度、1または複数の温度(たとえば1または複数の温度計または他の温度センサを用いて測定されたような燃料温度、エンジン温度、排気温度)、空気流量、吸気圧、燃料空気圧、アクセルペダル位置などを示す電気信号を受信するように構成され得る(方法は受信することを備えてよい)。
【0027】
原動力は一般に、駆動中、油圧機械と係合する。原動力は、一般に(原動力がトルクを印加し得る)ECMの回転軸に結合された回転軸を有する。原動力(たとえばエンジン)および油圧機械は、共通軸を有してよい。
【0028】
装置が掘削機である場合、複数の油圧アクチュエータは一般に、(たとえば一般に掘削機である車両の移動のために)トラックを動かすための(少なくとも)2つのアクチュエータ、(たとえば、掘削機の一般にトラックを備える基部に対して掘削機の運転台を回転させるための)回転アクチュエータ(たとえばモータ)、(たとえばブームおよび/またはスティックに関する掘削機アームを制御するための)少なくとも1つのラムアクチュエータ、および(たとえばバケツなどのツールの動きを制御するための)少なくとも2つの追加のアクチュエータを備える。
【0029】
1または複数の低圧マニホールドは、油圧機械の作業チャンバへ伸長してよい。1または複数の高圧マニホールドは、油圧機械の作業チャンバへ伸長してよい。油圧回路は一般に、上記1または複数の作業チャンバのグループと上記1または複数のアクチュエータとの間に伸長する上記高圧マニホールドを備える。低圧マニホールドは、1または複数の上記油圧回路の一部であってよい。低圧マニホールドおよび高圧マニホールドとは、マニホールド内の相対圧力を指す。
【0030】
場合によっては、少なくとも低圧弁(任意選択的に高圧弁、任意選択的に低圧弁および高圧弁の両方)が電子制御弁であり、装置は、作業チャンバ体積のサイクルと同位相関係にある(たとえば電子制御)弁を制御し、それによって作業チャンバ体積の各サイクルにおける各作業チャンバによる作動油の正味変位を決定するコントローラを備える。方法は、作業チャンバ体積のサイクルと同位相関係にある(たとえば電子制御)弁を制御し、それによって作業チャンバ体積の各サイクルにおける各作業チャンバによる作動油の正味変位を決定することを備えてよい。
【0031】
1または複数の油圧アクチュエータのグループの流量および/または圧力要件は、たとえば、1または複数の油圧アクチュエータのグループへの、またはそこからの作動油の流量または1または複数の油圧アクチュエータの出力または入口における作動油の圧力を測定することによって決定され得る。流量および/または圧力要件は、1または複数の測定された流量および/または測定された圧力が減少している、または予想値を下回っていることによって決定され得る。流量および/または測定圧力における予想力の減少は、1または複数の油圧アクチュエータのグループへの、またはそこからの十分な流れが起こっていないことを示す。たとえば、アクチュエータへの作動油の流量が予想(たとえば目標)値を下回ることが決定されてよく、それに応じてアクチュエータへの作動油の流量が増加され得る。アクチュエータからの作動油の流量が(たとえばアームまたは他の重量が下降したことにより)予想(たとえば目標)値を上回っていることが決定されてもよく、それに応じて、アクチュエータからの流量が低減され得る。すなわち、1または複数の油圧アクチュエータにおいて圧力の増減が検出され、1または複数の油圧アクチュエータに連結された1または複数の作動チャンバのグループは、1または複数の作業チャンバのグループから1または複数の油圧アクチュエータへの、またはその逆の作動油の流量を変更(たとえば増加または減少)するように制御される。
【0032】
1または複数の作業チャンバのグループは、たとえばコントローラの制御下で、たとえば電子制御弁(たとえば後述の高圧弁および低圧弁)を開閉することによって、どの1または複数の作業チャンバが油圧アクチュエータ(たとえば油圧アクチュエータのグループ)に連結されるかを変更するために、1または複数の油圧アクチュエータのそれぞれのグループに動的に割り当てられ得る。(たとえば1または複数の)作業チャンバのグループは、たとえばコントローラの制御下で、たとえば(たとえば電子制御)弁を開閉することによって、機械のどの作業チャンバがどの油圧アクチュエータに結合されるかを変更するために、(たとえば1または複数の)アクチュエータの(それぞれの)グループに動的に割り当てられる。各作業チャンバ(および/または各油圧アクチュエータ)を通る作動油の正味変位は、油圧アクチュエータまたは複数の油圧アクチュエータに連結された作動チャンバまたは複数の作動チャンバの正味変位を調整することによって調整され得る。1または複数の作業チャンバのグループは一般に、上記マニホールドを介して1または複数の上記油圧アクチュエータのそれぞれのグループに連結される。一般に連結は、たとえば常開弁および/または(様々な実施形態においてオープンセンタスプール弁またはクローズドセンタスプール弁であってよい)スプール弁などの1または複数の弁を通って伸長する。
【0033】
装置は一般にコントローラを備える。コントローラは、メモリと電子通信状態にある1または複数のプロセッサ、およびメモリに格納されたプログラムコードを備える。コントローラは分散され、2つ以上のコントローラモジュール(たとえば2つ以上のプロセッサ)を備えてよく、たとえばコントローラは、油圧機械を制御する(メモリと電子通信状態にある1または複数のプロセッサおよびメモリに格納されたプログラムコードを備える)油圧機械コントローラ、および装置の他の部品(たとえば作動油の流路を変更するための弁)を制御する(メモリと電子通信状態にある1または複数のプロセッサおよびメモリに格納されたプログラムコードを備える)装置コントローラを備えてよい。
【0034】
一般に流体マニホールドは、複数の常開弁を通って伸長する。たとえば複数の常開弁は、少なくとも1つの入口および複数の出口を有する1または複数のオープンセンタ制御弁を備えてよく、流体は、弁を閉鎖する力が加えられない限り、少なくとも1つの入口および複数の出口の少なくとも1つを(たとえば直接)通って流動してよい。オープンセンタ制御弁は、常開弁、たとえばオープンセンタスプール弁などの常開スプール弁を備えて(たとえば、であって)よい。
【0035】
オープンセンタスプール弁は、開放可能な1または複数のポート(たとえば常開ポートおよび1または複数のアクチュエータポート)を備える。一般に、1または複数の上記作業チャンバのグループと1または複数の上記油圧アクチュエータのグループとの間の流体接続は、これもまた一般にたとえばオープンセンタスプール弁などの常開スプール弁である追加の常開弁を通って伸長する。手動操作可能な制御装置(たとえばジョイスティック)は一般に、1または両方の上記常開弁に結合され、そこを通る流量を調整する。任意選択的に、1または複数の油圧アクチュエータは反対に作用してよく、たとえば流体は、複動ピストンまたはラムの両端に方向付けされ得る。
【0036】
一般に、オープンセンタスプール弁は1または複数の流通出口を備え、使用中、流体はこれを通って方向付けされる。一般にオープンセンタ制御弁は、1または複数のシリンダによって変位された流体を、中央流通出口を通ってタンクへ(たとえば直接)流動させるように構成されたデフォルト弁位置を備える。一般にオープンセンタ制御弁は、1または複数のシリンダによって変位された流体を、流通出口を通って1または複数のアクチュエータへ(たとえば直接)流動させるように構成された、1または複数の流体分流位置を備える。使用中、ユーザによって(任意選択的にコントローラによって)提供された入力により、オープンセンタスプール弁の位置は調整され、それによって流れはタンクおよび/または1または複数のアクチュエータへ分流される。
【0037】
場合によっては、各作業チャンバによって受容または出力される作動油の圧力または流量は、独立して制御可能である。すなわち、各作業チャンバによって受容または生成される作動油の圧力または流量は、作業チャンバ体積の各サイクルにおいて各作業チャンバによる作動油の正味変位を選択することによって独立して制御され得る。この選択は一般に、コントローラによって実行される。
【0038】
流量デマンドはたとえば、全ての油圧アクチュエータの合計流量デマンドが増加するとオリフィスを通る流量が減少するように構成された流量制限(たとえばオリフィス)にわたる圧力降下を(たとえば圧力センサを用いて)検出することによって、あるいは、たとえば流量計などの流れ感知手段を用いた同じ流れの直接流量測定によって決定され得る。
【0039】
流量および/または圧力デマンドは、油圧アクチュエータの入力における作動油の圧力を測定することによって感知され得る。油圧アクチュエータが油圧機械である場合、流量デマンドは、たとえば回転軸の回転速度またはラムの移動速度または関節の角速度を測定することによって感知され得る。測定された流れ圧力の合計が合計され、あるいは測定された流れ圧力の最大値が求められ得る。
【0040】
油圧アクチュエータの圧力および/または流量デマンドに基づく要求圧力または流量を示すデマンド信号は、作動油の流量、または作動油の圧力、または機械の軸または機械によって駆動される油圧アクチュエータの軸におけるトルク、または機械の動力出力を表す信号、あるいは1または複数の油圧アクチュエータの圧力または流量要件に関連するデマンドを示す他の任意の信号であってよい。
【0041】
一般に油圧機械は、ポンプ動作モードにおいてポンプとして動作可能であり、モータ動作モードにおいてモータとして動作可能である。すなわち、油圧機械の作業チャンバのいくつかはポンプであってよく(よっていくつかの作業チャンバは作動油を出力してよく)、油圧機械の他の作業チャンバはモータであってよい(よっていくつかの作業チャンバは作動油を入力してよい)。
【0042】
コントローラは、(たとえば電子整流式)油圧機械を制御してよい。コントローラは、原動力から使用可能な動力を計算し、正味動力デマンドが原動力からの使用可能量を超えないように、原動力によって駆動される油圧機械による作動油の正味変位を制限するように構成され得る。
【0043】
コントローラは一般に、1または複数のプロセッサと、動作中コントローラによって実行されるプログラムコードを格納するメモリとを備える。コントローラは、動力制限値、またはそれに関連する値(たとえば最大圧力、トルク、流量など)を計算してよい。コントローラは、1または複数の油圧アクチュエータのグループを通る作動油の最大流量または1または複数の油圧アクチュエータのグループにおける最大圧力を実現するように構成され得る。
【0044】
非常に短い応答時間を有する電子整流式油圧機械を提供することが知られている。短い応答時間は特定の状況において役立つが、欠点も有し得る。たとえば、いくつかの状況において応答時間が過度に短い場合、制御性に悪影響を及ぼすことがある。
【0045】
したがって、本発明の更なる態様は、装置を動作させる方法を提供し、装置は、1または複数の作業チャンバを有する(たとえば電子整流式)油圧機械と、油圧機械に結合された原動力(たとえばエンジン、任意選択的にディーゼルエンジン)とを備え、方法は、2つ以上の動作モード間で選択することを備え、少なくとも1つの第1のモードは、第1のステップ応答時間を有し、および/または第1の時定数を備え、少なくとも1つの第2のモードは、第2のステップ応答時間を備え、および/または第1の時定数とは異なる第2の時定数を有する。第2のモードは更に、修正された負の流量制御システムを備え、修正された負の流量制御システムは、第1のモードのアナログポンプおよび/または応答時間に匹敵する。各々が様々なステップ応答時間および/または様々な時定数に関連する追加のモード(たとえば第3のモード、第4のモード、第5のモードなど)が存在してよい。
【0046】
一般に、コントローラは少なくとも2つの動作モードを有し、各動作モードは、様々なステップ応答時間および/または様々な時定数を有する(たとえばローパス)フィルタによって特徴付けられる。
【0047】
したがって、油圧機械が、測定された特性における変化により緩慢に応答する、少なくとも1つの動作モードが存在する。すなわち、2倍以上、4倍以上、または10倍以上異なる段階的変化応答時間および/または時定数を有する少なくとも2つのモードが存在する。
【0048】
少なくとも2つの動作モードは、他の任意のモードの時定数よりも短いステップ応答時間および/または時定数によって特徴付けられる少なくとも1つのオーバーライドモードを備えてよく、コントローラは、原動力の動作条件が1または複数のオーバーライド基準を満たす決定に応答して、オーバーライドモードを実行するように動作可能である。動作条件は、測定されたトルクおよび/または測定された速度および/または測定された動力(の少なくとも1つ)を備えてよい。動作条件は、測定されたトルクおよび/または測定された速度および/または測定された動力の組み合わせを備えてよい。オーバーライド基準は、たとえば、測定されたトルクおよび/または測定された速度および/または測定された動力が閾値を超える、または閾値を下回ることであってよい。
【0049】
少なくとも2つの動作モードは、第2のモードを備えてよく、第2のモードは、200msより長い、または好適には250msより長い、または好適には300msより長い反応時間を有する「緩慢モード」を備えて(であって)よい。原動力がエンジンである場合、方法は、エンジンドループが検出された場合に「緩慢モード」のアクティブ化、および任意選択的にその後、たとえばエンジン速度が回復した時に「高速モード」のアクティブ化を備えてよい。これは、エンジンがストールすることを防ぐという利点を有する。
【0050】
エンジンドループとは、エンジン負荷の増加による、エンジン設定値からのエンジン速度の持続的な低下を指す。
【0051】
フィードバックループが高利得および比例制御を有し、油圧回路が低コンプライアンスを有する場合、これは非常に不安定になりやすい。そのようなシステムは、信号測定によって生じるか、および/またはハードウェア応答のフィルタリングによって生じるかに関わらず、遅延、場合によってはたとえば2または3msの遅延にも非常に敏感であり得る。したがっていくつかの実施形態において、フィルタは、100~300msの時定数を有するローパスフィルタまたは100~300msのステップ変化応答を有するフィルタであってよい。
【0052】
複数の(たとえば電子整流式)油圧機械間で出力を共有することによってトルクデマンドを満たすことが知られている。たとえば、2つの(たとえば電子整流式)油圧機械を有する産業機械は、各油圧機械がデマンドを満たすために必要な出力(たとえばトルク)の(最大で)半分を提供するように制限され得る。また、ストーリングを防ぐために、2つ以上の油圧機械からの結合(たとえば合計)トルクがトルク最大値を超えることを防ぐために一般に安全率が導入される。原動力がエンジンである場合、この安全率は、エンジンドループおよびエンジン速度の瞬間的低下を緩和するためにも役立つ。これは、機械の全動力出力を使用することができないために非効率的である。
【0053】
一般に方法は、原動力速度設定値(たとえばエンジン速度設定値)であるSset pointを選択することを備える。任意の時間に、原動力は、原動力速度設定値と同じであってよいが必ずしもそうではない速度で走行中であってよい。したがって方法は、現在の原動力速度であるScurrentを測定または決定することを備える。コントローラは、原動力設定値(たとえばエンジン速度設定値)であるSset pointを選択するように構成され得る。コントローラは、現在の原動力速度であるScurrentの測定値を受信し、またはこれを決定するように構成され得る。
【0054】
エンジンは、原動力速度設定値を下回る原動力速度(たとえば原動力速度設定値の90%以上、好適には原動力速度設定値の95%以上)で走行させられてよい。
【0055】
一般に方法は、原動力速度誤差(たとえばエンジン速度誤差)(ΔS)を計算することを備える。コントローラは、原動力速度誤差(たとえばエンジン速度誤差)(ΔS)を計算するように構成され得る。原動力速度誤差は、以下の式に従って計算され得る。
【0056】
setpoint-Scurrent=ΔS (式1)
したがって、本発明の更なる態様において、方法は、油圧機械トルク制限を実現するためにデマンド信号を選択的に調整することを備えてよい。コントローラは、油圧機械トルク制限を実現するためにデマンド信号を選択的に調整するように構成され得る。油圧機械トルク制限は可変であってよい。
【0057】
一般に、原動力が生成し得るトルクもまた原動力速度の関数であるため、油圧機械トルク制限は原動力速度とともに変化する。
【0058】
油圧機械トルク制限は、原動力速度誤差(たとえばエンジン速度誤差)に依存して計算されてよく、任意選択的に、原動力速度誤差は、原動力速度(たとえばエンジン速度)の測定値と原動力速度設定値(たとえばエンジン速度設定値)とを比較することによって決定される。
【0059】
一般に、原動力は、原動力をオペレータ入力に応答して決定された目標速度に調整する原動力ガバナ(たとえばエンジンガバナ)を備える。目標速度は、データベース内で定義されたトルク制限に応答して決定され得る。
【0060】
方法は、入力油圧機械変位信号を受信することと、トルク制限関数および原動力速度誤差(たとえばエンジン速度誤差)を考慮に入れて、トルク制限を超えることを回避するために選択的に制限された出力油圧機械変位信号を出力することとを備えてよい。コントローラは、油圧機械変位信号を処理し、トルク制限関数および原動力速度誤差(たとえばエンジン速度誤差)を考慮に入れて、トルク制限を超えることを回避するために選択的に制限された油圧機械変位信号を計算(たとえば出力)するように構成され得る。
【0061】
油圧機械変位信号は、油圧機械の回転軸の回転ごとの最大変位の分数(F)を表してよい(たとえば、それに比例する数値を備えてよい)。
【0062】
複数の圧力解放弁を備える産業車両(たとえば掘削機)を提供することが知られている。圧力解放弁は、産業車両の運動機能中の過剰圧力による損傷を防ぐ。また、複数の圧力解放弁を提供することも知られており、様々な圧力解放弁が様々な機能を有する。たとえばそれぞれの圧力解放弁は、アーム、トラックモータ、揺動モータなどの各々の運動に関連してよい。
【0063】
圧力制限(「PRV圧」、すなわち圧力解放弁圧)に到達すると、PRVは開放し、過剰な作動油を排出させることによって圧力の更なる上昇を防ぐ。それによって、圧力がシステム内の非安全レベルに到達することが防がれる。しかしこれは、流体エネルギが弁を介して熱に変わり、その後失われるため、システムにおける非効率性をもたらす。
【0064】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、機械の使用中にPRV圧に到達することを回避するための、あるいははいくつかの実施形態において1または複数の(または全ての)PRVを省くための方法を提供しようとするものである。コントローラは、測定された圧力を受信し、測定された圧力を(所定の)圧力制限と比較し、測定された圧力が圧力制限の(たとえば70%~100%の範囲内であってよい)限界範囲内にある場合、変位を制限するように構成され得る。方法は、測定された圧力を受信することと、測定された圧力を(所定の)圧力制限と比較することと、測定された圧力が圧力制限の(たとえば70%~100%の範囲内であってよい)限界範囲内にある場合、変位を制限することとを備えてよい。圧力制限は、たとえば圧力解放弁などのシステム圧力制限器の圧力制限であってよい。方法は、現在の圧力を検出することと、その圧力をPRV圧と比較することと、現在の圧力がPRV圧の限界範囲内である場合、変位を制限することとを備えてよい。
【0065】
任意選択的に、コントローラは、測定された圧力を受信し、測定された圧力を圧力制限と比較するように構成され得る。任意選択的に、コントローラは、測定された圧力を受信し、測定された圧力を圧力制限と比較し、測定された圧力が圧力制限に到達する、または圧力制限と実質的に等しい場合、変位を制限するように構成され得る。
【0066】
任意選択的に、圧力制限(および/または閾値圧力)は、圧力解放弁が加圧流体を解放するために作動される圧力であってよい。圧力制限(および/または閾値圧力)は、所定の許容可能圧力であってよい。
【0067】
任意選択的に、圧力は、圧力解放弁と流体連通していない油圧回路内の位置において測定され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、車両(任意選択的に掘削機)は、任意の圧力解放弁を有さなくてよいが、一般に車両は、(たとえば安全規定によって規定された場合)複数の圧力解放弁を備える。
【0069】
一般に、様々なPRVが様々な機能に関連し、それに伴い、様々なPRV動作圧力を有する(たとえば、掘削機のアームを上昇させるためのPRV開放圧は、掘削機のアームを加工させるためのPRV開放圧と異なって(それより高く、または低くあって)よい)。
【0070】
コントローラは、デマンドおよび/またはユーザコマンドを受信し、測定された圧力が圧力制限の限界範囲内にあるかを決定する時にデマンドおよび/またはユーザコマンドを考慮に入れるように構成され得る。方法は、測定された圧力が圧力制限(すなわちそれぞれのPRV開放圧)の限界範囲内にある場合を計算する時に、デマンドおよび/またはユーザコマンド(たとえば1または複数のジョイスティックを介して入力されたコマンド)を考慮に入れることを備えてよい。たとえば圧力制限および/または限界は、デマンドおよび/またはユーザコマンドまたは他のパラメータ、たとえばアクチュエータ位置または移動速度によって変化し得る。
【0071】
多数の機能(たとえば掘削機機能)の作動を同時に可能にするように流れが供給される車両(たとえば掘削機)を提供することが知られている。いくつかの状況において、(たとえば、上記機能に関連するルックアップテーブルに格納された流量値が不正確である場合)1または複数の機能に過剰な流れが方向付けられ得る。これによって圧力がPRV制限に到達し、油圧機械の一部または油圧回路内の他の部品への損傷を防ぐために、過剰な流れはPRVを介して流出し得る。しかし、流れがPRVを介して流出すると、その流れに関連するエネルギは失われ、非効率性がもたらされる。過剰な流れによる機能への他の悪影響は、スプールにわたる(PRV圧には到達しない)圧力降下の増加であり得る。これは、スプールにわたる大幅な動力損失をもたらす。
【0072】
方法は、油圧機械、または少なくとも1または複数の作業チャンバのグループからの変位を決定するために用いられる制御信号を生成するためにユーザからの入力(たとえばジョイスティックを介して送達された入力)を測定することを備えてよい。コントローラは、ユーザ入力を受信し、油圧機械、または少なくとも1または複数の作業チャンバのグループからの変位を決定するために用いられる制御信号を生成してよい。これは開ループモードで動作するので、誤差を補正するためのフィードバックシステムは存在しない。そのような機械は一般に非常に正確である。
【0073】
制御信号は、スプール弁がどのように開放するかを決定するスプール弁制御信号(たとえばパイロット圧または比例活性化信号)であってよい。制御信号は、1または複数の作業チャンバのグループから1または複数のアクチュエータへの作動油流量を調整するために用いられ得る。
【0074】
場合によっては、装置は更に、使用中に作動油が1または複数の作業チャンバのグループから油圧アクチュエータの1または複数へ流れるために通る油圧回路内の少なくとも1つのスプール弁と、少なくとも1つのスプール弁の前後、たとえば油圧機械出口および1または複数のアクチュエータにおいて作動油の圧力を測定するように構成された圧力センサとを備える。
【0075】
コントローラは一般に、圧力センサからの圧力の測定値から少なくとも1つのスプール弁にわたる圧力降下を決定し、スプール弁の位置を示す(測定された)スプール弁位置信号、またはスプール弁制御信号のいずれかを受信し、決定された圧力降下が閾値圧力降下を超える場合、1または複数の作業チャンバの変位を制限するように構成され、閾値圧力降下は、それぞれスプール弁位置信号またはスプール弁制御信号に依存して決定される。方法は一般に、圧力センサからの圧力の測定値から少なくとも1つのスプール弁にわたる圧力降下を決定することと、スプール弁の位置を示す(測定された)スプール弁位置信号、またはスプール弁制御信号のいずれかを受信することと、決定された圧力降下が閾値圧力降下を超える場合、1または複数の作業チャンバの変位を制限することとを備え、閾値圧力降下は、それぞれスプール弁位置信号またはスプール弁制御信号に依存して決定される。
【0076】
閾値圧力降下は、予想圧力降下であり、または予想圧力降下に関連する(たとえばその所定限界範囲内である)。予想圧力降下は、スプール弁位置信号またはスプール弁制御信号に依存して計算され得る。閾値圧力降下は、ルックアップテーブルへの問合せによって決定され得る。閾値圧力降下は、許容可能な圧力降下であってよい。閾値圧力降下は、スプール弁位置信号またはスプール弁制御信号によって示された流量を所与としてもたらされる許容可能な圧力降下である。圧力降下は流量を示し、よって過剰な流量は、スプール弁位置信号またはスプール弁制御信号をそれぞれ所与として予想されるものを超過する流量を示す。過剰な流量が検出されると、1または複数の作業チャンバのグループの変位は制限される。閾値圧力降下は、スプール弁位置信号またはスプール弁制御信号のみならず1または複数の追加の要因に依存して決定され得る。
【0077】
圧力センサは、油圧機械の1または複数の作業チャンバのグループの出口における圧力センサと、油圧アクチュエータの1または複数への入力における圧力センサとを備えてよい。
【0078】
一般に、(たとえばスプール)弁は常閉型であり、ユーザコマンド(たとえばジョイスティックを介して入力されたユーザコマンド)に応答して開放可能であり、それによって流れを任意選択的に(たとえば)1または複数のアクチュエータへ方向付けるように構成される。スプール弁は一般に、1または複数の作業チャンバによって変位された流体が任意選択的にタンクへ流動し得る際に通る、デフォルト流路(たとえば導管)を提供するためにデフォルトで開放され得る(すなわち常開の)主要(たとえば中央)ポートと、デフォルトで閉鎖され、ユーザまたはコントローラのコマンドに応答して開放され得る(たとえば1または複数のアクチュエータに連結された)1または複数の追加のポートとを備える。スプール弁は一般に、デフォルトで閉鎖され(すなわち常閉であり)、ユーザコマンド(任意選択的にコントローラコマンド)に応答して開放され得る1または複数の追加のポートを備える。一般に、追加のポートが開いている時、主要(たとえば中央)ポートは閉じている。スプール弁に関連する制御信号を測定することによって、スプール弁のポートをどの程度開放するかを決定することが可能である(たとえば、制御信号はパイロット圧であってよい)。また、(たとえば弁体に対するスプール弁部材の位置を決定し得る)スプール弁位置センサを試験することも可能である。
【0079】
1または複数の作業チャンバのグループは、複数のポートを有するスプール弁の特定のポートを通って1または複数のアクチュエータに連結され得る。この場合、測定される圧力降下をもたらす流量を決定するものは、その特定のポートの開度である。
【0080】
一般に、スプール弁は、1または複数の作業チャンバのグループによって変位された流体が任意選択的にタンクへ流動し得る際に通るデフォルト流路を提供するためにデフォルトで開放され得る主要ポートと、デフォルトで閉鎖され、ユーザまたはコントローラのコマンドに応答して開放され得る1または複数の追加のポートとを備える。上記特定のポートは、上記主要ポートまたは上記追加のポートであってよい。
【0081】
コントローラは、ユーザ入力、スプール弁制御信号の測定値、および回転軸の回転速度の測定値を受信し、それによって、任意選択的にルックアップテーブルを参照して、必要な変位の開ループ推定値を決定(たとえば計算)し、また一般に、回転軸の回転速度の測定値および必要な変位の開ループ推定値に基づいて流量の推定値を決定(たとえば計算)するように構成され得る。したがって方法は、ユーザ入力に応答してスプール弁制御信号(たとえばパイロット圧)、および回転軸の回転速度の測定値を受信および処理し、それによって必要な変位の開ループ推定値を(たとえばルックアップテーブルを参照して)計算し、軸速度の測定値および必要な変位の開ループ推定値に基づいて推定流量を計算することを備えてよい。
【0082】
スプール弁制御信号の代わりに、スプール弁からのフィードバック信号、たとえばスプール位置が用いられてもよい。
【0083】
方法は、制御信号に基づいて(したがってスプール弁開度に基づいて)スプール弁全体の圧力降下を表す値を決定することと、実際の圧力降下を(たとえば、油圧機械およびアクチュエータにおける圧力センサからの圧力測定値を受信することによって)測定することと、実際の圧力降下と閾値圧力降下とを比較することと、実際の圧力降下が閾値圧力降下を超える場合、変位を低減することとを備えてよい。コントローラは、制御信号に基づいて(したがってスプール弁開度に基づいて)スプール弁全体の圧力降下を表す値を決定し、実際の圧力降下を(たとえば、油圧機械およびアクチュエータにおける圧力センサからの圧力測定値を受信することによって)測定し、実際の圧力降下と閾値圧力降下とを比較し、実際の圧力降下が閾値圧力降下を超える場合、変位を低減するように構成され得る。
【0084】
スプール弁にわたり分散された動力は、スプール弁を通る流量およびスプール弁にわたる圧力降下の関数である。スプール弁にわたる圧力降下は、スプール弁を通る流量の2乗に比例する。したがって、圧力降下が高い場合、これは、スプールを通って浪費される動力が多いことを示す。したがって、所与の測定されたスプール弁位置またはスプール弁制御信号に関する閾値圧力降下は、所与のスプール位置においてどの程度が許容可能な動力損失とみなされるかに依存して設定される。よって、圧力降下が閾値圧力降下を超えると、1または複数のアクチュエータへの流量が低減(たとえば制限)され、それによって動力の損失が制限される。これは、効率を高める効果を有する。使用中、オペレータは、一般にジョイスティックを介してスプール弁制御信号(たとえばパイロット信号)を調整し、それによって(たとえばスプール弁の)開度を増加させ、1または複数のアクチュエータにおける速度の増加をもたらしてよい。圧力降下は、より大きく開く(たとえばスプール)弁を通る所与の流れに関して、より小さくなる。
【0085】
一般に、コントローラは、実際の圧力降下が閾値圧力降下を超える場合、比例積分制御ループを用いて流量を低減させる。方法は、実際の圧力降下が閾値圧力降下を超える場合、比例積分制御ループを用いて流量を低減させることを備えてよい。そのような比例積分制御ループは、制御ループの積分部分が、実際の圧力降下が閾値圧力降下を超えると積分し、または実際の圧力降下が許容可能な圧力降下を下回る場合に積分値をゼロに戻すことしかできないように構成される。制御ループの比例部分は、実際の圧力降下が許容可能な圧力降下を超えない場合に適用される。一般に、制御ループの比例部分は、実際の圧力降下が閾値圧力降下を超えない場合、実質的に流量を変化させないように構成される。したがってコントローラは(すなわち比例積分制御ループを介して)一般に、流量(たとえば変位)を低減するためだけに作用し、すなわち比例積分制御ループは、流量を増加させるために作用することはない。方法は一般に、流量を低減することのみを含む。
【0086】
場合によっては、より少ない流量をもたらすためにコントローラが1または複数の作業チャンバのグループの変位を選択的に制限すると、変位は、(一般に手動で操作可能な制御装置の位置によって決定される)スプール弁制御信号によって示された変位より(たとえば所定の差だけ)下まで、および/または通常動作中に測定された圧力降下をもたらすことが予想される変位より(たとえば所定の差だけ)下まで低減される。したがってコントローラは、1または複数の作業チャンバのグループの変位を過制限し得る。方法は、(一般に手動で操作可能な制御装置の位置によって決定される)スプール弁制御信号によって示された変位より(たとえば所定の差だけ)下まで、および/または通常動作中に測定された圧力降下をもたらすことが予想される変位より(たとえば所定の差だけ)下まで、変位を低減することを備えてよい。したがって方法は、1または複数の作業チャンバのグループの変位を過制限することを備えてよい。
【0087】
これは、オペレータに、手動で操作可能な制御装置を、スプール弁がより大きく開放される、および/または1または複数の作業チャンバがより多くの流体を変位させる位置へ動かすよう促す効果を有する。これは、より効率的な動作を可能にするという利点を有し、比例スプール弁に関連する非効率性を防ぐ。
【0088】
変位が調整(たとえば増加、減少、または制限)される場合、これは一般に、デマンド信号を調整(たとえば増加、減少、または制限)することを備える(たとえば、それによって実現される)。
【0089】
車両における共振振動は、たとえば部品への損傷、オペレータが経験する許容不可能な雑音および振動など、数々の悪影響を有する。油圧トランスミッションを備える車両は、油圧トランスミッションの動作によって生じる共振振動を含む、油圧トランスミッションに連結された、またはその内部の油圧機械の動作によって生じる共振振動によって、損傷し得る。しかし、上述した種類の油圧機械およびモータを利用すると、油圧機械を通る流れの脈動性質の結果として振動が生じ、これは1または複数の部品の共振周波数と一致する場合、振動をもたらし得ることが分かっている。自身の共振周波数における部品の振動は、励振源から部品への機械的伝播経路が存在する場合しか生じない。周波数に依存して振動が生じることがあり、それによってアクティブサイクルが選択される。たとえば、アクティブサイクルが時間において等間隔に毎秒選択された場合、振動は10Hzで生じ得る。同様に、作動チャンバ体積のインアクティブサイクルの周波数に関連する振動からも問題が生じ得る。たとえば、軸の回転ごとに、全ての作業チャンバがアクティブサイクルを経るが、1つの作業チャンバが0.1秒ごとにインアクティブサイクルを実行する場合、ここでインアクティブサイクルは時間において等間隔であり、結果として10Hzの振動が存在し得る。そのような振動は、機械が最大変位の高比率で動作している時、よって高動力スループットが存在しより大きな力が作動している状況において関連してくるため、より大きな損傷をもたらし得る。
【0090】
一般に、車両(たとえば掘削機)内で油圧機械を動作させることにより、許容不可能、不所望、および許容可能な振動という3つのグループに分類され得る振動が生じる。コントローラは、これらの振動の大きさおよび/またはこれらの振動の周波数を備える要因に依存して振動が不許容可能な振動に分類されるか、不所望の振動に分類されるか、または許容可能な振動に分類されるか、および/または、これらの振動が他の部品を励起させることができる機械的伝播経路の存在があるかを決定するように構成され得る(方法は決定することを備えてよい)。デマンドが量子化された場合、油圧機械の出力脈動は、運転者によって感じられる振動をもたらさず、または可聴雑音をもたらさず、または部品への損傷を招くことが予想され得る振動をもたらさないために許容不可能または不所望とはみなされない周波数を備える特定の周波数コンテンツを含んでよい。しかしこの周波数コンテンツは、油圧機械のトルクを計算する時に使用したくない圧力の脈動をもたらし得る。圧力の周波数コンテンツは既知であり、これは、移動平均フィルタを用いることによって除去され得る。移動平均フィルタがこの特定の許容可能周波数を除去するようにウィンドウサイズが動的に調整される例において、フィルタは、その周波数の高調波も除去し、移動平均フィルタはローパスフィルタの一種であるため、許容可能な周波数より上の全ての周波数を部分的に減衰もする。
【0091】
デマンド信号は、1または複数の作業チャンバのグループの各作業チャンバがアクティブサイクルを実行するかインアクティブサイクルを実行するかに関する決定を作業チャンバ体積の各サイクルにおいて作業チャンバごとに行うために油圧機械によって(たとえば油圧機械コントローラによって)用いられる。油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に応答してデマンド信号が計算される場合、デマンド信号に応答して油圧機械によって実行されるアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンの結果生じるシリンダのアクティブ化または非アクティブ化の周波数によって生じる不所望の震動または振動が存在し得ることが分かっている。これはたとえば、測定された特性が、1または複数の作業チャンバのグループと流体連通している油圧回路内の位置における圧力または流量、および/または1または複数の作業チャンバのグループと流体連通しているアクチュエータの1または複数の位置または運動速度である場合、生じ得る。フィードバックループによってこれらの周波数を抑制することが有利である。
【0092】
場合によっては、油圧機械が応答するデマンド信号は量子化され、複数の離散値の1つを有する。場合によっては、(任意選択的に連続的)デマンド信号が受信され、たとえば受信したデマンドに最も近い離散値または受信したデマンドの上下に隣り合った離散値を選択することによって量子化される。チャタリングを回避するために、量子化ステップにおいてヒステリシスが適用され得る。複数の離散値は、1または複数の作業チャンバのグループによる流体の全変位の平均分数を表してよい。たとえば離散値を計算することまたはメモリから離散値を読み取ることなど離散値を決定するステップが存在してよく、離散値は、たとえば回転軸の回転速度に依存して可変であってよい。
【0093】
場合によっては、コントローラは、フィルタを用いて油圧回路または1または複数のアクチュエータの測定された特性に基づく制御信号をフィルタすることによってデマンド信号を計算するように構成され、方法は計算することを備えてよく、フィルタは、デマンド信号に応答して油圧機械が各作業チャンバによる作動油の正味変位を選択した結果生じる作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンによって生じる1または複数の周波数を減衰する。場合によっては、上記1または複数のフィルタは、少なくとも1つの移動平均フィルタを備える。場合によっては、油圧回路の測定された特性は、(たとえば油圧機械の出力、1または複数のアクチュエータ、1または複数の制御弁の前後などにおいて)測定された圧力である。
【0094】
フィルタは、デマンド信号の現在または過去の値に依存して変化してよく、それによって、(量子化)デマンド信号によって生じる作業チャンバがアクティブまたはインアクティブサイクルを経るパターンによって生じる周波数を抑制する。
【0095】
デマンド信号の複数の離散値は、等間隔であってもなくてもよい。離散値は、回転軸の回転速度によって変化してもしなくてもよい。離散値が回転軸の回転速度によって変化する場合、それらは、低周波数成分の生成を低減するように選択され得る。たとえば1000未満、または100未満の離散値が存在してよい。デマンド信号がデジタルである場合、2値論理によって課される可能な値は参照されず、デマンド信号のビットサイズを所与としてデジタルに表され得る値のサブセットが参照される。したがって離散値は一般に、自身のビット長を所与としてデマンド信号が有し得るデジタル値の10%未満、1%未満、または0.1%未満を表す。
【0096】
場合によっては、離散値の値は、回転軸の回転速度によって変化し、油圧機械が量子化デマンドを実現するために1または複数の作業チャンバのグループの正味変位を制御する時に不所望および/または許容不可能な周波数の生成を回避するように選択される。
【0097】
移動平均フィルタは一般に、フィルタウィンドウを有する。場合によっては、フィルタウィンドウは、1または複数の作業チャンバのグループがデマンド信号の離散値および回転軸の回転速度において作業チャンバ体積のアクティブまたはインアクティブサイクルを実行することによって生じる周波数を減衰するためにデマンド信号のその離散値および回転軸のその回転速度に依存して選択されたフィルタウィンドウ長さを有する。場合によっては、フィルタウィンドウは、所定の最小周波数の逆の値に対応するフィルタウィンドウ長さを有する。したがってフィルタは、所定の最小周波数の成分を除去し、一般に、それより低い周波数成分も減衰する。一般に、所定の最小周波数は、所与のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターン/所与のデマンドに関して、回転軸の回転速度に比例する。所定の最小周波数は、デマンド信号の所与の離散値に関してメモリ内に格納されたパラメータ、および回転軸の回転速度から決定され得る。
【0098】
フィルタウィンドウ長さは固定であってよいが、一般に油圧機械コントローラは、デマンド信号に依存してフィルタウィンドウ長さの定期的調整をもたらすように構成される。方法は、たとえば回転軸の回転ごとに1回、デマンド信号に依存してフィルタウィンドウ長さの定期的調整をもたらすことを備えてよい。
【0099】
特定の数の過去のデータ点(たとえば所与のデータウィンドウにおけるデータ)にわたり特定の関数の平均をとる移動平均フィルタが知られている。平均の計算において、様々な重み付けが様々なデータ点に割り当てられてよく、あるいは(たとえば移動平均が事実上移動平均値である場合)実質的に同じ重み付けが各データ点に割り当てられ得る。平均は、算術平均、調和平均、または相乗平均、中央値、最頻値などであってよい。移動平均フィルタが固定のフィルタ期間(たとえば固定サイズのデータウィンドウ)を有する場合、移動平均フィルタは、全ての不所望の周波数を効果的にフィルタする可能性が低い。しかし、関数の周波数波形が、移動平均ウィンドウのサイズと同じ期間を有する所与の周波数を有する信号を含む場合、その周波数は、関数から完全に減衰(すなわちフィルタ)される。したがって、その周波数の期間と一致するように移動平均フィルタのウィンドウサイズを選択することによって、任意の周波数を除去することが可能である。移動平均フィルタはローパスフィルタとして作用するので、この上記周波数より上の周波数は全て少なくとも部分的に減衰される。本発明の更なる態様は、動的に変化するウィンドウサイズを有する移動平均フィルタを提供する。
【0100】
個々の作業チャンバは、所定の固定体積の作動油を変位させるか(アクティブサイクル)、または作動油の正味変位が存在しない(アイドルサイクルとも称される)インアクティブサイクルを経るかのいずれかを、作業チャンバ体積の各サイクルにおいて、たとえば弁制御モジュールによって選択可能であり、それによって、機械の正味流体スループットをデマンド信号によって示されたデマンドに動的に一致させることができる。コントローラおよび/または弁制御モジュールは、(たとえば作業チャンバ体積のサイクルごとに)アルゴリズムを実行することによって個々の作業チャンバにアクティブサイクルまたはインアクティブサイクルを経させるように動作可能であってよい。方法は、(たとえば作業チャンバ体積のサイクルごとに)個々の作業チャンバがアクティブサイクルを経るかインアクティブサイクルを経るかを決定するためのアルゴリズムを実行することを備えてよい。アルゴリズムは一般に、(たとえば量子化)デマンド信号を処理する。
【0101】
作業チャンバによって実行される作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンは、1または複数の強度ピークを有する周波数スペクトルを有する。たとえば、作業チャンバがアクティブおよびインアクティブサイクルを交互に実行する場合、作業チャンバ体積のサイクルの周波数の半分に等しい周波数に強度ピークが存在する。より一般的には、作業チャンバは、1または複数の強度ピークを有する周波数スペクトルを有する、より複雑なアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンを経る。
【0102】
作業チャンバによって実行される作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンは有限期間を有し、有限期間は、許容可能な値範囲内で変化し得る。たとえばアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンは、0.001s以上、または0.005s以上、または0.01s以上の最小期間を有してよく、および/または0.1s以下または0.5s以下の最大期間を有してよい。
【0103】
機械の例において、最小期間は(2050PRMの最大速度で12のシリンダ全てのアクティブ化の周波数によって生じる)2msであってよい。当業者が理解するように、より高速の原動力、またはより多い数のシリンダの場合、最小期間は1ms(またはそれ未満)になり得る。主要な実施形態において、5Hzより下の、よって0.2sの期間に対応する全ての周波数を除去することが好ましい。
【0104】
一般に、許容可能な期間の範囲は、許容可能な周波数コンテンツに依存して選択される。この最大許容可能期間から、変位デマンドの許容可能な有限範囲は、シリンダの数および原動力の動作範囲に依存して選択される。たとえば、許容可能なFd値の範囲は、変位デマンドの整数分の1である有限数から成るように選択され得る。整数分の1である有限数の分母は、回転軸の回転速度に依存して選択されてよく、例えば分母は、期間が最大期間を下回るように選択され得る。一般に、整数分の1である有限数の分母の許容可能値は、回転軸の回転の回転速度に依存して変化する。短い期間はアクティブまたはインアクティブ作業チャンバのより頻繁なサイクルに対応し、チャンバアクティブ化から低周波数コンテンツを除去するため、短い期間を有することが有利である。
【0105】
一般に、移動平均フィルタのウィンドウサイズは、作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンの周波数に依存して選択される。たとえば、作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンが10.5Hzの周波数を有する場合、移動平均フィルタのウィンドウサイズは、0.095sの期間を有するように選択され得る。
【0106】
アクティブまたはインアクティブサイクルを実行する作業チャンバの周波数は、回転軸の回転速度(毎秒回転数)に比例する。これは、作業チャンバ体積の各サイクル中、所与の作業チャンバがアクティブサイクルまたはインアクティブサイクルのいずれかを実行することを引き受ける1つの時点が一般に存在するためである。たとえば、作業チャンバと低圧作動油マニホールドとの間の作動油の流量を調整する電子制御弁を閉鎖するか否かの決定が一般に行われる。したがって、アクティブおよびインアクティブサイクルの特定のシーケンスによって生じる(場合によっては不所望の)周波数は、サイクルが起こる速度に比例し、すなわち、回転軸の回転速度に比例する。よって、移動平均フィルタのウィンドウサイズは一般に、デマンド信号および回転軸の回転速度に依存して選択される。
【0107】
しかしながら、油圧機械の一部の1または複数の共振周波数および/または油圧機械の一部である、または油圧機械と機械的に連通している(たとえば機械的に結合された)車両(たとえば掘削機)の一部の1または複数の共振周波数を備える不所望の周波数(たとえば周波数範囲)が存在することがあり、この共振周波数は、回転軸の回転速度に比例して変化するものではない。
【0108】
アクティブ(または必要に応じてインアクティブ)サイクルを実行する作業チャンバの数を変化させる周波数が重要である。アクティブ(または必要に応じてインアクティブ)サイクルを実行する作業チャンバの数が一定量だけ変更された場合、これは基本周波数に影響を及ぼさない。たとえば、連続的な決定点(すなわち、1または複数の作業チャンバがアクティブまたはインアクティブサイクルを経るべきかに関する決定が行われる時点)において、作業チャンバのシーケンスが、1’sおよび0’sによって表され得ることが決定される場合、0はインアクティブチャンバサイクルを表し、1はアクティブチャンバサイクルを表し、たとえば0、0、0、1、0、0、0、1である(このシーケンスは、シーケンス1、1、1、0、1、1、1、0と同じ基本周波数を有する)。
【0109】
したがって本発明は、油圧機械が、作業チャンバによって実行されるアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンに依存し、アクティブおよびインアクティブサイクルの所与のシーケンスに関して回転軸の回転速度に比例する周波数において強度ピークを有する振動を生成することを認める。本発明によると、弁コマンド信号のパターンは、特定のFd範囲を避けることによって不所望の振動を低減するように制御され、これは、目標正味変位が場合によっては正確に満たされないことを意味する。しかし、閉ループフィードバックシステムにおいて、これによって生じる任意の誤差は補正され得る。弁コマンド信号のパターンは一般に、各作業チャンバがアクティブサイクルを経るかインアクティブサイクルを経るかを決定することによって、周波数スペクトルの1または複数の強度ピークが生じる周波数に影響を及ぼす。ただし、作業チャンバによって変位される作動油の量がサイクル間で変化する場合、作業チャンバ体積の各サイクル中に弁制御信号のパターンによって決定された正味変位もまた、周波数スペクトルの1または複数の強度ピークが生じる周波数に影響を及ぼす。
【0110】
デマンド信号が量子化される場合、これらの離散変位(「量子化変位」)におけるアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンは、既知の周波数コンテンツを有するシリンダ作動パターンをもたらし、よって、シリンダ作動パターンの最低周波数パターンが既知である。したがって方法は、移動平均フィルタが最も低い既知の周波数を完全に減衰するように、移動平均フィルタのウィンドウサイズを動的に調整することを備えてよい(コントローラは調整するように構成され得る)。方法は、回転軸の回転速度および/または現在の作動油変位に依存して移動平均フィルタのウィンドウサイズを調整することを備えてよい(コントローラは調整するように構成され得る)。たとえば、量子化が10msの期間をもたらす場合、移動平均フィルタのウィンドウサイズもまた10msの期間を有するように選択されてよく、それによって10Hzのシリンダ作動パターンが減衰(たとえばフィルタ)される。
【0111】
場合によっては、コントローラは、デマンド信号(一般に連続的なデマンド信号)を受信し、作業チャンバ体積のアクティブおよび/またはインアクティブサイクルのパターンに対応する、対応する一連の値を決定し、それによって(すなわち、作業チャンバ体積のアクティブおよび/またはインアクティブサイクルのパターンの結果生じるデマンド信号(F)が期間にわたり平均されると)デマンド信号を満たす。方法は、デマンド信号(一般に連続的なデマンド信号)を受信することと、作業チャンバ体積のアクティブおよび/またはインアクティブサイクルのパターンに対応する、対応する一連の値を決定し、それによって(すなわち、作業チャンバ体積のアクティブおよび/またはインアクティブサイクルのパターンの結果生じるデマンド信号(F)が期間にわたり平均されると)デマンド信号を満たすこととを備えてよい。
【0112】
たとえばコントローラは、最大変位の90%に関する連続的なデマンド信号を受信してよく、少なくとも100の値、または好適には少なくとも500の値、またはより好適には少なくとも1000の値を備える一連の値を決定してよい。一連の値は、反復シーケンスを備えてよく、よってアクティブおよび/またはインアクティブサイクルのパターンは、反復シーケンスに対応する期間を備えてよい。
【0113】
方法は、最小許容周波数(たとえば5Hz、10Hz)を選択することと、その後、デマンドの複数の離散値(たとえばFd)の量子化リストを生成することとを備えてよく、(たとえばFdの)上記値は、シリンダ作動の1または複数のパターンをもたらすように選択され、上記パターンは、最小許容周波数より上の周波数コンテンツのみを有する。コントローラは、最小許容周波数(たとえば5Hz、10Hz)を決定し、その後、デマンドの複数の離散値(たとえばFd)の量子化リストを作成するように構成されてよく、(たとえばFdの)上記値は、シリンダ作動の1または複数のパターンをもたらすように選択され、上記パターンは、最小許容周波数より上の周波数コンテンツのみを有する。
【0114】
デマンドの許容値の量子化リストは、(回転軸の回転速度およびシリンダの数は所与のデマンド値に関して存在する周波数に影響を及ぼすため)機械におけるシリンダの数および/または機械の回転軸の回転の動作速度に依存してよい。リスト内のデマンドの各値に関して、存在する最小周波数を計算することが可能である。機械が動作すると、(フィルタされた)デマンド信号は、油圧機械のコントローラへ送信される。方法は、デマンドを表す値(たとえばF)および測定された回転軸の回転速度を受信し、ルックアップテーブルに問合せすること(によって、上記要求Fdに関する作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンの結果存在する最も低い周波数を決定すること)と、存在する最も低い周波数に対応するウィンドウサイズを選択することと、測定された制御信号(たとえば圧力)の(すなわちウィンドウ内で測定された圧力から)移動平均(たとえば平均値)を選択し、それによって(作業チャンバ体積のアクティブまたはインアクティブサイクルのパターンによって生じる)制御信号に存在する最も低い周波数を完全に減衰することとを備えてよい。移動平均フィルタはローパスフィルタの一種であるため、最小周波数より上の他の周波数も部分的に減衰される。
【0115】
一般に、方法は、選択されたウィンドウサイズを動的に調整することを備える。コントローラは、選択されたウィンドウサイズを動的に調整するように構成され得る。
【0116】
一般に、ウィンドウサイズは、(回転軸の回転速度に依存する)存在する最も低い周波数に依存する。ウィンドウサイズは、回転数信号ごとに1回同期(すなわち調整)され得る。
【0117】
ウィンドウサイズを(一般に最も低い既知の周波数の逆数と一致するように)動的に調整することによって、移動平均フィルタは、この周波数を受信制御信号またはデマンド信号から完全に減衰することができる。これは、原動力速度を向上させ、油圧機械を、使用中の時間のより大部分に関して原動力速度(またはトルク)制限付近で動作させることができるという利点を有する。
【0118】
場合によっては、共振周波数(および/または不所望の周波数の範囲)の1または複数は、回転軸の回転速度によって変化することはない。しかし、共振周波数(および/または不所望の周波数の範囲)の1または複数は、回転軸の回転速度によって変化する。共振周波数(および/または不所望の周波数の範囲)の1または複数は、回転軸の回転速度と無関係であり得るパラメータに依存して変化し得る。たとえば1または複数の(たとえばラムの)上記共振周波数は、ラムまたはブームの位置に依存し得る。1または複数のパラメータは、1または複数のセンサによって測定された測定パラメータであってよい。
【0119】
この方法は、量子化変位を出力するために制御される油圧機械からの既知の周波数を減衰するために役立つ。連続的な変位の低周波数パターンは、場合によっては(たとえば周波数が非常に低い場合)大きなウィンドウサイズ、およびそれによる大幅な制御ラグをもたらし得る。また、変位は(固定段階的ではなく)連続しているので、作業チャンバ減衰のパターンが反復パターン状態に到達することはない。
【0120】
場合によっては、上記フィルタの少なくとも1つは、信号を受信および信号を出力し、出力信号は、帯域内で変化する入力信号の結果として変化することはない。一般に入力信号は、制御信号(たとえば測定された圧力、流量、またはアクチュエータ位置または速度)またはそこから導出される信号である。一般に、出力はデマンド信号であり、あるいはデマンド信号をもたらすために更に処理される。
【0121】
個々の作業チャンバの作動による寄与は、脈動性圧力リップルをもたらし得る。圧力の変化は、決定(たとえばFdを変更する決定など)が行われることを可能にするために用いられるので、脈動性の圧力リップルによって生じる圧力の小さな変化は、現実の意図的な圧力変化として誤解釈されることがあり、それによって決定が誤って行われ得る。
【0122】
場合によっては、フィルタの出力は、入力値が出力の所定の除去範囲(「不動帯」)外に変化するまで、ほぼ一定の値に保たれる。すなわち、フィルタの出力は、入力値が出力の所定の除去範囲外に変化した場合、(たとえば入力の現在値まで)段階的変化を行う。
【0123】
これは、脈動性圧力リップル(またはフィードバックに用いられる他の測定された変数における変動)が油圧機械トルク制御に影響を及ぼさないが、圧力における(リップルではない)大きな変化、または他の制御信号は考慮されるという利点を有する。
【0124】
所定の除去範囲は、圧力脈動の予想範囲に応答して選択され得る。所定の除去範囲は、10バール以上、20バール以上、または30バール以上(たとえば20バール)の圧力範囲を備えてよい。当業者が理解するように、所定の除去範囲は一般に、用いることが意図された特定の油圧システムに依存して選択される。ただし、所定の除去範囲は任意選択的に、たとえば油圧システムのコンプライアンスおよび/または剛性が変化した場合(たとえば蓄電池が提供された場合)、調整可能であってよい。
【0125】
本発明は、1または複数の油圧機械にトルク制限を適用することを備える、装置を動作させる方法に及ぶ。装置は、1または複数の油圧機械にトルク制限を適用するように動作可能であり得るコントローラを備えてよい。
【0126】
一般に油圧機械トルク制限は、現在の原動力速度(たとえば回転軸の回転速度)に依存して原動力トルク制限を下回る。コントローラ(たとえば原動力コントローラ(たとえばエンジンコントローラ)または油圧機械コントローラ)は、現在の原動力速度の測定値を受信し、一般にトルク速度曲線を含むルックアップテーブルを参照して、対応する原動力トルク制限を決定するように動作可能であってよい。方法は、現在の原動力速度の測定値を受信することと、一般にトルク速度曲線を含むルックアップテーブルを参照して、対応する原動力トルク制限を決定することとを備えてよい。
【0127】
追加または代替として、(原動力または油圧機械)コントローラは、現在の機械速度の測定値を受信し、一般にトルク速度曲線を含むルックアップテーブルを参照して、対応する機械トルク制限を決定するように動作可能であってよい。方法は、現在の機械速度の測定値を受信することと、一般にトルク速度曲線を含むルックアップテーブルを参照して、対応する機械トルク制限を決定することとを備えてよい。
【0128】
原動力がターボチャージャを有するエンジンである場合、原動力コントローラは、ターボチャージャに関連する1または複数のパラメータを更に考慮に入れてよく、方法は考慮に入れることを備えてよい。たとえば、(たとえばターボチャージャ給気系統および/またはターボチャージャ慣性の時定数によって)エンジンが自身のトルク出力をどの程度急速に変更するかをターボチャージャが制限する場合、原動力コントローラは、原動力トルク制限を下回る追加の一時的トルク制限を適用してよく、方法は適用することを備えてよい。油圧機械コントローラは、任意選択的にRPM、現在のトルク、追加の一時的トルク制限、最大原動力トルク、および/または安全率に依存して、1または複数の(一般に2つ以上の)トルク変化率を油圧機械に実現させるように動作可能であってよく、方法は実現させることを備えてよい。1または複数のトルク変化率は、(たとえば少なくとも)第1のトルク変化率および第2のトルク変化率を備える。油圧機械コントローラは、原動力が追加の一時的トルク制限より下で動作している場合、第1の油圧機械トルク変化率を実現し、原動力が追加の一時的トルク制限以上で動作している場合、第2のトルク変化率を実現するように動作可能であってよく、方法は実現することを備えてよく、第1のトルク変化率は第2のトルク変化率よりも速い。
【0129】
原動力が2つ以上のアクチュエータに変位を提供するように構成される場合、コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、各アクチュエータに関連するデマンドに応答してECMに異なるトルク制限を適用するように構成されてよく、方法は適用することを備えてよい。あるいは、コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、各アクチュエータに関連するデマンドに応答して原動力に実質的に同じトルク制限を適用するように構成されてよく、方法は適用することを備えてよい。
【0130】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、使用中、1または複数の信号(たとえば速度誤差の測定値、使用可能トルク、エンジン負荷、1または複数の圧力測定値などに関連する信号)を受信し、それによってECMに印加される現在のトルクを決定してよく、その後、1または複数の信号に応答してトルク制限を増減させてよい。方法は、1または複数の信号(たとえば速度誤差の測定値、使用可能トルク、エンジン負荷、1または複数の圧力測定値などに関連する信号)を受信することと、それによってECMに印加される現在のトルクを決定することとを備えてよく、その後、1または複数の信号に応答してトルク制限を増減させることを備えてよい。
【0131】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、出口圧力の測定値および変位デマンドを表す値を受信するように構成されてよく、それによって(たとえば出口圧力と変位デマンドとの積を計算することによって)印加トルクの推定値を計算してよい。方法は、出口圧力の測定値および変位デマンドを表す値を受信することと、(たとえば出口圧力と変位デマンドとの積を計算することによって)印加トルクの推定値を計算することとを備えてよい。
【0132】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、回転軸の回転速度の測定値および変位デマンドを表す値を受信し、それによって(たとえば、変位デマンドと回転軸の回転速度との積を計算することによって)供給流量の推定値を計算するように構成され得る。方法は、回転軸の回転速度の測定値および変位デマンドを表す値を受信することと、それによって(たとえば変位デマンドと回転軸の回転速度との積を計算することによって)供給流量の推定値を計算することとを備えてよい。
【0133】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)が回転軸の回転速度の測定値を受信し、印加トルクの推定値を計算するように構成される場合、コントローラは、吸収される機械動力の推定値を更に計算してよい。方法は、回転軸の回転速度の測定値を受信することと、印加トルクの推定値を計算することと、任意選択的に吸収される機械動力の推定値を更に計算することとを備えてよい。
【0134】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)が出口圧力の測定値を受信し、供給流量の推定値を計算するように構成される場合、コントローラは、流体動力の推定値を更に計算してよい。方法は、出口圧力の測定値を受信することと、供給流量の推定値を計算することと、任意選択的に流体動力の推定値を更に計算することとを備えてよい。
【0135】
任意選択的に、コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)が印加トルクおよび/または供給流量および/または吸収される機械動力および/また流体動力を計算するように構成される場合、コントローラは、油圧機械に関連する1または複数の追加のパラメータ(たとえば、任意選択的に圧力、速度、温度などの関数として体積変位および機械効率)を受信するように構成されてよく、1または複数の追加のパラメータを考慮に入れることによって推定値の精度を向上させ得る。方法は、油圧機械に関連する1または複数の追加のパラメータ(たとえば、任意選択的に圧力、速度、温度など(のたとえば測定値)を考慮に入れて体積変位および機械効率)を受信することを備えてよく、それによって吸収される機械動力または流体動力の上記推定値を改善する。
【0136】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、現在の圧力の測定値を受信し、上記圧力のトルクを加えるために必要な変位制限を計算し、変位制限を超えないように出力変位を制限することによりトルクを制限するように構成され得る。方法は、現在の圧力の測定値を受信することと、上記圧力のトルクを加えるために必要な変位制限を計算することと、変位制限を超えないように出力変位を制限することによってトルクを制限することとを備えてよい。
【0137】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、回転軸の現在の回転速度の測定値を受信し、回転軸の上記回転速度における流れを供給するために必要な変位制限を計算し、変位制限を超えないように出力変位を制限することにより流れを制限するように構成され得る。方法は、回転軸の現在の回転速度の測定値を受信することと、回転軸の上記回転速度における流れを供給するために必要な変位制限を計算することと、変位制限を超えないように出力変位を制限することにより流れを制限することとを備えてよい。
【0138】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、現在の圧力の測定値および回転軸の現在の回転速度を受信し、上記圧力および回転速度における動力を吸収し(変位制限を超えないことにより動力を制限するように)出力変位を制限するために必要な変位制限を計算するように構成され得る。方法は、現在の圧力の測定値および回転軸の現在の回転速度を受信することと、上記圧力および回転速度における動力を吸収し(変位制限を超えないことにより動力を制限するように)出力変位を制限するために必要な変位制限を計算することとを備えてよい。
【0139】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、変位、流量、圧力、動力、および/またはトルクデマンドを示す1または複数の信号を受信するように構成されてよく、方法は受信することを備えてよい。1または複数の信号は、1または複数の極限関数によって制限されてよく、1または複数の極限関数は一般に、1または複数の追加のパラメータ(たとえば温度)に依存する。たとえばコントローラは、100L/minの流量デマンドを示す信号を受信してよく、また方法はこれを受信することを備えてよく、流量デマンドを示す信号は、200バールの圧力制限および20kWの動力制限によって制限され、機械は、圧力が200バール以下であることを圧力測定値が示し、動力出力が20kW以下であることを動力測定値が示す場合のみ、最大100L/minの制限まで、その流量デマンドに応答して流れを出力するように構成され得る。1または複数の極限関数は、非線形極限関数であってよい。
【0140】
コントローラ(たとえば油圧機械コントローラ)は、原動力(たとえばエンジン)の使用可能トルクの推定値を受信(および/または計算)し、油圧機械トルク制限を設定するように構成されてよく、トルク制限は、原動力速度に依存する。方法は、原動力(たとえばエンジン)の使用可能トルクの推定値を受信および/または計算することと、油圧機械トルク制限を設定することとを備えてよく、トルク制限は、原動力速度に依存する。たとえば、比較的低い原動力速度において、油圧機械トルク制限は、ストール(たとえばエンジンストール)を防ぐためにゼロに選択されてよく、逆に比較的高い原動力速度において、油圧機械トルク制限は、機械損傷を防ぐように選択され得る。あるいは比較的高い原動力速度において、油圧機械トルク制限は、機械負荷を高めるために大きくされてよく、それによって原動力速度は、機械負荷が原動力の使用可能トルクと一致するまで低下する。これは、原動力速度が低下するまで使用可能動力における一時的な増加を提供するという利点を有する。当業者が理解するように、比較的高いまたは低い原動力速度は、個々の原動力および/または車両に依存する。
【0141】
車両が、エンジンガバナを備えるコントローラを有するエンジンの形式の原動力を備える場合、エンジンガバナは可変速度設定値を備えてよく、コントローラは、エンジン速度ドループの測定値を受信し、それによってエンジン負荷の推定値を計算するように構成され得る。方法は、エンジンの可変速度設定値を実現することを備えてよい。方法は、エンジン速度ドループの測定値を受信すること、およびそれによってエンジン負荷の推定値を計算することを備えてよい。したがって油圧機械トルク制限は、極限関数によって制限されてよく、極限関数は、エンジン速度ドループの測定値に依存する。
【0142】
場合によっては、それぞれのデマンド信号を有する複数の上記作業チャンバのグループが存在し、コントローラは、2つ以上の上記作業チャンバのグループのデマンド信号を個々に変えながらトルク制限を実現する。それによって、コントローラは、1または複数の上記作業チャンバのグループのトルクを優先順位付けし、1または複数の上記作業チャンバのグループのトルクを所定の(たとえば十分な原動力トルクが使用可能でありながら保証された)トルクに維持することが可能であり、方法は優先順位付けすることを備えてよい。
【0143】
場合によっては、それぞれのデマンド信号を有する(一般に1または複数のアクチュエータの複数のそれぞれのグループに連結された)複数の上記作業チャンバのグループが存在し、1または複数の作業チャンバのそれぞれのグループのそれぞれのデマンド信号を変えることによって、1または複数の上記作業チャンバのグループのトルクを1または複数の他の上記作業チャンバのグループのトルクよりも優先しながら、コントローラはトルク制限を実現し、方法はトルク制限を実現することを備える。
【0144】
場合によっては、それぞれのデマンド信号を有する複数の上記作業チャンバのグループが存在し、1または複数の上記作業チャンバのグループのトルクを1または複数の他の上記作業チャンバのグループのトルクよりも優先しながら、コントローラはトルク制限を実現し、方法はトルク制限を実現することを備える。
【0145】
場合によっては、複数の上記作動チャンバのグループが存在し、少なくともいくつかの状況において、コントローラは、上記作業チャンバのグループの1または複数がモータリグサイクルを実行する間に上記作業チャンバのグループの他の1または複数にポンピングサイクルを実行させ、それによってエンジントルクを補足するためにモータリングによるトルクを用いることによって上記ポンピングによって生じるトルクを支援し、方法は、そのようにすることを備える。
【0146】
場合によっては、1または複数の作動チャンバのグループまたは油圧機械全体のいずれかの最大トルクスルーレートを実現するために、コントローラはトルクを制限し、方法はトルクを制限することを備えてよい。
【0147】
本発明の実施形態例は、以下の図面を参照して例示される。
【図面の簡単な説明】
【0148】
図1】ECMを特徴とする、負のフィードバック制御を有する掘削機油圧回路の図である。
図2】本発明に係るECMの模式図である。
図3A】ECMに関する変化する応答時間を示すフローチャートである。
図3B】ECMに関する変化する応答時間を示すフローチャートである。
図4】ECMを特徴とする、フィードフォワード制御を有する掘削機油圧回路の図である。
図5】掘削機に供給された入力の論理図である。
図6】油圧モータの弁制御モジュールの模式図である。
図7】油圧掘削機の模式図である。
図8A】当該技術において知られるようなエンジンドループまたはストールを回避するために開ループトルク制限設定値における安全率を操作するシステムに関して、RPMの関数としてトルクを示すプロットである。
図8B】自身のエンジン速度設定値より下でエンジンを動作させることによりエンジンドループまたはストールを回避する本発明に係るシステムに関して、RPMの関数としてトルクを示すプロットである。
図9】システムの時定数を示す、段階的デマンドに応答する経時的な入力および出力を示すプロットである。
図10】圧力に依存するトルク限界曲線例のプロットである。
図11A】所与の流量デマンドに関して流量の関数として圧力を示すプロットである。
図11B】所与の変位デマンドに関して流量の関数として圧力を示すプロットである。
図12】動力デマンドを示し、ストールおよび内部機械損傷を防ぐために最小および最大エンジン速度を考慮に入れる、RPMの関数としてトルクを示すプロットである。
図13】機械のトルク対速度制限およびエンジンのトルク対速度制限を示す、RPMの関数として圧力を示すプロットであり、機械のトルク制限は高速で増加される。
図14】RPMの関数としてトルクを示すプロットであり、エンジンにおける合計負荷がエンジンドループを参照して推定され得るように、エンジンガバナがエンジン速度設定値を提供する。
図15】トルク出力の制限された変化率を有するエンジンに関して、RPMの関数としてトルクを示すプロットである。
図16】様々なトルク制限が課された、時間の関数としてトルクを示すプロットである。
図17A】トルク制限を有するシステム内の2つの油圧アクチュエータの様々なデマンドに関して、時間の関数としてトルクを示すプロットである。
図17B】トルク制限を有するシステム内の2つの油圧アクチュエータの様々なデマンドに関して、時間の関数としてトルクを示すプロットである。
図18】時間の関数として受信デマンド信号に応答する量子化出力を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0149】
可動および静止油圧機器の両方、特に建設用重装備の実用的設計に関する油圧回路図は、周知のとおり複雑であることを認識すべきである。単純性および明確性のために、図は、特にたとえば平凡な圧力解放弁、ドレイン管路、流量制御、油圧負荷保持、油圧負荷緩衝、蓄電池、コンプライアント流体量など、当業者が存在し得ることを理解する特徴を省略する。
【0150】
原動力がエンジンである一連の実施形態例が以下で説明される。当業者が理解するように、必要に応じて他の原動力が用いられてもよい。
【0151】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態例は、掘削機の形式をとる車両である。既知の掘削機は一般に、弁8内の中央通路を通り、スロットル5を通って流体コンテナ2(多くの場合、大気圧下のタンク)へ伸長する流体マニホールドを有する。そのような掘削機は一般に、少なくとも1つの圧力モニタ4、原動力として機能するエンジン22(この例では、エンジンコントローラ26を有するディーゼルエンジン)、コントローラ14、および複数のユーザ入力手段(この例ではジョイスティック10)を更に有する。ユーザ入力手段は一般に、運転室内に設置され、流体マニホールドが通るオープンセンタスプール弁8に結合される。アクチュエータ6(たとえばブームラム、揺動モータ、トラックモータなどのアクチュエータ)は、それぞれの弁8がジョイスティック10を介して作動されるとポンプ出口に流体接続され得る。
【0152】
本発明の第1の実施形態例において、機械は更に、1または複数の回転軸を介してトルクを伝達するためにエンジン22と機械的に回転連通する、一般に図2に示す種類の(たとえば少なくとも)2つの電子整流式油圧機械32を更に有する。
【0153】
図2は、シリンダの内側表面によって画定された作業体積36を有するシリンダ34と、偏心カム44によって回転軸42により駆動され、シリンダの作業体積を周期的に変化させるためにシリンダ内で往復運動するピストン40とを有する複数の作業チャンバを備える電子整流式油圧機械(ECM)の形式をとる油圧機械32の模式図である。回転軸は駆動軸に強固に連結され、駆動軸とともに回転する。軸位置および速度センサ46は、軸の瞬間的な角度位置および回転速度を決定し、信号線48を介して機械の機械コントローラ14に通知し、それによって機械コントローラは、各シリンダのサイクルの瞬間的位相を決定することができる。
【0154】
作業チャンバの各々は、電子作動面シールポペット弁52の形式をとる低圧弁(LPV)に関連付けられ、LPVは、関連する作業チャンバを有し、1または複数の作動チャンバあるいは図示するようにそれら全てをECM54の低圧作業液マニホールドに連結し得る、作業チャンバから低圧作動油マニホールド54へ伸長するチャネルを選択的に封鎖するように動作可能である。LPVは、作業チャンバ内の圧力が低圧作業液マニホールド内の圧力以下である時、すなわち吸気行程の間、作業チャンバを低圧作動油マニホールドと流体連通状態にするために受動的に開放するが、LPV制御線56を介したコントローラの能動制御下では、作業チャンバを低圧作動油マニホールドとの非流体連通状態にするために選択的に閉鎖可能な常開型電磁作動弁である。あるいは弁は、常閉型弁であってもよい。
【0155】
作業チャンバの各々は、各々が圧力作動吐出弁の形式をとるそれぞれの高圧弁(HPV)64に更に関連付けられる。HPVは、それぞれの作業チャンバから外向きに開放し、各々が、1または複数の作業チャンバまたは図2に示すようにそれら全てを高圧作動油マニホールド60に連結し得る、作業チャンバから高圧作動油マニホールド58へ伸長するそれぞれのチャネルを封鎖するように動作可能である。HPVは、作業チャンバ内の圧力が高圧作動油マニホールド内の圧力を上回る時に受動的に開放する常閉型圧力開放逆止弁として機能する。またHPVは、そのHPVが関連する作業チャンバ内の圧力によって開放するとHPV制御線62を介してコントローラが選択的に開放状態を維持し得る、常閉型電磁作動逆止弁としても機能する。一般に、HPVは、高圧作動油マニホールド内の圧力に対してコントローラによって開放可能ではない。HPVは更に、高圧作動油マニホールド内に圧力があるが作業チャンバ内にはない時にコントローラの制御下で開放可能であってよく、あるいは部分的に開放可能であってよい。
【0156】
ポンピングモードにおいて、コントローラは、一般に関連する作業チャンバのサイクルにおける最大体積点付近でLPVの1または複数を能動的に閉鎖し、低圧作動油マニホールドへの経路を閉鎖し、それによって後続する収縮行程において作動油を関連するHPVから流出させることによって、油圧モータによる作業チャンバから高圧作動油マニホールドへの作動油の正味変位速度を選択する(が、能動的にHPVを開放状態に維持することはない)。コントローラは、選択された正味変位速度を満たすように流れを生成し、または軸トルクまたは軸動力を生成するために、LPVの閉鎖およびHPVの開放の数および順序を選択する。
【0157】
動作のモータリングモードにおいて、油圧機械コントローラは、高圧作動油マニホールドを介して、油圧機械によって変位された作動油の正味変位速度を選択し、関連する作業チャンバのサイクルにおける最小体積点の少し前にLPVの1または複数を能動的に閉鎖し、低圧作動油マニホールドを閉鎖することによって、作業チャンバ内の作動油を残りの収縮行程によって圧縮させる。関連するHPVは、そのHPVにわたる圧力が一様である時に開放し、少量の作動油が、油圧機械コントローラによって開放状態に維持された関連するHPVから流出する。その後コントローラは、一般に関連する作業チャンバのサイクルにおける最大体積の付近まで、関連するHPVを能動的に開放状態に維持し、高圧作動油マニホールドから作業チャンバへ作動油を流入させ、回転軸にトルクを印加する。
【0158】
LPVを閉鎖するか否か開放状態に維持するか否かをサイクルごとに決定するとともに、コントローラは、変化する作業チャンバ体積に対するHPVの閉鎖の正確な位相合わせを変化させ、それによって高圧作動油マニホールドから低圧作動油マニホールドへの、またはその逆の作動油の正味変位速度を選択するように動作可能である。
【0159】
ポート54、56の矢印は、モータリングモードにおける作動油の流れを示し、ポンピングモードにおいて流れは逆である。圧力解放弁66は、油圧機械を損傷から保護し得る。
【0160】
図1を参照すると、各ジョイスティック10は、オープンセンタスプール弁8に結合され、そこを通る流れを調整する。圧力モニタ4は、スロットルより上流の位置における(すなわち、油圧アクチュエータのグループより下流の位置における)導管内の作動油の圧力24を測定する。コントローラ14は、測定された圧力24に応答して使用中ピストンが往復運動するシリンダによって画定された(油圧アクチュエータ6のグループと流体連通している)作業チャンバのグループによる作動油の変位を調整する。これは、フィードバックループにおいて行われ得る(たとえば、圧力モニタ4が所望のレベルを下回る圧力を記録した場合、コントローラ14は作動油の変位を増加させることができ、それによって圧力24が上昇する)。いくつかの掘削機において、コントローラ14は、流量デマンド16および油圧機械の出口圧力18も考慮に入れてよく、トルク制御モジュール20および負の流量制御モジュール12を含んでよい。
【0161】
2つのECM32の各々は、ECMが作動油を変位するか否かに関するサイクルごとの決定が行われ得るように、ECMコントローラ50によって制御される。各ECMは、流体マニホールドおよび2つのオープンセンタスプール弁8を通って大気圧のタンク2へ作動油を伝送してよい。各オープンセンタスプール弁は、ユーザがコマンドを入力し得るジョイスティック10と電子通信状態にある。スプール弁は、ジョイスティックを介してコマンドが入力されると閉鎖するように動作可能な常開センタを有し、この場合、作動油は、油圧アクチュエータ6へ分流され(ここでは単一の油圧アクチュエータとして示されるが、理解されるように、複数の油圧アクチュエータへ作動油を分流することが可能である)、それによってデマンドが満たされる。圧力センサ4は、各ECM32とタンク2との間で作動油の圧力を検出する。2つの機械32の各々に連結された2つのオープンセンタスプール弁が示されるが、理解されるように、この数は上下してよく、2つの電子整流式機械間で異なってよい。
【0162】
作動油として機能する油は、タンクから低圧作動油マニホールドを通って油圧機械の入力側へ供給される。高圧マニホールド内の圧力は、圧力センサを用いて感知される。
【0163】
また掘削機は、エンジンコントローラ22およびシステムコントローラ14も有する。システムコントローラは、変位を調整するために機械コントローラへ制御信号(たとえば変位デマンド信号16)を送信することによってECMを制御する。制御信号は、最大変位の分数F(変位デマンド)として表される、ECMによる変位を要求する。変位の絶対体積(毎秒変位する作動油の体積)は、最大変位の分数と、作業チャンバのサイクルごとに変位し得る最大体積と、作業チャンバの数と、作業チャンバ体積のサイクルの速度との積である。したがって、油圧機械コントローラは、高圧作動油マニホールドに印加されるトルクおよび高圧作動油マニホールド内の圧力を調整し得る。高圧作動油マニホールド内の圧力は、作動油の変位速度が油圧アクチュエータに供給される作動油よりも速く増加すると上昇し、逆もしかりである。複数の油圧アクチュエータは、高圧流体マニホールドと流体連通状態であってよい。各ECMの変位は、トルクの調整時に油圧機械コントローラによって考慮される。
【0164】
ECM32のコントローラ50は、機械の各シリンダがアクティブまたはインアクティブサイクルを完了すべきかに関するサイクルごとの決定を行うために動作可能である。これらの決定は、所与の油圧アクチュエータ(または油圧アクチュエータの組み合わせ)に関連する作動油変位デマンドに基づいて行われる。したがって、そのようなECMの動作中は高頻度の決定が存在し、それに応じて作動油変位デマンドが適用または変更される時に機械の短い応答時間が存在する。
【0165】
図4を参照すると、掘削機の代替例において、各ジョイスティック10は、(オープンセンタスプール弁8に結合されることに加えて)システムコントローラ14との電子通信状態にある。この掘削機例は、その結果、図1に示すフィードバックループなしで操作されてよく、この場合システムコントローラは、デマンドを示すジョイスティックからの信号を受信し、そのデマンドに応じて作動油の変位を増減させる。
【0166】
図5を参照すると、たとえば図2のECMなどのECMの場合、(各電子整流式油圧機械に関する)ポンプ変位124A、124Bに関する決定は、エンジン速度設定値126、現在のエンジン速度128、エンジントルク安全率130、各油圧機械132A、132Bの出力圧、および各油圧機械134A、134Bに関連する負の流量制御システム圧力を含む(が必ずしもこれに限定されない)いくつかの入力に基づいて行われる。
【0167】
現在のエンジン速度136からエンジン速度設定値を差し引くことにより、エンジン速度誤差138が算出される。エンジン速度設定値126は更に、ルックアップテーブル140へ供給され、それによって利用可能な最大エンジントルク142が計算され、許容可能なレベルのエンジンドループをもたらすために適用され得る最大ECMトルク146を計算するためにエンジントルク安全率130と比較144される。
【0168】
各油圧機械の出力圧力は、量子化によって生じる最も低い周波数を除去するためにフィルタ150A、150Bされ、負の流量制御圧力が更なるルックアップテーブル152A、152Bへ供給され、それによって最大流量変位154A、154Bが計算される。フィルタされた出力圧力の1つもまた制限158される。各油圧機械に関する最大流量変位は合計156され、対応するトルクが計算される。現在のエンジン速度と速度設定値との差が決定され、利得が適用され、最大許容可能ECMトルクにトルクオフセットが適用される。このトルク制限は、最大エンジントルク出力148と比較され、トルクデマンド信号が油圧機械コントローラへ送信される前に、(過剰なエンジンドループおよびストールが確実に回避され得るように)ECMトルクデマンドはこの値に制限される。トルクデマンド信号に応答して、油圧機械コントローラは、各油圧機械がアクティブサイクルまたはインアクティブサイクルを完了すべきか否かに関する決定160をサイクルごとに行う。(エンジン速度設定値、現在のエンジン速度、エンジントルク安全率、出力圧力および負の流量制御圧力、および/または他の要因を含む)現在の状況に依存して、油圧機械コントローラは、第2の油圧機械がインアクティブサイクルを経ている間に第1の油圧機械にアクティブサイクルを経させ、あるいは第2の油圧機械がアクティブサイクルを経ている間に第1の油圧機械にインアクティブサイクルを経させ、あるいは第1の油圧機械および第2の油圧機械の両方にアクティブサイクルを経させ、あるいは第1の油圧機械および第2の油圧機械の両方にインアクティブサイクルを経させてよい。
【0169】
図6は、モータ32の機械コントローラ50の模式図である。たとえばマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラなどのプロセッサ70は、バス72を介してメモリ74および入力出力ポート76と電子通信状態にある。メモリ74は、作業チャンバ体積の各サイクルにおいて各作業チャンバによって変位される作動油の正味体積を決定するために変位決定アルゴリズムの実行を実施するプログラム78、ならびに累積変位誤差値を格納する1または複数の変数80を格納する。またメモリは、たとえば各作業チャンバの角度位置84およびそれが(たとえば破損によって)非アクティブ化されるか否か86など、各作業チャンバに関するデータを格納するデータベース82も格納する。データベースは、各作業チャンバが何回アクティブサイクルを経ているか88を格納してよい。データベースは、1または複数のルックアップテーブルを格納してよい。プログラムは、1または複数の不所望の周波数および/または不所望の周波数の範囲を計算する、共振決定モジュールとして機能するプログラムコード90を備えてよい。
【0170】
コントローラは、変位デマンド信号94、軸位置(すなわち配向)信号90、および一般に高圧マニホールド内の圧力の測定値92を含む入力信号を受信する。またコントローラは、速度信号ならびに制御信号(たとえば始動または停止のコマンド、あるいは事前にまたは始動または停止時に高圧流体マニホールド圧力を増減させるコマンドなど)、または必要に応じて他のデータも受信してよい。
【0171】
図7は、この場合、油圧作動アームを有する掘削機である車両170の実施形態例の模式図である。油圧作動アームは、第1関節部174Aおよび第2関節部174Bから形成される。第1および第2関節部の各々は、独立して作動され得る。適切な車両の他の実施形態例は、テレハンドラ、バックホーローダなどを含む。
【0172】
図3Aは、本発明に係るシステムのフローチャートであり、システムは、初期圧力値114を負の流量制御システム100に取り入れ、その出力は最大圧力116と比較され、ローパスフィルタ102(この場合、300msの時定数を有するローパスフィルタ)へ供給される値F118が与えられる。このフィルタの出力は、圧力測定値104、現在のエンジン速度測定値110、およびエンジン速度設定値112も取り入れる速度制限器106へ受け渡される。これにより、トルク制限器108によるトルク制限の計算が可能であり、その後、最終的な出力デマンドが電子整流式機械(複数も可)118へ受け渡される。よって本発明は、アナログポンプ(たとえば従来の斜板ポンプ)の挙動に匹敵する機能を提供する。
【0173】
電子整流式機械は一般に、非常に短い応答時間を有する。これは、作業チャンバがアクティブサイクルを経るかインアクティブサイクルを経るかに関する決定が、作業チャンバ体積の各サイクルにおいて作業チャンバごとに行われ得るためである。作業チャンバは一般に、回転軸の周囲に分散するので、回転軸の回転ごとに複数の決定点(たとえば8以上または12以上)が存在する。回転軸の周囲に24°の間隔で作業チャンバを有し1500rpmで回転する電子整流式機械は、たとえば、2.7ms以内でデマンドの変化に反応することができる。この非常に迅速な応答時間は、場合によっては好適であり得るが、場合によっては、制御性に悪影響を及ぼし得る不所望の不安定性をシステムにもたらし得る。
【0174】
たとえば、システムが低コンプライアンスに比例する高利得で提供される場合、システムは、遅延(たとえば、(フィルタリングによって生じる)信号測定を実行するために必要な時間によって生じる遅延またはハードウェア応答時間によって生じる遅延)を感知する。そのようなシステムが2~3msの遅延を感知する場合、そのような遅延を許容可能レベルまで低減することは実現不可能であり得る。したがって本発明は、システムに関する時間を安定させるために出力応答が遅延される方法を提供する。出力デマンドをフィルタするために(たとえば約100~300msを有する)ローパスフィルタが用いられる。その結果、入力されたステップにシステムが応答するために要する時間は長くなるが、実際は多数の用例において、これは使用中、オペレータ(たとえば掘削機のユーザ)に認識されない。
【0175】
図3Bは、3Aの特徴および現在測定されたエンジン速度120およびエンジン速度設定値122の更なる入力を有するシステムのフローチャートである。これらは、エンジン速度誤差を計算するために比較される。また、エンジン速度に依存するエンジントルク制限を示すルックアップテーブルを含むデータベース124が提供される。
【0176】
図9は、当該技術において一般に時定数がどのように計算され(定義され)るかを示すプロットである。ステップデマンドがシステムに入力されると、システムは一般に、デマンドに応答するために何らかの有限時間を要する。時定数は、システムの出力が、入力によって必要とされる合計変化の~63%(すなわち1-1/e)に達するために要する時間として定義される。
【0177】
ECMは(各作業チャンバの各サイクルに関してサイクルごとに、任意選択的に互いの作業チャンバの各サイクルと無関係に決定が行われるという点で)急速に反応し得るので、ECMとともに動作する負の流量制御システムは、急速に変化するデマンドに応答して不安定になり得る。これを防ぐために、本発明は、(この例においてフィルタの形式をとる)応答ダンパを適用する。この応答ダンパは、ECMの応答時間に300msの遅延を導入する。当業者が理解するように、特定の機械の要件を満たすために任意の遅延時間が選択され得る。
【0178】
また本発明は、エンジンのストールを防ぎ、エンジンドループを防ぐために、応答ダンパを回避するオーバーライドモードも提供する。
【0179】
ECUは、トルクデマンドの変化に応答して、エンジン速度が可能な限りエンジン速度設定値に近くなるようにエンジン速度を制御する。エンジンに増加したデマンドが適用されると、エンジン速度の低下(すなわちエンジンドループ)が一般に存在し、そのようなデマンドの増加後にエンジン速度を回復させる能力は、(少なくとも)エンジン速度設定値、ECU応答時間、および燃料システムに依存する。
【0180】
動作中、ECUは、たとえばペダルの位置を測定するように構成された外部センサなどの外部センサから、あるいはCANバスによって提供された信号を介して、所望のトルクまたは速度値を示す信号を受信する。ECUは、回転速度センサからの信号を受信し、回転軸の回転速度を計算する。したがってECUは、閉ループ制御によって所望の速度デマンドを満たすために回転軸の回転速度を維持するように動作可能である。
【0181】
またECUは、クランク軸位置、燃料温度、燃料圧、および/または空気流量を示す信号を含む1または複数の受信信号に応答して、1または複数の油圧機械、インジェクタ、および/またはノズルの制御を通してエンジンの燃料噴射部品を制御し、それによって所望のトルクデマンドを満たすようにも構成される。
【0182】
エンジンが1または複数のターボチャージャ(または、たとえば過給機および/または排気ガス再循環器)を有する実施形態において、ECUは、空気流量および/または給気圧を示す1または複数の受信信号を監視し、それに応じてシリンダに供給される空気流を調整することによって、所望のトルクデマンドを満たすように構成される。
【0183】
また、ECUは、トラクション制御システム(いくつかの実施形態において、変速機シフト制御システム)を含む追加のシステムからの信号を受信し、そこへ信号を供給するように構成される。ECUは、CANバスを介して追加のシステムからの信号を受信し追加のシステムへ信号を供給し、それに応じて車両および/またはエンジンの挙動を修正してよい。
【0184】
図8Aを参照すると、エンジンドループまたはストールを防ぐために、開ループトルク制限によって産業車両(たとえば掘削機)を動作させることが知られている。そのような開ループトルク制限は、最大エンジントルク224を下回り、所与のエンジン速度に関して(任意選択的にエンジン速度設定値に関して)全ての油圧機械によってともに提供され得る最大合計トルクを表す。したがって、所与のエンジントルクに関する許容可能なエンジン速度の範囲228が存在する。たとえば、車両が、同じエンジンによって駆動される2つの油圧機械を有する場合、各油圧機械は、最大でトルク制限の45%を提供し得るように制限されてよく、その結果、両方の油圧機械からのトルクの合計が最大トルクの90%となる(すなわち、安全マージン226が提供される)。この選択は、機械の絶対トルク制限を(たとえば過剰なデマンドが入力された場合に)超えることが決してなく、車両がストールすることを防ぐために行われる。
【0185】
しかし、これは(所与のエンジン速度設定値に関して機械が最大トルク224で動作することができないため)やむを得ず非効率性をもたらす。したがって、図8Bを参照すると、本発明は、エンジン速度誤差に従ってトルク制限を調整する方法を提供する(ここでエンジン速度誤差は、上述の式1において定義される)。ここでは、瞬間的な使用可能トルク234を上回る油圧機械トルクの増加は、エンジン速度を低下させ、エンジン速度誤差240の比例した増加をもたらす。エンジン速度ガバナは、エンジン速度誤差および応答236を検出し、より多くの燃料を提供することによって使用可能エンジントルクを最大まで増加させる。その結果、エンジン速度は(エンジン速度設定値232を下回る)安定した値に到達し、エンジンは自身の最大トルクを提供する。
【0186】
動作中、負荷荷重に応答するエンジン速度の変化がエンジンドループである。ドループは一般に、パーセンテージで表され、負荷が荷重されていない(Sno load)エンジンの速度および全負荷が荷重された(Sfull load)エンジンの速度から、以下の式に従って計算され得る。
【0187】
【数1】
【0188】
本発明の1つの実施形態例において、油圧機械コントローラからECUへフィードフォワードトルクデマンドが送信され、ECUは、油圧機械が負荷をかける前に、デマンドがどの程度のエンジン負荷をエンジンに要求するかを計算する。これは、エンジンドループを回避(または少なくとも制限)するという利点を有する。
【0189】
エンジンによって供給され得る最大トルクは、エンジンによって駆動される油圧機械の最大トルクと同じである必要はない。油圧機械がエンジンよりも短い特有の応答時間を有する例において、ECMの応答時間を人為的に遅延させることが有利である。この方法では、デマンドは、エンジンに負荷がかけられる前に予想され、エンジン速度がデマンドを満たし得る点まで上昇するための時間を与え、エンジン速度がこの点まで上昇した場合のみ、エンジンに負荷がかけられる。
【0190】
当業者が理解するように、エンジンの応答時間は、現在のエンジン速度に依存する(すなわち、応答時間は一般に、エンジンが高速で動作している場合ほど短い)。
【0191】
当該技術において、ターボチャージャを有するエンジンを提供することが知られている。そのようなターボチャージャ自体が、ターボチャージャがエンジンにおけるデマンドに応答するために必要な期間である応答時間を有する。ターボチャージャの応答時間は、ターボチャージャロータユニットの慣性、吸気圧、空気流、および中間冷却器エネルギ伝達を含む要因の範囲に依存する。シリンダへの十分な空気流量率を確立するためには幾らかの時間が必要であるので、ターボチャージャの応答時間は、エンジンが高トルクを適用し得る速度への更なる制限であるため、これは重要である。ターボチャージャは当該技術において、それらの緩慢な応答が知られており、それによって生じる遅延は、「ターボラグ」と称される。エンジンのトルク応答を全体として考慮する場合、ターボチャージャの影響を考慮に入れることが重要である。しかし、いくつかのエンジンは、エンジンの応答を遅らせる他の特徴も有し得る可能性もあり、これらの特徴もまた考慮する必要がある。
【0192】
当該技術において、油圧機械(たとえば掘削機など)におけるたとえば圧力解放弁(PRV)などの減圧手段の使用がよく知られている。流体マニホールド内の圧力がPRV制限に到達すると、PRVが開放し、作動油をシステム外へ(一般に副通路を介して大気圧下のタンクへ)逃し、それによって圧力が低下する。これは、機械への損傷を防ぐ安全特徴である。
【0193】
しかし、PRVを介して逃される作動油は、その作動油がその後システム内で作用することができず、エネルギが失われるという点で、非効率性を表す。よって、本発明の実施形態において、PRV制限に到達することを防ぐことによりPRVを開放させることを防ぐためのシステムが提供される。
【0194】
これを実現するために、本発明の1つの実施形態例において、油圧機械への制御信号は、油圧機械によって出力される圧力が所定の最大圧力(たとえばPRV圧力の95%)を超えることができないように制限される。ECUは、デマンド信号(たとえばジョイスティックを介してユーザによって入力された信号)を受信し、所定の最大値に到達しないようにFを制限する。
【0195】
一般に、少なくとも1つのPRVが車両の各アクチュエータに関連する。たとえば車両が掘削機である場合、少なくとも1つのPRVが、各トラックアクチュエータ、スルーアクチュエータ、アームアクチュエータ、ブームアクチュエータなどに提供される。各アクチュエータは異なるデマンドに関連するので、各アクチュエータに関連する各PRVは、任意選択的に、異なるPRV制限を有する。また、様々な動きに関連する様々なPRV制限が存在してよい(たとえば、アームの上昇には高いPRV制限が関連付けられ、アームの下降には低いPRV制限が関連付けられ得る)。したがって、本発明の実施形態例に係る車両の各アクチュエータには、当該アクチュエータのPRV制限に対応する所定の最大圧力が提供される。また、圧力を制限する本発明の実施形態例は、アクチュエータのグループまたは複数のグループに関連するPRVを伴い、この場合、制限は1または複数のグループに関連する。そのグループのために選択された制限は、グループ内のそれぞれのアクチュエータ圧力制限の最低値を反映してよい。グループは、全てのアクチュエータを包含してよい。
【0196】
本発明の1つの実施形態例において、これは、従来のハードウェアPRVの代わりに用いられる。したがって、本発明に係る車両のいくつかの実施形態例は、より少ない数のPRV弁しか(あるいはPRV弁を全く)必要としなくてよいが、多くの実施形態例において、場合によっては安全要件を満たすために、一般にそのような弁は未だ必要とされる。これに加えて、タンクへのフィードバック制御が任意選択的に不要とされ得る。
【0197】
本発明の更なる実施形態例において、オープンセンタスプール弁の代わりにクローズドセンタスプール弁が用いられる。使用中、ユーザは(たとえばジョイスティックを用いて)コマンドを入力し、これらの入力は、変位デマンドを決定するために用いられる。これは、たとえばパイロット圧などの制御信号圧力を測定または監視することによって行われ得る。
【0198】
入力コマンドは、たとえば複数の様々なアクチュエータを同時に作動させるために、複数の様々な変位デマンドに同時に応答し得るので、ECUは、ユーザの入力コマンドに基づいて変位デマンドの予想和を計算する。1つの実施形態例において、スプール弁は、変位コマンドに比例して開放するように油圧ジョイスティックを介して制御される(これは、電子制御を必要としない)。代替実施形態例において、ECUは、変位デマンドに比例してスプール弁を開放させるために比例電磁弁を用いる。
【0199】
1つの実施形態において、スプール弁はオープンセンタを有さず、これは、フィードバック制御の開ループ方法を表す(すなわち、オープンセンタスプール弁が提供される場合と同様、フィードバックを提供することによって任意の誤差を補正する、中央開ポートの両側における圧力測定がない)。したがって、代わりに制御信号が測定される。この制御信号は、パイロット圧の形式をとってよく、スプール弁の開ポートにおける圧力の測定の形式であり、スプールがどの程度開くかを決定するために用いられる(スプール弁の両側における圧力が測定され、ポートの開度を決定するためにルックアップテーブルが参照される)。圧力および開度は情報を提供し、それを用いて、ECUは、流量および流量によって生じる圧力の予想降下を決定する。
【0200】
これにより、比例スプール弁に関連する非効率性が回避される。
コントローラは、デマンド信号を受信し、一連の離散値を決定するように構成され、ここで離散値は、1または複数の作業チャンバによる流体の変位、すなわち作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンを表す。図18は、一連の離散値の例の結果としての出力(したがって、作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターン例)のプロットである。経時的に、作業チャンバ体積の合計出力は、油圧機械(すなわちF)がデマンド信号に応答してデマンドを満たすように平均される。
【0201】
ユーザは、エンジンの最大可能変位出力の100%未満である何らかの変位デマンドをもたらすコマンドを(たとえばジョイスティックを介して)入力してよい。たとえばデマンドは、最大可能変位出力の88.9%の変位を求めてよく、エンジンは、そのデマンドを満たすための12のシリンダを有してよい。そのようなデマンドは、各個々の作業チャンバにアクティブまたはインアクティブサイクルを経させる、作業チャンバのアクティブ化のパターンによって満たされる。この例において、パターンは、111111110111111110111111110などである(1は作業チャンバによって実行されるアクティブサイクルを表し、0は作業チャンバによって実行されるインアクティブサイクルを表す)。
【0202】
回転軸の回転速度が1200rpmである時にそのようなアクティブおよびインアクティブサイクルのパターンが実行される場合、これは、240の決定(すなわち、個々の作業チャンバに関するアクティブサイクルまたはインアクティブサイクルの選択)が毎秒実行されることを意味し、上記例において、37.5msごとにインアクティブサイクル(パターン内の「0」)が存在する。よってこれは、26.6Hzの振動をもたらす。
【0203】
よって、一連の離散値(および/または作業チャンバ体積のアクティブおよびインアクティブサイクルのパターン)は、非線形関数として表され得る。任意選択的に、一連の離散値は、複数の所定の一連の離散値を参照して、またはデータベースから決定されてよく、あるいはコントローラが1または複数の計算を実行することによって、一連の離散値を決定してよい。当業者が理解するように、非線形関数は単純に伝達関数および/またはローパスフィルタではない。
【0204】
このように生じた低周波振動は、機械の部品(または車両)への損傷を招き、ユーザに不便をもたらし得る。これを防ぐために、本発明は、低周波振動をフィルタするために、振動期間を有する移動平均フィルタを適用する。移動平均フィルタの期間を、振動を起こさせる決定パターンの期間と等しくなるように設定する(上記例において、期間は37.5msとなる)ことにより、低周波振動は完全に減衰される(高調波の振動となる)。アクティブおよびインアクティブサイクルのパターンの期間が変更された場合、あるいは回転軸の回転速度が変更された場合、それに依存して移動平均フィルタの期間も変更される。
【0205】
個々の作業チャンバの作動による寄与は、脈動性の圧力リップルをもたらす。これは、車両、油圧機械、運転台などにおける振動を招く。これらの振動は一般に比較的低い振幅で開始するが、特に、振動の周波数が車両(または車両の一部)の共振周波数(付近)である場合、振動の振幅は経時的に増加し得る。これらの振動は、振幅が所定の最大振幅を超えるまで増加すると、損傷の原因となり得る。
【0206】
また、圧力の変化は、決定(たとえばFdを変更する決定など)が行われることを可能にするために用いられるので、脈動性の圧力リップルによって生じる圧力の小さな変化は、現実の意図的な圧力変化として誤解釈されることがあり、それによって決定が誤って行われることになり得る。低振幅リップル除去フィルタは、これを防止する。
【0207】
低振幅リップル除去フィルタは、(伝達関数またはローパスフィルタではなく)非線形関数である。これらは、より高次のシステムにおいてリップルを抑制する2つの方法、すなわち共通目的である。
【0208】
油圧機械のトルクを制御するために、油圧機械出口における圧力を知ることが必要である。可変変位油圧機械によって生じる油圧機械トルクは、油圧機械変位と油圧機械出口圧との関数である。出口において、個々のシリンダ作動からの寄与による固有の脈動性圧力リップルが存在する。フィルタしていない圧力の使用は、油圧機械トルクにおける急速な減少または増加をもたらしてよく、これは、エンジン安定性および油圧機械の生産性の最大化に有利である。しかし、圧力リップルにより、トルク制御のためにフィルタしていない圧力を用いることは、不安定な変位をもたらす。この圧力リップルをトルク計算から除去するために、重度に平均またはフィルタされた圧力を用いてよいが、それによって遅れのあるトルク応答(不所望の遅延)が生じる。
【0209】
したがって、トルク制御のための圧力の理想的なフィルタは、低振幅圧力リップルを除去するが、高振幅圧力変化を受け入れる。したがって、低振幅リップル除去フィルタは、フィルタの過去の出力値を保持し、この保持された値と新たな入力圧とを比較する。新たな圧力と保持された圧力値との差が除去帯域(「不動帯」)内である場合、出力圧は一定に保たれ、修正されない。新たな圧力が除去帯域外にある場合、出力圧はこの新たな値に修正される。したがって、圧力リップルが油圧機械トルク制御に影響を及ぼすことはないが、圧力における(リップルではない)大きな変化は考慮される。不動帯の範囲は、たとえば20バールの圧力脈動など、特定の範囲の圧力脈動の予想に基づいて設定される。不動帯は一般に、それが適合される特定の油圧システムに関して調整および設定される。ただし、油圧システムのコンプライアンス/剛性が変化した場合(たとえば蓄電池が提供された場合)、不動帯は変化してよい。
【0210】
油圧機械コントローラはトルク制限を適用し、油圧機械トルク制限はエンジンのトルク制限より上である。トルク制限は、現在のエンジン速度に依存する。したがってエンジンコントローラは、現在のエンジン速度の測定値を受信し、トルク速度曲線を含むルックアップテーブル(たとえばデータベースに格納されたルックアップテーブル)を参照して、対応するエンジントルク制限を決定する。
【0211】
また、全てのエンジン速度において、エンジンが適用し得る最大トルクは、油圧機械によって適用され得る最大トルクよりも低くなる。その結果、油圧機械にトルク制限が適用される。
【0212】
たとえば、デマンド信号は、変位、流量、圧力、動力またはトルクデマンドに関連するパラメータを含む信号であってよい。これらのパラメータは、他のパラメータに依存して制限される。図11Aを参照すると、1つの例において、変位は、圧力308の範囲にわたり最大流量310からゼロ変位まで低減されてよく、その結果、圧力デマンド302および流量デマンド304に依存する動力デマンド306における制限を表す非線形関数が生じる。図11Bを参照すると、更なる例において、トルクデマンド314は、同様の方法で制限されてよく、最大トルクは、特定の値の圧力308および変位312に関して適用され得るが、変位圧力デマンド302および変位デマンド316に依存して圧力範囲にわたりゼロトルクまで低減され得る。
【0213】
図12は、最小速度デマンド322および最大速度デマンド320を参照する、エンジン速度326およびトルク324の関数として動力デマンド関数306の例を示すプロットである。油圧機械コントローラは、エンジン速度の関数としてトルク制限を適用する。低速度において、油圧機械コントローラは、エンジンストールを防ぐためにトルク制限を低減する。逆に、高速度において、油圧機械コントローラは、油圧機械への損傷を防ぐためにトルク制限を増加させる。
【0214】
例において、トルク制限は、エンジンの使用可能トルクと一致するように速度の関数として設定され得る。図13は、使用可能なエンジン速度330に従って決定されたトルクを表すトルク関数および使用可能な油圧機械速度328に従って決定されたトルク関数であるトルク関数の例のプロットであり、トルク324は、両方のエンジン速度326の関数として最小速度デマンド322および最大速度デマンド320を参照して作図される。低速度において、油圧機械のトルクは、エンジンストールを防ぐために制限される。逆に、高速度において、油圧機械のトルクは、内部損傷を防ぐために制限される。
【0215】
代替例において、高速度において、油圧機械トルクは、油圧機械における負荷が使用可能エンジントルクに対応するまでエンジン速度を低下させるために(曲線328で示すように)増加され得る。これは、エンジン速度が低下するまで短期間にわたり行われる。
【0216】
図14は、既知のようにエンジンドループ350を有するトルクの変化を示す、エンジン速度348の関数としてエンジントルク342を示すプロットである。エンジンガバナがエンジン速度設定値346を適用する本発明の例において、エンジンにおける合計負荷は、エンジンドループを測定することによって決定される。油圧機械トルクは、エンジントルク制限を超えないように、測定されたドループに応じて制限される。最大エンジン速度352の関数である定常トルクは、最大油圧機械速度344の関数であるトルクを辿る。
【0217】
図15は、本発明の実施形態例の結果として変化するエンジンドループ350を有するトルクの変化を示す、エンジン速度348の関数としてエンジントルク342を示すプロットである。最大エンジン速度352の関数である定常トルクは、エンジン速度354の関数である瞬時トルクと比較され得る。油圧機械コントローラは、エンジンの定常トルク性能よりも低い瞬時トルク制限を適用してよい。ターボチャージャは何らかの慣性を有し、エンジンが自身の出力トルクを増加させるために要する時間を増加させるので、これは、エンジンがターボチャージャを有する場合に有利である。
【0218】
図16は、定常トルク制限364、瞬時トルク制限366、およびスルーレート制限368へのトルク応答の例を示す、時間360の関数としてトルク362を示すプロットである。
【0219】
図17Aおよび図17Bは、所定のトルクスルー制限368を超えない油圧機械の第1および第2の出口に関連するトルク応答を示す、時間360の関数としてトルク362を示すプロットである。370は、油圧機械の第1の出口に関連する実際のトルクであり、372は、油圧機械の第2の出口に関連する実際のトルクである。374は、油圧機械の第1の出口に関連するトルクデマンドである。376は、第1の出口に関連するトルクの保証値である。当該技術において理解されるように、これらの出口は、油圧機械(の1または複数の作業チャンバ)と単純に流体接続され、機械がポンピングモードで動作する時に出口として機能し、油圧機械がモータリングモードで動作する時に入口として機能する。例において、第2のアクチュエータのトルクデマンドは、第1のアクチュエータの方がより重要度が高いために制限および低く優先順位付けされてよく、よって合計トルクは、第2のアクチュエータよりも第1のアクチュエータがより多くのトルクを使用可能であるように分割される。
【0220】
図18は、連続的なデマンド信号380がどのように離散ステップに量子化382されるかの例を示すプロットである。量子化ステップはデマンド(たとえば変位)の量において等間隔であってよいが、必ずしもそうではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18