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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240115BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/18
B41J2/14 607
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019181239
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021054008
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】永井 正隆
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544678(JP,A)
【文献】特開2019-147312(JP,A)
【文献】特開2009-137126(JP,A)
【文献】特開2015-229268(JP,A)
【文献】特開2008-018675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0091989(US,A1)
【文献】特開2004-042399(JP,A)
【文献】特開2009-073183(JP,A)
【文献】特開2017-124610(JP,A)
【文献】特開2015-077753(JP,A)
【文献】特表2014-531349(JP,A)
【文献】特開平01-067351(JP,A)
【文献】特開2012-045776(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104417069(CN,A)
【文献】国際公開第2017/170258(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×HpHdの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記循環エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する凸部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hp<Hdの関係を満たし、
前記基板は前記液体循環流路に面する凹部を有し、且つ前記吐出エネルギー発生素子は前記凹部に設けられていること、又は、前記基板は前記液体循環流路に面する凸部を有し、且つ前記循環エネルギー発生素子は前記凸部に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hp<Hdの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記吐出エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する第1の凹部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する第2の凹部を有し、前記吐出エネルギー発生素子は前記第2の凹部に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hp<Hdの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記循環エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する第1の凸部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する第2の凸部を有し、前記循環エネルギー発生素子は前記第2の凸部に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hp<Hdの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記吐出エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する凸部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する凹部を有し、前記吐出エネルギー発生素子は前記凹部に設けられ、前記凹部の深さは前記凸部の高さより大きいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記吐出口形成部材は、前記吐出エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する凹部を有する、請求項1又は4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記凹部の前記液体循環流路に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状である、請求項2、5、6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記凸部の片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状である、請求項1、2、5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×HdHpの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記循環エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する凹部を有すること、又は、前記吐出口形成部材は、前記吐出エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する凸部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hd<Hpの関係を満たし、
前記基板は前記液体循環流路に面する凹部を有し、前記循環エネルギー発生素子は前記凹部に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hd<Hpの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記循環エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する第1の凹部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する第2の凹部を有し、前記循環エネルギー発生素子は前記第2の凹部に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hd<Hpの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記吐出エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する第1の凸部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する第2の凸部を有し、前記吐出エネルギー発生素子は前記第2の凸部に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項13】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hd<Hpの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記循環エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する第1の凹部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する第2の凹部を有し、前記循環エネルギー発生素子は前記第2の凹部に設けられ、前記吐出口形成部材は、前記吐出エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する第1の凸部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する第2の凸部を有し、前記吐出エネルギー発生素子は前記第2の凸部に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項14】
液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、
液体が流通する液体流通流路と、
前記吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、前記液体循環流路は前記吐出口と対向する発泡室を備え、前記液体循環流路は前記液体流通流路から分岐し前記発泡室を通って前記液体流通流路に合流する基板と、
前記基板に前記発泡室と対向して設けられ、前記液体が前記吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、
前記基板に前記発泡室と異なる位置で前記液体循環流路と対向して設けられ、前記液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有し、
前記吐出エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hdと、前記循環エネルギー発生素子と前記吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×Hd<Hpの関係を満たし、
前記吐出口形成部材は、前記循環エネルギー発生素子と対向する位置に、前記液体循環流路に面する凸部を有し、前記基板は前記液体循環流路に面する凹部を有し、前記循環エネルギー発生素子は前記凹部に設けられ、前記凹部の深さは前記凸部の高さより大きいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記基板は前記液体循環流路に面する凸部を有し、前記吐出エネルギー発生素子は前記凸部に設けられている、請求項10又は11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
前記凹部の前記液体循環流路に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状である、請求項9、10、14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項17】
前記凸部の片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状である、請求項9又は14に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置には家庭用やビジネス用など、様々な用途に応じた製品があり、その用途によって重視される性能の優先順位は異なる。ビジネス用を主用途として提供される液体吐出装置の場合、印字速度や印字物の精細さに加え耐久性が重視される。耐久性が高いとは、長時間、もしくは長期間に渡って使用を続けても性能が大きく変わらないことを意味する。長期間に渡る安定的な印字が妨げられる要因の一つとして、吐出口近傍の液体の増粘が挙げられる。増粘した液体は液体の適切な吐出を妨げる可能性がある。特許文献1には、発熱抵抗素子で構成される補助マイクロバブルポンプを備えた液体吐出ヘッドが開示されている。マイクロバブルポンプは、増粘していないフレッシュな液体を液体循環流路に供給し、液体の増粘を抑制する循環エネルギー発生素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9090084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された液体吐出ヘッドでは、循環エネルギー発生素子を長期間駆動することが必要である。これによって、液体吐出ヘッドの信頼性が低下する可能性がある。
本発明は、液体循環流路に液体を循環させる循環エネルギー発生素子を備え、長期間駆動しても、高い信頼性を有する液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出する吐出口を有する吐出口形成部材と、液体が流通する液体流通流路と、吐出口形成部材との間に液体が循環する液体循環流路を形成し、液体循環流路は吐出口と対向する発泡室を備え、液体循環流路は液体流通流路から分岐し発泡室を通って液体流通流路に合流する基板と、基板に発泡室と対向して設けられ、液体が吐出口から吐出するためのエネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子と、基板に発泡室と異なる位置で液体循環流路と対向して設けられ、液体循環流路の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる循環エネルギー発生素子と、を有している。吐出エネルギー発生素子と吐出口形成部材との間隔Hdと、循環エネルギー発生素子と吐出口形成部材との間隔Hpは、1.1×HpHdの関係を満たす。吐出口形成部材は、循環エネルギー発生素子と対向する位置に、液体循環流路に面する凸部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体循環流路に液体を循環させる循環エネルギー発生素子を備え、長期間駆動しても、高い信頼性を有する液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図2】第2の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図3】第3の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図4】第4の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図5】第5~8の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図6】第9の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図7】第10の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図8】第11の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図9】第12の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図10】第13~15の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図11】第16の実施形態に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
図12】比較例に係る液体吐出ヘッドの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。各実施形態における構成要素の相対配置、形状等は例示であり、本発明をこれらの実施形態に限定するものではない。以下の実施形態はインクを吐出するインクジェットヘッドを対象とするが、吐出される液体はインクに限定されない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示しており、図1(a)は液体吐出ヘッドの平面図、図1(b)は図1(a)のA-A線に沿った断面図、図1(c)は図1(a)のB-B線に沿った断面図である。液体吐出ヘッド1は、液体が流通する液体流通流路5を備えた基板6と、液体を吐出する吐出口3を備えた平板状の吐出口形成部材7と、吐出口形成部材7と基板6との間に位置する流路壁9と、を有している。基板6はSiからなり、吐出口形成部材7と流路壁9は感光性樹脂からなる。液体流通流路5は基板6に設けられた開口である。基板6と吐出口形成部材7との間には液体循環流路10が形成されている。液体循環流路10は吐出口形成部材7と流路壁9と基板6とによって画定されている。液体循環流路10は吐出口3と対向する発泡室8を備えている。液体循環流路10は液体流通流路5から分岐し、略U字状の経路を辿り、発泡室8を通って液体流通流路5に合流する。
【0010】
基板6には、吐出エネルギー発生素子2が形成されている。吐出エネルギー発生素子2は発泡室8と対向して、すなわち発泡室8を介して吐出口3と対向して設けられている。吐出エネルギー発生素子2はヒーター(発熱抵抗素子)で形成され、液体が吐出口3から吐出するためのエネルギーを発生させる。吐出エネルギー発生素子2を配置するため、発泡室8の流路幅は液体循環流路10の他の部位の流路幅より大きい。この結果、流路壁9の厚さは発泡室8に隣接する部位で減少している。換言すれば、流路壁9は発泡室8に隣接する部位に切欠きを有している。液体流通流路5から液体循環流路10に流入した液体は吐出エネルギー発生素子2で加熱され、吐出エネルギーを付与されて吐出口3から吐出する。吐出口3から吐出しなかった液体は、液体循環流路10を流通し、液体流通流路5に戻される。このようにして、液体循環流路10は液体が循環する流路を形成する。
【0011】
基板6にはさらに、循環エネルギー発生素子4が形成されている。循環エネルギー発生素子4は、発泡室8と異なる位置、本実施形態では液体の循環方向に関し吐出エネルギー発生素子2の上流側に、液体循環流路10と対向して設けられている。図示は省略するが、循環エネルギー発生素子4は、吐出エネルギー発生素子2の下流側に、液体循環流路10と対向して設けられてもよい。循環エネルギー発生素子4はヒーター(発熱抵抗素子)で形成され、吐出エネルギー発生素子2が駆動されていないときも液体循環流路10の液体を循環させるためのエネルギーを発生させる。循環エネルギー発生素子4が発生するエネルギーは吐出エネルギー発生素子2が発生するエネルギーより小さいため、循環エネルギー発生素子4の平面寸法は、吐出エネルギー発生素子2の平面寸法より小さい。このため、循環エネルギー発生素子4の配置される部位で、液体循環流路10は拡幅されていない。循環エネルギー発生素子4の発生するエネルギーによって、液体は液体循環流路10を矢印Fで示す一定の方向に循環する。このため、液体が吐出口3から長期間吐出されないときも、液体循環流路10内の液体の増粘を抑制することができる。
【0012】
以下の説明で、吐出エネルギー発生素子2から吐出口形成部材7までの吐出口形成部材7と直交する方向の間隔(長さ)をHd、循環エネルギー発生素子4から吐出口形成部材7までの吐出口形成部材7と直交する方向の間隔(長さ)をHpとする。吐出エネルギー発生素子2と循環エネルギー発生素子4は耐キャビテーション膜で覆われることがあるが、耐キャビテーション膜の膜厚は間隔Hd、間隔Hpに対して非常に薄く、無視できる。このため、耐キャビテーション膜は図示していない。Hdを吐出エネルギー発生素子2と対向する液体循環流路10の壁面から吐出口形成部材7までの間隔(長さ)、Hpを循環エネルギー発生素子4と対向する液体循環流路10の壁面から吐出口形成部材7までの間隔(長さ)と定義してもよい。このように定義されたHdとHpは、上記の通り定義されたHdとHpと実質的に差異はない。
【0013】
ここで、比較例の液体吐出ヘッド1について説明する。図12は、比較例に係る液体吐出ヘッド101の構成を示しており、図12(a)~12(c)は図1(a)~1(c)に対応している。比較例の液体吐出ヘッド101では、HdとHpは実質的に等しい。すなわち、吐出エネルギー発生素子2と循環エネルギー発生素子4は基板6の同一レベルに形成され、吐出口形成部材7の液体循環流路10と対向する壁面はフラットである。この点を除き、比較例の液体吐出ヘッド101は本実施形態の液体吐出ヘッド1と同一である。
【0014】
これに対して、本実施形態では、HdとHpはHd>1.1×Hpの関係を満たしている。HdとHpの差を10%超とすることで、製造時のバラつきが生じても本発明の所望の効果を得ることができる。1.1×Hpの関係を満たすため、吐出口形成部材7は、吐出エネルギー発生素子2(発泡室8)と対向する位置に、液体循環流路10に面する凹部11を有している。すなわち、吐出口形成部材7は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて吐出口3及び吐出エネルギー発生素子2と同心の矩形領域がその周囲と比べて薄くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凹部11は吐出エネルギー発生素子2を全体的に覆っていることが好ましい。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)発泡室8の流路断面を高さ方向に調整可能であるため、設計自由度を向上させることができる。特に本実施形態では、発泡室8の高さが比較例よりも増加するため、流路壁9を薄くすることなく発泡室8の流路断面積を大きくすることができる。このため、長期間使用時の流路壁9の基板6からの剥離を抑制することができる。また、流路壁9を厚くすることによって、流路壁9の基板6からの剥離を一層抑制することができる。
(2)吐出口3の流路長さが低減しているため、吐出効率が向上し、液体を吐出口3から吐出するのに必要なエネルギーが小さくて済む。比較例よりも吐出エネルギー発生素子2を小さくすることができるため、吐出エネルギー発生素子2の発熱量が低減する。吐出エネルギー発生素子2の周辺の発熱を抑えることができるため、蓄熱による印字品位の低下を抑制することができる。
【0015】
本実施形態の液体吐出ヘッド1の製造方法を実施例に即して説明する。まず、吐出エネルギー発生素子2と循環エネルギー発生素子4とが予め形成されたSiの基板6を用意した。次に、基板6の表面に、流路壁9となる第1のネガ型感光性材料(膜厚15μm)を、一般的なスピンコーターやラミネーターを用いて成膜した。その後、一般的な露光装置を用いて第1のネガ型感光性材料を露光し(露光量10000J/m2)、流路壁9のパターンを形成した。次に、第1のネガ型感光性材料の上に吐出口形成部材7の下層となる第2のネガ型感光性材料(膜厚3μm)を、一般的なスピンコーターやラミネーターを用いて成膜した。その後、一般的な露光装置を用いて第2のネガ型感光性材料を露光し(露光量5000J/m2)、凹部11のパターンを形成した。次に、第2のネガ型感光性材料の上に吐出口形成部材7の上層となる第3のネガ型感光性材料(膜厚3μm)を、一般的なスピンコーターやラミネーターを用いて成膜した。その後、一般的な露光装置を用いて第3のネガ型感光性材料を露光し(露光量1000J/m2)、吐出口3のパターンを形成した。次に、露光した第1~第3のネガ型感光性材料を一括現像し、吐出口形成部材7に凹部11が形成された液体吐出ヘッド1を得た。第1~第3の感光性材料は同一の材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。第1~第3の感光性材料の現像は感光性材料毎に行ってもよい。
【0016】
図1(d)は本実施形態の変形例を示す図1(c)と同様の図である。凹部11の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされている。液体をよりスムーズに循環させることができるため、液体の淀みによる泡の発生を低減することができる。
【0017】
次に、他の実施形態について説明する。第2~第8の実施形態(図2~5)はHdとHpがHd>1.1×Hpの関係を満たす実施形態であり、第9~第16の実施形態(図6~11)はHdとHpが1.1×Hd<Hpの関係を満たす実施形態である。
【0018】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図2(a)~2(c)は図1(a)~1(c)に対応している。吐出口形成部材7は、循環エネルギー発生素子4と対向する位置に、液体循環流路10に面する凸部12を有している。すなわち、吐出口形成部材7は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて循環エネルギー発生素子4と同心の矩形領域がその周囲と比べて厚くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凸部12は循環エネルギー発生素子4を全体的に覆っていることが好ましい。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)循環エネルギー発生素子4の周辺の液体循環流路10の幅を変えることなく、液体循環流路10の流路断面積を小さくすることができるため、小さなエネルギーで液体の循環を行うことができる。このため、比較例よりも循環エネルギー発生素子4を小さくすることができ、発生した気泡による流路壁9への衝撃力が緩和される。循環エネルギー発生素子4の周辺の発熱を抑えることができるため、蓄熱による印字品位低下を抑制することもできる。
図2(d)は本実施形態の変形例を示す図2(c)と同様の図である。凸部12の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされている。液体をよりスムーズに循環させることができるため、液体の淀みによる泡の発生を低減することができる。
【0019】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図3(a)~3(c)は図1(a)~1(c)に対応している。基板6は液体循環流路10(発泡室8)に面する凹部13を有し、吐出エネルギー発生素子2は凹部13の底面に設けられている。すなわち、基板6は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて吐出口3及び吐出エネルギー発生素子2と同心の矩形領域がその周囲と比べて薄くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凹部13は吐出エネルギー発生素子2を内包していることが好ましい。凹部13は、例えば基板6のドライエッチングによって形成することができる。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)第1の実施形態の(1)と同様の効果
(2)比較例と比べて吐出エネルギー発生素子2と循環エネルギー発生素子4の直線距離を離すことができる。このため、循環エネルギー発生素子4の長期連続使用時にも、基板6の吐出エネルギー発生素子2の近傍での蓄熱が生じにくくなる。これにより、吐出エネルギー発生素子2と循環エネルギー発生素子4のオン・オフによる熱のコントラストが付きやすくなり、印字品質の向上が可能となる。
図3(d)は本実施形態の変形例を示す図3(c)と同様の図である。凹部13の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第1の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
【0020】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図4(a)~4(c)は図1(a)~1(c)に対応している。基板6は液体循環流路10に面する凸部14を有し、循環エネルギー発生素子4は凸部14に設けられている。すなわち、基板6は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて循環エネルギー発生素子4と同心の矩形領域がその周囲と比べて厚くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凸部14は循環エネルギー発生素子4を内包していることが好ましい。凸部14は例えば基板6へのスパッタリングによって形成することができる。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)第2の実施形態の(1)と同様の効果
(2)第3の実施形態の(2)と同様の効果
図4(d)は本実施形態の変形例を示す図4(c)と同様の図である。凸部14の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第2の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。さらに、破線で示すように、端部領域のテーパー形状をより緩やかにすることで、液体をよりスムーズに循環させることができる。この際、発泡室8側のテーパー角θ1を液体流通流路5側のテーパー角θ2より小さくすることで液体をさらにスムーズに循環させることができる。
【0021】
(第5の実施形態)
図5(a)は、第5の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す図1(b)と同様の図である。吐出口形成部材7は、吐出エネルギー発生素子2(発泡室8)と対向する位置に、液体循環流路10に面する第1の凹部11を有している。基板6は液体循環流路10(発泡室8)に面する第2の凹部13を有し、吐出エネルギー発生素子2は第2の凹部13に設けられている。本実施形態は第1の実施形態と第3の実施形態を組み合わせたものであるため、これらの実施形態の効果が同時に得られる。
【0022】
(第6の実施形態)
図5(b)は、第6の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す図1(b)と同様の図である。吐出口形成部材7は、循環エネルギー発生素子4と対向する位置に、液体循環流路10に面する第1の凸部12を有している。基板6は液体循環流路10に面する第2の凸部14を有し、循環エネルギー発生素子4は第2の凸部14に設けられている。本実施形態は第2の実施形態と第4の実施形態を組み合わせたものであるため、これらの実施形態の効果が同時に得られる。
【0023】
(第7の実施形態)
図5(c)は、第7の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す図1(b)と同様の図である。吐出口形成部材7は、吐出エネルギー発生素子2(発泡室8)と対向する位置に、液体循環流路10に面する第1の凹部11を有している。基板6は液体循環流路10(発泡室8)に面する第2の凹部13を有し、吐出エネルギー発生素子2は第2の凹部13に設けられている。吐出口形成部材7は、循環エネルギー発生素子4と対向する位置に、液体循環流路10に面する第1の凸部12を有している。基板6は液体循環流路10に面する第2の凸部14を有し、循環エネルギー発生素子4は第2の凸部14に設けられている。本実施形態ではHpに対してHdが最大となる。本実施形態は第1~第4の実施形態を組み合わせたものであるため、これらの実施形態の効果が同時に得られる。
【0024】
(第8の実施形態)
図5(d)は、第8の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す図1(b)と同様の図である。吐出口形成部材7は、吐出エネルギー発生素子2(発泡室8)と対向する位置に、液体循環流路10に面する凸部15を有している。基板6は液体循環流路10(発泡室8)に面する凹部13を有し、吐出エネルギー発生素子2は凹部13に設けられている。凹部13の深さは凸部15の高さ(突出し長さ)より大きい。比較例と比べて発泡室8が全体的に基板6側に移動している。このため、発泡室8の流路断面積を比較例から大幅に変更することなく、第1の実施形態の(1)及び第3の実施形態の(2)と同様の効果が得られる。
【0025】
(第9の実施形態)
図6は、第9の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図6(a)~8(c)は図1(a)~1(c)に対応している。吐出口形成部材7は、循環エネルギー発生素子4と対向する位置に、液体循環流路10に面する凹部16を有する。すなわち、吐出口形成部材7は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて循環エネルギー発生素子4と同心の矩形領域がその周囲と比べて薄くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凹部16は循環エネルギー発生素子4を全体的に覆っていることが好ましい。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)循環エネルギー発生素子4と吐出口形成部材7との距離が増加するため、発生した気泡による吐出口形成部材7への衝撃力が緩和される。吐出口形成部材7へのダメージが抑えられ、吐出口形成部材7の耐久性を向上させることができる。
図6(d)は本実施形態の変形例を示す図6(c)と同様の図である。凹部16の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第1の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
【0026】
(第10の実施形態)
図7は、第10の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図7(a)~7(c)は図1(a)~1(c)に対応している。吐出口形成部材7は、吐出エネルギー発生素子2(発泡室8)と対向する位置に、液体循環流路10に面する凸部15を有する。すなわち、吐出口形成部材7は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて吐出口3及び吐出エネルギー発生素子2と同心の矩形領域がその周囲と比べて厚くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凸部15は循環エネルギー発生素子4を全体的に覆っていることが好ましい。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)発泡室8の流路断面を高さ方向に調整可能であるため、設計自由度を向上させることができる。特に本実施形態では、発泡室8の高さが比較例よりも減少するため、吐出エネルギー発生素子2の幅による制約を受けることなく発泡室8の流路断面積を小さくすることができる。液体循環流路10の発泡室8と発泡室8以外の部分の流路断面積の差を小さくすることができるため、液体循環流路10を循環する液体の淀みを抑制することができる。
図7(d)は本実施形態の変形例を示す図7(c)と同様の図である。凸部15の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第1の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
【0027】
(第11の実施形態)
図8は、第11の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図8(a)~8(c)は図1(a)~1(c)に対応している。基板6は液体循環流路10に面する凹部18を有し、循環エネルギー発生素子4は凹部18に設けられている。すなわち、基板6は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて循環エネルギー発生素子4と同心の矩形領域がその周囲と比べて薄くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凹部18は循環エネルギー発生素子4を内包していることが好ましい。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)第9の実施形態の(1)と同様の効果
(2)第3の実施形態の(2)と同様の効果
図8(d)は本実施形態の変形例を示す図8(c)と同様の図である。凹部18の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第2の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
【0028】
(第12の実施形態)
図9は、第12の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図9(a)~9(c)は図1(a)~1(c)に対応している。基板6は液体循環流路10(発泡室8)に面する凸部17を有し、吐出エネルギー発生素子2は凸部17に設けられている。すなわち、基板6は、吐出口形成部材7と直交する方向からみて吐出口3及び吐出エネルギー発生素子2と同心の矩形領域がその周囲と比べて厚くされている。吐出口形成部材7と直交する方向からみて、凸部17は循環エネルギー発生素子4を内包していることが好ましい。本実施形態では以下の効果が得られる。
(1)第10の実施形態の(1)と同様の効果
(2)第3の実施形態の(2)と同様の効果
図9(d)は本実施形態の変形例を示す図9(c)と同様の図である。凸部17の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第2の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
【0029】
(第13の実施形態)
図10(a)は第13の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す図1(b)と同様の図である。吐出口形成部材7は、循環エネルギー発生素子4と対向する位置に、液体循環流路10に面する第1の凹部16を有している。基板6は液体循環流路10に面する第2の凹部18を有し、循環エネルギー発生素子4は第2の凹部18に設けられている。本実施形態は第9の実施形態と第11の実施形態を組み合わせたものであるため、これらの実施形態の効果が同時に得られる。
【0030】
(第14の実施形態)
図10(b)は第14の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す図1(b)と同様の図である。吐出口形成部材7は、吐出エネルギー発生素子2(発泡室8)と対向する位置に、液体循環流路10(発泡室8)に面する第1の凸部15を有している。基板6は液体循環流路10に面する第2の凸部17を有し、吐出エネルギー発生素子2は第2の凸部17に設けられている。本実施形態は第8の実施形態と第10の実施形態を組み合わせたものであるため、これらの実施形態の効果が同時に得られる。
【0031】
(第15の実施形態)
図10(c)は第15の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示す図1(b)と同様の図である。吐出口形成部材7は、循環エネルギー発生素子4と対向する位置に、液体循環流路10に面する第1の凹部16を有している。基板6は液体循環流路10に面する第2の凹部18を有し、循環エネルギー発生素子4は第2の凹部18に設けられている。吐出口形成部材7は、吐出エネルギー発生素子2(発泡室8)と対向する位置に、液体循環流路10に面する第1の凸部15を有している。基板6は液体循環流路10(発泡室8)に面する第2の凸部17を有し、吐出エネルギー発生素子2は第2の凸部17に設けられている。本実施形態ではHpに対してHdが最小となる。本実施形態は第~第12の実施形態を組み合わせたものであるため、これらの実施形態の効果が同時に得られる。
【0032】
(第16の実施形態)
図11は、第16の実施形態に係る液体吐出ヘッド1の構成を示しており、図11(a)~11(c)は図1(a)~1(c)に対応している。吐出口形成部材7は、循環エネルギー発生素子4と対向する位置に、液体循環流路10に面する凸部12を有している。基板6は液体循環流路10に面する凹部18を有し、循環エネルギー発生素子4は凹部18に設けられている。凹部18の深さは凸部12の高さより大きい。比較例と比べて液体循環流路10の循環エネルギー発生素子4のある部位が全体的に基板6側に移動している。このため、液体循環流路10の循環エネルギー発生素子4が設けられた部位の流路断面積を比較例から大幅に変更することなく、第9の実施形態の(1)及び第3の実施形態の(2)と同様の効果が得られる。
図11(d)は本実施形態の変形例を示す図11(c)と同様の図である。凸部12の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第1の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。また、凹部18の液体循環流路10に沿った片側もしくは両側の端部領域はテーパー形状とされているため、第2の実施形態の変形例と同様の効果が得られる。凹部18は液体流通流路5まで連続的に形成されているため、より多くの液体を液体循環流路10に取り込むことができる。
【0033】
以上、本発明をいくつかの実施形態によって説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されない。吐出エネルギー発生素子2と対向する基板6及び吐出口形成部材7、循環エネルギー発生素子4と対向する基板6及び吐出口形成部材7について、それぞれ比較例に対して持ち上げる場合、比較例と同じレベル、比較例より下げる場合の3パターンがあり得る。これらは任意に組み合わせることが可能であり、Hd>1.1×Hpまたは1.1×Hd<Hpの関係を満たす限り、これらのいずれの組み合わせも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 液体吐出ヘッド
2 吐出エネルギー発生素子
3 吐出口
4 循環エネルギー発生素子
5 液体流通流路
6 基板
7 吐出口形成部材
8 発泡室
10 液体循環流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12