(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】レーダシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/46 20060101AFI20240115BHJP
G01S 13/66 20060101ALI20240115BHJP
F41H 11/02 20060101ALI20240115BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G01S13/46
G01S13/66
F41H11/02
B63C11/00 A
B63C11/00 B
(21)【出願番号】P 2019199316
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 正一郎
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-354192(JP,A)
【文献】特開2001-208821(JP,A)
【文献】特開2001-264407(JP,A)
【文献】特開平05-034447(JP,A)
【文献】特開2018-90017(JP,A)
【文献】特開2002-181925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-G01S 7/51
G01S 13/00-G01S 13/95
G01S 17/00-G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星から送信される送信信号を受信する通信アンテナと、
観測空間に指向方向を向けて信号を受信するアレイアンテナと、
前記アレイアンテナで受信された前記信号に含まれる前記送信信号の成分を抽出し、抽出した前記成分に基づいて前記観測空間における目標の有無と前記目標が位置する方向とを検出する信号処理部と、
統合処理部と、
を備え、
複数の船舶それぞれに、前記通信アンテナ、前記アレイアンテナ及び前記信号処理部が備えられ、
前記統合処理部は、前記船舶それぞれに備えられる前記信号処理部の検出結果を用いて前記目標の位置を算出し、
前記船舶それぞれは前記信号処理部の前記検出結果を前記統合処理部宛てに水中を介して伝送する通信部を備える、
レーダシステム。
【請求項2】
前記通信部間における前記信号処理部の前記検出結果の伝送を中継する中継器を有する水中ビークルを備える、請求項
1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
前記通信部は、レーザ光を用いて前記信号処理部の前記検出結果を伝送する、請求項
1又は請求項
2に記載のレーダシステム。
【請求項4】
前記通信部は、レーザ光の送信及び受信を行う光フェーズドアレイを備える、請求項
3に記載のレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダは、目標を検出する領域又は範囲に向けて電波を発射し、目標で反射した反射波を受信することで目標の検出や、位置測定、追跡などを行う。しかし、電波を発射することで、レーダ近傍の電波環境に影響を与えたり、他者にレーダの存在が知られたりする場合があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】吉田、「改訂 レーダ技術」、DBF(Digital Beam Forming)、電子情報通信学会、pp.289-291、1996年
【文献】吉田、「改訂 レーダ技術」、モノパルス方式、電子情報通信学会、pp.260-264、1996年
【文献】足立、丸太、「カルマンフィルタの基礎」、UKF、東京電機大学出版局、pp.163-174、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、近傍の電波環境への影響を抑え、被探知性を低くできるレーダシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のレーダシステムは、通信アンテナと、アレイアンテナと、信号処理部と、統合処理部とを持つ。通信アンテナは、人工衛星から送信される送信信号を受信する。アレイアンテナは、観測空間に指向方向を向けて信号を受信する。信号処理部は、アレイアンテナで受信された信号に含まれる送信信号の成分を抽出し、抽出した成分に基づいて観測空間における目標の有無と目標が位置する方向とを検出する。複数の船舶それぞれに、通信アンテナ、アレイアンテナ及び信号処理部が備えられる。統合処理部は、船舶それぞれに備えられる信号処理部の検出結果を用いて目標の位置を算出する。船舶それぞれは信号処理部の検出結果を統合処理部宛てに水中を介して伝送する通信部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態におけるレーダシステムの構成例を示す図。
【
図2】本実施形態におけるレーダ装置の構成例を示す図。
【
図3】本実施形態のレーダ装置によるビーム走査の概要を示す図。
【
図4】本実施形態のビーム形成部における受信ビーム信号の形成処理の概要を示す図。
【
図5】本実施形態における目標検出部の構成例を示す図。
【
図6】本実施形態における統合装置の構成例を示す図。
【
図7】本実施形態における水中ビークルが備える中継器の構成例を示す図。
【
図8】本実施形態における送信光学系の構成例を示す図。
【
図9】本実施形態における受信光学系の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態のレーダシステムを説明する。
図1は、本実施形態におけるレーダシステム100の構成例を示す図である。レーダシステム100は、地上局1、人工衛星2、水上(海上又は湖上)を航行する複数の船舶3、及び少なくとも一つの水中ビークル4を備える。複数の船舶3それぞれには、通信装置及びレーダ装置が備えられる。通信装置は、通信アンテナ5を有し、人工衛星2を介して地上局1と通信を行う。レーダ装置は、レーダアンテナ6を備え、船舶3の上空に定めた観測空間における目標Tの検出や目標Tの追跡などを行う。
【0008】
複数の船舶3のうち少なくとも一隻は、統合装置8を備える。統合装置8は、各船舶3に備えられたレーダ装置で得られる目標Tの情報に基づいて、目標Tの現在位置、予測位置及び追跡結果を算出する。なお、統合装置8は、レーダ装置及び通信装置を備えた船舶3に備えられてもよい。
【0009】
水中ビークル4は、船舶3の間で行われる通信を中継する中継器として用いられる。水中ビークル4として、例えば、無人水中ビークル(Unmanned Underwater Vehicle)が用いられる。水中ビークル4は、船舶3からの誘導指示を受けて水中を航行する。各水中ビークル4は、船舶3から受ける誘導指示に応じて、一定の距離を保ちつつ、船舶3と並走する。船舶3それぞれの周囲に複数の水中ビークル4を配置することでネットワーク回線が形成され、各船舶3は水中ビークル4を用いたネットワーク回線で相互に通信を行う。各水中ビークル4への誘導指示と、船舶3間で伝送される目標Tの情報とは、形成されたネットワーク回線において多重化されて伝送される。
【0010】
本実施形態では、船舶3の間の通信にはレーザ光が用いられ、各船舶3及び水中ビークル4は通信部としての光フェーズドアレイ7を備える。船舶3及び水中ビークル4は、光フェーズドアレイを用いて通信相手にレーザ光を向けて送受信を行う。通信に用いられるレーザ光の波長は、水中における水色(すいしょく)に近い色の波長を用いることによりレーザ光の減衰を抑えることができる。例えば、遠洋での減衰が比較的小さい420nm前後の波長のレーザ光を、水中ビークル4を介した通信に用いてもよい。レーザ光の輝度及び波長に応じてレーザ光の最大到達距離は変化するが、数百mから1km程度の伝送距離が得られる。船舶3と水中ビークル4との距離、及び水中ビークル4間の距離は、通信に用いられるレーザ光の波長及び輝度に応じて定められる。
【0011】
本実施形態のレーダシステム100では、人工衛星2は、地上局1から送信されるアップリンク信号を受信し、受信したアップリンク信号に応じたダウンリンク信号(送信信号)を地上及び海上に向けて送信する。アップリンク信号及びダウンリンク信号は、地上局1と各船舶3との間における通信に用いられる。各船舶3に備えられるレーダ装置は、レーダアンテナ6の指向方向を観測空間に向けて受信を行う。観測空間に目標Tが位置する場合、人工衛星から送信されたダウンリンク信号が目標Tで反射し、反射したダウンリンク信号がレーダアンテナ6で受信される。レーダ装置は、通信装置が受信したダウンリンク信号(直接波)と、レーダアンテナ6で受信したダウンリンク信号(反射波)とから、反射波の遅延時間及びドップラ周波数を得る。また、レーダ装置は、レーダアンテナ6の指向特性と、レーダアンテナ6で受信したダウンリンク信号とから反射波の到来方向を測角する。
【0012】
各レーダ装置は、得られた遅延時間、ドップラ周波数及び測角値と、自船の位置とを含む目標Tの検出結果を、水中ビークル4を介した水中通信によって統合装置8へ通知する。各船舶3の位置は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)などを利用して取得される。統合装置8は、各船舶3のレーダ装置から通知される遅延時間、ドップラ周波数及び測角値とそれぞれの位置とを統合して目標Tの現在位置、予測位置及び追跡結果を算出する統合処理を行う。統合装置8は、算出した目標Tの現在位置、予測位置及び追跡結果を、各船舶3のレーダ装置へ水中ビークル4を介した水中通信によって通知する。各レーダ装置は、通知された現在位置、予測位置及び追跡結果を用いて、レーダアンテナ6の指向方向を更新する。なお、統合装置8は、各レーダ装置のレーダアンテナ6の指向方向を指示してもよい。
【0013】
以下、各船舶3に備えられるレーダ装置について説明する。
図2は、本実施形態におけるレーダ装置の構成例を示す図である。レーダ装置は、レーダアンテナ6、AD(Analog-to-Digital)変換部14、直交検波部15、伝送回路16、及び信号処理部12を備える。レーダアンテナ6は、複数のサブアレイアンテナ13を備える。サブアレイアンテナ13は、鉛直方向に並べられた複数のアンテナ素子を有する。複数のサブアレイアンテナ13は、水平方向に並べられている。すなわち、レーダアンテナ6は、縦方向及び横方向に規則的に配置されたアンテナ素子を有するアレイアンテナである。
【0014】
サブアレイアンテナ13では、アンテナ素子それぞれで受信された信号が増幅された後に合成される。合成により得られた信号は、AD変換部14へ供給される。AD変換部14及び直交検波部15は、サブアレイアンテナ13ごとに設けられる。AD変換部14は、サブアレイアンテナ13から出力される信号を直接サンプリングしてデジタル信号に変換するデジタルダウンコンバートを行う。AD変換部14は、デジタルダウンコンバートにより得られたデジタル信号を直交検波部15へ供給する。直交検波部15は、供給されるデジタル信号に対して直交検波を行い、同相成分と直交成分とを含むデジタルIQ信号を得る。直交検波部15は、デジタルIQ信号を伝送回路16へ供給する。伝送回路16は、各直交検波部15から供給されるデジタルIQ信号を信号処理部12へ伝送する。
【0015】
信号処理部12は、ビーム形成部17、目標検出部18、測角部19、ドップラ検出部20、及び遅延時間検出部21を備える。ビーム形成部17は、伝送回路16から伝送された各デジタルIQ信号を受信し、同時に形成される受信ビームに応じたウェイトをデジタルIQ信号それぞれに乗じて加算合成する。すなわち、各船舶3に備えられるレーダ装置は、サブアレイDBF方式(非特許文献1)を用いたレーダである。ビーム形成部17は、加算合成により得られる複数の受信ビーム信号を目標検出部18へ供給する。
【0016】
図3は、本実施形態のレーダ装置によるビーム走査の概要を示す図である。
図3において示す座標系は、例えば北基準直交座標系であり、XY平面が水平面を表し、Z方向が天頂方向を表す。レーダ装置は、方位角方向が異なる複数の受信ビーム(#1,#2,…,#N)を同時に形成し、同時に形成する複数の受信ビームを仰角方向に時分割で走査する。レーダ装置は、方位角方向に形成する複数の受信ビームを仰角方向に時分割で走査することにより、観測空間における目標Tの検出を行う。観測空間に目標Tが位置する場合、目標Tで反射されたダウンリンク信号が反射波として受信ビーム信号に含まれる。
【0017】
図4は、本実施形態のビーム形成部17における受信ビーム信号の形成処理の概要を示す図である。本実施形態では、レーダアンテナ6の開口面を4つに分割し、左上の分割領域から時計回りに順に分割領域A、B、C及びDという。ビーム形成部17は、ウェイト乗算部171と、合成部172とを備える。ウェイト乗算部171は、分割領域ごとに含まれるサブアレイアンテナ13のデジタルIQ信号を加算合成し、加算合成結果に同時に形成される複数の受信ビームに応じたウェイト(W
A1~W
AN,W
B1~W
BN,W
C1~W
CN,W
D1~W
DN)を乗じる。N本の受信ビームが同時に形成される場合、ウェイト乗算部171は、4×N個の乗算結果を合成部172へ供給する。
【0018】
合成部172は、受信ビームごとに受信ビーム信号として、和ビーム信号(Σビーム信号)と方位角差ビーム信号(ΔAZビーム信号)と仰角差ビーム信号(ΔELビーム信号)とを算出する。和ビーム信号は、分割した4つの分割領域の信号にウェイトを乗算した結果の和として得られる。方位角差ビーム信号は、分割領域A及びBの加算結果と、分割領域C及びDの加算結果との差分として得られる。仰角差ビーム信号は、分割領域A及びCの加算結果と、分割領域B及びDの加算結果の差分として得られる。
【0019】
ここで、各分割領域の信号にi番目の受信ビームのウェイト(WAi,WBi,WCi,WDi;i=1,2,…,N)を乗じて得られる信号をA、B、C、Dで表すと、i番目の受信ビームの和ビーム信号、方位角差ビーム信号、及び仰角差ビーム信号それぞれは、式(1)のように表される。合成部172は、同時に形成される受信ビームごとに、式(1)にて和ビーム信号と2つの差ビーム信号とを算出し、算出した各信号を目標検出部18へ供給する。
Σビーム信号 = A+B+C+D
ΔAZビーム信号=(A+B)-(C+D) …(1)
ΔELビーム信号=(A+C)-(B+D)
【0020】
図5は、本実施形態における目標検出部18の構成例を示す図である。目標検出部18は、3つのFFT(Fast Fourier Transform)演算部41、3つの乗算部42、3つの逆FFT演算部44、ノイズ比較部45、複素共役算出部46、及びFFT演算部47を備える。FFT演算部41、乗算部42及び逆FFT演算部44は、ビーム形成部17から供給される和ビーム信号(Σビーム信号)、方位角差ビーム信号(ΔAZビーム信号)及び仰角差ビーム信号(ΔELビーム信号)ごとに設けられている。
【0021】
和ビーム信号、方位角差ビーム信号及び仰角差ビーム信号それぞれは、対応するFFT演算部41に入力される。また、各船舶3に備えられる通信装置から供給されるダウンリンク信号(直接波)は、複素共役算出部46に入力される。レーダ装置では、ダウンリンク信号(直接波)の複素共役を参照信号として、レーダアンテナ6で受信した信号にダウンリンク信号(反射波)が含まれているか否かを判定する。
【0022】
FFT演算部41は、入力される信号をFFTにより時間領域から周波数領域の信号に変換し、得られた周波数領域の信号を乗算部42へ供給する。複素共役算出部46は、各船舶3に備えられる通信装置から供給されるダウンリンク信号(直接波)を入力し、ダウンリンク信号の複素共役を算出する。複素共役算出部46は、算出した複素共役をFFT演算部47へ供給する。FFT演算部47は、複素共役をFFTにより時間領域から周波数領域の信号に変換し、得られた周波数領域の信号を参照信号として乗算部42へ供給する。
【0023】
乗算部42それぞれは、FFT演算部41から供給される周波数領域の信号と、FFT演算部47から供給される参照信号とを複素乗算し、和ビーム信号、方位角差ビーム信号及び仰角差ビーム信号と参照信号との相互相関を算出する。和ビーム信号、方位角差ビーム信号及び仰角差ビーム信号それぞれに、目標Tで反射したダウンリンク信号(反射波)が含まれていれば高い相互相関が複素乗算結果として得られる。すなわち、FFT演算部41から供給される周波数領域の信号と参照信号とを複素乗算することにより、周波数領域の信号に含まれるダウンリンク信号の成分を抽出できる。乗算部42それぞれは、複素乗算結果を逆FFT演算部44へ供給する。
【0024】
逆FFT演算部44は、複素乗算結果を逆FFTにより周波数領域から時間領域の信号に変換する。方位角差ビーム信号及び仰角差ビーム信号に対応する逆FFT演算部44は、変換により得られた時間領域の信号を測角部19へ供給する。和ビームに対応する逆FFT演算部44は、変換により得られた時間領域の信号をノイズ比較部45へ供給する。以下、逆FFT演算部44それぞれが供給する信号を「相関信号」という。
【0025】
ノイズ比較部45は、相関信号に基づいて、和ビーム信号にダウンリンクの信号(反射波)が含まれているか否かを判定する。ノイズ比較部45は、受信ごとに計測される雑音信号の振幅に基づいてしきい値を設定する。ノイズ比較部45は、しきい値以上の振幅が相関信号に含まれている場合、レーダアンテナ6で受信した信号にダウンリンクの信号(反射波)が含まれていると判定し、しきい値以上の振幅が相関信号に含まれていない場合、レーダアンテナ6で受信した信号にダウンリンクの信号(反射波)が含まれていないと判定する。ノイズ比較部45は、逆FFT演算部44から供給された相関信号と判定結果とを、測角部19、ドップラ検出部20及び遅延時間検出部21に供給する。
【0026】
測角部19は、ノイズ比較部45から供給される比較結果及び和ビーム信号に対応する相関信号と、逆FFT演算部44から供給される方位角差ビーム信号及び仰角差ビーム信号それぞれに対応する相関信号とを受け付ける。測角部19は、ダウンリンクの信号がレーダアンテナ6で受信した信号に含まれている場合、和ビーム信号、方位角差ビーム信号及び仰角差ビーム信号それぞれに対応する相関信号を用いたモノパルス測角方式(非特許文献2)により、レーダ装置を基準にした目標Tの方位角及び仰角を示す測角値を算出する。また、測角部19は、ダウンリンクの信号がレーダアンテナ6で受信した信号に含まれていない場合、目標Tの不検出を出力する。
【0027】
ドップラ検出部20は、ノイズ比較部45から供給される比較結果及び和ビーム信号に対応する相関信号と、通信装置から供給されるダウンリンク信号とを受け付ける。ドップラ検出部20は、ダウンリンクの信号がレーダアンテナ6で受信した信号に含まれている場合、相関信号とダウンリンク信号との周波数成分のピークの差をドップラ周波数として算出して出力する。また、ドップラ検出部20は、ダウンリンクの信号がレーダアンテナ6で受信した信号に含まれていない場合、目標Tの不検出を出力する。
【0028】
遅延時間検出部21は、ノイズ比較部45から供給される比較結果及び和ビーム信号に対応する相関信号と、通信装置から供給されるダウンリンク信号とを受け付ける。遅延時間検出部21は、ダウンリンクの信号がレーダアンテナ6で受信した信号に含まれている場合、相関信号とダウンリンク信号との振幅のピークの差を遅延時間として算出して出力する。遅延時間検出部21は、ダウンリンクの信号がレーダアンテナ6で受信した信号に含まれていない場合、目標Tの不検出を出力する。
【0029】
測角部19から出力される測角値、ドップラ検出部20から出力されるドップラ周波数、及び遅延時間検出部21から出力される遅延時間と、船舶3の位置とは、目標Tの検出結果として、船舶3に備えられる光フェーズドアレイ7から水中ビークル4を介して統合装置8宛てに伝送される。
【0030】
図6は、本実施形態における統合装置8の構成例を示す図である。統合装置8は、TDOA(Time Difference Of Arrival)処理部51、FDOA(Frequency Difference of Arrival)処理部52、トライアンギュレーション処理部53、位置決定部54、及びUKF(Unscented Kalman Filter)処理部55を備える。TDOA処理部51は、各レーダ装置から伝送される遅延時間と船舶3の位置とを用いた到着時間差法により、目標Tの位置を算出する。FDOA処理部52は、各レーダ装置から伝送されるドップラ周波数と船舶3の位置とを用いた到来周波数偏差法により、目標Tの位置を算出する。トライアンギュレーション処理部53は、各レーダ装置から伝送される測角値と船舶3の位置とを用いた三角測量により、目標Tの位置を算出する。
【0031】
位置決定部54は、TDOA処理部51により算出される目標Tの位置と、FDOA処理部52により算出される目標Tの位置とを組み合わせて、目標Tの位置を算出する。位置決定部54は、算出した目標Tの位置に、トライアンギュレーション処理部53により算出される目標Tの位置を重ねることにより、目標Tの位置を算出する。位置決定部54は、算出した目標Tの位置を示す目標位置情報をUKF処理部55へ供給する。目標Tの位置の重ね合わせでは、例えば、2つの位置を平均した位置を算出してもよいし、TDOA及びFDOAを組み合わせた目標Tの位置と、三角測量により算出された目標Tの位置とを所定の比率にて線形合成した位置を算出してもよい。線形合成する際の比率は、過去の目標Tの位置と、TDOA、FDOA及び三角測量それぞれの位置との差分に基づいて定めてもよい。
【0032】
通常のアクティブレーダではLPRF(Low Pulse Repetition Frequency)の場合、測距及び測角が可能であってもドップラ周波数(速度判定)にアンビギュイティ(ambiguity)が生じる。HPRF(High Pulse Repetition Frequency)の場合、ドップラ周波数及び測各が可能であっても、距離にアンビギュイティが生じる。一方、通常のパッシブレーダでは無指向性のアンテナを用いてTDOAとFDOAとの組み合わせを用いるため、受信アンテナの利得が下がり、目標で反射された信号のSN比が劣化する。本実施形態のレーダシステム100は、パッシブレーダにおいて、複数のフェーズドアレイアンテナを用いた測角とTDOAとFDOAとを組み合わせることにより、測距、測角及び速度判定の精度を向上させ、アンビギュイティを排除できる。
【0033】
UKF処理部55は、平滑部56と予測部57とを備える。平滑部56は、位置決定部54から供給される目標位置情報と、過去の目標Tの位置とから、予め定められた座標系におけるX,Y,Z座標値と目標速度とを算出する。平滑部56は、過去の目標Tの位置及び目標速度と、今回得られた目標Tの位置及び目標速度とに対する平滑化処理を行うことで、目標Tの追跡結果を算出する。追跡結果は、目標Tの位置を示す。予測部57は、平滑部56が算出した追跡結果に基づいてカルマンフィルタなどを用いた予測処理を行う。予測部57は、予測処理により得られた目標Tの予測位置を示す予測位置情報を出力する。UKF処理部55における目標Tの追跡結果及び予測位置の算出は、公知の技術を適用して算出してもよい。
【0034】
目標位置情報、追跡結果及び予測位置情報は、水中ビークル4を介して各レーダ装置へ伝送される。各レーダ装置は、目標位置情報、追跡結果及び予測位置情報に基づいて、目標Tを追跡できるように観測空間を更新する。各レーダ装置のウェイト乗算部171は、更新された観測空間を覆うように、DBFで形成する複数の受信ビームの指向方向を変更し、ウェイト(WA1~WAN,WB1~WBN,WC1~WCN,WD1~WDN)を更新する。
【0035】
本実施形態のレーダシステム100は、各レーダ装置による目標Tの検出と測角値、ドップラ周波数及び遅延時間の算出と、統合装置8による目標Tの追跡結果及び予測位置情報の算出とを繰り返すことにより、目標Tの追跡を継続させる。
【0036】
図7は、本実施形態における水中ビークル4が備える中継器の構成例を示す図である。水中ビークル4は、3組の送信系と3組の受信系とを備える。送信系と受信系とは、各レーダ装置から統合装置8への上り通信と、統合装置8から各レーダ装置への下り通信と、船舶3と水中ビークル4との間及び水中ビークル4との間におけるビーコン信号の送受信とに対して設けられている。中継器は、受信光学系61、入射角検出器62、送信光学系63、光増幅器64、通信レーザ発生器65、受信光学系66、受信信号検出器67、通信信号変換器68、通信切替制御器69、通信レーザ発生器70、光増幅器71、送信光学系72、通信信号変換器73、受信信号検出器74、受信光学系75、ビーコンレーザ発生器76、光増幅器77、及び送信光学系78を備える。
【0037】
受信光学系61及び入射角検出器62は、ビーコン信号の受信に設けられた受信系である。受信光学系61は、船舶3又は他の水中ビークル4から発射されるビーコン信号を受信する。ビーコン信号は、所定の間隔で発射されるレーザ光であって予め定められた信号を含むレーザ光である。入射角検出器62は、受信光学系61がビーコン信号を受信した際のビーコン信号の入射角を検出する。入射角検出器62は、検出した入射角をビーコン入射角情報として通信切替制御器69に供給する。ビーコン信号の入射角は、通信相手となる船舶3又は水中ビークル4が位置する方向を示す。
【0038】
ビーコンレーザ発生器76、光増幅器77及び送信光学系78は、レーダ装置から統合装置8への上り通信における送信系である。ビーコンレーザ発生器76は、予め定められた信号を含むレーザ光をビーコン信号として発生させる。ビーコンレーザ発生器76は、発生させたビーコン信号を光増幅器77へ供給する。光増幅器77は、ビーコン信号を光増幅して送信光学系78へ供給する。送信光学系78は、通信相手となる船舶3又は水中ビークル4が位置する方向及びその近傍に向けてビーコン信号を発射する。通信相手となる船舶3又は水中ビークル4が位置する方向は、例えば、通信相手において検出されたビーコン信号の入射角を得ることで決定してもよい。通信相手における入射角は、受信光学系75を介して通信相手から得てもよい。
【0039】
受信光学系66、受信信号検出器67及び通信信号変換器68は、レーダ装置から統合装置8への上り通信における受信系である。通信レーザ発生器70、光増幅器71および送信光学系72は、レーダ装置が統合装置8への上り通信における送信系である。受信光学系66が受信するレーザ光(上り受信信号)には、レーダ装置で得られた目標Tの測角値、ドップラ周波数、遅延時間と、船舶3の位置とを含む目標Tの情報と、水中ビークル4に対する誘導指示とが含まれる。
【0040】
通信切替制御器69は、入射角検出器62が検出したビーコン信号の入射角の方向に受信光学系66の指向性を向けさせる制御を行う。受信光学系66は、ビーコン信号の入射角の方向から到来するレーザ光を受信し、受信したレーザ光を受信信号検出器67へ供給する。受信信号検出器67は、受信したレーザ光に含まれる通信信号を検出し、検出した通信信号を通信信号変換器68に供給する。通信信号変換器68は、通信信号を電気信号に変換して通信切替制御器69に供給する。
【0041】
通信切替制御器69は、通信信号変換器68から供給される電気信号を通信レーザ発生器70に供給する。通信レーザ発生器70は、供給される電気信号でレーザ光を変調し、通信信号を含むレーザ光を発生させる。光増幅器71は、通信レーザ発生器70が発生するレーザ光を光増幅して送信光学系72へ供給する。送信光学系72は、通信切替制御器69に指示された方向に向けて、増幅されたレーザ光を発射する。通信切替制御器69が送信光学系72に指示する方向は、通信相手となる船舶3又は水中ビークル4が位置する方向であって、送信光学系78から発射されたビーコン信号について通信相手が検出したビーコン入射角情報に対応する方向である。
【0042】
中継器は、受信光学系66で受信したレーザ光に含まれる目標Tの情報と誘導指示とを一旦電気信号に変換した後に、再度レーザ光を発生させて送信光学系72から発射する再構成型の中継を行う。なお、通信切替制御器69は、誤り訂正復号及び誤り訂正符号化を電気信号に対して行い、伝送路において生じた誤りを訂正して中継を行ってもよい。
【0043】
受信光学系75、受信信号検出器74及び通信信号変換器73は、統合装置からレーダ装置への下り通信における受信系である。通信レーザ発生器65、光増幅器64及び送信光学系63は、統合装置からレーダ装置への下り通信における送信系である。受信光学系75が受信するレーザ光(下り受信信号)には、統合装置で得られた目標Tの追跡結果と予測位置情報とが含まれる。
【0044】
通信切替制御器69は、送信光学系78から発射されたビーコン信号について通信相手が検出したビーコン入射角情報に対応する方向に受信光学系75の指向性を向けさせる制御を行う。受信光学系75は、制御で指示された方向から到来するレーザ光を受信し、受信したレーザ光を受信信号検出器74へ供給する。受信信号検出器74は、受信したレーザ光に含まれる通信信号を検出し、検出した通信信号を通信信号変換器73に供給する。通信信号変換器73は、通信信号を電気信号に変換して通信切替制御器69に供給する。
【0045】
通信切替制御器69は、通信信号変換器73から供給される電気信号を通信レーザ発生器65に供給する。通信レーザ発生器65は、供給される電気信号でレーザ光を変調し、通信信号を含むレーザ光を発生させる。光増幅器64は、通信レーザ発生器65が発生するレーザ光を光増幅して送信光学系63へ供給する。送信光学系63は、通信切替制御器69に指示された方向に向けて、増幅されたレーザ光を発射する。通信切替制御器69が送信光学系63に指示する方向は、入射角検出器62が検出した入射角の方向である。
【0046】
水中ビークル4の中継器は、ビーコン信号を発射することで、後続の水中ビークル4に自身の位置する方向を通知する。また、水中ビークル4は、ビーコン信号で通知された方向を、先行する水中ビークル4へ通知する。これにより、水中ビークル4は、双方向にビーコン信号を発射せずとも通信相手の水中ビークル4が位置する方向を得られる。
【0047】
図8は、本実施形態における送信光学系63の構成例を示す図である。送信光学系72及び78も、送信光学系63と同じ構成を有する。送信光学系63は、光フェーズドアレイ7a、複数の光スイッチ84、及びスイッチ制御部85を備える。光フェーズドアレイ7aは、レンズ81と、複数のレーザサブアレイ83とを備える。レーザサブアレイ83は、一列に並べられた複数のレーザデバイス(Laser Device: LD)82を有する。レーザサブアレイ83それぞれの指向方向は異なり、通信相手が一定の範囲内に位置する場合においてレーザ光を通信相手に向けて発射できるように各レーザサブアレイ83は配置されている。複数の光スイッチ84は、入力される送信信号又はビーコン信号としてのレーザ光を、複数のレーザサブアレイ83のいずれか一つに供給するように階層的に接続されている。
図8に示す構成例では、光スイッチ84は1入力2出力のMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)スイッチであるが、3つ以上の出力を有するMEMSスイッチを光スイッチ84として用いてもよい。
【0048】
スイッチ制御部85は、ビーコン入射角情報に基づいて、通信相手が位置する方向にレーザ光が発射されるレーザサブアレイ83を選択する。なお、送信光学系72及び78のスイッチ制御部85では、通信相手が位置する方向であって送信光学系78から発射されたビーコン信号について通信相手が検出したビーコン入射角情報に対応する方向が、ビーコン入射角情報に代えて入力される。スイッチ制御部85は、選択したレーザサブアレイ83にレーザ光が供給されるように、複数の光スイッチ84を制御する。選択されたレーザサブアレイ83には、光スイッチ84からレーザ光が供給される。レーザデバイス82それぞれから発射されるレーザ光は、レンズ81で収束され、通信相手が位置する方向に向けて発射される。
図8に示す例では、左端のレーザサブアレイ83が選択され、選択されたレーザサブアレイ83にレーザ光が供給される場合を示している。スイッチ制御部85は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現される。
【0049】
図9は、本実施形態における受信光学系61の構成例を示す図である。受信光学系66及び75も、受信光学系61と同じ構成を有する。受信光学系61は、光フェーズドアレイ7b、複数の光スイッチ94、及びスイッチ制御部95を備える。光フェーズドアレイ7bは、レンズ91と、複数のレーザサブアレイ93とを備える。レーザサブアレイ93は、一列に並べられた複数のレーザデバイス(LD)92を有する。レーザサブアレイ93それぞれの指向方向は異なり、通信相手が一定の範囲内に位置する場合において通信相手から発射されたレーザ光を受信できるように各レーザサブアレイ93は配置されている。レンズ91は、レーザサブアレイ93の指向方向から到来するレーザ光を各レーザデバイス92に収束させる。複数の光スイッチ94は、複数のレーザサブアレイ93のいずれか一つで受信された受信信号又はビーコン信号を出力するように階層的に接続されている。
図9に示す構成例では、光スイッチ94は、2入力1出力のMEMSスイッチであるが、3つ以上の入力を有するMEMSスイッチを光スイッチ94として用いてもよい。
【0050】
スイッチ制御部95は、ビーコン入射角情報に基づいて、通信相手が位置する方向から到来するレーザ光を受信するレーザサブアレイ93を選択する。スイッチ制御部95は、選択したレーザサブアレイ93で受信したレーザ光が出力されるように、複数の光スイッチ94を制御する。選択されたレーザサブアレイ93で受信されたレーザ光は、複数の光スイッチ94を介して受信信号又はビーコン信号として出力される。
図9に示す例では、左端のレーザサブアレイ93が選択され、選択されたレーザサブアレイ93で受信されたレーザ光が出力される場合を示している。スイッチ制御部95は、スイッチ制御部85と同様に、FPGA等のハードウェアを用いて実現される。
【0051】
図8及び
図9において説明した送信光学系及び受信光学系を含む光フェーズドアレイ7(7a,7b)を備える水中ビークル4を中継器として用い、各船舶3に光フェーズドアレイ7(7a,7b)を備えることにより、指向性の高いレーザ光による通信を中継できる。また、レーダシステム100は、水中ビークル4を用いてレーザ光を中継することで、水中におけるレーザ光の減衰による伝送距離が短い欠点を補うことができ、レーダ装置を備える船舶3の間隔を広くして統合装置8で得られる予測位置及び追跡結果の精度を向上させることができる。
【0052】
なお、
図8及び
図9に示した構成例では、レーザサブアレイ83、93を平面に並べる例を示しているが、レーザサブアレイ83、93を球面又は曲面に並べて広い範囲から指向方向を選択できるようにしてもよい。これにより、水中ビークル4間の水中通信をより安定させることができる。
【0053】
本実施形態のレーダシステム100は、陸上又は洋上に位置する人工衛星2から送信されるダウンリンク信号(送信信号)を利用したマルチスタティック・パッシブレーダである。レーダシステム100は、ダウンリンク信号を利用することで、各船舶3から電波を発射することなく、観測空間における目標Tの有無を判定できる。また、レーダシステム100は、人工衛星2から直接受信したダウンリンク信号(直接波)と、目標Tで反射したダウンリンク信号(反射波)とを用いることで、目標Tの現在位置及び予測位置を得て、目標Tの追跡を行うことができる。
【0054】
また、レーダシステム100は、複数の船舶3に備えられるレーダ装置で得られた目標Tの情報を、水中通信を用いることで統合装置8へ伝送する。水中通信を用いることで、船舶3それぞれは、近傍の電波環境への影響を抑えたり、被探知性を低くしたりできる。また、レーザ光の指向性は高いため他者から発見される可能性を低くできる。
【0055】
なお、本実施形態では、船舶3間の通信が水中ビークル4を介して行われる場合について説明したが、船舶3間の通信はこれ以外の手法を用いてもよい。近傍の電波環境への影響が抑えられ、他者からの被探知性が低い手法を船舶3間の通信に用いてもよい。例えば、各船舶3は、指向性の高く低出力の電波又は光を水上で用いて、目標Tの情報を伝送してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、複数の船舶3それぞれにレーダ装置を備える構成例を説明したが、1つのレーダ装置が、目標Tの検出や追跡を行ってもよい。
【0057】
上記の実施形態におけるレーダ装置及び統合装置は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、CPUがプログラムを実行することにより、受信ビーム信号の形成処理、目標Tの検出、測角値とドップラ周波数と遅延時間の算出、目標Tの現在位置と予測位置と追跡結果との算出などを行ってもよい。CPUは、補助記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、レーダ装置及び統合装置における一部又はすべての動作を行ってもよい。また、レーダ装置及び統合装置における動作のすべて又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0058】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、レーダシステム100は、人工衛星から送信されるダウンリンク信号を受信する通信アンテナ5と、観測空間に指向方向を向けて信号を受信するレーダアンテナ6と、レーダアンテナ6で受信された信号に含まれるダウンリンク信号(反射波)の成分を抽出し、抽出した成分に基づいて観測空間における目標の有無と目標が位置する方向とを検出する信号処理部と、を持つことにより、レーダ装置が空間に電波を放射することなく目標の検出、目標位置の算出、及び目標の追跡を行うことができ、近傍の電波環境への影響を抑え、被探知性を低くできる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1…地上局、2…人工衛星、3…船舶、4…水中ビークル、5…通信アンテナ、6…レーダアンテナ、7,7a,7b…光フェーズドアレイ、8…統合装置、12…信号処理部、13…サブアレイアンテナ、14…AD変換部、15…直交検波部、16…伝送回路、17…ビーム形成部、18…目標検出部、19…測角部、20…ドップラ検出部、21…遅延時間検出部、41…FFT演算部、42…乗算部、44…逆FFT演算部、45…ノイズ比較部、46…複素共役算出部、47…FFT演算部、51…TDOA処理部、52…FDOA処理部、53…トライアンギュレーション処理部、54…位置決定部、55…UKF処理部、56…平滑部、57…予測部、61…受信光学系、62…入射角検出器、63…送信光学系、64…光増幅器、65…通信レーザ発生器、66…受信光学系、67…受信信号検出器、68…通信信号変換器、69…通信切替制御器、70…通信レーザ発生器、71…光増幅器、72…送信光学系、73…通信信号変換器、74…受信信号検出器、75…受信光学系、76…ビーコンレーザ発生器、77…光増幅器、78…送信光学系、81…レンズ、82…レーザデバイス、83…レーザサブアレイ、84…光スイッチ、85…スイッチ制御部、91…レンズ、92…レーザデバイス、93…レーザサブアレイ、94…光スイッチ、95…スイッチ制御部、100…レーダシステム、171…ウェイト乗算部、172…合成部