IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図1
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図2
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図3
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図4
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図5
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図6
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図7
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図8
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図9
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図10
  • 特許-タイヤの滑り挙動の評価方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】タイヤの滑り挙動の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240115BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019208121
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021081281
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石神 直大
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-067690(JP,A)
【文献】特開2005-214860(JP,A)
【文献】特開2011-179884(JP,A)
【文献】特開2010-078416(JP,A)
【文献】特開2016-107760(JP,A)
【文献】特開2019-168288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0250843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 -19/12 、
G01M17/00 -17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1状態における接地踏面の画像を複数回撮影する工程と、
第1状態と異なる第2状態における接地踏面の画像を複数回撮影する工程と、
第1状態及び第2状態において撮影された画像の中に特徴点を設定する工程と、
第1状態での複数枚の前記画像から明らかになる前記特徴点の変位量の時系列変化に基づき、第1状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化を求める工程と、
第2状態での複数枚の前記画像から明らかになる前記特徴点の変位量の時系列変化に基づき、第2状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化を求める工程と、
第1状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化と、第2状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化とを時間的に対応させたうえで、第1状態を基準としたときの第2状態での相対的な滑り速度の時系列変化を求める工程と、
を含み、
前記第1状態は、タイヤにトルクをかけず一定速度かつスリップ角0°で転動させている通常運転時の状態であり、
前記第2状態は、制動時、コーナリング時、駆動時、又は、制動時若しくは駆動時かつコーナリング時の状態である、
タイヤの滑り挙動の評価方法。
【請求項2】
撮影された画像の中に特徴点を設定する工程において、タイヤの溝底にも特徴点が設定され、
前記の第1状態及び第2状態の接地踏面の画像を撮影する工程の後に、溝底に設定された前記特徴点のデータを除去する、請求項1に記載のタイヤの滑り挙動の評価方法。
【請求項3】
撮影された画像の中に特徴点を設定する工程において、複数のブロックに特徴点が設定され、
各ブロックについて、前記の相対的な滑り速度の時系列変化を求める、請求項1又は2に記載のタイヤの滑り挙動の評価方法。
【請求項4】
撮影された画像の中に特徴点を設定する工程において、転動時の踏み込み領域及び蹴り出し領域に特徴点が設定され、
踏み込み領域及び蹴り出し領域のそれぞれについて、前記の相対的な滑り速度の時系列変化を求める、請求項1又は2に記載のタイヤの滑り挙動の評価方法。
【請求項5】
撮影された画像の中に特徴点を設定する工程において、複数のリブに特徴点が設定され、
各リブについて、前記の相対的な滑り速度の時系列変化を求める、請求項1又は2に記載のタイヤの滑り挙動の評価方法。
【請求項6】
滑り速度の時系列変化を、滑り速度の接地踏面での位置依存性に変換する、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤの滑り挙動の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤの滑り挙動の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの摩擦特性は接地踏面の滑り挙動と深く関係している。そのため、タイヤの摩擦特性を明らかにするために、タイヤの接地踏面の滑り挙動を求めることが必要である。
【0003】
タイヤの接地踏面の滑り速度を求める方法として特許文献1の方法が知られている。この方法では、タイヤが透明板に接地してから離れるまでの間、一定の時間間隔で、透明板の下のカメラが接地踏面の撮影を行う。そして撮影された画像から、所定の測定点の単位時間あたりの変位量を求め、測定点の滑り速度とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-78416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、ある1つの転動条件下での滑り速度を求める方法である。しかし、タイヤを一定速度での通常転動状態から制動力を与えたときの状態に変化させる等、タイヤの転動状態を変化させ、その変化に伴う滑り挙動を評価することは、従来はできていなかった。
【0006】
そこで本発明は、タイヤの転動状態の変化に伴う滑り挙動を評価できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、第1状態における接地踏面の画像を複数回撮影する工程と、第1状態と異なる第2状態における接地踏面の画像を複数回撮影する工程と、第1状態及び第2状態において撮影された画像の中に特徴点を設定する工程と、第1状態での複数枚の前記画像から明らかになる前記特徴点の変位量の時系列変化に基づき、第1状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化を求める工程と、第2状態での複数枚の前記画像から明らかになる前記特徴点の変位量の時系列変化に基づき、第2状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化を求める工程と、第1状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化と、第2状態での前記特徴点の滑り速度の時系列変化とを時間的に対応させたうえで、第1状態を基準としたときの第2状態での相対的な滑り速度の時系列変化を求める工程と、を含み、前記第1状態は、タイヤにトルクをかけず一定速度かつスリップ角0°で転動させている通常運転時の状態であり、前記第2状態は、制動時、コーナリング時、駆動時、又は、制動時若しくは駆動時かつコーナリング時の状態である、タイヤの滑り挙動の評価方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1状態から第2状態へのタイヤの転動状態の変化に伴う滑り挙動を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】タイヤの滑り挙動の評価装置をタイヤ軸方向から見た図。
図2】評価対象のタイヤのトレッドパターンを示す図。
図3】タイヤの滑り挙動の評価方法のフローチャート。
図4】特徴点の変位量を説明する図。実線はある撮影時に撮影されたブロック及び特徴点、破線はその次の撮影時に撮影されたブロック及び特徴点を示している。
図5】タイヤT1の第2状態での平均滑り速度の時系列変化を示す図。(a)はショルダーブロック、(b)はメディエイトブロック、(c)はセンターブロックの平均滑り速度を示している。
図6図5(a)の拡大図。
図7】タイヤT1の相対滑り速度の時系列変化を示す図。(a)はショルダーブロック、(b)はメディエイトブロック、(c)はセンターブロックの相対滑り速度を示している。
図8】タイヤT2の第2状態での平均滑り速度の時系列変化を示す図。(a)はショルダーブロック、(b)はメディエイトブロック、(c)はセンターブロックの平均滑り速度を示している。
図9】タイヤT2の相対滑り速度の時系列変化を示す図。(a)はショルダーブロック、(b)はメディエイトブロック、(c)はセンターブロックの相対滑り速度を示している。
図10】タイヤT1とタイヤT2の第2状態での平均滑り速度の時系列変化を重ねて示した図。(a)はショルダーブロック、(b)はメディエイトブロック、(c)はセンターブロックの平均滑り速度を示している。
図11】タイヤT1とタイヤT2の相対滑り速度の時系列変化を重ねて示した図。(a)はショルダーブロック、(b)はメディエイトブロック、(c)はセンターブロックの相対滑り速度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本実施形態のタイヤの滑り挙動の評価に使用される評価装置10について説明する。図1に示すように、この評価装置10は、空気入りタイヤ(以下「タイヤ」)Tを接地させるための試験台11と、タイヤTを支持する支持部12と、試験面17に接地しているタイヤTの接地踏面を撮影するカメラ13と、カメラ13で撮影した画像の処理等を行う処理装置14とを有している。
【0011】
試験台11の一部には穴15が形成されている。その穴15の上方開口部が、ガラス又はアクリルからなる透明板16によって閉塞されている。透明板16の上面は試験台11の上面と同一平面を形成している。その平面が、タイヤTが接地する試験面17である。試験面17には実路面と同等の凹凸が形成されていても良い。
【0012】
穴15の内部には前記のカメラ13が上向きで配置されている。そのため、透明板16の上面にタイヤTが接地しているときに、カメラ13が透明板16の下からタイヤTの接地踏面を撮影することができる。このカメラ13に前記の処理装置14が接続されている。処理装置14には入力装置18と表示装置19が接続されている。処理装置14はコンピュータ、入力装置18はキーボードやマウス、表示装置19はディスプレイである。
【0013】
支持部12は、荷重、駆動力、制動力、スリップ角、キャンバー角等をタイヤTに付与するための公知の構成を備えている。この支持部12によりタイヤTが様々な状態に制御される。
【0014】
図2は本実施形態の評価対象のタイヤTのトレッド部を簡略化して示したものである。図2に示すように、タイヤTのトレッド部には、陸部として、タイヤ幅方向中央においてタイヤ周方向に並んでいる複数のセンターブロック21と、タイヤ幅方向両側においてタイヤ周方向に並んでいる複数のショルダーブロック23と、センターブロック21とショルダーブロック23との間においてタイヤ周方向に並んでいる複数のメディエイトブロック22とが形成されている。
【0015】
次に、本実施形態のタイヤTの滑り挙動の評価方法について説明する。
【0016】
図3に示すように、本実施形態の評価方法は、タイヤTの接地踏面に着色点を付与する工程(S1)と、第1状態の接地踏面の画像を複数回撮影する工程(S2)と、第2状態の接地踏面の画像を複数回撮影する工程(S3)と、第1状態での特徴点の滑り速度の時系列変化を求める工程(S4)と、第2状態での特徴点の滑り速度の時系列変化を求める工程(S5)と、第1状態を基準としたときの第2状態での相対的な滑り速度の時系列変化を求める工程(S6)とを含んでいる。
【0017】
ここで、第1状態は評価の基準となる状態で、第2状態は基準と異なる状態である。本実施形態では、第1状態は通常転動時の状態、第2状態は第1状態に対して制動力を与えたときの状態とする。ここで、通常転動時とは、タイヤTに軸トルクをかけず、所定の荷重を付加した状態で、一定速度で転動させているときのことを言う。また通常転動時のタイヤTのスリップ角は0°とする。なお特徴点については後述する。
【0018】
次に各工程について詳細に説明する。
【0019】
まず、工程S1では、図2に示すようにタイヤTのトレッド部全体に複数の着色点Mが付与される。着色点Mは接地踏面と異なる色で着色された点である。本実施形態では、複数の着色点Mを付与する方法として、スプレーによって付与する方法が採用されるものとする。ただし、作業者が着色点Mを手作業で付与する等の他の方法で付与しても良い。着色点Mは1つのブロックに複数付与される。
【0020】
図2に示すように、タイヤTのトレッド部の各ブロック21、22、23の間には溝20が形成されている。着色点Mがスプレーによって付与された結果、図2に示すように着色点Mはブロック21、22、23だけでなく溝20の底(以下、溝20の底のことを「溝底」とする)にも付与される。
【0021】
付与された着色点Mの分布はランダムである(つまり規則性が無い)。また、図2では全ての着色点Mを同じ形状の点で示してあるが、実際には各着色点Mの形状は様々である。そのため、接地踏面の場所毎に着色点Mの分布や形状が異なり、逆に着色点Mの分布や形状から接地踏面の場所を特定できる。
【0022】
これらの着色点Mは、後述するようにタイヤTの画像に特徴点を設定するために付与される。特徴点とは、後述するトラッキング処理において追尾の対象となる特徴点のことである。特徴点は所定のアルゴリズムを用いて設定されるが、着色点MのないタイヤTの表面の画像はコントラストが小さいため、そのままでは特徴点を設定するのが困難である。そこで、このように着色点Mを付与することにより、タイヤTの表面の画像をコントラストの大きいものとし、特徴点を設定しやすくするのである。
【0023】
次の工程S2では、タイヤTが試験面17上を通常転動する。そして、タイヤTが透明板16の上を転動している間に、カメラ13がタイヤTの接地踏面の所定範囲(以下この所定範囲を「撮影範囲」とする)の画像を連続して複数回撮影する。図2に撮影範囲24の一例を二点鎖線で示す。図2に示すように、撮影範囲24にはそれぞれ複数のセンターブロック21、メディエイトブロック22及びショルダーブロック23が含まれる。少なくとも、この撮影範囲24が透明板16に接地し始める直前から透明板16から完全に離れるまでの間、撮影が行われる。本工程S2及び次の工程S3での撮影の時間間隔(以下「撮影間隔」とする)Tは、限定されないが、例えば1/24~1/120秒(24分の1秒~120分の1秒)である。
【0024】
撮影された各画像にはトレッドパターン及び着色点Mが写っている。撮影された各画像は処理装置14に取り込まれる。
【0025】
次の工程S3では、再びタイヤTが試験面17上を走行する。このとき、前の工程S2で撮影したのと同じ撮影範囲24が本工程S3でも撮影されるように、前の工程S2で透明板16の上を転動した場所が、本工程S3でも透明板16の上を転動する。
【0026】
ただし、本工程S3では、タイヤTが透明板16の上を通過している時又はその少し前にタイヤTに制動力が与えられる。そして、タイヤTが透明板16の上を転動しつつ制動の影響を受けている間に、カメラ13がタイヤTの撮影範囲24の画像を連続して複数回撮影する。前の工程S2と同様に、少なくとも撮影範囲24が透明板16に接地し始める直前から透明板16から完全に離れるまでの間、撮影が行われる。そして撮影された各画像が処理装置14に取り込まれる。
【0027】
タイヤTの接地踏面が接地している間、タイヤTの表面には滑りが生じている。そこで次の工程S4では、第1状態のときのタイヤTの表面の各点の滑り速度を処理装置14が求める。
【0028】
滑り速度を求めるために、処理装置14は、まず、工程S2で撮影した画像に対して複数の特徴点を設定する。特徴点は、上記の着色点Mに基づき所定のアルゴリズムにより設定される。所定のアルゴリズムとしては、FAST(Features from Accelerated Segment Test)アルゴリズムやSIFT(Scale Invariant Feature Transform)アルゴリズム等の様々なアルゴリズムのうちのいずれかが使用される。ここで、画像中のコーナーを検出するFASTアルゴリズムを使用した場合、1つの着色点Mが大きければ、1つの着色点Mに対して複数の特徴点が設定され得る。また、アルゴリズムによっては、1つの着色点Mに対して1つの特徴点を設定することも可能である。設定された複数の特徴点は、それぞれ、タイヤTの表面に拘束されタイヤTの表面と一体となって動く点であると言える。これらの特徴点は後述するトラッキング処理における追尾の対象となる。
【0029】
次に、処理装置14は、工程S2で撮影した複数の画像に基づき、各特徴点の変位量の時系列変化を求める。ここで、特徴点の変位量とは、1枚の画像の撮影時から次の1枚の画像の撮影時までに特徴点が移動した距離のことである。
【0030】
図4は、特徴点の変位量について説明するために、撮影された画像の中の1つのセンターブロック21と、センターブロック21に付与された複数の特徴点のうちの1つ(図中の丸)を示した図である。この図において、実線はある1枚の画像の撮影時に撮影された画像、破線はその次の1枚の画像の撮影時に撮影された画像を表している。この図のように、接地踏面が接地している間、センターブロック21には滑りが生じており、2回の撮影の間に特徴点が滑りによって移動している。図中の矢印はある1つの特徴点の変位のベクトルを表している。特徴点の変位量とはこの矢印の長さのことである。なお、カメラ13が固定されているため、特徴点の画像中での座標は、特徴点の透明板16上での座標に対応している。そのため、特徴点の画像中での座標の変化量から、特徴点の透明板16上での実際の変位量を求めることができる。
【0031】
以上が特徴点の変位量だが、特徴点の変位量の時系列変化とは、時間の経過に伴う特徴点の変位量の変化のことで、特徴点の変位量の時間依存性と言うこともできる。
【0032】
各特徴点の変位量の時系列変化は、公知のトラッキング処理により求めることができる。トラッキング処理ではそれぞれの特徴点の追尾が行われる。追尾の処理には例えばKLT(Kanade-Lucas-Tomasi)法が用いられる。複数の特徴点の追尾により、それらの特徴点の変位量の時系列変化が求まる。
【0033】
次に、処理装置14は、特徴点の変位量の時系列変化に基づき、各特徴点の各時点での滑り速度を求め、各特徴点の滑り速度の時系列変化を求める。特徴点の滑り速度の時系列変化とは、時間の経過に伴う特徴点の滑り速度の変化のことで、特徴点の滑り速度の時間依存性と言うこともできる。また時点とは、1回の撮影から次の1回の撮影までの間の任意の時点のことであり、例えば、連続する2回の撮影の中間時点、又は連続する2回の撮影のうち前又は後の方の撮影時点のことである。
【0034】
特徴点の各時点での滑り速度は、連続して撮影された2枚の画像間での特徴点の変位量を撮影間隔Tで割ることにより求めることができる。例えば、第1画像の撮影時から第2画像の撮影時までの間の任意の時点での滑り速度は、第1画像の撮影時から第2画像の撮影時までの特徴点の変位量を、撮影間隔T(第1画像の撮影時から第2画像の撮影時までの時間)で割ることにより求めることができる。
【0035】
すなわち、撮影間隔Tの間に特徴点が移動した距離(すなわち変位量)をL1とすると、第1状態のときの特徴点の滑り速度V1は
【0036】
【数1】
である。
【0037】
処理装置14は、変位量の時系列変化を求めた各特徴点について、このようにして滑り速度V1を求める。また、処理装置14は、撮影範囲24が透明板16に接地し始める直前から透明板16から完全に離れるまでの間を含む時間帯の各時点について、滑り速度V1を求める。それにより、各特徴点の滑り速度V1の時系列変化が求まる。
【0038】
次の工程S5では、前の工程S4と同じ方法で、処理装置14が、第2状態のときに撮影された画像の中に特徴点を設定し、第2状態のときの特徴点の滑り速度の時系列変化を求める。上記と同様に、撮影間隔Tの間に特徴点が移動した距離(すなわち変位量)をL2とすると、第2状態のときの滑り速度をV2は
【0039】
【数2】
である。
【0040】
処理装置14は、変位量の時系列変化を求めた各特徴点について、このようにして滑り速度V2を求める。また、処理装置14は、撮影範囲24が透明板16に接地し始める直前から透明板16から完全に離れるまでの間を含む時間帯の各時点について、滑り速度V2を求める。それにより、各特徴点の滑り速度V2の時系列変化が求まる。
【0041】
なお、処理装置14が各時点における各特徴点の滑り速度V1、V2を求めることにより、各時点での所定範囲内の滑り速度V1、V2の分布を表示できるようになる。
【0042】
本実施形態では、ここまでの工程で、少なくとも1つのショルダーブロック23、1つのメディエイトブロック22及び1つのセンターブロック21を含む範囲の各特徴点について、滑り速度V1、V2を求めたものとする。そして以下では、1つのショルダーブロック23、1つのメディエイトブロック22及び1つのセンターブロック21のみに着目する。そして、これらのブロック21、22、23の特徴点の滑り速度V1、V2の時系列変化のみを使用して、これらのブロック21、22、23毎の滑り挙動を見ることとする。
【0043】
ここで、上記の方法で求めた第2状態のときの滑り速度V2の時系列変化の実例を図5に示す。図5は、図2のようにショルダーブロック23、メディエイトブロック22及びセンターブロック21を有するタイヤT1についての、第2状態での平均滑り速度V2avgの時系列変化を示したものである。図5において、(a)はショルダーブロック23、(b)はメディエイトブロック22、(c)はセンターブロック21の平均滑り速度V2avgの時系列変化をそれぞれ示している。ここで、平均滑り速度V2avgとは、1つのブロック内の複数の特徴点の滑り速度V2の平均値のことである。従って図5の(a)~(c)は、それぞれ、時間を横軸とし、各時点での複数の特徴点の滑り速度V2の平均値を縦軸として、グラフ化したものである。
【0044】
図5の見方の説明のために、図5(a)を拡大して図6に示す。図6において、Aで示す範囲はショルダーブロック23が接地する前の時間帯である。この時間帯ではショルダーブロック23が接地していないため、計算上、平均滑り速度V2avgの絶対値が大きくなっている。
【0045】
また、Bで示す位置はショルダーブロック23が接地した時で、平均滑り速度V2avgが若干大きくなっている。また、C及びDで示す範囲はショルダーブロック23が接地している間の時間帯である。Cで示す範囲は特徴点が粘着域にあるときの時間帯で、平均滑り速度V2avgが0又はほぼ0になっている。Dで示す範囲は特徴点が滑り域にあるときの時間帯で、Cで示す範囲と比べて平均滑り速度V2avgの絶対値が大きくなっている。またEで示す位置はショルダーブロック23が透明板16を離れる時である。このように特徴点は、接地してしばらくは粘着域にありほとんど滑らないが、その後滑り域に入り、透明板16を離れる前に大きく滑る。
【0046】
またFで示す範囲はショルダーブロック23が透明板16から離れた後の時間帯である。この時間帯ではショルダーブロック23が接地していないため、計算上、平均滑り速度V2avgの絶対値が大きくなっている。
【0047】
図5(b)、(c)も図6と同じ見方をすれば良い。
【0048】
このように、平均滑り速度V2avgの時系列変化から、第2状態での各ブロック21、22、23の滑り挙動を見ることができる。同様に、平均滑り速度V1avg(すなわち、1つのブロック内の複数の特徴点の滑り速度V1の平均値)の時系列変化から、第1状態での各ブロック21、22、23の滑り挙動を見ることもできる。
【0049】
さて、次の工程S6では、各ブロック21、22、23について、第1状態での平均滑り速度V1avgを基準としたときの第2状態での相対的な平均滑り速度の時系列変化を、処理装置14が求める。
【0050】
そのために、処理装置14は、第1状態での平均滑り速度V1avgの時系列変化と、第2状態での平均滑り速度V2avgの時系列変化とを、時間的に対応させる。その方法は様々であり限定されない。
【0051】
例えば、処理装置14は、滑り速度V1の時系列変化等に基づき、第1状態においてショルダーブロック23内の特定の特徴点が接地した瞬間を特定する。また、処理装置14は、滑り速度V2の時系列変化等に基づき、第2状態において同じ特定の特徴点が接地した瞬間を特定する。そして、処理装置14は、それらの瞬間を一致させることにより、ショルダーブロック23についての、滑り速度V1の時系列変化のデータ全体と、滑り速度V2の時系列変化のデータ全体とを、時間的に対応させる。それにより、ショルダーブロック23についての、平均滑り速度V1avgの時系列変化と、平均滑り速度V2avgの時系列変化とを、時間的に対応させることができる。これと同じ方法で、処理装置14は、メディエイトブロック22と、センターブロック21とのそれぞれについて、平均滑り速度V1avgの時系列変化と、平均滑り速度V2avgの時系列変化とを、時間的に対応させる。
【0052】
他にも、平均滑り速度V1avgの時系列変化と平均滑り速度V2avgの時系列変化とを時間的に対応させる方法として、タイヤTの回転角の測定結果を利用する方法や、第1状態と第2状態の接地踏面の形状をマッチングさせる方法等がある。
【0053】
処理装置14は、このように対応付けをした後、各ブロック21、22、23について、第1状態での平均滑り速度V1avgを基準としたときの第2状態での相対的な滑り速度を求める。すなわち、処理装置14は、各ブロック21、22、23について、それぞれの時点における
【0054】
【数3】
を計算する。このようにして求まるVsを「相対滑り速度」と言うこととする。
【0055】
先にタイヤT1の滑り速度V2の時系列変化を図5に示したが、それと同じタイヤT1についての、相対滑り速度Vsの時系列変化の実例を図7に示す。この図7は、図5の作成に使用した平均滑り速度V2avgの時系列変化のデータと、それとは別に求めた平均滑り速度V1avgの時系列変化のデータとから求めた、相対滑り速度Vsの図である。
【0056】
V1avgは第1状態(通常転動状態)、V2avgは第2状態(制動時の状態)の平均滑り速度なので、図7(a)~(c)は、タイヤT1に制動力が与えられたことによるブロック21、22、23毎の滑り挙動を示している。ここで、図5図7との対比から、図7においてブロック21、22、23が接地していた時間帯(接地時間帯)がわかる。そして、接地時間帯における相対滑り速度Vsの積算値、接地時間帯における相対滑り速度Vsの最大値、相対滑り速度Vsが所定の大きさを示している時間帯の長さ等から、タイヤT1に制動力が与えられたことの各ブロック21、22、23の滑り挙動への影響を定量的に評価することができる。例えば、接地時間帯における相対滑り速度Vsの積算値から、タイヤT1に制動力が与えられたことの影響としての滑りの量を定量的に求めることができる。さらに、各ブロック21、22、23の滑り挙動を比較することにより、ブロック21、22、23間の滑りのバランスを定量的に評価することもできる。
【0057】
このような評価結果は、タイヤT1のトレッドパターンの改善等に利用することができる。例えば評価の結果ブロック21、22、23間の滑りのバランスが悪いことが判明した場合は、設計者が、滑りのバランスが良くなるようにトレッドパターンの設計変更を行う。
【0058】
このように1つのタイヤT1についての滑り挙動の評価ができるだけでなく、複数のタイヤについての滑り挙動の評価をすることもできる。ここでは、トレッドパターンの異なる2つタイヤの滑り挙動の違いを評価する例について説明する。
【0059】
図8及び図9に、上記のタイヤT1と異なるタイヤT2の平均滑り速度V2avgの時系列変化及び相対滑り速度Vsの時系列変化の実例を示す。タイヤT2は、タイヤT1と同じくショルダーブロック23、メディエイトブロック22及びセンターブロック21を有するが、各ブロック21、22、23の形状がタイヤT1と若干異なる。
【0060】
図10には、タイヤT1の第2状態での平均滑り速度V2avgの時系列変化と、タイヤT2の第2状態での平均滑り速度V2avgの時系列変化とが重ねて示してある。また、図11には、タイヤT1の相対滑り速度Vsの時系列変化と、タイヤT2の相対滑り速度Vsの時系列変化とが重ねて示してある。
【0061】
図10を見ると、タイヤT1とタイヤT2とで、第2状態での平均滑り速度V2avgの時系列変化に大きな違いがないことがわかる。しかし図11を見ると、タイヤT1とタイヤT2とで、相対滑り速度Vsに大きな違いがあることがわかる。つまり、タイヤT1とタイヤT2とでは制動時の平均滑り速度V2avgの時系列変化はほぼ同じであるが、通常転動時を基準としたときの制動時の相対的な滑り速度Vsを見ると、タイヤT1とタイヤT2とに大きな違いがあることがわかる。
【0062】
具体的には、ショルダーブロック23及びセンターブロック21において、タイヤT2の方が早い時点から相対滑り速度Vsの値がピークに向かって上昇し始めている。このことから、制動力が与えられたことの効果としての滑りは、ショルダーブロック23及びセンターブロック21においてタイヤT2の方が早く発生することがわかる。その早さは相対滑り速度Vsの時系列変化のデータから定量的に求めることができる。
【0063】
このようにして2つのタイヤT1、T2についての滑り挙動の評価ができれば、トレッドパターンの改善等を行うことができる。例えば上記の実例からタイヤT2のショルダーブロック23及びセンターブロック21において滑りが発生するのが早過ぎることがわかるので、その対策として、設計者がタイヤT2のトレッドパターンの設計変更を行うことができる。
【0064】
次に本実施形態の効果について説明する。
【0065】
上記の通り、本実施形態では、第1状態及び第2状態それぞれにおいての特徴点の滑り速度V1、V2の時系列変化を求めるだけでなく、第1状態を基準としたときの第2状態での相対的な滑り速度Vsの時系列変化を求める。それにより、第1状態から第2状態への転動状態の変化に伴う滑り挙動を評価することができる。上記実施形態のように第1状態を通常転動時の状態、第2状態を第1状態に対して制動力が与えられたときの状態とすれば、制動力が与えられたことの効果としての相対的な滑り速度Vsの時系列変化を求めることができ、制動力が与えられたことの効果としての滑り挙動を評価することができる。滑り挙動の評価結果は、トレッドパターンの改善等に利用することができる。
【0066】
また、ブロック21、22、23毎の相対滑り速度Vsの時系列変化を求めることにより、ブロック21、22、23毎の滑り挙動を評価することができるのはもちろんのこと、各ブロック21、22、23の滑り挙動を比較することもできる。
【0067】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲は以上の実施形態に限定されない。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。以下では複数の変更例について説明するが、上記実施形態に対して、複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、複数の変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。
【0068】
(変更例1)
第1状態及び第2状態として様々な状態を選択することが可能である。例えば、第1状態を通常転動時の状態とし、第2状態をコーナリング時の状態とすることができる。また、第1状態を通常転動時の状態とし、第2状態を加速時の状態とすることもできる。
【0069】
(変更例2)
上記実施形態では1台のカメラ13で接地踏面の画像を撮影したが、複数台のカメラで画像を撮影しても良い。また動画を撮影しても良い。
【0070】
(変更例3)
上記実施形態では撮影範囲24の中の全ての特徴点について滑り速度V1、V2が計算されたが、滑り速度V1、V2の計算の前に作業者が一部の特徴点のみを選択し、選択された特徴点について処理装置14が滑り速度V1、V2を計算し、それ以後の工程を行っても良い。
【0071】
(変更例4)
後述する変更例7のように、複数のブロック21、22、23にまたがる広範囲について滑り挙動を評価する場合がある。ところが、上記実施形態では溝底にも着色点Mが付与されている。そのため、上記実施形態のように撮影範囲24内の全ての着色点Mに基づき特徴点を設定し、それらの特徴点について滑り速度V1、V2を求めた場合、溝底にも特徴点が設定され、溝底の特徴点についても滑り速度V1、V2が計算されてしまう。すると、最終的な評価結果に、溝底の特徴点のデータが入り込んで、評価結果に影響が出てしまう。
【0072】
それを防ぐために、処理装置14は、溝底を含む広範囲の中にある全ての着色点Mに基づき複数の特徴点を設定し、それらの特徴点についてそれぞれ滑り速度V1、V2を求めた場合、溝底の特徴点についての滑り速度V1、V2のデータを除去することが好ましい。
【0073】
溝底の特徴点とブロック21、22、23上の特徴点とでは計算上の滑り速度が大きく異なる。ブロック21、22、23上の特徴点は接地して試験面17に拘束されているので、この特徴点に滑りが生じたとしても変位量が小さく滑り速度が小さい。それに対し溝底の特徴点は、接地しておらず試験面17に拘束されていないうえ、透明板16から距離が離れているため、変位量が大きく計算上の滑り速度が大きい。
【0074】
そこで、処理装置14は、予め設定されている滑り速度の閾値Vthと、工程S4及び工程S5で求まった各特徴点の滑り速度V1、V2とを比較し、閾値Vthより滑り速度V1、V2が大きい特徴点のデータを除去する。これにより、溝底の特徴点についての滑り速度V1、V2のデータが除去される。
【0075】
このように溝底の特徴点のデータを除去すれば、最終的な評価結果に溝底の特徴点のデータが入り込んで評価結果に影響が出ることを防ぐことができる。ここで、閾値Vthと、各特徴点の滑り速度V1、V2とを比較し、閾値Vthより滑り速度V1、V2が大きい特徴点のデータを除去することにより、溝底の特徴点のデータを容易かつ確実に除去することができる。
【0076】
(変更例5)
溝底の特徴点のデータを除去する方法は、滑り速度の閾値Vthを使用した上記変更例の方法に限定されない。
【0077】
例えば、タイヤTの接地面圧を測定すると、ブロック21、22、23の場所には大きな接地圧が生じ、溝20の場所には接地圧が生じない。そこで、処理装置14が、タイヤTの接地面圧の分布とカメラ13で撮影した画像とを対応させ、接地圧が0又は所定の小ささの場所の特徴点のデータを除去し、それによって溝底の特徴点のデータを除去しても良い。
【0078】
(変更例6)
タイヤTの接地踏面に着色点Mを付与する工程(S1)において、ブロック21、22、23の表面のみに着色点Mを付与し、溝底に着色点Mを付与しなくても良い。その場合、溝底の特徴点のデータを除去する作業が必要ない。
【0079】
(変更例7)
上記実施形態ではブロック毎の相対滑り速度Vsの時系列変化を求め、ブロック単位で滑り挙動を比較したが、評価単位はこれに限定されない。
【0080】
例えば、1つのブロックを転動時の踏み込み側と蹴り出し側の2つの領域に分け、2つの領域のそれぞれについて、上記実施形態の方法で相対滑り速度Vsの時系列変化を求め、2つの領域の滑り挙動を比較しても良い。この場合、踏み込み側と蹴り出し側の2つの領域のそれぞれに、1又は複数の着色点Mを付与しておき、それらの着色点Mに基づき各領域に特徴点を設定しておく必要がある。
【0081】
また、複数のブロックを含む広い接地踏面全体の中から転動時の踏み込み側と蹴り出し側の2つの領域(複数のブロックを含む領域)を抽出し、2つの領域のそれぞれについて、上記実施形態の方法で相対滑り速度Vsの時系列変化を求め、2つの領域の滑り挙動を比較しても良い。この場合、接地踏面全体の中の踏み込み側と蹴り出し側の2つの領域のそれぞれに、1又は複数の着色点Mを付与しておき、それらの着色点Mに基づき各領域に特徴点を設定しておく必要がある。
【0082】
また、接地踏面内を、タイヤ周方向に並ぶ複数のショルダーブロック23からなるショルダーリブ、タイヤ周方向に並ぶ複数のメディエイトブロック22からなるメディエイトリブ、及びタイヤ周方向に並ぶ複数のセンターブロック21からなるセンターリブに分割する。そして、各リブについて、上記実施形態の方法で相対滑り速度Vsの時系列変化をそれぞれ求め、3つのリブの滑り挙動を比較しても良い。この場合、3つのリブのそれぞれに、1又は複数の着色点Mを付与しておき、それらの着色点Mに基づき各リブに特徴点を設定しておく必要がある。
【0083】
ここで、評価単位が複数のブロック21、22、23を含む領域やリブの場合、その領域やリブ内には溝20が存在する。しかし、処理装置14が上記変更例の方法で溝底の特徴点のデータが除去すれば、溝底の特徴点のデータの影響を受けずにブロック21、22、23の表面だけの滑り挙動を評価することができる。
【0084】
(変更例8)
相対滑り速度Vsの時系列変化を、相対滑り速度Vsの接地踏面での位置依存性に変換して、タイヤの滑り挙動を評価しても良い。又は、滑り速度V1、V2の時系列変化を、滑り速度V1、V2の接地踏面での位置依存性に変換して、滑り速度V1、V2の接地踏面での位置依存性に基づき、相対滑り速度Vsの接地踏面での位置依存性を求めても良い。
【0085】
これらの変換は、時系列変化の時間にタイヤTの転動速度を掛けることにより行うことができる。
【0086】
例えば、図6のデータの時間にタイヤTの転動速度を掛けると、図6のデータの時間0のときの滑り速度V2が、基準位置における滑り速度V2に変換され、その後の各時間(時刻)での滑り速度V2が、各位置(基準位置からの各距離)での滑り速度V2に変換される。その結果、図6の横軸が、時間から、接地踏面での位置(基準位置からの距離)に変更される。
【0087】
(変更例9)
上記実施形態では、処理装置14が、第1状態での複数の特徴点の平均滑り速度V1avgの時系列変化と、第2状態での複数の特徴点の平均滑り速度V2avgの時系列変化とを求めた後、これらの平均滑り速度V1avg、V2avgの時系列変化に基づき、ブロック21、22、23毎の相対滑り速度Vsの時系列変化を求めた。しかし、平均滑り速度V1avg、V2avgを求めずに相対滑り速度Vsの時系列変化を求める方法もある。
【0088】
例えば、処理装置14は、まず、第1状態のときに撮影した画像中の各特徴点と、第2状態のときに撮影した画像中の各特徴点とを対応付ける。ここで、上記のように第1状態と第2状態とで撮影範囲24が同じで、第1状態と第2状態とで同じ着色点Mが撮影されたので、第1状態で撮影した画像中のそれぞれの特徴点と、第2状態で撮影した画像中のそれぞれの特徴点とを、1:1で対応付けることができる。しかも、上記のように着色点Mの分布がランダムなので、特徴点の分布もランダムであり、対応付けに間違いがあれば明らかに分かる。この対応付けは公知のパターンマッチング法により行うことができる。
【0089】
さらに、処理装置14は、第1状態での滑り速度V1の時系列変化のデータと、第2状態での滑り速度V2の時系列変化のデータとを、時間的に対応させる。その方法は、上記実施形態における平均滑り速度V1avgとV2avgの時系列変化を対応させる方法と同様である。
【0090】
処理装置14は、このように対応付けをした後、それぞれの特徴点について、第1状態での滑り速度V1を基準としたときの第2状態での相対的な滑り速度を求める。すなわち、処理装置14は、それぞれの特徴点について、それぞれの時点における
【0091】
【数4】
を計算する。このようにして相対滑り速度Vsが求まる。相対滑り速度Vsは、対応付けできた全ての特徴点について、かつ対応付けできた全ての時点について計算される。その計算結果から、特徴点毎の相対滑り速度Vsの時系列変化が求まる。
【0092】
なお、以上の計算により、それぞれの時点における、所定範囲内の相対滑り速度Vsの分布を表示できるようになる。
【0093】
処理装置14は、特徴点毎の相対滑り速度Vsの時系列変化を求めた後、ブロック21、22、23毎に、ブロック内の複数の特徴点の相対滑り速度Vsの平均値の時系列変化を求めれば良い。
【符号の説明】
【0094】
M…着色点、T…タイヤ、10…評価装置、11…試験台、12…支持部、13…カメラ、14…処理装置、15…穴、16…透明板、17…試験面、18…入力装置、19…表示装置、20…溝、21…センターブロック、22…メディエイトブロック、23…ショルダーブロック、24…撮影範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11