(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】画素回路、表示装置及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/32 20160101AFI20240115BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240115BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240115BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240115BHJP
【FI】
G09G3/32 A
G09G3/20 612E
G09G3/20 623C
G09G3/20 623D
G09G3/20 623R
G09G3/20 624B
G09G3/20 641A
H01L33/00 J
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2019212074
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河江 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤森 隆成
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-241711(JP,A)
【文献】特開2005-309396(JP,A)
【文献】米国特許第10395594(US,B1)
【文献】特開2013-076812(JP,A)
【文献】特開2003-288055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F13/00-13/46
G09G3/00-3/08
3/12-3/16
3/19-3/26
3/30-3/34
3/38
H01L33/00-33/46
H03F1/00-3/45
3/50-3/52
3/62-3/64
3/68-3/72
H03K17/00-17/70
19/00
19/01-19/082
19/094-19/096
H03M1/00-9/00
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
映像信号を入力する制御端子、スロープ信号を入力する第1端子、及び前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力する第2端子を有するトランジスタと、
前記比較結果に基づいて前記発光素子を駆動する駆動回路と、
前記制御端子に接続され、前記映像信号の電位を保持する容量素子と、
前記制御端子と前記第2端子との間に、前記トランジスタをダイオード接続するダイオード接続スイッチと、
を備
え、
前記容量素子は、前記トランジスタがダイオード接続された状態で、前記第1端子に入力された映像信号の電位を保持し、
前記トランジスタは、前記保持された映像信号と前記スロープ信号とを比較する、
画素回路。
【請求項2】
前記スロープ信号のレベルはスロープ状に変化し、
前記トランジスタは、前記映像信号と前記スロープ信号との大小関係の切り替わりに応じて、前記トランジスタのオン/オフを切り替える、
請求項1に記載の画素回路。
【請求項3】
発光素子と、
映像信号を入力する制御端子、スロープ信号を入力する第1端子、及び前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力する第2端子を有するトランジスタと、
前記比較結果に基づいて前記発光素子を駆動する駆動回路と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子の電位を初期化する初期化スイッチ
と、
を備える
、画素回路。
【請求項4】
前記トランジスタの出力を増幅する増幅回路を備え、
前記駆動回路は、前記増幅回路の出力に応じて前記発光素子を駆動する、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の画素回路。
【請求項5】
前記増幅回路は、前記トランジスタの出力に応じて、前記増幅回路の出力のレベルまたはインピーダンスを変化させる、
請求項
4に記載の画素回路。
【請求項6】
前記増幅回路は、前記トランジスタの出力が第1レベルの場合、前記増幅回路の出力をハイインピーダンスとし、前記トランジスタの出力が第2レベルの場合、前記トランジスタの出力を増幅する、
請求項
5に記載の画素回路。
【請求項7】
前記増幅回路は、前記トランジスタの出力を反転増幅するインバータである、
請求項
5に記載の画素回路。
【請求項8】
前記駆動回路は、前記比較結果に基づいて、前記発光素子に定電流を供給する定電流回路である、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の画素回路。
【請求項9】
前記定電流回路は、前記定電流を生成する定電流生成トランジスタを備え、
前記定電流生成トランジスタの制御端子に、前記比較結果に応じた信号が入力される、
請求項
8に記載の画素回路。
【請求項10】
前記発光素子は、電源端子と前記定電流回路との間に接続され、
前記スロープ信号を入力する前に、前記発光素子が非発光となるように、前記電源端子の電位を制御する、
請求項
8または
9に記載の画素回路。
【請求項11】
前記発光素子と前記定電流回路との間に接続された駆動スイッチを備え、
前記駆動スイッチの制御端子に、前記比較結果に応じた信号が入力される、
請求項
8に記載の画素回路。
【請求項12】
複数の画素回路がマトリクス状に配置された表示マトリクス部と、
前記複数の画素回路の駆動を制御する駆動制御部と、を備え、
前記複数の画素回路は、
発光素子と、
映像信号を入力する制御端子、スロープ信号を入力する第1端子、及び前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力する第2端子を有するトランジスタと、
前記比較結果に基づいて前記発光素子を駆動する駆動回路と、
前記制御端子に接続され、前記映像信号の電位を保持する容量素子と、
前記制御端子と前記第2端子との間に、前記トランジスタをダイオード接続するダイオード接続スイッチと、
を備
え、
前記容量素子は、前記トランジスタがダイオード接続された状態で、前記第1端子に入力された映像信号の電位を保持し、
前記トランジスタは、前記保持された映像信号と前記スロープ信号とを比較する、
表示装置。
【請求項13】
複数の画素回路がマトリクス状に配置された表示マトリクス部と、
前記複数の画素回路の駆動を制御する駆動制御部と、を備え、
前記複数の画素回路は、
発光素子と、
映像信号を入力する制御端子、スロープ信号を入力する第1端子、及び前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力する第2端子を有するトランジスタと、
前記比較結果に基づいて前記発光素子を駆動する駆動回路と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子の電位を初期化する初期化スイッチと、
を備える、表示装置。
【請求項14】
階調制御トランジスタの制御端子に映像信号を入力
することと、
前記階調制御トランジスタの第1端子にスロープ信号を入力
することと、
前記階調制御トランジスタの第2端子から、前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力
することと、
前記比較結果に基づいて発光素子を駆動する
ことと、
前記制御端子に接続された容量素子により、前記映像信号の電位を保持することと、
前記制御端子と前記第2端子との間を接続することにより、前記階調制御トランジスタをダイオード接続することと、
を含み、
さらに、前記階調制御トランジスタがダイオード接続された状態で、前記容量素子により、前記第1端子に入力された映像信号の電位を保持することと、
前記階調制御トランジスタにより、前記保持された映像信号と前記スロープ信号とを比較することと、
を含む、発光素子の駆動方法。
【請求項15】
階調制御トランジスタの制御端子に映像信号を入力することと、
前記階調制御トランジスタの第1端子にスロープ信号を入力することと、
前記階調制御トランジスタの第2端子から、前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力することと、
前記比較結果に基づいて発光素子を駆動することと、
前記第2端子に接続された初期化スイッチにより、前記第2端子の電位を初期化することと、
を含む、発光素子の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素回路、表示装置及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子を含む画素回路をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス型の表示装置が広く普及している。このような表示装置における階調表現の一手法として、発光素子の定電流駆動と、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)による発光時間の制御を組み合わせた階調表現手法がある。本駆動は、一般的には、画素回路内にスイッチとなるトランジスタを設け、スイッチのオン/オフを制御することで発光/非発光の2状態を作り出し、2状態の時間的比率で発光時間を制御することで階調表現する。発光素子を駆動する電流は一定、すなわち発光素子の動作点は一定のため、カラーシフトが起きにくい等の利点がある。
【0003】
PWM階調制御についてはさらに、サブフレーム群を用意しそれらの組み合わせで離散的に発光時間を制御する方式と、クランプ式インバータとスロープ信号を用いて連続的に発光時間を制御する方式が存在する。前者に対して後者は、疑似輪郭と呼ばれる知覚現象が原理的に発生しない、という点において有利であり、例えば特許文献1でその具体的な回路構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、関連する技術として、クランプ式インバータとスロープ信号を用いたPWM階調制御方法が知られている。しかしながら、関連する技術では、クランプ式インバータによってダイナミックレンジが制限されるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画素回路は、発光素子と、映像信号を入力する制御端子、スロープ信号を入力する第1端子、及び前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力する第2端子を有するトランジスタと、前記比較結果に基づいて前記発光素子を駆動する駆動回路と、を備えるものである。
【0007】
本発明に係る表示装置は、複数の画素回路がマトリクス状に配置された表示マトリクス部と、前記複数の画素回路の駆動を制御する駆動制御部と、を備え、前記複数の画素回路は、発光素子と、映像信号を入力する制御端子、スロープ信号を入力する第1端子、及び前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力する第2端子を有するトランジスタと、前記比較結果に基づいて前記発光素子を駆動する駆動回路と、を備えるものである。
【0008】
本発明に係る発光素子の駆動方法は、階調制御トランジスタの制御端子に映像信号を入力し、前記階調制御トランジスタの第1端子にスロープ信号を入力し、前記階調制御トランジスタの第2端子から、前記映像信号と前記スロープ信号との比較結果を出力し、前記比較結果に基づいて発光素子を駆動するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダイナミックレンジを拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】関連する技術における画素回路の構成例を示す回路図である。
【
図2】関連する技術における画素回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】実施の形態に係る画素回路の概要を示す回路図である。
【
図4】実施の形態1に係る表示装置の構成例を示す構成図である。
【
図5】実施の形態1に係る画素回路の構成例を示す回路図である。
【
図6】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法における各信号を示すタイミングチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図9】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図10】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図11】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図12】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図13】実施の形態1に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図14】実施の形態2に係る画素回路の構成例を示す回路図である。
【
図15】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法を示すフローチャートである。
【
図16】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法における各信号を示すタイミングチャートである。
【
図17】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図18】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図19】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図20】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図21】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図22】実施の形態2に係る画素回路の駆動方法のステップにおける画素回路の状態を示す回路図である。
【
図23】実施の形態3に係る画素回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
(関連する技術の検討)
図1及び
図2は、関連する技術における画素回路の構成例を示している。関連する画素回路900は、クランプ式インバータとスロープ信号を用いて連続的に発光時間を制御する回路である。
図1は、画素回路900のプログラミング時(データ信号入力時)の状態を示し、
図2は、画素回路900の駆動時の状態を示している。
【0013】
図1及び
図2に示すように、関連する画素回路900は、発光素子901、発光素子901に定電流を供給する定電流源902、発光素子901と定電流源902の間に接続された駆動スイッチ903、駆動スイッチ903のオン/オフを制御するPWM回路904を備える。
【0014】
PWM回路904は、容量C1、インバータIN1及びIN2、スイッチS1~S7を備える。容量C1の入力端子には、スイッチS1を介してスロープ信号が入力されるとともに、スイッチS2を介してデータ信号(映像信号)が入力される。
図1のプログラミング時には、制御信号SCLによりスイッチS1がオフ、スイッチS2がオンとなり、データ信号が容量C1に入力される。
図2の駆動時には、制御信号SCLによりスイッチS1がオン、スイッチS2がオフとなり、スロープ信号が容量C1に入力される。そうすると、インバータIN1(クランプ式インバータ)は、データ信号とスロープ信号の比較に応じた信号を出力し、さらにインバータIN2を介して出力されるPWM信号により駆動スイッチ903が制御される。これにより、データ信号とスロープ信号の比較に応じて発光素子901の発光時間が制御される。
【0015】
発明者らは、このような関連する技術について検討し、次のような課題を見出した。すなわち、関連する技術では、容量カップリング(容量C1)を介して映像信号とスロープ信号を重畳するため、クランプ式インバータを構成する回路素子の耐圧から、映像信号のダイナミックレンジが実質的に制限を受ける。あるいは、ダイナミックレンジ確保のために、高耐圧素子を採用せざるを得なくなり、製造にかかわるコストアップが避けられない。このことについてより具体的に説明する
【0016】
クランプ式インバータに供給される電源電位のハイ側をVdd、ロー側をVssとする。この時、素子の耐圧の観点から、クランプ式インバータの入力端子に印加可能な電位は、Vss以上Vdd以下に制限される(ここでは簡単のため電源電圧=素子耐圧とした)。該電位が最大値となるときは、映像信号の電位として最小値を入力し、かつスロープ信号の電位が最大値に達するタイミングである。同様に、該電位が最小値となるときは、映像信号の電位として最大値を入力し、かつスロープ信号の電位が最小値に達するタイミングである。ここで、映像信号の電圧振幅をΔVsig、スロープ信号の電圧振幅をΔVslopeとすると、以下の式(1)を満たす必要がある
Vdd-Vss>ΔVsig+ΔVslope ・・・(1)
【0017】
式(1)において、左辺は耐圧、右辺はクランプ式インバータの入力端子に現れ得る電位の振幅を表す。信号設定として、理想的にはΔVsig=ΔVslopeであるべきであり、結局、映像信号の電圧振幅は、(Vdd-Vss)/2に制限される。なお、より詳細にはクランプ式インバータの論理しきい値も映像信号の電圧振幅を制限する要素となるが、ここでは割愛する。
【0018】
以上の説明は、厳密には、映像信号のダイナミックレンジではなくクランプ式インバータの入力電位について論じたものであるが、カップリング容量を小さくすることで映像信号のダイナミックレンジ拡大を図ることは現実的でなく、また、いずれにせよクランプ式インバータの入力電位に関する制約は変わらない。クランプ式インバータの動作はPWM制御の精度を決める重要な要素であるため、クランプ式インバータの入力電位で換算したときのダイナミックレンジ拡大が、精度向上には不可欠である。
【0019】
そこで、以下の実施の形態では、関連する技術の課題に対し、映像信号とスロープ信号の入力を重畳させないことでダイナミックレンジを拡大する。
【0020】
(実施の形態の概要)
図3は、実施の形態に係る画素回路の概要を示している。
図3に示すように、実施の形態に係る画素回路100は、発光素子120、駆動スイッチ130、定電流設定部140、PWM制御部110を備える。定電流設定部140は、駆動スイッチ130を介して発光素子120に流れる定電流を設定する定電流源である。なお、駆動スイッチ130は、定電流設定部140に含まれてもよい。例えば、定電流設定部140及び駆動スイッチ130は、PWM制御部110から出力されるPWM信号に応じて発光素子120を駆動する駆動回路である。
【0021】
PWM制御部110は、映像信号とスロープ信号に基づいてPWM信号を生成し、発光素子120の発光時間を制御する。この例では、PWM制御部110は、映像信号とスロープ信号の比較結果に基づいて駆動スイッチ130のオン/オフを制御する。PWM制御部110は、MOS(metal oxide semiconductor)トランジスタ111、容量112、増幅回路113、スイッチ114及び115を備える。
【0022】
MOSトランジスタ(階調制御トランジスタ)111は、トランジスタの一例として、例えばP型のMOSトランジスタである。MOSトランジスタ111は、ソース(第1端子)に映像信号/スロープ信号が入力され、ゲート(制御端子)が容量112の一端に接続され、ドレイン(第2端子)が増幅回路113の入力端子に接続される。容量112の他端は、固定電源の一例である電源(Vss)に接続される。スイッチ114は、MOSトランジスタ111のゲートとドレインの間に接続され、MOSトランジスタ111をダイオード接続する。
容量112は、MOSトランジスタ111がダイオード接続された状態で、ソースに入力された映像信号の電位を保持する。MOSトランジスタ111は、保持されたゲートの映像信号とソースに入力されるスロープ信号とのレベルの大小を比較し、比較結果(PWM信号)をドレインから出力する。MOSトランジスタ111は、映像信号とスロープ信号との大小関係の切り替わりに応じて、MOSトランジスタ111のオン/オフを切り替える。
スイッチ115は、MOSトランジスタ111のドレインと電源(Vss)の間に接続され、MOSトランジスタ111のドレインを初期化する。増幅回路113の出力端子は、駆動スイッチ130の制御端子に接続される。定電流設定部140及び駆動スイッチ130は、増幅回路113の出力に応じて発光素子120を駆動する。
【0023】
実施の形態では、このような構成により、MOSトランジスタ111において、ゲートに入力される映像信号(ソース端子経由で入力されゲートに保持される映像信号)と、ソースに入力されるスロープ信号とを比較し、ドレインから比較結果を出力する。さらに、定電流設定部140及び駆動スイッチ130において、比較結果に基づいて、発光素子120の発光を制御する。これにより、関連する技術のように映像信号とスロープ信号の入力を重畳させることがないため、映像信号のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0024】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。まず、画素回路を含む表示装置について説明した後、画素回路の構成及び動作について説明する。
【0025】
<表示装置の構成>
図4は、本実施の形態に係る表示装置の構成例を示す構成図である。本実施の形態に係る表示装置200は、アクティブマトリクス型の表示装置であり、例えば、発光素子としてマイクロLED(Micro Light Emitting Diode)を用いたマイクロLEDディスプレイである。マイクロLEDディスプレイは、液晶ディスプレイよりも高コントラストであり、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイよりも劣化が少ないという特徴がある。なお、本実施の形態は、マイクロLEDに限らず、OLEDやその他の発光素子の表示装置(画素回路)に適用することができる。
【0026】
図4に示すように、本実施の形態に係る表示装置200は、表示マトリクス部210、スキャンドライバ220、データドライバ230、制御回路240を備える。表示マトリクス部210は、マトリクス状に配置された複数の画素回路1を有する。表示マトリクス部210は、行方向に延在する複数のスキャン線(ゲート線)Lscと、列方向に延在する複数のデータ線(ソース線)Ldtを有し、スキャン線Lscとデータ線Ldtの交差する位置に画素回路1が配置されている。
【0027】
スキャンドライバ(ゲートドライバ)220は、スキャン時に、順次スキャン線Lscを選択し、選択したスキャン線Lscを介して該当する行の画素回路1を駆動する。データドライバ(ソースドライバ)230は、データ線Ldtを介してデータ信号(映像信号)を画素回路1に入力し、映像に応じて画素回路1の発光素子を駆動する。また、スロープ信号は、データ線Ldtを介して画素回路1に入力してもよいし、データ線Ldtとは別のスロープ信号用の専用線を介して画素回路1に入力してもよい。制御回路240は、スキャンドライバ220及びデータドライバ230の動作を制御し、また、画素回路1の駆動動作に必要な制御を行う。例えば、制御回路240は、画素回路1のスイッチのオン/オフ制御や、各端子に入力されるスロープ信号やデータ信号等のタイミングを制御する。
【0028】
<画素回路の構成>
図5は、本実施の形態に係る画素回路の構成例を示す構成図である。
図5に示すように、本実施の形態に係る画素回路1は、発光素子D、PWM制御部10、定電流設定部20を備える。
【0029】
PWM制御部10は、P型のMOSトランジスタMpwm、N型のMOSトランジスタMamp、スイッチdioW及びresW、容量Cpwmを備える。スイッチdioW及びresWは、制御回路240によりオン/オフが制御される。
【0030】
MOSトランジスタMpwmは、ソースに映像信号Vpwm/スロープ信号Vslopeが入力され、ゲートが容量Cpwmの一端に接続され、ドレイン(出力端子)がMOSトランジスタMampのゲートに接続される。映像信号Vpwmとスロープ信号Vslopeは、それぞれ異なるタイミングでデータ線Ldtから入力される。MOSトランジスタMpwmは、関連する技術におけるクランプ式インバータの役割を担う。すなわち、MOSトランジスタMpwmは、ゲート電位(容量Cpwmに保持された映像信号)とソース電位(スロープ信号)の比較結果(PWM信号)を、ドレインに出力する。
【0031】
スイッチdioWは、MOSトランジスタMpwmのゲートと、MOSトランジスタMpwmのドレイン及びMOSトランジスタMampのゲートの共通ノードとの間に接続される。スイッチdioWは、MOSトランジスタMpwmの入力と出力を短絡し、MOSトランジスタMpwmをダイオード接続する機能を担う。
【0032】
容量Cpwmは、一端がMOSトランジスタMpwmのゲートに接続され、他端が電源Vssに接続される。容量Cpwmは、MOSトランジスタMpwmのゲート電位を保持するための容量であり、この例では、ダイオード接続時に、MOSトランジスタMpwmのゲートに供給される映像信号を保持する。なお、
図5では容量Cpwmの一方の端子を電源Vssに接続してあるが、固定電位であればどのような電位でもよく、本実施の形態はこれに限定されるものではない。
【0033】
MOSトランジスタMampは、ゲートがMOSトランジスタMpwmのドレインに接続され、ドレインがPWM制御部10の出力端子N1(MOSトランジスタMpamのゲート)に接続され、ソースが電源Vssに接続される。MOSトランジスタMampは、MOSトランジスタMpwmのドレインに現れるPWM信号を増幅する役割を担う。なお、後述するようにMOSトランジスタMampのゲート(=MOSトランジスタMpwmのドレイン)は動作中の一部期間においてフローティングになるため、必要に応じて保持容量を該ノードに対して付加してもよい。
【0034】
スイッチresWは、MOSトランジスタMpwmのドレイン及びMOSトランジスタMampのゲートの共通ノードと電源Vssとの間に接続される。スイッチresWは、MOSトランジスタMpwmのゲート電位とMOSトランジスタMpwmのドレイン電位(=Mampのゲート電位)を初期化する役割を担う。なお、スイッチdioW及びresWについて、例えばMOSトランジスタ単体やその直列接続や並列接続などが考えられるが、等価な機能が実現できればどのような素子構成でも良い。定電流設定部20の各スイッチも同様である。
【0035】
スイッチdioW及びresWのオン/オフを制御する信号(図示せず)と電源を除けば、PWM制御部10の入力は映像信号Vpwm、スロープ信号Vslopeであり、PWM信号はMOSトランジスタMampのドレインから出力される。
【0036】
この例では、PWM制御部10の出力端子N1をMOSトランジスタMpamのゲートに接続する例を示しており、出力端子N1はVssレベルを出力するか、ハイインピーダンスとなるかの2状態をとる構成となっている。MOSトランジスタMampは、MOSトランジスタMpwmのドレイン電圧がしきい値より低い場合(第1レベルの場合)、出力端子N1をハイインピーダンスとし、MOSトランジスタMpwmのドレイン電圧がしきい値より低い場合(第2レベルの場合)、出力端子N1をVssレベルとする(増幅する)。なお、これは一例であり、本実施の形態は、この構成に限定されない。PWM制御部10と定電流設定部20の接続形態によっては、例えば出力端子N1にプルアップする回路要素を付加してVdd/Vssレベルの2状態を出力するような構成にしてもよい。すなわち、MOSトランジスタMamp(増幅回路)は、MOSトランジスタMpwmの出力に応じて、出力端子N1のレベルを切り替えてもよいし、出力端子N1のインピーダンスを切り替えてもよい。
【0037】
定電流設定部20は、N型のMOSトランジスタMpam、スイッチresA、dioA及びem、容量Cpamを備える。スイッチresA、dioA及びemは、制御回路240によりオン/オフが制御される。なお、定電流設定部20の構成は一例であり、この構成に限られない。すなわち、定電流設定部20は、PWM制御部10の出力(PWM信号)に応じて、発光素子Dに定電流を供給できれば、その他の構成でもよい。
【0038】
MOSトランジスタMpam(定電流生成トランジスタ)は、ドレインがスイッチemを介して発光素子Dのカソードに接続され、ゲートがPWM制御部10の出力端子N1及び容量Cpamの一端に接続され、ソースに定電流設定信号Vpam/電源Vssが入力される。MOSトランジスタMpamは、飽和領域で動作させることで定電流源として機能する。
【0039】
容量Cpamは、一端がMOSトランジスタMpwmのゲートに接続され、他端が電源Vssに接続される。容量Cpamは、MOSトランジスタMpamのゲート電位を保持するための容量である。
【0040】
スイッチresAは、電源VddとMOSトランジスタMpamのゲート及び容量Cpamの共通ノードとの間に接続される。スイッチresAは、MOSトランジスタMpamのゲート電位を初期化するためのスイッチである。
【0041】
スイッチdioAは、MOSトランジスタMpamのゲート及び容量Cpamの共通ノードとMOSトランジスタMpamのドレインとの間に接続され、MOSトランジスタMpamをダイオード接続する。スイッチemは、発光素子DのカソードとMOSトランジスタMpwmのドレインの間に接続される。スイッチdioA及びemは定電流源として働かせるMOSトランジスタMpamのしきい値変動を補償するための一連の動作に使われるスイッチである。
【0042】
<画素回路の駆動方法>
図6~
図13を用いて、本実施の形態に係る画素回路の駆動方法について説明する。
図6は、本実施の形態に係る画素回路の駆動方法の流れを示すフローチャートであり、
図7は、
図6の駆動方法における各信号を示すタイミングチャートであり、
図8~
図13は、
図6の駆動方法における画素回路の状態を示す図である。例えば、映像信号の1フレーム毎に以下の駆動方法で発光素子を駆動する。
【0043】
図6に示すように、まず、PWM制御部10をリセットする(reset PWM:S11)。
図7及び
図8に示すように、スイッチdioW及びresWをオンにする。これにより、MOSトランジスタMpwmのゲート電位をVssに初期化する。なお、このときMOSトランジスタMpwmのソースは、ハイインピーダンス(hiZ)とする。また、スイッチresA、dioA、及びemはオフである。
【0044】
次に、映像信号を書き込む(scan PWM:S12)。
図7及び
図9に示すように、スイッチresWをオフにする。これにより、MOSトランジスタMpwmのゲートとドレインを電源Vssから分離する。
【0045】
この状態で、MOSトランジスタMpwmのソースから映像信号Vpwmを入力する。このとき、MOSトランジスタMpwmのゲートとドレインは短絡されているため、MOSトランジスタMpwmはダイオードとして動作し、MOSトランジスタMpwmのソースからゲートへ映像信号Vpwmが供給される。そうすると、Vpwmに応じて、カソード側電位(ゲート電位)はVpwm-|Vthp(Mpwmの閾値)|に漸近するとともに、その電位が容量Cpwmに保持される。MOSトランジスタMpwmのゲート電位はVpwm-|Vthp|まで上昇すると、MOSトランジスタMpwmはオフになる。このようにして、映像信号Vpwmにクランプ式インバータの機能を担うMOSトランジスタMpwmのしきい値を重畳した電位を生成する。
【0046】
次に、定電流設定部20をリセットする(reset PAM:S13)。
図7及び
図10に示すように、スイッチdioWをオフにする。これにより、MOSトランジスタMpwmのゲートとドレインを分離し、Vpwmとしきい値の重畳電位(Vpwm-|Vthp|)を容量Cpwmに保持する。
【0047】
また、スイッチresWをオンにする。これにより、MOSトランジスタMpwmのドレイン電位とMOSトランジスタMampのゲート電位が再び電源Vssに初期化されて、MOSトランジスタMampがオフになる。さらに、スイッチresAをオンにする。これにより、MOSトランジスタMpamのゲート電位が電源Vddに初期化される。MOSトランジスタMampをオフにすることで、確実にMOSトランジスタMpamのゲート電位を初期化する。なお、このときMOSトランジスタMpwmのソースは、ハイインピーダンスとする。
【0048】
次に、定電流を設定する(set PAM:S14)。
図7及び
図11に示すように、スイッチdioAをオンにし、MOSトランジスタMpamをダイオード接続する。
【0049】
この状態で、定電流設定信号VpamをMOSトランジスタMpamのソースに印加する。そうすると上記S12と同様にMOSトランジスタMpamのしきい値取得動作が実施される。すなわち、S12と同様に、定電流設定信号Vpamの印可に応じて、MOSトランジスタMpamのゲート電位はVddからVpam+Vthn(Mpamの閾値)まで低下する。これにより、VpamにMOSトランジスタMpamのしきい値Vthnを重畳した電位が生成される。このようにして、MOSトランジスタMpamを飽和領域で動作させるときの電流値がしきい値に依存しないように、MOSトランジスタMpamのゲート電位を設定する。これにより、しきい値補償が可能となる。
【0050】
また、このときスイッチresWをオフにする。なお、スイッチresWをオフにするタイミングは、次のS15を開始するタイミングでもよい。
【0051】
次に、発光素子を発光(emission on:S15)及び消灯(emission off:S16)する。発光(S15)では、
図7及び
図12に示すように、スイッチdioAをオフにする。これにより、MOSトランジスタMpamのゲートとドレインを分離し、Vpamとしきい値の重畳電位を容量Cpamに保持する。
【0052】
また、MOSトランジスタMpwmのソースに、スロープ信号Vslopeを入力する。ここで、クランプ式インバータの機能を担うMOSトランジスタMpwmに対し、映像信号Vpwmの成分はゲートに、比較参照するスロープ信号はソースに印加される。このため、本実施の形態では、関連する技術のように、映像信号とスロープ信号は重畳されない。
【0053】
さらに、スイッチemをオンにし、発光期間(emission期間)を開始する。PWM制御部10の出力端子N1がハイインピーダンスの間は、容量Cpamが放電されず、MOSトランジスタMpamがオンのため、発光素子Dを定電流で駆動(発光)する。PWM制御部10の出力は、S12においてあらかじめVthpをVpwmに重畳させた電位にしてMOSトランジスタMpwmのゲートに印加しているため、Vthpに依らず、純粋にVpwmとVslopeの大小比較で決まる。したがって、Vpwm>Vslopeの間はPWM制御部10の出力がハイインピーダンスのため、発光素子Dの発光が継続する。
【0054】
次に、消灯(S16)では、
図7及び
図13に示すように、スロープ信号Vslopeが低電位から高電位にスロープ状に変化する。Vpwm<Vslopeとなると、MOSトランジスタMpwmがオンとなり、MOSトランジスタMampのゲートにスロープ信号が供給される。そうすると、MOSトランジスタMampがオンとなるため、PWM制御部10の出力がVssとなり、容量Cpamが放電される。このため、MOSトランジスタMpamのゲート電位がVssとなって、MOSトランジスタMpamがオフし、発光素子Dが消灯する。このようにして、映像信号Vpwmに応じた発光時間を実現する。なお、発光時間0(黒)を表現するには、スイッチemをオンする前にVpwm<Vslopeの状態にする必要があり、そのことに注意してVslopeのスロープ開始時電位やスイッチemをオンするタイミングを調整する。
【0055】
なお、S12の映像信号の書き込みは、
図4のような2次元アクティブマトリクス表示装置においては、スキャン線のスキャンに応じて、スキャン線ごとに順次行う。そのために各画素に選択用スイッチが必要であるが、ここでは説明簡略化のため、図には含めず、説明についても省略する。それ以外の手順(ステップ)については、基本的にアクティブマトリクスを構成する画素全体に対する一括同時操作を想定しているが、特にこれに限定されず、画素をグループ分けした上でシーケンシャルに実行する手順があってもよい。また、例えば定電流設定を先に行ってから映像信号を書き込むなど、そもそも上記説明と異なる順番で実行されてもよい(その場合、PWM制御部は同一でよいが、その他の要素の変更は必要になる)。
【0056】
<実施の形態1の効果>
上記説明した本実施の形態に係る画素回路の構成及び駆動方法において、映像信号Vpwmの入力電圧範囲を制約する条件は以下の通りである。
・Vpwm-|Vthp|>Vss(手順S12のしきい値取得動作成立条件)
・Vpwm<Vdd(素子耐圧)
【0057】
以上から、映像信号Vpwmとして入力しうる電圧振幅はVdd-(Vss+|Vthp|)となる。上述のように、関連する技術では(Vdd-Vss)/2であったことから、本実施の形態では、(Vdd-Vss)/2-|Vthp|分ダイナミックレンジが拡大可能である。すなわち、本実施の形態では、関連する技術のように、クランプ式インバータにより映像信号とスロープ信号の入力を重畳させることがないため、ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、クランプ式インバータをMOSトランジスタ1個で実装することで素子数を削減し、更には積極的にダイナミック動作を取り入れることで、貫通電流発生の要素を排除し消費電力低減を実現することができる。
【0059】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1の画素回路におけるPWM制御部の増幅回路(Mamp)をインバータで構成する。
【0060】
<画素回路の構成>
図14は、本実施の形態に係る画素回路の構成例を示す構成図である。
図14に示すように、本実施の形態に係る画素回路1は、発光素子D、PWM制御部10、定電流設定部20を備える。実施の形態1の画素回路と比べて、PWM制御部10において、定電流設定部への出力部分が異なり、また、定電流設定部20において、PWM制御部10からの入力部分が異なる。
【0061】
具体的には、
図14に示すように、PWM制御部10は、MOSトランジスタMampの代わりに、MOSトランジスタMpwmの出力を反転増幅するPWM出力増幅インバータ11を備える。PWM出力増幅インバータ11は、電源Vddと電源Vssの間に直列に接続されたP型のMOSトランジスタMipとN型のMOSトランジスタMinを備える。また、この例では、定電流設定部20のスイッチem(駆動スイッチ)をP型のMOSトランジスタとする。PWM出力増幅インバータ11の入力端子は、MOSトランジスタMampと同様に、MOSトランジスタMpwmのドレインに接続される。一方、PWM出力増幅インバータ11の出力端子N1は、スイッチemのゲートに接続される。
【0062】
<画素回路の駆動方法>
図15~
図22を用いて、本実施の形態に係る画素回路の駆動方法について説明する。
図15は、本実施の形態に係る画素回路の駆動方法の流れを示すフローチャートであり、
図16は、
図15の駆動方法における各信号を示すタイミングチャートであり、
図17~
図22は、
図15の駆動方法における画素回路の状態を示す図である。
【0063】
本実施の形態の駆動方法は、実施の形態1と比較して、以下の点が相違する。
・scan PWM(S22)のときに発光しないように、reset PWM(S21)の時点で定電流源のMOSトランジスタMpamのゲート電圧もいったん低電位に初期化する。以後、MOSトランジスタMpamがオンしないように、MOSトランジスタMpamのソース電位はVpam(>Vss)にしておく。
・Vpwm>Vslopeのとき非発光し、Vpwm<Vslopeのとき発光するため、発光/消灯順序が逆になる。
【0064】
本実施の形態では、
図15に示すように、まず、PWM制御部10をリセットする(reset PWM:S21)。
図16及び
図17に示すように、実施の形態1と同様、スイッチdioW及びresWをオンする。これにより、MOSトランジスタMpwmのゲート電位が電源Vssに初期化され、PWM出力増幅インバータ11の入力端子も電源Vssとなる。そうすると、スイッチemのゲート電位が電源Vddとなるため、スイッチemはオフとなる。また、スイッチdioAの制御信号をハイとして、スイッチdioAをオンにする。これにより、MOSトランジスタMpamのゲート電位をVss+Vthnまで低下させる。
【0065】
次に、映像信号を書き込む(scan PWM:S22)。
図16及び
図18に示すように、実施の形態1と同様、スイッチresWをオフにした状態で、MOSトランジスタMpwmのソースから映像信号Vpwmを入力し、MOSトランジスタMpwmのゲート電位をVpwm-|Vthp|まで上昇させる。このとき、スイッチdioAをオフにし、MOSトランジスタMpamのゲート電位Vss+Vthnを容量Cpamに保持する。また、MOSトランジスタMpamのソースに定電流設定信号Vpamを入力する。これにより、MOSトランジスタMpamがオフとなる。MOSトランジスタMpwmのゲート電位の上昇に応じて、PWM出力増幅インバータ11の出力が変化するため、スイッチemがゲート電位のレベルによってオンとなる。このため、上記のように、MOSトランジスタMpamをオフにすることで、発光素子Dを確実に消灯する。
【0066】
次に、定電流設定部20をリセットする(reset PAM:S23)。
図16及び
図19に示すように、実施の形態1と同様、スイッチdioWをオフにすることで、Vpwm-|Vthp|を容量Cpwmに保持し、スイッチresWをオンにすることで、MOSトランジスタMpwmのドレイン電位をVssに初期化する。これにより、スイッチemをオフにする。また、MOSトランジスタMpamのゲート電位を電源Vddに初期化する。
【0067】
次に、定電流を設定する(set PAM:S24)。
図16及び
図20に示すように、実施の形態1と同様、スイッチdioAをオンとし、MOSトランジスタMpamのゲート電位をVddからVpam+Vthnまで低下させる。また、このときスイッチresWをオフにする。なお、実施の形態1と同様に、PWM出力増幅インバータ11の入力端子(=MOSトランジスタMpwmのドレイン)がフローティングになるため、必要に応じて保持容量を該ノードに対して付加してもよい。また、スイッチresWをオフにするタイミングは、次のS25を開始するタイミングでもよい。
【0068】
次に、発光素子を消灯(emission off:S25)及び発光(emission on:S26)する。消灯(S25)では、
図16及び
図21に示すように、スイッチdioAをオフとし、MOSトランジスタMpamのゲート電位Vpam+Vthnを容量Cpamに保持する。
【0069】
さらに、MOSトランジスタMpwmのソースに、スロープ信号Vslopeを入力する。Vpwm>Vslopeまでは、MOSトランジスタMpwmはオフであり、MOSトランジスタMpwmのドレイン及びインバータの入力端子はVssのままである。そうすると、PWM出力増幅インバータ11の出力及びスイッチemのゲートはVddである。このため、スイッチemはオフであり、発光素子Dの消灯が継続する。
【0070】
次に、発光(S26)では、
図16及び
図22に示すように、スロープ信号がさらに上昇する。Vpwm<Vslopeとなると、MOSトランジスタMpwmがオンとなり、PWM出力増幅インバータ11の入力端子にスロープ信号が供給される。そうすると、インバータの出力及びスイッチemのゲート電位が低下し、スイッチemがオンとなるため、発光素子Dが発光する。
【0071】
以上のように本実施の形態では、PWM制御部10の出力部分をインバータで構成し、その出力信号をスイッチemの制御信号として接続し、発光/非発光の切り替えはスイッチemのオン/オフで実現する。実施の形態1では、MOSトランジスタMpamのゲートからMOSトランジスタMampを介して電源に接続されるリークパスが存在する。これに対し、本実施の形態では、このリークパスを削減できるため、ダイナミック動作中の保持特性改善が期待できる。なお、PWM制御部10の出力は、Vss/ハイインピーダンスでなく、Vss/Vddにする必要があるため、回路規模は増加する。
【0072】
(実施の形態3)
図23に、実施の形態3に係る画素回路の構成例を示す。この例では、
図23に示すように、実施の形態1の画素回路から、さらにスイッチemを削除する。スイッチemで消費する電圧分を除くことで、わずかながらも消費電力低減が期待できる。
【0073】
ただし、実施の形態1と違って、少なくともscan PWM(S12)からset PAM(S14)の間(スロープ信号を入力する前まで)、発光素子のアノード端子をVddでなくVssにして、発光素子に電流を流さないようにする必要がある。このため、電源電圧を振幅させる制御が必要となる。
【0074】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、P型のMOSトランジスタをN型のMOSトランジスタとしたり、N型のMOSトランジスタをP型のMOSトランジスタとしたりしてもよい。MOSトランジスタに限らず、その他のトランジスタを使用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 画素回路
10 PWM制御部
11 PWM出力増幅インバータ
20 定電流設定部
100 画素回路
110 PWM制御部
111 MOSトランジスタ
112 容量
113 増幅回路
114、115 スイッチ
120 発光素子
130 駆動スイッチ
140 定電流設定部
200 表示装置
210 表示マトリクス部
220 スキャンドライバ
230 データドライバ
240 制御回路
Cpam 容量
Cpwm 容量
D 発光素子
dioA スイッチ
dioW スイッチ
em スイッチ
Ldt データ線
Lsc スキャン線
Mamp MOSトランジスタ
Min MOSトランジスタ
Mip MOSトランジスタ
Mpam MOSトランジスタ
Mpwm MOSトランジスタ
resA スイッチ
resW スイッチ
Vpam 定電流設定信号
Vpwm 映像信号
Vslope スロープ信号