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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20240115BHJP
   B60C 9/02 20060101ALI20240115BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B60C17/00 B
B60C9/02 B
B60C9/08 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019223435
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021091309
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】乾 祐介
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0121664(US,A1)
【文献】特開2014-024358(JP,A)
【文献】特開2005-306371(JP,A)
【文献】特開昭62-279107(JP,A)
【文献】特開2010-137853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォール間に配置されたトレッドと、
前記一対のビード間に架け渡されたカーカスプライと、
前記サイドウォールにおいて、前記カーカスプライのタイヤ内腔側に配置された補強ゴム層と、を備えるランフラットタイヤであって、
前記トレッドにおいて、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側にはベルトが配置され、
前記カーカスプライは、複数層のプライにより構成され、前記複数層のプライのうち、少なくとも1層のプライが、前記ベルトのタイヤ径方向内側で分割された分割カーカスプライであり、
前記補強ゴム層は、第1補強ゴム層と、第1補強ゴム層のタイヤ径方向外側に配置された第2補強ゴム層であって、前記分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側に配置された第2補強ゴム層と、を備え、前記分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側に配置された前記第2補強ゴム層の硬度は、前記第1補強ゴム層の硬度よりも低く、
タイヤ幅方向断面視において、
前記分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側および、前記ベルトのタイヤ幅方向外側端のタイヤ径方向内側に、前記第2補強ゴム層が配置されており、
前記分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側および、前記ベルトのタイヤ幅方向外側端のタイヤ径方向内側に配置された前記第2補強ゴム層と、前記第2補強ゴム層のタイヤ径方向内側に配置された前記第1補強ゴム層との界面は、タイヤ径方向と略直交しており、
前記分割されたプライのプライ分割端と、前記第2補強ゴム層のタイヤ幅方向内側端との、タイヤ幅方向距離は、10mm以上である、ランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスプライは、2層のプライにより構成されており、
前記2層のプライのうち、前記ベルト側のプライのみが、前記ベルトのタイヤ径方向内側で分割されている、請求項1に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記ベルトのタイヤ幅方向外側端と、前記第2補強ゴム層のタイヤ幅方向外側端との、タイヤ幅方向距離は、10mm以上である、請求項1または請求項2に記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】
前記分割されたプライと、前記ベルトは、一部が重なるように配置されており、
前記分割されたプライのプライ分割端と、前記ベルトのタイヤ幅方向外側端との、タイヤ幅方向距離は、10mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォールに補強ゴム層が配置されたサイド補強タイプのランフラットタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドウォールに補強ゴム層を配置されたサイド補強タイプのランフラットタイヤが知られている。この補強ゴム層は、タイヤの内圧が低下した場合であっても、タイヤが完全に偏平化することを妨げる機能を有する。よって、ランフラットタイヤは、この補強ゴム層を備えることにより、ある程度の距離のランフラット走行(タイヤの内圧が低下した状態での走行)を行うことが可能である。
例えば特許文献1には、重量の増加を抑制しつつ、ランフラット走行時のタイヤサイド部の剛性を向上させるために複数のカーカスプライの一端部側をベルト層の端部に重ねるカーカスの中抜き構造のランフラットタイヤが開示されている。
また、特許文献2には、ランフラット走行時の耐久性および通常内圧走行時の乗り心地性を改良する上で、カーカスプライの少なくとも1枚がベルト層下で切り離された構造のランフラットタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-24358号公報
【文献】特開2000-318408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に示されるランフラットタイヤの場合、中抜きされたカーカスプライの端部周辺の剛性の変化が大きく、特にランフラット走行時において、この部分に応力が集中しやすく、歪みが生じやすい。よって、軽量化は図れるものの、良好な操縦安定性を得ることが難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、操縦安定性を確保しつつ、軽量化を図ることができるランフラットタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のランフラットタイヤ(例えば、タイヤ1)は、一対のビード(例えば、ビード11)と、前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール(例えば、サイドウォール12)と、前記一対のサイドウォール間に配置されたトレッド(例えば、トレッド13)と、前記一対のビード間に架け渡されたカーカスプライ(例えば、カーカスプライ23)と、前記サイドウォールにおいて、前記カーカスプライのタイヤ内腔側に配置された補強ゴム層(例えば、補強ゴム層50)と、を備え、前記トレッドにおいて、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側にはベルト(例えば、スチールベルト26)が配置され、前記カーカスプライは、複数層のプライ(例えば、第1カーカスプライ231、第2カーカスプライ232)により構成され、前記複数層のプライのうち、少なくとも1層のプライ(例えば、第2カーカスプライ232)が、前記ベルトのタイヤ径方向内側で分割された分割カーカスプライであり、前記分割されたプライのプライ分割端(例えば、プライ分割端232A)のタイヤ径方向内側に、前記補強ゴム層が配置されている、ランフラットタイヤである。
【0007】
(2)(1)のランフラットタイヤにおいて、前記カーカスプライは、2層のプライ(例えば、第1カーカスプライ231、第2カーカスプライ232)により構成されており、前記2層のプライのうち、前記ベルト側のプライ(例えば、第2カーカスプライ232)のみが、前記ベルトのタイヤ径方向内側で分割されていてもよい。
【0008】
(3)(1)または(2)のランフラットタイヤにおいて、前記補強ゴム層は、第1補強ゴム層(例えば、第1補強ゴム層501)と、第1補強ゴム層のタイヤ径方向外側に配置された第2補強ゴム層(例えば、第2補強ゴム層502)とにより構成されており、前記分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側および、前記ベルトのタイヤ幅方向外側端(例えば、タイヤ幅方向外側端26A)のタイヤ径方向内側には、前記第2補強ゴム層が配置されており、前記第2補強ゴム層の硬度は、前記第1補強ゴム層の硬度よりも低くてもよい。
【0009】
(4)(3)のランフラットタイヤにおいて、前記ベルトのタイヤ幅方向外側端と、前記第2補強ゴム層のタイヤ幅方向外側端(例えば、タイヤ幅方向外側端502B)との、タイヤ幅方向距離L1は、10mm以上であってもよい。
【0010】
(5)(3)または(4)のランフラットタイヤにおいて、前記分割されたプライのプライ分割端と、前記第2補強ゴム層のタイヤ幅方向内側端(例えば、タイヤ幅方向内側端502A)との、タイヤ幅方向距離L2は、10mm以上であってもよい。
【0011】
(6)(3)~(5)のランフラットタイヤにおいて、前記分割されたプライと、前記ベルトは、一部が重なるように配置されており、前記分割されたプライのプライ分割端と、前記ベルトのタイヤ幅方向外側端との、タイヤ幅方向距離L3は、10mm以上であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操縦安定性を確保しつつ、軽量化を図ることができるランフラットタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るランフラットタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2】上記実施形態に係るランフラットタイヤの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るランフラットタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
なお、図1の断面図は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
なお、後述する図2についても同様である。
【0015】
タイヤ1は、例えば乗用車用のランフラットタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、ビード11の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール12と、サイドウォール12の各々のタイヤ径方向外側に連なって踏面(路面との接地面)13Cを構成するトレッド13と、を備える。
【0016】
ビード11は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを備える。
ビードコア21は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、ホイールのリム(不図示)に固定する役目を果たす部材である。
ビードフィラー22は、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出する、先端先細り形状のゴム部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー22は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0017】
タイヤ1の内部には、一対のビード11間を架け渡されたカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、タイヤ1の骨格となるプライを構成しており、一対のビード11間を、一対のサイドウォール12およびトレッド13を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
カーカスプライ23は、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延び、トレッド13とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。本実施形態においては、プライ折り返し部25は、プライ本体24に重ね合わされている。
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。
そして、本実施形態のカーカスプライ23は、第1カーカスプライ231および第2カーカスプライ232が重ねられた2層のカーカスプライによって構成されている。ただし、カーカスプライ23は複数層であればよく、3層以上であってもよい。
【0018】
ビード11は、チェーハー31と、チェーハー31のタイヤ幅方向外側に配置されたリムストリップゴム32と、をさらに備える。
チェーハー31は、ビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側に設けられている。チェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在している。
リムストリップゴム32は、チェーハー31およびカーカスプライ23のタイヤ幅方向外側に配置されており、リム装着時に、リム(不図示)と接触する部材である。
【0019】
サイドウォール12は、カーカスプライ23のタイヤ幅方向内側に配置された補強ゴム層50と、カーカスプライ23の幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム30とを備える。
補強ゴム層50は、タイヤ幅方向断面視(タイヤ子午線断面視)において略三日月形状のサイド補強ゴムである。この補強ゴム層50は、タイヤ1の内圧が低下した場合であっても、タイヤ1が完全に偏平化することを妨げる機能を有する。この補強ゴム層50の詳細については後述する。
サイドウォールゴム30は、タイヤ1の外壁面を構成するゴム部材である。このサイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0020】
トレッド13は、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側に配置されたスチールベルト26と、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライ27と、キャッププライ27のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴム28と、を備える。
スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、トレッド13と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、2層構造のスチールベルト(内側のスチールベルト261と外側のスチールベルト262)が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。なお、スチールコードを用いたスチールベルト26に替えて、アラミド繊維を用いたタイヤコード等を用いたベルトを用いてもよい。
キャッププライ27は、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置された部材であり、ベルト補強層としての機能を有する。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。本実施形態においては、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aは、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向外側に延出している。
本実施形態の2層構造のスチールベルト26は、内側のスチールベルト261が外側のスチールベルト262よりも幅広であり、したがってスチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aは、内側のスチールベルト261のタイヤ幅方向外側端で構成される。
トレッドゴム28は、通常走行時の踏面(路面との接地面)13Cを構成する部材である。トレッドゴム28の踏面13Cには、複数の溝で構成されるトレッドパターン13Dが設けられている。
【0021】
ビード11、サイドウォール12、トレッド13において、カーカスプライ23および補強ゴム層50のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、トレッド13においては、主にカーカスプライ23の内面を覆い、サイドウォール12およびビード11においては、主に補強ゴム層50の内面を覆っている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0022】
ここで、図1に示されるように、サイドウォール12のサイドウォールゴム30は、トレッド13に向かって延出している。一方、トレッド13のトレッドゴム28は、サイドウォール12に向かって延出している。その結果、カーカスプライ23の一部領域のタイヤ外表面側において、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30とが積層された状態となっている。より詳細には、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28とが共に存在する領域、すなわちサイドウォール12とトレッド13の移行領域において、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、サイドウォールゴム30と、トレッドゴム28とが、順に積層された状態となっている。
【0023】
また、ビード11とサイドウォール12の移行領域付近においては、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、リムストリップゴム32とサイドウォールゴム30とが、順に積層された状態となっている。また、この移行領域付近には、タイヤ幅方向外側に突出する頂部33Aを有してタイヤ周方向に環状に連続して延びるリムプロテクタ33が設けられている。本実施形態においては、リムストリップゴム32にリムプロテクタ33の頂部33Aが設けられている。リムプロテクタ33は、外傷からリム(不図示)を保護する機能を有する。
【0024】
また、ビード11においては、カーカスプライ23のタイヤ内腔側に、補強ゴム層50とチェーハー31とが、順に積層された状態となっている。インナーライナー29は、さらにこれらのゴム部材のタイヤ内腔側を覆っている。なお、カーカスプライ23のタイヤ内腔側に、チェーハー31と補強ゴム層50とを、順に積層し、これらのゴム部材のタイヤ内腔側をインナーライナー29で覆う構成としてもよい。
【0025】
このように、本実施形態のタイヤ1は、一対のビード11と、一対のビード11の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール12と、一対のサイドウォール12間に配置されたトレッド13と、一対のビード11間に架け渡されたカーカスプライ23と、サイドウォール12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側に配置された補強ゴム層50と、を備える。そして、トレッド13において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側にはベルトとしてのスチールベルト26が配置されている。
ここで、本実施形態のタイヤ1は、以下に詳述するように、カーカスプライ23が、複数層のプライ(第1カーカスプライ231、第2カーカスプライ232)により構成され、複数層のプライのうち、少なくとも1層のプライ(第2カーカスプライ232)が、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割された分割カーカスプライとなっている。そして、分割されたプライのプライ分割端232Aのタイヤ径方向内側に、補強ゴム層50が配置されている。
これにより、操縦安定性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0026】
図2は、図1のタイヤ1における、サイドウォール12とトレッド13の境界領域周辺の拡大断面図である。
【0027】
本実施形態のカーカスプライ23は、前述のとおり、第1カーカスプライ231および第2カーカスプライ232が重ねられた2層のカーカスプライによって構成されている。
そして、2層のカーカスプライのうち、スチールベルト26側の第2カーカスプライ232のみが、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割されている。第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aは、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向内側に位置している。そして、第2カーカスプライ232は分割されているため、第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aよりもタイヤ幅方向内側には第2カーカスプライ232は存在していない。
【0028】
補強ゴム層50は、第1補強ゴム層501と、第1補強ゴム層501のタイヤ径方向外側に配置された第2補強ゴム層502とにより構成されている。この第2補強ゴム層502は、第1補強ゴム層501よりも硬度が低い。
そして、分割された第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aのタイヤ径方向内側および、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aのタイヤ径方向内側には、この第2補強ゴム層502が配置されている。
なお、各部材は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に向けて、第2補強ゴム層502、第1カーカスプライ231、第2カーカスプライ232、スチールベルト26の順に積層された構成となっている。
【0029】
ここで、図2に示すタイヤ幅方向断面視(タイヤ子午線断面視)において、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aと、第2補強ゴム層502のタイヤ幅方向外側端502Bとの、タイヤ幅方向距離L1は、10mm以上であることが好ましい。
この距離L1を10mm以上とし、第2補強ゴム層502のタイヤ径方向外側に、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aが余裕を持って配置される態様とすることにより、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aで発生する応力集中を第2補強ゴム層502が確実に吸収し、ランフラット走行時の耐久性をより向上させることができる。
【0030】
また、分割された第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aと、第2補強ゴム層502のタイヤ幅方向内側端502Aとの、タイヤ幅方向距離L2は、10mm以上であることが好ましい。
この距離L2を10mm以上とし、第2補強ゴム層502のタイヤ径方向外側に、第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aが余裕を持って配置される態様とすることにより、プライ分割端232Aで発生する応力集中を第2補強ゴム層502が確実に吸収し、ランフラット走行時の耐久性をより向上させることができる。
【0031】
そして、分割された第2カーカスプライ232と、スチールベルト26は、一部が重なるように配置されており、分割された第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aとの、タイヤ幅方向距離L3は、10mm以上であることが好ましい。
この距離L3を10mm以上とし、分割された第2カーカスプライ232と、スチールベルト26が、確実に重なるような構成とすることにより、タイヤ1の製造工程において、タイヤの骨格となるカーカスプライ23における、第1カーカスプライ231と第2カーカスプライが積層されている部分の上に、スチールベルト26を載せる態様となるため、製造工程が安定し、作業性もよい。
また、第1カーカスプライ231と、第2カーカスプライと、スチールベルト26とが積層されている部分を有すことにより、ランフラット走行時の耐久性をより向上させることができる。
【0032】
ここで、ビードフィラー22および補強ゴム層50に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30およびインナーライナー29よりも硬度が高いゴムを用いる。
ゴムの硬度は、JIS K6253に準拠して、23℃雰囲気において、タイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。
【0033】
例えば、サイドウォールゴム30の硬度を基準としたとき、ビードフィラー22および補強ゴム層50の硬度は、サイドウォールゴム30の硬度の1.1倍~2.3倍程度の硬度のゴムを用いる。
より具体的には、サイドウォールゴム30の硬度は、デュロメータ硬さで45~60の範囲内であるのに対して、補強ゴム層50の硬度は、デュロメータ硬さで70~100の範囲内である。
【0034】
そして、補強ゴム層50を構成する第2補強ゴム層502の硬度は、第1補強ゴム層501の硬度よりも低く設定されている。具体的には、第1補強ゴム層501の硬度は、デュロメータ硬さで75~100であることが好ましく、第2補強ゴム層502の硬度は、第1補強ゴム層501の硬度よりも低く、かつデュロメータ硬さで70~85であることが好ましい。
【0035】
このように、分割された第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aのタイヤ径方向内側に、補強ゴム層50が配置されている態様において、第2補強ゴム層502の硬度を第1補強ゴム層501の硬度よりも低くすることで、プライ分割端232Aで発生する応力集中を第2補強ゴム層502が効果的に吸収しつつ、ランフラット走行時のタイヤ全体の剛性を補強ゴム層50全体により確保することができる。
また、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aのタイヤ径方向内側に補強ゴム層50が配置されている態様において、第2補強ゴム層502の硬度を第1補強ゴム層501の硬度よりも低くすることで、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aで発生する応力集中を第2補強ゴム層502が効果的に吸収しつつ、ランフラット走行時のタイヤ全体の剛性を補強ゴム層50全体によって確保することができる。
【0036】
なお、本実施形態に示されるように、カーカスプライ23は、2層のカーカスプライによって構成されており、2層のカーカスプライのうち、スチールベルト26側の第2カーカスプライ232のみが、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割されている構成が、操縦安定性の確保と軽量化のバランスの面から考えて特に好ましいが、カーカスプライ23の構成はこれに限らない。例えば、2層のカーカスプライとも、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割されている構成であってもよい。また、第1カーカスプライ231のみが、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割されている構成であってもよい。また、カーカスプライ23が、3層以上のプライにより構成され、3層以上のプライのうち、少なくとも1層のプライが、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割された分割カーカスプライとなっている構成であってもよい。これらの場合においても、分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側に、補強ゴム層50が配置されることで、操縦安定性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0037】
なお、本実施形態に示されるように、補強ゴム層50は、第1補強ゴム層501と、第2補強ゴム層502とにより構成されていることが好ましいが、補強ゴム層50が、ひとつのゴム部材により構成されていてもよい。この場合においても、分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側に、補強ゴム層50が配置されることで、操縦安定性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0038】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0039】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード11と、一対のビード11の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール12と、一対のサイドウォール12間に配置されたトレッド13と、一対のビード11間に架け渡されたカーカスプライ23と、サイドウォール12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側に配置された補強ゴム層50と、を備えるランフラットタイヤであって、トレッド13において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側にはスチールベルト26が配置され、カーカスプライ23は、複数層のプライ(第1カーカスプライ231、第2カーカスプライ232)により構成され、複数層のプライのうち、少なくとも1層のプライが、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割された分割カーカスプライであり、分割されたプライのプライ分割端のタイヤ径方向内側に、補強ゴム層50が配置されている。
このように、分割プライを採用し、かつ補強ゴム層を適切な位置に配置することにより、操縦安定性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0040】
(2)本実施形態に係るタイヤ1のカーカスプライ23は、2層のプライ(第1カーカスプライ231、第2カーカスプライ232)により構成されており、2層のプライのうち、スチールベルト26側の第2カーカスプライ232のみが、スチールベルト26のタイヤ径方向内側で分割されている。
このように、2層のプライのうち、スチールベルト26側の第2カーカスプライ232のみを分割プライとし、かつ補強ゴム層を適切な位置に配置することにより、操縦安定性を確保しつつ、軽量化をより適切に図ることができる。
【0041】
(3)本実施形態に係るタイヤ1は、補強ゴム層50が、第1補強ゴム層501と、第1補強ゴム層501のタイヤ径方向外側に配置された第2補強ゴム層502とにより構成されており、分割された第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aのタイヤ径方向内側および、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aのタイヤ径方向内側には、第2補強ゴム層502が配置されており、第2補強ゴム層502の硬度は、第1補強ゴム層501の硬度よりも低い。
このように、第2補強ゴム層502の硬度を第1補強ゴム層の硬度よりも低くすることで、プライ分割端232Aやスチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aで発生する応力集中を第2補強ゴム層502が吸収しつつ、ランフラット走行時のタイヤ全体の剛性を補強ゴム層50全体によって確保することができる。
【0042】
(4)本実施形態に係るタイヤ1における、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aと、第2補強ゴム層502のタイヤ幅方向外側端502Bとの、タイヤ幅方向距離L1は、10mm以上である。
このように、第2補強ゴム層502のタイヤ径方向外側に、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aが余裕を持って配置される態様とすることにより、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aで発生する応力集中を第2補強ゴム層502が確実に吸収し、ランフラット走行時の耐久性をより向上させることができる。
【0043】
(5)本実施形態に係るタイヤ1における、分割された第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aと、第2補強ゴム層502のタイヤ幅方向内側端502Aとの、タイヤ幅方向距離L2は、10mm以上である。
このように、第2補強ゴム層502のタイヤ径方向外側に、第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aが余裕を持って配置される態様とすることにより、プライ分割端232Aで発生する応力集中を第2補強ゴム層502が確実に吸収し、ランフラット走行時の耐久性をより向上させることができる。
【0044】
(6)本実施形態に係るタイヤ1における、分割された第2カーカスプライ232と、スチールベルト26は、一部が重なるように配置されており、分割された第2カーカスプライ232のプライ分割端232Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aとの、タイヤ幅方向距離L3は、10mm以上である。
このように、分割された第2カーカスプライ232と、スチールベルト26が、確実に重なるような構成とすることにより、タイヤ1の製造工程において、タイヤの骨格となるカーカスプライ23における、第1カーカスプライ231と第2カーカスプライが積層されている部分の上に、スチールベルト26を載せることができるため、製造工程が安定し、作業性もよい。
【0045】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 タイヤ
11 ビード
12 サイドウォール
13 トレッド
21 ビードコア
22 ビードフィラー
23 カーカスプライ
231 第1カーカスプライ
232 第2カーカスプライ
232A プライ分割端
24 プライ本体
25 プライ折り返し部
26 スチールベルト(ベルト)
26A タイヤ幅方向外側端
27 キャッププライ
28 トレッドゴム
29 インナーライナー
30 サイドウォールゴム
31 チェーハー
32 リムストリップゴム
33 リムプロテクタ
33A 頂部
50 補強ゴム層
501 第1補強ゴム層
502 第2補強ゴム層
502A タイヤ径方向外側端
502B タイヤ径方向内側端
図1
図2