IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特許7419052成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ
<>
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図1
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図2
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図3
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図4
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図5
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図6
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図7
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図8
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図9
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図10
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図11
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図12
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図13
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図14
  • 特許-成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/10 20060101AFI20240115BHJP
   F16D 55/32 20060101ALI20240115BHJP
   F16D 13/70 20060101ALI20240115BHJP
   F16D 13/62 20060101ALI20240115BHJP
   F16D 13/46 20060101ALI20240115BHJP
   B30B 15/12 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B30B15/10 Z
F16D55/32
F16D13/70 A
F16D13/62 A
F16D13/46 A
B30B15/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019229881
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021098201
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 範男
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140627(JP,A)
【文献】実開昭59-034130(JP,U)
【文献】特開2006-070906(JP,A)
【文献】特開2000-145842(JP,A)
【文献】特開2010-127314(JP,A)
【文献】特開2010-014138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/10
F16D 55/32
F16D 13/70
F16D 13/62
F16D 13/46
B30B 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転に伴ってスライドを進退させる回転軸と、
前記回転軸に連結された一方のディスクと、これに対向する他方のディスクとを接離させ、前記回転軸を回転駆動又は制動するクラッチ又はブレーキと、
前記ディスクの外周側の摩耗を抑制する摩耗抑制部と、を備え
前記摩耗抑制部は、前記一方のディスクと前記他方のディスクとが接触したときの面圧を、外周側の方が内周側よりも小さくなるようにする、
成形装置。
【請求項2】
前記一方のディスクはライニングを有し、
前記ライニングの内周部と外周部とで、前記他方のディスクとの接触時の面圧と周速との積で表される伝達エネルギーが互いにほぼ等しい、
請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記他方のディスクは、前記一方のディスクと接触する接触部を有し、
前記摩耗抑制部は、前記接触部が外周側ほど軸方向に大きく撓むように、前記他方のディスクに設けられた中抜き部である、
請求項1又は請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記中抜き部は、前記他方のディスクの外周面に開口する凹状に形成され、周方向に複数設けられ、
周方向に隣り合う2つの中抜き部の間の各リブは、内周部の周方向幅が外周部の周方向幅よりも大きい、
請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記接触部は、外周側ほど軸方向厚さが薄くなるように形成されている、
請求項3又は請求項4に記載の成形装置。
【請求項6】
前記中抜き部は、前記他方のディスクの外周面に開口する凹状に形成され、
前記他方のディスクは、当該他方のディスクの内周側の空間と前記中抜き部とを連通する連通孔を有する、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の成形装置。
【請求項7】
前記他方のディスクは、前記一方のディスクの軸方向の両側に2つ配置され、
前記摩耗抑制部は、2つの前記他方のディスクのうちの少なくとも一方に設けられる、
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の成形装置。
【請求項8】
回転に伴ってスライドを進退させる回転軸と、
前記回転軸に連結された一方のディスクと、これに対向する他方のディスクとを接離させ、前記回転軸を回転駆動又は制動するクラッチ又はブレーキとを備えた成形装置のクラッチ又はブレーキであって、
前記ディスクの外周側の摩耗を抑制する摩耗抑制部を備え
前記摩耗抑制部は、前記一方のディスクと前記他方のディスクとが接触したときの面圧を、外周側の方が内周側よりも小さくなるようにする、
成形装置のクラッチ又はブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置、成形装置のクラッチ又はブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチ機構によりエキセン軸の回転駆動を行う鍛造プレス装置などの成形装置が知られている。
例えば特許文献1に記載の鍛造プレス装置では、クラッチ機構により摩擦板(ライニング)全面をシリンダにて均一圧力で加圧して、外部回転力(モータ駆動のフライホイール回転力など)を伝えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-140627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クラッチ機構において、接続時にライニングに与えられる単位面積あたりの伝達エネルギーはP・V(P:面圧、V:周速)で表される。したがって、面圧Pが均一である場合、ライニングの外周側の周速(周方向速度)が内周側の周速よりも大きいため、外周側の伝達エネルギーは内周側の伝達エネルギーよりも大きくなる。
その結果、ライニングは外周側の方が内周側よりも早く・大きく摩耗し、外周側が早期劣化(摩耗、割れ、欠けなど)を起こしやすい。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来に比べ、ディスク(ライニング)の摩耗を均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る成形装置は、
回転に伴ってスライドを進退させる回転軸と、
前記回転軸に連結された一方のディスクと、これに対向する他方のディスクとを接離させ、前記回転軸を回転駆動又は制動するクラッチ又はブレーキと、
前記ディスクの外周側の摩耗を抑制する摩耗抑制部と、を備え
前記摩耗抑制部は、前記一方のディスクと前記他方のディスクとが接触したときの面圧を、外周側の方が内周側よりも小さくなるようにするように構成される。
【0007】
本発明に係る成形装置のクラッチ又はブレーキは、
回転に伴ってスライドを進退させる回転軸と、
前記回転軸に連結された一方のディスクと、これに対向する他方のディスクとを接離させ、前記回転軸を回転駆動又は制動するクラッチ又はブレーキとを備えた成形装置のクラッチ又はブレーキであって、
前記ディスクの外周側の摩耗を抑制する摩耗抑制部を備え
前記摩耗抑制部は、前記一方のディスクと前記他方のディスクとが接触したときの面圧を、外周側の方が内周側よりも小さくなるようにするように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来に比べてディスク(ライニング)の摩耗を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る鍛造プレス装置を示す図である。
図2】本実施形態に係るクラッチ周辺部の断面図である。
図3】本実施形態に係るクラッチを構成するディスクの正面図である。
図4】本実施形態に係るクラッチを構成するプレートを示す図である。
図5図4のプレートの変形例を示す図である。
図6図4のプレートの変形例を示す図である。
図7図4のプレートの変形例を示す図である。
図8図4のプレートの変形例を示す図である。
図9図4のプレートの変形例を示す図である。
図10】中抜き部をピストンに設けた場合のクラッチ周辺部の断面図である。
図11図10のピストンを示す図である。
図12図11のピストンの変形例を示す図である。
図13図11のピストンの変形例を示す図である。
図14図11のピストンの変形例を示す図である。
図15】本実施形態の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[プレス装置の全体構成]
図1は、本実施形態に係る鍛造プレス装置1を示す図である。
この図に示すように、本実施形態に係る鍛造プレス装置1は、鍛造成形を行う成形装置であり、ベッド23、アップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、駆動部10を備える。
【0012】
ベッド23、アップライト22及びクラウン21は、鍛造プレス装置1のフレーム部を構成する。これらベッド23、アップライト22及びクラウン21は、その内部にタイロッド25aが挿入され、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結される。
【0013】
ボルスタ24は、ベッド23上に固定され、その上部には下金型27が固定される。
スライド18は、アップライト22に設けられたガイド19により、上下方向に進退可能に支持される。スライド18の下部には上金型26が固定される。スライド18が下降することで、上金型26と下金型27とが近接し、これらの間で被成形物が鍛造成形される。なお、スライド18が進退する方向(プレス方向)は特に制限されない。
【0014】
駆動部10は、スライド18を進退させるための構成であり、モータ11、フライホイール12、クラッチ30、伝動軸14、減速機15、エキセン軸16及びコネクティングロッド(コンロッド)17を備えて構成される。このうち、伝動軸14(後述の駆動軸31を含む)及びエキセン軸16が、本発明に係る回転軸の一例に相当する。
【0015】
モータ11は、クラウン21などのフレーム部に固定される。モータ11の動力はベルト11aを介してフライホイール12に伝達され、フライホイール12を回転させる。
フライホイール12は、回転可能に支持され、回転エネルギーを蓄積する。
クラッチ30は、伝動軸14の軸方向の一端部に配置され、フライホイール12と伝動軸14との連結を制御して伝動軸14の回転駆動を行う。クラッチ30の具体構成については後述する。
伝動軸14は、フライホイール12の回転運動を減速機15に伝達する。
減速機15は、伝動軸14の回転運動を減速してエキセン軸16に伝達する。
エキセン軸16は、軸受41を介してクラウン21又はアップライト22などのフレーム部に回転可能に支持される。エキセン軸16は、回転中心軸Axに沿って貫通する中空部を有し、この中空部内に伝動軸14が当該エキセン軸16と相対回転可能に配置される。
コンロッド17は、エキセン軸16とスライド18とを連結し、エキセン軸16の回転運動を直線運動に変換してスライド18に伝達する。
【0016】
[クラッチの構成]
図2は、クラッチ30周辺部の断面図であり、図3は、クラッチ30を構成するディスク32の正面図である。図4は、クラッチ30を構成するプレート34を示す図であり、図5図9は、プレート34の変形例を示す図である。図4図9では、(a)が回転中心軸Axに沿ったプレート34の断面を示し、(b)が(a)の矢印線におけるプレート34の断面を示す。なお、クラッチ30は伝動軸14(エキセン軸16)の回転中心軸Axに対してほぼ軸対称形状であるため、図2では回転中心軸Axから下側半部の図示を省略している。
また、以下の説明では、特に断りのない限り、回転中心軸Axに沿った方向を「軸方向」、回転中心軸Axに垂直な方向を「径方向」、回転中心軸Axを中心とする回転方向を「周方向」という。「内径」、「外径」、「内周」、「外周」の語も、回転中心軸Axに対する位置、方向等を指す。
【0017】
クラッチ30は、伝動軸14の同軸上に固定された駆動軸31とフライホイール12との連結を断続でき、フライホイール12から伝動軸14(エキセン軸16)への動力の接続と切断とを切り替える機能を有する。
具体的には、図2に示すように、クラッチ30は、駆動軸31に連結されて連動回転するディスク32と、ピストン33と、フライホイール12に連結されて連動回転するプレート34とを備えている。このうち、ピストン33及びプレート34は、本発明に係る他方のディスクの一例に相当する。
【0018】
ディスク32は、円環板状に形成され、ボス311を介して駆動軸31に同心状に固定されている。ディスク32の両主面の各々には、複数のライニング321が取り付けられている。複数のライニング321は、図3に示すように、ディスク32の各主面に、内周部半径R1、外周部半径R2の略円環状に配置されている。
【0019】
ピストン33は、図2に示すように、ディスク32の軸方向の一方側(図2の右側)に対向配置され、シリンダ331に駆動されて当該一方側からディスク32(ライニング321)と接離する。ピストン33は、ライニング321の内周部半径R1よりも小さい内径と外周部半径R2よりも大きい外径を有する円環板状に形成されている。シリンダ331は、支持シャフト332を介してフライホイール12に固定され、ピストン33を軸方向に移動可能に支持している。シリンダ331は、図示しないエア配管が連通された圧力室331aを有している。圧力室331aには、図示しないロータリジョイントを介して圧力源から高圧エアが供給可能となっている。
ピストン33は、圧力室331aへのエア供給が制御されることにより、動作制御される。すなわち、圧力室331aに作動空気が供給されると、ピストン33が軸方向他方側に移動してディスク32(ライニング321)と接触し、さらにディスク32をプレート34に押し付ける。こうして、ディスク32両面のライニング321が、フライホイール12と一体回転するピストン33及びプレート34と摩擦接触状態となって互いに連結され、フライホイール12から駆動軸31(伝動軸14)への動力伝達が可能な接続状態となる。また、圧力室331a内の作動空気が解放されると、ピストン33及びプレート34とディスク32とが離間して、フライホイール12から駆動軸31への動力伝達が切断される。なお、シリンダ331は空圧式でなく油圧式であってもよい。
【0020】
プレート34は、ディスク32の軸方向の他方側(図2の左側)に対向配置されて、当該他方側においてディスク32(ライニング321)と接離する。プレート34は、ライニング321の内周部半径R1よりも小さい内径と外周部半径R2よりも大きい外径を有する円環板状に形成され、フライホイール12に固定されている。フライホイール12は、軸受121を介して、鍛造プレス装置1のフレーム部に固定された支持部材35に支持されている。支持部材35は、駆動軸31を支持する軸受部351を有している。
【0021】
また、プレート34は、中抜き部34aを有している。中抜き部34aは、プレート34のうち、ディスク32と接触する軸方向一方側の接触部34bの軸方向への撓みを制御する。この中抜き部34aは、ディスク32とプレート34の外周側の摩耗を抑制するためのものであり、本発明に係る摩耗抑制部の一例に相当する。
具体的には、図4に示すように、中抜き部34aは、プレート34の中程の軸方向位置において、外周面に開口する凹状に形成され、周方向に複数設けられている。中抜き部34aの内周部は、ライニング321の内周部半径R1の位置にほぼ対応する。周方向に隣り合う2つの中抜き部34a間のリブ34cは、本実施形態では、内周部における周方向の内周部幅a1と、外周部における周方向の外周部幅a2との比が、ライニング321の外周部半径R2と内周部半径R1との比に対応している(すなわち、a1:a2=R2:R1)。なお、外周部幅a2を有するリブ34cの外周部は、ライニング321の外周部半径R2の位置にほぼ対応する。また、リブ34cの周方向の幅は、外周側に位置するに連れて次第に小さくなる。ただし、内周部幅a1及び外周部幅a2は、少なくともa1>a2であればよい。
【0022】
このような中抜き部34aが設けられていることにより、当該中抜き部34aの軸方向一方側に隣接する接触部34bは、ディスク32(ライニング321)と接触したときに、外周側の方が内周側よりも軸方向に大きく撓みやすい。そのため、図15(a)に示すように、接触時に接触部34bとライニング321の間で生じる面圧Pは、外周側の方が内周側よりも小さくなるように分布する。
これにより、面圧Pとディスク32の周速Vとの積で表される単位面積あたりの伝達エネルギーは、面圧Pが均一であった従来に比べ、外周側と内周側とでより均一化される。すなわち、従来に比べてライニング321の摩耗が均一化される。ひいては、図15(b)に示すように、従来においては外周側が早く摩耗するために内周側に余裕があるにも関わらずライニング321の交換を要したところ、本実施形態によれば、図15(c)に示すように、ライニング321の摩耗が外周側と内周側とでより均一化される結果、摩耗限界までのライニング321の寿命を延ばすことができる。またこの場合、中抜き部343aを有するプレート34の摩耗も、外周側と内周側とでより均一化される。
【0023】
なお、中抜き部34aは、ライニング321の内周部と外周部とで、周速Vと面圧Pとの積で表される伝達エネルギーが互いにほぼ等しく(例えば、その差が外周部の伝達エネルギーの1割以内に)なるように設けられるのが好ましい。すなわち、ライニング321の内周部の周速V1(=R1・2πN/60)、外周部の周速V2(=R2・2πN/60)、内周部の面圧P1、外周部の面圧P2として、P1・V1≒P2・V2となるのが好ましい。ただし、Nはディスク32の回転数(プレート34との相対回転)[rpm]である。
【0024】
また、中抜き部34aは、その軸方向一方側の接触部34bを、内周側よりも外周側において軸方向に撓みやすくするものであれば、その形状は特に限定されない。
例えば図5に示すように、中抜き部34aをプレート34の全周に亘って1つに繋がる形状とし、プレート34にリブ34cを設けなくともよい。リブ34cを排することにより、接触部34bをより軸方向に撓みやすくできる。
【0025】
また、図6及び図7に示すように、接触部34bは外周側ほどその軸方向厚さが薄くなるように、中抜き部34aの軸方向一方側の面をテーパー面(又は湾曲面など)としてもよい。これにより、接触部34bを内周側よりも外周側においてより軸方向に撓みやすくできる。ひいては、接触時の面圧Pを、より外周側の方が内周側よりも小さくなるように分布させることができる。
【0026】
また、図8及び図9に示すように、中抜き部34aと、プレート34の内周面よりも内周側の空間とが、複数の連通孔34dで連通されていてもよい。つまり、プレート34が、その内周側の空間と中抜き部34aとを連通する複数の連通孔34dを有していてもよい。これにより、プレート34の回転に伴って、その内周側の空気を連通孔34dを通じて中抜き部34a内に導入でき、この空気により接触部34bを冷却できる。したがって、冷却液(水や油など)を用いる冷却機構に比べて簡便な構成で接触部34bを好適に冷却でき、ひいてはライニング321の摩耗・劣化を抑制できる。
【0027】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、ディスク32とプレート34の外周側の摩耗を抑制する摩耗抑制部としての中抜き部34aが設けられているので、内周側よりも外周側の方が早く・大きく摩耗していた従来に比べ、ディスク32(ライニング321)やプレート34の摩耗を均一化できる。ひいては、ライニング321の摩耗限界までの寿命を延ばすことができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、摩耗抑制部としての中抜き部34aは、ディスク32とプレート34とが接触したときの面圧Pを、外周側の方が内周側よりも小さくなるようにする。これにより、外周側と内周側とで面圧Pが略均一の場合に比べ、周速Vと面圧Pとの積で表される伝達エネルギーを外周側と内周側とでより均一化できる。ひいては、従来に比べてライニング321の摩耗を好適に均一化できる。
さらに、ライニング321の内周部と外周部とで、周速Vと面圧Pとの積で表される伝達エネルギーを互いにほぼ等しくすることにより、より確実にライニング321の摩耗を均一化できる。
【0029】
また、中抜き部34aにより、接触部34bが外周側ほどその軸方向厚さが薄くなるように形成された場合には、接触部34bを内周側よりも外周側においてより軸方向に撓みやすくできる。ひいては、接触時の面圧Pを、より外周側の方が内周側よりも小さくなるように分布させることができる。
【0030】
また、プレート34に中抜き部34aと内周側の空間とを連通する連通孔34dが設けられた場合には、プレート34の回転に伴って、その内周側の空気を連通孔34dから中抜き部34a内に導入し、接触部34bを冷却できる。したがって、冷却液(水や油など)を用いる冷却機構に比べて簡便な構成で接触部34bを好適に冷却でき、ひいてはライニング321の摩耗・劣化を抑制できる。
【0031】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、摩耗抑制部としての中抜き部をプレート34に設ける場合について説明したが、当該中抜き部はピストン33に設けられてもよい。この場合、摩耗抑制部としての中抜き部は、ディスク32とピストン33の外周側の摩耗を抑制する。
具体的には、図10に示すように、上述したプレート34の中抜き部34aと同様に、ピストン33に中抜き部33aを設ければよい。これにより、ピストン33のうち、ディスク32と接触する軸方向他方側の接触部34bを、内周側よりも外周側において軸方向に撓みやすくできる。この場合、中抜き部33aは、図11に示すように、周方向にリブ33cを挟んで複数設けてもよいし、図12に示すように、リブ33cを設けずにピストン33の全周に亘って1つに繋げてもよい。また、中抜き部33aは、図13に示すように、接触部33bが外周側ほどその軸方向厚さが薄くなるように軸方向他方側の面をテーパー面(又は湾曲面など)としてもよいし、図14に示すように、当該中抜き部33aとピストン33の内周側の空間とを連通孔33dで連通してもよい。このように、上記実施形態においてプレート34に設けた中抜き部34aと同様に、中抜き部33aをピストン33に設けることにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、摩耗抑制部は、プレート34及びピストン33のうちの少なくとも一方に設けられていればよく、プレート34及びピストン33の双方に設けられていてもよい。
さらに言えば、摩耗抑制部はディスク32に設けられていてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、摩耗抑制部としての中抜き部をクラッチ30に設ける場合について説明したが、当該中抜き部はブレーキに設けられてもよい。
この場合のブレーキは、鍛造プレス装置(成形装置)に設けられ、回転軸(上記実施形態のエキセン軸16等に対応)に連結された一方のディスク(上記実施形態のディスク32に対応)に他方のディスク(上記実施形態のプレート34及びピストン33に対応)を接離させて回転軸を制動する。この場合にも、上記実施形態やその変形例と同様に、中抜き部を他方のディスク等に設けることにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、中抜き部は、クラッチとブレーキの同時に備えるクラッチブレーキに設けられてもよい。
【0033】
また、本発明に係る摩耗抑制部は、ディスクの外周側の摩耗を抑制するものであればよく、上記実施形態における中抜き部に限定されない。また、当該摩耗抑制部は、ディスクとの接触部やリブを含むものであってもよい。
また、上記実施形態では、本発明に係る成形装置の一例として鍛造プレス装置を挙げて説明したが、本発明は、回転軸とそれを回転駆動又は制動するクラッチ又はブレーキとを備えるものであれば、鍛造プレス装置以外の成形装置にも好適に適用できる。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 鍛造プレス装置(成形装置)
12 フライホイール
16 エキセン軸
18 スライド
30 クラッチ
31 駆動軸
32 ディスク(一方のディスク)
33 ピストン(他方のディスク)
33a 中抜き部
33b 接触部
33c リブ
33d 連通孔
34 プレート(他方のディスク)
34a 中抜き部
34b 接触部
34c リブ
34d 連通孔
35 支持部材
321 ライニング
331 シリンダ
a1 リブの内周部幅
a2 リブの外周部幅
Ax 回転中心軸
R1 ライニングの内周部半径
R2 ライニングの外周部半径
P 面圧
P1 ライニング内周部の面圧
P2 ライニング外周部の面圧
V 周速
V1 ライニング内周部の周速
V2 ライニング外周部の周速
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15