(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】錠剤及びコーティング錠
(51)【国際特許分類】
A61K 33/08 20060101AFI20240115BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240115BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20240115BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240115BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A61K33/08
A61K31/192
A61K31/166
A61K9/20
A61P29/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019237739
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】寺本 勘二
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070024(JP,A)
【文献】特開2014-162743(JP,A)
【文献】特開2012-097002(JP,A)
【文献】特開2018-030840(JP,A)
【文献】特開2018-090577(JP,A)
【文献】国際公開第1995/015751(WO,A1)
【文献】特開平07-069887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 33/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有
し、
前記(C)成分/(前記(A)成分+前記(B)成分)で表される質量比が0.08~0.30であり、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.35~15であり、
錠剤1錠あたりの前記(A)成分及び前記(B)成分の合計質量の割合が、39.22~80質量%である、錠剤。
(A)成分:エテンザミド。
(B)成分:
乾燥水酸化アルミニウムゲル。
(C)成分:ロキソプロフェン及びその医薬的に許容可能な塩からなる群より選ばれる少なくとも一種。
【請求項2】
前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.2~25である、請求項
1に記載の錠剤。
【請求項3】
さらに、結合剤を含有し、
錠剤1錠あたりの前記結合剤の質量割合が、0.1~50質量%である、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の錠剤を素錠とし、前記素錠の表面にコーティング層を有する、コーティング錠。
【請求項5】
前記コーティング層が無機顔料を含む、請求項
4に記載のコーティング錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤及びコーティング錠に関する。
【背景技術】
【0002】
エテンザミドは、解熱、鎮痛等に有効なサリチル酸系の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)として広く使用されている。しかし、エテンザミドを含む錠剤は、崩壊性及び硬度(耐摩損性)に課題がある。
前記課題に対し、結晶乳糖の粒子核にポリビニルピロリドンのエタノール水溶液を添加し、その上に、予め無水ケイ酸を添加、混合して粉末物性を改善したエテンザミドを粉末コーティングし、乾燥、整粒し、造粒乳糖、結晶セルロース、クロスポビドン及びマルチトールを混合し、さらにステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エテンザミドはイブプロフェン等と比較して胃障害が低いNSAIDsではあるが、胃障害をより低減するため、制酸剤を配合することがある。しかし、エテンザミドと制酸剤を配合した錠剤は、経時による崩壊性の低下(崩壊遅延)が生じやすい。
特許文献1では、エテンザミドと制酸剤を配合した場合の崩壊遅延の問題について検討されていない。また、特許文献1の方法は、錠剤の大型化や1回服用錠数が多くなることが懸念される。
錠剤の崩壊性や崩壊遅延を改善する一般的な方法として、崩壊剤を増量する方法も知られているが、この方法も、錠剤の大型化や1回服用錠数が多くなることが懸念される。
【0005】
本発明の一態様は、摩損が生じ難い硬度と速やかな崩壊性を有し、エテンザミド及び制酸剤の組み合わせによる崩壊遅延が抑制された錠剤及びコーティング錠の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、エテンザミド及び制酸剤を含む錠剤に、NSAIDsであるロキソプロフェン又はその塩を含有させることで、意外にも、摩損が生じ難い硬度と速やかな崩壊性を維持しつつ、崩壊遅延を抑制できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する、錠剤。
(A)成分:エテンザミド。
(B)成分:アルミニウム原子及びマグネシウム原子から選ばれる1種以上を含有する制酸剤。
(C)成分:ロキソプロフェン及びその医薬的に許容可能な塩からなる群より選ばれる少なくとも一種。
〔2〕前記(B)成分が、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸水素マグネシウム混合乾燥物、酸化マグネシウム及びケイ酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種である、前記〔1〕の錠剤。
〔3〕前記(C)成分/(前記(A)成分+前記(B)成分)で表される質量比が0.01~1.5である、前記〔1〕又は〔2〕の錠剤。
〔4〕前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.1~15である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかの錠剤。
〔5〕前記(A)成分/前記(C)成分で表される質量比が0.2~25である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかの錠剤。
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかの錠剤を素錠とし、前記素錠の表面にコーティング層を有する、コーティング錠。
〔7〕前記コーティング層が無機顔料を含む、前記〔6〕のコーティング錠。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、摩損が生じ難い硬度と速やかな崩壊性を有し、エテンザミド及び制酸剤の組み合わせによる崩壊遅延が抑制された錠剤及びコーティング錠を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔錠剤〕
本発明の一態様に係る錠剤は、以下に示す(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分はエテンザミドである。
エテンザミド(2-エトキシベンザミド)は、サリチル酸系の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)であり、解熱鎮痛成分として使用される。
【0011】
(A)成分の1回当たりの服用量は、30~1000mgが好ましく、50~500mgがより好ましく、70~300mgがさらに好ましい。(A)成分の1回当たりの服用量が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果が十分に得られ、上記上限値以下であれば、1回当たりの服用錠剤数を低減できる。
錠剤1錠あたりの(A)成分の質量は、30~400mgが好ましい。1錠あたりの(A)成分の質量が上記下限値以上であれば、1回服用量あたりの錠剤数を低減でき、上記上限値以下であれば、錠剤硬度を良好に維持でき、また1錠中に他の有効成分を十分に配合できる。
錠剤1錠あたりの(A)成分の質量割合は、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、13~40質量%がさらに好ましい。(A)成分の質量割合が上記下限以上であれば、1回服用量あたりの錠剤数を低減でき、上記上限値以下であれば、1錠中に他の有効成分を十分に配合できる。
【0012】
<(B)成分>
(B)成分はアルミニウム原子及びマグネシウム原子から選ばれる1種以上を含有する制酸剤である。
(A)成分と(B)成分とを併用することで、(A)成分による胃障害が緩和される。また、製造直後の崩壊性、強度等の錠剤物性が改善される。また、(A)成分を含む粉体の流動性が改善され、製造工程における製造機への付着が抑制される。
【0013】
(B)成分としては、アルミニウム原子及びマグネシウム原子から選ばれる1種以上を含有する制酸剤であれば特に限定されず、例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸水素マグネシウム混合乾燥物、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
(B)成分としては、摩損が生じ難い硬度が確保しやすい点で、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、酸化マグネシウムが好ましく、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウムがさらに好ましく、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウムがより好ましい。これらの中でも、保存後の錠剤の臭いの抑制効果が高い点で、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが好ましい。
乾燥水酸化アルミニウムゲルとしては、「第十七改正 日本薬局方」に所載の乾燥水酸化アルミニウムゲルが挙げられる。なお、乾燥水酸化アルミニウムゲルには、結合水等の水が保持されていてもよく、後述する(B)成分の服用量、および質量割合は、水和している水も含む量である。
(B)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(B)成分の1回あたりの服用量は、5~500mgが好ましく、30~300mgがより好ましく、50~200mgがさらに好ましい。(B)成分の1回当たりの服用量が上記下限値以上であれば、(A)成分による胃障害を十分に緩和でき、上記上限値以下であれば、他の有効成分を十分に配合できる。
錠剤1錠あたりの(B)成分の質量は、5~200mgが好ましい。1錠あたりの(B)成分の質量が上記下限値以上であれば、摩損が生じ難い硬度を確保しやすくなり、上記上限値以下であれば、崩壊遅延が生じ難くなり、また他の有効成分を十分に配合できるため1回当たりの服用量を低減できる。
錠剤1錠あたりの(B)成分の質量割合は、1~70質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましく、5~40質量%がさらに好ましい。(B)成分の質量割合が上記下限以上であれば、摩損が生じ難い硬度を確保しやすくなり、上記上限値以下であれば、崩壊遅延が生じ難くなり、また他の有効成分を十分に配合できるため1回当たりの服用量を低減できる。
【0015】
<(C)成分>
(C)成分は、ロキソプロフェン及びその医薬的に許容可能な塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
(A)成分と(B)成分との組み合わせにおいて(C)成分を併用することで、摩損が生じ難い硬度と製造直後の速やかな崩壊性を有し、且つ崩壊遅延が抑制される。
【0016】
ロキソプロフェンの医薬的に許容可能な塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
ロキソプロフェン及びその医薬的に許容可能な塩はそれぞれ水和物の状態で存在していてもよい。水和物の例としては、ロキソプロフェンナトリウム二水和物(水分量として原薬末中約12%に相当する)が挙げられる。ロキソプロフェン及びその医薬的に許容可能な塩が水和物である場合、後述する(C)成分の服用量、および質量割合は、水和している水も含む量である。
(C)成分としては、ロキソプロフェンのアルカリ金属塩が好ましく、ロキソプロフェンナトリウムがより好ましい。
(C)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(C)成分の1回あたりの服用量は、11~170mgが好ましく、20~113mgがより好ましく、27~70mgがさらに好ましい。(C)成分の1回当たりの服用量が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果の増強が期待でき、上記上限値以下であれば、(C)成分による胃傷害を抑制できる。
錠剤1錠あたりの(C)成分の質量は、10~100mgが好ましい。1錠あたりの(C)成分の質量が上記下限値以上であれば、崩壊遅延抑制効果が十分に得られるほか、摩損が生じ難くなり、上記上限値以下であれば、製造工程における製造機への付着を抑制でき、また他の有効成分を十分に配合できる。
錠剤1錠あたり(C)成分の質量割合は、1~70質量%が好ましく、2~50質量%がより好ましく、2~20質量%がさらに好ましい。(C)成分の質量割合が上記下限以上であれば、崩壊遅延抑制効果が十分に得られるほか、摩損が生じ難くなり、上記上限値以下であれば、製造工程における製造機への付着を抑制でき、また他の有効成分を十分に配合できるため1回当たりの服用量を低減できる。
【0018】
<C/(A+B)比>
(C)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比(以下、「C/(A+B)比」ともいう。)、すなわち(A)成分及び(B)成分の合計質量に対する(C)成分の質量の割合は、0.01~1.5が好ましく、0.02~1がより好ましく、0.03~0.5がさらに好ましく、0.2~0.5が特に好ましく、0.2~0.3が最も好ましい。C/(A+B)比が上記下限値以上であれば、崩壊遅延抑制効果がより得られやすく、また摩損が生じ難くなり、上記上限値以下であれば、製造直後の崩壊性がより優れ、また他の有効成分を十分に配合できるため1回当たりの服用量を低減できる。
【0019】
<A/B比>
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「A/B比」ともいう。)、すなわち(B)成分の質量に対する(A)成分の質量の割合は、0.1~15が好ましく、0.15~10がより好ましく、0.2~8がさらに好ましく、0.35~4.5が特に好ましく、1~4.5が最も好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、崩壊遅延抑制効果がより得られやすく、上記上限値以下であれば、摩損が生じ難くなり、また製造直後の崩壊性がより優れる。
【0020】
<A/C比>
(A)成分/(C)成分で表される質量比(以下、「A/C比」ともいう。)、すなわち(C)成分の質量に対する(A)成分の質量の割合は、0.2~25が好ましく、0.2~20がより好ましく、0.4~10がさらに好ましく、0.5~7が特に好ましく、1~4.5が最も好ましい。A/C比が上記下限値以上であれば、製造工程における製造機への付着が抑制され、上記上限値以下であれば、保存後の崩壊遅延抑制効果がより優れる。
【0021】
<A+B>
錠剤1錠あたりの(A)成分及び(B)成分の合計質量(以下、「A+B合計質量」ともいう。)は、製造上問題ない範囲内であれば、特に限定されないが、35~600mgが好ましい。(C)成分を含まない場合は1錠あたりのA+B合計質量が上記下限値以上になると崩壊遅延の発生が顕著になる傾向がある。1錠あたりのA+B合計質量が上記下限値以上であれば、本発明の有用性が高い。1錠あたりのA+B合計質量が上記上限値以下であれば、錠剤の大きさを服用性に適した大きさにしやすい。
錠剤1錠あたりのA+B合計質量の割合(以下、「A+B割合」ともいう。)は、6~97質量%が好ましく、13~90質量%がより好ましく、18~80質量%がさらに好ましい。A+B割合が上記下限値以上であれば、本発明の有用性が高く、上記上限値以下であれば、他の有効成分を十分に配合できるため1回当たりの服用量を低減できる。
【0022】
<任意成分>
本態様の錠剤は、錠剤物性や保存安定性を損なわない範囲で任意に、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の成分(以下、「任意成分」とも記す。)を含有していてもよい。
任意成分としては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の生理活性成分、添加剤等が挙げられる。
【0023】
生理活性成分としては、例えば、(A)成分及び(C)成分以外の解熱鎮痛成分(例えばピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、アセトアミノフェン、スルピリン等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl-メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)、生薬(例えば、ジリュウ、カノコソウ、ケイヒ、ボタンピ、サンショウ、ショウキョウ及びチンピ等)等が挙げられる。これらの生理活性成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
本態様の錠剤が生薬を含む場合、錠剤1錠あたりの生薬の質量割合は50質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。生薬の質量割合が上記上限値以下であれば、崩壊遅延の抑制効果の増強が期待できる。
本態様の錠剤は生薬を含まないことが好ましい。
【0025】
添加剤としては、例えば、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、香料、甘味剤、酸味料等が挙げられる。
結合剤としては、デンプン(トウモロコシデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン等)、α化デンプン、結晶セルロース、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。
賦形剤としては、乳糖、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、トレハロース、マルチトール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、部分α化デンプン等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、タルク等が挙げられる。
香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム等が挙げられる。
酸味料としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等が挙げられる。
これらの添加剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0026】
本態様の錠剤は、摩損が生じ難い硬度を確保しやすくする点で、結合剤を含有することが好ましい。
錠剤1錠あたりの結合剤の質量は、0.1~300mgが好ましく、1~100mgがより好ましい。結合剤の質量が上記下限値以上であれば、摩損がより生じ難く、上記上限値以下であれば、崩壊性がより優れる。
錠剤1錠あたりの結合剤の質量割合は、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。結合剤の質量割合が上記下限値以上であれば、摩損がより生じ難く、上記上限値以下であれば、崩壊性がより優れる。
【0027】
本態様の錠剤は、硬度、崩壊性及び製造性の点で、滑沢剤を含有することが好ましい。
錠剤1錠あたりの滑沢剤の質量は、0.1~20mgが好ましく、1~10mgがより好ましい。滑沢剤の質量が上記下限値以上であれば、製造性がより優れ、上記上限値以下であれば、硬度及び崩壊性がより優れる。
錠剤1錠あたりの滑沢剤の質量割合は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。滑沢剤の質量割合が上記下限値以上であれば、製造性がより優れ、上記上限値以下であれば、硬度及び崩壊性がより優れる。
【0028】
<錠剤の形態>
錠剤の寸法は特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から、錠剤の径として5~14mmφが好ましく、6~13mmφがより好ましく、7~12mmφがさらに好ましい。
1錠あたりの錠剤質量は、150mg~750mg程度が適切である。
錠剤の形状は特に限定されないが、スミ角平錠、スミ丸平錠、丸みを帯びたR錠、又は2段R錠が好ましい。
【0029】
錠剤は、単層錠でも良いし、他の任意の層を加え積層錠としてもよい。
錠剤が単層錠の場合、錠剤は、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む錠剤で構成される。
錠剤が積層錠の場合、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分は同一の層に含まれても異なる層に含まれてもよい。例えば、積層錠は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層と、この薬物層以外の層(任意層)とで構成されてもよい。また、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層と、(A)成分を含む薬物層とで構成されてもよく、(A)成分及び(C)成分を含む薬物層と、(B)成分を含む薬物層とで構成されていてもよく、(A)成分及び(C)成分を含む薬物層と、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層とで構成されてもよく、それぞれの形態においてさらに任意層を有してもよい。本態様では、(C)成分による効果が効果的に得られる点から、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む薬物層を有することが好ましい。
なお、任意層は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のいずれか1以上を含んでいても、いずれも含まなくてもよい。任意層におけるこれらの成分の含有の有無及び含有量は、錠剤1錠あたりのこれらの成分の服用量等を勘案して適宜、選択することができる。また、上述した任意成分は、薬物層のみに含まれていてもよいし、任意層のみに含まれていてもよいし、薬物層及び任意層の両方に含まれていてもよい。錠剤が単層錠の場合、任意成分は薬物層に含まれる。
【0030】
錠剤中の水分量は、錠剤の総質量に対し、1~10質量%が好ましい。水分量が上記下限値以上であれば、経時による圧縮時の成形性の低下が生じ難く、上記上限値以下であれば、崩壊遅延抑制効果がより優れる。
錠剤中の水分量は、電子水分計(例えば島津製作所製のMOISTURE BALANCE MOC-120H)で、錠剤の粉砕物を120℃10分間熱したときの乾燥減量から算出できる。
なお、(C)成分としてロキソプロフェンナトリウム二水和物等の水和物を用いる場合、錠剤中の水分には、この水和物より持ち込まれる水分も含まれる。
【0031】
<錠剤の製造方法>
本態様の錠剤は、錠剤を構成する粉体(以下、「薬物含有粉体」という。)を打錠成形することで得られる。以下、本態様の錠剤の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の錠剤の製造方法は、臼と杵とを有する打錠機を用いて、薬物含有粉体を打錠成形する工程(打錠工程)を有する。
【0032】
薬物含有粉体は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する粉体であればよく、必要に応じて任意成分を含有してもよい。
薬物含有粉体は、例えば、粉体の(A)成分と、粉体の(B)成分と、粉体の(C)成分との粉体混合物でもよいし、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む造粒物でもよい。
薬物含有粉体は、予め混合されたものでもよく、新たに調製されたものでもよい。すなわち、本実施形態の錠剤の製造方法は、粉体の各成分を混合して薬物含有粉体を調製する工程(粉体調製工程)を有してもよい。
【0033】
粉体調製工程は、粉体の(A)成分と、粉体の(B)成分と、粉体の(C)成分と、必要に応じて粉体の任意成分とを混合して薬物含有粉体を得る。
粉体調製工程における混合方法としては特に限定されず、従来公知の粉体混合方法が挙げられる。
粉体調製工程に用いられる各成分は、公知の製造方法により得られたものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。各成分は、原末がそのまま用いられてもよく、造粒されたもの(造粒物)が用いられてもよい。二種以上の造粒物が併用されてもよい。造粒物は(A)成分、(B)成分及び(C)成分より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよく、さらに任意成分を含んでもよい。製造性及び保存後の崩壊遅延抑制効果が優れる点から、(C)成分は、(A)成分および(B)成分の少なくとも一種と同一造粒物中に含まれることが好ましく、(A)成分と同一造粒物中に含まれることがより好ましい。
造粒物の造粒方法としては公知の造粒方法を採用でき、湿式造粒法、乾式造粒法もしくは溶融造粒法などにより製造できるが、製造機器への付着性が低く安定性の観点から、湿式造粒法が好ましく、湿式造粒法の中でも攪拌造粒又は流動層造粒が特に好ましい。
【0034】
打錠工程で用いられる打錠機としては、例えば、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製:リブラ3L)等が挙げられる。
打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定される。
なお、錠剤が積層錠である場合、薬物含有粉体は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分よりも後に充填されてもよい。
【0035】
〔コーティング錠〕
本発明の一態様に係るコーティング錠は、上記した錠剤を素錠とし、この素錠の表面にコーティング層を有する。すなわち、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する錠剤である素錠と、この素錠の表面に設けられたコーティング層とを有する。
【0036】
<コーティング層>
コーティング層は、コーティング剤を含む構成素材より形成されている層である。
素錠の表面にコーティング層を有することで、素錠の吸湿が抑制され、崩壊遅延抑制効果が向上する。
【0037】
コーティング剤としては、崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、例えば皮膜形成剤、可塑剤が好ましい。
皮膜形成剤としては、例えばカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物等)等が挙げられる。特に、製造性及び防湿性に優れる点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールが好ましい。
可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、トリアセチン、カルナウバロウ、グリセリン、マクロゴール、プロピレングリコール、ポリソルベート等の、日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
コーティング剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
コーティング層は、無機顔料を含むことが好ましい。コーティング層が無機顔料を含んでいれば、崩壊遅延抑制効果がより優れる。
無機顔料としては、製造上問題ないものであれば特に限定されないが、例えば酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化亜鉛、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、崩壊遅延抑制効果が高い点で、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化亜鉛、軽質無水ケイ酸が好ましく、酸化チタン、三二酸化鉄が特に好ましい。
無機顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
コーティング層が無機顔料を含む場合、無機顔料の含有量は、製造上問題ない範囲であれば特に限定されないが、コーティング層の総質量に対し、0.01~5質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましく、0.1~0.7質量%が特に好ましい。無機顔料の含有量が上記下限値以上であれば、無機顔料による崩壊遅延抑制効果を得やすくなり、上記上限値以下であれば、コーティング層の成形性が良好となる。
【0040】
素錠の質量に対するコーティング層の質量割合は、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、1~3質量%がさらに好ましい。コーティング層の質量割合が上記下限値以上であれば、崩壊遅延抑制効果がより優れ、上記上限値以下であれば、製造直後の崩壊性がより優れる。
【0041】
<コーティング錠の製造方法>
本態様のコーティング錠は、上記した錠剤の製造方法により錠剤を製造し、得られた錠剤を素錠とし、この素錠の表面に上述したコーティング層を設けることで製造することができる。
素錠の表面にコーティング層を設ける方法は、従来知られた方法を用いることができる。例えば、まず、コーティング剤を水等の媒体に分散させてコーティング剤の分散液であるコーティング液を得る。このとき、必要に応じて、コーティング剤とともに無機顔料を媒体に分散させる。その後、前記コーティング液を噴霧等によって素錠を被覆するように設ける。その後、コーティング液の前記媒体を乾燥させる。これにより、コーティング層が形成され、コーティング錠が得られる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0043】
[使用原料]
(A)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・エテンザミド:岩城製薬株式会社製、「エテンザミド」日本薬局方規格。
【0044】
(B)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業株式会社製、「乾燥水酸化アルミニウムゲルSN」。
・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(メタケイ酸アルミン酸Mg):富士化学工業株式会社製、「ノイシリン」(登録商標)。
・合成ヒドロタルサイト:協和化学工業株式会社製、「アルカマック SN」(登録商標)。
・酸化マグネシウム:富田製薬株式会社製、「酸化マグネシウム」。
【0045】
(C)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・ロキソプロフェンナトリウム二水和物:大和薬品工業株式会社製、日本薬局方規格。
【0046】
任意成分として、以下に示す化合物を用いた。
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製、「LH-31」。
・トウモロコシデンプン:松谷化学工業株式会社製、「局方松谷コーンスターチ」。
・結晶セルロース:旭化成株式会社製、「UF-702」。
【0047】
コーティング層を形成する材料として、以下に示す化合物を用いた。
・コーティング剤:日本カラコン合同会社製、「オパドライ(ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用)」(商標)。
・酸化チタン:堺化学工業株式会社製、「酸化チタン」。
・三二酸化鉄:癸巳化成株式会社製、「三二酸化鉄」。
【0048】
[評価方法]
<錠剤強度の評価>
錠剤硬度が70Nとなるように本圧を調整し製造した錠剤について、第十七改日本薬局方に収載された錠剤の摩損度試験法に準じ、摩損度(初期質量に対する減少質量の質量百分率)を求め、以下の基準で評価した。評点2点以上を合格とした。なお、日本薬局方では、摩損度は1.0%以下が望ましいとされている。
(評価基準)
4:摩損度が0.1%以下。
3:摩損度が0.1%を超え、0.5%以下。
2:摩損度が0.5%を超え~1.0%以下。
1:摩損度が1.0%を超える。
【0049】
<製造直後の崩壊性の評価>
錠剤硬度が70Nとなるように本圧を調整し製造した錠剤について、第十七改日本薬局方に収載された錠剤の崩壊試験法に準じ、崩壊試験液として水を用い、6錠の崩壊時間(分および秒)を測定し、その平均値を求めた。求めた平均値を分に換算し、小数点以下第1位を四捨五入した値を「製造直後崩壊時間」とした。例えば、平均値が0.5分以上1.5分未満(30秒以上1分30秒未満)の場合の製造直後崩壊時間は1分である。なお、0.5分未満の場合は0分とする。
【0050】
<保存後の崩壊性の評価>
予め錠剤を収容する複数のポケットを成形した樹脂シート(大成化工製、「TAS-230」)の各ポケットに、製造した錠剤を入れ、樹脂シートのポケット開口側にアルミ箔を貼り合わせてPTP(プレススルー包装体)を得た。このPTPを50℃75%RHで8週間保存した。その後、PTPから錠剤を取出し、上記と同様に6錠の崩壊時間(分および秒)を測定し、その平均値を求めた。求めた平均値を分に換算し、小数点以下第1位を四捨五入した値を「保存後崩壊時間」とした。
【0051】
<崩壊遅延の評価>
製造直後の崩壊性の評価で求めた「製造直後崩壊時間」T1(分)と、保存後の崩壊性の評価で求めた「保存後崩壊時間」T2(分)との差(T2-T1)を算出した。その値を崩壊遅延とし、以下の基準で評価した。評点2点以上を合格とした。なお、崩壊遅延が生じない錠剤において、測定のばらつきや四捨五入の影響により、上記の差が0分未満になる場合があるが、その場合は評点を5とした。
(評価基準)
5:崩壊遅延が10分未満。
4:崩壊遅延が10分以上~20分未満。
3:崩壊遅延が20分以上~30分未満。
2:崩壊遅延が30分以上~40分未満。
1:崩壊遅延が40分以上。
【0052】
[実施例1~16、比較例1~4]
表1、2又は4に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分を、錠剤1錠当たりの各成分の含有量が表1、2又は4に示す値となるように秤取し、混合して薬物含有粉体を調製した。得られた薬物含有粉体を以下に示す打錠条件で打錠成形して錠剤(単層錠)を得た。得られた錠剤の評価結果を表1、2、4に示す。
【0053】
(打錠条件)
打錠機:ロータリー式打錠機 リブラ3L(菊水製作所製)。
盤回転速度:20rpm。
臼杵:φ8.5mm(2段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さ0.1mm、R1=3.4、R2=10)。
予圧:2kN(約20MPa、約200kg/cm2)。
本圧:錠剤ごとに調整(錠剤硬度が70Nとなるように調整)。
【0054】
[実施例17~23]
実施例1と同様にして錠剤を製造し、この錠剤を素錠とした。
表3に示すコーティング層の欄に示す材料を、錠剤1錠当たりの各材料の含有量が表3に示す値となるように秤取し、水を加えてコーティング液を調製した。コーティング液の固形分濃度は15質量%とした。得られたコーティング液を、アクアコーター48型(フロイント産業株式会社製)を用いて、給気温度60℃、給気風量2.3m3/分、排気温度42±2℃の条件下で、素錠に噴霧した。その後、給気温度60℃、給気風量2.3m3/分で20分間乾燥させて、素錠の表面にコーティング層が設けられたコーティング錠を得た。得られたコーティング錠の評価結果を表3に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
(A)成分を含み、(B)成分及び(C)成分を含まない比較例1の錠剤は、製造直後において、摩損度が大きく、崩壊性が悪かった。
(A)成分及び(B)成分を含み、(C)成分を含まない比較例2~4の錠剤は、保存により顕著な崩壊遅延が発生した。
これに対し、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を同一層に含む実施例1~23の錠剤又はコーティング錠は、製造直後において、摩損度が小さく、崩壊性が良好であった。また、保存による崩壊遅延が抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の錠剤及びコーティング錠は、摩損が生じ難い硬度と速やかな崩壊性を有する。また、エテンザミド及び制酸剤の組み合わせによる崩壊遅延が抑制されている。