(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】硫化カルボニル分解装置および硫化カルボニル検知装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/58 20060101AFI20240115BHJP
B01J 23/02 20060101ALI20240115BHJP
G01N 31/10 20060101ALI20240115BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B01J23/58 A
B01J23/02 A
G01N31/10
G01N31/00 V
(21)【出願番号】P 2019237876
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019175335
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-504631(JP,A)
【文献】特表昭62-500999(JP,A)
【文献】特開2002-224572(JP,A)
【文献】特開2019-122892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0121093(US,A1)
【文献】特開2017-003534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
G01N 31/10
G01N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化カルボニルが少なくとも加水分解を含む触媒反応するための触媒を有する触媒部と、
触媒反応を引き起こすための加熱機構と、を備え、
前記触媒は、
アルカリ土類金属シリケートとして、50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシアおよびカルシアとを、前記触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲で含むことにより、前記アルカリ土類金属シリケートを主成分として含む、硫化カルボニル分解装置。
【請求項2】
前記触媒は、白金およびパラジウムのうちの少なくとも一方と、アルミナとをさらに含む、請求項
1に記載の硫化カルボニル分解装置。
【請求項3】
前記触媒は、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムを、前記触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲でさらに含む、請求項
1に記載の硫化カルボニル分解装置。
【請求項4】
前記触媒は、30質量%以下のアルミナを、前記触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲でさらに含む、請求項
1に記載の硫化カルボニル分解装置。
【請求項5】
前記加熱機構は、140℃以上500℃以下の温度範囲において、前記触媒部を加熱するように構成されている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の硫化カルボニル分解装置。
【請求項6】
前記触媒は、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムを、前記触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲でさらに含む、請求項
1に記載の硫化カルボニル分解装置。
【請求項7】
硫化カルボニルが少なくとも加水分解を含む触媒反応するための硫化カルボニル分解部と、
前記硫化カルボニル分解部により前記硫化カルボニルが触媒反応することにより発生した被検知ガス中の成分を検知するガス検知部と、を備え、
前記硫化カルボニル分解部は、
前記硫化カルボニルが少なくとも加水分解を含む触媒反応するための触媒を有する触媒部と、
触媒反応を引き起こすための加熱機構と、を含み、
前記触媒は、
アルカリ土類金属シリケートとして、50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシアおよびカルシアとを、前記触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲で含むことにより、前記アルカリ土類金属シリケートを主成分として含む、硫化カルボニル検知装置。
【請求項8】
前記ガス検知部は、電気化学式のガス検知部を含む、請求項
7に記載の硫化カルボニル検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硫化カルボニル分解装置および硫化カルボニル検知装置に関し、特に、触媒により硫化カルボニルを触媒反応させる硫化カルボニル分解装置および硫化カルボニル検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化カルボニルは、半導体デバイスの微細加工におけるパターンエッチングされた構造の側壁上に保護膜が形成されることであるパッシベーションによるボーイングと呼ばれる形状異常を抑制する効果があるドライエッチングガスとして注目されている。一方で、硫化カルボニルは、毒性の観点から、許容濃度の規制が布かれている。米国では、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)において、硫化カルボニルの時間加重平均許容濃度(TLV-TWA)5ppmの規制が布かれている。
【0003】
このことから、半導体デバイス製造工程からの漏洩を適切に検知する必要がある。
【0004】
従来、触媒により硫化カルボニルを触媒反応させる硫化カルボニル検知装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1には、硫化カルボニルの濃度を測定する硫化カルボニル測定装置(硫化カルボニル検知装置)が開示されている。この硫化カルボニル測定装置は、硫化カルボニルを触媒反応させるための触媒である活性アルミナと、硫化カルボニルを触媒反応させることにより発生した硫化水素の濃度を測定する電気化学式センサとを備えている。この硫化カルボニル測定装置は、硫化カルボニルの濃度を直接測定するのではなく、硫化カルボニルを触媒反応(加水分解)させて発生した硫化水素の濃度を、硫化カルボニルの濃度に換算して、硫化カルボニルの濃度を間接的に測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、半導体工場では、フッ素系冷媒として、ガルデン、フロリナート、ノベックなどの揮発成分が良く利用されているとともに、洗浄剤として、アルコール類などの揮発成分が良く利用されている。このため、上記特許文献1に記載されたような硫化カルボニル測定装置を半導体工場において用いる場合、フッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下において、硫化カルボニルの触媒反応を安定して行う必要があるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、硫化カルボニルの触媒反応を安定して行うことが可能な硫化カルボニル分解装置および硫化カルボニル検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、本願発明者は、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒が、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分の被毒に強いという新たな知見を得た。すなわち、この発明の第1の局面による硫化カルボニル分解装置は、硫化カルボニルが少なくとも加水分解を含む触媒反応するための触媒を有する触媒部と、触媒反応を引き起こすための加熱機構と、を備え、触媒は、アルカリ土類金属シリケートとして、50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシアおよびカルシアとを、触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲で含むことにより、アルカリ土類金属シリケートを主成分として含む。
【0010】
この発明の第1の局面による硫化カルボニル分解装置では、上記のように、触媒を、アルカリ土類金属シリケートを含むように構成する。これにより、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒により、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、フッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分による被毒を抑制しつつ、硫化カルボニルの触媒反応を引き起こすことができる。その結果、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、硫化カルボニルの触媒反応を安定して行うことが可能な硫化カルボニル分解装置を提供することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、触媒は、白金およびパラジウムのうちの少なくとも一方と、アルミナとをさらに含む。このように構成すれば、白金およびパラジウムのうちの少なくとも一方と、アルミナとにより触媒反応を促進することができるので、白金およびパラジウムのうちの少なくとも一方と、アルミナとを含む触媒により、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0014】
この場合、好ましくは、触媒は、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムを、触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲でさらに含む。このように構成すれば、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムにより、触媒反応を促進させることができるので、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムを含む触媒により、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0015】
上記触媒が50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシアおよびカルシアとを含む構成において、好ましくは、触媒は、30質量%以下のアルミナを、触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲でさらに含む。このように構成すれば、30質量%以下のアルミナにより、触媒反応を促進させることができるので、30質量%以下のアルミナを含む触媒により、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0016】
上記第1の局面による硫化カルボニル分解装置において、好ましくは、加熱機構は、140℃以上500℃以下の温度範囲において、触媒部を加熱するように構成されている。このように構成すれば、加熱機構の加熱温度を140℃以上とすることにより、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒により、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。また、加熱機構の加熱温度を500℃以下とすることにより、干渉ガスの影響により、硫化カルボニルの触媒反応効果が低下し過ぎることを抑制することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0017】
上記第1の局面による硫化カルボニル分解装置において、好ましくは、触媒は、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムを、触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲でさらに含む。このように構成すれば、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムにより、触媒反応を促進させることができるので、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムを含む触媒により、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0018】
この発明の第2の局面による硫化カルボニル検知装置は、硫化カルボニルが少なくとも加水分解を含む触媒反応するための硫化カルボニル分解部と、硫化カルボニル分解部により硫化カルボニルが触媒反応することにより発生した被検知ガス中の成分を検知するガス検知部と、を備え、硫化カルボニル分解部は、硫化カルボニルが少なくとも加水分解を含む触媒反応するための触媒を有する触媒部と、触媒反応を引き起こすための加熱機構と、を含み、触媒は、アルカリ土類金属シリケートとして、50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシアおよびカルシアとを、触媒の構成成分の質量%の合計が100質量%を超えない範囲で含むことにより、アルカリ土類金属シリケートを主成分として含む。
【0019】
この発明の第2の局面による硫化カルボニル検知装置では、上記のように、触媒を、アルカリ土類金属シリケートを含むように構成する。これにより、第1の局面による硫化カルボニル分解装置と同様に、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、硫化カルボニルの触媒反応を安定して行うことが可能な硫化カルボニル検知装置を提供することができる。
【0020】
上記第2の局面による硫化カルボニル検知装置において、好ましくは、ガス検知部は、電気化学式のガス検知部を含む。このように構成すれば、電気化学式のガス検知部により、硫化カルボニル分解部により硫化カルボニルが触媒反応されることにより発生した被検知ガス中の成分を好適に検知することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、硫化カルボニルの触媒反応を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態による硫化カルボニル検知装置を示した模式図である。
【
図2】実施例1による実験結果(COS調整濃度と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図3】実施例2による実験結果(Al
2O
3含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図4】実施例3による実験結果(Pt/Al
2O
3含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図5】実施例4による実験結果(Pd/Al
2O
3含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図6】実施例5による実験結果(Pt:Pd(1:1)/Al
2O
3含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図7】実施例6による実験結果(Pt:Pd(2:1)/Al
2O
3含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図8】実施例7による実験結果(Pt:Pd(1:2)/Al
2O
3含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図9】実施例8による実験結果(触媒温度と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図10】実施例9による実験結果(触媒温度と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図11】実施例10による実験結果(雑ガス干渉性)を示したグラフである。
【
図12】実施例11による実験結果(雑ガス共存応答性)を示したグラフである。
【
図13】実施例12による実験結果(雑ガス飽和蒸気暴露)を示したグラフである。
【
図14】実施例13による実験結果(触媒かさ密度に対する圧力損失)を示したグラフである。
【
図15】実施例14による実験結果(Pt含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図16】実施例15による実験結果(Pd含有率と指示値との関係)を示したグラフである。
【
図17】実施例16による実験結果(雑ガス干渉性)を示したグラフである。
【
図18】実施例17による実験結果(雑ガス干渉性)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
まず、
図1を参照して、一実施形態による硫化カルボニル検知装置100の構成について説明する。
【0025】
(硫化カルボニル検知装置の全体構成)
図1に示すように、硫化カルボニル検知装置100は、硫化カルボニル(化学組成:COS)を触媒反応させるとともに、硫化カルボニルが触媒反応されることにより発生した被検知ガス中の成分を検知する装置である。硫化カルボニル検知装置100は、たとえば、分析試料中の硫化カルボニルの検知用、雰囲気中の硫化カルボニルの検知用などに用いることができる。
【0026】
硫化カルボニル検知装置100は、流量制御部10と、ポンプ20と、硫化カルボニル分解部30と、ガス検知部40とを備えている。流量制御部10と、硫化カルボニル分解部30と、ガス検知部40と、ポンプ20とは、被検知ガスG(分析試料のガス、雰囲気中のガスなど)の流れ方向の上流側から下流側に向かって、ガス流路50により、この順に流体的に接続されている。なお、各構成の接続順は、硫化カルボニル分解部30と、ガス検知部40とがこの順に接続されていれば、特に限られない。また、硫化カルボニル分解部30は、特許請求の範囲の「硫化カルボニル分解装置」の一例である。
【0027】
流量制御部10は、たとえばマスフローコントローラであり、被検知ガスGの流量を制御するように構成されている。硫化カルボニル検知装置100は、流量制御部10による被検知ガスGの流量の制御により、定流量の被検知ガスGが流れるように構成されている。被検知ガスGの流量は、特に限られないが、たとえば、500ml/m程度とすることができる。ポンプ20は、被検知ガスGがガス流路50を介して硫化カルボニル分解部30による圧力損失を生じた場合、ガス検知部40の内蔵ポンプを補助するための駆動源である。
【0028】
硫化カルボニル分解部30は、被検知ガスG中の硫化カルボニルを少なくとも加水分解を含む触媒反応させるように構成されている。具体的には、硫化カルボニル分解部30は、触媒筒31と、加熱機構32とを含んでいる。触媒筒31は、筒本体31aと、触媒31bとを有している。筒本体31aは、たとえば、アルミナ管、石英管などである。筒本体31aは、中空の円筒形状を有している。筒本体31aには、触媒31bが充填されている。触媒31bは、被検知ガスG中の硫化カルボニルが少なくとも加水分解を含む触媒反応するために設けられている。触媒反応は、たとえば、以下の式(1)に示す硫化カルボニルの加水分解反応、以下の式(2)に示す、硫化カルボニルの加水分解により生成された硫化水素(化学組成:H2S)の酸化反応などを含み得る。なお、触媒筒31は、特許請求の範囲の「触媒部」の一例である。
COS+H2O→H2S+CO2 ・・・(1)
H2S+3/2O2→SO2+H2O ・・・(2)
【0029】
ここで、本実施形態では、触媒31bは、塩基性触媒であるアルカリ土類金属シリケートを含んでいる。触媒31bは、硫化カルボニルの触媒反応を促進する観点から、塩基性を示す材料であることが好ましい。たとえば、触媒31bは、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物、希土類酸化物、酸化トリウム(IV)(化学組成:ThO2)、ジルコニア(化学組成:ZrO2)、酸化亜鉛(化学組成:ZnO)、セピオライト(化学組成:Mg4Si12O30(OH)4(OH2)4・8H2O)、ハイドロタルサイト(化学組成:Mg6Al2CO3(OH)16・4H2O)、クリソタイル(化学組成:Mg3(Si2O5)(OH)4)などを含んでいても良い。また、両性を示す材料として、酸化鉄を含んでいても良い。具体的には、マグネタイト(化学組成:Fe2+Fe3+
2O4),ヘマタイト(化学組成:Fe2O3,α-Fe2O3),マグへマイト(化学組成:Fe2O3,γ-Fe2O3)を挙げることができる。
【0030】
好ましくは、触媒31bは、アルカリ土類金属シリケートとして、シリカ(化学組成:SiO2)と、マグネシウム(化学組成:Mg)と、カルシウム(化学組成:Ca)とを含んでいる。より好ましくは、触媒31bは、アルミナ(化学組成:Al2O3)を含んでいる。より好ましくは、触媒31bは、白金(化学組成:Pt)およびパラジウム(化学組成:Pd)のうちの少なくとも一方を含んでいる。
【0031】
より好ましくは、触媒31bは、40質量%以上のシリカと、10質量%以上50質量%以下のマグネシア(化学組成:MgO)およびカルシア(化学組成:CaO)とを、合計が100質量%を超えない範囲で含んでいる。より好ましくは、触媒31bは、50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシア(化学組成:MgO)およびカルシア(化学組成:CaO)とを、合計が100質量%を超えない範囲で含んでいる。より好ましくは、触媒31bは、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムを、合計が100質量%を超えない範囲で含んでいる。より好ましくは、触媒31bは、30質量%以下のアルミナを、合計が100質量%を超えない範囲で含んでいる。また、好ましくは、触媒31bは、アルミナを含むことなく、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムを、合計が100質量%を超えない範囲で含んでいる。なお、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒31bによる硫化カルボニルの分解実験については、後述する。
【0032】
また、触媒31bは、無機繊維からなる綿状に形成されている。触媒31bは、2μm以上4μm以下の平均繊維径を有している。綿状の触媒31bは、触媒筒31の筒本体31aに充填されている。充填された触媒31bのかさ密度は、特に限られないが、圧力損失を低減する観点から、たとえば、70kg/m3以上250kg/m3以下とすることができる。綿状の触媒31bは、触媒筒31の筒本体31aに充填層を形成するように設けられている。触媒31bの充填層は、両端に配置された触媒31bの保持部材31cにより、触媒筒31の筒本体31aの内部に保持されている。保持部材31cは、たとえば、石英ウールである。なお、保持部材31cは、触媒31bを保持するための部材で、加熱機構32の温度に耐えうる材料であれば限定されることは無い。
【0033】
加熱機構32は、触媒反応を引き起こすために触媒筒31を加熱するように構成されている。具体的には、加熱機構32は、加熱部32aと、断熱部32bとを含んでいる。加熱部32aは、触媒筒31の筒本体31aを介して、触媒31bを加熱するように構成されている。加熱部32aは、たとえば、電熱線である。電熱線である加熱部32aは、たとえば、触媒筒31の筒本体31aを隔てて触媒31bを取り囲むように、コイル状に形成されている。なお、電熱線の形状は、加熱機構32の温度を一定に保つことができれば限定されることは無い。加熱部32aは、触媒31bの充填層の一方端部から他方端部に亘って、触媒31bの充填層と対向するように設けられている。すなわち、加熱部32aは、触媒31bの充填層の一方端部から他方端部に亘って、触媒31bを加熱するように構成されている。断熱部32bは、断熱材料により構成されており、加熱部32aと触媒筒31の触媒31bとを取り囲むように設けられている。断熱部32bの断熱材料は、たとえば、生体溶解性繊維断熱材料である。
【0034】
加熱機構32は、好ましくは、140℃以上500℃以下の温度範囲において、加熱部32aにより触媒筒31を加熱するように構成されている。より好ましくは、加熱機構32は、260℃以上500℃以下の温度範囲において、加熱部32aにより触媒筒31を加熱するように構成されている。より好ましくは、加熱機構32は、280℃以上400℃以下の温度範囲において、加熱部32aにより触媒筒31を加熱するように構成されている。また、加熱機構32は、略一定の温度になるように、加熱部32aにより触媒筒31を加熱するように構成されている。触媒筒31が略一定の温度になるような加熱は、特に限られないが、たとえば、図示しない温度検知部による温度の検知結果に基づいて、PID制御などのフィードバック制御により加熱機構32の加熱部32aを制御することにより行い得る。
【0035】
ガス検知部40は、硫化カルボニル分解部30により硫化カルボニルが触媒反応されることにより発生した被検知ガスG中の成分(硫化水素、硫黄酸化物など)を検知するように構成されている。ガス検知部40は、電気化学式のガス検知部(電気化学式のセンサ)を含んでいる。具体的には、ガス検知部40は、硫化水素、硫黄酸化物などの検知に好適な定電位電解式のガス検知部(定電位電解式のセンサ)を含んでいる。硫化カルボニル検知装置100は、ガス検知部40により硫化カルボニルが触媒反応されることにより発生した被検知ガスG中の成分(硫化水素、硫黄酸化物など)を検知することにより、硫化カルボニルを間接的に検知するように構成されている。なお、ガス検知部40は、被検知ガスGを流すためのポンプを内蔵するように構成されている。
【0036】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
本実施形態では、上記のように、触媒31bを、アルカリ土類金属シリケートを含むように構成する。これにより、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒31bにより、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、フッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分による被毒を抑制しつつ、硫化カルボニルの触媒反応を引き起こすことができる。その結果、半導体工場で良く利用されるフッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、硫化カルボニルの触媒反応を安定して行うことができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように、触媒31bは、アルカリ土類金属シリケートとして、シリカと、マグネシウムと、カルシウムとを含む。これにより、シリカと、マグネシウムと、カルシウムとを含む触媒31bにより、フッ素系冷媒や洗浄剤などの揮発成分が存在する環境下においても、硫化カルボニルの触媒反応を安定して引き起こすことができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記のように、触媒31bを、白金およびパラジウムのうちの少なくとも一方と、アルミナとを含むように構成する。これにより、白金およびパラジウムのうちの少なくとも一方と、アルミナとにより触媒反応を促進することができるので、白金およびパラジウムのうちの少なくとも一方と、アルミナとを含む触媒31bにより、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、触媒31bを、50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシアおよびカルシアとを、合計が100質量%を超えない範囲で含むように構成する。これにより、50質量%以上のシリカと、10質量%以上30質量%以下のマグネシアおよびカルシアとを含むことにより、触媒31bを塩基性触媒として用いることができるので、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、触媒31bを、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムを、合計が100質量%を超えない範囲で含むように構成する。これにより、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムにより、触媒反応を促進させることができるので、1質量%以下の白金、2質量%以下のパラジウム、または、2質量%以下の白金およびパラジウムを含む触媒31bにより、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、触媒31bを、30質量%以下のアルミナを、合計が100質量%を超えない範囲で含むように構成する。これにより、30質量%以下のアルミナにより、触媒反応を促進させることができるので、30質量%以下のアルミナを含む触媒31bにより、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、加熱機構32を、140℃以上500℃以下の温度範囲において、触媒31b部を加熱するように構成する。これにより、加熱機構32の加熱温度を140℃以上とすることにより、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒31bにより、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。また、加熱機構32の加熱温度を500℃以下とすることにより、干渉ガスの影響により、硫化カルボニルの触媒反応効果が低下し過ぎることを抑制することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、触媒31bを、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムを、合計が100質量%を超えない範囲で含むように構成する。これにより、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムにより、触媒反応を促進させることができるので、11質量%以下の白金、または、10質量%以下のパラジウムを含む触媒31bにより、硫化カルボニルの触媒反応効果を好適に発揮することができる。なお、この点は、本願発明者による後述する実験において確認済みである。
【0045】
[実施例]
次に、
図2~
図18を参照して、本発明の効果を確認するために行った確認実験(実施例1~13)について説明する。
【0046】
(実施例1)
図2に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例1)により、5ppm、10ppm、15ppmおよび20ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGの検知を行い、指示値(検知量に応じたガス検知部の出力値に対応する値)を得た。
【0047】
実施例1の硫化カルボニル検知装置として、
図1に示す硫化カルボニル検知装置100を用いた。実施例1の硫化カルボニル検知装置では、筒本体31aとして、外筒と内筒とを有する管を用いた。外筒としては、内径が12.9mmであるアルミナ管を用い、内筒としては、内径が8.3mmである石英管を用いた。また、触媒31bとして、73.4質量%のSiO
2(シリカ)と、19.1質量%のMgO(マグネシア)およびCaO(カルシア)と、0.2質量%のPt(白金)と、4.4質量%のAl
2O
3と、2.9質量%のその他成分とを含む触媒を用いた。
【0048】
触媒31bは、次のように作製した。まず、アルカリ土類金属シリケートを準備した。アルカリ土類金属シリケートとしては、イソライト工業株式会社の「イソウールBSSR 1300 バルク」を用いた。この場合、作製した触媒31bは、ウラストナイト、ディオプサイドまたはエンスタタイトの結晶を含んでいてもよいし、K2O、Na2O、Fe2O3、ZrO2、P2O4、Ba2O3、La2O3などを含んでいてもよい。そして、準備したアルカリ土類金属シリケートを、白金を担持したアルミナを分散させた粘性溶媒に浸漬させた。そして、粘性溶媒に浸漬させたアルカリ土類金属シリケートを粘性溶媒から取り出して、焼成した。これにより、SiO2と、MgOおよびCaOと、Ptと、Al2O3と、その他成分とを上記した含有率で含む触媒31bを作製した。また、ガス検知部40として、定電位電解式のガス検知部を含む、新コスモス電機株式会社のPS-7(型番)を用いた。
【0049】
実施例1の硫化カルボニル検知装置では、5ppm、10ppm、15ppmおよび20ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGをそれぞれ流し、ガス検知部の指示値を得た。
図2に示す左側のグラフは、各被検知ガスGにおける、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図2に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、COS調整濃度との関係を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸がCOS調整濃度を示している。
【0050】
図2に示すグラフから分かるように、実施例1の硫化カルボニル検知装置では、COS調整濃度が5ppm以上20ppm以下の範囲において、COS調整濃度と、ガス検知部の指示値との間には相関が見られた。具体的には、実施例1の硫化カルボニル検知装置では、COS調整濃度が5ppm以上20ppm以下の範囲において、COS調整濃度と、ガス検知部の指示値との関係を、線形近似することができた。このことから、ガス検知部の指示値から、COS濃度を正確に測定することができると考えられる。また、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を、COSの濃度の測定に好適に用いることができると考えられる。
【0051】
(実施例2)
図3に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例2)により、Al
2O
3含有率の影響を調べた。実施例2の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表1に示す触媒を用いた。
【表1】
【0052】
実施例2の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図3に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図3に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、Al
2O
3含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸がAl
2O
3含有率を示している。
【0053】
図3に示すグラフから分かるように、実施例2の硫化カルボニル検知装置では、Al
2O
3含有率が1.98質量%以上21.44質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例2の硫化カルボニル検知装置では、Al
2O
3含有率が1.98質量%以上13.67質量%以下の範囲において、Al
2O
3含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が増加する傾向を示した。また、実施例2の硫化カルボニル検知装置では、Al
2O
3含有率が13.67質量%以上21.44質量%以下の範囲において、ガス検知部指示値が概ね横ばいになる傾向を示した。このことから、Al
2O
3含有率が1.98質量%以上21.44質量%以下の範囲では、Al
2O
3含有率が大きいほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。具体的には、Al
2O
3含有率が13.67質量%以上21.44質量%以下の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0054】
(実施例3)
図4に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例3)により、PtおよびAl
2O
3含有率の影響を調べた。実施例3の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表2に示す触媒を用いた。
【表2】
【0055】
実施例3の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図4に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図4に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、PtおよびAl
2O
3含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸がPtおよびAl
2O
3含有率を示している。
【0056】
図4に示すグラフから分かるように、実施例3の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.11質量%以上0.92質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.03質量%以上17.39質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例3の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.23質量%以上0.92質量%以下で、Al
2O
3含有率が4.43質量%以上17.39質量%以下の範囲において、Pt含有率およびAl
2O
3含有率が減少するにつれて、ガス検知部の指示値が増加する傾向を示した。また、実施例3の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.11質量%以上0.23質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.03質量%以上4.43質量%以下の範囲において、ガス検知部の指示値が概ね横ばいになる傾向を示した。このことから、Pt含有率が0.11質量%以上0.92質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.03質量%以上17.39質量%以下の範囲では、Pt含有率およびAl
2O
3含有率が小さいほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。具体的には、Pt含有率が0.11質量%以上0.23質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.03質量%以上4.43質量%以下の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0057】
また、実施例3の硫化カルボニル検知装置では、概略的には、Pt含有率が0.11質量%以上0.57質量%以下で、Al2O3含有率が2.03質量%以上10.88質量%以下の範囲において、実施例2の硫化カルボニル検知装置に比べて、ガス検知部の指示値が大きくなった。これは、触媒に含まれるPtにより、上記した式(2)に示す酸化反応が促進されたことに起因して、硫化カルボニルの触媒反応が促進されたためであると考えられる。
【0058】
(実施例4)
図5に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例4)により、PdおよびAl
2O
3含有率の影響を調べた。実施例4の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表3に示す触媒を用いた。
【表3】
【0059】
実施例4の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図5に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図5に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、PdおよびAl
2O
3含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸がPdおよびAl
2O
3含有率を示している。
【0060】
図5に示すグラフから分かるように、実施例4の硫化カルボニル検知装置では、Pd含有率が0.11質量%以上1.74質量%以下で、Al
2O
3含有率が1.02質量%以上15.67質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例4の硫化カルボニル検知装置では、Pd含有率が0.11質量%以上1.00質量%以下で、Al
2O
3含有率が1.02質量%以上9.03質量%以下の範囲において、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が増加する傾向を示した。また、実施例4の硫化カルボニル検知装置では、Pd含有率が1.00質量%以上1.38質量%以下で、Al
2O
3含有率が9.03質量%以上15.67質量%以下の範囲において、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が減少する傾向を示した。このことから、Pd含有率が0.11質量%以上1.74質量%以下で、Al
2O
3含有率が1.02質量%以上15.67質量%以下の範囲では、Pd含有率が1.00質量%でAl
2O
3含有率が9.03質量%に近いほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。具体的には、Pd含有率が0.76質量%以上1.38質量%以下で、Al
2O
3含有率が6.87質量%以上12.44質量%以下の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0061】
また、実施例4の硫化カルボニル検知装置では、概略的には、Pd含有率が0.41質量%以上1.74質量%以下で、Al2O3含有率が3.71質量%以上15.67質量%以下の範囲において、実施例2の硫化カルボニル検知装置に比べて、ガス検知部の指示値が大きくなった。これは、触媒に含まれるPdにより、上記した式(2)に示す酸化反応が促進されたことに起因して、硫化カルボニルの触媒反応が促進されたためであると考えられる。
【0062】
(実施例5)
図6に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例5)により、Pt、PdおよびAl
2O
3含有率の影響を調べた。Ptの含有率とPdの含有率とは、1:1となるようにした。実施例5の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表4に示す触媒を用いた。
【表4】
【0063】
実施例5の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図6に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図6に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、Pt、PdおよびAl
2O
3含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸がPt、PdおよびAl
2O
3含有率を示している。
【0064】
図6に示すグラフから分かるように、実施例5の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.11質量%以上0.74質量%以下で、Pd含有率が0.09質量%以上0.67質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.83質量%以上20.09質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例5の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.11質量%以上0.44質量%以下で、Pd含有率が0.09質量%以上0.45質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.83質量%以上12.33質量%以下の範囲において、Pt含有率、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が減少する傾向を示した。また、実施例5の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.44質量%以上0.74質量%以下で、Pd含有率が0.45質量%以上0.67質量%以下で、Al
2O
3含有率が12.33質量%以上20.09質量%以下の範囲において、ガス検知部の指示値が横ばいになる傾向を示した。このことから、Pt含有率が0.11質量%以上0.74質量%以下で、Pd含有率が0.09質量%以上0.67質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.83質量%以上20.09質量%以下の範囲では、Pt含有率、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が小さいほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。具体的には、Pt含有率が0.11質量%以上0.29質量%以下で、Pd含有率が0.09質量%以上0.29質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.83質量%以上8.08質量%以下の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0065】
また、実施例5の硫化カルボニル検知装置では、概略的には、Pt含有率が0.11質量%以上0.37質量%以下で、Pd含有率が0.09質量%以上0.39質量%以下で、Al2O3含有率が2.83質量%以上12.33質量%以下の範囲において、実施例2の硫化カルボニル検知装置に比べて、ガス検知部の指示値が大きくなった。これは、触媒に含まれるPtおよびPdにより、上記した式(2)に示す酸化反応が促進されたことに起因して、硫化カルボニルの触媒反応が促進されたためであると考えられる。
【0066】
(実施例6)
図7に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例6)により、Pt、PdおよびAl
2O
3含有率の影響を調べた。Ptの含有率とPdの含有率とは、2:1となるようにした。実施例6の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表5に示す触媒を用いた。
【表5】
【0067】
実施例7の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図7に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図7に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、Pt、PdおよびAl
2O
3含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸がガス検知部の指示値を示し、横軸がPt、PdおよびAl
2O
3含有率を示している。
【0068】
図7に示すグラフから分かるように、実施例6の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.10質量%以上0.69質量%以下で、Pd含有率が0.05質量%以上0.37質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.35質量%以上16.50質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例6の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.10質量%以上0.47質量%以下で、Pd含有率が0.05質量%以上0.25質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.35質量%以上11.14質量%以下の範囲において、Pt含有率、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が減少する傾向を示した。また、実施例6の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.47質量%以上0.69質量%以下で、Pd含有率が0.25質量%以上0.37質量%以下で、Al
2O
3含有率が11.14質量%以上16.50質量%以下の範囲において、ガス検知部の指示値が横ばいになる傾向を示した。このことから、Pt含有率が0.10質量%以上0.69質量%以下で、Pd含有率が0.05質量%以上0.37質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.35質量%以上16.50質量%以下の範囲では、Pt含有率、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が小さいほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。具体的には、Pt含有率が0.10質量%以上0.27質量%以下で、Pd含有率が0.05質量%以上0.16質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.35質量%以上6.63質量%以下の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0069】
また、実施例6の硫化カルボニル検知装置では、概略的には、Pt含有率が0.10質量%以上0.37質量%以下で、Pd含有率が0.05質量%以上0.20質量%以下で、Al2O3含有率が2.35質量%以上8.92質量%以下の範囲において、実施例2の硫化カルボニル検知装置に比べて、ガス検知部の指示値が大きくなった。これは、触媒に含まれるPtおよびPdにより、上記した式(2)に示す酸化反応が促進されたことに起因して、硫化カルボニルの触媒反応が促進されたためであると考えられる。
【0070】
(実施例7)
図8に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例7)により、Pt、PdおよびAl
2O
3含有率の影響を調べた。Ptの含有率とPdの含有率とは、1:2となるようにした。実施例7の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表6に示す触媒を用いた。
【表6】
【0071】
実施例7の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図8に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸がガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図8に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、Pt、PdおよびAl
2O
3含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸がガス検知部の指示値を示し、横軸がPt、PdおよびAl
2O
3含有率を示している。
【0072】
図8に示すグラフから分かるように、実施例7の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.05質量%以上0.46質量%以下で、Pd含有率が0.13質量%以上0.85質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.04質量%以上16.36質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例7の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.05質量%以上0.46質量%以下で、Pd含有率が0.13質量%以上0.85質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.04質量%以上16.36質量%以下の範囲において、Pt含有率、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が減少する傾向を示した。このことから、Pt含有率が0.05質量%以上0.46質量%以下で、Pd含有率が0.13質量%以上0.85質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.04質量%以上16.36質量%以下の範囲では、Pt含有率、Pd含有率およびAl
2O
3含有率が小さいほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。具体的には、Pt含有率が0.05質量%以上0.20質量%以下で、Pd含有率が0.13質量%以上0.37質量%以下で、Al
2O
3含有率が2.04質量%以上7.20質量%以下の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0073】
また、実施例7の硫化カルボニル検知装置では、概略的には、Pt含有率が0.05質量%以上0.20質量%以下で、Pd含有率が0.13質量%以上0.37質量%以下で、Al2O3含有率が2.04質量%以上7.20質量%以下の範囲において、実施例2の硫化カルボニル検知装置に比べて、ガス検知部の指示値が大きくなった。これは、触媒に含まれるPtおよびPdにより、上記した式(2)に示す酸化反応が促進されたことに起因して、硫化カルボニルの触媒反応が促進されたためであると考えられる。
【0074】
実施例2~7から分かるように、触媒は、アルミナに加えて、PtおよびPdのうちの少なくとも一方を含むことにより、硫化カルボニルの触媒反応をより促進することができる。
【0075】
(実施例8)
図9に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例8)により、触媒温度(加熱温度)の影響を調べた。実施例8の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表7に示す触媒を用いた。
【表7】
【0076】
実施例8の硫化カルボニル検知装置では、20ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各温度における各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図9に示すグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の温度変化を示している。このグラフでは、縦軸がガス検知部の指示値(正規化値)を示し、横軸が触媒温度(加熱温度)を示している。
【0077】
図9に示すグラフから分かるように、実施例8の硫化カルボニル検知装置では、200℃以上500℃以下の温度範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例8の硫化カルボニル検知装置では、触媒によらず、概ね似たような温度傾向を示した。具体的には、280℃~330℃までは、触媒温度が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が増加する傾向を示した。また、280℃~330℃以降は、触媒温度が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が減少する傾向を示した。このことから、200℃以上500℃以下の範囲では、触媒温度が280℃~330℃に近いほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。
【0078】
触媒温度が500℃よりも大きい場合、後述する干渉ガスの影響が大きくなり過ぎるため、触媒温度は、500℃以下であることが好ましいと考えられる。また、触媒温度が200℃よりも小さい場合、ガス検知部の指示値が小さくなり過ぎるため、触媒温度は、200℃以上であることが好ましいと考えられる。また、触媒温度が200℃の場合のガス検知部の指示値の約2倍以上となるため、触媒温度は、260℃以上500℃以下の範囲であることがより好ましいと考えられる。また、触媒温度が200℃の場合のガス検知部の指示値の約3倍以上となるため、触媒温度は、280℃以上400℃以下の範囲であることがより好ましいと考えられる。
【0079】
(実施例9)
図10に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例9)により、触媒温度(加熱温度)の影響を調べた。実施例9の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、98.4質量%のセピオライトと、0.08質量%のPtと、1.52質量%のAl
2O
3とを含む触媒を用いた。具体的には、触媒31bとして、55.1質量%のSiO
2と、22.63質量%のMgOと、3.94質量%のCaOと、2.95質量%のFe
2O
3と、2.51質量%のAl
2O
3と、0.08質量%のPtと、12.79質量%のIg.Loss(強熱減量)とを含む触媒を用いた。
【0080】
実施例9の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各温度における各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図10に示すグラフは、ガス検知部の指示値の温度変化を示している。このグラフでは、縦軸がガス検知部の指示値(正規化値)を示し、横軸が触媒温度(加熱温度)を示している。
【0081】
図10に示すグラフから分かるように、実施例9の硫化カルボニル検知装置では、140℃以上400℃以下の温度範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例9の硫化カルボニル検知装置では、260℃までは、触媒温度が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が増加する傾向を示した。また、260℃以降は、触媒温度が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が減少する傾向を示した。このことから、140℃以上400℃以下の範囲では、触媒温度が260℃に近いほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。
【0082】
実施例9の硫化カルボニル検知装置では、触媒温度が140℃よりも小さい場合、ガス検知部の指示値が小さくなり過ぎるため、触媒温度は、140℃以上であることが好ましいと考えられる。また、触媒温度が140℃の場合のガス検知部の指示値の約2倍以上となる触媒温度として、触媒温度は、160℃以上400℃以下の範囲であることがより好ましいと考えられる。
【0083】
(実施例10)
図11に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例10)により、雑ガス(干渉ガス)の影響を調べた。実施例10の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。雑ガスとしては、329ppmのHT-70を含む被検知ガスGと、223ppmのFC-43を含む被検知ガスGと、245ppmのHFE-7100を含む被検知ガスGと、109ppmのアセトンを含む被検知ガスGと、141ppmのエタノールを含む被検知ガスGとを用いた。ここで、硫化カルボニルは、半導体製造工程のドライエッチングガスとして、アルコール類(エタノール)およびケトン類(アセトン)は、半導体製造工程の洗浄剤として、HT-70(ガルデン)、FC-43(フロリナート)およびHFE-7100(ノベック)は、半導体製造工程のチラーのフッ素系不活性冷媒として用いられる成分である。すなわち、実施例10では、半導体製造工程の雰囲気中の硫化カルボニルの検知用に、硫化カルボニル検知装置が用いられる場合を想定して、半導体製造工程において用いられる雑ガスの影響を調べた。
【0084】
実施例10の硫化カルボニル検知装置では、5ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスG、329ppmのHT-70を含む被検知ガスG、223ppmのFC-43を含む被検知ガスG、245ppmのHFE-7100を含む被検知ガスG、109ppmのアセトンを含む被検知ガスG、および、141ppmのエタノールを含む被検知ガスGをそれぞれ流し、各ガスによるガス検知部の指示値を得た。
図11に示すグラフは、各ガスによるガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。
【0085】
図11に示すグラフから分かるように、実施例10の硫化カルボニル検知装置では、COSを含む被検知ガスGの指示値が約5ppmであることに対して、HT-70を含む被検知ガスGの指示値が約0.1ppm、FC-43を含む被検知ガスGの指示値が約0.1ppm、HFE-7100を含む被検知ガスGの指示値が約0.2ppm、アセトンを含む被検知ガスGの指示値が約0.5ppm、エタノールを含む被検知ガスGの指示値が約0.6ppmとなった。すなわち、HT-70、FC-43、HFE-7100、アセトンおよびエタノールのいずれも、COSに比べて、ガス検知部の指示値が十分に小さい値を示した。このことから、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いる場合、HT-70、FC-43、HFE-7100、アセトンおよびエタノールのいずれも、COSの検知にほとんど干渉しないと考えられる。すなわち、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒は、半導体製造工程の硫化カルボニルの検知に好適に用いることができると考えられる。
【0086】
(実施例11)
図12に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例11)により、COSと雑ガス(干渉ガス)とが共存する環境下における応答性を調べた。実施例11の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。雑ガスとしては、329ppmのHT-70を含む被検知ガスGと、223ppmのFC-43を含む被検知ガスGと、245ppmのHFE-7100を含む被検知ガスGとを用いた。
【0087】
実施例11の硫化カルボニル検知装置では、5ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGと、5ppmの硫化カルボニル、329ppmのHT-70、223ppmのFC-43、および、245ppmのHFE-7100を含む被検知ガスG(4ガス共存ガス)とをそれぞれ流し、各ガスによるガス検知部の指示値を得た。
図12に示すグラフは、各ガスによるガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。
【0088】
図12に示すグラフから分かるように、実施例11の硫化カルボニル検知装置では、5ppmのCOSを含む被検知ガスGの指示値が約5.4ppmであることに対して、4ガス共存ガスの指示値が約5.7ppmとなった。すなわち、5ppmのCOSを含む被検知ガスGと、4ガス共存ガスとのいずれも、ガス検知部の指示値が同様の値を示した。このことから、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いる場合、HT-70、FC-43、HFE-7100の共存下においても、COSの検知の応答性にはほとんど影響しないと考えられる。すなわち、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒は、半導体製造工程の硫化カルボニルの検知に好適に用いることができると考えられる。
【0089】
(実施例12)
図13に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例12)により、雑ガス(干渉ガス)の飽和蒸気による触媒の劣化を調べた。実施例12の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。雑ガスとしては、18.5vol%のHT-70を含む被検知ガスGと、1895ppmのFC-43を含む被検知ガスGと、27.6vol%のHFE-7100を含む被検知ガスGと、5.8vol%のエタノールを含む被検知ガスGと、24.4vol%のアセトンを含む被検知ガスGとを用いた。なお、18.5vol%のHT-70と、1895ppmのFC-43と、27.6vol%のHFE-7100と、5.8vol%のエタノールと、24.4vol%のアセトンとはいずれも、通常の半導体製造工程では考えられない程の高濃度のガスである。すなわち、実施例12では、高濃度のガスにより加速試験を行った。
【0090】
実施例12の硫化カルボニル検知装置では、18.5vol%のHT-70を含む被検知ガスGと、1895ppmのFC-43を含む被検知ガスGと、27.6vol%のHFE-7100を含む被検知ガスGと、5.8vol%のエタノールを含む被検知ガスGと、24.4vol%のアセトンを含む被検知ガスGとをそれぞれ30分ずつ流した後、5ppmのCOSを含む被検知ガスGを流して、ガス検知部の指示値を得た。
図13に示すグラフは、各飽和蒸気ガスの30分暴露後の5ppmのCOSのガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。
【0091】
図13に示すグラフから分かるように、各飽和蒸気ガスの30分暴露後においても、5ppmのCOSに対して、約5ppmのガス検知部の指示値が得られた。これは、HT-70と、FC-43と、HFE-7100と、エタノールと、アセトンとに暴露されても、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒が劣化しないかまたは劣化が非常に小さかったためであると考えられる。このことから、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒は、フッ素系成分であるHT-70、FC-43およびHFE-7100による被毒に強く、かつ、有機系成分であるエタノールおよびアセトンによる被毒に強い触媒であると考えられる。
【0092】
(実施例13)
図14に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例13)により、触媒かさ密度に対する圧力損失を調べた。実施例13の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。
【0093】
実施例13の硫化カルボニル検知装置では、被検知ガスGを流し、各温度における触媒かさ密度に対する圧力損失を得た。
図14に示すグラフは、各温度における、かさ密度に対する圧力損失の変化を示している。このグラフでは、縦軸が圧力損失を示し、横軸が触媒かさ密度を示している。
【0094】
図14に示すグラフから分かるように、実施例13の硫化カルボニル検知装置では、200℃以上450℃以下の温度範囲において、触媒かさ密度が増加するにつれて、圧力損失が増加する傾向を示した。また、実施例13の硫化カルボニル検知装置では、200℃以上450℃以下の温度範囲において、温度が増加するにつれて、圧力損失が増加する傾向を示した。実施例13の硫化カルボニル検知装置の許容圧力損失(ガス流量の低下が起きない圧力損失)を-3kPaとすると、200℃以上450℃以下の温度範囲では、触媒かさ密度は、250kg/m
3以下であることが好ましいと考えられる。また、実用上の観点から余裕分を考慮すると、触媒かさ密度は、200kg/m
3以下であることがより好ましいと考えられる。また、触媒の充填量を確保する観点から、触媒かさ密度は、70kg/m
3以上であることが好ましいと考えられる。
【0095】
(実施例14)
図15に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例14)により、Pt含有率の影響を調べた。実施例14の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表8に示す触媒を用いた。
【表8】
【0096】
実施例14の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図15に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図15に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、Pt含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸がPt含有率を示している。
【0097】
図15に示すグラフから分かるように、実施例14の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.03質量%以上10.50質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例14の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.03質量%以上0.30質量%以下の範囲において、Pt含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が増加する傾向を示した。また、実施例14の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が0.30質量%以上4.00質量%以下の範囲において、Pt含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が減少する傾向を示した。また、実施例14の硫化カルボニル検知装置では、Pt含有率が4.00質量%以上10.50質量%以下の範囲において、ガス検知部指示値が概ね横ばいになる傾向を示した。このことから、Pt含有率が0.03質量%以上0.30質量%以下の範囲では、Pt含有率が0.30質量%に近いほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。なお、Pt含有率が0.03質量%以上10.50質量%以下の範囲では、全範囲にわたってガス検知部の指示値が高い値で推移しているため、全範囲にわたって、触媒として好適に用いることができると考えられる。
【0098】
(実施例15)
図16に示すように、この確認実験では、アルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例15)により、Pd含有率の影響を調べた。実施例15の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、触媒31bとして、以下の表9に示す触媒を用いた。
【表9】
【0099】
実施例15の硫化カルボニル検知装置では、10ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスGを流し、各触媒によるガス検知部の指示値を得た。
図16に示す左側のグラフは、各触媒における、ガス検知部の指示値の時間変化を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。また、
図16に示す右側のグラフは、左側のグラフの所定の時点における指示値と、Pd含有率との関係を示している。このグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸がPd含有率を示している。
【0100】
図16に示すグラフから分かるように、実施例15の硫化カルボニル検知装置では、Pd含有率が0.02質量%以上9.84質量%以下の範囲において、硫化カルボニルの触媒反応を行うことができた。また、実施例15の硫化カルボニル検知装置では、Pd含有率が0.02質量%以上0.31質量%以下の範囲において、Pd含有率が増加するにつれて、ガス検知部の指示値が増加する傾向を示した。また、実施例15の硫化カルボニル検知装置では、Pd含有率が0.31質量%以上9.84質量%以下の範囲において、ガス検知部指示値が概ね横ばいになる傾向を示した。このことから、Pd含有率が0.02質量%以上9.84質量%以下の範囲では、Pd含有率が大きいほど、触媒として好適に用いることができると考えられる。具体的には、Pd含有率が0.31質量%以上9.84質量%以下の範囲であることが好ましいと考えられる。
【0101】
(実施例16および17)
図17および
図18に示すように、この確認実験では、Ptを含むアルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いた硫化カルボニル検知装置(実施例16および17)により、雑ガス(干渉ガス)の影響を調べた。実施例16および17の硫化カルボニル検知装置として、実施例1の硫化カルボニル検知装置と同様の装置を用いた。ただし、実施例16の硫化カルボニル検知装置では、触媒31bとして、0.30質量%のPtと、76.77質量%のSiO
2と、19.94質量%のCaO+MgOと、2.99質量%のその他成分とを含む触媒を用いた。また、実施例17の硫化カルボニル検知装置では、触媒31bとして、10.50質量%のPtと、68.92質量%のSiO
2と、17.90質量%のCaO+MgOと、2.68質量%のその他成分とを含む触媒を用いた。
【0102】
また、雑ガスとしては、109ppmのアセトンを含む被検知ガスGと、137ppmのエタノールを含む被検知ガスGとを用いた。上記の通り、アルコール類(エタノール)およびケトン類(アセトン)は、半導体製造工程の洗浄剤として用いられる成分である。すなわち、実施例16および17では、半導体製造工程の雰囲気中の硫化カルボニルの検知用に、硫化カルボニル検知装置が用いられる場合を想定して、半導体製造工程において用いられる雑ガスの影響を調べた。
【0103】
実施例16および17の硫化カルボニル検知装置では、5ppmの硫化カルボニルを含む被検知ガスG、109ppmのアセトンを含む被検知ガスG、および、137ppmのエタノールを含む被検知ガスGをそれぞれ流し、各ガスによるガス検知部の指示値を得た。
図17および
図18に示すグラフは、各ガスによるガス検知部の指示値の時間変化を示している。これらのグラフでは、縦軸が、ガス検知部の指示値を示し、横軸が時間を示している。
【0104】
図17および
図18に示すグラフから分かるように、実施例16および17の硫化カルボニル検知装置では、COSを含む被検知ガスGの指示値が約5ppmであることに対して、アセトンを含む被検知ガスGの指示値が約0.1ppm、エタノールを含む被検知ガスGの指示値が約0.2ppmとなった。すなわち、アセトンおよびエタノールのいずれも、COSに比べて、ガス検知部の指示値が十分に小さい値を示した。このことから、Ptを含むアルカリ土類金属シリケートを含む触媒を用いる場合、アセトンおよびエタノールのいずれも、COSの検知にほとんど干渉しないと考えられる。すなわち、Ptを含むアルカリ土類金属シリケートを含む触媒は、半導体製造工程の硫化カルボニルの検知に好適に用いることができると考えられる。
【0105】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0106】
たとえば、上記実施形態では、硫化カルボニル検知装置が、流量制御部と、ポンプとを備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、硫化カルボニル分解部と、ガス検知部とを備えていれば、硫化カルボニル検知装置が、流量制御部と、ポンプとを必ずしも備えていなくてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、触媒が、綿状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、触媒としての機能を果たし得れば、触媒が、たとえば、粒状、粉末状、シート状、タブレット状などに形成されていてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、ガス検知部が、電気化学式のガス検知部を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、硫化カルボニルが加水分解されることにより発生した成分を検知可能であれば、ガス検知部が、たとえば、光学式のガス検知部(センサ)、半導体式のガス検知部(センサ)を含んでいてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、本発明の触媒部が、筒状に形成された触媒筒である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、触媒を配置可能であれば、触媒部の形状は特に限られず、触媒部が、筒状形状以外の形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0110】
30 硫化カルボニル分解部
31 触媒筒(触媒部)
31b 触媒
32 加熱機構
40 ガス検知部
100 硫化カルボニル検知装置
G 被検知ガス