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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】シート搬送装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/12 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
B65H7/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019239091
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107272
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智大
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛人
(72)【発明者】
【氏名】甲藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】川北 明広
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-142699(JP,A)
【文献】特開2007-223688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを収容するシート収容手段と、
前記シート収容手段に収容されたシートを搬送する搬送手段と、
前記シート収容手段に収容される前記シートの搬送方向の長さである第1長さを設定するシート設定手段と、
前記搬送手段により2枚以上の前記シートが重なって搬送されているか否かを検知するための重送検知手段と、
前記搬送方向で前記重送検知手段の上流の位置に配置され、前記搬送手段により搬送される前記シートを検出するシート検出手段と、
前記シート検出手段による検出結果に基づいて前記搬送手段により搬送中の前記シートの搬送方向の長さである第2長さを検出するシート測定手段と、
前記第2長さが前記第1長さよりも長い場合、その差に基づいて、前記重送検知手段により前記シートの重なりの検知を開始する位置を決定し、前記重送検知手段に、決定した位置から前記シートの重なりの検知を行わせる制御手段と、を備えることを特徴とする、
シート搬送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2長さが前記第1長さよりも長い場合、前記搬送方向で前記シートの後端から所定の距離だけ前方にずらした位置に、前記シートの重なりの検知を開始する位置を決定することを特徴とする、
請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2長さが前記第1長さよりも短い場合、前記重送検知手段による前記シートの重なりの検知を行わないことを決定することを特徴とする、
請求項1又は2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1長さと前記第2長さとの差が所定の閾値以下である場合に、前記シートの搬送方向の先端に、或いは前記先端から所定のマージンを取った位置に前記シートの重なりの検知を開始する位置を決定することを特徴とする、
請求項記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記シート検出手段による前記シートの検出に基づいて前記重送検知手段に前記決定した位置から前記シートの重なりの検知を開始させるが、前記シート検出手段が前記シートを検出したときに前記シートの重なりの検知を開始する位置がまだ決定されていなければ、前記搬送方向で前記シートの後端から所定の距離だけ前方にずらした位置に、前記シートの重なりの検知を開始する位置を決定することを特徴とする、
請求項記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記重送検知手段は、超音波を発信する発信手段と、超音波を受信する受信手段と、を備え、前記発信手段から発信された前記超音波が前記シートを透過して前記受信手段に受信されるように前記発信手段と前記受信手段とが配置されており、前記受信手段が受信した前記超音波の強度により前記シートの重なりが判断されることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記制御手段は、決定した前記シートの重なりの検知を開始する位置から予め規定されている距離の範囲で、前記重送検知手段に前記シートが重なって搬送されるか否かを検知させることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記シート設定手段は、ユーザの操作により前記第1長さが入力される操作手段を備えることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記搬送手段により前記シートが搬送されるパスは、第1パスと、前記第1パスとは異なる第2パスと、を備えており、
前記制御手段は、前記重送検知手段により2枚以上のシートが重なって搬送されることを検知した場合に、前記搬送手段により該シートを前記第2パスへ搬送することを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記重送検知手段により2枚以上のシートが重なって搬送されることが検知されていない場合に、前記第2長さが前記第1長さよりも所定の閾値以上長ければ、前記搬送手段により該シートを前記第2パスへ搬送することを特徴とする、
請求項9記載のシート搬送装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送される前記シートに画像を形成する画像形成手段と、を備えることを特徴とする、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚以上のシートが重なって搬送される状態を検知する機能を有するシート搬送装置、及びこのシート搬送装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、シート搬送装置によりシートを1枚ずつ搬送しながら画像形成を行う。シートが2枚以上重なって搬送される状態が発生した場合、白紙の成果物が排出されたり、シートのジャムが発生する可能性がある。シートが2枚以上重なって搬送される状態を「重送」という。重送は、例えば特許文献1の技術により検知される。特許文献1の画像形成装置は、搬送中に測定したシートの搬送方向の長さ(シート測定長)と、ユーザにより設定されるシートの搬送方向の長さ(シート設定長)とを比較し、シート測定長がシート設定長よりも基準値以上長い場合に、重送を検知する。この画像形成装置は、重送を検知した場合に、ユーザに対して重送が発生したことを報知する。重送は、超音波を用いた重送検知センサによって検知されることも可能である。重送検知センサは、超音波をシートに向けて発信し、シートを透過した該超音波を受信する。受信した超音波の強度により重送が検知される。重送検知センサを用いて重送が検知された場合にも、ユーザに対して重送が発生したことが報知される。
【0003】
重送していると判断されたシートは、例えば通常の印刷処理時の搬送路とは異なる別の搬送路を介して排出される。重送を検知したときに自動的にシートを排出して別のシートに印刷を行うことで、ユーザの手を煩わせることなく印刷処理が継続される。
【0004】
重送は、シート測定長及びシート設定長による検知結果と、重送検知センサによる検知結果と、を組み合わせて検知されてもよい。この場合、例えばシート測定長とシート設定長との差が基準値以上であり、且つ重送検知センサが重送を検知していない状態となることがある。これは、例えばユーザにより設定されるシート設定長が実際に搬送されるシートの搬送方向の長さ(シート長)とは異なること、つまり、ユーザによるシート設定長の設定ミスにより発生する。このような場合、画像形成装置は、別のシートへの印刷を行わずに、ユーザに対してシート設定長の変更を促す必要がある。これにより、不要な印刷処理を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-162423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シート測定長及びシート設定長による重送検知処理の後に、重送検知センサによる重送検知処理が行われる。これは、シート測定長及びシート設定長による重送検知結果と、重送検知センサによる重送検知結果とを正しく区別するためである。重送検知センサによる重送検知処理は、搬送中のシートの搬送方向の先端を基準として行われる。そのためにシートの後端で重送が発生する場合、重送の発生区間よりも前方で重送検知が行われる可能性がある。この場合、本来、重送の発生が通知されなければならないが、ユーザのサイズ(シート設定長)の設定ミスが通知されることになる。これにより、ユーザによるシート設定長の再設定が不要であるにもかかわらず、再設定が行われ、不要なダウンタイムが発生する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、搬送中のシートの重送の検知ミスを抑制することができるシート搬送装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、シートを収容するシート収容手段と、前記シート収容手段に収容されたシートを搬送する搬送手段と、前記シート収容手段に収容される前記シートの搬送方向の長さである第1長さを設定するシート設定手段と、前記搬送手段により2枚以上の前記シートが重なって搬送されているか否かを検知するための重送検知手段と、前記搬送方向で前記重送検知手段の上流の位置に配置され、前記搬送手段により搬送される前記シートを検出するシート検出手段と、前記シート検出手段による検出結果に基づいて前記搬送手段により搬送中の前記シートの搬送方向の長さである第2長さを検出するシート測定手段と、前記第2長さが前記第1長さよりも長い場合、その差に基づいて、前記重送検知手段により前記シートの重なりの検知を開始する位置を決定し、前記重送検知手段に、決定した位置から前記シートの重なりの検知を行わせる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送中のシートの重送を確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の構成図。
図2】コントロールシステムの構成図。
図3】重送検知センサの説明図。
図4】(a)、(b)は、受信レベルの説明図。
図5】(a)~(c)は、サイズ設定画面の例示図。
図6】重送検知の前処理を表すフローチャート。
図7】(a)~(c)は、重送検知開始位置の説明図。
図8】重送検知処理を表すフローチャート。
図9】エスケープ処理を表すフローチャート。
図10】重送検知の動作制御処理を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるものであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0012】
(画像形成装置の構成)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。画像形成装置101は、シートの給送を行うシート給送機構と、画像を形成する画像形成部20と、定着器12と、操作部306と、を備える。画像形成装置101は、シート給送機構により給送されるシートに対して、画像形成部20により生成した画像を転写することで、シートへの画像の印刷を行う。
【0013】
シート給送機構は、それぞれが複数枚のシートを収容可能な複数のシート収容部(給紙カセット50、55)と、搬送パスと、給紙縦パスと、水平パス30と、各パスに設けられるシート搬送用のローラと、センサと、を備える。本実施形態では、2つの給紙カセット50、55を複数設けた構成について説明するが、給紙カセットは、1以上であればいくつであってもよい。
【0014】
給紙カセット50に収容されるシートは、ピックアップローラ等の分離給紙部51、52によって、1枚ずつ給紙カセット50から搬送パスへ給紙される。搬送パスには、搬送センサ61が設けられる。搬送センサ61は、搬送中のシートの搬送方向の長さであるシート測定長(第2長さ)の検出に用いられる。給紙カセット50から搬送パスへ搬送されたシートは、給紙縦パスへ搬送される。給紙縦パスには、縦パスローラ53が設けられる。縦パスローラ53は、シートを水平パス30へ搬送する。
【0015】
給紙カセット55に収容されるシートは、ピックアップローラ等の分離給紙部56、57によって、1枚ずつ給紙カセット55から搬送パスへ給紙される。搬送パスには、搬送センサ62が設けられる。搬送センサ62は、搬送中のシートの搬送方向の長さであるシート測定長(第2長さ)の検出に用いられる。給紙カセット55から搬送パスへ搬送されたシートは、給紙縦パスへ搬送される。給紙縦パスには、縦パスローラ58が設けられる。縦パスローラ58は、シートを水平パス30へ搬送する。
【0016】
水平パス30は、搬送ローラ40、搬送ローラ41、搬送ローラ42、レジストローラ11、及び排紙ローラ13を備える。給紙カセット50または給紙カセット55から水平パス30に案内されたシートは、搬送ローラ40、41、42によりレジストローラ11へ搬送される。レジストローラ11は、水平パス30を搬送されるシートの斜行を補正する。なお、定着器12は、水平パス30上に設けられる。
【0017】
シートの搬送方向で搬送ローラ40の上流側には、基準センサ64が設けられる。搬送ローラ40と搬送ローラ41との間には、2枚以上のシートが重なって搬送される重送を検知するための重送検知センサ60が設けられる。重送検知センサ60は、超音波センサで構成される。重送検知センサ60は、基準センサ64によるシートの通過の検出に応じて、シートが重送検知位置を通過する際にシートに向けて超音波を発信し、シートを透過した該超音波を受信する。受信した超音波の強度により2枚以上のシートが重なって搬送されているか否かが判断される。
【0018】
画像形成部20は、感光体22~25と、中間転写体26と、二次転写部21と、を備える。感光体22~25は、それぞれ異なる色のトナー像が形成される。感光体22~25は、例えば、表面が一様に帯電された後に、レーザ光が露光されることで静電潜像が形成される。感光体22~25は、静電潜像が対応する色のトナーにより現像されることで、対応する色のトナー像が形成される。各感光体22~25に形成されたトナー像は、中間転写体26に順次重畳して転写される。これにより中間転写体26上にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写体26は、トナー像を二次転写部21へ搬送する。二次転写部21は、水平パス30上に設けられる。
【0019】
シート給送機構は、中間転写体26上のトナー像が二次転写部21へ搬送されるタイミングに応じて、レジストローラ11によりシートを二次転写部21へ搬送する。二次転写部21は、中間転写体26上のトナー像をシートへ転写する。二次転写部21は、トナー像を転写したシートを定着器12へ搬送する。定着器12は、トナーを加熱溶融し、トナーとシートとを加圧することで、トナー像をシートに定着させる。トナー像が定着されたシートは、定着器12から排紙ローラ13を介して画像形成装置101の機外へ排出される。
【0020】
画像形成装置101は、搬送ローラ41と搬送ローラ42との間に、水平パス30から分岐するエスケープパス31と、シートの搬送方向を水平パス30からエスケープパス31へ切り替えるためのフラッパ43と、を備える。エスケープパス31には、搬送ローラ70と、搬送ローラ71と、搬送センサ63と、が設けられる。画像形成装置101は、搬送センサ61または搬送センサ62によって検出されたシート測定長が、予め設定されたシートサイズ(シートの搬送方向の長さ)よりも所定の閾値以上長い場合に、シートをフラッパ43よってエスケープパス31へ搬送する。また、画像形成装置101は、重送と判定されたシートもエスケープパス31へ搬送する。エスケープパス31へ搬送されたシートは、搬送ローラ70、71によりエスケープトレイ32へ排出される。搬送センサ63は、エスケープパス31からエスケープトレイ32へのシートの排出を検出する。エスケープパス31が二次転写部21を通過しないために、エスケープパス31を介して排出されるシートは画像が形成されない。
【0021】
操作部306は、入力インタフェース及び出力インタフェースを備えるユーザインタフェースである。入力インタフェースは、各種のキーボタンやタッチパネルである。出力インタフェースは、ディスプレイやスピーカである。
【0022】
(コントロールシステムの構成)
図2は、画像形成装置101の動作を制御するコントロールシステムの構成図である。コントロールシステムは、制御部200と、プリンタ制御部201と、を備える。制御部200は、画像形成装置101の全体の動作を制御する。プリンタ制御部201は、制御部200の指示に応じて、画像形成装置101内の各部の動作を制御する。
【0023】
制御部200は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、及びROM(Read Only Memory)303を備える。CPU301は、ROM303に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、画像形成装置101全体の動作を制御する。RAM302は、CPU301が各種の処理を行う際の作業領域を提供する。CPU301は、PDL(Page Description Language)制御部304及び内部インタフェース(I/F)部305が接続される。PDL制御部304は、印刷データの加工、蓄積、画像処理等を行うための処理回路である。内部I/F部305は、プリンタ制御部201と通信するための通信インタフェースである。
【0024】
CPU301には操作部306も接続されている。CPU301は、操作部306の入力インタフェースを介して、各種の指示や設定を受け付ける。CPU301は、操作部306の出力インタフェースを制御して、各種の画面の表示や通知を行う。
【0025】
プリンタ制御部201は、CPU311、RAM312、ROM313を備える。CPU311は、ROM313に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、画像形成装置101の各部を制御する。RAM312は、CPU311が各種の処理を行う際の作業領域を提供する。CPU311は、デバイス制御部314及び内部インタフェース(I/F)部315が接続される。
【0026】
デバイス制御部314は、画像形成装置101の内部に設けられる各構成部品を制御するための入出力ポート等を含む電気回路である。デバイス制御部314には、重送検知センサ60、及び搬送センサ61、62、63等が接続されている。内部I/F部315は、制御部200と通信するための通信インタフェースである。内部I/F部315と内部I/F部305とは、画像信号やタイミング信号の送受信を行う。CPU311とCPU301とは、内部I/F部315、305を介して通信を行い、各種処理を協働して行う。
【0027】
CPU311は、制御部200から画像信号を受信し、デバイス制御部314を制御することで、印刷処理を実行する。また、CPU311は、重送検知センサ60の動作を制御して、重送検知センサ60の検知結果に応じた重送の判定を行う。さらにCPU311は、搬送センサ61、62の検出結果に応じた重送の判定を行う。
【0028】
(重送検知センサ)
図3は、重送検知センサ60の説明図である。重送検知センサ60は、水平パス30を構成する2枚のガイド板402a、402bの間を搬送されるシートの重なりを超音波により検知する。上記の通り本実施形態の重送検知センサ60は超音波センサで構成されており、発信部401a及び受信部401bを備える。発信部401aと受信部401bとは、水平パス30を挟んで斜めに対向配置される。
【0029】
発信部401aは、例えば図示しない電力増幅回路等を介してデバイス制御部314に接続される。デバイス制御部314は、CPU311の制御により、所定周波数のパルス信号を出力する。パルス信号は、電力増幅回路により増幅されて発信部401aに入力される。発信部401aは、電力増幅回路から取得するパルス信号により駆動されて超音波を受信部401bへ向けて発信する。
【0030】
受信部401bは、例えば図示しない出力増幅回路及び整流平滑回路等を介してデバイス制御部314に接続される。受信部401bは、発信部401aから受信した超音波の強度に応じたレベルの検知信号を出力する。検知信号は、出力増幅回路により増幅され且つ整流平滑回路により整流されて、デバイス制御部314を介してCPU311に入力される。CPU311は、検知信号のレベルに基づいて重送を検知する。例えば、検知信号が表す受信した超音波の強度(受信レベル)が、重送を判断するための閾値以下の場合に、CPU311は、シートが重送されていると判断する。シートが重送されていると判断したCPU311は、制御部200を介して操作部306により重送の発生をユーザに報知する。このような重送検知処理は、印刷処理の間、繰り返し行われる。
【0031】
図4は、重送検知センサ60の受信部401bが受信する受信レベルの説明図である。図4(a)は、シートが1枚の場合の受信レベルを例示する。図4(b)は、シートが2枚重なって搬送される場合の受信レベルを例示する。
【0032】
図4(a)において、範囲A、Cは、シート501が重送検知センサ60の範囲内にない場合の受信レベルを表す。範囲Bは、シート501が重送検知センサ60の範囲内にある場合の受信レベルを表す。
範囲A、Cでは、発信部401aから発信された超音波は、シート501により減衰されることなく、受信部401bに受信される。理想的には、発信部401aから発信された超音波は、発信されたときの強度のまま、100%の強度で受信部401bに受信される。しかし実際には、空気中を伝搬される間に減衰が生じる。本実施形態では、発信部401aから発信された超音波が空気中を伝搬されることで5%減衰されることとする。そのために受信部401bは、範囲A、Cでは、95%の強度の超音波を受信することになる。
範囲Bでは、シート501が1枚だけであるため、超音波が1枚分のシート501により減衰する。本実施形態では、発信部401aから発信された超音波が1枚のシート501を透過することで30%減衰されることとする。そのために受信部401bは、範囲Bでは、70%の強度の超音波を受信することになる。
【0033】
図4(b)において、範囲A、Eは、シート501、502が重送検知センサ60の範囲内にない場合の受信レベルを表す。範囲B、Dは、1枚のシート501またはシート502が重送検知センサ60の範囲内にある場合の受信レベルを表す。範囲Cは、2枚のシート501及びシート502が重送検知センサ60の範囲内で重なっている場合の受信レベルを表す。
範囲A、Eでは、発信部401aから発信された超音波は、シート501により減衰されることなく、受信部401bに受信される。本実施形態では、受信部401bは、範囲A、Eでは、95%の強度の超音波を受信することになる。範囲B、Dでは、超音波が1枚分のシート501またはシート502により減衰する。本実施形態では、受信部401bは、範囲B、Dでは、70%の強度の超音波を受信することになる。
範囲Cでは、超音波が重なった2枚分のシート501、502により減衰する。超音波は、シート501とシート502との間の空気層によって大幅に減衰する、本実施形態では、発信部401aから発信された超音波が2枚のシート501、502を透過することで75%減衰されることとする。そのために受信部401bは、範囲Cでは、25%の強度の超音波を受信することになる。
【0034】
重送検知センサ60は、シートが重送検知位置に到達するタイミングで、発信部401aにより超音波を所定数発信する。受信部401bは、所定数の超音波を受信して、受信した超音波の強度に応じた電気信号である検知信号を出力する。検知信号は、超音波の強度が大きいほど大きな値となるアナログ信号である。CPU311は、受信部401bから取得する検知信号の値が、図4(b)の範囲Cの超音波の強度に相当するか否かを確認することで、重送を判定することができる。例えば、CPU311は、重送検知のための閾値を図4(b)の範囲B、Dのときの検知信号のレベルと、図4(b)の範囲Cのときの検知信号のレベルとの間の値に設定し、該閾値と検知信号のレベルと比較により重送の発生を判断する。
【0035】
(シートサイズ)
給紙カセット50、55に収容されるシートのサイズは、ユーザにより操作部306を用いて設定される。図5は、給紙カセット50、55に収容されるシートのサイズを設定するためのサイズ設定画面の例示図である。サイズ設定画面610は、操作部306のディスプレイに表示される。ユーザは、サイズ設定画面610からシートサイズを設定する。制御部200のCPU301は、給紙カセット50、55毎に用意される不図示のサイズ入力ボタンの押下により、サイズ設定画面610を表示する。図5(a)、5(b)は、定型サイズのシートのサイズ設定画面610である。図5(c)は、不定形サイズのシートのサイズ設定画面610である。CPU301は、サイズ設定画面で設定されたシートサイズをRAM302に格納する。
【0036】
図5(a)、5(b)のサイズ設定画面610は、定型サイズ入力ボタン611a、611b、サイズカテゴリ切替ボタン612a、612b、及びユーザ設定サイズ入力切替ボタン613を含む。定型サイズ入力ボタン611a、611bは、複数の定型サイズにそれぞれ対応する複数のボタンを含む。定型サイズ入力ボタン611a、611b内のいずれかのボタンが押下されることで、CPU301は、該ボタンに予め紐づけられてROM303に格納された、シートの搬送方向のサイズ及び搬送方向に直交する幅方向のサイズを取得する。例えば給紙カセット50のサイズ設定画面610で、定型サイズ入力ボタン611a内のA4ボタンが押下された場合、CPU301は、ROM303に記憶された搬送方向のサイズ:210[mm]、幅方向のサイズ:297[mm]をRAM312に一時記憶する。なお、搬送方向のサイズは、シートの搬送方向の長さであるシート設定長(第1長さ)となる。
【0037】
サイズカテゴリ切替ボタン612a、612bが押下されることで、CPU301は、サイズ設定画面610を切り替える。図5(a)のサイズ設定画面610のサイズカテゴリ切替ボタン612aが押下される場合、CPU301は、図5(b)のインチサイズ系のサイズ設定画面610に表示を切り替える。図5(b)のサイズ設定画面610のサイズカテゴリ切替ボタン612bが押下される場合、CPU301は、図5(a)のABサイズ系のサイズ設定画面610に表示を切り替える。
【0038】
ユーザ設定サイズ入力切替ボタン613が押下されることで、CPU301は、図5(a)或いは図5(b)のサイズ設定画面610を図5(c)のサイズ設定画面610に切り替える。図5(c)のサイズ設定画面610では、ユーザがシートのサイズを、例えば0.1[mm]単位で、数値により入力可能である。入力窓631は、シートのX方向のサイズの入力を受け付ける。入力窓632は、シートのY方向のサイズの入力を受け付ける。
【0039】
(重送検知処理)
図6は、本実施形態の重送検知の前処理を表すフローチャートである。重送検知の前処理では、シート測定長検出、重送検知開始位置の設定、及びシートのエスケープ処理の可否の決定が行われる。重送検知開始位置は、シートの搬送方向で、重送検知を開始するシートの位置を示す。重送検知センサ60は、シートの重送検知開始位置が重送検知位置に到達したタイミングで重送検知を行うことになる。エスケープ処理は、重送が検知されたシートを、エスケープパス31を介してエスケープトレイ32へ排出する処理である。重送検知の前処理は、画像形成装置101がシートの搬送を開始してから開始される。図7は、重送検知開始位置の説明図である。
【0040】
CPU311は、搬送中のシートの搬送方向の長さであるシート測定長が検出されているか否かを判断する(S701)。シート測定長は、搬送センサ61または搬送センサ62の検出結果に基づいて検出される。シート測定長は、例えば、搬送センサ61、62がシートを検出していた時間とシートの搬送速度との積で表される。例えば、搬送センサ61、62がシートを検出している時間が0.42秒、シートの搬送速度が1000[mm/s]の場合、シート測定長は420[mm]となる。
【0041】
シート測定長が検出されている場合(S701:Y)、CPU311は、検出したシート測定長と、予め設定されているシートの搬送方向のサイズであるシート設定長とを比較し、その差が所定の閾値以下であるか否かを判断する(S702)。閾値は、例えば、シート設定長の5%の値である。図7(a)を例に説明する。例えば、シート設定長1101が420[mm]である場合、閾値は21[mm]となる。シート測定長1102が399[mm]より大きく、441[mm]より小さい場合には、CPU311は、差が閾値より小さいと判断する。
【0042】
差が閾値以下である場合(S702:Y)、CPU311は、重送検知開始位置を、該シートの搬送方向の先端(以下、単に「先端」という。)に設定する(S703)。CPU311は、シートの先端から重送検知開始位置までの距離をRAM312に格納する。重送検知開始位置はマージンを取って、例えば先端から1[mm]の位置でもよい。また、CPU311は、重送検知を行うことを表すフラグをRAM312に格納する。この場合のエスケープ処理を行うか否かは、重送検知の結果に応じて変化する。例えば、シート設定長が420[mm]である場合、閾値は21[mm]となる。シート測定長1102が339[mm]より長く、441[mm]より短い場合、重送検知開始位置と該シートの先端との距離である0[mm]がRAM312に格納される(図7(a))。この場合、重送検知センサ60は、シートの先端から予め規定されている重送検知実行距離1103の範囲で重送検知を行う。
【0043】
差が閾値をよりも大きい場合(S702:N)、CPU311は、シート測定長1102とシート設定長1101との比較を再度行い、シート測定長1102の方が長いか否かを判断する(S704)。ここでは、閾値の範囲が除かれ、シート測定長が441[mm]より大きいか或いは339[mm]より小さいかが判断される。
【0044】
シート測定長1102の方が長い場合(S704:Y)、CPU311は、重送検知開始位置を、該シートの搬送方向の後端(以下、単に「後端」という。)を基準にして、所定の距離だけ搬送方向の前方にずらした位置に設定する(S705)。CPU311は、シートの先端から重送検知開始位置までの距離をRAM312に格納する。また、CPU311は、重送検知を行うことを表すフラグをRAM312に格納する。また、CPU311は、エスケープ処理を行うことを表すフラグをRAM312に格納する。例えば、シート設定長1101が420[mm]、重送検知実行距離1103が180[mm]、シート測定長1102が441[mm]より長い場合、重送検知開始位置は該シートの後端を基準として180[mm]前方となる。つまり重送検知開始位置は、シートの先端から240[mm]の位置に設定される。RAM312には重送検知開始位置として240[mm]が格納される(図7(b))。この場合、重送検知センサ60は、シートの先端から後方に240[mm]の位置から重送検知実行距離1103の範囲で重送検知を行う。
【0045】
シート測定長1102の方が短い場合(S704:N)、CPU311は、重送検知処理を行わないことを決定して、重送検知を行わないことを表すフラグをRAM312に格納する(S706)。また、CPU311は、エスケープ処理を行った後に印刷を中断することを表すフラグをRAM312に格納する。例えば、シート設定長1101が420[mm]、シート測定長1102が339[mm]より短い場合、重送検知は行われない(図7(c))。
【0046】
S703、S705、S706の処理の後にCPU311は、基準センサ64がシートを検出したか否かを判断する(S707)。検出していない場合(S707:N)、CPU311は、重送検知開始位置が確定しているか否かを判断する(S708)。CPU311は、RAM312に重送検知開始位置が格納されているか否かによりこの判断を行う。CPU311は、S706の処理で重送検知を行わないことが設定されている場合であっても、「重送検知開始位置が確定している」とみなす。重送検知開始位置が確定している場合(S708:Y)、CPU311は、S707の処理に戻る。つまりCPU311は、重送検知開始位置が確定している場合には、基準センサ64がシートを検出するまで待機する。重送検知開始位置が確定していない場合(S708:N)、CPU311は、S701のシート測定長の検出済み判定処理に戻る。
【0047】
基準センサ64がシートを検出した場合(S707:Y)、CPU311は、S708の処理と同様に、重送検知開始位置が確定しているか否かを判断する(S709)。重送検知開始位置が確定している場合(S709:Y)、CPU311は、重送検知の前処理を終了する。重送検知開始位置が確定していない場合(S709:N)、CPU311は、重送検知開始位置を、シートの後端を基準として所定の距離だけシートの搬送方向の前方にずらした位置に設定する(S710)。CPU311は、シートの先端から重送検知開始位置までの距離をRAM312に格納する。この場合のエスケープ処理を行うか否かは、重送検知の結果に応じて変化する。以上によりCPU311は、重送検知の前処理を終了する。
【0048】
図8は、重送検知処理を表すフローチャートである。
CPU311は、搬送中のシートが重送検知位置に到達しているか否かを判断する(S801)。CPU311は、基準センサ64がシートを検出したタイミング(図6のS707)からの経過時間により、シートが重送検知位置に到達しているか否かを判断することができる。到達していない場合(S801:N)、CPU311は、シートが重送検知位置に到達まで待機する。
【0049】
到達した場合(S801:Y)、CPU311は、重送検知センサ60を用いて重送検知処理を行う(S802)。CPU311は、重送検知の結果をRAM312に格納する。CPU311は、重送検知処理を開始した時間から重送検知時間が経過したか否かを判断する(S803)。「重送検知時間」は、予め設定された重送検知の実行に必要な時間である。CPU311は、重送検知時間が経過するまで、繰り返し重送検知を行う(S803:N、S802)。重送検知時間が経過すると(S803:Y)、CPU311は、S804において、RAM312に格納されている重送検知結果が重送を検知したことを表しているか否かを判断する(S804)。
【0050】
重送が生じたことが検知されている場合(S804:Y)、CPU311は、該シートに対するエスケープ処理を行うことを表すフラグをRAM312に格納し且つ印刷処置を再開することを表すフラグをRAM312に格納する(S805)。
【0051】
重送が検知されていない場合(S804:N)、CPU311は、該シートのシート測定長とシート設定長とを比較して、これらが等しいか否かを判断する(S806)。ここで「等しい」とは、シート測定長とシート設定長との差が所定の閾値未満であればよい。等しい場合(S806:Y)、CPU311は、該シートに対するエスケープ処理を行わないことを表すフラグをRAM312に格納し且つ印刷処理を正常終了することを表すフラグをRAM312に格納する(S807)。等しくない場合(S806:N)、CPU311は、該シートに対するエスケープ処理を行うことを表すフラグをRAM312に格納し且つ印刷処理を中断することを表すフラグをRAM312に格納する(S808)。
以上のように重送検知処理が行われる。
【0052】
図9は、エスケープ処理を表すフローチャートである。
CPU311は、エスケープ処理を行うと判断されたシートをエスケープパス31へ搬送して、エスケープトレイ32への排出を開始する(S901)。CPU311は、シートがエスケープトレイ32へ排出されるまで待機する(S902:N)。CPU311は、搬送センサ63がシートを検出した後にシートを検出しない状態になることで、シートがエスケープトレイ32へ排出されたと判断する。
【0053】
シートのエスケープトレイ32への排出が完了すると(S902:Y)、CPU311は、エスケープトレイ32へのシートの排出回数を1インクリメントし、インクリメント後の排出回数をRAM312に格納する(S903)。CPU311は、排出回数が所定回数以上(ここでは3回以上)であるか否かを判断する(S904)。排出回数が3回未満の場合(S904:N)、CPU311は、エスケープ処理を終了する。排出回数が3回以上の場合(S904:Y)、CPU311は、印刷処理を中断することを表すフラグをRAM312に格納して、図9に示すエスケープ処理を終了する(S905)。
【0054】
図10は、重送検知の動作制御処理を表すフローチャートである。この処理は、シートに対して印刷処理を行うたびに実行される。
【0055】
CPU311は、搬送中のシートのシート測定長の検出処理、重送検知開始位置の設定、及びエスケープ処理の実行判断を行う(S1001)。この処理は、図6の処理である。次いでCPU311は、重送検知処理を行うか否かを判断する(S1002)。CPU311は、RAM312に格納された重送検知を行うか否かを表すフラグを確認することで、重送検知処理を行うか否かを判断する。
【0056】
重送検知処理を行う場合(S1002:Y)、CPU311は、図8で説明した重送検知処理を行う(S1003)。重送検知処理が終了すると、CPU311は、エスケープ処理を行うか否かを判断する(S1004)。CPU311は、RAM312に格納されたエスケープ処理の実行の要否を表すフラグを確認することで、エスケープ処理を行うか否かを判断する。エスケープ処理を行わない場合(S1004:N)、CPU311は、印刷処理を正常に終了し(S1005)、重送検知の動作制御処理を終了する。
【0057】
エスケープ処理を行う場合(S1004:Y)、CPU311は、図9で説明したエスケープ処理を行う(S1006)。エスケープ処理の終了後にCPU311は、RAM312に格納された印刷を中断することを表すフラグを確認することで、該シートに対する印刷処理を中断するか否かを判断する(S1007)。印刷を中断すると判断した場合(S1007:Y)、CPU311は、印刷処理を中断して(S1008)、重送検知の動作制御処理を終了する。印刷を中断しないと判断した場合(S1007:N)、CPU311は、シートをエスケープさせ、異なるシートに対して印刷処理を再度行い(S1009)、S1001の処理に戻る。
【0058】
以上のような本実施形態の画像形成装置101は、搬送中のシートに対する重送の検知ミスを抑制することで、シート設定長の再入力のような不要なダウンタイムの発生を削減する。そのためにユーザの利便性が向上する。また、画像形成装置101は、搬送中のシートの搬送方向の先端から後端までの全区間において重送を検知する場合と比較して、最小区間で重送検知を行うために、重送検知センサ60の長寿命化をはかることができる。
【0059】
本実施形態は、画像形成装置101によるシート搬送時の重送検知について説明したが、これに限らず、シートの搬送を行うシート搬送装置を備える装置であれば、本実施形態と同様の処理により、重送の発生を確実に検知することが可能である。例えば、スキャナに設けられる自動原稿搬送装置にも、本実施形態を応用することが可能である。
図1
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