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特許7419076鋼管内異物切断器具及びこれを用いた切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】鋼管内異物切断器具及びこれを用いた切断方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 49/11 20060101AFI20240115BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20240115BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B23D49/11
H02G1/02
H02G7/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020004270
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109296
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505272618
【氏名又は名称】株式会社タワーライン・ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】飯野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中野渡 譲
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069091(JP,A)
【文献】特開2012-143817(JP,A)
【文献】特開2009-100529(JP,A)
【文献】特開2003-200124(JP,A)
【文献】特開2003-039033(JP,A)
【文献】特開平11-156254(JP,A)
【文献】特開平06-264493(JP,A)
【文献】特開平06-039358(JP,A)
【文献】特開昭63-188578(JP,A)
【文献】実開平06-019883(JP,U)
【文献】実開平05-094391(JP,U)
【文献】実開昭56-039178(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0331831(US,A1)
【文献】米国特許第04538316(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0066128(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/00-65/04
B08B 5/00-13/00
H02G 1/00-1/10
H02G 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜の剛性としなりを有する長尺な操作棒とその先端に設けた切断具とから成り、切断具は前記操作棒の先端に接続した接続部を介して二股に分かれ、当該二股に分かれた各先端からのこぎり刃部が設けられ、各のこぎり刃部の先端が、当該各のこぎり刃部を外方に広げるように付勢されたバネ蝶番で接続されていることを特徴とする、鋼管内異物切断器具。
【請求項2】
前記各のこぎり刃部は、前記二股に分かれた各先端とバネ蝶番の一端とを繋ぐ細長の刃固定板片の両側縁にのこぎり刃が夫々設けられ、これらののこぎり刃は一方が押し刃、他方が引き刃となっていることを特徴とする、請求項1に記載の鋼管内異物切断器具。
【請求項3】
前記バネ蝶番の回転軸部に一端を固定したロープの他端を操作棒の操作部付近まで伸ばし、当該ロープの他端を操作棒に沿って引っ張ると前記バネ蝶番がバネの力に抗してすぼむ構成となっていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鋼管内異物切断器具。
【請求項4】
前記ロープの他端を係止、固定する係止体を前記操作棒に設けていることを特徴とする、請求項3に記載の鋼管内異物切断器具。
【請求項5】
大径の鋼管の上に小径の鋼管が接続された鋼管材内の、大径の鋼管内の異物を切断する方法において、前記請求項1又は2のいずれかの鋼管内異物切断器具を用いて、前記小径の鋼管の上端から鋼管内に前記切断具を、前記バネ蝶番をバネの力に抗してすぼめて挿入し、これに続く前記操作棒を挿入し、前記切断具が大径の鋼管内に入り、異物に突き当たった際、前記切断具を異物の横に位置するように前記操作棒を動かし、前記切断具を異物の横に当てて操作棒を上下に動かし前記異物を切断することを特徴とする、切断方法。
【請求項6】
大径の鋼管の上に小径の鋼管が接続された鋼管材内の、大径の鋼管内の異物を切断する方法において、前記請求項3又は4のいずれかの鋼管内異物切断器具を用いて、前記小径の鋼管の上端から鋼管内に、前記ロープを引っ張って、前記バネ蝶番をバネの力に抗してすぼめた状態で前記切断具を挿入し、前記切断具が大径の鋼管内に入り、異物に突き当たった際、前記切断具を異物の横に位置するように前記操作棒を動かし、前記ロープの引張りを解除してバネ蝶番を広げ、前記切断具を異物の横に当てて操作棒を上下に動かし前記異物を切断することを特徴とする、切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線鉄塔等の鋼管内に突出する異物、例えば溶接棒等を作業員が鋼管の上から手作業で切断して異物を除去する切断器具及びこれを用いた鋼管内の異物切断器方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管材を使用した送電線鉄塔では、経年の劣化や貯留水、不メッキ等により内部腐食が発生することがある。その状況を内視鏡等で検査・確認・記録撮影するときに、鋼管内に異物等があると内視鏡の挿入が困難若しくは挿入できないことがあり、予めそれらを除去する方法・工具が必要であった。主なる異物は「溶接棒」が挙げられ、突起物として鋼管内部に堅固な状態で存在する。
【0003】
送電線鉄塔での内視鏡点検は、塔頂部まで昇塔して鋼管の蓋を外し、内部に内視鏡カメラを挿入することがあるが、頂部から地上に向けて鋼管材の太さが徐々に細いものから太いものへと変わっていく(以下、「異径部」という)。本発明の対象とする異物はこの異径段部となる部分以下に溶接若しくは固結しているものであり、簡単に除去できないものである。
【0004】
特許文献1は略水平方向に伸びる管路内の切削や研磨をする管体内面自走切削機であり、モータで先端の円形に並んだ複数のカッターを回転させて管路内壁を切削、研磨するものである。また、特許文献2は鋼管構造物の鋼管内部除錆処理装置であり、鋼管内部に当該装置を吊り下げて、当該本体から突出する支持アームで鋼管内で本体を支え、前記本体の下部から研削アームを鋼管の内壁に向けて突出させ、当該研削アームの先端の研削ヘッドを前記内壁の錆び箇所に押し当てて回転させて錆を研削するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭57-45631号公報
【文献】特許第5513722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のものは、主に管路内の切削や研磨に主要するものであり、また、特許文献2のものは、鋼管内部の錆びを研削するものであり、上記溶接棒のような異物の除去に使用するものではない。
【0007】
同じ大きさの鋼管材において内部に異物があった場合は、縦方向の鋼管であれば上から重しを落としたり棒の先の切断具等で異物を除去することは可能であるが、図10に示すように、鋼管1の入口が小径部1aとなっており、異物2が存在する部位がその下の大径部1bの場合は、重しを落としたり、先端に切断具がある棒で突いても触ることができないか、触ることができたとしても除去するだけの力を異物に伝えることができない。
【0008】
また、内視鏡を挿入しないと鋼管内部を見ることができないため、目視確認が不要でも異物を除去でき、鉄塔の主柱材の最小径に対応できる工具又は装置であることが必要である。しかしながら、この様な鋼管材の内部の異物除去器具又は装置については適当なものがないのが現状である。
【0009】
そこでこの発明は、上記の点に着目し、上部の径が小さく、下部の径が大きい鋼管内の異物を容易かつ確実に除去できる切断工具及び当該切断工具を用いた切断方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、適宜の剛性としなりを有する長尺な操作棒とその先端に設けた切断具とから成り、切断具は前記操作棒の先端に接続した接続部を介して二股に分かれ、当該二股に分かれた各先端からのこぎり刃部が設けられ、各のこぎり刃部の先端が、当該各のこぎり刃部を外方に広げるように付勢されたバネ蝶番で接続されている、鋼管内異物切断器具とした。
【0011】
また、請求項2の発明は、前記各のこぎり刃部は、前記二股に分かれた各先端とバネ蝶番の一端とを繋ぐ細長の刃固定板片の両側縁にのこぎり刃が夫々設けられ、これらののこぎり刃は一方が押し刃、他方が引き刃となっている、請求項1に記載の鋼管内異物切断器具とした。
【0012】
また、請求項3の発明は、前記バネ蝶番の回転軸部に一端を固定したロープの他端を操作棒の操作部付近まで伸ばし、当該ロープの他端を操作棒に沿って引っ張ると前記バネ蝶番がバネの力に抗してすぼむ構成となっている、請求項1又は2に記載の鋼管内異物切断器具とした。
【0013】
また、請求項4の発明は、前記ロープの他端を係止、固定する係止体を前記操作棒に設けている、請求項3に記載の鋼管内異物切断器具とした。
【0014】
また、請求項5の発明は、大径の鋼管の上に小径の鋼管が接続された鋼管内の、大径の鋼管内の異物を切断する方法において、前記請求項1又は2のいずれかの鋼管内異物切断器具を用いて、前記小径の鋼管の上端から鋼管内に前記切断具を、前記バネ蝶番をバネの力に抗してすぼめて挿入し、これに続く前記操作棒を挿入し、前記切断具が大径の鋼管内に入り、異物に突き当たった際、前記切断具を異物の横に位置するように前記操作棒を動かし、前記切断具を異物の横に当てて操作棒を上下に動かし前記異物を切断する、切断方法とした。
【0015】
また、請求項6の発明は、大径の鋼管の上に小径の鋼管が接続された鋼管内の、大径の鋼管内の異物を切断する方法において、前記請求項3又は4のいずれかの鋼管内異物切断器具を用いて、前記小径の鋼管の上端から鋼管内に、前記ロープを引っ張って、前記バネ蝶番をバネの力に抗してすぼめた状態で前記切断具を挿入し、前記切断具が大径の鋼管内に入り、異物に突き当たった際、前記切断具を異物の横に位置するように前記操作棒を動かし、前記ロープの引張りを解除してバネ蝶番を広げ、前記切断具を異物の横に当てて操作棒を上下に動かし前記異物を切断する、切断方法とした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1又は5の発明によれば、鋼管に異径段差があっても作業性を損なうことなく異物を容易且つ確実に除去できる。また、この鋼管内異物切断器具は簡単な構造であり、操作棒とその先端に取り付ける切断具から構成されているため製造が容易である。また、軽量であり作業者の操作及び取り扱いが極めて容易である。
【0017】
また、請求項2の発明によれば、のこぎり刃は押し刃と引き刃が用意されているため、作業者は好みに合わせ選択使用でき、使用しやすい。
【0018】
また、請求項3及び6の発明によれば、鋼管の小径部に当該鋼管内異物切断器具を挿入する際、ロープを操作棒に沿って引っ張れば、操作棒の先端の切断具が簡単にすぼまり、鋼管の小径部に挿入しやすく、作業性が良い。
【0019】
また、請求項4の発明によれば、前記ロープの他端を係止、固定する係止体を操作棒に設けているため、ロープを引っ張って切断具がすぼまった状態でロープの他端を操作棒に固定できるため、作業者はロープから手を離した状態で操作棒を鋼管に挿入でき、作業が極めて容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具の斜視図である。
図2】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具の操作棒の斜視面図である。
図3】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具の複数の操作棒の斜視図である。
図4】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具の切断具の正面斜視図である。
図5】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具の切断具の平面図である。
図6】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具を鋼管の小径部に挿入した状態を示す正面断面図である。
図7】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具を鋼管の大径部に挿入した状態を示す正面断面図である。
図8】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具の他の例を示す一部概略正面図である。
図9】この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具の他の例における切断具をすぼめた状態を示す一部概略正面図である。
図10】この発明の鋼管内異物切断器具を使用する鋼管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の鋼管内異物切断器具Aを図1図9に基づいて説明する。
【0022】
まず、この鋼管内異物切断器具Aは、図1に示すように、操作棒3と、当該操作棒3の先端に設けられた切断具4とから構成されている。
【0023】
操作棒3は、図2に示すように、剛性及び適宜の弾性を有するパイプから成り、その一端にはオス型連結部5、他端にはメス型連結部6が設けられ、図3に示すように、多数本の操作棒3を用意しておき、現場の鋼管の長さに応じて適宜複数本の操作棒3を繋げて長尺にすることができる。
【0024】
前記切断具4は、図4に示すように、前記操作棒3の先端に接続されるパイプ状の接続部7が設けられ、この接続部7の先端からバネ鋼材から成る二股板片8を突出させ、当該二股板片8の両先端から略平行に細長いバネ鋼材からなる刃固定板片9を設け、これらの各刃固定板片9の先端をバネ蝶番10で連結したものである。そして当該バネ蝶番10はバネにより常時前記各刃固定板片9を相互に引き離す方向に付勢されている。従って、前記バネ蝶番10を、バネの力に抗してすぼめると、両側の刃固定板片9は相互に接近する。
【0025】
上記各刃固定板片9の両側縁にはそれぞれのこぎり刃11、12が固定されている。これらののこぎり刃11は押し刃、のこぎり刃12は引き刃となっている。この様に押し刃と引き刃を刃固定板片9の両側縁に設けることにより作業者の好む切断方向を選択できるようにしている。従って、当該切断具4ののこぎり刃部16は前記刃固定板片9、のこぎり刃11及びのこぎり刃12から構成され、当該のこぎり刃部16は両側に一対設けられている。
【0026】
また、前記二股板片8の両側先端部と各刃固定板片9との接続部、また、各刃固定板片9とバネ蝶番10との接続部にはそれぞれ固定金具13が設けられ、当該固定金具13を介して夫々接続されている。
【0027】
次にこの鋼管内異物切断器具Aを用いて、図6の鋼管1内の異物2を切断、除去するには、当該鋼管内異物切断器具Aのバネ蝶番10をすぼめて、図6に示すように、鋼管1の小径部1aに上端開口部から挿入する。そして、当該鋼管内異物切断器具Aが鋼管1の大径部1bに達すると、バネ蝶番10がバネの力で広がり、両側の刃固定板片9が相互に離れ、各のこぎり刃部16が鋼管1の大径部1bの内壁を押圧する。
【0028】
この状態で、操作棒3を下ろしていき、切断具4ののこぎり刃部16が異物2に当たった感触を得ると、鋼管1の開口部から作業者は操作棒3を回して、図7に示すように、異物2の横に前記のこぎり刃部16を当て、作業者は鋼管1の上から操作棒3を上下させ、異物2を切断する。従ってこの作業は異物2と切断具4との当たった感触で行う。
【0029】
また、この鋼管1の小径部1aに当該鋼管内異物切断器具Aを挿入する際、又は挿入後小径部1aをスムーズに通過させるため、図8に示すように、前記バネ蝶番10の回転軸部にロープ14の一端を係止し、当該ロープ14を上方に引っ張ることによりバネ蝶番10をすぼめて切断具4の両側ののこぎり刃部16を畳んだ状態にすることもできる。
【0030】
そして、図9に示すように、操作棒3の、作業者が手を握って操作する操作部付近に設けた係止体15に前記ロープ14の他端を係止、固定した状態で当該鋼管内異物切断器具Aを鋼管1の小径部1a及び大径部1bに通す。そして、異物2の箇所に切断具4を到達させた際に、ロープ14の他端を係止体15から外す。これによりロープ14は緊張が解けて、バネ蝶番10の力でのこぎり刃部16が広がるようにしてもよい。
【0031】
なお、上記実施の形態例1では、両側の各のこぎり刃部16を押し刃11と引き刃12の二種類用意したが、一方だけでもよい。また、上記ロープ14や係止体15は任意であり、この発明の必須要件ではない。
【0032】
また、上述のように、操作棒3は多段に接続自在であり、また、操作棒3と切断具4とは接続、解体自在であり、現場に応じて接続するものである。従って、運搬時や保管時は操作棒3及び切断具4をばらしておくことができ、場所を取らず、便利である。また、当該鋼管内異物切断器具Aの使用方法は上記のものに限定されるものではない。他の方法にも使用できる。
【符号の説明】
【0033】
A 鋼管内異物切断器具
1 鋼管 1a 小径部
1b 大径部 2 異物
3 操作棒 4 切断具
5 オス型連結部 6 メス型連結部
7 接続部 8 二股板片
9 刃固定板片 10 バネ蝶番
11 押し刃 12 引き刃
13 固定金具 14 ロープ
15 係止体 16 のこぎり刃部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10