(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】被覆型農林園芸用粒状薬剤
(51)【国際特許分類】
C05G 3/00 20200101AFI20240115BHJP
A01N 25/26 20060101ALI20240115BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240115BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240115BHJP
A01N 47/28 20060101ALI20240115BHJP
A01N 47/24 20060101ALI20240115BHJP
C05G 3/40 20200101ALI20240115BHJP
【FI】
C05G3/00 ZBP
A01N25/26
A01P7/04
A01P21/00
A01N47/28 Z
A01N47/24 A
C05G3/40
(21)【出願番号】P 2020011321
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019214313
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福山 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】飛永 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 健造
(72)【発明者】
【氏名】上田 真澄
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-111521(JP,A)
【文献】特開平10-077201(JP,A)
【文献】特表2007-514518(JP,A)
【文献】米国特許第03708276(US,A)
【文献】特開2008-001550(JP,A)
【文献】特開2010-202482(JP,A)
【文献】特開2001-199802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05G 3/40
C05G 3/00
A01N 25/26
A01P 7/04
A01P 21/00
A01N 47/28
A01N 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有する被覆型農林園芸用粒状薬剤であり、
前記被覆層が、水に対する下限臨界溶液温度が10~40℃である温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)とを含む被覆型農林園芸用粒状薬剤
であり、
前記温度応答性架橋樹脂粒子(A)が、アルキル基の炭素数が2~6であるアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)並びに架橋剤(c)を必須構成単量体とする樹脂(A1)からなる粒子を含み、
前記被覆層が前記被覆樹脂(C)中に前記温度応答性架橋樹脂粒子(A)が分散している構造を有する被覆型農林園芸用粒状薬剤。
【請求項2】
温度応答性樹脂粒子(A)が、アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はビニルアルキルアミド(a2)、架橋剤(c)並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)を必須構成単量体とする樹脂(A2)からなる粒子を含む請求項
1に記載の被覆型農林園芸用粒状薬剤。
【請求項3】
アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)とビニルアルキルアミド(a2)との合計モル数の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)のモル数に対する比率[{(a1)+(a2)}/(h)]が85/15~95/5である請求項
2に記載の被覆型農林園芸用粒状薬剤。
【請求項4】
温度応答性樹脂粒子(A)が、アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はビニルアルキルアミド(a2)、架橋剤(c)並びに(メタ)アクリル酸(塩)(b)を必須構成単量体とする樹脂(A3)からなる粒子を含み、樹脂(A3)を構成する全ての単量体の合計モル数に対する(メタ)アクリル酸(塩)(b)のモル数の割合が5モル%未満である請求項1~
3のいずれかに記載の被覆型農林園芸用粒状薬剤。
【請求項5】
N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)が、N-イソプロピルアクリルアミドである請求項
1~
4のいずれかに記載の被覆型農林園芸用粒状薬剤。
【請求項6】
生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の個数平均粒子径が0.3~15mmである請求項1~
5のいずれかに記載の被覆型農林園芸用粒状薬剤。
【請求項7】
被覆樹脂(C)が、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルキド樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である請求項1~
6いずれかに記載の被覆型農林園芸用粒状薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面を樹脂組成物で被覆された被覆型農林園芸用粒状薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肥料及び被覆等の農林園芸に用いる粒状薬剤は農地等に散布して用いられている。そして薬剤の効果を高めることを目的として、樹脂等の被覆剤で被覆して薬剤の溶出挙動を調整することが行われている。例えば、溶出後期における溶出速度が大きく、さらに溶出初期の溶出速度が向上した被覆粒状肥料として、特定のポリオール成分とイソシアネート成分からなるウレタン樹脂と高吸水性樹脂であるポリアクリル酸Naからなる粒子とで被覆した被覆粒状肥料が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の被覆粒状肥料が有する被覆層に含まれる高吸水性樹脂は、水を吸水して肥料の溶解と溶出を促進する機能を有する。しかし吸水すると膨張してその体積が大きく変化するために吸水後に乾燥すると溶出挙動の調整を担う被覆層が破壊されてしまうことがあった。そのため、散布後の雨天等の天候の影響を受けやすく、長期間にわたって植物育成等の薬剤の効果を発揮させることが困難であるという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一度吸水して薬剤を放出した後に乾燥状態となっても被覆層の破壊が起こりにくく、天候等の影響を受けずに長期間にわたって植物育成等の効果を発揮させることが可能な被覆型農林園芸用粒状薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有する被覆型農林園芸用粒状薬剤であり、前記被覆層が、水に対する下限臨界溶液温度が10~40℃である温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)とを含む被覆型農林園芸用粒状薬剤であり、
前記温度応答性架橋樹脂粒子(A)が、アルキル基の炭素数が2~6であるアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)並びに架橋剤(c)を必須構成単量体とする樹脂(A1)からなる粒子を含み、
前記被覆層が前記被覆樹脂(C)中に前記温度応答性架橋樹脂粒子(A)が分散している構造を有する被覆型農林園芸用粒状薬剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一度吸水して薬剤の放出が始まった後に再び乾燥状態になっても被覆層の破壊が起こりにくく、長期間にわたって溶出速度の調整が可能な被覆型農林園芸用粒状薬剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤は、生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層を有する被覆型農林園芸用粒状薬剤であり、前記被覆層が、水に対する下限臨界溶液温度が10~40℃である温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)とを含む被覆型農林園芸用粒状薬剤である。
【0009】
生物活性物質(E)は、ある生体(菌類、動物及び植物等を含む)に対して作用を奏する物質を意味し、農業、林業及び園芸用に用いられる薬剤の有効成分等が含まれる。農業、林業及び園芸用に用いられる薬剤には、農作物や有用植物などの植物体の育成、保護の目的で用いられ、肥料及び農薬等として使用される公知の粒状薬剤が含まれる。
【0010】
生物活性物質(E)としては、生物に対して活性を有する物質であれば限定はないが、粒子(P0)が植物体の育成を目的とする薬剤(肥料等)である場合には、公知の肥料に含まれる活性物質があげられ、具体的なものとしては、植物必須元素(カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、微量要素及びケイ素等)、窒素質肥料に含まれる生物活性物質(硫酸アンモニア、尿素、硝酸アンモニア、イソブチルアルデヒド縮合尿素及びアセトアルデヒド縮合尿素等)、燐酸質肥料に含まれる生物活性物質(過燐酸石灰、熔成リン肥及び焼成リン肥等)、及び加里質肥料に含まれる生物活性物質(硫酸加里、塩化加里及びけい酸加里等)等があげられる。
【0011】
粒子(P0)が植物の保護を目的とする薬剤(農薬、忌避剤及び除草剤等)である場合には、生物活性物質(E)としては、病害防除剤、害虫防除剤、有害動物防除剤、雑草防除剤及び植物生長調節剤等の公知の農薬等に含まれる生物活性物質があげられる。なお、病害防除剤とは病原微生物の有害作用から農作物等を保護するために用いられる薬剤であり、主として殺菌剤が挙げられる。害虫防除剤とは農作物等を加害する害虫を防除する薬剤であり、主として殺虫剤が挙げられる。有害動物防除剤とは農作物等を加害する植物寄生性ダニ、植物寄生性線虫、野鼠、鳥、その他の有害動物を防除するために用いる薬剤である。雑草防除剤とは農作物や樹木等に有害となる草木植物の防除に用いられる薬剤であり、除草剤とも呼ばれる。植物生長調節剤とは植物の生理機能の増進あるいは抑制を目的に用いられる薬剤であり、バイオスティミュラントとも呼ばれている。
【0012】
前記の農薬等に含まれる生物活性物質(E)としては、1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-ニトロイミダゾリジン-2-イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、o,o-ジエチル-S-2-(エチルチオ)エチルホスホロジチオエート(一般名:エチルチオメトン)、2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾ〔b〕フラニル=N-ジブチルアミノチオ-N-メチルカルバマート(一般名:カルボスルファン)、(E)-N-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-エチル-N´-メチル-2-ニトロビニリデンジアミン(一般名:ニテンピラム)、(±)-5-アミノ-(2,6-ジクロロ-α,α,α-トリフルオロ-p-トルイル)-4-トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール-3-カルボニトリル(一般名:フィプロニル)、ブチル=2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イル=N,N´-ジメチル-N,N´-チオジカルバマート(一般名:フラチオカルブ)、エチル=N-〔2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イルオキシカルボニル(メチル)アミノチオ〕-N-イソプロピル-β-アラニナート(一般名:ベンフラカルブ)、1-ナフチル-N-メチルカーバメート(一般名:NAC)、(1RS,3SR)-2,2-ジクロロ-N-[1-(4-クロロフェニル)エチル]-1-エチル-3-メチルシクロプロパンカルボキサミド(一般名:カルプロパミド)、(RS)-2-シアノ-N-[(R)-1-(2,4-ジクロロフェニル)エチル]-3,3-ジメチルブチラミド(一般名:ジクロシメット)、5-メチル-1,2,4-トリアゾロ〔3,4-b〕ベンゾチアゾール(一般名:トリシクラゾール)、1,2,5,6-テトラヒドロピロロ〔3,2,1-ij〕キノリン-4-オン(一般名:ピロキロン)、(RS)-5-クロロ-N-(1,3-ジヒドロ-1,1,3-トリメチルイソベンゾフラン-4-イル)-1,3-ジメチルピラゾール-4-カルボキサミド(一般名:フラメトピル)、3-アリルオキシ-1,2-ベンゾイソチアゾール-1,1-ジオキシド(一般名:プロベナゾール)、2-クロロ-4-エチルアミノ-6-イソプロピルアミノ-s-トリアジン(一般名:アトラジン)、1-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル尿素(一般名:イマゾスルフロン)、S-ベンジル=1,2-ジメチルプロピル(エチル)チオカルバマート(一般名:エスプロカルブ)、エチル=(RS)-2-[4-(6-クロロキノキサリン-2-イルオキシ)フェノキシ]プロピオナート(一般名:キザロホップブチル)、ブチル=(R)-2-[4-(4-シアノ-2-フルオノフェノキシ)フェノキシ]プロピオナート(一般名:シハロホップブチル)、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン(一般名:ジメタメトリン)、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン(一般名:シメトリン)、1-(α,α-ジメチルベンジル)-3-(パラトリル)尿素(一般名:ダイムロン)、2-クロロ-N-(3-メトキシ-2-テニル)-2´,6´-ジメチルアセトアニリド(一般名:テニルクロール)、α-(2-ナフトキシ)プロピオンアニリド(一般名:ナプロアニリド)、メチル=3-クロロ-5-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-1-メチルピラゾール-4-カルボキシラート(一般名:ハロスルフロンメチル)、エチル=5-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-1-メチルピラゾール-4-カルボキシラート(一般名:ピラゾスルフロンエチル)、S-(4-クロロベンジル)-N,N-ジエチルチオカーバメート(一般名:ベンチオカーブ)、メチル=α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルアート(一般名:ベンスルフロンメチル)、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド(一般名:メフェナセット)等があげられる。
【0013】
粒子(P0)が含む生物活性物質(E)としては1種だけを用いても、2種以上の成分を併用しても良く、2種以上を併用する場合には、肥料に含まれる生物活性物質(E)と農薬に含まれる生物活性物質(E)とを併用しても良い。
【0014】
生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の粒子径は特に限定されるものではないが、個数平均粒子径が0.3~15mmであることが好ましい。
なかでも本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤を肥料として用いる場合には、発塵の少なさ等の取り扱い性等の観点から1.0~11.0mmであることが好ましく、農薬として用いる場合には発塵の少なさ等の取り扱い性等の観点から0.3~3.0mmであることが好ましい。
粒子(P0)の個数平均粒子径は、JIS 8827-1に準じて、生物活性物質(E)の粒子をデジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製、VHX-200)で観察して画像処理することにより測定することができる。
【0015】
生物活性物質(E)を含む粒子(P0)は、常温(好ましくは5~40℃)において固体粒状であることが好ましい。また、本発明においては、粒子(P0)は水溶性であっても、水難溶性であっても、水不溶性のものであっても用いることができる。
【0016】
生物活性物質(E)を含む粒子(P0)としては、生物活性物質(E)の単一結晶、粒状に成形した生物活性物質(E)及び固化した生物活性物質(E)の粉砕物等を用いることが出来る。
【0017】
生物活性物質(E)を含む粒子(P0)としては、前記生物活性物質(E)と無機微粒子や結着樹脂等とで造粒した粒子を用いることができる。前記生物活性物質(E)と無機微粒子や結着樹脂等とで造粒した粒子としては、生物活性物質(E)の粒子同士を結着樹脂で結着して造粒した粒子、及び生物活性物質(E)を吸着させた無機微粒子を結着樹脂で結着して造粒した粒子等を用いることができる。
【0018】
粒子(P0)が造粒した粒子である場合、無機微粒子としてはクレー、カオリン、タルク、ベントナイト及び炭酸カルシウム等を用いることができ、結着樹脂としてはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び澱粉等を用いることができる。また、造粒粒子にはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の界面活性剤や廃糖蜜、動物油、植物油、水素添加油、脂肪酸、脂肪酸金属塩、パラフィン、ワックス及びグリセリンなどの公知の添加物が含まれても良い。
【0019】
本発明の覆型農林園芸用粒状薬剤は、生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の粒子表面の少なくとも一部に被覆層を有する。被覆層を有することは後述する被覆型農林園芸用粒状薬剤の製造方法において説明する方法で確認することができる。
【0020】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤が有する被覆層は、水に対する下限臨界溶液温度が10~40℃である温度応答性架橋樹脂粒子(A)を含み、前記の温度応答性樹脂粒子(A)は、水に対する下限臨界溶液温度が10~40℃である温度応答性架橋樹脂からなる粒子である。
温度応答性樹脂とは、温度変化により水に対する溶解性が劇的に変化する樹脂であり、なかでも架橋構造を持たず、かつ下限臨界溶液濃度(LCSTともいう)を有する樹脂である場合にはLCSTよりも低い温度では水に溶解するが、温度がLCSTまで上昇すると水に対して不溶化して析出するという性質を有する。このようなLCSTを境に溶解状態から不溶化状態に変化する温度応答性樹脂の構成単量体を架橋剤と共重合して得られる架橋樹脂は、LCSTより低い温度では吸水して膨潤してハイドロゲルを形成し、ハイドロゲルをLCSTより高い温度にすると吸水していた水を排出(脱水ともいう)する性質を発現する。このように、LCSTを境に状態が変化するハイドロゲルを感温性ハイドロゲルという。
本発明で用いる「LCSTが10~40度℃である温度応答性架橋樹脂粒子(A)」とは、10~40℃にあるLCSTを境に含水状態から脱水状態(又は脱水状態から含水状態)に状態変化するハイドロゲルを形成する架橋樹脂からなる粒子である。
【0021】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤は水を吸収して感温性ハイドロゲルを形成する温度応答性架橋樹脂粒子(A)を被覆層に含むため、LCSTより低い温度では水を吸水することで生物活性物質(E)の溶解と溶出を促進する機能を有する。それだけではなく、一度吸水した後に乾燥状態になった場合に被覆層を破壊することがないため、長期間にわたって植物育成等の効果を発揮させることが可能な被覆型農林園芸用粒状薬剤となる。
【0022】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤において、下限臨界溶液温度が10~40℃である温度応答性架橋樹脂粒子(A)を含むことで、吸水した後に乾燥状態になった場合に被覆層の破壊が生じにくい理由は明らかではないが、温度応答性架橋樹脂粒子(A)から形成される感温性ハイドロゲルは、温度応答性樹脂の骨格中に含まれる疎水基同士の会合形成によってゲルが収縮しながら水を排斥するので吸水する前と一度吸水した後に再び乾燥した後との粒径の変化が小さいことが一つの理由として考えられる。一方、従来技術において用いられるポリアクリル酸Na重合体粒子は疎水基を持たないために会合形成による収縮力が生じず、吸水膨潤によって増えた体積のまま乾燥状態となことが被覆層の破壊が生じやすい理由の一つと考えられる。
【0023】
温度応答性樹架橋脂粒子(A)としてはLCSTが10~40℃の架橋樹脂粒子であれば1種類の温度応答性架橋樹脂粒子のみを用いても良く、LCSTが異なる2種以上の温度応答性架橋樹脂粒子を用いても良い。なお、LCSTが10℃より低いと植物が生育する環境温度で不溶化してしまうために灌漑した水が吸水されず、薬剤の放出を調整することができない。また、LCSTが40℃を超えると吸水後の乾燥による被覆層の破壊を十分に抑えることができない。
なお、本発明においてLCSTは、温度応答性架橋樹脂粒子(A)の1.0重量%水溶液を5~60℃に加熱した時の光線透過率(波長670nm)をUV-vis分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、UV-2550)を用いて測定し、透過率50%となる温度である。
【0024】
また、本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤は、温度応答性架橋樹脂粒子(A)のLCSTを調整することによって環境温度に対する生物活性物質(E)の溶出挙動の依存性を抑制できる。
吸水性樹脂粒子を被覆層に含む被覆肥料は吸水性樹脂粒子が吸収した水によって生物活性物質(E)の溶解が行われ、ゲル状になった吸水性樹脂粒子部分から多くの生物活性物質(E)が溶出すると考えられる。一般に温度が異なると生物活性物質(E)の水への溶解度も変化するため、生物活性物質(E)の溶出挙動は環境温度に対する依存性が有り、特に温度が上がった場合には想定以上に生物活性物質(E)が溶出してしまって効果を所定の期間発現させることが困難な場合がある。
しかし、吸水性樹脂粒子として温度応答性架橋樹脂粒子(A)を被覆層に含む本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤には、LCSTより低い温度では吸収した水による生物活性物質(E)の溶解と放出とがおこるがLCSTを超えると生物活性物質(E)を溶解する水を排出するため、生物活性物質(E)の溶解と放出が抑制されてより長期間にわたって効果を発現することができる。
環境温度に対する生物活性物質(E)溶出挙動の依存性を調整する方法としては、温度応答性架橋樹脂粒子(A)として特定のLCSTを用いる方法、及びLCSTが異なる2種以上の温度応答性架橋樹脂粒子(A)を用いる方法等があげられる。高温領域(25℃を超えて40℃以下)になった時に溶出速度を抑制する場合には、LCSTが25~35℃の温度応答性樹脂粒子を好ましく用いることができ、低温領域(10℃以上で25℃未満)において溶出速度を抑制する場合には、LCSTが15~25℃の温度応答性樹脂粒子を好ましく用いることができる。
【0025】
高温領域における生物活性物質(E)の溶出挙動は、35℃の水中に粒状薬剤を置いた場合における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数(以下、D35と記載する)と25℃の水中に粒状薬剤を置いた場合の生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数(以下、D25と記載する)とを用いて、D35に対するD25の比率(高温時温度依存指数と記載する場合がある)[(D25)/(D35)]を計算することで評価することができる。高温時温度依存指数は1に近い値である程、温度に対する溶出量の依存性が小さいことを示し、高温時温度依存指数は0.5~2.0であることが好ましく、0.8~1.5であることがより好ましい。
【0026】
低温領域における生物活性物質(E)の溶出挙動は、前記のD25と15℃の水中に粒状薬剤を置いた場合の生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数(以下、D15と記載する)とを用いて、D25に対するD15の比率(低温時温度依存指数と記載する場合がある)[(D15)/(D25)]を計算することで評価することができる。低温時温度依存指数は1に近い値である程、温度に対する溶出量の依存性が小さいことを示し、低温時温度依存指数は0.5~2.0であることが好ましく、0.8~1.5であることがより好ましい。
【0027】
被覆型農林園芸用粒状薬剤からの生物活性物質(E)の溶出率の算出は、以下の方法で行う。
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤10gを容積250mLのガラス容器の底部に静置させ、ガラス容器のそれぞれに15℃、25℃又は35℃に調整した水を200mL注ぎ、ガラス容器の蓋を閉めて15℃、25℃又は35℃に設定した小型環境試験機(例えば、エスペック社製、SU-222)にガラス容器に入れた水の温度に応じてそれぞれ静置する。一定時間ごとにガラス容器の水溶液に含まれる生物活性物質(E)の量を定量し、被覆型農林園芸用粒状薬剤10gに含まれる生物活性物質(E)の量(g)に対する溶出した生物活性物質(E)の量(g)の比率[生物活性物質(E)の溶出率(%)]を計算し、溶出率が80%となった日数をそれぞれD15、D25及びD35とする。
【0028】
ガラス容器の水溶液に含まれる生物活性物質(E)の量は、生物活性物質(E)の種類に応じた方法で定量すれば良く、生物活性物質(E)が尿素である場合には、水中の尿素濃度を比色法により測定する市販のキット(例えば、BioAssay Systems社のQuantiChrom Urea Assay Kit II)と分光光度計(例えば、BioTEK Instruments社のPowerWave XS)とを用いて尿素の吸収波長(557nm)における吸光度を測定し、濃度既知の尿素水溶液の吸光度を比較することで定量することができる。
【0029】
温度応答性樹脂粒子(A)を構成する、水に対する下限臨界溶液温度が10~40℃である温度応答性架橋樹脂としては、吸水性と所定のLCSTを有する架橋樹脂であれば制限なく使用でき、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアルキルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド及びアルキルビニルエーテル等を構成単量体として含む架橋樹脂、並びに水溶性セルロースエーテル(メチルセルロース等)の架橋体等があげられる。なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0030】
下限臨界溶液温度が10~40℃の範囲にある温度応答性架橋樹脂粒子(A)としては、生物活性物質(E)の溶出挙動等の観点から、アルキル基の炭素数が2~12(好ましくは2~6)であるアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)並びに架橋剤(c)を必須構成単量体とする樹脂(A1)からなる粒子を含むことが好ましく、樹脂(A1)はアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び架橋剤(c)を必須構成単量体とする樹脂であることが更に好ましい。前記のアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0031】
前記のアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)としては、アクリルアミド又はメタクリルアミドの窒素原子と結合した1個の水素原子がアルキル基で置換されたもの、又は2個の水素原子がそれぞれアルキル基で置換されたものが挙げられ、アルキル基としては炭素数が2~6である直鎖、分岐又は環状のアルキル基がこのましいものとして挙げられ、2個の水素原子が置換されている場合には互いに結合して環状構造(窒素原子を含む複素環構造)を形成していてもよい。アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)として好ましいものとしては、N-イソプロピルアクリルアミド[LCST=31~32℃]、N,N’-ジエチルアクリルアミド[LCST=約25℃]、N-n-プロピルアクリルアミド[LCST=22℃]、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド[LCST=20℃]、N-アクリルピロリジン[LCST=58℃]、N-シクロプロピルアクリルアミド[LCST=約46℃]及びN-n-プロピルメタクリルアミド[LCST=28℃]等が挙げられ、N-イソプロピルアクリルアミド及びN,N’-ジエチルアクリルアミドがさらに好ましく、より好ましくは、N-イソプロピルアクリルアミドである。
N-ビニルアルキルアミド(a2)としてはN-ビニルノルマルプロピルアミド(N-ビニル-n-プロピルアミド)[LCST=約32℃]、N-ビニルイソプロピルアミド[LCST=約39℃]、N-ビニル-n-ブチルアミド[LCST=32℃]及びN-ビニルイソブチルアミド[LCST=39℃]等が挙げられ、N-ビニルノルマルプロピルアミドが好ましい。なお、化合物名の後ろに続けて記載した角括弧内に記載したLCSTの値は、単独重合体のLCSTである。
【0032】
例えば、N-イソプロピルアクリルアミドを単独重合して得られるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は、32℃より低温側では水に溶解し、高温側では不溶となり水を吸収しなくなる。そのためN-イソプロピルアクリルアミドと架橋剤(c)とを構成単量体とする架橋樹脂からなる粒子を温度応答性架橋樹脂粒子(A)として用いてそのハイドロゲルを作製すると、32℃を超えるハイドロゲルからの水が排出され、農林園芸用粒状薬剤の被覆剤を構成する成分として用いた場合には32℃を超える領域での生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を抑制できると考えられる。
【0033】
なお、アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)におけるアルキル基の炭素数を変更することによってLCSTを調整することができ、例えばN-ノルマル-プロピルアクリルアミドと架橋剤(c)とを構成単量体とする架橋樹脂のLCSTは約23℃であり、N-ビニルノルマルプロピルアミドと架橋剤(c)とを構成単量体とする架橋樹脂のLCSTは約32℃である。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)は2種以上を併用することでLCSTを調整することができ、それによって溶出挙動を調整することができる。
【0034】
架橋剤(c)としては、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤が好ましく挙げられ、さらに好ましくはN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。これらのうち、更に好ましくはN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルであり、特に好ましくは、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。
【0035】
アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はビニルアルキルアミド(a2)並びに架橋剤(c)を必須構成単量体とする樹脂(A1)において、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計使用量は温度応答性架橋樹脂粒子(A)の構成単量体の合計重量に対して50~99.9重量%が好ましく、98.0~99.8重量%がさらに好ましい。構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計重量の架橋剤(c)の重量に対する重量比率[{(a1)+(a2)}/(c)]は、生物活性物質(E)の溶出挙動の温度依存性等の観点から、95/5~99.9/0.1が好ましく、96/4~99/1がさらに好ましい。
【0036】
温度応答性架橋樹脂粒子(A)としては、アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はビニルアルキルアミド(a2)、架橋剤(c)並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)を必須構成単量体とする樹脂(A2)からなる粒子も好ましい。必須構成単量体に(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)を含むと、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)を含まない場合に比べてLCSTの低い樹脂となり、樹脂(A2)としては、LCSTが15~25℃である樹脂が好ましい。樹脂(A2)のLCSTがこの範囲にあると25℃未満の領域でハイドロゲルからの水の排出が生じ、LCSTを超える領域での生物活性物質(E)の溶出を抑えることができる。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)としては、アルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがあげられ、好ましいものとしてはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート及び2-エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられ、さらに好ましくはプロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びブチルアクリレートであり、より好ましくはブチルアクリレート及びブチルメタクリレートであり、特に好ましくはブチルメタクリレートである。
【0038】
樹脂(A2)を構成するアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)とビニルアルキルアミド(a2)のモル数は、アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)とビニルアルキルアミド(a2)との合計モル数が(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)のモル数を基準として計算される比率[{(a1)+(a2)}/(h)]として85/15~95/5であることが好ましく、87/13~93/7がさらに好ましい。また、樹脂(A2)におけるN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計使用量は、樹脂(A2)の構成単量体の合計重量を基準として50~99.9重量%が好ましく、98~99.8重量%がさらに好ましい。
【0039】
樹脂(A2)において、構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計重量の架橋剤(c)の重量に対する重量比率[{(a1)+(a2)}/(c)]は、生物活性物質(E)の溶出挙動の温度依存性等の観点から、95/5~99.9/0.1が好ましく、99.0/1.0~99.8/0.2がさらに好ましい。
【0040】
温度応答性架橋樹脂粒子(A)としては、アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)、架橋剤(c)並びに(メタ)アクリル酸(塩)(b)を必須構成単量体とする樹脂(A3)からなる粒子を含み、樹脂粒子(A3)を構成する樹脂の構成単量体の合計モル数に対する(メタ)アクリル酸(塩)(b)のモル数の割合が5モル%未満であることも好ましい。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸(塩)」は、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を指す。樹脂(A3)が(メタ)アクリル酸(塩)(b)を構成単量体の合計モル数を基準として5モル%未満(好ましくは0.01モル%以上5モル%未満、より好ましくは0.01~3モル%)の割合で含むと、(メタ)アクリル酸(塩)(b)を含まない場合に比べてLCSTの高い樹脂となる。
【0041】
(メタ)アクリル酸(塩)(b)としては、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩等)、アンモニウム塩及びアミン塩等が挙げられる。これらのうち吸水性等の観点から、アクリル酸のアルカリ金属塩が好ましく、アクリル酸のナトリウム塩がより好ましい。
【0042】
樹脂(A3)を構成するアルキル(メタ)アクリルアミド(a1)とビニルアルキルアミド(a2)のモル数は、アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)とビニルアルキルアミド(a2)との合計モル数が(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)のモル数を基準として計算される比率[{(a1)+(a2)}/(h)]として85/15~95/5であることが好ましく、87/13~93/7がさらに好ましい。また、樹脂(A3)におけるN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計使用量は、樹脂(A3)の構成単量体の合計重量を基準として50~99.9重量%が好ましく、98~99.8重量%がさらに好ましい
【0043】
樹脂(A3)において、構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計重量の架橋剤(c)の重量に対する重量比率[{(a1)+(a2)}/(c)]は、生物活性物質(E)の溶出挙動の温度依存性等の観点から、95/5~99.9/0.1が好ましく、96/4~98.5/1.5がさらに好ましい。
【0044】
前記の樹脂(A1)、(A2)及び(A3)において、他の単量体を構成単量体として共重合しても良い。共重合する他の単量体の種類及び共重合する比率を調整することにより樹脂のLCSTを調節でき、疎水性単量体と共重合することでLCSTを低温側へ、親水性単量体と共重合することでLCSTを高温側に移動させることができる。
【0045】
共重合可能な他の単量体のうち、親水性単量体として好ましいものとしては水酸基、ポリオキシエチレン鎖及びアミノ基等を有する単量体[ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレート等)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等)、N-ビニル-2-ピロリドン及び(メタ)アクリルアミド等]があげられる。疎水性単量体として好ましいものとしては、アルキル基の炭素数が12を超えるアルキル(メタ)アクリルアミド[N-n-ドデシルアクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体等]、N-(ω-グリシドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド[N,N-ジグリシジルアクリルアミド、N-(4-グリシドキシブチル)アクリルアミド、N-(5-グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N-(6-グリシドキシヘキシル)アクリルアミド、N,N-ジグリシジルメタクリルアミド、N-(4-グリシドキシペンチル)メタクリルアミド及びN-(5-グリシドキシヘキシル)メタクリルアミド]、(メタ)アクリロニトリル、カルボン酸ビニルエステル(酢酸ビニル等)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニル等)、モノ又はジオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン及びイソプレン等)、芳香族ビニル(スチレン及びα-メチルスチレン等)等があげられる。
【0046】
樹脂(A1)、(A2)及び(A3)において、さらに前記の他の単量体を共重合する場合、他の単量体の割合は本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤に使用する温度応答性架橋樹脂粒子(A)のLCSTに応じて調整される。
【0047】
樹脂(A1)、(A2)及び(A3)は、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法及び噴霧重合法等の公知の方法(特開2004-83619号公報、特開2002-121230号公報及び特開平8-100010号公報等に記載の方法)で重合することができ、好ましい重合方法はラジカル重合開始剤を使用した溶液重合法(さらに好ましくは水溶液重合)である。ラジカル重合開始剤としては公知の開始剤を用いることができ、ラジカル重合条件(ラジカル重合開始剤の量、単量体濃度及び重合温度等)は温度応答性架橋樹脂粒子(A)を構成する樹脂の分子量等に応じて公知の条件から選択し調整して重合することができ、必要に応じて各種添加剤、連鎖移動剤(例えば、チオール化合物等)及び界面活性剤等を添加してもよい。
【0048】
樹脂(A1)、(A2)及び(A3)の粒子は、溶液重合した後に溶媒を除去して得られた重合体を粉砕する方法、並びに懸濁重合法及び噴霧重合法等で得られた混合物から溶媒を除去して粒子を得る方法等で得ることが出来る。また、これらの方法で得られた粒子は、さらに篩い分け等の公知の方法で分級して温度応答性架橋樹脂粒子(A)として用いても良い。
【0049】
温度応答性架橋樹脂粒子(A)の形状は特に限定されず、球(真球を含む)及び楕円体等の形状(懸濁重合法及び噴霧重合法等で得られる)であっても、不定形(重合体を粉砕する方法で得られる)であってもよい。温度応答性架橋樹脂粒子(A)の粒子径は、被覆層を設ける生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の粒子径に応じて調整することができるが、温度応答性樹脂粒子(A)の体積平均粒子径(D50)は、1~200μmが好ましく、さらに好ましくは1~150μmであり、より好ましくは40~80μmである。温度応答性架橋樹脂粒子(A)の粒子径が上記範囲であると、前記の粒子(P0)の表面に均一な被覆層を形成しやすく好ましい。温度応答性架橋樹脂粒子(A)の体積平均粒子径は、JIS Z 8825に準じて、乾式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製のLS 13 320等)で測定される。
【0050】
被覆樹脂(C)としては、生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の表面に被覆層を形成することができれば制限無く使用することができる。なかでも生物活性物質(E)の溶出を制御する観点から、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂及びこれらの2種以上の併用が好ましく、ポリウレタン樹脂及びポリエチレン樹脂が更に好ましく、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0051】
被覆樹脂(C)としてのポリウレタン樹脂としては、ポリオール成分、ポリイソシアネート及びアミン化合物を硬化させて得られるポリウレタン樹脂が好ましい。
【0052】
ポリウレタン樹脂に用いるポリオール成分としては、ひまし油、ひまし油誘導体、及びそれらのエチレンオキサイド並びにプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加物が挙げられる。ひまし油誘導体としては、ひまし油の一部加水分解物、ひまし油のジオール類(ひまし油をジオール類(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール)でエステル交換したエステル交換体)、ひまし油とグリセリン、トリメチロールプロパンなどのポリオールとのエステル交換体を挙げることができる。なかでも、ひまし油をエチレングリコール又はプロピレングリコールでエステル交換した誘導体(エステル交換体)が好ましい。
【0053】
ポリイソシアネートは、特に限定されないが、芳香族系のポリイソシアネートが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びこれらの変性体(例えば、ウレア変性体、二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート変性体及びビュレット変性体など)等が挙げられる。これらは2種類以上を併せて使用することができ、ポリイソシアネートとしては「粗製ポリイソシアネート」として市販されており工業用に公用されているものであってもよい。上記のうちMDI、粗製MDI、カルボジイミド化MDI(液状MDIともいう)、TDI及び粗製TDIが好ましい。
【0054】
また、ポリイソシアネートは、上記のポリオール成分と反応してイソシアネート基末端プレポリマーとして使用することが好ましい。イソシアネート基末端プレポリマーを得るために用いるポリオール成分としては、上記のひまし油、及びひまし油誘導体が好ましい。
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオール成分とを公知の方法で反応することで得られ、ポリイソシアネートとポリオールとのNCO基/活性水素基の当量比を1.1~50.0(好ましくは1.2~25.0)として、30~130℃(好ましくは40~90℃)の反応温度で1~5時間反応を行うことが好ましい。
【0055】
アミン化合物としては、アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン及びジメチルイソプロピルアミン等)、及びアミン系ポリオール(ジ-又はトリ-エタノールアミン及びN-メチル-N,N’-ジエタノールアミン等の低分子アミン系ポリオール;エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン等のアルキレンジアミン等にプロピレンオキサイド(以下POと略記する)又はエチレンオキサイド(以下EOと略記する)等のアルキレンオキサイド(以下AOと略記する)を付加したアミン系ポリオール等)があげられる。
アルキレンジアミンにAOを付加したアミン系ポリオールとしては、オキシプロピレン化エチレンジアミン及びオキシエチレン化エチレンジアミンが好ましく、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]-1,6-ヘキサンジアミン等が挙げられ、反応性と物性との観点から、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、及びN,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミンがさらに好ましい。アミン化合物としてはアミン系ポリオールが好ましく用いられる。アミン系ポリオールを用いた場合には、得られるポリウレタン樹脂と、温度応答性樹脂粒子(A)との良好な相溶性が得られ、均一な被膜が容易に形成される。アミン系ポリオールは反応を促進すると共に架橋剤及び鎖延長剤としても働き、良好な硬化性と強靭な被膜物性が得られる。
【0056】
被覆樹脂(C)としてのポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合物、ポリブテン、ブテン・エチレン共重合物及びブテン・プロピレン共重合物等があげられる。中でもポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがさらに好ましい。
【0057】
被覆樹脂(C)としてのアルキド樹脂としては、特開2001―163691号公報等に記載の公知のアルキド樹脂を用いることができる。
【0058】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤が有する被覆層は、前記の温度応答性架橋樹脂粒子(A)と前記の被覆樹脂(C)とを含み、生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の表面の少なくとも一部に温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)とが付着していれば良い。なかでも被覆層が樹脂(C)中に温度応答性架橋樹脂粒子(A)が分散している構造を有することが好ましい。また、生物活性物質(E)の溶出を制御する観点から、粒子(P0)の表面全体に被覆層を有することが好ましい。
【0059】
被覆層に含まれる温度応答性架橋樹脂粒子(A)の含有量は、生物活性物質(E)の溶出性等の観点から、温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)との合計重量に基づいて20~95重量%が好ましく、25~75重量%がさらに好ましく、30~55重量%がより好ましい。
【0060】
被覆層に含まれる被覆樹脂(C)の含有量は、生物活性物質(E)の溶出性等の観点から、温度応答性樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)との合計重量に基づいて好ましくは5~80重量%であり、さらに好ましくは45~80重量%である。
【0061】
被膜層の厚さは特に限定されないが、生物活性物質(E)の溶出性等の観点から、10~300μmが好ましく、100~250μmがさらに好ましい。被覆層の厚さは、被覆型農林園芸用粒状薬剤を粒子の中心を通るように切断した断面をJIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定する。
【0062】
生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の粒子表面に被覆層を形成する方法は、特に限定されないが、流動状態にある前記の粒子(P0)に前記の温度応答性架橋樹脂粒子(A)と前記の被覆樹脂(C)とを加えて混合する等の公知の方法を用いることができる。粒子(P0)を流動状態にするには、公知の流動化装置を用いて行うことができ、粉体層に気体を流す方法、粉体混合機(容器回転型混合機、リボン式混合機、ヘンシェルミキサ等)を用いる方法、及び振動コンベアを用いる方法等で行うことが出来る。流動状態にある前記の粒子(P0)と温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)との混合は、前記の流動化装置内に前記の粒子(P0)と温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)とを共存させて流動化することで行うことができる。なかでも、流動化状態にある粒子(P0)に溶媒に溶解した被覆樹脂(C)の溶液を添加し、さらに温度応答性架橋樹脂粒子(A)を添加して混合する方法、及び流動化状態にある粒子(P0)に液体状態にある被覆樹脂(C)の前駆体を添加し、さらに温度応答性架橋樹脂粒子(A)を添加して前記の前駆体を反応させながら混合する方法が好ましい方法としてあげられる。
【0063】
粒子(P0)の粒子表面に被覆層を形成する前記の方法において、粒子(P0)と温度応答性架橋樹脂粒子(A)と被覆樹脂(C)との重量比率は、粒子(P0)と温度応答性架橋樹脂粒子(A)及び被覆樹脂(C)との比率{[粒子(P0)]/{[(樹脂粒子(A)+被覆樹脂(C))}が16/1~1/1であることが好ましい。
【0064】
粒子(P0)の粒子表面に被覆層が形成されたかどうかは、目視により粒子表面の色の変化、粒子表面を指で触れた時の感触の変化、及びマイクロスコープを用いて測定される粒子径の変化等により確認することができる。
【0065】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤が有する被覆層にはLCSTが10~40℃である温度応答性架橋樹脂粒子(A)及び被覆樹脂(C)以外のその他の添加成分を含んでもよい。その他の添加成分としては、被覆粒状肥料に添加され得る公知の成分が挙げられ、無機質粒子(タルク、カオリン、クレー及び珪酸塩粉末等)、有機微粒子、LCSTを持たない又はLCSTが10℃未満若しくは40℃を超える吸水性樹脂粒子、ラジカル安定剤、疎水性化合物(流動パラフィン等)及び界面活性剤等が挙げられる。
これらのその他の添加成分の添加量は、添加目的に応じて調整することができるが、LCSTを持たない吸水性樹脂粒子としてポリアクリル酸Na架橋(共)重合体粒子を用いる場合には、その添加量は少ない方が好ましく、長期間にわたって植物育成等の薬剤の効果を発揮させるという観点から、用いない方が好ましい。
【0066】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤を適用できる作物は限定されるものではなく、食用作物(イネ、ムギ、トウモロコシ、イモ及びマメ等)、飼料作物、工芸作物及び園芸作物[果樹、蔬菜(葉菜、果菜及び根菜等)及び花卉(1年草、2年草及び宿根草等)等]等に用いることができる。なかでも、土壌中の成分の影響を受けやすく温度条件への生育反応が鋭敏であり長期間にわたって肥料等を与える必要がある作物の栽培に好適に用いられる。また、本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤は、作物を栽培する土壌に散布して用いられ、被覆型農林園芸用粒状薬剤だけで散布して用いても、水と混合して散布して用いても良い。
【0067】
また、本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤は、降雨や散水等による薬剤に含まれる生物活性物質の溶出を制御する被覆層の破壊が生じにくいため、長期間にわたって植物育成等の効果を発揮させることが可能なだけでなく、環境温度が上昇した場合の生物活性物質(E)の過剰溶出を制御できるので季節を跨いで栽培する場合など栽培期間中に温度の上昇が生じる作型において好ましく適用できる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。温度応答性架橋樹脂粒子(A)及び被覆型農林園芸用粒状薬剤(F)等の特性値は下記の方法で測定した。
【0069】
<温度応答性架橋樹脂粒子(A)及び生物活性物質(E)を含む粒子(P0)の体積平均粒子径>
温度応答性架橋樹脂粒子(A)の体積平均粒子径は、JIS Z 8825に準じて測定した。測定には、乾式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、LS 13320)を用いた。 生物活性物質(E)として使用した尿素及びオンコル粒剤5の粒子の個数平均粒子径は、JIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定した。
【0070】
<温度応答性架橋樹脂粒子(A)の下限臨界溶液温度(LCST)>
温度応答性架橋樹脂粒子(A)の1.0重量%水分散液を作製し、5~60℃の範囲で1℃毎に前記の水分散液を加熱し、その温度を維持したまま水溶液の1℃毎の水分散液の光線透過率(波長670nm)をUV-vis分光光度計((株)島津製作所製、UV-2550)を用いて測定した。光線透過率が50%となった時の温度をLCSTとした。
【0071】
<被覆型農林園芸用粒状薬剤(F)の個数平均粒子径>
被覆型農林園芸用粒状薬剤(F)の個数平均粒子径は、JIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定した。
【0072】
<被覆層の膜厚>
被覆層の膜厚は、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F)の重心を通るように切断し、切断面が観察できるように試料台に固定しJIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定した。被覆層が薬剤表面の一部に点在している場合には、断面から観察できる被覆層の膜厚の平均値とした。
【0073】
<製造例1>
反応容器にN-イソプロピルアクリルアミド10gとN,N-メチレンビスアクリルアミド0.025g、イオン交換水85gを加え、200rpmで撹拌しながら、70℃で30分間窒素置換を行った。続いて、5gのイオン交換水に2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V-50)0.1gを溶解させ、この水溶液を系内に滴下することで重合を開始させ、重合は70℃で1時間かけて行った。反応終了後、樹脂分散液を遠心分離(15000rpm)することにより、樹脂と上澄み液を分離し、沈殿させた樹脂を水に再分散させた。この操作を3回繰り返した後、得られた樹脂を80℃にて減圧乾燥した。得られた乾燥物を凍結粉砕し、目開き75μmの標準ふるいと45μmの標準ふるいとを用いて分級して、45μmの標準ふるいの上に残った粒子をN-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)とした。得られた粒子(A-1)の体積平均粒子径は60μmであった。N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)の下限臨界溶液温度(LCST)は、32℃であった。
【0074】
なお、温度応答性架橋樹脂粒子(A)の体積平均粒子径は、JIS Z 8825に準じて測定した。測定には、乾式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、LS 13320)を用いた。
生物活性物質(E)として使用した尿素及びオンコル粒剤5の粒子の個数平均粒子径は、JIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定した。
【0075】
<製造例2>
製造例1において、N-イソプロピルアクリルアミドの代わりにN-ビニルノルマルプロピルアミドを用いること以外は、製造例1と同じ操作を行い、N-ビニルノルマルプロピルアミド架橋樹脂粒子(A-2)を作製した。得られたN-ビニルノルマルプロピルアミド架橋樹脂粒子(A-2)の体積平均粒子径は60μmであった。N-ビニルノルマルプロピルアミド架橋樹脂粒子(A-2)のLCSTは、32℃であった。
【0076】
<製造例3>
反応容器にN-イソプロピルアクリルアミド5部とブチルメタクリレート0.6部と、N,N-メチレンビスアクリルアミド0.06部と、1,4-ジオキサン30部を加え、200rpmで撹拌しながら、25℃で5分間窒素置換を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を上記反応容器に添加することで重合を開始させ、重合は70℃で4時間かけて行った。反応終了後、メタノール/水=1/1混合溶液で再沈殿させ、減圧乾燥することによりN-イソプロピルアクリルアミド/ブチルメタクリレート架橋共重合体樹脂粒子(A-3)を得た。得られた粒子の体積平均粒子径(製造例1と同様に測定した)は60μmであった。N-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタクリレート架橋共重合体樹脂粒子(A-3)のLCSTは、20℃であった。
【0077】
<製造例4>
反応容器にN-イソプロピルアクリルアミド5部とブチルメタクリレート0.6部と、アクリル酸0.1部と、N,N-メチレンビスアクリルアミド0.06部と、1,4-ジオキサン30部を加え、200rpmで撹拌しながら、25℃で5分間窒素置換を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を上記反応容器に添加することで重合を開始させ、重合は70℃で4時間かけて行った。反応終了後、メタノール/水=1/1混合溶液で再沈殿させ、減圧乾燥することによりN-イソプロピルアクリルアミド/ブチルメタクリレート/アクリル酸架橋共重合体樹脂粒子(A-4)を得た。得られた粒子の体積平均粒子径(製造例1と同様に測定した)は60μmであった。N-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタクリレート-アクリル酸架橋共重合体樹脂粒子(A-4)のLCSTは、20℃であった。
【0078】
<製造例5>
製造例1において、N-イソプロピルアクリルアミドの代わりにN-エチルアクリルアミドを用いること以外は、製造例1と同じ操作を行い、N-エチルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A’-1)を作製した。得られたN-エチルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A’-1)の体積平均粒子径(製造例1と同様に測定した)は60μmであった。ポリ(N-エチルアクリルアミド)架橋樹脂粒子(A’-1)のLCSTは、73℃であった。
【0079】
<製造例6>
反応容器にひまし油32部とジフェニルメタンジイソシアネート68部を仕込み、70℃で3時間反応させることで、NCO%が19%のイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)を得た。
【0080】
<製造例7>
目開き150μmの標準ふるいと90μmの標準ふるいとを用いて分級したこと以外は製造例1と同様に行い、90μmの標準ふるいの上に残った粒子をN-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-5)とした。得られた粒子(A-5)の体積平均粒子径は120μmであった。N-イソプロピルアクリルアミド架橋重合体(A-5)の下限臨界溶液温度(LCST)は、32℃であった。
【0081】
<実施例1:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-1)>
46.9部の製造例1で製造したN-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1、20.4部のひまし油、4.8部のアミン化合物(C-1-1)(ニューポールNP-300、三洋化成工業(株)製)、及び0.6部のエチルメチルケトンを混合した後、製造例5で製造した27.3部のイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)を添加し、撹拌を行った。これにより、ひまし油、アミン化合物(C-1-1)、イソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)、及びN-イソプロピルアクリルアミド共樹脂粒子(A-1)を含む混合溶液を得た。噴流層による流動コーティング装置を用いて、装置内で浮遊しているオンコル粒剤5(OATアグリオ(株)製)(個数平均粒子径2mm)233.3部に対して、前記の混合溶液93.3部をスプレー噴霧で添加し被覆を行い、室温硬化させることで被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-1)を作製した。
被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-1)の被覆層の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-1)の個数平均粒子径は2360μmであった。
なお、ひまし油、アミン化合物(C-1-1)及びイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)が反応することによって被覆樹脂であるポリウレタン樹脂(C-1)が形成される。
【0082】
被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-1)の個数平均粒子径は、JIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定した。
被覆層の膜厚は、被覆型農林園芸用粒状薬剤の粒子の中心を通るように切断し、切断面が観察できるように試料台に固定しJIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定した。
なお、以下の実施例2~23及び比較例1~8における被覆型農林園芸用粒状薬剤(F)の個数平均粒子径と被覆層の膜厚も同様の方法で測定した
【0083】
<実施例2:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-2)>
実施例1において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)の重量を26.1部に、ひまし油の使用量を28.4部に、アミン化合物の使用量を6.7部に、メチルエチルケトンの使用量を0.8部に、イソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)の使用量を38.0部に、オンコル粒剤の使用量を424.0部に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-2)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-2)の被覆層の膜厚は160μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-2)の個数平均粒子径は2320μmであった。
【0084】
<実施例3:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-3)>
実施例1において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)の使用量を72.6部に、ひまし油の使用量を10.5部に、アミン化合物の使用量を2.5部に、メチルエチルケトンの使用量を0.3部に、イソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)の使用量を14.1部に、オンコル粒剤の使用量を120.7部に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-3)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-3)の被覆層の膜厚は200μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-3)の個数平均粒子径は2400μmであった。
【0085】
<実施例4:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-4)>
実施例1において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)を製造例7で得られた体積平均粒子径が120μmであるN-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-5)に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-4)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-4)の被膜の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-4)の個数平均粒子径は2360μmであった。
【0086】
<実施例5:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-5)>
実施例1において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)の代わりに製造例2で製造したN-ビニルノルマルプロピルアミド架橋樹脂粒子(A-2)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-5)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-5)の被覆層の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-5)の個数平均粒子径は2360μmであった。
【0087】
<実施例6:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-6)>
実施例1において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-6)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-6)の被覆層の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-6)の個数平均粒子径は3360μmであった。
【0088】
<実施例7:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-7)>
実施例2において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例2と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-7)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-7)の被覆層の膜厚は160μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-7)の個数平均粒子径は3320μmであった。
【0089】
<実施例8:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-8)>
実施例3において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例3と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-8)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-8)の被覆層の膜厚は200μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-8)の個数平均粒子径は3400μmであった。
【0090】
<実施例9:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-9)>
実施例4において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例4と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-9)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-9)の被覆層の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-9)の個数平均粒子径は3360μmであった。
【0091】
<実施例10:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-10)>
実施例5において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例5と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-10)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-10)の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-10)の個数平均粒子径は3360μmであった。
【0092】
<実施例11:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-11)>
実施例1において、46.9部のN-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)を用いたことを、23.5部のN-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)と23.5部のN-ビニルノルマルプロピルアミド架橋樹脂粒子(A-2)とを併用して用いたことに変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-11)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-11)の被覆層の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-11)の個数平均粒子径は2360μmであった。
【0093】
<実施例12:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-12)>
46.9部の製造例1で製造したN-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)と1.2部のポリエチレンと51.9部のデカンとを撹拌混合し、ポリエチレンをデカンに溶解して混合溶液を作製した。この混合溶液93.3部を噴流層による流動コーティング装置を用い、装置内で浮遊しているオンコル粒剤5(OATアグリオ(株)製)(個数平均粒子径2mm)233.3に対してスプレー噴霧で添加し被覆を行い、室温硬化させることで被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-12)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-1)の被覆層の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-12)は、(A-1)の粒子及び被覆樹脂であるポリエチレン樹脂(C-2)を含む被覆層を有する被覆型農林園芸用粒状薬剤である。(F-12)の個数平均粒子径は2360μmであった。
【0094】
<実施例13:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-13)>
実施例1において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)の代わりに製造例3で製造したN-イソプロピルアクリルアミド/ブチルメタアクリレート架橋共樹脂粒子(A-3)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-13)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-13)の被覆層の膜厚は180μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-13)の個数平均粒子径は2360μmであった。
【0095】
<実施例14:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-14)>
実施例2において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)を製造例3で製造したN-イソプロピルアクリルアミド/ブチルメタアクリレート架橋共樹脂粒子(A-3)に変更したこと以外は、実施例2と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-14)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-14)の膜厚は160μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-14)の個数平均粒子径は2320μmであった。
【0096】
<実施例15:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-15)>
実施例3において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)を製造例3で製造したN-イソプロピルアクリルアミド/ブチルメタアクリレート架橋共樹脂粒子(A-3)に変更したこと以外は、実施例3と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-15)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-15)の膜厚は200μmであった。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-15)の個数平均粒子径は2400μmであった。
【0097】
<実施例16:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-16)>
実施例1において、N-イソプロピルアクリルアミド架橋樹脂粒子(A-1)を製造例4で製造したN-イソプロピルアクリルアミド/ブチルメタアクリレート/アクリル酸架橋共重合体樹脂粒子(A-4)に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-16)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-16)の膜厚は180μm、個数平均粒子径は2360μmであった。
【0098】
<実施例17:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-17)>
実施例13において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590を使用したこと以外は、実施例13と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-17)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-17)の被覆層の膜厚は180μm、個数平均粒子径は3360μmであった。
【0099】
<実施例18:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-18)>
実施例14において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例14と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-18)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-18)の被覆層の膜厚は160μm、個数平均粒子径は3320μmであった。
【0100】
<実施例19:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-19)>
実施例15において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例15と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-19)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-19)の被覆層の膜厚は200μm、個数平均粒子径は3400μmであった。
【0101】
<実施例20:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-20)>
実施例16において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、実施例16と同じ操作を行い、被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-20)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-20)の被覆層の膜厚は180μm、個数平均粒子径は3360μmであった。
【0102】
<実施例21:被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-21)>
46.9部の製造例3で製造したN-イソプロピルアクリルアミド/ブチルメタアクリレート架橋共重合体樹脂粒子(A-3)と1.2部のポリエチレンと51.9部のデカンとを撹拌混合してポリエチレンをデカンに溶解し、混合溶液を作製した。この混合溶液93.3部を噴流層による流動コーティング装置を用い、装置内で浮遊しているオンコル粒剤5(OATアグリオ(株)製)(個数平均粒子径2mm)233.3部に対してスプレー噴霧で添加し被覆を行い、室温硬化させることで被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-21)を作製した。被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-21)の被覆層の膜厚は180μm、個数平均粒子径は2360μmであった。
【0103】
<比較例1:比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-1)>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)架橋重合体樹脂粒子(A-1)の代わりに製造例5で製造したポリ(N-エチルアクリルアミド)架橋重合体樹脂粒子(A’-1)を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-1)を作製した。比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-1)の被覆層の膜厚は180μm、個数平均粒子径は2360μmであった。
【0104】
<比較例2:比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-2)>
比較例1において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、比較例1と同じ操作を行い、比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-2)を作製した。比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-2)の被膜層の膜厚は180μm、個数平均粒子径は3360μmであった。
【0105】
<比較例3:比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-3)>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)架橋樹脂粒子(A-1)の代わりに、ポリアクリル酸Naの架橋樹脂粒子(A’-2)(商品名「サンフレッシュ ST-500MPSA」、三洋化成工業(株)製、体積平均粒子径35μm)を用いたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-3)を作製した。比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-3)の被覆層の膜厚は180μm、個数平均粒子径は2360μmであった。
【0106】
<比較例4:比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-4)>
比較例3において、オンコル粒剤5の代わりに市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1590部を使用したこと以外は、比較例3と同じ操作を行い、比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-4)を作製した。比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’-4)の被膜層の膜厚は180μm、個数平均粒子径は3360μmであった。
【0107】
実施例(1~21)及び比較例(1~4)で得られた被覆型農林園芸用粒状薬剤(F1~21)及び比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’1~4)の組成及び粒子径などの特性値は表1~3に示す。
【0108】
実施例(1~21)及び比較例(1~4)で得られた被覆型農林園芸用粒状薬剤(F1~21)及び比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤(F’1~4)をそれぞれ用いて以下の方法で溶出試験を行い、その結果を表1~3に記載した。なお、温度応答性樹脂粒子(A)のLCSTが25℃を超える実施例1~12については15℃での溶出率測定は行わず、温度応答性樹脂粒子(A)のLCSTが25℃未満である実施例13~21については35℃での溶出率測定は行っていない。
【0109】
<生物活性物質(E)の溶出率(30日後の溶出率及び80%に達する日数)>
尿素及びオンコル粒剤5からの生物活性物質(E)の溶出率の算出は以下の方法で行った。
被覆型農林園芸用粒状薬剤又は比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤を3つのガラス容器(容積250mL)の底部にそれぞれ10g静置し、15℃、25℃または35℃に調整した水を3つのガラス容器のそれぞれに底部の被覆型農林園芸用粒状薬剤が浸るように200mL注いだ。直ぐにガラス容器の蓋を閉めて、水の温度に対応した温度(15℃、25℃又は35℃)に設定した小型環境試験機(エスペック社製、SU-222)に入れ、下記の方法で水中の生理活性物質(E)の濃度変化を測定した。
【0110】
<生理活性物質(E)が尿素の場合の溶出率>
前記の方法で小型環境試験機に入れたガラス容器中の水溶液について、7日ごとに1mLをサンプリングして、サンプリングした溶液10μLにウレアーゼを含む測定溶液80μLを加え、BioAssay Systems社のQuantiChrom Urea Assay Kit IIを使用して、検出装置としてBioTEK Instruments社のPowerWave XSを用いて尿素の吸収波長(557nm)における吸光度を測定し、所定濃度に調製した尿素濃度既知の水溶液から作成した検量線を用いて尿素の濃度を算出した。7日ごとのサンプリングによって得られる尿素溶出率[試験前の被覆型農林園芸用粒状薬剤又は比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤10gに含まれる尿素の重量に対する溶出した尿素の重量]の値を、試験開始からの日数に対してプロットしグラフを描くことで、15℃、25℃又は35℃のそれぞれの温度における尿素溶出率が80%に達するまでに要する日数を求め、それぞれD15、D25及びD35とした。そして、D15、D25及びD35の値から、高温時温度依存指数(D15/D25)及び低温時温度依存指数(D25/D35)を得た。
小型環境試験機中に30日間置いたガラス容器中の水溶液に含まれる尿素を前記の方法と同様に測定し、試験前(水に入れる前)の被覆型農林園芸用粒状薬剤に含まれる尿素量(g)に対するガラス容器の水中へ溶解した尿素量(g)との比率を計算し、30日後の溶出率(%)とした。
【0111】
<生理活性物質(E)を含む粒子がオンコル粒剤5の場合の溶出率>
オンコル粒剤5中に含まれる生理活性物質(ベンフラカルブ:含有濃度5重量%)の吸収波長(280nm)における吸光度を測定したことと、ベンフラカルブの濃度が既知であるオルコン5の溶液から作成した検量線を用いること以外は前記の尿素の場合と同様にして、ベンフラカブルの溶出率が80%に達するまでに要する日数及び30日後の溶出率(%)を測定した。
【0112】
<薬剤溶出試験後の被覆型農林園芸用粒状薬剤の形状>
前記の方法で低温時温度依存指数の測定を行い薬剤溶出率が80%に達した時点で被覆型農林園芸用粒状薬剤を水中から引き上げ、それを雨に濡れない様に屋根の下で屋外におき、3日間乾燥した。乾燥後の被覆型農林園芸用粒状薬剤の状態を目視観察し、その結果を表1~3に記載した。
乾燥後の被覆型農林園芸用粒状薬剤の状態は、以下の基準で評価した。
○:被覆層の破壊がない。
×:被覆層が破壊されている。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
表1~3から、本願発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤(F-1~21)は比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤と異なり水に浸した後に再び乾燥しても被覆層の破壊が起こらない。薬剤の放出を抑える被覆層の破壊が生じないため天候等の影響を受けずに長期間にわたって溶出速度の調整が可能である。また、溶出率が80%に達する日数も比較用被覆型農林園芸用粒状薬剤より長く、長期間にわたって農林園芸用粒状薬剤として使用することができる。また、比較例に比べて、本願実施例1~12の被覆型農林園芸用粒状薬剤は高温時温度依存指数と30日後の溶出率の比(EL35/EL25)とがそれぞれより1に近く、実施例13~21で得られた被覆型農林園芸用粒状薬剤は低温時温度依存指数と30日後の溶出率の比(EL25/EL15)とがそれぞれより1に近く、それぞれに含まれる温度応答性樹脂粒子のLCSTの前後での溶出挙動の変化が小さいという効果も有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の被覆型農林園芸用粒状薬剤は天候等の影響を受けずに長期間にわたって被覆型農林園芸用粒状薬剤としての剤形を維持することが可能であり、肥料や農薬に用いた場合にその有効成分を植物に対して安定的に供給することができ、良好な生育と収量の向上をもたらす。