(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】水中探知装置および水中探知画像の表示方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/62 20060101AFI20240115BHJP
G01S 15/89 20060101ALI20240115BHJP
G01S 15/96 20060101ALI20240115BHJP
G06T 15/08 20110101ALI20240115BHJP
【FI】
G01S7/62 D
G01S15/89
G01S15/96
G06T15/08
(21)【出願番号】P 2020012837
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100203862
【氏名又は名称】西谷 香代子
(72)【発明者】
【氏名】西坂 政浩
(72)【発明者】
【氏名】葛原 一浩
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 勇輝
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-008519(JP,A)
【文献】国際公開第2012/056778(WO,A1)
【文献】特開平04-071082(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003759(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138758(WO,A1)
【文献】特開2007-024548(JP,A)
【文献】特開2003-215242(JP,A)
【文献】実開昭59-049979(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0100922(US,A1)
【文献】特開平08-201500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G06T 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元状の探知範囲における反射波の信号強度の分布を示すボリュームデータを操作部に対する操作に応じたスライス面でスライスし、前記スライス面上における前記ボリュームデータに基づいて、前記信号強度の分布を示す断面画像を表示部に表示させる信号処理部を備える、
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記ボリュームデータに基づいて、所定の視点から見たときの前記信号強度の分布を示す探知画像を生成し、生成した前記探知画像を前記表示部に表示させる、水中探知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記探知画像に前記断面画像を重ねて表示させる、水中探知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記断面画像のスライス面よりも前記視点側の前記探知画像を非表示に設定する、水中探知装置。
【請求項5】
請求項3に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記断面画像のスライス面よりも前記視点側の前記探知画像を透過表示に設定する、水中探知装置。
【請求項6】
請求項2に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記探知画像とは別に前記断面画像を前記表示部に表示させる、水中探知装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記操作部を介して、前記
スライス面の移動方向の選択を受け付ける、水中探知装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の水中探知装置において、
前記
スライス面の移動方向は、鉛直方向を含む、水中探知装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の水中探知装置において、
前記
スライス面の移動方向は、視線方向を含む、水中探知装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の水中探知装置において、
前記
スライス面の移動方向は、水平方向を含む、水中探知装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記操作部に対する操作に応じて、前記断面画像上に信号強度の計測位置を設定する、水中探知装置。
【請求項12】
請求項11に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記計測位置を含む所定の3次元範囲を信号強度の計測範囲に設定する、水中探知装置。
【請求項13】
請求項12に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、
前記ボリュームデータに基づいて、所定の視点から見たときの前記信号強度の分布を示す探知画像を生成し、生成した前記探知画像上に前記計測範囲を表示させ、前記操作部に対する操作に応じて、前記計測範囲の大きさを変更する、水中探知装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記計測範囲に含まれる前記信号強度のヒストグラムを前記表示部に表示させる、水中探知装置。
【請求項15】
請求項12ないし14の何れか一項に記載の水中探知装置において、
前記信号処理部は、前記計測範囲に含まれる前記信号強度に基づいて、当該計測範囲に含まれる魚量に関する情報を前記表示部に表示させる、水中探知装置。
【請求項16】
3次元状の探知範囲における反射波の信号強度の分布を示すボリュームデータを操作部に対する操作に応じたスライス面でスライスし、
前記スライス面上における前記ボリュームデータに基づいて、前記信号強度の分布を示す断面画像を表示部に表示させる、水中探知画像の表示方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に音波を送波し、その反射波に基づいて、水中の状態を探知する水中探知装置、および、上記反射波の信号強度に基づく画像をディスプレイに表示させる水中探知画像の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中に音波を送波し、その反射波に基づいて、水中の状態を探知する水中探知装置が知られている。この種の装置では、たとえば、超音波を送受信するための送波器および受波器が船底に設置され、3次元状の探知範囲について、反射波の信号強度(ボリュームデータ)が取得される。そして、取得されたボリュームデータに基づいて、信号強度の表面画像(3次元画像)が生成され、生成された表面画像が当該探知範囲の探知画像としてモニタ等に表示される。使用者は、表示された探知画像を参照することにより、水中に存在する魚群や沈船等の物標の状況を把握できる。
【0003】
ここで、ボリュームデータは、種々の方法により取得され得る。たとえば、船底の真下に向けて扁平な扇形の送信ビームを送波して反射波の強度データを取得し、取得した強度データを時系列に集積することにより、ボリュームデータが取得される。この構成では、所定期間において集積されたボリュームデータを用いて水中の状態を3次元表示できる。
【0004】
以下の特許文献1には、この種の水中探知装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2016/0018515号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような水中探知装置では、探知範囲に存在する物標表面の信号強度を、所定の視点において3次元表示させ得るものの、物標内部の密度(信号強度の分布)や、物標の奥方に隠れる他の物標の強度分布を表示画像から容易に把握することはできない。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、ボリュームデータにより生成される画像から物標内部の強度分布や奥方に隠れる他の物標の強度分布を容易に把握することが可能な水中探知装置および水中探知画像の表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は水中探知装置に関する。この態様に係る水中探知装置は、3次元状の探知範囲における反射波の信号強度の分布を示すボリュームデータを操作部に対する操作に応じたスライス面でスライスし、スライス面上におけるボリュームデータに基づいて、信号強度の分布を示す断面画像を表示部に表示させる信号処理部を備える。
【0009】
本態様に係る水中探知装置によれば、使用者は、断面画像を参照することにより、スライス位置(スライス面上)における信号強度を把握できる。また、使用者は、操作部に対する操作に応じて断面画像のスライス位置を移動させることができる。使用者は、このように断面画像のスライス位置を移動させることによって、物標内部の強度分布や、物標の奥方に隠れる他の物標の内部の強度分布を容易に把握できる。
【0010】
本態様に係る水中探知装置において、信号処理部は、ボリュームデータに基づいて、所定の視点から見たときの信号強度の分布を示す探知画像を生成し、生成した探知画像を表示部に表示させるよう構成され得る。
【0011】
この構成によれば、使用者は、断面画像により所定のスライス位置における信号強度の分布を把握できるとともに、探知画像により探知範囲全体の信号強度の分布を把握できる。
【0012】
この場合、信号処理部は、探知画像に断面画像を重ねて表示させるよう構成され得る。
【0013】
この構成によれば、使用者は、断面位置の信号強度を断面画像で把握しつつ、断面位置以外の信号強度を探知画像により把握できる。よって、使用者は、断面画像以外に位置にも魚群等の物標がさらに存在するか否かを併せて把握でき、確認すべき魚群を円滑に見つけ出すことができる。
【0014】
この場合、信号処理部は、断面画像のスライス面よりも視点側の探知画像を非表示に設定するよう構成され得る。
【0015】
この構成によれば、断面画像より視点側の探知画像によって断面画像が見えにくくなることを抑制できる。よって、使用者は、より明瞭に断面画像を確認できる。
【0016】
あるいは、信号処理部は、断面画像のスライス面よりも視点側の探知画像を透過表示に設定するように構成されてもよい。
【0017】
この構成によれば、使用者は、断面画像における信号強度を確認しつつ、断面画像よりも視点側の探知画像における信号強度も確認することができる。
【0018】
本態様に係る水中探知装置において、信号処理部は、探知画像とは別に断面画像を表示部に表示させてもよい。
【0019】
この構成によれば、使用者は、断面画像とともに、探知画像の全体を、良好に把握できる。
【0020】
本態様に係る水中探知装置において、信号処理部は、操作部を介して、前記スライス面の移動方向の選択を受け付けるよう構成され得る。
【0021】
この構成によれば、使用者が所望する方向に断面画像の移動方向を変更できる。よって、使用者は、信号強度の確認作業をより効率的に進めることができる。
【0022】
ここで、前記スライス面の移動方向は、鉛直方向を含むことが好ましい。
【0023】
この場合、使用者は、水深方向に断面画像を移動させることができ、これにより、所定の水深に群がる魚群等を円滑に確認できる。
【0024】
あるいは、前記スライス面の移動方向は、視線方向を含んでもよい。
【0025】
この場合、使用者が探知画像を参照する方向と、操作に応じて断面画像が移動する方向とを一致させることができる。これにより、使用者は、断面画像の移動を直感的にイメージでき、断面画像の移動および魚群等の確認作業を円滑に進めることができる。
【0026】
この他、前記スライス面の移動方向は、水平方向等の他の方向を含んでいてもよい。
【0027】
本態様に係る水中探知装置において、信号処理部は、前記操作部に対する操作に応じて、前記断面画像上に信号強度の計測位置を設定するよう構成され得る。
【0028】
この構成によれば、使用者は、たとえば、断面画像上において信号強度が高い位置を計測位置に容易に指定できる。
【0029】
この場合、信号処理部は、計測位置を含む所定の3次元範囲を信号強度の計測範囲に設定するよう構成され得る。
【0030】
この構成によれば、当該計測範囲に含まれる魚群等の物標の信号強度を円滑に抽出して計測できる。
【0031】
この場合、信号処理部は、探知画像上に計測範囲を表示させ、操作部に対する操作に応じて、計測範囲の大きさを変更するよう構成され得る。
【0032】
この構成によれば、使用者は、たとえば、探知画像および計測範囲の表示を参照しつつ、魚群等の範囲に計測範囲を円滑に調整できる。これにより、使用者は、計測対象物標の信号強度を適正に計測できる。
【0033】
上記構成において、信号処理部は、計測範囲に含まれる信号強度のヒストグラムを表示部に表示させるよう構成され得る。
【0034】
あるいは、信号処理部は、計測範囲に含まれる信号強度に基づいて、当該計測範囲に含まれる魚量に関する情報を表示部に表示させるよう構成され得る。
【0035】
これらの構成によれば、使用者は、魚群の密集度や当該魚群の総魚量を容易に把握できる。
【0036】
本発明の第2の態様は、水中探知画像の表示方法に関する。この態様に係る水中探知画像の表示方法は、3次元状の探知範囲における反射波の信号強度の分布を示すボリュームデータを操作部に対する操作に応じたスライス面でスライスし、スライス面上におけるボリュームデータに基づいて、信号強度の分布を示す断面画像を表示部に表示させる。
【0037】
本態様に係る水中探知画像の表示方法によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0038】
以上のとおり、本発明によれば、ボリュームデータにより生成される画像から物標内部の強度分布や奥方に隠れる他の物標の強度分布を容易に把握することが可能な水中探知装置および水中探知画像の表示方法を提供することができる。
【0039】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、水中探知装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る、ボクセルの設定方法を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、ボリュームデータとスライス面との関係を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る、探知画像および断面画像を用いて魚量等の計測を行うための処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る、探知画像および断面画像を用いて魚量等の計測を行うための処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る、計測処理において表示部に表示される画面を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、計測処理において表示部に表示される画面を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る、計測処理において表示部に表示される画面を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る、計測処理において表示部に表示される画面を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る、計測処理において表示部に表示される画面を示す図である。
【
図11】
図11(a)は、実施形態に係る、断面画像の表示処理において実行されるサブルーチンを示す図である。
図11(b)は、変更例1に係る、断面画像の表示処理において実行されるサブルーチンを示す図である。
【
図12】
図12(a)、
図12(b)は、それぞれ、変更例2に係る、スライス面を水平方向に移動させる場合の、ボリュームデータとスライス面との関係を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、変更例2に係る、スライス面を視線方向に移動させる場合の、ボリュームデータとスライス面との関係を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、変更例2に係る、計測処理において表示部に表示される画面を示す図である。
【
図15】
図15は、変更例3に係る、計測処理において表示部に表示される画面の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0042】
図1は、水中探知装置10の構成を示すブロック図である。
【0043】
水中探知装置10は、送波器11と受波器12とを備える。送波器11と受波器12は、水中に向くようにして、船底に設置される、送波器11と受波器12がユニット化されて船底に設置されてもよい。
【0044】
送波器11および受波器12は、たとえば、超音波振動子である。たとえば、送波器11は、複数の超音波振動子が1列に並ぶ構成を備える。各超音波振動子に正弦波状の送信信号が印加される。これにより、各超音波振動子から超音波が送波される。各超音波振動子に印加される送信信号の位相を制御することにより、所定厚みの送信ビームが形成される。送信ビームは、厚み方向に見て、所定の角度(たとえば、120°)の頂角で扇形に広がる。本実施形態では、送信ビームは、鉛直下向きに送波される。すなわち、送信ビームの扇形の頂角を2等分する直線が鉛直方向に平行となるように、送信ビームが水中に送波される。
【0045】
受波器12は、たとえば、複数の超音波振動子が1列に並ぶ構成を備える。たとえば、受波器12の超音波振動子の並び方向は、送波器11の超音波振動子の並び方向に垂直である。すなわち、受波器12の超音波振動子は、送信ビームの広がり方向(扇形の広がり方向)に並ぶ。送波器11および受波器12の超音波振動子の並び方向は、必ずしも垂直でなくてもよく、互いに交差する方向であればよい。
【0046】
受波器12の各超音波振動子によって、送波器11から送波された超音波の反射波が受波される。受波器12の各超音波振動子は、反射波の強度に応じた大きさの受信信号を出力する。受信信号に対して位相制御(ビームフォーミング)を行うことにより、送信ビームの広がり角(扇形の頂角)の方向に並ぶ複数の受信ビームが形成される。これにより、受信ビームごとに、すなわち、送信ビームの広がり角(扇形の頂角)の方向において所定の角度ごとに、反射波の受信信号が生成される。受信ビームのピッチを小さくして受信ビームの数を増加させるほど、送信ビームの広がり角(扇形の頂角)の方向における水中探知の分解能が増加する。
【0047】
回転駆動部13は、送波器11および受波器12を鉛直方向に平行な軸について一体的に回転させる。これにより、上述の送信ビームおよび受信ビームが上記軸について一体的に回転する。このように、各ビームが回転することにより、船を中心に水平方向に全周に亘って、受信信号を取得でき、全周に亘って水中の状態を探知できる。回転駆動部13は、駆動源であるモータと、回転位置を検出するためのロータリーエンコーダとを備える。ロータリーエンコーダの検出信号は、随意、信号処理部17に入力される。
【0048】
さらに、水中探知装置10は、送信制御部14と、受信ビーム形成部15と、駆動制御部16と、信号処理部17と、操作部18と、表示部19とを備える。送信制御部14、受信ビーム形成部15、駆動制御部16、信号処理部17、操作部18および表示部19は、船の操舵室等に設置される。これらの構成要素が、1つの筐体にユニット化されてもよく、あるいは、表示部19等の一部の構成要素が別体とされてもよい。送信制御部14、受信ビーム形成部15および駆動制御部16は、それぞれ、信号ケーブルによって、送波器11、受波器12および駆動制御部16に通信可能に接続される。
【0049】
送信制御部14は、信号処理部17からの制御により、送波器11に送信信号を出力する。送信制御部14は、上記のように、扇形に広がる扁平な送信ビームが形成されるように、送波器11の超音波振動子に送信信号を供給する。
【0050】
受信ビーム形成部15は、上記のように、受波器12の各超音波振動子から入力される受信信号にビームフォーミングの処理を適用して、送信ビームの扇型の頂角の角度方向に並ぶ複数の受信ビームを形成する。そして、受信ビーム形成部15は、受信ビームごとに受信信号を信号処理部17に出力する。
【0051】
駆動制御部16は、信号処理部17からの制御により、回転駆動部13を制御する。これにより、上記のように、送波器11と受波器12が一体的に回転し、これに伴い、送信ビームと受信ビームが一体的に回転する。
【0052】
信号処理部17は、予め保持したプログラムに従って各部を制御する。また、信号処理部17は、受信ビーム形成部15から入力される受信信号を処理して、探知範囲(送信ビームが1回転する範囲)の画像を生成し、表示部19に表示させる。信号処理部17は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理回路と、ROM(ReadOnly Memory)、RAM(Random Access Memory)や、ハードディスク等の記憶媒体とを備える。記憶媒体に上記ブログラムが保持されている。信号処理部17が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路で構成されてもよい。
【0053】
なお、信号処理部17は、必ずしも、1つの集積回路で構成されなくてもよく、複数の集積回路や演算処理回路が組み合わされて構成されてもよい。たとえば、信号処理部17は、送波器11および回転駆動部13を制御するための演算処理回路と、受信ビーム形成部15から入力される受信信号を処理して探知画像を生成するための演算処理回路とを、個別に備えていてもよい。
【0054】
操作部18は、使用者からの入力を受け付けるユーザインタフェースである。操作部18は、マウスやキーボード等の入力手段を備える。操作部18が、表示部19に一体化されたタッチパネルを備えていてもよい。本実施形態では、操作部18がマウス100を備えており、後述のように、マウス100によって探知画像および断面画像に対する操作入力が行われる。マウス100の上面には、ホイール101と、左クリック用の操作子102および右クリック用の操作子103とが配置されている。この他、マウス100の下面には、マウス100の移動を検出するためのセンサが配置されている。
【0055】
表示部19は、信号処理部17によって生成された画像を表示する。表示部19はモニタや液晶パネル等の表示器を備える。後述のように、表示部19には、探知画像や断面画像が表示される。この他、水中探知装置10は、方位および位置を検出するための構成、たとえば、GPS(Global Positioning System)等を備える。
【0056】
信号処理部17は、送信ビームが旋回する3次元状の探知範囲について、反射波の信号強度(ボリュームデータ)を取得する。具体的には、信号処理部17は、扇形形状の送信ビームを頂角の角度方向に所定の分解能で区分した角度範囲(受信ビーム形成部15で形成される各受信ビームの角度範囲)ごとに、受信信号を参照する。ここで、送信ビームを送波したタイミングから反射波を受波するタイミングまでの時間差の半分の時間が、当該反射波を反射した物標までの距離に相当する。信号処理部17は、送信ビームを送波したタイミングからの経過時間と、受信信号の強度とを、受信ビームごとに対応づける。すなわち、信号処理部17は、送信ビームを送波したタイミングから一定の時間間隔で受信信号の強度を取得する。
【0057】
こうして、各受信ビームの角度範囲ごとに、経過時間(距離)と受信信号の強度とを対応づけたデータ群が取得される。信号処理部17は、送信ビームが水平方向に1回転する間に、所定の回転角ごとに上記処理を繰り返し実行する。これにより、船の全周に亘る探知範囲全体について、経過時間(距離)と受信信号の強度とを対応づけたデータ群が取得される。信号処理部17は、この処理により取得したデータ群を、予め規定されているボクセルに、線形補間処理により、マッピングする。
【0058】
図2は、ボクセルB1の設定方法を模式的に示す図である。便宜上、
図2には、互いに直交するXYZ軸が付記されている。X-Y平面は、水平面に平行である。Y軸正方向は船20の進行方向であり、Z軸正方向は水深方向である。
【0059】
図2に示すように、船20の真下(送波器11および受波器12の真下)に直方体の領域(ボリュームデータVDを取得する全体の領域)が設定され、この領域が、XYZ軸方向に均等に区分されて1つのボクセルB1が設定される。ボクセルB1は、立方体の形状である。ボリュームデータVDの範囲を規定する直方体の領域およびボクセルの細かさは、説明の便宜上、
図2のように設定されているが、この設定方法に限られるものではない。XYZ軸方向における直方体の領域のサイズは、
図2のサイズより大きくてもよい。直方体の領域は、船20が浮かぶ海面付近まで伸びていてもよい。また、XYZ軸方向におけるボクセルB1のサイズは、実際は、
図2のサイズよりもさらに細かい。
【0060】
信号処理部17は、上記の処理により取得した船20の全周の信号強度のデータを、線形補間処理により、各ボクセルB1にマッピングする。これにより、直方体の領域に設定された全てのボクセルB1に受信信号の強度を示すデータがマッピングされ、当該領域全体のボリュームデータVDが取得される。ボリュームデータVDは、送信ビームの回転の伴い随時更新される。こうして、船20の進行に伴い最新のボリュームデータVDが取得される。
【0061】
図1に戻り、信号処理部17は、上記の処理により取得したボリュームデータVDに基づいて、探知画像を生成し、表示部19に表示させる。たとえば、信号処理部17は、ボリュームデータVDにボリュームレンダリング等の処理を施して、所定の視点から探知範囲を参照したときの信号強度の分布を示す3次元画像(探知画像)を生成する。探知画像は、反射波の信号強度に応じて色付けされる。水底には、信号強度に応じた色とは別の色が付されてもよい。操作部18に対する操作によって、探知画像の視点が変更可能であってもよい。
【0062】
さらに、本実施形態では、探知画像を水平面に平行なスライス面でスライスした断面画像が表示される。スライス面は、操作部18(マウス100)に対する操作により鉛直方向に移動可能である。断面画像には、当該断面における反射波の信号強度の分布が表示される。
【0063】
図3は、ボリュームデータVDとスライス面S1との関係を模式的に示す図である。
【0064】
上記のように、スライス面S1は、水平面(X-Y平面)に平行である。断面画像は、スライス面S1に交差するボクセルB1(
図2参照)の信号強度が反映される。スライス面S1は、操作部18(マウス100)に対する操作により鉛直方向D1に移動可能である。したがって、使用者は、操作部18(マウス100)に対する操作により、鉛直方向D1に変化する断面の断面画像を参照できる。
【0065】
この他、本実施形態では、探知範囲中に計測範囲を設定して、当該計測範囲に含まれる魚量等を計測できる。使用者は、断面画像を参照しながら、所望の位置に計測範囲を設定できる。また、使用者は、計測範囲のサイズを任意に調整できる。本実施形態では、計測範囲は、立方体の形状である。ただし、計測範囲の形状は、立方体に限らず、球形や直方体形状等の他の形状であってもよい。
【0066】
図4および
図5は、それぞれ、探知画像および断面画像を用いて魚量等の計測を行うための処理を示すフローチャートである。また、
図6~
図10は、当該計測処理において表示部19に表示される画面を示す図である。
【0067】
まず、
図6を参照して、信号処理部17は、ボリュームデータVDに基づいて生成した探知画像31を含む画面30を表示させる。上記のように、探知画像31は、所定の視点から探知範囲を参照したときの信号強度の分布を示す3次元画像である。画面30には、探知画像31の他、船画像32および船の船首船尾オブジェクト33と、操作領域34とが含まれている。操作領域34には、魚量の計測を行うための項目34aが含まれている。使用者がマウス100を介して項目34aを操作することにより、
図4の計測処理が開始される。
【0068】
図4を参照して、信号処理部17は、探知画像の視線方向をスライス面S1の移動方向に変更して、探知画像を表示させる(S101)。また、信号処理部17は、スライス面S1を初期位置(たとえば、水面位置)に設定する(S102)。これにより、
図6の画面30に代えて、
図7の画面40が表示される。ここでは、
図4のステップS101の処理により、視線方向が鉛直下向きである場合の探知画像41が画面40に含まれる。
【0069】
また、画面40には、船画像42およびスライス面の位置を示す領域43が含まれる。領域43には、スライス面を水平方向に見たときの画像が示される。領域43には、スライス面の位置を示すバー43aと、船画像43bと、スライス面の水深情報43cと、計測枠43dとが含まれる。ここでは、
図4のステップS102の処理によりスライス面が水面位置に設定されるため、バー43aおよび水深情報43cが、それぞれ、水面位置に対応する位置および情報に設定されている。この他、画面40には、
図6の画面30と同様、操作領域44と項目44aが含まれる。
【0070】
図4に戻り、信号処理部17は、マウス100のホイール101に対して操作がなされると、ホイール101の回転方向および回転量に応じてスライス面S1を鉛直方向D1に移動させ、断面画像を画面40に表示させる(S103)。また、信号処理部17は、載置面に対するマウス100の移動によりカーソルが探知範囲に重なると、カーソルの位置に、計測範囲を示す計測枠を表示させる(S104)。
【0071】
こうして、
図4のステップS103、S104が実行されることにより、
図7の画面40は、たとえば、
図8のように変化する。すなわち、ホイール101の操作によるスライス面S1の移動に伴い、領域43のバー43aと水深情報43cが変化する。ここでは、スライス面S1が水深78mの位置に移動したことが示されている。さらに、領域43中の計測枠43dが、マウス100の移動に応じたスライス面S1上の位置に位置付けられている。この他、領域43には水底を示す画像43eが含まれている。
【0072】
また、信号処理部17は、
図4のステップS103の処理により、スライス面S1でスライスされたボリュームデータVDの断面画像45を、探知画像41に重ねて表示させる。
【0073】
本実施形態では、スライス面S1よりも視点側(鉛直上側)の探知画像41が非表示に設定される。また、スライス面S1上のボリュームデータVDのうち、信号強度が表示色を付するレベルよりも低いボクセルB1の位置には、鮮明度を低下させるメッシュが付された状態で、探知画像41が表示される。すなわち、スライス面S1上のボリュームデータVDのうち、信号強度が表示色を付する下限レベル以上のボクセルB1の位置に信号強度に応じた表示色が付されて、断面画像45が構成される。断面画像45以外の範囲には、鮮明度を低下させるメッシュが付された状態で、探知画像41が表示される。これにより、探知画像41に比べて断面画像45がより鮮明に表示される。使用者は、鮮明さの違いにより、断面画像45と探知画像41とを容易に区別できる。
【0074】
さらに、信号処理部17は、
図4のステップS104の処理により、
図8に示すように、探知画像41および断面画像45に重ねて計測枠46を表示させる。計測枠46は、マウス100の移動に伴い、スライス面S1上を移動する。
【0075】
図4に戻り、信号処理部17は、マウス100を介して使用者が決定操作(S105)または終了操作(S106)を行うまで、ステップS103、S104の処理を繰り返す。ここで、決定操作(S105)は、マウス100に対して左クリックを行う操作(
図1の操作子102を押す操作)である。また、終了操作(S106)は、使用者が
図8の項目44aを操作して項目44aを計測OFFに切り替える操作である。終了操作が行われると(S106:YES)、信号処理部17は、
図4の処理を終了して、画面を
図6の画面30に戻す。
【0076】
使用者は、マウス100のホイール101を操作して、各水深の断面画像45を参照し、魚群等の存在を確認する。そして、使用者は、魚群を含む所望の断面画像45を表示させた状態で、マウス100を移動させ、計測枠46を当該断面画像45上の魚群の位置に位置付ける。その後、使用者は、マウス100の操作子102を操作して(左クリック)、計測枠46の位置を決定する。
【0077】
こうして使用者により決定操作が行われると(S105:YES)、信号処理部17は、処理を
図5のステップS107に進める。信号処理部17は、断面画像45の表示処理を終了させ(S107)、通常表示時の視点で探知画像を表示部19に表示させる(S108)。そして、信号処理部17は、
図4のステップS105において決定された計測枠46の水深位置および水平位置に、3次元の計測枠を表示させる(S109)。さらに、信号処理部17は、3次元の計測枠内に含まれるボクセルB1の信号強度に基づいて、計測枠内に含まれる魚群の総魚量等を計測し、計測結果を表示部19に表示させる(S110)。
【0078】
図5のステップS107~S110によって、たとえば、
図9の画面50が表示される。
【0079】
画面50は、
図6の画面30と同様、探知画像51と、船画像52と、船首船尾オブジェクト53と、操作領域54と、項目54aとを含んでいる。探知画像51の視線方向は、
図6の場合と同様である。さらに、画面50は、3次元の計測枠55と、計測結果を示す領域56とを含んでいる。上記のように、計測枠55は、
図4のステップS105において決定された計測枠46の水深位置および水平位置に表示される。計測枠55は、デフォルトで設定されたサイズで表示される。
【0080】
領域56には、計測枠55に含まれる魚群の魚量56aがトン表示で表示される。信号処理部17は、計測枠55に含まれるボクセルB1の信号強度ごとの体積の合計値に信号強度ごとの所定の係数を乗じて、魚量56aを算出する。この係数は、魚の種類等に応じて選択可能である。また、領域56には、計測枠55の縦、横および高さの寸法と、計測枠55の水深位置とを含む枠情報56bが表示される。さらに、領域56には、計測枠55に含まれるボクセルB1の信号強度の頻度分布を示すヒストグラム56cが表示される。使用者は、ヒストグラム56cを参照することにより、計測枠55に含まれる魚群の密集度を大まかに把握できる。使用者は、マウス100のホイール101を操作することにより、計測枠55のサイズを変更できる。
【0081】
図5に戻り、使用者がマウス100のホイール101を操作すると、信号処理部17は、ホイール101の回転方向および回転量に応じて、計測枠55を相似的に大小させる(S111)。すなわち、ホイール101が一の方向に回転すると計測枠55が回転量に応じて大きくなり、ホイール101が他の方向に回転すると計測枠55が回転量に応じて小さくなる。計測枠55は、予め設定された最大サイズと最小サイズとの間で変更可能である。
【0082】
図10は、ホイール101に対する操作により、計測枠55が、
図9の状態から大きくなった場合の画面50を示している。計測枠55のサイズ変更に伴い、領域56における魚量56a、枠情報56bおよびヒストグラム56cが変化する。使用者は、計測枠55を所望のサイズに調節して、当該計測枠55に含まれる魚量を確認することができる。
【0083】
図5に戻り、信号処理部17は、マウス100を介して使用者が取消操作(S112)または終了操作(S113)を行うまで、ステップS110、S111の処理を繰り返す。ここで、取消操作(S112)は、マウス100に対して右クリックを行う操作(
図1の操作子103を押す操作)である。また、終了操作(S113)は、使用者が
図9および
図10の項目54aを操作して項目54aを計測OFFに切り替える操作である。終了操作が行われると(S113:YES)、信号処理部17は、
図5の処理を終了して、画面を
図6の画面30に戻す。
【0084】
使用者は、
図9および
図10における計測結果を参照した後、他の水深における魚群を計測する場合、マウス100を介して取消操作(右クリック)を行う。これにより、信号処理部17は、
図5のステップS112の判定をYESとして、処理を、
図4のステップS103に戻す。これにより、画面が
図8の画面に戻される。その後、使用者は、上記と同様、ホイール101を操作して、所望の水深の断面画像45を表示させる。そして、使用者は、マウス100を移動させて、断面画像45上の魚群の位置に計測枠46を位置づけて、マウス100に対し左クリックの操作(決定操作)を行う。これにより、当該魚群の位置に
図9と同様の計測枠55が設定され、魚群の計測が行われる。これにより、当該魚群に関する情報が領域56に表示される。こうして、使用者は、他の魚群に対する情報を円滑に取得できる。
【0085】
<実施形態の効果>
上記実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0086】
使用者は、
図8に示した断面画像45を参照することにより、断面位置における信号強度を把握できる。また、使用者は、操作部18(マウス100)に対する操作に応じて断面画像45のスライス位置を鉛直方向D1に移動させることができる。使用者は、このように断面画像45を移動させることによって、物標内部の強度分布や、物標の奥方に隠れる他の物標の内部の強度分布を容易に把握できる。
【0087】
また、信号処理部17は、さらに、探知画像41を表示部19に表示させる。これにより、使用者は、断面画像45により所定のスライス位置における信号強度の分布を把握できるとともに、探知画像41により探知範囲全体の信号強度の分布を把握できる。
【0088】
図8に示したように、信号処理部17は、探知画像41に断面画像45を重ねて表示させる。これにより、使用者は、断面位置の信号強度を断面画像45で把握しつつ、断面位置より奥方の信号強度を探知画像41により把握できる。よって、使用者は、断面位置よりも奥方に魚群等の物標がさらに存在するかを併せて把握でき、計測すべき魚群を円滑に見つけ出すことができる。
【0089】
また、本実施形態では、
図8に示したように、断面画像45のスライス面よりも視点側の探知画像41が非表示に設定されている。これにより、断面画像45より視点側の探知画像41によって断面画像45が見えにくくなることを抑制できる。よって、使用者は、より明瞭に断面画像45を確認できる。
【0090】
また、
図3に示したように、本実施形態では、操作部18(マウス100)の操作に応じて、スライス面S1を鉛直方向D1に移動させて、断面画像45が生成される。これにより、使用者は、水深方向に断面画像45を移動させることができ、所定の水深に群がる魚群等を円滑に確認できる。
【0091】
また、
図8に示したように、信号処理部17は、操作部18(マウス100)に対する操作に応じて、断面画像45上に信号強度の計測位置(計測枠46)を設定する。これにより、使用者は、たとえば、断面画像45上において信号強度が高い位置(魚群の位置)を計測位置に容易に指定できる。
【0092】
また、
図9に示したように、信号処理部17は、
図8の画面40で設定した計測位置(計測枠46)を含む所定の3次元範囲(計測枠55)を信号強度の計測範囲に設定する。これにより、当該計測範囲(計測枠55)に含まれる魚群等の物標の信号強度を円滑に抽出して計測できる。
【0093】
また、
図9および
図10に示したように、信号処理部17は、探知画像51上に計測範囲(計測枠55)を表示させ、操作部18(マウス100)に対する操作に応じて、計測範囲(計測枠55)の大きさを変更する。これにより、使用者は、探知画像51および計測範囲(計測枠55)の表示を参照しつつ、魚群等の範囲に計測範囲(計測枠55)を円滑に調整できる。これにより、使用者は、計測対象物標の信号強度を適正に計測できる。
【0094】
また、
図9および
図10に示したように、信号処理部17は、計測範囲(計測枠55)に含まれる信号強度のヒストグラム56cを表示部19に表示させ、さらに、計測範囲(計測枠55)に含まれる信号強度に基づいて、当該計測範囲(計測枠55)に含まれる魚量に関する情報(魚量56a)を表示部19に表示させる。これらの表示により、使用者は、魚群の密集度や当該魚群の総魚量を容易に把握できる。
【0095】
<変更例1>
本発明は、上記実施形態に制限されるものではない。また、本発明の実施形態は、上記構成の他に種々の変更が可能である。
【0096】
たとえば、上記実施形態では、
図4のステップS103において、スライス面S1よりも視点側の探知画像41が非表示に設定されたが、スライス面S1よりも視点側の探知画像41が透過表示に設定されてもよい。
【0097】
図11(a)は、上記実施形態に係る、
図4のステップS103における処理を示すサブルーチンであり、
図11(b)は、変更例1に係る、
図4のステップS103における処理を示すサブルーチンである。
【0098】
まず、
図11(a)を参照して、上記実施形態における処理を説明する。
図4のステップS103において、信号処理部17は、スライス面S1に含まれるボクセルB1のうち、信号強度が表示色を付する下限レベル以上のボクセルB1の位置に信号強度に応じた表示色を付して、断面画像45を表示させる(S201)。ここで、信号処理部17は、スライス面S1に含まれるその他のボクセルB1を表示対象から除外する。また、信号処理部17は、スライス面S1よりも視点側の探知画像41を非表示に設定し(S202)、スライス面より奥側の探知画像41の領域のうち断面画像45以外の領域に、鮮明度を低下させるメッシュ処理を適用して、この領域の探知画像41を表示させる(S203)。ここで、信号処理部17は、スライス面より奥側の探知画像41の領域のうち断面画像45に重なる領域は、探知画像41を非表示に設定する。
【0099】
次に、
図11(b)を参照して、変更例1における処理を説明する。
図4のステップS103において、信号処理部17は、
図11(a)と同様、ステップ201の処理により、断面画像を表示させる。そして、信号処理部17は、スライス面S1よりも視点側の探知画像41を透過表示に設定し(S211)、スライス面より奥側の探知画像41の領域のうち断面画像45以外の領域に、鮮明度を低下させるメッシュ処理を適用して、この領域の探知画像41を表示させる(S203)。ステップS211において、信号処理部17は、映像信号のうち、透過度を規定するパラメータαを所定の値に設定することにより、探知画像41を透過表示に設定する。これにより、視点側の探知画像41を薄く表示させながら断面画像45を表示させ得る。
【0100】
変更例1の処理によれば、断面画像45のスライス面S1よりも視点側の探知画像41が透過表示に設定されるため、上記実施形態(
図11(a)の処理)に比べて断面画像45がやや見えにくくなるものの、使用者は、断面画像45における信号強度を確認しつつ、断面画像45よりも視点側の探知画像41における信号強度も確認できる。よって、使用者は、断面画像45の手前にも魚群等の物標がさらに存在するか否かを併せて把握でき、確認すべき魚群を円滑に確認することができる。
【0101】
<変更例2>
上記実施形態では、スライス面S1の移動方向は、鉛直方向D1のみであった。これに対し、変更例2では、スライス面の移動方向が複数準備され、使用者において所望の移動方向が選択可能となっている。
【0102】
図12(a)、
図12(b)は、それぞれ、変更例2に係る、スライス面S2、S3を水平方向に移動させる場合の、ボリュームデータVDとスライス面S2、S3との関係を模式的に示す図である。
【0103】
図12(a)の場合、スライス面S2は、鉛直面(Y-Z平面)に平行である。断面画像には、スライス面S2に交差するボクセルB1(
図2参照)の信号強度が反映される。スライス面S2は、操作部18(マウス100)に対する操作によりX軸に平行な水平方向D2に移動する。したがって、使用者は、操作部18(マウス100)に対する操作により、水平方向D2に変化する断面の断面画像を参照できる。
【0104】
図12(b)の場合、スライス面S3は、鉛直面(X-Z平面)に平行である。断面画像には、スライス面S3に交差するボクセルB1(
図2参照)の信号強度が反映される。スライス面S3は、操作部18(マウス100)に対する操作によりY軸に平行な水平方向D3に移動する。したがって、使用者は、操作部18(マウス100)に対する操作により、水平方向D3に変化する断面の断面画像を参照できる。
【0105】
図13は、変更例2に係る、スライス面S4を視線方向に移動させる場合の、ボリュームデータVDとスライス面S4との関係を模式的に示す図である。
【0106】
図13において、視線方向は、破線矢印で示されている。P1は仮想的に設定された視点位置である。視線方向は、たとえば、
図6に示した探知画像31に対する視線方向と同じである。
【0107】
図13の場合、スライス面S4は、視線方向に垂直である。断面画像には、スライス面S4に交差するボクセルB1(
図2参照)の信号強度が反映される。スライス面S4は、操作部18(マウス100)に対する操作により視線方向D4に移動する。したがって、使用者は、操作部18(マウス100)に対する操作により、視線方向D4に変化する断面の断面画像を参照できる。
【0108】
図14は、変更例2に係る、画面40を示す図である。
【0109】
図14の画面40は、
図6の画面30において、使用者が項目34aを操作して計測処理が開始された直後に表示される画面である。ここでは、デフォルトの画面として、
図7と同様、スライス面S1を鉛直方向に移動させる場合の画面40が表示される。画面40の操作領域44には、断面(スライス面)の移動方向を変更するための項目44bが含まれている。使用者は、項目44bを操作することにより、断面の移動方向を、
図14に示す鉛直方向から、
図12(a)、
図12(b)の水平方向および
図13の視線方向に、任意に切り替えることができる。
【0110】
断面の移動方向が変更されると、探知画像41が、変更後の移動方向に見たときの探知画像に変更される。これに伴い、船画像42の表示形態も変更される。さらに、領域43に表示されるバー43aの向きと、船画像43bの向きが、断面の移動方向に応じた向きに変更される。また、バー43a上における計測枠43dの位置が、マウス100の移動に伴い移動する。
【0111】
断面の移動方向が変更された後の処理は、各スライス面の移動方向および画面の表示形態が上記実施形態と異なるのみであり、処理の内容自体は、
図4および
図5の処理と同様である。計測枠43dを移動させた後に、項目44bの操作に応じて、断面画像の方向が切り替えられてもよい。
【0112】
変更例2の構成によれば、使用者が所望する方向に断面画像の移動方向を変更できる。よって、使用者は、信号強度の確認作業をより効率的に進めることができる。
【0113】
また、
図13に示すように、断面画像の移動方向に視線方向を含めることにより、探知画像を参照する方向と、操作に応じて断面画像が移動する方向とを一致させることができる。これにより、使用者は、断面画像の移動を直感的にイメージでき、断面画像の移動および魚群等の確認作業を円滑に進めることができる。
【0114】
なお、選択可能な断面画像の移動方向(スライス面の移動方向)は、
図3、
図12(a)、
図12(b)および
図13の移動方向に限られるものではない。たとえば、視線方向を任意に設定可能として、設定した視線方向に断面画像(スライス面)を移動させ得るようにしてもよい。また、スライス面の水平移動の方向も、X軸方向およびY軸方向から傾いた方向であってもよい。
【0115】
<変更例3>
上記実施形態では、探知画像41に断面画像45が重ねて表示されたが、断面画像45が探知画像41とは別に表示されてもよい。
【0116】
図15は、変更例3に係る、画面40の構成を示す図である。
【0117】
図15の表示形態では、探知画像41とは別に、断面画像の表示領域47が設定される。表示領域47には、断面画像47aと、船画像47bと、水深情報47cが含まれる。水深情報47cは、スライス面の水深位置を示している。上記実施形態と同様、使用者は、マウス100のホイール101を操作することにより、スライス面S1の水深位置を変更できる。
【0118】
この表示形態では、計測枠が表示領域47に表示される。探知画像41は、必ずしも、鉛直下方向に見た探知画像でなくてもよく、
図6と同様、通常の視線方向に見たときの探知画像であってもよい。
【0119】
変更例3によれば、探知画像41に非表示の領域や透過領域が設定されないため、使用者は、断面画像47aとともに、探知画像41の全体を良好に確認できる。
【0120】
<その他の変更例>
上記実施形態では、計測処理の際に、マウス100によって、各種の操作入力が行われたが、操作入力の方法はこれに限られるものではない。たとえば、表示部19の画面に対する入力をタッチパネルにより受け付ける構成の場合、画面に対する操作によって、計測処理の際の操作入力が受け付けられてもよい。たとえば、画面に対するドラッグ操作によって、
図8に示した計測枠46が移動されてもよく、計測枠46に対するタップ操作によって、計測枠46の位置が決定されてもよい。
【0121】
また、各画面のレイアウトは、上記実施形態において示したレイアウトに限られるものではなく、探知画像と断面画像が適正に表示される限りにおいて、他のレイアウトが用いられてもよい。
【0122】
また、ボリュームデータVDを取得する方法も、上記実施形態の方法に限られるものではなく、他の方法が用いられてもよい。たとえば、扁平かつ扇形形状の送信ビームを船の進行方向に垂直に広がるように送波させた状態で、船舶の移動に伴い時系列に受信信号を集積することにより、ボリュームデータVDを取得する方法が用いられてもよい。また、上記実施形態と同様の扁平かつ扇形の送信ビームを仰俯角方向に走査させることによりボリュームデータVDが取得されてもよい。あるいは、傘状の送信ビームを船の全周に亘って送波して、ボリュームデータVDが取得されてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、計測枠55が相似的にサイズ変更されたが、計測枠55の縦横比等、計測枠55の形状自体が操作に応じて変更されてもよい。たとえば、計測枠55の頂点をクリックした状態でマウス100を移動させることにより、計測枠55の形状をマウス100の移動方向に引き伸ばすように変化させてもよい。
【0124】
また、計測枠55に対する計測方法も上記実施形態に限定されるものではなく、計測枠55に含まれる魚群の密集度、数に関する情報を適正に示し得る他の計測方法が用いられてもよい。魚群に対して取得される情報も適宜変更可能である。
【0125】
また、上記実施形態および変更例3では、断面画像の表示画面において、断面画像を移動させる方向に見たときの探知画像が表示されたが、当該画面に表示される探知画像は、断面画像の移動方向に見たときの探知画像でなくてもよく、たとえば、
図6に示すような通常視点の探知画像であってもよい。
【0126】
また、断面画像は、必ずしも、探知画像と同時に表示されなくてもよく、たとえば、断面画像のみが表示部19に表示されてもよい。
【0127】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0128】
10 水中探知装置
17 信号処理部
18 操作部
19 表示部
31、41、51 探知画像
45、47a 断面画像
46 計測枠(計測位置)
55 計測枠(計測範囲)
56a 魚量(魚量に関する情報)
56c ヒストグラム
100 マウス
S1~S4 スライス面
VB ボリュームデータ