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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】切削ブレード
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/12 20060101AFI20240115BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240115BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20240115BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B24D5/12 Z
B24D3/00 320B
B24D3/00 330G
B24D3/06 A
B24D3/00 320A
H01L21/78 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020022349
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126729
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友尋
(72)【発明者】
【氏名】藤川 武
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-146770(JP,A)
【文献】特開平04-372368(JP,A)
【文献】特開平09-085627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 5/12
B24D 3/00
B24D 3/06
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を切削するための切削ブレードであり、
砥粒と、ナノダイヤモンド粒子と、前記砥粒および前記ナノダイヤモンド粒子を結合するボンドである金属と、を含
前記金属は焼結法により成形されたメタルボンドである、切削ブレード。
【請求項2】
前記金属により構成される金属マトリックス中に前記ナノダイヤモンド粒子が分散している請求項1に記載の切削ブレード。
【請求項3】
前記砥粒は無機粒子を含む請求項1または2に記載の切削ブレード。
【請求項4】
前記無機粒子はダイヤモンド粒子を含む請求項3に記載の切削ブレード。
【請求項5】
前記金属は銅を含む合金を含む請求項1~のいずれか1項に記載の切削ブレード。
【請求項6】
前記ナノダイヤモンド粒子の二次粒子を含む請求項1~のいずれか1項に記載の切削ブレード。
【請求項7】
前記切削ブレード中における前記ナノダイヤモンド粒子の一次粒子の平均粒子径(D50)は1~240nmである請求項1~のいずれか1項に記載の切削ブレード。
【請求項8】
前記切削ブレード中における前記砥粒の平均粒子径(D50)は1~600μmである請求項1~のいずれか1項に記載の切削ブレード。
【請求項9】
前記ナノダイヤモンド粒子は爆轟法ナノダイヤモンドを含む請求項1~のいずれか1項に記載の切削ブレード。
【請求項10】
半導体ウエハをダイシングするためのダイシングブレードである請求項1~のいずれか1項に記載の切削ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削ブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置や電子部品が形成された半導体ウエハのダイシング等の切削加工を行う際、例えば、ダイシングブレード等の切削ブレードが用いられることがある。上記切削ブレードとしては、例えば、ダイヤモンド砥粒を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-164228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイヤモンド砥粒を用いた従来の切削ブレードを用いて、高い速度で半導体ウエハ等の切削対象物の切削加工を行おうとした場合、サイズの大きいダイヤモンド砥粒を用いることが考えられる。しかしながら、サイズの大きいダイヤモンド砥粒を用いた場合、切削対象物に生じる欠け(チッピング)が大きくなるという問題があった。
【0005】
従って、本開示の目的は、切削加工を行う際に生じるチッピングを抑制できる切削ブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ボンドとして金属を用いた切削ブレードにナノダイヤモンド粒子を配合することにより、切削加工を行う際に生じるチッピングを抑制できることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0007】
本開示は、板状物を切削するための切削ブレードであり、
砥粒と、ナノダイヤモンド粒子と、上記砥粒および上記ナノダイヤモンド粒子を結合するボンドである金属と、を含む、切削ブレードを提供する。
【0008】
上記切削ブレードは、上記金属により構成される金属マトリックス中に上記ナノダイヤモンド粒子が分散していることが好ましい。
【0009】
上記砥粒は無機粒子を含むことが好ましい。
【0010】
上記無機粒子はダイヤモンド粒子を含むことが好ましい。
【0011】
上記金属は焼結法により成形されたメタルボンドであることが好ましい。
【0012】
上記金属は銅を含む合金を含むことが好ましい。
【0013】
上記切削ブレードはナノダイヤモンド粒子の二次粒子を含んでいてもよい。
【0014】
上記切削ブレード中における上記ナノダイヤモンド粒子の一次粒子の平均粒子径(D50)は1~240nmであることが好ましい。
【0015】
上記切削ブレード中における上記砥粒の平均粒子径(D50)は1~600μmであることが好ましい。
【0016】
上記ナノダイヤモンド粒子は爆轟法ナノダイヤモンドを含むことが好ましい。
【0017】
上記切削ブレードは半導体ウエハをダイシングするためのダイシングブレードであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記切削ブレードによれば、切削加工を行う際に生じるチッピングを抑制することができる。そして、これにより、上記切削工程において歩留まりが向上するため、工程能力が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態に係る切削ブレードの拡大模式図である。
図2】実施例および比較例におけるガラス切断試験の裏面のチッピングサイズの評価結果を示すグラフである。
図3】実施例および比較例におけるガラス切断試験の表面のチッピングサイズの評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の一実施形態に係る切削ブレードは、板状物を切削するための切削ブレード(刃)である。上記切削ブレードは、特に、半導体ウエハをダイシングして個片化するためのダイシングブレードであることが好ましい。
【0021】
上記切削ブレードは、例えば円盤形状であり、ダイシング装置におけるスピンドル軸に装着するための孔を中央に有する円盤形状のフランジやハブマウントの外周部に取り付けられる。また、円盤形状である上記切削ブレードは、ダイシング装置に装着するためのフランジやハブマウントに取り付けるための孔を円盤の中央に有する環状である。
【0022】
上記切削ブレードは、砥粒と、ナノダイヤモンド粒子と、上記砥粒および上記ナノダイヤモンド粒子を結合するボンドである金属とを少なくとも含む。
【0023】
図1に、上記切削ブレードの一実施形態の拡大模式図を示す。切削ブレード1は、金属2と、ナノダイヤモンド粒子3と、砥粒4とを含む。より詳細には、切削ブレード1は、金属2により構成される金属マトリックス中にナノダイヤモンド粒子3および砥粒4が分散している。
【0024】
上記切削ブレードにおいて、上記金属は、上記ナノダイヤモンド粒子および上記砥粒の結合剤(ボンド)として作用する。上記切削ブレードにおいて、上記金属は、焼結法により成形されたメタルボンドであってもよいし、電鋳法によるめっき成長により作製された電鋳ボンドであってもよい。中でも、焼結法によればナノダイヤモンド粒子を粉体の状態で砥粒および結合剤と混合して焼き固めて製造することができ、数%オーダーでナノダイヤモンド粒子を複合することができる観点から、メタルボンドであることが好ましい。
【0025】
上記金属としては、公知乃至慣用の切削ブレードに使用されるものが挙げられ、例えば、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、クロム、チタン、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、錫、アンチモン、テルル、タングステン、金、ビスマス、およびこれらの金属を含む合金が挙げられる。上記合金としては、青銅、銅-錫-亜鉛合金等の銅を含む合金が好ましい。上記金属としては、軟質金属が好ましい。上記金属は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0026】
上記砥粒としては、公知乃至慣用の切削ブレードに使用されるものが挙げられ、例えば、無機粒子、有機粒子、有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩などが挙げられる。有機粒子としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子、ポリ(メタ)アクリル酸粒子、ポリアクリロニトリル粒子などが挙げられる。上記砥粒としては、中でも、無機粒子が好ましく、切削性能が良好であることからチッピングも生じやすい観点から、特にダイヤモンド粒子が好ましい。上記砥粒は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0027】
上記砥粒としてのダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド粒子よりも大きく砥粒として機能する観点から、ミクロンサイズのダイヤモンド粒子(マイクロダイヤモンド粒子)であることが好ましい。
【0028】
上記マイクロダイヤモンド粒子としては、公知乃至慣用のマイクロダイヤモンド粒子を用いることができる。上記マイクロダイヤモンド粒子は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0029】
上記切削ブレードにおいて、上記ナノダイヤモンド粒子は摩擦・摩耗低減効果を発揮するものと推測される。これは、砥粒が板状物を削る際、板状物表面にナノダイヤモンド粒子に由来する移着膜(炭素移着膜)が形成され、当該移着膜が砥粒による過度な摩耗あるいはチッピングを抑制することによるものと推定される。このように、上記切削ブレードによればチッピングが抑制される。そして、これにより、上記切削工程において歩留まりが向上するため、工程能力が向上するという効果を奏する。
【0030】
上記切削ブレード中における上記砥粒(特にマイクロダイヤモンド粒子)の平均粒子径(D50、メディアン径)は、例えば1~600μm、好ましくは5~300μm、より好ましくは7~100μm、さらに好ましくは10~50μmである。上記平均粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
【0031】
上記切削ブレード中の砥粒の含有量は、上記金属の総量100体積部に対して、例えば1~30体積部であり、好ましくは5~20体積部、より好ましくは8~15体積部である。また、マイクロナノダイヤモンド粒子の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0032】
上記ナノダイヤモンド粒子は、ナノサイズのダイヤモンド粒子であり、特に限定されず、公知乃至慣用のナノダイヤモンド粒子を用いることができる。上記ナノダイヤモンド粒子は、表面修飾されたナノダイヤモンド粒子であっていてもよいし、表面修飾されていないナノダイヤモンド粒子であってもよい。なお、表面修飾されていないナノダイヤモンド粒子は、表面にヒドロキシル基(-OH)を有する。上記ナノダイヤモンド粒子は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0033】
上記表面修飾ナノダイヤモンドにおいて、ナノダイヤモンド粒子を表面修飾する化合物または官能基としては、例えば、シラン化合物、カルボキシル基(-COOH)、ホスホン酸イオン若しくはホスホン酸残基、末端にビニル基を有する表面修飾基、アミド基、カチオン界面活性剤のカチオン、ポリグリセリン鎖を含む基、ポリエチレングリコール鎖を含む基などが挙げられる。
【0034】
上記切削ブレードにおける上記ナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子を含むことが好ましい。その他、上記一次粒子が数個~数十個程度凝集(凝着)した二次粒子を含んでいてもよい。すなわち、上記ナノダイヤモンド粒子は、上記切削ブレード中において二次粒子(クラスターナノダイヤモンド粒子)であってもよい。
【0035】
上記切削ブレード中における上記ナノダイヤモンド粒子の一次粒子の平均粒子径(D50、メディアン径)は、例えば1~240nm、好ましくは2~100nm、より好ましくは3~50nm、さらに好ましくは4~20nm、特に好ましくは4~10nmである。上記平均粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
【0036】
上記ナノダイヤモンド粒子としては、例えば、爆轟法によって生成したナノダイヤモンド(爆轟法ナノダイヤモンド)や、高温高圧法によって生成したナノダイヤモンド(高温高圧法ナノダイヤモンド)を使用することができる。中でも、一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルであるナノダイヤモンドを容易に得ることができる点で、爆轟法ナノダイヤモンドが好ましい。
【0037】
上記爆轟法ナノダイヤモンドとしては、空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド(空冷式爆轟法ナノダイヤモンド)と水冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド(水冷式爆轟法ナノダイヤモンド)が挙げられる。中でも、空冷式爆轟法ナノダイヤモンドが水冷式爆轟法ナノダイヤモンドよりも一次粒子が小さい点で好ましい。
【0038】
爆轟は大気雰囲気下で行ってもよく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、二酸化炭素雰囲気などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0039】
上記切削ブレード中の上記ナノダイヤモンド粒子の含有量は、上記金属の総量100体積部に対して、例えば0.05~50体積部であり、好ましくは0.1~20体積部、より好ましくは1~10体積部である。
【0040】
上記切削ブレードは、金属、ナノダイヤモンド粒子、および砥粒以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、上記切削ブレード中の金属、ナノダイヤモンド粒子、および砥粒の合計の含有割合は、上記切削ブレードの総量100質量%に対して、例えば90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上であってもよい。
【0041】
上記切削ブレードは、公知乃至慣用の切削ブレードの製造方法を参照して適宜製造することができる。例えば、円盤形状の切削ブレードは、金属、ナノダイヤモンド粒子、および砥粒を配合した組成物を、焼結法により、あるいは電鋳法によりめっき成長させることにより成形し、その後所望の形状に打ち抜いて作製することができる。
【0042】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0043】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0044】
実施例1
下記工程を経て、爆轟法ナノダイヤモンド粒子およびブレードを製造した。
【0045】
(爆轟法ナノダイヤモンドの作製)
まず、爆轟法によるナノダイヤモンドの生成工程を行った。本工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置して容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、TNTとRDXとの混合物0.50kgを使用した。この爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50である。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた(爆轟法ナノダイヤモンドの生成)。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ナノダイヤモンド粗生成物を回収した。
【0046】
次に、酸化処理工程を行った。上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたナノダイヤモンド粗生成物に対し、酸化処理工程を行った。具体的には、得られたナノダイヤモンド粗生成物に6Lの98質量%硫酸と1Lの69質量%硝酸とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で48時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は140~160℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。その後、乾燥して、一次粒子およびナノダイヤモンド凝着体(二次粒子)を含むナノダイヤモンド粒子を粉体として得た。さらに、酸素約8体積%、窒素約92体積%の気体を流速20L/minで吹き込んだロータリーキルン中にて400℃、6時間加熱してナノダイヤモンドの乾燥粉体を得た。
【0047】
得られたナノダイヤモンド乾燥粉体について、X線回析装置(商品名「SmartLab」、株式会社リガク製)を使用して結晶構造解析を行った。その結果、ダイヤモンドの回析ピーク位置、即ち、ダイヤモンド結晶の(111)面からの回析ピーク位置に強い回析ピークが認められ、算出された結晶子サイズは4.5nmであった。また、得られた乾燥粉体について、X線回析装置(商品名「SmartLab」、株式会社リガク製)を使用して小角X線散乱測定を行い、粒子径分布解析ソフト(商品名「NANO-Solver」、株式会社リガク製)を使用して、散乱角度1°~3°の領域についてナノダイヤモンドの一次粒子経を見積もった。この見積もりにおいては、ナノダイヤモンド一次粒子が球形であり且つ粒子密度が3.51g/cm3であるとの仮定をおいた。その結果、本測定で得られるナノダイヤモンド一次粒子の平均粒径は5.5nmであり、一次粒子分布に関する相対標準偏差(RSD:relative standard deviation)は30.2であった。
【0048】
(ブレードの作製)
青銅をメタルボンドの結合剤として用い、結合剤100体積部に対して、マイクロダイヤモンド粉体(#800、切削加工用砥粒、D50:18~25μm)が10体積部配合された組成物に、上記ナノダイヤモンド乾燥粉体を、結合剤100体積部に対して6.4体積部配合し、窒素雰囲気下で温度750℃にてシート状に焼結した。その後、環状に打ちぬくことにより、メタルブレード(外径:56mm、内径:40mm、刃厚0.13mm)を作製した。
【0049】
なお、上記マイクロダイヤモンド粉体について、X線回析装置(商品名「SmartLab」、株式会社リガク製)を使用して結晶構造解析を行った結果、ダイヤモンドの回析ピーク位置、すなわち、ダイヤモンド結晶の(111)面からの回析ピーク位置に強い回析ピークが認められ、算出された結晶子サイズは20μmであった。
【0050】
比較例1
ナノダイヤモンド乾燥粉体を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてメタルブレードを作製した。
【0051】
(ガラス切断試験)
実施例および比較例で作製したメタルブレードについて、ガラス切断試験を行った。実施例および比較例で得られたメタルブレードをダイシング装置にセットし、上記メタルブレードを用いてガラス板(長さ7.5cm×幅7.5cm×厚さ0.4mm)を切断し、切断後のガラス板の表面と裏面のチッピングサイズを確認した。ガラス板の切断は、主軸回転数:20rpmとし、送り速度:1mm/秒で2回、2mm/秒で2回、3mm/秒で2回、4mm/秒で2回、5mm/秒で2回、6mm/秒で25回(計35回)、それぞれ、長さ方向に切断するように行った。また、主軸回転数:20rpmとし、送り速度:6mm/秒で72回、幅方向に切断するように行った(合計107回)。切断後、ガラス板表裏面切断ライン上のチッピングを光学顕微鏡で観察し、サイズの大きい9点を表裏面それぞれで抽出した。表裏面で抽出された各9点について、裏面のチッピングサイズ評価の結果を図2および表1に、表面のチッピングサイズ評価の結果を図3および表2にそれぞれ示す。なお、切断は、純水を1.0L/分の量で供給しつつ行った。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
図2および表1に示すように、比較例1で得られたメタルブレードを使用した場合、ガラス板の裏面におけるチッピングサイズは13~30μmであり、また、平均値は21μmであった。一方、実施例1で得られたメタルブレードを使用した場合、ガラス板の裏面におけるチッピングサイズは11~20μmであり、また、平均値は14μmであった。このように、実施例1は比較例1に対してチッピングサイズが総じて小さくなっており、平均値も小さくなり、また標準偏差が小さくばらつきも小さくなっている。また、図3および表2に示すように、ガラス板の表面についても、実施例1は比較例1に対してチッピングサイズが総じて小さくなっていることが分かる。
【0055】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]板状物を切削するための切削ブレードであり、砥粒と、ナノダイヤモンド粒子と、前記砥粒および前記ナノダイヤモンド粒子を結合するボンドである金属と、を含む、切削ブレード。
[付記2]前記金属により構成される金属マトリックス中に前記ナノダイヤモンド粒子が分散している付記1に記載の切削ブレード。
[付記3]前記砥粒は無機粒子を含む付記1または2に記載の切削ブレード。
[付記4]前記無機粒子はダイヤモンド粒子を含む付記3に記載の切削ブレード。
[付記5]前記ダイヤモンド粒子はマイクロダイヤモンド粒子を含む付記4に記載の切削ブレード。
[付記6]前記砥粒(好ましくは前記マイクロダイヤモンド粒子)の平均粒子径は5~300μm(好ましくは5~300μm、より好ましくは7~100μm、さらに好ましくは10~50μm)である付記1~5のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記7]前記金属は焼結法により成形されたメタルボンドである付記1~6のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記8]前記金属は銅を含む合金を含む付記1~7のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記9]前記ナノダイヤモンド粒子の二次粒子を含む付記1~7のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記10]前記ナノダイヤモンド粒子は爆轟法ナノダイヤモンドを含む付記1~9のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記11]前記ナノダイヤモンド粒子は空冷式爆轟法ナノダイヤモンドを含む付記1~9のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記12]前記切削ブレード中の砥粒の含有量は、前記金属の総量100体積部に対して1~30体積部(好ましくは5~20体積部、より好ましくは8~15体積部)である付記1~11のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記13]前記ナノダイヤモンド粒子の一次粒子の平均粒子径は1~240nm(好ましくは2~100nm、より好ましくは3~50nm、さらに好ましくは4~20nm、特に好ましくは4~10nm)である付記1~12のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記14]前記切削ブレード中の前記ナノダイヤモンド粒子の含有量は、前記金属の総量100体積部に対して0.05~50体積部(好ましくは0.1~20体積部、より好ましくは1~10体積部)である付記1~13のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記15]前記切削ブレード中の金属、ナノダイヤモンド粒子、および砥粒の合計の含有割合は、前記切削ブレードの総量100質量%に対して90質量%以上(95質量%以上、98質量%以上、または99質量%以上)である付記1~14のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記16]半導体ウエハをダイシングするためのダイシングブレードである付記1~15のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記17]円盤形状である付記1~16のいずれか1つに記載の切削ブレード。
[付記18]環状である付記1~17のいずれか1つに記載の切削ブレード。
【符号の説明】
【0056】
1 切削ブレード
2 金属(金属マトリックス)
3 ナノダイヤモンド粒子
4 砥粒
図1
図2
図3