(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】廃プラスチックの選別装置、選別方法、及び選別プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20240115BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20240115BHJP
B07C 5/342 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G01N21/3563
C08J11/06
B07C5/342
(21)【出願番号】P 2020022811
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 昇治
(72)【発明者】
【氏名】村上 孝伸
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115193(JP,A)
【文献】特開2017-106783(JP,A)
【文献】特開2018-165010(JP,A)
【文献】特開2020-3419(JP,A)
【文献】特開2019-204168(JP,A)
【文献】特開2016-91359(JP,A)
【文献】特開2019-86412(JP,A)
【文献】特開2005-249624(JP,A)
【文献】特開2014-151224(JP,A)
【文献】特開2009-191375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
B29B 17/00-B29B 17/04
C08J 11/00-C08J 11/28
B07C 1/00-B07C 99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックの選別装置であって、
搬送路上で搬送される廃プラスチック片に光を照射する照射部と、
前記照射部により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、
前記反射スペクトル検出部により検出された前記スペクトルを、前記反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルと、前記明るい条件よりも暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルとを用いて補正する前処理部と、
前記前処理部により補正された前記スペクトルが前記廃プラスチック片及び前記搬送路のどちらかのものかを判定する第1判定部と、
前記第1判定部により前記廃プラスチック片と判定されたスペクトルから特徴量を抽出する第2判定部と、
前記第2判定部により抽出された前記特徴量に基づき前記廃プラスチック片の材質を判別する第3判定部と、
前記第3判定部による材質判定結果に応じて、前記搬送路上で搬送される前記廃プラスチック片へエアーを噴射するタイミングを制御して前記廃プラスチック片を複数の領域に仕分けて落下させることにより、前記廃プラスチック片を前記材質ごとに選別して収集する選別部と、
を備え
、
前記前処理部は、下記の数式を用いて前記スペクトルの補正を行い、
【数1】
ここで、S
org
(n,w)は、前記反射スペクトル検出部により検出された前記スペクトルであり、W
ref
(n,w)は、前記第1の補正用スペクトルであり、D
ref
(n,w)は、前記第2の補正用スペクトルであり、S
cor
(n,w)は、補正後の前記スペクトルである、
廃プラスチックの選別装置。
【請求項2】
前記前処理部は、補正された前記スペクトルから所定の周波数の範囲を切り出す加工を行い、
前記第1判定部は、前記前処理部により加工された前記スペクトルを用いて前記判定を行う、
請求項
1に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項3】
前記第1判定部は、学習済みのOne Class SVMを用いて判定を行う、
請求項1
または2に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項4】
前記第2判定部は、学習済みのPLSを用いて判定を行う、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項5】
前記第3判定部は、学習済みの決定木を用いて判定を行う、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項6】
前記選別部は、前記第3判定部の判定結果に基づき、前記搬送路を流れる前記廃プラスチック片から一の材質のものを収集する収集装置を備える、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項7】
前記搬送路は、幅方向において第1の系統と第2の系統の二系統に区分される、
請求項
6に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項8】
前記第1の系統と前記第2の系統で、同一の材質の廃プラスチック片を収集する、
請求項
7に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項9】
前記第1の系統では、第1の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、残りの廃プラスチック片を前記第2の系統へ供給し、
前記第2の系統では、前記残りの廃プラスチック片の中から第2の材質の廃プラスチック片を収集する、
請求項
7に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項10】
前記第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、前記収集した廃プラスチック片を前記第2の系統へ供給し、
前記第2の系統では、前記第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片の中から第1の材質の廃プラスチック片を収集する、
請求項
7に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項11】
前記第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外すると共に、前記除外した残りの廃プラスチック片を前記第2の系統へ供給し、
前記第2の系統では、前記他の廃プラスチック片の中からさらに前記第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外して、前記第1の材質を含まない廃プラスチック片を収集する、
請求項
7に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項12】
廃プラスチックの選別方法であって、
搬送路上で搬送される廃プラスチック片に光を照射する照射ステップと、
前記照射ステップにて照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出ステップと、
前記反射スペクトル検出ステップにて検出された前記スペクトルを、前記反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルと、前記明るい条件よりも暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルとを用いて補正する前処理ステップと、
前記前処理ステップにて補正された前記スペクトルが前記廃プラスチック片及び前記搬送路のどちらかのものかを判定する第1判定ステップと、
前記第1判定ステップにて前記廃プラスチック片と判定されたスペクトルから特徴量を抽出する第2判定ステップと、
前記第2判定ステップにて抽出された前記特徴量に基づき前記廃プラスチック片の材質を判別する第3判定ステップと、
前記第3判定ステップの材質判定結果に応じて、前記搬送路上で搬送される前記廃プラスチック片へエアーを噴射するタイミングを制御して前記廃プラスチック片を複数の領域に仕分けて落下させることにより、前記廃プラスチック片を前記材質ごとに選別して収集する選別ステップと、
を含
み、
前記前処理部は、下記の数式を用いて前記スペクトルの補正を行い、
【数2】
ここで、S
org
(n,w)は、前記反射スペクトル検出ステップにて検出された前記スペクトルであり、W
ref
(n,w)は、前記第1の補正用スペクトルであり、D
ref
(n,w)は、前記第2の補正用スペクトルであり、S
cor
(n,w)は、補正後の前記スペクトルである、
廃プラスチックの選別方法。
【請求項13】
廃プラスチックの選別プログラムであって、
搬送路上で搬送される廃プラスチック片に光を照射する照射機能と、
前記照射機能により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出機能と、
前記反射スペクトル検出機能により検出された前記スペクトルを、前記反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルと、前記明るい条件よりも暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルとを用いて補正する前処理機能と、
前記前処理機能により補正された前記スペクトルが前記廃プラスチック片及び前記搬送路のどちらかのものかを判定する第1判定機能と、
前記第1判定機能により前記廃プラスチック片と判定されたスペクトルから特徴量を抽出する第2判定機能と、
前記第2判定機能により抽出された前記特徴量に基づき前記廃プラスチック片の材質を判別する第3判定機能と、
前記第3判定機能による材質判定結果に応じて、前記搬送路上で搬送される前記廃プラスチック片へエアーを噴射するタイミングを制御して前記廃プラスチック片を複数の領域に仕分けて落下させることにより、前記廃プラスチック片を前記材質ごとに選別して収集する選別機能と、
をコンピュータに実現させ
、
前記前処理機能は、下記の数式を用いて前記スペクトルの補正を行い、
【数3】
ここで、S
org
(n,w)は、前記反射スペクトル検出機能により検出された前記スペクトルであり、W
ref
(n,w)は、前記第1の補正用スペクトルであり、D
ref
(n,w)は、前記第2の補正用スペクトルであり、S
cor
(n,w)は、補正後の前記スペクトルである、
廃プラスチックの選別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチックの選別装置、選別方法、及び選別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックの再処理においてマテリアルリサイクルのためには、選別後の製品への非対象物混入が少なく純度が高いことが求められる。また、素材に高価なものが含まれる場合には、高価な素材を取りこぼしなく選別できることが求められる。また、従来は分別できないためサーマルリサイクルをせざるを得なかった黒色プラスチックを、マテリアルリサイクルするために材質判別、選別を効率良く行うことが求められている。
【0003】
特許文献1には、選別対象物に赤外光を照射して選別対象物からの反射光を受光し、反射光に基づくスペクトルを用いてパターンマッチングの手法によって選別対象物の樹脂種を判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載の従来手法では、材質の判定精度に改善の余地がある。
【0006】
本開示は、廃プラスチックの材質の判定精度を向上できる選別装置、選別方法、及び選別プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一観点に係る廃プラスチックの選別装置は、搬送路上で搬送される廃プラスチック片に光を照射する照射部と、前記照射部により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、
前記反射スペクトル検出部により検出された前記スペクトルを、前記反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルと、前記明るい条件よりも暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルとを用いて補正する前処理部と、前記前処理部により補正された前記スペクトルが前記廃プラスチック片及び前記搬送路のどちらかのものかを判定する第1判定部と、前記第1判定部により前記廃プラスチック片と判定されたスペクトルから特徴量を抽出する第2判定部と、前記第2判定部により抽出された前記特徴量に基づき前記廃プラスチック片の材質を判別する第3判定部と、前記第3判定部による材質判定結果に応じて、前記搬送路上で搬送される前記廃プラスチック片へエアーを噴射するタイミングを制御して前記廃プラスチック片を複数の領域に仕分けて落下させることにより、前記廃プラスチック片を前記材質ごとに選別して収集する選別部と、を備え
、
前記前処理部は、下記の数式を用いて前記スペクトルの補正を行い、
【数1】
ここで、S
org
(n,w)は、前記反射スペクトル検出部により検出された前記スペクトルであり、W
ref
(n,w)は、前記第1の補正用スペクトルであり、D
ref
(n,w)は、前記第2の補正用スペクトルであり、S
cor
(n,w)は、補正後の前記スペクトルである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、廃プラスチックの材質の判定精度を向上できる選別装置、選別方法、及び選別プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る廃プラスチックの材質判定装置の概略構成を示す斜視図
【
図2】
図1に示す廃プラスチックの材質判定装置の側面図
【
図3】
図1に示す廃プラスチックの材質判定装置の平面図
【
図5】実施形態に係る廃ブラスチックの材質判別処理のフローチャート
【
図7】反射波スペクトルから特徴のある波長領域を切り出す処理の一例を示す図
【
図10】本実施形態の材質判定装置による第1の材質選別手法を示す平面図
【
図11】本実施形態の材質判定装置による第2の材質選別手法を示す平面図
【
図12】本実施形態の材質判定装置による第3の材質選別手法を示す平面図
【
図13】本実施形態の材質判定装置による第4の材質選別手法を示す平面図
【
図14】本実施形態の材質判定装置による第5の材質選別手法を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向はコンベア2の搬送路3の搬送方向である。y方向は、コンベア2の搬送路3の幅方向である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0012】
図1~
図3を参照して、実施形態に係る廃プラスチックの
選別装置の一例としての材質判定装置1の概略構成を説明する。
図1は、実施形態に係る廃プラスチックの材質判定装置1の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す廃プラスチックの材質判定装置1の側面図である。
図3は、
図1に示す廃プラスチックの材質判定装置1の平面図である。ここでは、材質判定対象の廃プラスチックが黒色廃プラスチックの場合であり、かつ、二種類の材質S1、S2(
図1~
図3では四角形と三角形のマークで示す)を混合する構成を例示して説明する。以下では、二種類の材質S1、S2の黒色廃プラスチック片を纏めて符号Sで表す場合がある。
【0013】
この黒色廃プラスチックの材質判定装置1は、黒色廃プラスチック片S1、S2を順次供給する供給部の一例としての振動フィーダー8と、振動フィーダー8により供給された黒色廃プラスチック片S1、S2を搬送する搬送部の一例としてのコンベア2とを主要部として備えている。振動フィーダー8には、例えば投入用ホッパなどを介して、破砕された黒色廃プラスチック片S1、S2が供給される。振動フィーダー8は、黒色廃プラスチック片S1、S2が載置される載置面が振動することによって、黒色廃プラスチック片S1、S2同士の重畳を防止しながらコンベア2に供給する。コンベア2は、その上面に搬送路3を有し、振動フィーダー8から遠ざかる向きに搬送路3上の黒色廃プラスチック片S1、S2を搬送する。
【0014】
また、材質判定装置1は、黒色廃プラスチック片S1、S2に赤外線を照射する照射部の一例としての照明10と、黒色廃プラスチック片S1、S2からの反射スペクトルを検出する反射スペクトル検出部の一例としての中赤外線カメラ4と、中赤外線カメラ4で検出した反射スペクトルに基づき黒色廃プラスチック片S1、S2の材質を同定する判別装置5と、を主要部として備えている。照明10は、例えばハロゲンタングステンランプ等の赤外線光源であるランプ10A(
図6参照)を有し、ランプ10Aから黒色廃プラスチック片S1、S2に向かって赤外線を照射する。また、照明10は、中赤外線カメラ4に黒色廃プラスチック片S1、S2からの反射光が入光するように設置され、中赤外線カメラ4に対してコンベア2の流れ方向の上部両側(又は上部片側)に設置されている。
【0015】
中赤外線カメラ4は、例えば
図1に示すように1台でコンベア2の幅方向の全域に亘って計測可能であり、幅方向に沿って複数個(例えば318個)の領域に区分して黒色廃プラスチック片S1、S2からの近赤外線の反射光を受光し、各領域ごとに反射光のスペクトルを計測できる。中赤外線カメラ4は、例えば、中赤外線の波長領域3μm以上の分光器付カメラで構成されている。中赤外線カメラ4は、例えば230Hzのスキャン周波数で計測を行い、1回のスキャンごとに318個のスペクトルデータを判別装置5に送信する。判別装置5は、中赤外線カメラ4から受信した318個のスペクトルデータに基づき、318個の各領域の材質判定結果を後述の噴射制御部6に出力する。
【0016】
さらに、材質判定装置1は、コンベア2の搬送方向の下流側にて、搬送方向と交差する方向に横又は斜めからエアーを噴射する噴射ノズル7が設けられている。噴射ノズル7は、コンベア2の幅方向に複数個(例えば318個)が並設されており、噴射制御部6によって個々のノズルの動作が制御される。噴射制御部6は、判別装置5から受信した材質判定結果に応じて、噴射ノズル7からエアーを噴射させ、または噴射させないことにより、例えば仕切り板9により区分される複数の領域(例えば回収用ホッパなど)に黒色廃プラスチック片S1、S2を仕分けて落下させて、所望の材質の廃プラスチックを収集する。つまり、本実施形態では、噴射制御部6と、噴射ノズル7と、仕切り板9とが、判別装置5による材質判定結果に基づき、コンベア2の搬送路3を流れる廃プラスチック片から所望の材質のものを収集する収集装置12(選別部)として機能する。
【0017】
材質判定装置1の動作について説明する。例えば投入用ホッパなどを介して、破砕された黒色廃プラスチック片S1、S2が振動フィーダー8に供給されると、振動フィーダー8は、供給された黒色廃プラスチック片S1、S2に振動を与えながら重ならないようにして下流に搬送して、コンベア2に供給する。
【0018】
コンベア2の上面の搬送路3に供給された黒色廃プラスチック片S1、S2は、x正方向側の搬送方向に搬送されながら、中赤外線カメラ4の撮像可能な位置にて、照明10から赤外光が照射される。中赤外線カメラ4は、照明10から発せられた赤外線の黒色廃プラスチック片S1、S2による反射光を受光し、受光結果(受光スペクトルのデータ)を判別装置5に出力する。
【0019】
判別装置5は、中赤外線カメラ4から入力された受光結果に基づき、黒色廃プラスチック片S1、S2の材質を同定する。なお、判別装置5による材質判定手法の詳細は
図4~
図9を参照して後述する。判別装置5は、材質同定結果を噴射制御部6に出力する。
【0020】
噴射制御部6は、複数配置されている噴射ノズル7のうち、材質に応じた噴射ノズル7を選択して、タイミングを計って制御信号を送信する。制御信号を受信した噴射ノズル7は、ノズル口を開口して、エアーを噴射する。判別装置5の判別結果により適切なタイミングで噴射ノズル7からエアーを噴射することにより、選別対象の材質とそうでないものとを分離して回収することができる。
【0021】
図2、
図3の例では、コンベア2上の黒色廃プラスチック片S1は、制御信号を受信したエアー噴射ノズル7からエアーを受けて、材質毎に設けられた収集装置12に吹き飛ばされ落下して回収される。また、コンベア2上の黒色廃プラスチック片S2は、噴射ノズル7からエアーを受けないので、黒色廃プラスチック片S1とは異なる収集装置12に回収される。このように噴射ノズル7の噴射及び停止によって、複数の材質の黒色廃プラスチック片を材質ごとに仕分けて回収することができる。
【0022】
図4~
図9を参照して、判別装置5による廃プラスチックの材質判別手法について説明する。
図4は、判別装置5の機能ブロック図である。
【0023】
図4に示すように、判別装置5は、前処理部51と、第1判定部52と、第2判定部53と、第3判定部54とを有する。
【0024】
前処理部51は、中赤外線カメラ4により検出された黒色廃プラスチック片S1、S2の反射スペクトルの補正や加工などの前処理を行う。前処理部51は、例えば、反射光が明るい条件で計測したスペクトルと、暗い条件で計測したスペクトルとを用いて、検出された反射スペクトルを補正する。「暗い条件」とは、上記の「明るい条件」よりも相対的に暗い条件を意味する。また、前処理部51は、補正された反射スペクトルから所定の周波数の範囲を切り出す加工を行う。
【0025】
第1判定部52は、中赤外線カメラ4により検出されたスペクトルが廃プラスチック片S1,S2及びコンベア2の搬送路3のどちらのものかを判定する。第1判定部52は、学習済みのOne Class SVM(Support Vector Machine)を用いて判定を行う。
【0026】
One Class SVMは、機械学習の分類アルゴリズムの一種であるSVMの一種である。SVMでは、各クラスのサポートベクター(学習データの中で最も他のクラスと近い位置にある)を基準として、それらのユークリッド距離が最大になるように識別境界を設定する。また、特徴が非線形の場合には、カーネルを用いてデータを特徴空間に写像する。カーネルを適切に選択することで、複雑なデータ配置でも識別境界を引くことが可能となる。
【0027】
One Class SVMでは、1種類の学習データに対してカーネルトリックと呼ばれる手法を用いて、高次元空間の特徴空間へデータを写像する。このとき、学習データは原点から遠くに配置されるように写像されるため、元の学習データと類似していないデータは原点の近くに集まる。この性質を用いて正常データ(コンベア2)と異常データ(物体(廃プラスチック片S1,S2))の区別を行う。
【0028】
第1判定部52にパターン識別能力に優れるOne Class SVMを用いることにより、反射スペクトルが廃プラスチック片S1,S2で反射されたものか、コンベア2の搬送路3で反射されたものかを高精度に識別できる。なお、第1判定部52には、One Class SVM以外の機械学習の教師有り学習の分類手法を適用してもよい。
【0029】
第2判定部53は、第1判定部52により廃プラスチック片と判定されたスペクトルから特徴データScore1、Score2(特徴量)を抽出する。第2判定部53は、学習済みのPLS(Partial Least Squares:部分的最小二乗法)を用いて判定を行う。
【0030】
PLSは、機械学習の教師あり学習の回帰アルゴリズムの一種であり、説明変数から計算された主成分のうち、少数の主成分のみと目的変数との間で回帰分析を行う。PLSでは、主成分は目的変数との共分散が大きくなるように計算される。本実施形態では、廃プラスチック片S1,S2で反射されたと判定された反射スペクトルの説明変数に基づき、PLSを用いて二種類の特徴データScore1、Score2を算出する。
【0031】
第2判定部53に、PLSを用いることにより、反射スペクトルの多次元の説明変数から、少数の特徴量に縮約することができるので、より区別しやすい適切な特徴データScore1、Score2を抽出できる。なお、第2判定部53には、PLS以外の機械学習の多変量解析手法を適用してもよい。
【0032】
第3判定部54は、第2判定部53により抽出された反射スペクトルの2つの特徴量Score1、Score2に基づき、このスペクトルに対応する廃プラスチック片S1、S2の材質を判別する。第3判定部54は、学習済みの決定木を用いて判定を行う。決定木は、教師あり学習の分類アルゴリズムの一種である。決定木は、目的変数を分類するルールを木構造で表したものであり、分類問題で頻繁に利用される。
【0033】
第3判定部54に、決定木を用いることにより、反射スペクトルの2つの特徴量Score1、Score2から、廃プラスチック片S1、S2の材質を精度良く判別できる。なお、第3判定部54には、決定木以外の機械学習の教師有り学習の分類手法を適用してもよい。
【0034】
判別装置5は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
図4に示した判別装置5の各機能は、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウェア(
選別プログラム)を読み込ませることにより、CPUの制御のもとで各種ハードウェアを動作させると共に、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る
選別プログラムをコンピュータ上で実行させることで、判別装置5は、
図4の前処理部51、第1判定部52、第2判定部53、第3判定部54として機能する。
【0035】
本実施形態の選別プログラムは、例えばコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、選別プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、選別プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリなどの持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0036】
判別装置5は、アナログ回路、デジタル回路又はアナログ・デジタル混合回路で構成された回路であってもよい。また、判別装置5の各機能の制御を行う制御回路を備えていてもよい。各回路の実装は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によるものであってもよい。
【0037】
同様に、噴射制御部6も、物理的には、CPU、RAMおよびROM、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができ、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることによりその機能が実現される。
【0038】
図5は、実施形態に係る廃ブラスチックの材質判別処理のフローチャートである。
図5に示すフローチャートの各処理は判別装置5により実行される。
【0039】
ステップS01では、前処理部51により、中赤外線カメラ4によるスペクトルSorg(n,w)が取得される。ここで、nはセンサ数(中赤外線カメラ4によりコンベア2の幅方向で区分されるスペクトル検出領域の数)であり、センサ数が318個の場合には各検出領域に対応する0~317の整数が用いられる。wはスペクトルの波長であり、本実施形態では、2700(nm)~5300(nm)の間で20(nm)刻みで合計131個の波長が設定され、各波長に対応する0~130の整数が用いられる。つまり、Sorg(n,w)は、コンベア2の幅方向に沿ったn番目のスペクトル検出領域における、波長wのスペクトルの強度の数値を表す。
【0040】
ステップS02では、前処理部51により、ステップS01で取得されたスペクトルSorg(n,w)が補正されて、補正済みのスペクトルScor(n,w)が算出される。この補正により、測定空間の水蒸気及び二酸化炭素の濃度変化、計測対象の黒色廃プラスチック片S1、S2の温度、照明10および中赤外線カメラ4の経年劣化、コンベア2上の位置、などの影響によるスペクトル強度の特性の差異を吸収できる。補正済みのスペクトルScor(n,w)は、例えば下記の(1)式により算出できる。
【0041】
【数2】
ここで、W
ref(n,w)は、反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルである。D
ref(n,w)は、反射光が上記の明るい条件よりも暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルである。これらの補正用スペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)は、例えば、材質判別処理を実行する前に中赤外線カメラ4の校正を行うときに抽出できる。
【0042】
図6は、補正用のスペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)の抽出手法を示す図である。
図6に示すように、コンベア2の搬送路3上の、中赤外線カメラ4の撮像領域に、補正用スペクトルを取得するための校正板11を設置して、中赤外線カメラ4による反射光のスペクトルの検出を行うことで、補正用のスペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)を取得できる。
【0043】
反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルWref(n,w)の場合、中赤外線領域の波長をすべて反射する校正板11(アルミ、ステンレス等)を置き、照明10を点灯した状態で、すべてのセンサ(n=0、1,2、・・・、317)について、全波長(w=0(2700)、2(2720)、・・・、130(5300))のデータを取得する。
【0044】
反射光が暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルDref(n,w)の場合、中赤外線領域の波長をすべて反射する校正板11(アルミ、ステンレス等)を置き、照明10を消灯した状態(もしくはカメラのシャッターを閉じた状態)で、すべてのセンサ(n=0、1,2、・・・、317)について、全波長(w=0(2700)、2(2720)、・・・、130(5300))のデータを取得する。
【0045】
校正板11は、例えば
図6に点線の矢印で示すように、補正用のスペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)を取得する際に配置される、コンベア2の搬送路3上の、中赤外線カメラ4の撮像領域の位置と、中赤外線カメラ4の撮像領域や照明10の照射範囲から外れる待機位置との間で移動可能に設置されるのが好ましい。言い換えると、校正板11は、中赤外線カメラ4の視野内の所定位置と、視野外の所定位置とに固定可能であり、両方の所定位置の間を移動可能であるのが好ましい。校正板11は、照明10からの光を受ける主面の表面粗さが大きくざらざらした面となるように加工するのが好ましい。これにより、反射光のハレーションの発生を抑制できる。
【0046】
また、補正用スペクトルの取得時には、コンベア2は停止していてもよい。この場合、校正板11の動作の何らかの不具合により、校正板11が中赤外線カメラ4の撮像領域の位置に正しく配置されないと、照明10の赤外線によりコンベア2の搬送路3上の赤外線が照射される部分の温度が上昇し、焼損や発火の虞がある。このため、校正板11が中赤外線カメラ4の視野内に固定されていない場合には、照明10から赤外線を照射しないようにインターロックを設けるのが好ましい。
【0047】
なお、
図6に示すように、照明10は、赤外線の光源であるランプ10A(シースヒーター、カーボンランプ、カンタルランプなど)と、ランプ10Aの熱を集める反射板10Bとを有する。ランプ10Aは、コンベア2の幅方向(y方向)に沿って延在するよう形成され、y軸に沿った軸心まわりの全方向に赤外線を放射するよう配置される。反射板10Bは、ランプ10Aを基準としてコンベア2の搬送路3とは反対側に配置され、ランプ10Aの軸心まわりの周方向に沿って湾曲して形成され、これによりランプ10Aからコンベア2とは反対側に放射された赤外線を集めてコンベア2側に反射して送ることができる。反射板10Bは、例えば、アルミニウム、ステンレス、またはアルミニウムメッキなどされた部材からなる。
【0048】
図5に戻り、ステップS03では、前処理部51により、補正済みのスペクトルS
cor(n,w)の中から、特徴のある波長領域が切り出される。
図7は、反射波スペクトルから特徴のある波長領域を切り出す処理の一例を示す図である。
図7の横軸はスペクトルの波長(nm)を示し、縦軸は各波長におけるスペクトルの強度を示す。
図7には、ABS、HIPS,PP、PEの各材質のスペクトルの一例が示されている。そして、
図7の例では、3250~3750(nm)及び4400~4600(nm)の波長領域のスペクトルが切り出されている。
【0049】
図5に戻り、ステップS04では、第1判定部52により、ステップS02にて補正され、かつ、ステップS03にて特徴のある波長領域が切り出されたスペクトルを用いて、各スペクトルがコンベア2のベルト(搬送路3)か、搬送路3上の物体(廃プラスチック)かが判定される。第1判定部52は、本実施形態では学習済みのOne Class SVMを利用して判定を行う。
【0050】
ステップS05では、第2判定部53により、ステップS4にて物体(廃プラスチック)と判定されたスペクトルから、学習済みのPLSを使用して2種類の特徴データScore1、Score2が抽出される。
図8は、特徴データの抽出例を示す図である。
図8の横軸は第1の特徴データ(Score1)を示し、縦軸は第2の特徴データ(Score2)を示す。
図8には、
図7に例示したABS、HIPS,PP、PEの4種類の材質の抽出例が示されている。
図8に示すように、2つの特徴データScore1、Score2による二次元空間上では、各材質ごとにプロットされる領域が区分可能であることがわかる。なお、特徴データの数は、2種類以外でもよい。
【0051】
図5に戻り、ステップS06では、第3判定部54により、ステップS5にて抽出された2種類の特徴データScore1、Score2に基づき、学習済みの決定木を使用して材質の判別が行われる。
図9は、決定木を用いた材質判別の例を示す図である。本実施形態では、最終的に4種類の材質(PE、PP,ABS、HIPS)を識別するため、
図9に示すように決定木は2階層の条件分岐を有する。第1階層では、条件分岐の関数f1(Score1、Score2)を用いて、特徴データScore1、Score2の組が2つのグループG1、G2に分けられる。一方のグループG1は、第2階層では、条件分岐の関数f2(Score1、Score2)を用いて、さらに2つのグループG11、G12に分けられる。他方のグループG2は、第2階層では、条件分岐の関数f3(Score1、Score2)を用いて、さらに2つのグループG21、G22に分けられる。この結果、特徴データScore1、Score2の組は、4つのグループG11、G12、G21、G22に分類され、各グループの材質がそれぞれPE,PP,ABS、HIPSと判定される。
【0052】
このように、本実施形態に係る廃プラスチックの材質判定装置1の判別装置5は、中赤外線カメラ4により検出された、照明10によりコンベア2の搬送路3に照射された光の反射光のスペクトルが、廃プラスチック片S及び搬送路3のどちらかのものかを判定する第1判定部52と、第1判定部52により廃プラスチック片Sと判定されたスペクトルから2種類の特徴データScore1、Score2を抽出する第2判定部53と、第2判定部53により抽出された特徴データScore1、Score2に基づき廃プラスチック片Sの材質S1、S2を判別する第3判定部54と、を備える。
【0053】
この構成により、反射スペクトルの入力情報から、第1判定部52の物体判別による黒色廃プラスチック片Sのスペクトルへの絞り込みと、第2判定部53の特徴量抽出によるスペクトル情報から特徴データへの次元圧縮と、第3判定部54の分類処理との三段階の判定処理とデータの絞り込みを経て、廃プラスチックの材質の出力情報を得ることができる。このため、本実施形態の廃プラスチックの材質判定装置1は、廃プラスチックの材質の判定を多種の条件を考慮して行うことができ、かつ、多段階に亘ってきめ細かく行うことが可能となり、廃プラスチックの材質の判定精度を向上できる。
【0054】
また、本実施形態に係る廃プラスチックの材質判定装置1の判別装置5は、中赤外線カメラ4により検出された反射スペクトルSorg(n,w)を、反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルWref(n,w)と、この明るい条件よりも相対的に暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルDref(n,w)とを用いて補正する前処理部51を備える。
【0055】
このように反射スペクトルSorg(n,w)を、例えば(1)式を用いて、補正用のスペクトルWref(n,w)、Dref(n,w)を用いて補正することにより、計測対象の黒色廃プラスチック片S1、S2の温度、中赤外線カメラ4の経年劣化、コンベア2上の位置、などの影響によるスペクトル強度の特性の差異を抑制できる。このため、補正済みのスペクトルScor(n,w)を用いて、第1判定部52、第2判定部53、第3判定部54の学習と判定とを行うことによって、廃プラスチックの材質の判定精度をさらに向上できる。
【0056】
また、前処理部51は、さらに、補正されたスペクトルScor(n,w)から所定の周波数の範囲を切り出す加工を行い、加工後のスペクトルを第1判定部52に出力する。
【0057】
この構成により、スペクトルから廃プラスチックの材質と関連が強い部分を抽出して第1判定部52、第2判定部53、第3判定部54の学習と判定とに利用することができるので、学習や判定を阻害するノイズの混入を低減でき、廃プラスチックの材質の判定精度をさらに向上できる。
【0058】
なお、本実施形態では、前処理部51は、反射スペクトルSorg(n,w)の補正処理と、所定の周波数の範囲を切り出す処理の2つの処理を行うが、2つの処理の一方のみを行う構成でもよい。
【0059】
また、本実施形態では、材質判定対象の廃プラスチックが黒色廃プラスチックSの場合を例示して説明したが、例えば赤色や青色等の他の色の廃プラスチックでもよい。また、色が異なる廃プラスチックを混在して用いてもよい。
【0060】
図10~
図14を参照して、本実施形態の材質判定装置1による所望の材質の廃プラスチックの選別手法について説明する。
図10は、本実施形態の材質判定装置1による第1の材質選別手法を示す平面図である。
図10には、
図3に示した材質判定装置1の平面図に対応し、簡略化した図が示されている。
図10以降では、選別手法の一例として、5種類の材質(1)、(2)、(3)、(4)、(5)が混合されたプラスチックミックスを選別対象とする例を説明する。
【0061】
図10の例では、コンベア2や収集装置12がコンベア2の幅方向(y方向)に区分されない一系統の搬送路が形成される構成を例示する。収集装置12では、噴射ノズル7の噴射と停止によって、廃プラスチックを
図2などに示した仕切り板9を境界として分別するため、選別対象を大きく2種類に分類する。このため、選別対象の5種類の材質が混在するプラスチックミックスを単一材質ごとにそれぞれ選別するためには、収集装置12のうち一方の収集装置12-1(例えば、噴射ノズル7からエアーを噴射された廃プラスチックが回収される装置)に一種類ずつ分別する処理を繰り返す必要がある。つまり、
図10に示すように、まずプラスチックミックスから材質(1)のみを分類して、収集装置12-1で回収する。このとき、他方の収集装置12-2に収集されている残りのプラスチックミックスは他の4種類の材質(2)~(5)が混在している。次に、4種類が混在する残りのプラスチックミックスを再度材質判定装置1に投入し、(2)~(5)のいずれか1つを分類する。この手順を4回繰り返すことで、5種類の材質(1)~(5)のそれぞれに分別することができる。
【0062】
図11は、本実施形態の材質判定装置1Aによる第2の材質選別手法を示す平面図である。
図11以降では、コンベア2の搬送路3は、幅方向において第1の系統と第2の系統の二系統に区分される。より詳細には、投入口(振動フィーダー8)、コンベア2、収集装置12のそれぞれが幅方向で2分される。なお、投入口8とコンベア2は、構成要素を2つにするのではなく、単一の要素に仕切り等をつけて系統間で混在しないようにする。例えば、コンベア2の搬送路3は、幅方向のほぼ中央の位置に搬送方向に沿って仕切り壁を設けることで2系統に区分できる。
【0063】
以下の説明では、第1の系統を添え字Aで表し、第2の系統を添え字Bで表す。また、
図10の収集装置12-1に相当する要素を「収集装置A1」及び「収集装置B1」と表記し、
図10の収集装置12-2に相当する要素を「収集装置A2」及び「収集装置B2」と表記する。
【0064】
図11の例では、第1の系統と第2の系統で、同一の材質の廃プラスチック片が収集される。例えば
図11に示すように、第1、第2の系統のそれぞれの投入口A、Bに5種類の材質(1)~(5)が混在するプラスチックミックスが供給され、各系統で材質判定が行われて、収集装置A1、B1でそれぞれ同一の材質(1)の廃プラスチック片が収集される。また、収集装置A2、B2では、残りの材質(2)~(5)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0065】
図12は、本実施形態の材質判定装置1Bによる第3の材質選別手法を示す平面図である。
図12の例では、第1の系統では、第1の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、残りの廃プラスチック片を第2の系統へ供給し、第2の系統では、残りの廃プラスチック片の中から第2の材質の廃プラスチック片を収集する。
図12の例では、複数種の混合素材を、第1の材質と、第2の材質と、その他の材質の3種類に分別できる。
【0066】
図12の例では、第1の系統の投入口Aに、5種類の材質(1)~(5)が混在するプラスチックミックスが供給され、第1の系統のコンベアAで材質判定が行われて、収集装置A1で材質(1)の廃プラスチック片が収集される。また、収集装置A2では、残りの材質(2)~(5)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0067】
次に、収集装置A2で収集された残りの材質(2)~(5)が混在する廃プラスチックは、搬送装置13により第2の系統の投入口Bまで搬送されて、投入口Bに供給される。第2の系統のコンベアBで材質判定が行われて、収集装置B1で材質(2)の廃プラスチック片が収集される。収集装置B2では、残りの材質(3)~(5)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0068】
図13は、本実施形態の材質判定装置1Cによる第4の材質選別手法を示す平面図である。
図13の例では、第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、収集した廃プラスチック片を第2の系統へ供給し、第2の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片の中から第1の材質の廃プラスチック片を収集する。
図13の例では、所定の一種の材質のプラスチック片を高純度に選別できる。
【0069】
図13の例では、第1の系統の投入口Aに、5種類の材質(1)~(5)が混在するプラスチックミックスが供給され、第1の系統のコンベアAで材質判定が行われて、収集装置A1で材質(1)と微量の(2)~(5)の廃プラスチック片が収集される。また、収集装置A2では、残りの材質(2)~(5)と微量の(1)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0070】
次に、収集装置A1で収集された材質(1)と微量の(2)~(5)が混在する廃プラスチックは、搬送装置13により第2の系統の投入口Bまで搬送されて、投入口Bに供給される。第2の系統のコンベアBで材質判定が行われて、収集装置B1で再度材質(1)が選別されて材質(1)の廃プラスチック片が収集される。この収集装置B1で収集された材質(1)は、収集装置A1で収集された素材より材質(1)の純度が高くなっている。収集装置B2では、残りの材質(1)~(5)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0071】
図14は、本実施形態の材質判定装置1Dによる第5の材質選別手法を示す平面図である。
図14の例では、第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外すると共に、除外した残りの廃プラスチック片を第2の系統へ供給し、第2の系統では、他の廃プラスチック片の中からさらに第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外して、第1の材質を含まない廃プラスチック片を収集する。
図14の例では、所定の一種の材質のプラスチック片を混在素材の中からより確実に選別できる。
【0072】
図14の例では、第1の系統の投入口Aに、5種類の材質(1)~(5)が混在するプラスチックミックスが供給され、第1の系統のコンベアAで材質判定が行われて、収集装置A1で材質(1)と微量の(2)~(5)の廃プラスチック片が収集される。また、収集装置A2では、残りの材質(2)~(5)と少量の(1)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0073】
次に、収集装置A2で収集された材質(2)~(5)と少量の(1)が混在する廃プラスチックは、搬送装置13により第2の系統の投入口Bまで搬送されて、投入口Bに供給される。第2の系統のコンベアBで材質判定が行われて、収集装置B1で再度材質(1)が選別されて材質(1)と微量の材質(2)~(5)が混在する廃プラスチック片が収集される。収集装置B2では、残りの材質(2)~(5)と微量の(1)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0074】
図15は、材質判定装置1の操作画面の一例を示す図である。
図15に示す操作画面は、例えば材質判定装置1の本体に設置される表示装置に表示される。
図15に示すように、操作画面には、選別するプラスチックの材質名が列挙され、上記の第1の系統(
図15では「1次」と、第2の系統(
図15では「2次」)ごとに噴射して選別する材質を個別に選択可能となっている。操作画面が表示される表示装置は例えばタッチパネルであり、「噴射選択」欄の「OFF」表示を押下するなどの操作によって「ON」表示に切り替えることによって、当該材質(
図15ではABS)の場合に噴射ノズル7がエアーを噴射して収集装置で分別するように設定できる。また、操作画面では、「投入原料面積比」欄を設け、材料判定処理の判定結果に応じて、素材に混合される各材質の割合を表示することもできる。
【0075】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0076】
1、1A、1B、1C、1D 廃プラスチックの材質判定装置(廃プラスチックの選別装置)
2 コンベア
3 搬送路
4 中赤外線カメラ(反射スペクトル検出部)
5 判別装置
51 前処理部
52 第1判定部
53 第2判定部
54 第3判定部
12、12-1、12-2、A1、A2、B1、B2 収集装置(選別部)
S1、S2 黒色廃プラスチック片