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特許7419097硬化性組成物、硬化物、近赤外線吸収フィルタ、硬化物の製造方法、近赤外線吸収フィルタの製造方法、硬化性組成物の低温保管方法、硬化性組成物の輸送方法、及び硬化性組成物の提供方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、近赤外線吸収フィルタ、硬化物の製造方法、近赤外線吸収フィルタの製造方法、硬化性組成物の低温保管方法、硬化性組成物の輸送方法、及び硬化性組成物の提供方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/06 20060101AFI20240115BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240115BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20240115BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240115BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240115BHJP
   B05C 9/14 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
C08L101/06
G02B5/22
C08K5/3417
B05D7/24 303A
B05D7/24 301R
B05D3/00 B
B05C9/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020025015
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130734
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 武広
(72)【発明者】
【氏名】井上 朋之
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118772(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150908(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/009015(WO,A1)
【文献】特開2012-021066(JP,A)
【文献】特開2016-045243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
G02B 5/20- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)とを含み、
前記近赤外線吸収染料(B)が、>N=で表される部分構造を有し、
前記溶剤(S)が、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa0.5)以上である溶剤(S1)を含み、
前記近赤外線吸収染料(B)の質量に対する前記溶剤(S1)の質量の比が、30以上であり、
前記近赤外線吸収染料(B)が、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物及びジイモニウム系化合物から選択される少なくとも一種であり、
前記熱硬化性材料(A)が、エポキシ基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基から選択される少なくとも一種の熱硬化性基を有する、硬化性組成物。
【請求項2】
前記溶剤(S1)が、化学構造中にエステル構造、アミド構造、スルホン酸エステル構造及びスルホキシド構造からなる群から選ばれる一種以上の構造を含む溶剤である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記溶剤(S1)とは異なる溶剤(S2)を含有し、
前記溶剤(S1)の含有量が、前記溶剤(S1)の質量と前記溶剤(S2)の質量との合計に対して15質量%以上である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記近赤外線吸収染料(B)の質量に対する前記溶剤(S1)の質量の比が、300以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物からなる、近赤外線吸収フィルタ。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化することを含む、硬化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化することを含む、近赤外線吸収フィルタの製造方法。
【請求項9】
化性組成物を、10℃以下で保管する、硬化性組成物の低温保管方法であって、
前記硬化性組成物は、熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)とを含み、
前記近赤外線吸収染料(B)が、>N =で表される部分構造を有し、
前記溶剤(S)が、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa 0.5 )以上である溶剤(S1)を含み、
前記近赤外線吸収染料(B)の質量に対する前記溶剤(S1)の質量の比が、30以上であり、
前記熱硬化性材料(A)が、エポキシ基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基から選択される少なくとも一種の熱硬化性基を有する、硬化性組成物の低温保管方法
【請求項10】
化性組成物を、10℃以下で輸送機により輸送する、硬化性組成物の輸送方法であって、
前記硬化性組成物は、熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)とを含み、
前記近赤外線吸収染料(B)が、>N =で表される部分構造を有し、
前記溶剤(S)が、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa 0.5 )以上である溶剤(S1)を含み、
前記近赤外線吸収染料(B)の質量に対する前記溶剤(S1)の質量の比が、30以上であり、
前記熱硬化性材料(A)が、エポキシ基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基から選択される少なくとも一種の熱硬化性基を有する、硬化性組成物の輸送方法
【請求項11】
硬化性組成物を硬化することを含む、硬化物の製造方法を実行するプロセスライン、又は、硬化性組成物を硬化することを含む、近赤外線吸収フィルタの製造方法を実行するプロセスラインに対し、
硬化性組成物を、10℃以下で保管する、硬化性組成物の低温保管方法によって保管された硬化性組成物を提供する、硬化性組成物の提供方法であって、
前記硬化性組成物は、熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)とを含み、
前記近赤外線吸収染料(B)が、>N =で表される部分構造を有し、
前記溶剤(S)が、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa 0.5 )以上である溶剤(S1)を含み、
前記近赤外線吸収染料(B)の質量に対する前記溶剤(S1)の質量の比が、30以上であり、
前記熱硬化性材料(A)が、エポキシ基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基から選択される少なくとも一種の熱硬化性基を有する、硬化性組成物の提供方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収フィルタを製造することができる硬化性組成物、硬化物、近赤外線吸収フィルタ、硬化物の製造方法、近赤外線吸収フィルタの製造方法、硬化性組成物の低温保管方法、硬化性組成物の輸送方法、及び硬化性組成物の提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光は透過するが近赤外光をカットする光学フィルタ(近赤外線吸収フィルタ)が、種々の用途に使用されている。
例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置には、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子が使用され、これら固体撮像素子には、近赤外線をカットして視感度補正を行うための近赤外線吸収フィルタが使用されている。
【0003】
近赤外線吸収フィルタは、例えば、近赤外線吸収剤及び溶剤を含む組成物を用いて製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-043185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、素子の小型化が求められている。近赤外線吸収フィルタを製造するための組成物における近赤外線吸収剤の含有量を多くすることで、近赤外線吸収フィルタを薄くすることができ、素子の小型化に貢献できる。このため、近赤外線吸収フィルタを製造するための組成物には、近赤外線吸収剤の溶剤溶解性が高いことが望まれる。
【0006】
また、近赤外線吸収フィルタを製造するための組成物は、組成物の製造場所や近赤外線吸収フィルタの製造場所等で保管された後に使用されることや、組成物の製造場所から近赤外線吸収フィルタの製造場所まで移送されることが多い。近赤外線吸収フィルタを製造するための組成物が熱硬化性材料を含むと、組成物を加熱して硬化することにより近赤外線吸収フィルタを製造することができるが、熱硬化性材料を含む組成物は、保管や移送時に熱硬化性材料が反応して変質してしまう場合がある。熱硬化性材料の反応を防ぐために、熱硬化性材料を含む組成物の保管や移送を低温下で行うことが考えられるが、保管や移送を低温下で行うと、析出物が生じてしまう場合があるという問題がある。したがって、近赤外線吸収フィルタを製造するための組成物には、低温安定性に優れること、すなわち、低温下で保管や移送をしても析出物が生じ難いことも望まれる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、近赤外線吸収剤の溶剤溶解性及び低温安定性に優れた硬化性組成物と、当該硬化性組成物を用いた硬化物及び近赤外線吸収フィルタと、当該硬化物の製造方法及び当該近赤外線吸収フィルタの製造方法と、前述の硬化性組成物の低温保管方法及び前述の硬化性組成物の輸送方法と、前述の硬化性組成物の提供方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)とを含み、近赤外線吸収染料(B)が、>N=で表される部分構造を有し、溶剤(S)が、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa0.5)以上である溶剤(S1)を含み、近赤外線吸収染料(B)の質量に対する溶剤(S1)の質量の比が、30以上である組成物によって上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)とを含み、近赤外線吸収染料(B)が、>N=で表される部分構造を有し、溶剤(S)が、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa0.5)以上である溶剤(S1)を含み、近赤外線吸収染料(B)の質量に対する溶剤(S1)の質量の比が、30以上である、硬化性組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物の硬化物である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物の硬化物からなる、近赤外線吸収フィルタである。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物を硬化することを含む、硬化物の製造方法である。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物を硬化することを含む、近赤外線吸収フィルタの製造方法である。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物を、10℃以下で保管する、硬化性組成物の低温保管方法である。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物を、10℃以下で輸送機により輸送する、硬化性組成物の輸送方法である。
【0016】
本発明の第8の態様は、第4の態様にかかる硬化物の製造方法を実行するプロセスライン、又は、第5の態様にかかる近赤外線吸収フィルタの製造方法を実行するプロセスラインに対し、第6の態様にかかる硬化性組成物の低温保管方法によって保管された硬化性組成物を提供する、硬化性組成物の提供方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、近赤外線吸収フィルタを製造することができる、近赤外線吸収剤の溶剤溶解性及び低温安定性に優れた硬化性組成物と、当該硬化性組成物を用いた硬化物及び近赤外線吸収フィルタと、当該硬化物の製造方法及び当該近赤外線吸収フィルタの製造方法と、前述の硬化性組成物の低温保管方法及び前述の硬化性組成物の輸送方法と、前述の硬化性組成物の提供方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)とを含む。近赤外線吸収染料(B)は、>N=で表される部分構造を有し、溶剤(S)は、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa0.5)以上である溶剤(S1)を含む。近赤外線吸収染料(B)の質量に対する溶剤(S1)の質量の比は、30以上である。
【0019】
この硬化性組成物は、特定構造の近赤外線吸収剤(B)と特定の溶剤(S1)とを特定の質量比で有するため、近赤外線吸収剤(B)の溶剤(S1)溶解性に優れる。このため、硬化性組成物における近赤外線吸収剤(B)の濃度を高くすることができる。よって、硬化性組成物を用いて形成される近赤外線吸収フィルタ等の硬化物を、所望の近赤外線吸収特性を有しつつ薄くすることができ、近赤外線吸収フィルタ等の硬化物を具備する素子を小型化することができる。
また、この硬化性組成物は、低温安定性に優れる、すなわち低温下で保管や移送しても析出物が生じ難い。例えば、硬化性組成物を10℃以下で保管や移送しても、析出物が生じない。
硬化性組成物の必須又は任意の成分と、製造方法とについて説明する。
【0020】
<熱硬化性材料(A)>
熱硬化性材料(A)は、硬化性組成物を用いて形成される近赤外線吸収フィルタ等の硬化物の基材となる成分である。
熱硬化性材料(A)は、加熱により硬化可能な成分であれば特に制限されず、例えば、低分子化合物でも、樹脂等の高分子化合物でもよい。熱硬化性材料(A)が熱硬化性樹脂の場合、質量平均分子量は、10,000以上300,000以下が好ましく、20,000以上200,000以下がより好ましい。
熱硬化性材料(A)は、その硬化物が、可視光を透過することが好ましい。可視光とは、例えば波長380nm以上780nm未満の範囲の光である。
【0021】
熱硬化性材料(A)としては、エポキシ基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基等の熱硬化性基を有する化合物が挙げられる。具体例としては、イソシアネート基やブロックイソシアネート基を有するイソシアネート化合物及びエポキシ基を有するエポキシ化合物等が挙げられる。可視光透過性(透明性)の観点から、エポキシ基、イソシアネート基及びブロックイソシアネート基等の熱硬化性基を有する(メタ)アクリル樹脂が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味する。
これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
良好な熱硬化性と、低温での安定性と、硬化物の良好な可視光透過性とを同時に満たす硬化性組成物を得やすいことから、熱硬化性材料は、ブロックイソシアネート基を有する(メタ)アクリル樹脂が好ましく、下記式(a1)で表される構造単位、下記式(a2)で表される構造単位、及び下記式(a3)で表される構造単位、を含む(メタ)アクリル樹脂(以下樹脂Aとも記載する)がより好ましい。
【化1】
(式(a1)、(a2)、及び(a3)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、Rは、単結合、又は炭素原子数1以上5以下のアルキレン基であり、Rは、ブロックイソシアネート基であり、Rは、2価の炭化水素基であり、Rは、単結合、又は2価の連結基であり、Rは、2以上のベンゼン環を含む炭化水素基である。)
【0023】
以下、式(a1)で表される構造単位について「構造単位A1」とも記し、式(a2)で表される構造単位について「構造単位A2」とも記し、式(a3)で表される構造単位について「構造単位A3」とも記す。
【0024】
上記式(a1)で表される構造単位A1は、Rとしてブロックイソシアネート基を有する。ブロックイソシアネート基とは、イソシアネート基が、熱解離性の保護基によりブロックされた基を意味する。
このため、構造単位A1を有する上記の樹脂を加熱した場合、ブロックイソシアネート基中の保護基が脱離し、活性なイソシアネート基が生成する。
【0025】
加熱により生成するイソシアネート基は、活性水素を有する官能基と容易に反応する。ここで、上記式(a2)で表される構造単位A2は、活性水素基を有する官能基である水酸基を有する。このため、上記の樹脂を加熱すると、構造単位A1において活性なイソシアネート基が生成する。このイソシアネート基(-NCO)と、構造単位A2中の水酸基とが反応することで、ウレタン結合(-NH-CO-O-)による架橋が進行し、硬化物が形成される。
【0026】
さらに、上記式(a3)で表される構造単位は、Rとして、2以上のベンゼン環を含む炭化水素基を有する。ここで、2以上のベンゼン環を含む炭化水素基は、硬化物の透明性や、良好な機械的特性及び耐熱性に寄与する。
従って、上記の樹脂を加熱する場合、樹脂の硬化が良好に進行する。
【0027】
以下、樹脂に含まれる必須又は任意の構造単位、樹脂の製造方法等について説明する。
【0028】
<構造単位A1>
樹脂Aは、前述の通り、ブロックイソシアネート基を有する構造単位A1を含む。樹脂Aは、2種以上の構造単位A1を組み合わせて含んでいてもよい。
【0029】
構造単位A1は、前述の式(a1)で表される構造単位である。式(a1)において、Rは水素原子、又はメチル基である。
【0030】
式(a1)中、Rは、単結合、又は炭素原子数1以上5以下のアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状であるのが好ましい。Rとしてのアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、及びペンタン-1,5-ジイル基等が挙げられる。
これらの基の中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、及びペンタン-1,5-ジイル基が好ましく、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、及びプロパン-1,3-ジイル基がより好ましく、エタン-1,2-ジイル基が特に好ましい。
【0031】
式(a1)中、Rは、ブロックイソシアネート基である。前述の通り、ブロックイソシアネート基とは、イソシアネート基が、熱解離性の保護基によりブロックされた基を意味する。
かかる熱解離性の保護基は、イソシアネート基と、保護基を与えるブロック剤とを反応させることにより形成される。
【0032】
かかるブロック剤としては、例えば、アルコール系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物及びフェノール系化合物以外の水酸基含有化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、ピロール系化合物、メルカプタン系化合物、及び重亜硫酸塩等が挙げられる。
【0033】
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-オクタノール、2-オクタノール、シクロヘキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、2-(4-エトキシブトキシ)エタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0034】
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2-エチルフェノール、3-エチルフェノール、4-エチルフェノール、2-n-プロピルフェノール、3-n-プロピルフェノール、4-n-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-n-ブチルフェノール、3-n-ブチルフェノール、4-n-ブチルフェノール、2-sec-ブチルフェノール、3-sec-ブチルフェノール、4-sec-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-n-ヘキシルフェノール、3-n-ヘキシルフェノール、4-n-ヘキシルフェノール、2-(2-エチルヘキシル)フェノール、3-(2-エチルヘキシル)フェノール、4-(2-エチルヘキシル)フェノール、2-n-オクチルフェノール、3-n-オクチルフェノール、4-n-オクチルフェノール、2-n-ノニルフェノール、3-n-ノニルフェノール、4-n-ノニルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3-ジn-プロピルフェノール、2,4-ジn-プロピルフェノール、2,5-ジn-プロピルフェノール、2,6-ジn-プロピルフェノール、3,4-ジn-プロピルフェノール、3,5-ジn-プロピルフェノール、2,3-ジイソプロピルフェノール、2,4-ジイソプロピルフェノール、2,5-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、3,4-ジイソプロピルフェノール、3,5-ジイソプロピルフェノール、3-イソプロピル-2-メチルフェノール、4-イソプロピル-2-メチルフェノール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、6-イソプロピル-2-メチルフェノール、2-イソプロピル-3-メチルフェノール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、5-イソプロピル-3-メチルフェノール、6-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチルフェノール、3-イソプロピル-4-メチルフェノール、5-イソプロピル-4-メチルフェノール、6-イソプロピル-4-メチルフェノール、2,3-ジn-ブチルフェノール、2,4-ジn-ブチルフェノール、2,5-ジn-ブチルフェノール、2,6-ジn-ブチルフェノール、3,4-ジn-ブチルフェノール、3,5-ジn-ブチルフェノール、2,3-ジsec-ブチルフェノール、2,4-ジsec-ブチルフェノール、2,5-ジsec-ブチルフェノール、2,6-ジsec-ブチルフェノール、3,4-ジsec-ブチルフェノール、3,5-ジsec-ブチルフェノール、2,3-ジtert-ブチルフェノール、2,4-ジtert-ブチルフェノール、2,5-ジtert-ブチルフェノール、2,6-ジtert-ブチルフェノール、3,4ジtert-ブチルフェノール、3,5-ジtert-ブチルフェノール、2,3-ジn-オクチルフェノール、2,4-ジn-オクチルフェノール、2,5-ジn-オクチルフェノール、2,6-ジn-オクチルフェノール、3,4-ジn-オクチルフェノール、3,5-ジn-オクチルフェノール、2,3-ジ2-エチルヘキシルフェノール、2,4-ジ2-エチルヘキシルフェノール、2,5-ジ2-エチルヘキシルフェノール、2,6-ジ2-エチルヘキシルフェノール、3,4-ジ2-エチルヘキシルフェノール、3,5-ジ2-エチルヘキシルフェノール、2,3-ジn-ノニルフェノール、2,4-ジn-ノニルフェノール、2,5-ジn-ノニルフェノール、2,6-ジn-ノニルフェノール、3,4-ジn-ノニルフェノール、3,5-ジn-ノニルフェノール、2-ニトロフェノール、3-ニトロフェノール、4-ニトロフェノール、2-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、4-ブロモフェノール2-クロロフェノール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール、2-フルオロフェノール、3-フルオロフェノール、4-フルオロフェノール、スチレン化フェノール(α-メチルベンジル基によるフェノールのモノ、ジ、又はトリ置換体)、サリチル酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン、2-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン、及び2-クロロ-3-ピリジノール等が挙げられる。
【0035】
アルコール系化合物及びフェノール系化合物以外の水酸基含有化合物としては、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、及びトリフェニルシラノールが挙げられる。
【0036】
活性メチレン系化合物としては、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルsec-ブチル、マロン酸エチルsec-ブチル、マロン酸メチルtert-ブチル、マロン酸エチルtert-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸tert-ブチルフェニル、及びイソプロピリデンマロネート等)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸tert-ブチル、アセト酢酸ベンジル、及びアセト酢酸フェニル等)、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、及びシアノ酢酸エチル等が挙げられる。
【0037】
アミン系化合物としては、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンアミン、2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、tert-ブチルメチルアミン、tert-ブチルエチルアミン、tert-ブチルn-プロピルアミン、tert-ブチルn-ブチルアミン、tert-ブチルベンジルアミン、tert-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、及び6-アミノカプロン酸等が挙げられる。
【0038】
イミン系化合物としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、及びグアニジン等が挙げられる。
【0039】
オキシム系化合物としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルtert-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、及び2-ヘプタノンオキシム等が挙げられる。
【0040】
カルバミン酸系化合物としては、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニル等が挙げられる。
【0041】
尿素系化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、及びエチレン尿素等が挙げられる。
【0042】
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、例えば、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、及びラウロラクタム等が挙げられる。
【0043】
酸イミド系化合物としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、及びフタルイミド等が挙げられる。
【0044】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,4-トリアゾール、及びベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0045】
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジtert-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、及び3-メチル-5-フェニルピラゾール等が挙げられる。
【0046】
ピロール系化合物としては、ピロール、2-メチルピロール、3-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール等が挙げられる。
【0047】
メルカプタン系化合物としては、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、チオフェノール、及びピリジン-2-チオール等が挙げられる。
【0048】
重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
【0049】
以上説明した式(a1)で表される構造単位A1の中では、樹脂の調製が容易であることや、硬化性が良好であること等から、下記式(a1-1)、式(a1-2)、又は式(a1-3)で表される構造単位が好ましい。
【化2】
(式(a1-1)、式(a1-2)及び式(a1-3)中、R、及びRは、前記式(a1)と同様であり、Rは、それぞれ独立に炭素原子数1以上12以下の有機基であり、Rは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1以上6以下の有機基であり、Rは、それぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の有機基であり、aは、0以上3以下の整数である。)
【0050】
式(a1-1)中、Rとしての有機基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数3以上12以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上12以下のアルコキシアルキル基、フェニル基、炭素原子数7以上12以下のフェニルアルキル基、炭素原子数2以上12以下のアシル基等が挙げられる。これらの基の中では、アルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、又はエチル基が特に好ましい。
アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
式(a1-1)中、二つのRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
式(a1-2)中、Rは、ピラゾリル基上の置換基であって、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1以上6以下の有機基である。
の好適な例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基等が挙げられる。
としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(a1-2)中、aは0以上3以下の整数であり、0以上2以下の整数が好ましい。
【0052】
式(a1-3)中、Rとしての有機基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基、炭素原子数3以上12以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上12以下のアルコキシアルキル基、フェニル基、炭素原子数7以上12以下のフェニルアルキル基等が挙げられる。
式(a1-3)中、二つのRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
構造単位A1は、下記式(a-I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを、他の構造単位を与える単量体と共重合させることにより、樹脂中に組み入れられる。
式(a-I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの中では、下記式(a-I-1)、式(a-I-2)、又は式(a-I-3)で表される(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、下記式(a-I-1a)、式(a-I-2a)、又は式(a-I-3a)で表される(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
構造単位A1は、樹脂中に、ブロック状に存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。加熱によって構造単位A1中で生じるイソシアネート基と、水酸基とが良好に反応しやすい点から、構造単位A1は、樹脂中にランダムに存在するのが好ましい。
【化3】
【0054】
構造単位A1を与える(メタ)アクリル酸エステルの好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化4】
【0055】
これらの中では、樹脂の製造が容易である点や、硬化性が良好である樹脂を得やすい点等から、下記の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【化5】
【0056】
樹脂Aにおける構造単位A1の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂A中の構造単位A1の含有量は、硬化性の点から、樹脂Aの全構造単位に対して、15モル%以上が好ましく、15モル%以上45モル%以下がより好ましい。良好な硬化性の点からは、樹脂A中の構造単位A1の含有量は、樹脂Aの全構造単位に対して、20モル%以上40モル%以下が好ましく、25モル%以上35モル%以下がより好ましい。
【0057】
<構造単位A2>
構造単位A2は、前述の式(a2)で表される構造単位である。式(a2)において、Rは水素原子、又はメチル基である。
【0058】
式(a2)中、Rは2価の炭化水素基である。Rとしての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であっても、脂肪族部分と芳香族部分とを有する炭化水素基であってもよい。樹脂の硬化性の点からは、Rは2価の脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。Rが2価の脂肪族炭化水素基である場合、脂肪族炭化水基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらを組み合わせた構造であってもよく、直鎖状が好ましい。
【0059】
としての炭化水素基の炭素原子数は特に限定されない。炭化水素基が脂肪族炭化水素基である場合、炭素原子数は1以上20以下が好ましく、2以上10以下がより好ましく、2以上6以下が特に好ましい。炭化水素基が、芳香族基であるか、脂肪族部分と芳香族部分とを有する炭化水素基である場合、炭素原子数は6以上20以下が好ましく、6以上12以下がより好ましい。
【0060】
2価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1.1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、及びイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。
これらの中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、及びイコサン-1,20-ジイル基が好ましく、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基がより好ましく、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、及びヘキサン-1,6-ジイル基がより好ましい。
【0061】
2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基等が挙げられ、p-フェニレン基、m-フェニレン基が好ましく、p-フェニレン基がより好ましい。
【0062】
構造単位A2は、下記式(a-II)で表される(メタ)アクリル酸エステルを、他の構造単位を与える単量体と共重合させることにより、樹脂中に組み入れられる。
構造単位A2は、樹脂中に、ブロック状に存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。加熱によって構造単位A1中で生じるイソシアネート基と、水酸基とが良好に反応しやすい点から、構造単位A2は、樹脂中にランダムに存在するのが好ましい。
【化6】
(式(a-II)中、R及びRは、式(a2)と同様である。)
【0063】
構造単位A2を与える(メタ)アクリル酸エステルの好適な具体例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシフェニルアクリレート、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、3-ヒドロキシフェニルアクリレート、及び3-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられる。
これらの中では、2-ヒドロキシエチルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0064】
樹脂Aにおける構造単位A2の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
樹脂Aにおける構造単位A2の量は、樹脂Aの全構造単位に対して、15モル%以上が好ましく、15モル%以上45モル%以下がより好ましい。良好な硬化性の点からは、樹脂A中の構造単位A2の含有量は、樹脂Aの全構造単位に対して、20モル%以上40モル%以下が好ましく、25モル%以上35モル%以下がより好ましい。
また、樹脂A中、構造単位A1のモル数と、構造単位A2のモル数とは、構造単位A1のモル数/構造単位A2のモル数として、80/100以上100/80以下が好ましく、90/100以上100/90以下がより好ましく、95/100以上100/95以下が特に好ましい。樹脂A中、構造単位A1のモル数と、構造単位A2のモル数とは、等モルであるのが最も好ましい。
【0065】
<構造単位A3>
構造単位A3は、前述の式(a3)で表される構造単位である。式(a3)において、Rは水素原子、又はメチル基である。
【0066】
式(a3)中、Rは、2以上のベンゼン環を含む有機基である。2以上のベンゼン環を含む有機基を、Rとして有する構造単位A3を含むことにより、良好な透明性を示す硬化物を形成できる。
に含まれる2以上のベンゼン環は、互いに縮合してもよく、単結合、又は連結基により結合されていてもよい。
の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rの炭素原子数は、10以上50以下が好ましく、10以上30以下がより好ましい。
【0067】
としての、2以上のベンゼン環を含む有機基としては、下記の多環式化合物、又は下記の多環式化合物に置換基が導入された化合物から、1つの水素原子を除いた基が挙げられる。下記式中Xは、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-CO-NH-、-CO-NH-CO-、-NH-CO-NH-、-CO-O-、-CO-O-CO-、-O-CO-O-、-SO、-NH-、-S-S-、-CH-、-CH(CH)-、又は-C(CH-である。
【化7】
【0068】
上記の多環式化合物に導入されうる置換基としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
上記の多環式化合物に置換基が導入される場合、置換基の数は特に限定されないが、4以下が好ましく、1又は2が好ましい。
【0069】
以上説明したRとしては、下記式で表される基が好ましい。
下記式中、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、R12は、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、b及びcは、それぞれ独立に0以上4以下の整数であり、dは、0以上7以下の整数である。
【化8】
【0070】
これらの基の中では、透明性の高い硬化物を形成しやすいことと、樹脂中への導入が容易であることとから、下記式で表される基が好ましく、下記式において2つのbがともに0であるビフェニリル基がより好ましい。
【化9】
【0071】
以上説明した基Rは、Rを介して、樹脂の主鎖に結合する。Rは、単結合又は2価の連結基である。
2価の連結基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。2価の連結基の好適な例としては、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-CO-NH-、-CO-NH-CO-、-NH-CO-NH-、-CO-O-、-CO-O-CO-、-O-CO-O-、-SO、-NH-、及び-S-S-からなる群より選択される2価基と、前述の群から選択される2以上の2価基を組み合わせた基とが挙げられる。
の中でも、単結合、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基、及び-CO-O-が好ましく、単結合、及び-CO-O-がより好ましく、-CO-O-*(*は、式(a3)中、Rと結合する結合手の末端を表す。)が特に好ましい。なお、Rがアルキレン基である場合、アルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0072】
以上より、構造単位A3としては、下記式(a3-1)で表される構造単位が好ましい。式(a3-1)中、R、R10、及びbは、それぞれ前述の通りである。
【化10】
【0073】
構造単位A3は、下記式(a-III)で表される不飽和化合物を、他の構造単位を与える単量体と共重合させることにより、樹脂中に組み入れられる。
構造単位A3は、樹脂中に、ブロック状に存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。構造単位A1と、構造単位A2とを、樹脂中に、均一に分布させやすいことから、構造単位A3は、樹脂中にランダムに存在するのが好ましい。
【0074】
式(a-III)で表される不飽和化合物としては、下記式(a-III-1)で表される(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、下記式(a-III-1a)で表される(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。式(a-III)、式(a-III-1)、及び式(a-III-1a)において、R、R、R、R10、及びbはそれぞれ前述の通りである。
【化11】
【0075】
構造単位A3を与える不飽和化合物の好適な具体例としては、アクリル酸(1,1’-ビフェニル-4-イル)エステル、メタクリル酸(1,1’-ビフェニル-4-イル)エステル、アクリル酸(1,1’-ビフェニル-3-イル)エステル、メタクリル酸(1,1’-ビフェニル-3-イル)エステル、4-ビニル-1,1’-ビフェニル、及び3-ビニル-1,1’-ビフェニルが挙げられる。
これらの中では、アクリル酸(1,1’-ビフェニル-4-イル)エステル、及びメタクリル酸(1,1’-ビフェニル-4-イル)エステルが好ましい。
【0076】
樹脂Aにおける構造単位A3の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂A中の構造単位A3の量は、良好な硬化性と硬化物の硬化性とから、樹脂Aの全構造単位中30モル%以上50モル%以下が好ましく、35モル%以上50モル%以下がより好ましく、40モル%以上50モル%以下が特に好ましい。
【0077】
<その他の構造単位>
樹脂Aは、本発明の目的を阻害しない範囲において、前述の構造単位A1、構造単位A2、及び構造単位A3以外にその他構造単位を含んでいてもよい。
【0078】
その他の構造単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位が挙げられる。構成単位を含むものを用いることができる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、又はメタクリル酸である。(メタ)アクリル酸エステルは、下記式(a-IV)で表されるものであって、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。
【0079】
【化12】
【0080】
上記式(a-IV)中、Ra1は、水素原子又はメチル基である。Ra11は、構造単位A1中のブロックイソシアネート基から生成したイソシアネート基と反応しうる、活性水素を含む基を有さない有機基である。
活性水素を含む基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0081】
a11の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、シリル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールチオアルキル基、N,N-ジ置換アミノ基(-NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0082】
a11としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基が好ましく、これらの基は、ハロゲン原子、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0083】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。
【0084】
a11が、脂環式基、又は脂環式基を含む基である場合、好適な脂環式基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等の多環の脂環式基が挙げられる。
【0085】
その他の構造単位を与える、上記の(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらのモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0086】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0087】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0088】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0089】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0090】
樹脂Aが、前述の構造単位A1、構造単位A2、及び構造単位A3以外にその他構造単位を含む場合、樹脂A中の構造単位A1、構造単位A2、及び構造単位A3の総量は、樹脂A中の全構造単位に対して80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が特に好ましい。
透明性の高い硬化物を形成しやすいことと、良好な硬化性とを両立させやすい点から、樹脂Aは、その他の構造単位を含まず、構造単位A1、構造単位A2、及び構造単位A3のみからなるが好ましい。
【0091】
以上説明した樹脂Aの製造方法は特に限定されない。一般的には、前述の構造単位A1、構造単位A2、及び構造単位A3を与える単量体と、必要に応じてその他の構造単位を与える単量体とを、それぞれ所定量混合した後、適当な溶剤中にて、重合開始剤の存在下に、例えば、50℃以上120℃以下の温度範囲において重合を行うことにより、樹脂が得られる。樹脂は、有機溶剤中の溶液として得られることが多いが、溶液として得られた樹脂を、そのまま後述する硬化性組成物に配合したり、そのまま硬化性組成物として使用したりすることができる。
【0092】
上記の方法により得られる樹脂Aの質量平均分子量は、30000以上が好ましく、35000以上100000以下がより好ましく、40000以上80000以下が特に好ましい。質量平均分子量は、GPCにより測定される、ポリスチレン換算の分子量である。樹脂の質量平均分子量がある程度大きいことにより、耐溶剤性や、耐熱分解性に優れる硬化物を形成しやすい。
【0093】
上記のように得られた樹脂Aの溶液を、ヘキサン、ジエチルエーテル、メタノール、水等の貧溶媒と混合して、樹脂Aを沈殿させ、沈殿した樹脂Aを回収して用いてもよい。沈殿した樹脂Aは、ろ過後に洗浄され、次いで、常圧、又は減圧下に、構造単位A1中のブロックイソシアネート基が分解しない程度の温度で乾燥されるのが好ましい。このようにして、粉末状である固体の樹脂を回収できる。粉末状の樹脂は、そのまま使用されてもよく、硬化性組成物に配合されて使用されてもよい。
【0094】
硬化性組成物における熱硬化性材料(A)の濃度は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0095】
<近赤外線吸収染料(B)>
近赤外線吸収染料(B)は、近赤外線(波長780nm以上1200nm以下)の領域内に吸収を有する染料であり、>N=で表される部分構造を有する。
近赤外線吸収染料(B)の具体例としては、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、及びジイモニウム系化合物等が挙げられる。これらの中では、近赤外線吸収染料(B)としての性能と、硬化性組成物における溶解性とが良好であることから、シアニン系か化合物が好ましい。
【0096】
シアニン系化合物としては、下記式(b1-1)で表される化合物が挙げられる。
【化13】
(式(b1-1)中、
は下記式(b1-2)又は(b1-3)で表される基であり、
は下記式(b1-4)又は(b1-5)で表される基であり、
21~R24はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上20以下のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上20以下のアリール基であり、
1又は複数のR21と、1又は複数のR22とからなる群より選択される任意の2つの基は、互いに結合して環を形成してもよく、
n1は、1以上5以下の整数であり、
X1は、1価のアニオンである。)
【化14】
(式(b1-2)及び(b1-3)中、
31~R38はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上20以下のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上20以下のアリール基であり、
41~R46はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上20以下のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上20以下のアリール基である。)
【化15】
(式(b1-4)及び(b1-5)中、R31~R38及びR41~R46は、(b1-2)及び(b1-3)におけるR31~R38及びR41~R46と同じである。)
【0097】
式(b1-1)中、R21~R24としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
21~R24としての炭素原子数1以上20以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
21~R24としての炭素原子数6以上20以下のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
X1としては、BF 、PF 、ClO 、I等が挙げられる。
式(b1-1)において、n1が2以上5以下の整数の場合は、n1個の括弧内の構造は同一でも異なっていてもよい。
【0098】
式(b1-2)及び式(b1-3)中、R31~R38やR41~R46としての、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上20以下のアルキル基及び置換基を有していてもよい炭素原子数6以上20以下のアリール基としては、式(b1-1)におけるR21~R24と同様である。
【0099】
近赤外線吸収染料(B)の質量に対する溶剤(S1)の質量の比([溶剤(S1)の質量]/[近赤外線吸収染料(B)の質量])は、30以上であり、35以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。また、近赤外線吸収染料(B)の質量に対する溶剤(S1)の質量の比は、300以下であることが好ましい。
また、近赤外線吸収染料(B)は、熱硬化性材料(A)100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
また、硬化性組成物における近赤外線吸収染料(B)の濃度は、例えば、0.1質量%以上2質量%以下であり、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。
【0100】
<溶剤(S)>
溶剤(S)は、溶剤(S)が、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが12(MPa0.5)以上である溶剤(S1)を含む。
【0101】
ハンセン溶解度パラメータの極性項(双極子相互作用によるエネルギーの項)δpは、チャールズハンセンらによって開発されたソフトフェア(ソフト名:Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP))で求めることができる。
ハンセン溶解度パラメータの極性項δpは、好ましくは13(MPa0.5)以上、より好ましくは16(MPa0.5)以上である。ハンセン溶解度パラメータの極性項δpの上限値は特に限定されるものではないが、例えば20(MPa0.5)以下である。
このような特定の溶剤(S1)を、特定構造の近赤外線吸収剤(B)と共に、特定の質量比で配合した硬化性組成物とすることにより、近赤外線吸収剤(B)の溶剤(S1)溶解性に優れ、且つ、硬化性組成物の低温安定性に優れる。
また、ハンセン溶解度パラメータの極性項δpが16以上(MPa0.5)である溶剤(S1)を含む硬化性組成物は、スピンコート法による成膜性に優れるため、スピンコート法によって膜厚等が均一な塗布膜を形成することができ、膜厚等が均一な硬化物を得ることができる。
【0102】
溶剤(S1)の沸点は、150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。なお、沸点は、大気圧下の沸点である。溶剤(S1)の沸点の上限は特に限定されるものではないが、例えば250℃以下である。
【0103】
溶剤(S1)としては、化学構造中にエステル構造、アミド構造、スルホン酸エステル構造やスルホキシド構造を有する溶剤を好適に用いることができる。このような構造を化学構造中に備えることによって、δpを所望の値としやすくなる。
また、上述のエステル構造、アミド構造、スルホン酸エステル構造やスルホキシド構造は、分子中における環状骨格の一部として存在していてもよい。
典型的な例として、化学構造中にラクトン構造、ラクタム構造や、スルトン構造を含む溶剤が挙げられる。
化学構造中にラクトン構造を含む溶剤とは、-CO-O-結合を含む環状骨格であるラクトン骨格を含む溶剤である。
化学構造中にラクタム構造を含む溶剤とは、-CO-NH-結合を含む環状骨格であるラクタム骨格を含む溶剤である。
化学構造中にスルトン構造を含む溶剤とは、-O-SO-結合を含む環状骨格であるスルトン(sultone)骨格を含む溶剤である。
【0104】
溶剤(S1)の好適な具体例としては、γ-ブチロラクトン(δp:16.6MPa0.5、沸点:204~205℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(δp:13.7MPa0.5、沸点:153℃)、ジメチルスルホキシド(δp:16.4MPa0.5、沸点:189℃)、N-メチルピロリドン(δp:12.3MPa0.5、沸点:202℃)等が挙げられる。
【0105】
溶剤(S)は、溶剤(S1)とは異なる溶剤(S2)を含有していてもよい。
溶剤(S2)としては、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロペンタノン(CP)、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、3-メトキシブチルアセテート、酢酸ブチル、3-メトキシ-1-ブタノール等が挙げられる。
溶剤(S2)を含有する場合は、溶剤(S1)の含有量は、溶剤(S1)の質量と溶剤(S2)の質量との合計に対して15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。溶剤(S1)の含有量は、溶剤(S1)の質量と溶剤(S2)の質量との合計に対して80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0106】
硬化性組成物の固形分濃度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。固形分濃度は、例えば、5質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0107】
<その他の添加剤>
硬化性組成物は、熱硬化性材料(A)、近赤外線吸収染料(B)及び溶剤(S)以外にも、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、他の配合剤を含んでいてもよい。他の配合剤としては、例えば、界面活性剤及び酸化防止剤等が挙げられる。
【0108】
界面活性剤は、例えば、硬化性組成物製造時の消泡性を高め、硬化性組成物の安定性及び硬化性組成物の塗布性等をより高めるために使用される。
【0109】
界面活性剤としては、水溶性の界面活性剤が好ましく使用できる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれも使用することができる。界面活性剤は、シリコーン系であってもよい。
【0110】
<硬化性組成物の製造方法>
硬化性組成物は、熱硬化性材料(A)と、近赤外線吸収染料(B)と、溶剤(S)と、必要に応じて添加するその他の添加剤とを混合することにより、製造することができる。
【0111】
≪硬化物及び近赤外線吸収フィルタ並びにこれらの製造方法≫
硬化性組成物を硬化することにより、硬化物を得ることができる。
硬化物は、パターン化された硬化物でも、パターン化されていない平坦な硬化物でもよい。
【0112】
このような硬化性組成物の硬化物は、近赤外線吸収フィルタとして使用することができる。近赤外線吸収フィルタとは、可視光は透過するが近赤外光を吸収(カット)する光学フィルタであり、硬化性組成物に含まれる近赤外線吸収染料(B)によって近赤外光が吸収される。近赤外線吸収フィルタは、可視光領域の波長の光を全て透過してもよく、可視光領域の波長のうち特定の波長の光のみを透過してもよい。
近赤外線吸収フィルタは、CCD、CMOS等の固体撮像素子や、液晶表示装置、有機EL等の画像表示装置等、各種装置の部材として用いることができる。
【0113】
硬化物は、例えば、支持体上に硬化性組成物からなる硬化性組成物層を形成し、硬化性組成物層を硬化することにより、製造することができる。
【0114】
硬化性組成物層を形成する支持体としては、ガラス等の透明基材や、半導体基板上に固体撮像素子が設けられた基板等が挙げられる。
硬化性組成物層の支持体上への形成方法としては、スピンコート法、スリットコート法、スプレー法、ロールコート法、滴下法、インクジェット法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等の塗布法、ナノインプリント法や、金型等を用いた転写法が挙げられる。
硬化性組成物層は、単層でも多層でもよい。
【0115】
硬化性組成物層の硬化は、加熱により行う。硬化性組成物を硬化することができれば加熱条件は特に限定されないが、例えば、加熱温度は140℃以上220℃以下、加熱時間は1分間以上30分間以下である。
また、硬化と同時又は別個の加熱によって溶剤(S)を除去することが好ましい。
【0116】
パターン化された硬化物を得る場合は、例えば、硬化性組成物を硬化した後、硬化物表面に所望のパターン形状を有するレジスト層を設け、レジスト層をマスクとしてエッチング等によって硬化物を加工すればよい。
【0117】
上記硬化性組成物は近赤外線吸収剤の溶剤溶解性に優れるため、硬化性組成物における近赤外線吸収剤(B)の濃度を高くすることで、所望の近赤外線吸収特性を有しつつ薄い近赤外線吸収フィルタ等の硬化物を製造することができる。また、上記硬化性組成物は低温安定性に優れるため、低温で保管や移送した後の硬化性組成物を用いた場合であっても、膜厚等が均一な近赤外線吸収フィルタ等の硬化物を得ることができる。
【0118】
≪硬化性組成物の低温保管方法及び硬化性組成物の輸送方法≫
硬化性組成物の低温保管方法では、上記硬化性組成物を10℃以下で保管する。
硬化性組成物の輸送方法では、上記硬化性組成物を、10℃以下で輸送機により輸送する。
ここで、輸送機は、硬化性組成物を所望する温度で輸送できる限り特に限定されない。輸送機の具体例としては、トラック等の自動車、鉄道車両、船舶、及び航空機等が挙げられる。
保管や輸送の温度は、10℃以下とすることができ、さらには、5℃以下や-20℃以下にすることができる。
保管や輸送の温度の下限は、硬化性組成物が固化したり、硬化性組成物中の成分が析出したりしなければ特に限定されない。保管や輸送の温度は、例えば、-22℃以上であってよく、-15℃以上であってもよい。
上記硬化性組成物は、低温安定性に優れている。このため、上記硬化性組成物を低温で保管したり、低温で輸送機により輸送したりしても、硬化性組成物における析出物の発生が抑制される。このため、低温での保管や輸送の後であっても、上記硬化性組成物の組成が保管や輸送の前から変化し難く、硬化性組成物を用いて所望する性質の硬化物を製造することができる。
【0119】
≪硬化性組成物の提供方法≫
硬化性組成物の提供方法では、上記の硬化物の製造方法を実行するプロセスライン、又は、上記の近赤外線吸収フィルタの製造方法を実行するプロセスラインに対し、上記の硬化性組成物の低温保管方法によって保管された硬化性組成物を提供する。提供される硬化性組成物の温度は、低温保管されていた状態の温度であってもよく、10℃超、具体的には、例えば15℃以上25℃以下程度でもよい。
ここでの硬化性組成物は、上述した材料の中から適宜選択して調製された組成物であればよく、プロセスラインの大きさ、稼働スピードに応じて硬化性組成物の調製や、プロセスラインへの提供のタイミングを図ればよい。
また、保管や移送の温度は、硬化性組成物に合わせて適宜設定すればよい。
なお、硬化物や近赤外線吸収フィルタの製造方法を実行する事業主体と、本提供方法を実行する事業主体は必ずしも同一である必要はない。
【実施例
【0120】
以下、実施例、及び比較例により、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例になんら限定されない。
【0121】
〔溶剤溶解性試験〕
近赤外線吸収染料(B)として下記シアニン系化合物B1(製品名:S01965、Spectruminfo社製)を用い、25℃で1時間撹拌し、表1に記載する溶剤に溶解する最大濃度を測定した。結果を表1に示す。
【化16】
【表1】
【0122】
〔実施例1~5、及び比較例1~4〕
実施例1~5、及び比較例1~4では、熱硬化性材料(A)として、以下の樹脂aを用いた。下記構造式における各構成単位中の括弧の右下の数字は、樹脂中の構成単位の含有量(モル%)を表す。樹脂aの質量平均分子量Mwは50000であり、分散度(質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は4.5である。
【化17】
また、近赤外線吸収染料(B)として上記シアニン系化合物B1(製品名:S01965、Spectruminfo社製)を用いた。
また、溶剤(S1)として、ガンマブチロラクトン(GBL)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。
また、溶媒(S2)として、シクロペンタノン(CP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いた。
【0123】
(硬化性組成物の製造)
表2に記載の種類及び混合比(質量比)の溶剤(S1)及び溶剤(S2)の混合溶剤と、樹脂aと、シアニン系化合物B1とを、容器に投入し、25℃で、1時間撹拌して、実施例1~5及び比較例1~3の硬化性組成物を得た。樹脂aは、混合溶剤及び樹脂aの合計質量に対する樹脂aの質量の比(樹脂aの質量/(混合溶剤の質量+樹脂aの質量))が0.20となる量を用いた。また、シアニン系化合物B1は、樹脂aに対するシアニン系化合物B1の質量比(シアニン系化合物B1の質量/樹脂aの質量)が0.015となる量を用いた。
得られた実施例1~5及び比較例1~4の硬化性組成物は、いずれも、樹脂a及びシアニン系化合物B1が混合溶剤に溶解しており、均一な溶液であった。
【0124】
〔低温安定性〕
実施例1~5及び比較例1~4の硬化性組成物を、25℃、5℃又は-20℃で、7日間保管した後、目視で観察し、析出物が生じていなかった場合を○評価とし、析出物が生じていた場合を×評価とした。結果を表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表1から、溶剤(S1)としてのガンマブチロラクトン(GBL)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)は、近赤外線吸収染料(B)の溶解性に優れることが分かる。このため、溶剤(S1)を含む硬化性組成物は、近赤外線吸収染料(B)の溶剤溶解性に優れることが分かる。
表2から、近赤外線吸収染料(B)の質量に対する溶剤(S1)の質量の比が30以上である実施例1~5の硬化性組成物は、5℃や-20℃で保管しても、析出物が生じていないことが分かる。このため、実施例1~5の硬化性組成物は、低温安定性に優れることが分かる。