(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240115BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/097 365
(21)【出願番号】P 2020037653
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 剛
(72)【発明者】
【氏名】釜江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
(72)【発明者】
【氏名】白山 和久
(72)【発明者】
【氏名】井田 隼人
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135485(JP,A)
【文献】特開2017-116810(JP,A)
【文献】特開2018-180188(JP,A)
【文献】特開2018-156074(JP,A)
【文献】特開2019-211763(JP,A)
【文献】特開2011-94135(JP,A)
【文献】特開2017-37292(JP,A)
【文献】特開2016-110139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、ワックス、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
該結着樹脂、該第一の結晶性樹脂及び該第二の結晶性樹脂の合計含有量に対する該非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50.0質量%以上であり、
該第一の結晶性樹脂は、下記式(1)で表される構造を有する第一のモノマーユニットと、該第一のモノマーユニットとは異なる第二のモノマーユニットと、を有し、
式(1)中、R
Z1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基を表し、
該第一のモノマーユニットの含有割合が、該第一の結晶性樹脂の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%~60.0モル%であり、
第一の結晶性樹脂の重量平均分子量Mwが、10000以上40000以下であり、
該第二の結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であり、
該結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2~18の脂肪族ジオール及び炭素数2~18の脂肪族ジカルボン酸を含むモノマーの縮重合体であり、
該脂肪族ジオール及び該脂肪族ジカルボン酸の炭素数の少なくとも一方が4以上であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
透過型電子顕微鏡によって観察される前記トナーの断面において、前記第一の結晶性樹脂及び前記第二の結晶性樹脂を含むドメインが存在する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記ドメインの長径の個数平均値が、30nm以上1000nm以下である請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ドメインの長径の個数平均値が、50nm以上200nm以下である請求項2又は3に記載のトナー。
【請求項5】
前記第二の結晶性樹脂の含有量が、前記非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上30.0質量部以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記第二の結晶性樹脂の含有量に対する前記第一の結晶性樹脂の含有量の質量比が、0.03以上1.00以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナーの示差走査熱量計測定において、昇温時に観測される吸熱ピークの面積から求められる融解熱量ΔHが、1.0J/g以上である請求項1~6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記第二のモノマーユニットが、下記式(2)及び(3)からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
(式(2)中、Xは単結合又は炭素数1~6のアルキレン基を示す。
R
1は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR
10(R
10は水素原子、若しくは炭素数1~4のアルキル基を表す。))、
ヒドロキシ基、
-COOR
11(R
11は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基若しくは炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。)、
ウレタン基(-NHCOOR
12(R
12は炭素数1~4のアルキル基を表す。))、
ウレア基(-NH-C(=O)-N(R
13)
2(2つのR
13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基を表す。))、
-COO(CH
2)
2NHCOOR
14(R
14は炭素数1~4のアルキル基を表す。)、又は
-COO(CH
2)
2-NH-C(=O)-N(R
15)
2(2つのR
15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6のアルキル基を表す。)である。
R
2は、水素原子又はメチル基を表す。)
(式(3)中、R
3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、R
4は、水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項9】
前記結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数6~12の脂肪族ジオール及び炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸を含むモノマーの縮重合体である請求項1~8のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項10】
前記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwが、5000以上50000以下である請求項1~9のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真方式、静電記録方式、及び、静電印刷方式などに用いられるトナー、及び、該トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及するに従い、更なる高速化、高画質化はもちろんのこと、省エネルギー性能、スリープ状態からの復旧時間短縮、多種多様なメディアへの対応、耐熱保存性など、付加的な性能の向上も要求されている。
具体的には、省エネルギー化に対応したトナーとして、定着工程での消費電力を低下させるために、より低い温度で定着できる、低温定着性に優れたトナーが求められている。しかし、低温定着性を満足させるためにトナーの粘度を柔らかくすると、高温放置によってブロッキングを起こしてしまう場合がある。
【0003】
また、スリープ状態からの復旧時間を短縮可能なトナーとして、長時間のスリープ状態を通して帯電量の変化が少ない、帯電維持性に優れたトナーが求められている。
さらに、多種多様なメディアの一つである厚紙コート紙は、白色度を高めるために炭酸カルシウム等の無機微粒子が多く含まれているため、紙同士の摺擦による摩擦係数が大きくなり、定着画像のトナーが紙から剥離しやすくなる。そこで、紙同士の摺擦に対してもトナーが剥離しないように、定着画像表面をワックスで被覆し、摩擦係数を低くすることができる、ワックスの染み出しを促進させた耐擦過性に優れたトナーが求められている。
そこで、低温定着性、帯電維持性、耐擦過性、保存性に優れたトナーとして、結晶性ポリビニル樹脂を使用したトナーが提案されている(特許文献1)。また、低温定着性、耐熱保存性及び定着後のトナー画像の耐ブロッキング性に優れたトナーとして、結晶性ポリエステルと結晶核剤とを含有するトナーが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-156074号公報
【文献】特開2012-168505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のトナーは、シャープメルト性を有し、疎水性の高い結晶性ポリビニル樹脂を用いていることから、優れた低温定着性と帯電維持性を発揮できる。さらに、定着画像中の結晶性樹脂の結晶化を促進させることで、鉛筆引っ掻き試験において、一定の効果が得られている。これは、結晶性樹脂が結晶化することで、定着画像中のトナー自体の弾性が回復し、トナーが破壊されなくなったためであると考えられる。
一方、近年要求されている紙同士の摺擦による定着画像のトナーの紙からの剥離は、トナーの破壊が起こっているのではなく、紙からトナーが剥離する現象である。さらには、結晶性ポリビニル樹脂は、ワックスとの親和性が高いことから、ワックスの染み出しが抑制され、定着画像表面にワックス層が形成されにくい。以上のことから、特許文献1に記載のトナーを用いても、近年要求されている耐擦過性に対しては課題を有することがわかった。
【0006】
また、特許文献2に記載のトナーは、低温定着性、耐熱保存性、及び定着後のトナー画像の耐ブロッキング性には優れた性能を示す。しかし、結晶性ポリエステルを用いているために高温高湿環境においては、トナーから電荷が漏洩しやすく、帯電維持性に劣る場合
があることがわかった。
以上のことから、低温定着性、帯電維持性、耐擦過性及び保存性のすべてを満足するトナーは存在しない。
本開示は、優れた低温定着性、帯電維持性及び耐熱保存性を示した上で、厚紙コート紙などの定着画像においても優れた耐擦過性を示すトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
結着樹脂、ワックス、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
該結着樹脂、該第一の結晶性樹脂及び該第二の結晶性樹脂の合計含有量に対する該非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50.0質量%以上であり、
該第一の結晶性樹脂は、下記式(1)で表される構造を有する第一のモノマーユニットと、該第一のモノマーユニットとは異なる第二のモノマーユニットと、を有し、
該第一のモノマーユニットの含有割合が、該第一の結晶性樹脂の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%~60.0モル%であり、
第一の結晶性樹脂の重量平均分子量Mwが、10000以上40000以下であり、
該第二の結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であり、
該結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2~18の脂肪族ジオール及び炭素数2~18の脂肪族ジカルボン酸を含むモノマーの縮重合体であり、
該脂肪族ジオール及び該脂肪族ジカルボン酸の炭素数の少なくとも一方が4以上であることを特徴とするトナー。
【0008】
【化1】
式(1)中、R
Z1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、優れた低温定着性、帯電維持性及び耐熱保存性を示した上で、厚紙コート紙などの定着画像においても優れた耐擦過性を示すトナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の、炭素-炭素結合1区間を1ユニットとする。ビニル系モノマーとは下記式(Z)で示すことができる。
【化2】
[式(Z)中、R
Z1は、水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、R
Z2は、任意の置換基を表す。]
結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す。
【0011】
本発明者らは帯電維持性、低温定着性、耐擦過性、及び耐熱保存性に優れたトナーの検討を進めた。その結果、本発明者らは、結晶性ポリエステル樹脂と上記第一の結晶性樹脂を併用し、それぞれの結晶性樹脂に特定の構造を持たせることで所望のトナーを得ることができることを見出した。
つまり、側鎖に結晶性の高いアルキル鎖を持つ第一の結晶性樹脂は、重量平均分子量Mwが上記特定の範囲内にあることで、結着樹脂に含まれる非晶性ポリエステル樹脂と相溶しにくくなり、ドメインとして存在することができる。このドメインとして存在している第一の結晶性樹脂のアルキル鎖部分と結晶性ポリエステル樹脂のアルキル鎖部分を相互作用させることで、トナー中に第一の結晶性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の複合体を存在させることができる。この複合体中では、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が促進されるため、トナーの低温定着性、帯電性維持性及び保存性を両立させることができる。
【0012】
表面自由エネルギーの低い第一の結晶性樹脂の作用で、トナーの付着力を低下させるだけでなく、結晶性ポリエステル樹脂の作用でトナー粘度を低下させ、ワックスの染み出しを促進させるため、これらの相乗効果で優れた耐擦過性を得ることができる。
トナーは、結着樹脂、ワックス、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含有するトナー粒子を有する。結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を含有し、結着樹脂、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂の合計含有量に対する非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50.0質量%以上である。
トナーが第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含有することによって、第一の結晶性樹脂が第二の結晶性樹脂の結晶核剤としてはたらくため、第二の結晶性樹脂の結晶化速度が向上し、帯電維持性と耐熱保存性が向上する。
【0013】
また、結着樹脂、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂の合計含有量に対する非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50.0質量%以上であることにより、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂が、結着樹脂の主たる構成材料である非晶性ポリエステルに対して添加剤として作用する。このため、非晶性ポリエステル樹脂のシャープメルト性が向上し、低温定着性に優れたトナーとなる。
結着樹脂、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂の合計含有量に対する非晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、好ましくは70.0質量%以上であり、より好ましくは80.0質量%以上であり、さらに好ましくは85.0質量%以上であり、さらにより好ましくは90.0質量%以上である。
一方、上限は特に制限されないが、好ましくは99.0質量%以下であり、より好ましくは97.0質量%以下であり、さらに好ましくは95.0質量%以下である。
【0014】
第一の結晶性樹脂は、(第一の重合性単量体に由来する)式(1)で表される第一のモノマーユニットと、該第一のモノマーユニットとは異なる(第二の重合性単量体に由来する)第二のモノマーユニットと、を有する。第一(又は第二)のモノマーユニットは、例えば、第一(又は第二)の重合性単量体が付加重合(ビニル重合)したモノマーユニット
である。また、第一の結晶性樹脂は、好ましくは第一の重合性単量体と、該第一の重合性単量体とは異なる第二の重合性単量体と、を含有する組成物の重合体である。
第一の重合性単量体は、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一である。第一の結晶性樹脂中の第一のモノマーユニットの含有割合は、第一の結晶性樹脂の全モノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%~60.0モル%である。
該(メタ)アクリル酸エステルは鎖長の長いアルキル基を有するため、結着樹脂に結晶性を付与することができる。そのため、トナーがシャープメルト性を発揮し、優れた低温定着性が得られる。さらに、(メタ)アクリル酸エステルは疎水性が高いため、高温高湿環境下における吸湿性も低く、優れた帯電維持性が得られる。
一方、炭素数18未満のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである場合、アルキル基の鎖長が短いため、得られる重合体は疎水性が低く、高温高湿環境における吸湿性が高いため、帯電維持性が劣る。また、炭素数が37以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである場合、鎖長が長いアルキル基を有するため得られる重合体の融点が高くなり、低温定着性が劣る。
【0015】
第一のモノマーユニットは、下記式(1)で表される。
第一の結晶性樹脂中の第一のモノマーユニットの含有割合は、好ましくは30.0質量%~90.0質量%であり、より好ましくは40.0質量%~80.0質量%であり、さらに好ましくは45.0質量%~75.0質量%である。
【0016】
【0017】
[式(1)中、RZ1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基(好ましくは炭素数18~30の直鎖のアルキル基)を表す。]
【0018】
炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル等]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシル等]が挙げられる。
これらの内、低温定着性の観点から、炭素数18~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一が好ましく、炭素数18~30の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一がより好ましい。
中でも、直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましく、直鎖の(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一がさらにより好ましい。
第一の重合性単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
第一の結晶性樹脂中の第一のモノマーユニットの含有割合は、第一の結晶性樹脂の全モ
ノマーユニットの総モル数を基準として、5.0モル%~60.0モル%である。また、第一の結晶性樹脂を生成する組成物中の第一の重合性単量体の含有割合は、組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、5.0モル%~60.0モル%である。
上記含有割合であることで、結晶性によりトナーがシャープメルト性を発現し、優れた低温定着性が得られる。
上記含有割合は、好ましくは10.0モル%~60.0モル%であり、より好ましくは20.0モル%~40.0モル%である。
【0020】
一方、上記含有割合が5.0モル%未満の場合、結晶性を有する部分の割合が少ないため、低温定着性が低下する。また、上記含有割合が60.0モル%より多い場合、第一の結晶性樹脂中の結晶性が多くなりすぎ、トナーとしての粘度低下を招き耐熱保存性が低下する場合がある。
なお、第一の結晶性樹脂が、2種以上の炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する第一のモノマーユニットを有する場合、第一のモノマーユニットの含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。また、第一の結晶性樹脂に用いる組成物が2種以上の炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む場合も同様に、第一の重合性単量体の含有割合は、それらの合計のモル比率を表す。
【0021】
さらに、第一の結晶性樹脂の重量平均分子量Mwは、10000以上40000以下である。
第一の結晶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量Mwは、10000以上40000以下である。好ましくは20000以上30000以下である。
第一の結晶性樹脂のMwが上記の範囲であることにより、トナー中で第二の結晶性樹脂の結晶化が促進されるため、優れた帯電維持性と耐熱保存性を有するトナーを得ることができる。重量平均分子量Mwが10000未満であると、トナーの粘度が低下し、帯電維持性と耐熱保存性を満足することができない場合がある。また、上記範囲を超えると、トナー粘度が上昇するため、体温定着性、帯電維持性及び耐熱保存性の両立が難しくなる場合がある。
【0022】
第二の結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂である。該結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2~18の脂肪族ジオール及び炭素数2~18の脂肪族ジカルボン酸を含むモノマーの縮重合体であり、該脂肪族ジオール及び該脂肪族ジカルボン酸の炭素数の少なくとも一方が4以上である。
上記の炭素数の範囲の脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との縮重合体である結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、帯電維持性、低温定着性及び耐熱保存性を両立させることができる。
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6~12の脂肪族ジオール及び炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸を含むモノマーの縮重合体であることが好ましく、炭素数6~12の脂肪族ジオール及び炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸の縮重合体であることがより好ましい。
【0023】
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2~18の脂肪族ジオール及び炭素数2~18の脂肪族ジカルボン酸を含むモノマーの縮重合により得ることができる。結晶性ポリエステル樹脂は、1種類のみを用いても、複数種を併用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2~12の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数2~12の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分と、を含むモノマーの縮重合体であることが、低温定着性
と耐熱保存性の観点から、好ましい。
【0024】
上記炭素数2~18(好ましくは炭素数6~12)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであるとよい。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタジエングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールなどのような直鎖脂肪族α,ω-ジオールが好ましく例示される。
誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジオールをエステル化した誘導体が挙げられる。
【0025】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分において、上記炭素数2~18(好ましくは炭素数6~12)の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全アルコール成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらにより好ましい。上限は特に制限されないが、100質量%以下である。
脂肪族ジオール以外の多価アルコールを用いることもできる。
該多価アルコールのうち、上記脂肪族ジオール以外のジオールとしては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0026】
また、該多価アルコールのうち3価以上の多価アルコールとしては、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコールなどが挙げられる。
さらに、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコールを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0027】
一方、上記炭素数2~18(好ましくは炭素数6~12)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であるとよい。
例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられる。
これらの酸無水物又は低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジカルボン酸成分の酸無水物、ジカルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。
【0028】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分において、上記炭素数2~18(好ましくは炭素数6~12)の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全カルボン酸成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがさらにより好ましい。上限は特に制限されないが、100質量%以下である。
上記脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。該多価カルボン酸のうち、上記脂肪族ジカルボン酸以外の2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなども含まれる。
【0029】
また、その他の多価カルボン酸において、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパンなどの脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなどの誘導体なども含まれる。
さらに、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を用いてもよい。該1価のカルボン酸としては、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸などが挙げられる。
【0030】
結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、上記カルボン酸成分とアルコール成分とをエステル化反応、又はエステル交換反応させた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、及び酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
【0031】
また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、及び二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化若しくはエステル交換反応、又は重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括に仕込むことや、低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させたりするなどの方法を用いてもよい。
【0032】
透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察されるトナー断面において、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含むドメインが存在することが好ましい。
第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含むドメインとは、第一の結晶性樹脂が第二の結晶性樹脂である結晶性ポリエステル樹脂の結晶核剤として働くことにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化速度が向上し、ドメインとして存在しているものを示す。上記ドメインが存在していることによって、耐擦過性がより向上する。
このようなドメインは、トナーの製造方法において、例えば、溶融混練工程で得られた樹脂組成物(溶融混錬物)を冷却工程で冷却させることや、得られたトナーを熱処理する
ことにより存在させることができる。
トナーの断面観察において、トナーの断面積のうちドメインの面積の割合は、好ましくは5%~40%であり、より好ましくは10%~20%である。
【0033】
また、前記ドメインの長径の個数平均値が、30nm以上1000nm以下であることが好ましく、50nm以上200nm以下であることがより好ましい。
前記ドメインの長径が上記の範囲であることにより、耐擦過性と帯電維持性を両立することができる。30nm以上であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が進み、帯電維持性が良好になる。1000nm以下であると、トナー中の結晶性ポリエステル樹脂の分散性が向上し、低温定着性が良好になる。
ドメインの長径の個数平均値は、溶融混練工程で得られた樹脂組成物(溶融混錬物)を冷却工程で冷却させることや、得られたトナーを熱処理することにより制御できる。
【0034】
第二の結晶性樹脂の含有量は、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
第二の結晶性樹脂が上記範囲であることにより、低温定着性、帯電維持性及び保存性を両立することができる。0.3質量部以上であると低温定着性が良好になり、30.0質量部以下であると、帯電維持性及び保存性が良好になる。
【0035】
第二の結晶性樹脂の含有量に対する第一の結晶性樹脂の含有量の質量比(第一の結晶性樹脂/第二の結晶性樹脂)は、0.03以上1.00以下であることが好ましく、0.10以上0.40以下であることがより好ましい。
質量比が、上記範囲内であることで、第一の結晶性樹脂が第二の結晶性樹脂の核剤として働くため、第二の結晶性樹脂の結晶化が促進され、トナーの帯電維持性と耐熱保存性が向上する。上記比が0.03以上であると、第二の結晶性樹脂の結晶化が進みやすく、帯電維持性及び保存性が良好になる。上記比が1.00以下であると耐擦過性が良好になる。
【0036】
トナーの示差走査熱量計測定において、昇温時に観測される吸熱ピークの面積から求められる融解熱量ΔHが1.0J/g以上であることが好ましく、1.1J/g以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは2.0J/g以下であり、より好ましくは1.5J/g以下である。
融解熱量(ΔH)は、溶融混練工程で得られた樹脂組成物(溶融混錬物)を冷却工程で冷却させることや、得られたトナーを熱処理することにより制御できる。
融解熱量(ΔH)が1.0J/g以上であることによって帯電維持性と耐熱保存性が向上する。
【0037】
また、第二のモノマーユニットは、好ましくは第二の重合性単量体がビニル重合したモノマーユニットである。第二の重合性単量体としては、具体的には、例えば以下に挙げる重合性単量体を用いることができる。
ニトリル基を有する単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
ヒドロキシ基を有する単量体;例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等。
アミド基を有する単量体;例えば、アクリルアミド、炭素数1~30のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を公知の方法で反応させた単量体。
【0038】
ウレタン基を有する単量体:例えば、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~22のアルコール(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ビニルアルコール等)と、炭素数1
~30のイソシアネート[モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、3,5-ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6-ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]とを公知の方法で反応させた単量体、及び
炭素数1~26のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール等)と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネート[2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]とを公知の方法で反応させた単量体等。
【0039】
ウレア基を有する単量体:例えば炭素数3~22のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t-ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、2級アミン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体等。
カルボキシ基を有する単量体;例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-カルボキシエチル。
【0040】
なかでも、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、ウレア基を有する単量体を使用することが好ましい。より好ましくは、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、及びウレア基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体である。
【0041】
また、第二の重合性単量体として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビ
ニルといったビニルエステル類も好ましく用いられる。なかでも、ビニルエステル類は、非共役モノマーであって前記第一の重合性単量体との反応性が適度に保たれやすく、重合体の結晶性をあげやすいため、低温定着性の観点から好ましい。
【0042】
第二のモノマーユニットは、下記式(2)で表されるモノマーユニット及び下記式(3)で表されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも一であることがより好ましい。
第一の結晶性樹脂中の第二のモノマーユニットの含有割合は、好ましくは1.0質量%~70.0質量%であり、より好ましくは10.0質量%~60.0質量%であり、さらに好ましくは15.0質量%~50.0質量%である。
【0043】
【0044】
(式(2)中、Xは単結合又は炭素数1~6のアルキレン基を示す。
R1は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR10(R10は水素原子、若しくは炭素数1~4のアルキル基を表す。))、
ヒドロキシ基、
-COOR11(R11は、水素原子、炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のヒドロキシアルキル基を表す。)、
ウレタン基(-NHCOOR12(R12は炭素数1~4のアルキル基を表す))、
ウレア基(-NH-C(=O)-N(R13)2(2つのR13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基を表す。))、
-COO(CH2)2NHCOOR14(R14は炭素数1~4のアルキル基を表す。)、又は
-COO(CH2)2-NH-C(=O)-N(R15)2(2つのR15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基を表す。)
である。R2は、水素原子又はメチル基を表す。)
(式(3)中、R3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、R4は、水素原子又はメチル基を表す。)
【0045】
第一の結晶性樹脂中の第二のモノマーユニットの含有割合は、第一の結晶性樹脂の全モノマーユニットの総モル数を基準として、20.0モル%~95.0モル%であることが好ましく、40.0モル%~70.0モル%であることがより好ましい。
また、第一の結晶性樹脂を生成する組成物中の第二の重合性単量体の含有割合が、組成物中の全重合性単量体の総モル数を基準として、20.0モル%~95.0モル%であることが好ましく、40.0モル%~70.0モル%であることがより好ましい。
【0046】
第二の重合性単量体は、エチレン性不飽和結合を有することが好ましく、エチレン性不飽和結合を一つ有することがより好ましい。
該第二の重合性単量体は、下記式(A)及び(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。
【0047】
【0048】
(式(A)中、Xは単結合又は炭素数1~6のアルキレン基を示す。
R1は、ニトリル基(-C≡N)、
アミド基(-C(=O)NHR10(R10は水素原子、若しくは炭素数1~4のアルキル基を表す。))、
ヒドロキシ基、
-COOR11(R11は、水素原子、炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のヒドロキシアルキル基を表す。)、
ウレタン基(-NHCOOR12(R12は炭素数1~4のアルキル基を表す。))、
ウレア基(-NH-C(=O)-N(R13)2(2つのR13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基を表す。))、
-COO(CH2)2NHCOOR14(R14は炭素数1~4のアルキル基を表す。)、又は
-COO(CH2)2-NH-C(=O)-N(R15)2(2つのR15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~6(好ましくは1~4)のアルキル基を表す。)
である。
R2は、水素原子又はメチル基を表す。)
(式(B)中、R3は、炭素数1~4のアルキル基を表し、R4は、水素原子又はメチル基を表す。)
【0049】
第一の結晶性樹脂が、上記式(2)及び(3)で表されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも一のモノマーユニットを有することにより、優れた低温定着性、帯電維持性、及び、耐擦過性が得られる。
この場合、第二のモノマーユニットが高極性となり、第一及び第二のモノマーユニット間に極性差が生じる。その極性差により、第一のモノマーユニットの結晶化が促進され、優れた低温定着性及び帯電維持性が得られると考えられる。第一のモノマーユニットの結晶化が促進されるメカニズムとしては以下のように考えている。
第一のモノマーユニットは、第一の結晶性樹脂に組み込まれ、第一のモノマーユニット同士が集合することで結晶性を発現する。通常の場合、第一のモノマーユニットの結晶化は、他のモノマーユニットが組み込まれていると阻害されるため、重合体として結晶性を発現しにくくなる。この傾向は、重合体の一分子内において複数種のモノマーユニット同士がランダムに結合していると顕著になる。
しかし、第一の重合性単量体と極性差を有する第二の重合性単量体を使用することで、重合時に第一の重合性単量体と第二の重合性単量体がランダムに結合するのではなく、ある程度連続して結合できると考えられる。それにより、第一のモノマーユニット同士が集合したブロックが形成され、第一の結晶性樹脂はブロック共重合体となり、他のモノマーユニットが組み込まれていても結晶性を高めることが可能となり、優れた低温定着性及び
帯電維持性が得られる。
【0050】
第一の結晶性樹脂は、上述した第一のモノマーユニット、第二のモノマーユニットに加え、第三の重合性単量体が付加重合(ビニル重合)した(第三の重合性単量体に由来する)第三のモノマーユニットを含んでいてもよい。
【0051】
例えば、以下の単量体を用いることが可能である。
スチレン、o-メチルスチレンなどのスチレン及びその誘導体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル類。
スチレン及び(メタ)アクリル酸メチルからなる群から選択される少なくとも一を用いることが好ましい。
第一の結晶性樹脂中の第三のモノマーユニットの含有割合は、好ましくは1.0質量%~30.0質量%であり、より好ましくは5.0質量%~20.0質量%である。また、第一の結晶性樹脂中の第三のモノマーユニットの含有割合は、好ましくは1.0mol%~30.0mol%であり、より好ましくは5.0mol%~20.0mol%である。
【0052】
第一の結晶性樹脂の含有量は、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1質量部~10.0質量部であり、より好ましくは0.5質量部~3.0質量部である。
第一の結晶性樹脂の含有量が上記範囲である場合、優れた低温定着性、帯電維持性及び耐擦過性が得られる。
具体的には、第一の結晶性樹脂の含有量が上記範囲である場合、シャープメルト性を示す一定量の結晶が存在していることを示し、優れた低温定着性が得られる。さらに、過度に結晶性樹脂が存在していないことから、優れた帯電維持性が得られる。さらには、ワックスと相溶しやすい重合体が過度に存在しないことから、優れた耐擦過性が得られる。
【0053】
第一の結晶性樹脂の酸価は、30.0mgKOH/g以下であることが好ましく、20.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
酸価が上記範囲の場合、高温高湿環境下における吸湿性が低くなるため、優れた帯電維持性を示すことができる。該酸価の下限は特に制限されないが、好ましくは0mgKOH/g以上である。
【0054】
また、第一の結晶性樹脂の融点は、50℃以上80℃以下であることが好ましく、53℃以上70℃以下であることがより好ましい。第一の結晶性樹脂の融点が上記範囲内であると、より優れた低温定着性を示す。
第一の結晶性樹脂の融点は、使用する第一の重合性単量体の種類や量、第二の重合性単量体の種類や量などによって調整可能である。
【0055】
第一の結晶性樹脂は、ビニル重合体であることが好ましい。ビニル重合体は、例えば、エチレン性不飽和結合を含むモノマーの重合体が挙げられる。エチレン性不飽和結合とは、ラジカル重合することが可能な炭素-炭素二重結合を指し、例えば、ビニル基、プロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0056】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは5000以上50000以下であることが好ましく、10000以上30000以下であることがより好ましい。
重量平均分子量Mwが上記範囲であることで低温定着性、帯電維持性及び保存性を両立することができる。5000以上であると、帯電維持性と保存性が良好になる。50000以下であると低温定着性が良好になる。
【0057】
非晶性ポリエステル樹脂に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。
【0058】
多価アルコールとしては、以下のものを使用することができる。
2価のアルコール成分としては、ビスフェノール誘導体が好ましい。
ビスフェノール誘導体としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。
その他のアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0059】
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独で又は複数を併用して用いることができる。
【0060】
多価カルボン酸としては、以下のものを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
【0061】
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシ
ル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
これらのうち、特に1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独で又は複数を併用して用いることができる。
【0062】
ポリエステルの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述のアルコールモノマー及びカルボン酸モノマーを同時に仕込み、エステル化反応またはエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。また、重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステルの重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。
スズ系触媒を使用して重合することがより好ましい。
【0063】
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電維持性の観点から好ましい。さらに、非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることが、低温定着性と保存性の観点から好ましい。
【0064】
トナー粒子は、ワックスを含有する。
ワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
【0065】
これらのワックスの中でも、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素ワックス、又はカルナバワックスのような脂肪酸エステル系ワックスが、耐擦過性の観点から好ましい。ワックスは、炭化水素ワックスを含むことが好ましく、炭
化水素ワックスであることがより好ましい。
耐擦過性の観点から、ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部~20質量部であることが好ましく、3質量部~8質量部であることがより好ましい。
【0066】
<着色剤>
トナーは、必要に応じて着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤としては、顔料を単独で使用してもよく、染料と顔料とを併用してもよい。フルカラー画像の画質の観点から、染料と顔料とを併用することが好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパースバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0067】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70が挙げられる。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及びトナーへの分散性の点から選択される。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部~30.0質量部であることが好ましい。
【0068】
<荷電制御剤>
トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピード
が速く、且つ一定の帯電量を安定して保持できる、芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。
荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし、外添してもよい。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.2質量部~10.0質量部が好ましく、0.5質量部~10.0質量部がより好ましい。
【0069】
<無機微粒子>
トナーは、必要に応じて無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし、外添剤としてトナーと混合してもよい。無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子又はそれらの複酸化物微粒子のような微粒子が挙げられる。無機微粒子の中でもシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子が、流動性改良及び帯電均一化のために好ましい。
無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性を向上させる観点からは、外添剤としての無機微粒子は、比表面積が50m2/g~400m2/gであることが好ましい。また、耐久安定性を向上させる観点からは、外添剤としての無機微粒子は、比表面積が10m2/g~50m2/gであることが好ましい。流動性向上と耐久安定性とを両立させるために、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部~10.0質量部であることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
【0070】
<現像剤>
トナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、また、長期にわたり安定した画像を供給するために、磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として用いることが好ましい。
該磁性キャリアとしては、例えば、酸化鉄;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、及び希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、それらの酸化物粒子;フェライトなどの磁性体;磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア);など、一般に公知のものを使用できる。
トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際の磁性キャリアの混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%~15質量%であることが好ましく、より好ましくは4質量%~13質量%以下である。
【0071】
<トナーの製造方法>
トナーについては、その製造方法は特に制限されず、粉砕法、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、分散重合法などの公知の方法を用いることができる。
トナーは、粉砕法により製造されることが好ましい。
【0072】
以下、粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂、ワックス、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂、並びに必要に応じて着色剤、荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。
混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0073】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中にワックス等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が好ましい。
例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物(溶融混錬物)は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0074】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
【0075】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
【0076】
得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。必要に応じて、得られたトナー粒子の表面に外添剤を外添処理してもよい。
外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
得られたトナーは必要に応じて熱処理を施してもよい。
【0077】
トナー粒子及び原材料の各種物性の測定方法について以下に説明する。
(トナーからの各材料の分離方法)
トナーに含まれる各材料の溶剤への溶解度の差を利用して、トナーから各材料を分離することができる。
第一分離:23℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(非晶性ポリエステル樹脂)と不溶分(第一の結晶性樹脂、結晶性ポリエステル樹脂(第二の結晶性樹脂)、ワックス、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第二分離:65℃のMEKに、第一分離で得られた不溶分(第一の結晶性樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ワックス、着色剤、無機微粒子など)を溶解させ、可溶分(第一の結晶性樹脂)と不溶分(結晶性ポリエステル樹脂、ワックス、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第三分離:100℃のMEKに、第二分離で得られた不溶分(結晶性ポリエステル樹脂、ワックス、着色剤、無機微粒子など)を溶解させ、可溶分(結晶性ポリエステル樹脂、ワックス)と不溶分(着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第四分離:23℃のクロロホルムに、第二分離で得られた可溶分(結晶性ポリエステル樹脂、ワックス)を溶解させ、可溶分(結晶性ポリエステル樹脂)と不溶分(ワックス)を分離する。
【0078】
<非晶性ポリエステル樹脂、第一の結晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂(第二の結晶性樹脂)中の各モノマーユニットの含有割合の測定方法並びにワックスの構造の確認方法>
非晶性ポリエステル樹脂、第一の結晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の各モノマーユニットの含有割合の測定並びにワックスの構造の確認は、1H-NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
得られた1H-NMRチャートより、例えば、第一の結晶性樹脂においては、第一のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。
同様に、第二のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S2を算出する。
さらに、第三のモノマーユニットを有する場合は、第三のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークから、他に由来するモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S3を算出する。
第一のモノマーユニットの含有割合は、上記積分値S1、S2及びS3を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2、n3はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
第一のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
同様に、第二のモノマーユニット、及び第三のモノマーユニットの含有割合は以下のように求める。
第二のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S2/n2)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
第三のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S3/n3)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
なお、第一の結晶性樹脂において、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、1H-NMRにて同様にして算出する。
また、トナーが懸濁重合法によって製造される場合、ワックスやその他の樹脂のピークが重なり、独立したピークが観測されないことがある。それにより、第一の結晶性樹脂中の各種重合性単量体に由来するモノマーユニットの含有割合が算出できない場合が生じる。その場合、ワックスやその他の樹脂を使用しないで同様の懸濁重合を行うことで、第一の結晶性樹脂’を製造し、第一の結晶性樹脂’を第一の結晶性樹脂とみなして分析することができる。
【0079】
<GPCによる非晶性ポリエステル樹脂などの樹脂の重量平均分子量測定>
非晶性ポリエステル樹脂、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂など樹脂のTHF可溶分の分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、
以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0080】
<TEMによる第一の結晶性樹脂と第二の結晶性樹脂を含むドメインの観察>
透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察されるトナーの断面において、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含むドメインの観察は、以下のようにして実施することができる。
トナー断面をルテニウム染色することによって、第二の結晶性樹脂である結晶性ポリエステル樹脂が明瞭なコントラストとして得られる。結晶性ポリエステル樹脂はトナー内部を構成する有機成分よりも、弱く染色される。これは、結晶性ポリエステル樹脂の中への染色材料の染み込みが、密度の差などが有るために、トナー内部の有機成分よりも弱いためと考えられる。
第一の結晶性樹脂も同様に観察することができる。
染色の強弱によって、ルテニウム原子の量が異なるため、強く染色される部分は、これらの原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。
オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施し、光硬化性樹脂D800(日本電子社)で包埋したのち、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度1mm/sで膜厚60nm(or70nm)のトナー断面を作製する。
得られた断面を、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM観察を行う。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelで取得する。
得られた画像については、画像処理ソフト「Image-Pro Plus (Media Cybernetics社製)」にて2値化(閾値120/255段階)を行う。
得られた画像を2値化することでドメインを抽出し、そのサイズを計測する。
ドメインが第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂を含むかどうかの確認は、以下のように行う。
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S4700(商品名))を用い、ドメインに含まれる元素を、該走査型電子顕微鏡に付属させた元素分析手段(エネルギー分散型X線分析装置EDAX社製)を用いて解析する。
無作為に選んだ50個のトナーについて断面観察した際に、長さが測定可能なドメインに対して、長径を測定し、その相加平均(個数平均)値を算出する。また、トナーの断面積のうちドメインの面積の割合(50個のトナーの相加平均値)を算出する。
【0081】
<トナーや樹脂などのDSC測定における、融解熱量(ΔH)などの測定>
融解熱量(ΔH)及びトナーや樹脂などの最大吸熱ピークのピーク温度(融点)(Tp)は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
上記測定において得られた最大吸熱ピークのピーク温度を融点とする。また、融解熱量(ΔH)は、ピークの面積から装置付属の解析ソフトにより計算する。
【0082】
<酸価の測定方法>
樹脂などの酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。該水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した該水酸化カリウム溶液の量から求める。該0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0083】
<トナー中の非晶性ポリエステル樹脂、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂の含有量の測定>
前述の方法で、トナーに含まれる各材料の溶剤への溶解度の差を利用して、トナーから
各材料を分離する。
上記分離で得られた各材料の質量を測定することで、各材料の含有量を算出する。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の処方において、部は特に断りのない限り質量基準である。
【0085】
<第一の結晶性樹脂A1の製造例>
・溶媒:トルエン 100.0部・単量体組成物 100.0部(単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル・アクリロニトリル・スチレンを以下に示す割合で混合したものとする)
(アクリル酸ベヘニル(第一の重合性単量体) 67.0部(25.3モル%))
(アクリロニトリル(第二の重合性単量体) 22.0部(59.5モル%))
(スチレン(第三の重合性単量体) 11.0部(15.2モル%))
・重合開始剤 t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)0.5部
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、上記材料を投入した。反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分をろ別し、さらにメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して第一の結晶性樹脂A1を得た。
第一の結晶性樹脂A1の重量平均分子量は20000、融点は60℃、酸価は0.0mgKOH/gであった。
第一の結晶性樹脂A1をNMRで分析したところ、アクリル酸ベヘニル由来のモノマーユニットが25.3モル%、アクリロニトリル由来のモノマーユニットが59.5モル%、スチレン由来のモノマーユニットが15.2モル%含まれていた。
【0086】
<ウレタン基を有する単量体の調製>
メタノール50.0部を反応容器に仕込んだ。その後、撹拌下、40℃にてカレンズMOI[2-イソシアナトエチルメタクリレート](昭和電工株式会社)5.0部を滴下した。滴下終了後、40℃を維持しながら2時間撹拌を行った。その後、エバポレーターにて未反応のメタノールを除去することで、ウレタン基を有する単量体を調製した。
【0087】
<第一の結晶性樹脂A2~A8の製造例>
第一の結晶性樹脂A1の製造例において、重合性単量体の種類及び部数並びに重量平均分子量(Mw)を表1となるように重合条件を変更した以外は同様にして反応を行い、第一の結晶性樹脂A2~A8を得た。
【0088】
【表1】
表1中の略号は以下の通り。
BEA:ベヘニルアクリレート
HA:ヘキサデシルアクリレート
AN:アクリロニトリル
HEMA:メタクリル酸2‐ヒドロキシエチル
UT:ウレタン基を有する単量体
VA:酢酸ビニル
St:スチレン
MMA:メタクリル酸メチル
【0089】
<結晶性ポリエステル樹脂C1の製造例>
・1,6-ヘキサンジオール:34.5部
(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:65.5部
(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
その後、反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂C1を得た。
【0090】
<結晶性ポリエステル樹脂C2~C10の製造例>
結晶性ポリエステル樹脂C1の製造例において、ジオールとジカルボン酸の組み合わせを変更し、重量平均分子量(Mw)が表2に示した通りになるようにした以外は、結晶性ポリエステル樹脂C1の製造例と同様の操作を行い、結晶性ポリエステル樹脂C2~C10を得た。
【0091】
【0092】
<非晶性ポリエステル樹脂P1の製造例>
・ビスフェノールA・プロピレンオキシド付加物(平均付加モル数2.0):37.0部(13.6mol%)
・エチレングリコール:13.0部(35.5mol%)
・テレフタル酸:50.0部(50.9mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、5時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が100℃の温度に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶性ポリエステル樹脂P1を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂P1は、ピーク分子量Mp10000であった。
【0093】
<トナー1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂P1:100部
・結晶性ポリエステルC1(第二の結晶性樹脂):5.0部
・第一の結晶性樹脂A1:1.0部(第一の結晶性樹脂)
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度90℃):5.0部
・カーボンブラック:10部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数1500rpm、回転時間5minで混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。
得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティ(F-300、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子1を得た。運転条件は、分級ローター回転数を11000rpm、分散ローター回転数を7200rpmとした。
・トナー粒子1:100部
・疎水性シリカ微粒子(BET:200m2/g):1.0部
・イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g):1.0部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井三池化工機(株)製)で回転数1900rpm、回転時間10minで混合し、トナー1を得た。
【0094】
<トナー2~39の製造例>
トナー1の製造例において、非晶性ポリエステル樹脂の含有量、第一の結晶性樹脂の種類及び添加量、並びに第二の結晶性樹脂の種類及び含有量を変化させた以外は同様にして、トナー2~39を作製した。
なお、第一の結晶性樹脂と第二の結晶性樹脂を含むドメインの有無や長径の個数平均値、及びトナーの融解熱量(ΔH)は、第一の結晶性樹脂と第二の結晶性樹脂の比率を変化させ、トナー製造例1の混練条件を変更することによって変化させた。
表3にその結果を示す。
【0095】
【表3】
表中、非晶性ポリエステル樹脂P1の記載に関し、「部」は、添加量を示し、「質量%」は、結着樹脂、第一の結晶性樹脂及び第二の結晶性樹脂の合計含有量に対する非晶性ポリエステル樹脂の含有割合を示す。また、CR比率は、第二の結晶性樹脂の含有量に対する第一の結晶性樹脂の含有量の質量比を示す。
【0096】
<磁性キャリア1の製造例>
・個数平均粒径0.30μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am2/kg)のマグネタイト1
・個数平均粒径0.50μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am2/kg)のマグネタイト2
上記の材料それぞれ100部に対し、4.0部のシラン化合物(3-(2-アミノエチ
ルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内にて100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を処理した。
・フェノール:10質量%
・ホルムアルデヒド溶液:6質量%
(ホルムアルデヒド40質量%、メタノール10質量%、水50質量%)
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト1 :58質量%
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト2 :26質量%
上記材料100部と、28質量%アンモニア水溶液5部、及び水20部をフラスコに入れ、撹拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温し、3時間保持して重合反応させて、生成するフェノール樹脂を硬化させた。
その後、硬化したフェノール樹脂を30℃まで冷却し、さらに水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体分散型の球状の磁性キャリア1を得た。体積基準の50%粒径(D50)は、34.21μmであった。
【0097】
<二成分系現像剤1~39の製造例>
92.0部の磁性キャリア1と、それぞれ8.0部のトナー1~39をV型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1~39を得た。
【0098】
<実施例1>
上記二成分系現像剤1を用いて、評価を行った。
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用い、シアン位置の現像器に二成分系現像剤1を入れた。装置の改造点としては、定着温度、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及び、レーザーパワーを自由に設定できるように変更した。画像出力評価は、所望の画像比率のFFh画像(ベタ画像)を出力し、紙上におけるFFh画像上のトナーの載り量が所望になるようにVDC、VD、及びレーザーパワーを調整して、後述の評価を行った。
FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
以下の評価方法に基づいて評価し、その結果を表4に示す。
【0099】
[高温高湿環境下での帯電維持率]
紙:GFC-081(81.0g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)紙上のトナーの載り量:0.35mg/cm2
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×5cmの画像を配置
定着試験環境:高温高湿環境:温度30℃/湿度80%RH(以下「H/H」)
プロセススピード:377mm/sec
静電潜像担持体上のトナーを金属円筒管と円筒フィルターを用いて吸引捕集することにより、トナーの摩擦帯電量を算出した。具体的には、静電潜像担持体上のトナーの摩擦帯電量は、ファラデー・ケージ(Faraday-Cage)によって測定した。
ファラデー・ケージとは、同軸の2重筒のことで内筒と外筒は絶縁されている。この内筒の中に電荷量Qの帯電体を入れたとすると、静電誘導によりあたかも電荷量Qの金属円筒が存在するのと同様になる。この誘起された電荷量をエレクトロメーター(ケスレー6517A ケスレー社製)で測定し、内筒中のトナー質量M(kg)で電荷量Q(mC)を割ったもの(Q/M)をトナーの摩擦帯電量とした。
トナーの摩擦帯電量(mC/kg)=Q/M
先ず、静電潜像担持体上に上記評価画像を形成し、中間転写体に転写される前に、静電
潜像担持体の回転を止め、静電潜像担持体上のトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、[初期のQ/M]を測定した。
引き続き、H/H環境において評価機内に現像器を入れたまま2週間放置した後、放置前と同様の操作を行い、放置後の静電潜像担持体上の単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を測定した。上記の初期の静電潜像担持体上の単位質量当たりのQ/Mを100%とし、放置後の静電潜像担持体上の単位質量当たりのQ/Mの維持率([放置後のQ/M]/[初期のQ/M]×100)を算出して以下の基準で判断した。評価がA~Cであれば、良好と判断した。
(評価基準)
A:維持率が95.0%以上
B:維持率が90.0%以上95.0%未満
C:維持率が85.0%以上90.0%未満
D:維持率が85.0%未満
【0100】
[低温定着性]
紙:GFC-081(81.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.50mg/cm2
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×5cmの画像を配置
試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)
定着温度:150℃
プロセススピード:377mm/sec
上記評価画像を出力し、低温定着性を評価した。画像濃度低下率の値を低温定着性の評価指標とした。
画像濃度低下率は、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用い、先ず、中心部の画像濃度を測定する。次に、画像濃度を測定した部分に対し、4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけてシルボン紙により定着画像を摺擦(5往復)し、画像濃度を再度測定する。
そして、下記式を用いて摺擦前後での画像濃度の低下率を算出した。得られた画像濃度の低下率を下記の評価基準に従って評価した。評価がA~Cであれば、良好と判断した。
画像濃度の低下率=(摺擦前の画像濃度-摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100
(評価基準)
A:画像濃度の低下率3.0%未満
B:画像濃度の低下率3.0%以上5.0%未満
C:画像濃度の低下率5.0%以上8.0%未満
D:画像濃度の低下率8.0%以上
【0101】
[耐擦過性]
紙:イメージコートグロス158(158.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.05mg/cm2(2Fh画像)
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に3m×15cmの画像を配置
定着試験環境:常温常湿環境(温度23℃/湿度50%RH(以下N/N))
定着温度:180℃
プロセススピード:377mm/sec
上記評価画像を出力し、耐擦過性を評価した。反射率の差分の値を耐擦過性の評価指標とした。
まず、評価画像の画像部に対し、学振型摩擦堅牢度試験機(AB-301:テスター産業株式会社製)を用い、0.5kgfの荷重をかけて、新品の評価紙により摩擦(10往復)する。その後、リフレクトメータ(REFLECTOMETER MODEL TC-6DS:東京電色株式会社製)を用い、摩擦を行った部分の反射率と、摩擦を行っていない部分の反射率を測定する。
そして、下記式を用いて摩擦前後での反射率の差分を算出した。得られた反射率の差分を下記の評価基準に従って評価した。評価がA~Cであれば、良好と判断した。
反射率の差分=摩擦前の反射率-摩擦後の反射率
(評価基準)
A:1.0%未満
B:1.0%以上2.0%未満
C:2.0%以上4.0%未満
D:4.0%以上
【0102】
[保存性]
100mlの樹脂製カップにトナー5gを入れ、温度及び湿度可変型の恒温槽(55℃41%RH)に48時間放置し、放置後にトナーの凝集性を評価した。凝集性は、ホソカワミクロン社製パウダーテスタPT-Xにて0.5mmの振幅にて10秒間、目開き20μmのメッシュで篩った際に、残ったトナーの残存率を評価指標とした。なお、評価がA~Cであれば、良好と判断した。
(評価基準)
A:残存率2.0%未満
B:残存率2.0%以上10.0%未満
C:残存率10.0%以上15.0%未満
D:残存率15.0%以上
【0103】
<実施例2~29、及び、比較例1~10>
二成分系現像剤2~39を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0104】