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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】処理装置と切換バルブユニット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240115BHJP
   F16K 1/34 20060101ALI20240115BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
F16K1/34 A
F16K1/44 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020040751
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021144975
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】星野 好文
(72)【発明者】
【氏名】樋口 英明
(72)【発明者】
【氏名】岸谷 京太郎
(72)【発明者】
【氏名】西出 基
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092144(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103523(WO,A1)
【文献】実開昭57-008961(JP,U)
【文献】特開2011-033088(JP,A)
【文献】特開2000-257745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
F16K 1/34
F16K 1/44
F16K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の処理流体で被処理体を処理するチャンバと、前記チャンバに接続され、かつ前記チャンバから前記複数種の処理流体が排気される排気管と、前記排気管に接続され、かつ前記複数種の処理流体の種類ごとに対応する分岐ダクトと、前記分岐ダクトに接続され、かつ前記複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する複数の集合排気ダクトと、前記集合排気ダクト内に前記複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する切換バルブ機構と、を備え、前記切換バルブ機構は、前記チャンバからの処理流体を前記集合排気ダクト内へ排出する排出弁体と、前記集合排気ダクト内へ外気を導入する導入弁体とを連結して直動式構造としたことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記切換バルブ機構は、前記集合排気ダクトの内部に挿入した状態で前記集合排気ダクトの内部に取り付けられる請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記切換バルブ機構は、外気導入口と弁座口を有する保持板と、アクチュエータを介して前記保持板の略中央部を貫通して直動する直動ロッドと、前記直動ロッドの先端側に設けた排出弁体と、前記排出弁体と前記保持板との間の前記直動ロッド上に設けた導入弁体と、を備えており、前記切換バルブ機構は、少なくとも前記導入弁体および前記排出弁体が前記集合排気ダクトに内蔵され、前記導入弁体と前記排出弁体の双方を対向させ、前記直動ロッドにより直動式に開閉するようにした請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記排出弁体と前記導入弁体には、流量調整するためのニードル部をそれぞれ設けた請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記排出弁体には、前記集合排気ダクトの排出口を密封シールするためのシール部材を設け、かつ前記導入弁体には、前記弁座口を密封シールするためのシール部材を設けた請求項3又は4に記載の処理装置。
【請求項6】
複数の集合排気ダクトと、前記集合排気ダクト内に前記複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する切換バルブ機構と、を備えた切換バルブユニットにおいて、前記切換バルブ機構は、前記複数種扱われる処理流体の種類ごとに前記対応する集合排気ダクト内へ処理流体を排出する排出弁体と、前記集合排気ダクト内へ外気を導入する導入弁体とを連結して直動式構造としたことを特徴とする切換バルブユニット。
【請求項7】
前記切換バルブ機構は、前記集合排気ダクトの内部に挿入した状態で前記集合排気ダクトの内部に取り付けられる請求項6に記載の切換バルブユニット。
【請求項8】
前記切換バルブ機構は、外気導入口と弁座口を有する保持板と、アクチュエータを介して前記保持板の略中央部を貫通して直動する直動ロッドと、前記直動ロッドの先端側に設けた排出弁体と、前記排出弁体と前記保持板との間の前記直動ロッド上に設けた導入弁体と、を備えており、少なくとも前記導入弁体および前記排出弁体を集合排気ダクトに内蔵し、前記導入弁体と前記排出弁体の双方を対向させ、前記直動ロッドにより直動式に開閉するようにした請求項6に記載の切換バルブユニット。
【請求項9】
前記排出弁体と前記導入弁体には、流量調整するためのニードル部をそれぞれ設けた請求項8に記載の切換バルブユニット。
【請求項10】
前記排出弁体には、前記集合排気ダクトの排出口を密封シールするためのシール部材を設け、かつ前記導入弁体には、前記弁座口を密封シールするためのシール部材を設けた請求項8又は9に記載の切換バルブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体ウェハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板などの被処理体を、薬液や純水などの処理流体で処理する処理装置と切換バルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体などの製造工程において、基板などの被処理体は、各種の処理流体で処理される。この処理は、例えば、真空チャンバを有し、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の処理ユニットで行われる。この処理ユニットは、特許文献2に記載のように、チャンバ、基板保持機構、処理流体供給部と、回収カップ等が備えられ、処理においては、基板は、基板保持機構に水平状に保持されつつ回転状態とされた上で、この基板に対して処理流体供給部から処理流体が供給される。回収カップは、基板保持機構を中心として包囲するように設けられ、回転状態の基板から飛散する処理流体を捕集可能に構成される。この捕集された処理流体は、回収カップ下側に重力で収集されると共に、回収カップ下部に設けられた排出口から排水管、排気管を通って処理ユニット外部へ排出されるようになっている。
【0003】
上記のような処理に用いられる処理流体には、特性が大きく異なる複数種の処理流体を用いる必要がある場合が多く、例えば酸系の処理流体で処理した後、排気管内にこの処理流体の雰囲気が残存した状態で、次のアルカリ系の処理流体をチャンバ内に導入すれば、主として塩の発生によりパーティクル生成の大きな原因となる。ウェハを洗浄する工程に用いられる特性が大きく異なる複数種の処理流体として、例えば、3種の処理流体(酸系薬液としてSC1(アンモニア、過酸化水素及び水の混合液)、アルカリ系薬液としてHF(ふっ酸)、有機系溶剤としてIPA(イソプロピルアルコール))を用いた洗浄処理がある。
【0004】
上記のような問題に対応するため、処理室内と接続した排気管に排気切換ユニットを設け、この排気切換ユニットが、分配ボックスと切換弁ボックスと排気筒からなり、処理流体に対応した個数の切換弁ボックスを分配ボックスに並列状態に接続すると共に、切換弁ボックスの内部には、排気方向にスイングする切換弁をそれぞれ設ける処理装置がある(特許文献1)。また、同様の効果を得る発明として特許文献2がある。
【0005】
特許文献1の処理装置には、図10にも示すように、処理室100内と接続した排気管101に排気切換ユニット102が設けられている。この排気切換ユニット102は、分配ボックス103と、これに密封状に接続された図示していない切換弁ボックスと、これに密封状に接続された排気筒105から成っている。複数種の処理流体の種類に応じた個数の切換弁ボックスは、分配ボックス103に並列状態に接続されており、切換弁ボックスの内部には、排気方向にスウィングする切換弁106と、排気方向と交叉する方向に大気を導入する図示していないリリーフ弁がそれぞれ設けられている。この排気切換ユニット102は、切換弁ボックスの排気方向の端部に排気筒105を設けて構成されていると共に、排気切換ユニット102は図示しない保持体で積層状態に多段に構成されている。
【0006】
特許文献2の基板液処理装置には、排気切換ユニットが所定部位に備えられており、この排気切換ユニットは、排気管からの排気が導入される排気導入部と、個別排気管ごとに設けられ排気導入部に連通する排気取込口と、個別排気管に連通する流出口と、外気を取り込む外気取込口と、排気取込口、流出口および外気取込口の連通状態を排気取込口と流出口とが連通した状態または外気取込口と流出口とが連通した状態に切り替える弁体とを有する複数の切換機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6219848号
【文献】特許第6289341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、何れの従来技術においても、排気用のダクトと排気管との間に何らかのバルブを備えた排気機構が設けられ、これらのバルブの開閉によりダクト内に排出される処理流体が切換えられるが、排気吸引によってダクト内は負圧状態となるので、流体切換のためのバルブの切換えに伴い、これに連通しているチャンバ内にも圧力変動が生じ、この圧力変動が大きいと、チャンバ内のパーティクルの舞い上がりや対流が大きくなり、チャンバ内の高清浄性が損なわれることになるから、この圧力変動をできるだけ抑制する必要がある。
【0009】
特許文献1、2では、対策として、排気機構には、外気導入のための何らかのバルブや配管も併設し、これらを介した外気導入により、圧力変動などの適切な緩和が図る必要があった。そのため、処理装置の大型化と複雑化の問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、処理室から複数種の処理流体を排出する際に、処理室内の圧力変動の適切な抑制と、複数種の処理流体の確実な切り替えを確保しつつも、簡素かつコンパクトな処理装置と切換バルブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、複数種の処理流体で被処理体を処理するチャンバと、チャンバに接続され、かつチャンバから複数種の処理流体が排気される排気管と、排気管に接続され、かつ複数種の処理流体の種類ごとに対応する分岐ダクトと、分岐ダクトに接続され、かつ複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する複数の集合排気ダクトと、集合排気ダクト内に複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する切換バルブ機構と、を備え、切換バルブ機構は、チャンバからの処理流体を集合排気ダクト内へ排出する排出弁体と、集合排気ダクト内へ外気を導入する導入弁体とを連結して直動式構造とした処理装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、切換バルブ機構は、集合排気ダクトの内部に挿入した状態で集合排気ダクトの内部に取り付けられる処理装置である。
【0013】
請求項3に係る発明は、切換バルブ機構は、外気導入口と弁座口を有する保持板と、アクチュエータを介して保持板の略中央部を貫通して直動する直動ロッドと、直動ロッドの先端側に設けた排出弁体と、排出弁体と保持板との間の直動ロッド上に設けた導入弁体と、を備えており、切換バルブ機構は、少なくとも導入弁体および排出弁体が集合排気ダクトに内蔵され、導入弁体と排出弁体の双方を対向させ、直動ロッドにより直動式に開閉するようにした処理装置である。
【0014】
請求項4に係る発明は、排出弁体と導入弁体には、流量調整するためのニードル部をそれぞれ設けた処理装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、排出弁体には、集合排気ダクトの排出口を密封シールするためのシール部材を設け、かつ導入弁体には、弁座口を密封シールするためのシール部材を設けた処理装置である。
【0016】
請求項6に係る発明は、複数の集合排気ダクトと、集合排気ダクト内に複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する切換バルブ機構と、を備えた切換バルブユニットにおいて、切換バルブ機構は、複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する集合排気ダクト内へ処理流体を排出する排出弁体と、集合排気ダクト内へ外気を導入する導入弁体とを連結して直動式構造とした切換バルブユニットである。
【0017】
請求項7に係る発明は、切換バルブ機構は、集合排気ダクトの内部に挿入した状態で集合排気ダクトの内部に取り付けられる切換バルブユニットである。
【0018】
請求項8に係る発明は、切換バルブ機構は、外気導入口と弁座口を有する保持板と、アクチュエータを介して保持板の略中央部を貫通して直動する直動ロッドと、直動ロッドの先端側に設けた排出弁体と、排出弁体と保持板との間の直動ロッド上に設けた導入弁体と、を備えており、少なくとも導入弁体および排出弁体を集合排気ダクトに内蔵され、導入弁体と排出弁体の双方を対向させ、直動ロッドにより直動式に開閉するようにした切換バルブユニットである。
【0019】
請求項9に係る発明は、排出弁体と導入弁体には、流量調整するためのニードル部をそれぞれ設けた切換バルブユニットである。
【0020】
請求項10に係る発明は、排出弁体には、集合排気ダクトの排出口を密封シールするためのシール部材を設け、かつ導入弁体には、弁座口を密封シールするためのシール部材を設けた切換バルブユニットである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、本発明の処理装置は、複数種の処理流体で被処理体を処理するチャンバと、チャンバに接続され、かつチャンバから複数種の処理流体が排気される排気管と、排気管に接続され、かつ複数種の処理流体の種類ごとに対応する分岐ダクトと、分岐ダクトに接続され、かつ複数種扱われる処理流体の種類ごとに対応する切換バルブ機構と、を備え、切換バルブ機構は、チャンバからの処理流体を集合排気ダクト内へ排出する排出弁体と、集合排気ダクト内へ外気を導入する導入弁体とを連結して直動式構造とすることにより、処理流体を排気するための切換バルブ機構は、分岐ダクトに対応する処理流体に接続する複数の集合排気ダクトの内部に備えられる。よって、処理室内の圧力変動の適切な抑制と、複数種の処理流体の確実な切り替えを確保しつつも、前記分岐ダクトと集合排気ダクトとの間には排気機構による占有スペースをほぼ省略することができると共に、処理装置の大幅な簡素化も可能となる。特に、処理装置の占有スペースがコンパクトになるから、生産コストの大幅な向上も可能となる。
【0022】
また、本発明の処理装置において、切換バルブ機構は、チャンバからの処理流体を集合排気ダクト内へ排出する排出弁体と、集合排気ダクト内へ外気を導入する導入弁体とを連結して直動式構造としたことで、前記排出弁体と前記導入弁体とを一体的な弁体として、その駆動を1つの駆動源(アクチュエータ)による簡易な直線動作で実現できるので、切換バルブ機構の簡素化と共に、排気シール性も良好となる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、本発明の処理装置において、切換バルブ機構を集合排気ダクトの内部に挿入した状態で内部に取り付けられるから、切換バルブ機構を挿入方式で集合排気ダクト内に設けることができ、切換バルブ機構の着脱や交換、或はメンテナンスが極めて容易となる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、本発明の処理装置において、切換バルブ機構は、外気導入口と弁座口を有する保持板と、アクチュエータを介して保持板の略中央部を貫通して直動する直動ロッドと、直動ロッドの先端側に設けた排出弁体と、導入弁体と保持板との間の直動ロッド上に設けた導入弁体と、を備えており、少なくとも導入弁体および排出弁体が集合排気ダクトに内蔵され、導入弁体と排出弁体の双方を対向させ、直動ロッドにより直動式に開閉するようにすることで、切換バルブ機構の占有スペース、より具体的には、チャンバと集合排気ダクトとの間には、従来技術のような排気機構による占有スペースをほぼ省略することができ、大幅に省スペース化が可能となると共に、処理装置の大幅な簡素化も可能となる。特に、処理装置の占有スペースがコンパクトになるから、処理装置の生産コストも低減される。
【0025】
また、切換バルブ機構が、外気導入口と弁座口を有する保持板と、アクチュエータを介して保持板の略中央部を貫通して直動する直動ロッドと、直動ロッドの先端側に設けた排出弁体と、導入弁体と保持板との間の直動ロッド上に設けた導入弁体と、を備えることで、導入弁体が外気導入口と弁座口を有する保持板の略中央部にアクチュエータを介して直動ロッドを直動させることでの一側に備えられるから、簡易な構成で導入弁体の開閉を行える。
【0026】
請求項4に係る発明によると、排出弁体と排出口とを流量調整するためのニードル部を設けたから、チャンバからの排気量を適切に抑制・制御することができ、よって、処理流体の排気に伴うチャンバ内の圧力変動を確実に防止できる。
【0027】
請求項5に係る発明によると、排出弁体と導入弁体にそれぞれ密封シール可能なシール部材を設けたから、切換バルブ機構において、弁座口と排出口の確実なシール性を確保できる。
【0028】
請求項6に係る発明によると、本発明の切換バルブユニットは、複数の集合排気ダクトからの複数種の処理流体の確実な切り換えを確保しつつも、簡素かつコンパクトな切換バルブユニットを提供できる。
【0029】
請求項7に係る発明によると、本発明の切換バルブユニットは、切換バルブ機構を集合排気ダクトの内部に挿入した状態で内部に取り付けられるから、切換バルブ機構を挿入方式で集合排気ダクト内に設けることができ、切換バルブ機構の着脱や交換、或はメンテナンスが極めて容易となる。
【0030】
請求項8に係る発明によると、本発明の切換バルブユニットは、直線動作をする1つの駆動源(アクチュエータ)につなげることにより導入弁体と排出弁体の双方を対向させ、直動ロッドにより直動式に開閉するから、切換バルブユニットの簡素化と共に、排気と外気導入とを一体的に連動させることができる。
【0031】
請求項9に係る発明によると、本発明の切換バルブユニットは、排出弁体と排出口とを流量調整するためのニードル部を設けたから、複数の集合排気ダクトからの複数種の処理流体の排気量を適切に抑制・制御することができ、よって、処理流体の排気に伴うチャンバ内の圧力変動を確実に防止できる。
【0032】
請求項10に係る発明によると、本発明の切換バルブユニットは、排出弁体と導入弁体にそれぞれ密封シール可能なシール部材を設けたから、切換バルブ機構において、弁座口と排出口の確実なシール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態の一例の処理装置(切換バルブユニット)を模式的に示した説明図である。
図2】本発明の実施形態の一例の切換バルブ機構の断面図である。
図3】本発明の実施形態の一例の切換バルブ機構を模式的に示した斜視図である。
図4】(a)は、図3において、外気導入側から見た外観を示した模式図であり、(b)は、シャッター部材を示した正面図である。
図5】本発明の実施形態の一例の切換バルブ機構において、排出弁体を閉じた状態の断面図である。
図6】本発明の実施形態の一例の切換バルブ機構において、中間開度状態の断面図である。
図7】本発明の実施形態の一例の切換バルブ機構において、導入弁体を閉じた状態の断面図である。
図8】本発明の実施形態の他の例の切換バルブ機構の断面図である。
図9】本発明の実施形態の他の例の切換バルブ機構において、導入弁体を閉じた状態の断面図である。
図10】従来技術(特許文献1)に係る処理装置を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の各実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態の一例(以下、「本例」という。)の処理装置1を模式的に示した説明図であり、図2は、本例の切換バルブ機構2の分解断面図である。また図3は、本例の切換バルブ機構2を、集合排気ダクト7内に内蔵した状態を示した模式斜視図であり、図4(a)は、図3において、導入弁体9(外気導入口10)を正面側として模式的に示した正面外観図であり、図4(b)は、シャッター部材16を示した正面外観図である。
【0035】
図1において、本例の処理装置1は、複数種の処理流体で、図示しない被処理体を処理するチャンバ4と、このチャンバ4に接続され、かつチャンバ4から前記複数の処理流体が排気される排気管5と、この排気管5に接続され、かつ前記複数種の処理流体の少なくとも1つに対応する分岐ダクト6と、この分岐ダクト6に接続され、かつ分岐ダクト6に対応する処理流体を集合排気ダクト7に排気するための切換バルブ機構2と、を備えている。
【0036】
図1において、模式的に示したチャンバ4は、図示しない被処理体を処理する処理室であり、この処理としては例えば、半導体ウェハの洗浄処理がある。このウェハ洗浄処理の場合、例えば、チャンバ4に枚葉式ウェハ洗浄装置が設置されると、ウェハ1枚毎にウェハが搬出入可能となっており、このウェハは、図示していない回転プレート上に水平面内で回転可能に保持される。チャンバ4内には、図示していない酸性処理液(例えば、SPM)、アルカリ処理液(例えば、SC1)、リンス処理液(例えば、純水)と、乾燥処理用として有機性処理液(例えば、IPA)をそれぞれ吐出可能なノズルが備えられ、前記洗浄処理においては、回転プレートに回転状態で保持されたウェハに上方から各処理液が、例えば酸処理、リンス処理、アルカリ処理、リンス処理、有機処理、リンス処理の順で吐出されて液処理が行われる。
【0037】
このような各液による液処理の後は、チャンバ4内は、液処理に用いられた液体の雰囲気がミスト状に残存しているので、このミスト状の残存雰囲気を、本発明の処理装置1によって外部に確実に排気処理し、各液同士がチャンバ4内、排気管5内などにおいて混合することが無いようにするものである。このように、本発明における処理流体の種類の意味としては、少なくとも、同一の集合排気ダクト7(配管)でなく、別の集合排気ダクト7に分けて排気処理を行う必要性の有無で同一種か別種かを区別しており、同一の集合排気ダクト7で処理できる場合は同一種、別の集合排気ダクト7で処理する必要がある場合は別種の流体を意味する。よって、上記のような酸性処理液、アルカリ性処理液、有機性処理液を、それぞれ別種の処理流体として扱う場合のほか、異なる特性を有していても同一の集合排気ダクト7で排気処理可能な流体は、同一種として扱ってもよい。さらに、流体とは、一般的な文言通りの意味であって、例えば、液体状のほか、これがミスト状ないし気化した状態も含む意味である。
【0038】
また、図1は模式的に示しているが、本例の処理装置1の具体的な構成としては、例えば、3つの集合排気ダクト7は並列に配置される。3つの集合排気ダクト7が集積した集合排気ダクト7の側面に、交差する垂直方向に向けて分岐ダクト6が構成される。なお、3本の集合排気ダクト7の配置順としては、分岐ダクト6が3又状に構成され、チャンバ4からの排気流路(排気管5と分岐ダクト6を通る集合排気ダクト7までの排気流路)上の距離が3本の集合排気ダクト7の何れとも等しく構成される場合や、排気流路上、チャンバ4に近い順にアルカリ性流体用、有機性流体用、酸性流体用に配管される場合など、実施(洗浄処理の順番など)に応じて任意に選択可能であることは勿論である。
【0039】
また、図1図2において、切換バルブ機構2は、チャンバ4からの処理流体を集合排気ダクト7内へ排出する排出弁体8と集合排気ダクト7内へ外気を導入する導入弁体9とを連結して直動式構造としている。本例では、この切換バルブ機構2の具体的な構成は、少なくとも導入弁体9と排出弁体8が集合排気ダクト7に内蔵され、導入弁体9と排出弁体8の双方を主面で対向させ、直動するロッド14により対向した主面に垂直な方向に移動し、導入弁体9が弁座口11を開閉する又は排出弁体8がチャンバ4からの処理流体を集合排気ダクト7内へ排出するように直動式に開閉するように構成している。さらに、この切換バルブ機構2は、後述の図3、4に示すようにして、対応する処理流体の集合排気ダクト7の内部に直動ロッド14を挿入した状態で集合排気ダクト7の内部に取り付けられる。図3、4における切換バルブ機構2は、このように挿入した状態を模式的に示している。
【0040】
上記のように処理装置1を構成することによって、チャンバ4から集合排気ダクト7までの排気切換構造を、コンパクトに収めた処理装置1を実現できる。
【0041】
特に、特許文献1(従来技術)と比較すると、占有スペースとしては、同文献における切換弁ボックスの構造をほぼ省略することができながら、確実な排気切り替え機能が確保された処理装置1を構成できる。また、特許文献2と比較しても、少なくとも同文献に開示された排気切換ユニットのような複雑な構成を採る必要が無い。また、切換バルブ機構2は導入弁体9および排出弁体8が集合排気ダクト7に内蔵され導入弁体9と排出弁体8の双方を主面で対向させ、直動するロッド14により対向した主面に垂直な方向に移動し、導入弁体9が弁座口11を開閉する又は排出弁体8がチャンバ4からの処理流体を集合排気ダクト7内へ排出するようにしたから、駆動源(アクチュエータ)も1つで済ませることが可能となる。
【0042】
図2は、本発明の切換バルブ機構2の構造を示した分解断面図である。切換バルブ機構2は、外気導入口10と弁座口11を有する保持板12と、アクチュエータ13を介して保持板12の略中央部を貫通して直動する直動ロッド14と、直動ロッドの先端側に設けた排出弁体8と、排出弁体8と保持板12との間の直動ロッド14上に設けた導入弁体9と、を備えている。アクチュエータ13を介して保持板12の略中央部を貫通して直動する直動ロッド14と、直動ロッド14の先端側に設けた排出弁体8と、排出弁体8と保持板12との間の直動ロッド14上に設けた導入弁体9は、対応する処理流体の集合排気ダクト7に内蔵されている。直動ロッド14がアクチュエータ13により往復移動することにより、導入弁体9が弁座口11を開閉し、排出弁体8がチャンバ4からの処理流体を集合排気ダクト7内へ排出する排出口17を直動式に開閉する。
【0043】
図1、2には、切換バルブユニット3を示している。本例の切換バルブユニット3は、複数種の集合排気ダクト7と、これらの集合排気ダクト7内において、それぞれ扱われる処理流体の種類ごとに対応する切換バルブ機構2と、を備えている。
【0044】
また、図3は本例の切換バルブ機構2を模式的に示した斜視図である。図4(a)は、図3に示した状態において、アクチュエータ13が備えられた外気導入側から正面視した外観模式図であり、同図(b)は、この外気導入側に備えられたシャッター部材16単体を示した正面図である。
【0045】
図2~4において、切換バルブ機構2は、アクチュエータ13が備えられた保持板12(着脱機構)を介して、集合排気ダクト7に対して着脱自在に装着可能に構成されている。切換バルブ機構2は、このように所定の着脱機構を介して、適宜の配管内に装着可能に構成されていれば、その構成は、実施に応じて任意に選択可能である。
【0046】
図2~4において、本例の保持板12は、略円盤状に構成されており、円形フランジ状の固定部12aと、この固定部12aの外径より小径で短尺筒状の嵌合挿入部12bとを有している。固定部12aの略中央位置には、アクチュエータ13が備えられていると共に、外気導入口10が形成されて固定部12aを貫通している。外気導入口10の形状や位置は実施に応じて任意に選択可能であるが、本例では、後述の図4(b)に示すシャッター部材16に形成されている開口部16aの形状・位置にほぼ一致するように形成されているため、アクチュエータ13が固着された略中央位置から略扇状の外気導入口10が放射状に形成される。
【0047】
図2~4において、固定部12aは、ボルト33を介して集合排気ダクト7に設けられた略同形状の保持体18に着脱自在に固定可能となっている。この固定部12aと同心状に、嵌合挿入部12bが設けられており、この嵌合挿入部12bの外径は、保持体18の内径と略同径であり、この保持体18の筒状の内周面に挿入・嵌合される。また、本例では、嵌合挿入部12bの内径は、保持板12と同心状に開口している外気導入口10を完全に内径側に包囲できる大きさが確保され、外気導入口10は、保持板12の外側と嵌合挿入部12bの内径側とを連通させている。なお、固定部12aと保持体18との間にはシール部材としてOリングが設けられて集合排気ダクト7の内外がシールされる。
【0048】
嵌合挿入部12bの集合排気ダクト7内へ挿入・嵌合される端面側は、平面状に形成されており、この端面側には、導入弁体9のシール面19が環状に形成される。このシール面19の内径側が、集合排気ダクト7内に向けて開口した弁座口11となる。
【0049】
図2~4において、集合排気ダクト7は、本例では断面略矩形状に形成されており、上記のような複数種扱われる処理流体の一つの種類ごとに一つ配管され、分岐ダクト6と密封状に連通している。分岐ダクト6は、集合排気ダクト7内に、排出口17を介して開口し、チャンバ4からの処理流体を排出可能となっている。
【0050】
また、半導体製造プロセスで扱われる処理流体の場合、腐食性が高い場合が多いため、その排気が直接接触する配管部材などには、なるべく非金属製材料を用いることが好ましいため、本例の集合排気ダクト7は、所定の透明な樹脂製で設けられている。さらに、後述のように、排気される処理流体に直接曝される直動ロッド14、排出弁体8、導入弁体9なども、適宜樹脂製で設けられており、稼働中に排気が浸入して曝される虞のある金属製部材には可能な限りシール部材を設けて排気を遮断するように構成されれば好適である。
【0051】
ここで、本例では、上記のように保持板12の略中央位置を貫通して直動ロッド14を直動するアクチュエータ13が備えられ、このアクチュエータ13は外気導入側を遮るように保持板12に挿し込むタイプであるから、少なくとも外気導入側の中央が遮られることになる。これに対し、後述する作用により、チャンバ4からの排気と、外部からの外気を、共通する1本の集合排気ダクト7へ流入させるにあたっては、図2において、なるべく外気導入の開口面積(外気導入口10の総面積)と、排気導入の開口面積(排出口17の面積)とが、等しいほど好適である。
【0052】
このため、アクチュエータ13が存在することで外気導入が減少する分を補うため、本例では、予め、排出口17の内径を、外気導入側の内径、すなわち、嵌合挿入部12bの内径より小さく設けた上で、外気導入口10の面積などにより、外気導入量と排気導入量とが略等しくなるように調整している。具体的には、弁座口11の内径側に、弁座口11の開口側に向けて縮径する内周テーパ面11a(テーパ部)を形成することにより、外気導入の開口面積を調整するようにしている。
【0053】
図2~4において、アクチュエータ13は、導入弁体9と排出弁体8の双方を主面で対向させ、対向した主面に垂直な方向に直動ロッド14を適切に駆動させることができれば実施に応じて任意に選択できるが、本例では圧縮エアの給排気により駆動するエアシリンダ機構13を用いている。このエアシリンダ機構のアクチュエータ13は、ピストン20と、これに連結されたピストンロッド21と、ハウジング37と、シリンダ22とを有しており、切換バルブ機構2が集合排気ダクト7に内蔵された状態においては、固定部12aと同心状に、長尺筒状のハウジング37が外方に向けて突設固定されると共に、長尺筒状のシリンダ22が内方に向けて突設固定される。ピストンロッド21は、固定部12aを挿通してハウジング37とシリンダ22との内部を同心状に駆動される。なお、本例のピストンロッド21は金属製なので、集合排気ダクト7内で処理流体をシールするため、シリンダ22の内周面にはOリング23が設けられている。
【0054】
図2において、エア室24には、エアポート24aが連通しており、エア室25には、エアポート25aが連通し、エア室24、25は互いにピストン20を介して密封されている。後述のように、図示していない駆動エア供給源からエアポート24aを介してエア室24に圧縮エアが供給されると、ピストン20がシリンダ22の筒状の内周面をスライド移動し、この移動に伴いピストンロッド21と直動ロッド14、およびこれらに固定された2つの弁体(排出弁体8、導入弁体9)が一体的に排出口17側に駆動される。
【0055】
図2~4において、切換バルブ機構2では、アクチュエータ13により、排出弁体8、導入弁体9の双方を主面で対向させ、対向した主面に垂直な方向に直動ロッド14により駆動される。本例では、ピストンロッド21に直動ロッド14が直線状に連結されており、この直動ロッド14の一端側には、直動ロッド14と同心状に排出弁体8が固着されている。
【0056】
導入弁体9は、本例では排出弁体8と同径の略円盤状に設けられ、軸対称位置に設けられた3本の連結ロッド28を介して、排出弁体8に対して直動ロッド14の他端側(先端側)に同心状に固着されている。導入弁体9の中心位置には円形状の開口部が設けられ、この開口部にシリンダ22が摺動可能に挿通しており、このシリンダ22の筒状の外周面との摺動部位となる開口部内周面には、Oリング29が設けられている。導入弁体9は直動ロッド14のもう一方の端側に同心状に固着されている。本発明の例では、排出弁体8と導入弁体9は間隔が保たれている。
【0057】
なお、弁体のシールに用いられるOリング26、30は、少なくとも、平面状のシール面に対して面接触により排出口17、弁座口11をそれぞれ密封シール可能なシール部材であればよく、例えば、Oリングのほか、高い耐食性・耐久性に加え、密着・離間性の良い樹脂製や金属製の環状シール部材を用いてもよい。
【0058】
導入弁体9と排出弁体8の双方を主面で対向させ、対向した主面に垂直な方向に直動ロッド14により直動式に開閉するようにした排出弁体8、導入弁体9は、同一軸上をストロークする。本例の構造においては、直動ロッド14の長さ(或は排出弁体8と導入弁体9との距離)と、弁座口11と排出口17との距離との関係で定まり、本例では、47mm程度に設けられる。また、本例では、排出弁体8、導入弁体9の何れも、バルブ開口面積、すなわち外気導入口10の総面積と排出口17の面積よりも、ストロークによる投影面積が大きくなるようにストロークが確保される。本例における弁体のストロークによる投影面積とは、円盤状を呈した弁体の外周側が、全ストローク範囲で掃く円筒状の面積領域を意味する。導入弁体9と排出弁体8との距離は、弁座口11と排出口17との距離より短く設定される。
【0059】
図3、4において、シャッター部材16は、外気導入口10の開口面積を適宜調整可能な手段の一例であって、このようなシャッター構造以外にも、実施に応じて任意に選択できるが、本例では、略円形プレート状に形成されたシャッター部材16を用いており、所定の樹脂で一体的に形成されている。このシャッター部材16の外径は、外気導入口10の外周囲の外径よりも大きく設けられ、対称位置に設けられた4つの蝶ネジ31により、外気導入口10を被覆するようにして、固定部12aの外側に同心状に着脱自在に固定される。この固定した状態を正面視した図が、図4(a)である。また、図4(b)は、単体のシャッター部材16を示した外観図である。
【0060】
具体的には、シャッター部材16の外周縁部を、蝶ネジ31のディスク状のワッシャーで締め付けて固定しており、この固定状態は、少なくとも対称な4箇所の蝶ネジ31で固定すれば、蝶ネジ31を緩めても、シャッター部材16が固定部12aから完全に外れることなく、周方向にずらすことができる。また前述のように、この固定状態において、外気導入口10の形状・位置に略一致するように、シャッター部材16にも開口部16aが形成されているので、本例では、外気導入口10とほぼ同一形状の開口部16aが、同じ位置に同じ数だけ形成されている。
【0061】
図4(b)に示すように、シャッター部材16の一部には、把持部16bが突出形成されており、固定部12aに蝶ネジ31で固定した際には、図4(a)に示すように、把持部16bが外周側に突出した状態となる。外気導入量を調整する場合、締め付けていた蝶ネジ31を緩めてシャッター部材16の固定を解除した後、この把持部16bを把持して、円形状のシャッター部材16の周方向に移動させれば、この移動に伴い、開口部16aと外気導入口10との重複領域(外気連通領域)の面積を増減させることができるので、この増減に伴い、外気の導入量も調整可能となる。具体的には、ボルト33の間に把持部16bが突出しており、この間の把持部16bの周方向の移動によって、開口部16aと外気導入口10との重複度を、0~100%まで調整することができる。よって、開口部16aが外気導入口10と完全に重複しない位置では、シャッター部材16によって外気導入口10を完全に閉塞することができる。
【0062】
なお、排出弁体8と導入弁体9は、直動式なので、後述のようにアクチュエータ13を駆動させるだけでは、同時にそれぞれの排出口17と弁座口11とを閉塞することはできない。同時に閉塞する場合は、例えば、後述のように排出弁体8を全閉状態としておいた上で(導入弁体9を全開状態としておいた上で)、シャッター部材16を調整して開口部16aを全閉状態にすれば、外気と切換バルブ機構2内とを完全に遮断できる。
【0063】
次いで、上述の本例の作用を説明する。図5~7は、本発明の実施形態の一例である切換バルブ機構2の作用を示した断面図である。なお、これら図5~7、及び後述の本発明の実施形態の他の例(以下、「他例」という。)である図8、9は、何れも、図4(a)におけるA-A線断面に対応している。なお、外気導入側である図5から図9の下側から見た視点を基準として、同図上側をプッシュ側、同図下側をプル側と称し、プッシュ側は排出弁体8を集合排気ダクト7に向けて押し込むように閉じる方向、プル側は排出弁体8を集合排気ダクト7から引き出すように開く方向となる。
【0064】
図5は、排出弁体8の閉状態であり、導入弁体9は開状態である。この状態では、Oリング26がシール面27に密着して排出口17を密封しており、分岐ダクト6からの排気流体は集合排気ダクト7内へ流入できない。この状況は、例えば、図5の分岐ダクト6に連通する図示しないチャンバ内において、同図の集合排気ダクト7に対応した種類とは別種の処理流体によって、被処理体の処理が行われている状況に対応する。
【0065】
ここで、図1に示したように、1つの集合排気ダクト7には、複数のチャンバ4が、チャンバ4に接続し処理流体が排気される排気管5と、各チャンバ4、各排気管5に連通している分岐ダクト6と、切換バルブ機構2とを介して接続されており、チャンバ4ごとに処理が適宜制御されている。また、各集合排気ダクト7には、図示しない排気ポンプなどの負圧源が設けられて集合排気ダクト7内の排気流体を排気方向へ吸引している。なお、図1では、各集合排気ダクト7から上方向へ延びた矢印が示すX方向が排気方向であることを模式的に示しており、この場合、矢印が向いているX方向が排気の下流となり、図示していない負圧源は、この下流側に適宜設けられている。
【0066】
処理装置1は、このように構成された上で、処理の効率化のため、基本的に、1つの集合排気ダクト7は、これに対応した種類の処理流体による処理が行われているチャンバ4に連通した状態にある切換バルブ機構2を、常に有しており、このため、何れかの排出弁体8は常に開いた状態となっている。一方で、別種の処理流体による処理が行われているチャンバ4に接続されている切換バルブ機構2においては、排出弁体8は閉じているが、導入弁体9が開いて外気と連通している。よって、集合排気ダクト7には、このように開いている排出弁体8や導入弁体9を介して、何れかの排気処理中のチャンバ内や外気側を上流として、負圧源の方向に向けて定常的な排気流が形成されている。そして、本発明の処理装置1では、このような集合排気ダクト7内に常時形成されている排気流に対する、排気切換に伴う弁体の開閉動作の影響を、適切に抑制可能となっている。
【0067】
このため、図5においては、導入弁体9が全開なので、外気導入口10、弁座口11を介して、集合排気ダクト7内へ外気が導入される。図5では、外気の導入方向を、矢印Yで模式的に示しており、本例において具体的には、弁座口11から集合排気ダクト7内に導入された後、図5の紙面貫通方向(白抜き矢印の示す方向であり、図1の矢印が示すX方向に相当)へと導入されることになる。
【0068】
また、本例では、直動ロッド14の駆動源に、1つのエアシリンダ機構のアクチュエータ13を用いており、排出弁体8をプッシュ側に閉じる際は、エア室24にエアポート24aを介して圧縮エアを供給してピストン20をプッシュ側に駆動させると共に、プル側のエア室25からはエアポート25aを介してエアが排出される。逆に、導入弁体9をプル側に閉じる際は、プル側(同図上側)のエア室25にエアポート25aを介して圧縮エアを供給してピストン20をプル側に駆動させると共に、プッシュ側のエア室24からはエアポート24aを介してエアが排出される。
【0069】
なお、エアシリンダ機構のアクチュエータ13の駆動は、図示しない適宜の制御機構を介して、所定の自動制御が可能となるように構成されていれば好適であり、特に、弁体(排出弁体8、導入弁体9)の位置検知機能が備えられていれば、好適である。具体的には、導入弁体9の全閉位置を原点として、何れかの駆動部位(排出弁体8、導入弁体9、直動ロッド14など)の位置を検知できるセンサーなどが備えられていれば、チャンバ4からの雰囲気漏れを適切に検出し易くなるため、好適である。
【0070】
次に、図6は、排出弁体8を開く途中を示しており、よって、排出弁体8と導入弁体9とは、何れも開となっている。この状況は、例えば、図6の分岐ダクト6に連通している図1のチャンバ4内において、同図の集合排気ダクト7に対応した種類の処理流体による処理が行われた後、その処理流体を排気管5、分岐ダクト6を経由して同図の集合排気ダクト7に排気する状況に対応する。
【0071】
次いで、図7は、導入弁体9の全閉状態であり、よって、排出弁体8は全開状態である。この状態では、図2に示すOリング30がシール面19に密着して弁座口11を密封しており、外気導入口10からの外気は集合排気ダクト7内へ流入できない。この状態で、同図の分岐ダクト6に連通している図示しないチャンバ内から、排気管5、分岐ダクト6を経由して同図の集合排気ダクト7に対応した種類の処理流体を排気することができる。同図でも、排気された処理流体の導入方向を、矢印Zで模式的に示しており、排出口17から集合排気ダクト7内に導入された後、同図に示すように、同図の紙面貫通方向(白抜き矢印の示す方向であり、図1の矢印が示すX方向に相当)へと排気されることになる。
【0072】
ここで、チャンバ4内の処理流体を排気する際、すなわちチャンバ4の密封状態の開放又は閉塞の際に、チャンバ4内部空間の圧力変動を抑制するためには、少なくとも、チャンバ4内と直接連通している集合排気ダクト7内に形成されている定常的な排気流の状態を乱さないようにすることが有効である。この排気流には、上述の処理装置1の構成により、各切換バルブ機構2において、排出弁体8を介したチャンバ4内から排気された処理流体、又は導入弁体9を介した外気が、常に流入している。このため、これらの弁体を開閉する排気処理の際に、これらの流入量の変動を抑制することにより、集合排気ダクト7内の圧力変動を効果的に抑制することができ、よって、チャンバ4内の圧力変動の抑制にも大きく寄与する。
【0073】
そして、流入量変動の抑制のためには、流入流路断面積を、排出弁体8、導入弁体9の弁体開閉の前後で略一定に保つことが、少なくとも構造的に集合排気ダクト7内の排気流体の定常性を確保するにあたって有効である。この流入流路断面積は、切換バルブ機構2においては、排出弁体8と導入弁体9との流入流路面積の和であって、具体的には、集合排気ダクト7内から見た排出弁体8とシール面27とが形成する投影面積と、導入弁体9とシール面19とが形成する投影面積との和となる。
【0074】
本発明では、排出弁体8と導入弁体9を主面で対向させ、対向した主面に垂直な方向にアクチュエータ13により直動ロッド14を直動する。さらに、好ましくは、図5から図7に示すように排出口17及び弁座口11の開口面積を略同一となるように構成すると、図5~7に示すように、直動ロッド14が駆動する間、常に排出口17側と弁座口11側との流入流路断面積は、互いにトレードオフの関係に確実に保たれ、これらから流入する流体の流量も、略一定に保つことができる。
【0075】
このように、本発明の切換バルブ機構では、集合排気ダクトへ通じる流路断面積の総和を一定に保ち、これにより流入量の総和を略一定に保つことで、集合排気ダクト内の排気流体の圧力変動の効果的な抑制を実現するようにしている。しかも、導入弁体9および排出弁体8が集合排気ダクト7に内蔵され、導入弁体9が排出弁体8と同径の円盤状に設けられ、軸対称位置に設けられた3本の連結ロッド28を介して、排出弁体8に対して直動ロッド14の他端側に同心状に固着されているので、導入弁体9と排出弁体8の双方を対向させ、ロッドにより直動式に開閉されるから、切換バルブとして動作性も良好である。
【0076】
なお、集合排気ダクト7内に形成されている排気流へ、排出弁体8や導入弁体9から、処理流体又は外気が流入していく際には、さらに、処理流体又は外気の流れがなるべく乱れることなく、なるべくスムーズに流れに合流できるように構成されていれば、より好適である。特に弁体が開く際に、急激に集合排気ダクト7内へ流体が流入することがなく、この際の流入を適切に抑制できる構造が好適である。このため、後述するニードル部35のほか、所定構造・位置に設けたミストトラップや案内板など、流入流体を案内する構造的な改良を施すようにしても良い。
【0077】
続いて、本発明の切換バルブ機構の他例の構造を説明する。図8、9は、この他例の切換バルブ機構2を示した断面図であり、この切換バルブ機構2の排出弁体8には、この排出弁体8と排出口17とを流量調整するためのニードル部35が、それぞれ排出口17または弁座口11と面する主面に設けられている。なお、同図において、前述した本例(図2~7)の切換バルブ機構2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。また、アクチュエータ13による直動ロッド14の駆動作用や、排出弁体8や導入弁体9の開閉作用は、上述した本例と同様である。
【0078】
図8、9において、ニードル部35は、略円盤状に一体形成され、先端部が排出口17の内径よりも小さい外径を有し、排出弁体8に面する側が排出弁体8のOリング26側に同心状に固定されており、具体的には、中空カップ状の形態を呈している。具体的には、この他例では、中央位置のボルトで、直動ロッド14の先端部に同心状に挿通させて固着している。また、ニードル部35には、この固定状態において、排出口17側に向けて縮径する外周テーパ面36(テーパ部)が形成されている。ニードル部35にテーパがあることで、排出弁体8(外周テーパ面36)とシール面27との密閉度がより高まる。テーパの形成により、シール面27と排出弁体8との間に排気ガスが残留し、集合排気ダクト7内に排気ガスが結晶化してしまうことを抑えることができる。それにより、長時間のメンテナンスが不要となる。また、テーパがあることで、直動ロッドを片方のみで軸を支持する構造であっても、シール面27の排出弁体8への挿入において位置ズレが起こりにくくなる。なお、ニードル部35は、同図においては排出弁体8と別体に構成されているが、このような構成の他、排出弁体8と一体的に構成するなど、その構成は実施に応じて任意に選択可能である。
【0079】
図8、9に示すように、この外周テーパ面36により、排出弁体8を開く際、又は閉じる際には、外周テーパ面36とシール面27との間の流路断面積の変化を緩和させることができるから、シール面27に対する排出弁体8の移動による排出口17の開閉の際に、分岐ダクト6から集合排気ダクト7へ排気が流入する流入量の変動を、さらに適切に緩和させることができ、集合排気ダクト7内の圧力変動を抑制できる。このニードル部35を有さない場合には、開閉の際の流入量変動は、さらに急激な変化となり得る。
【0080】
また、図6に示すような中間開度においても、排出口17からの流入流体の勢いによって、集合排気ダクト7内の圧力変動が大きい場合がであっても、図8、9に矢印で示したように、この流入流体はニードル部35(外周テーパ面36)に当たってスムーズに集合排気ダクト7内へと案内されるので、集合排気ダクト7内が乱されることなく圧力変動も抑制できる。なお、図示していないが、このニードル部35と同様に構成されたニードル部材を導入弁体9に固定してもよい。
【0081】
すなわち、導入弁体9と同心状に固定可能であり、この固定状態で、弁座口11側へ向けて縮径する外周テーパ面を有するニードル部材を、導入弁体9のOリング30側へ固定すれば、外気導入口10を介した外気流入を、上記の排気流入と同様に、スムーズな流れに緩和でき、圧力変動も抑制できる。さらに、圧力変動の抑制により、導入弁体9の開閉に伴う外気導入口10を介した流体の急激な流出入も抑制できるから、例えば、集合排気ダクト7内の処理流体の雰囲気が、導入弁体9を開いた際に外部へ漏出する現象も適切に抑制することも可能となる。
【0082】
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 処理装置
2 切換バルブ機構
3 切換バルブユニット
4 チャンバ
5 排気管
6 分岐ダクト
7 集合排気ダクト
8 排出弁体
9 導入弁体
10 外気導入口
11 弁座口
12 保持板
13 アクチュエータ
14 直動ロッド
17 排出口
26 30 Oリング(シール部材)
35 ニードル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10