(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】汚泥除去用治具及び汚泥除去方法
(51)【国際特許分類】
E03F 9/00 20060101AFI20240115BHJP
B08B 9/035 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
E03F9/00
B08B9/035
(21)【出願番号】P 2020065645
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由希子
(72)【発明者】
【氏名】木下 真佐美
(72)【発明者】
【氏名】羽田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】城野 辰巳
(72)【発明者】
【氏名】工藤 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】渕上 佳之
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 和昭
(72)【発明者】
【氏名】平井 勝
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-061235(JP,A)
【文献】特開昭58-131182(JP,A)
【文献】特開2007-016469(JP,A)
【文献】特開昭52-094646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 9/00
B08B 9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積した汚泥を除去する際に用いる汚泥除去用治具であって、
後方側が吸引用のホースに接続される筒状の吸引部と、
前記吸引部の先端に設けられた汚泥切削部材と、を有し、
前記汚泥切削部材が設けられた前記吸引部の重心よりも後方側の前記吸引部の側面両側に設けた軸に、前記吸引部の
上下方向に回動可能な牽引部が設けられ、
前記牽引部の先端部は、牽引用のワイヤー類が取り付け可能になっていることを特徴とする、汚泥除去用治具。
【請求項2】
前記吸引部の周面に吸込み孔が形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の汚泥除去用治具。
【請求項3】
前記牽引部の回動範囲が制限されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の汚泥除去用治具。
【請求項4】
前記牽引部の回動範囲の制限は、前記牽引部に設けられたストッパによって行われることを特徴とする、請求項3に記載の汚泥除去用治具。
【請求項5】
前記ストッパは、前記牽引部の回動中心となる軸よりも後方側に設けられ、前記牽引部が回動した際に前記吸引部の外周に当接することで前記回動範囲を制限する、請求項4に記載の汚泥除去用治具。
【請求項6】
前記汚泥切削部材は、前方からみて櫛刃形状の切削部を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の汚泥除去用治具。
【請求項7】
前記汚泥切削部材の本体は、すくい部を有するショベルバケット形状を有していることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の汚泥除去用治具。
【請求項8】
前記汚泥切削部材の本体は、上下対称形状を有していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の汚泥除去用治具。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の汚泥除去用治具を、除去対象とする汚泥が堆積している配管、側溝、水槽または貯留槽内に設置し、
牽引用のワイヤー類の一端部を前記牽引部の先端部に取り付け、
前記吸引部に吸引用のホースを接続し、
前記一端部を取り付けたワイヤー類を前方側に牽引しながら、前記吸引ホースを介して、吸引ポンプで吸引部内を吸引することを特徴とする、汚泥除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管や側溝、水槽、各種貯留槽の底部に堆積した汚泥の除去作業を行うために用いる治具および当該治具を用いた汚泥除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば配管についていうと、一般的に、工場から排出される排水は、水処理されたあと配管を通って外部に排出される。また表面排水は敷地、道路から側溝を経由して配管内に汚濁物質を含む排水が流入し、配管内底部に汚泥が堆積する。大雨等で流量が増えた際に堆積した汚泥が外部にそのまま流出すると環境事故となるため、その防止のために配管内の汚泥を除去する必要がある。
【0003】
この点に関し、例えば特許文献1には、自走式で底面に沿って左右回転自在なアーム体と、その先端に配置された吸引ポンプで汚泥を除去することが記載されている。
また特許文献2には、通水状態で、汚泥回収配管内に付着又は堆積する汚泥を掻取刃で剥離させ、剥離した汚泥を水処理設備まで回収することが記載されている。
さらに特許文献3には、管内を断水状態にし、中空シール部材を先端に具備するホースを挿入してシール部材を膨張させて管内をシールし、そのまま挿入部近くまで移動させることで汚泥を集めることが記載されている。そして集めた堆積物は吸引ホースで吸引して外部に排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-183080号公報
【文献】特開平9-75878号公報
【文献】特開平1-131736公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の技術は、大掛かりな装置が必要であり、また堆積物を吸引して除去するだけのものであり、固まった汚泥は吸引できず除去できない問題がある。また除去できていない汚泥の上を自走した場合、汚泥を巻き上げ外部に流出させて環境事故につながるおそれがある。
また特許文献2の技術は、配管の下流側に水処理設備があることが前提であり、通水状態で汚泥を剥離させるものの吸引は行わないため、配管から水処理設備を経ずに外部に排水する場合、後段へ剥離した汚泥が流れて環境事故につながるという問題がある。
そして特許文献3の技術は、管内を断水状態にして実施するものであるため、断水作業のための潜水夫が必要となり安全面にリスクが残る。また断水するために乾季に作業が限定されてしまう。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、配管等の底に堆積した汚泥が固まっていても、断水状態にすることなく、かつ汚泥を巻き上げずこれを除去し、配管等の外に排出することを可能にして、前記問題の解決を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明は、堆積した汚泥を除去する際に用いる汚泥除去用治具であって、後方側が吸引用のホースに接続される筒状の吸引部と、
前記吸引部の先端に設けられた汚泥切削部材と、を有し、前記汚泥切削部材が設けられた状態の前記吸引部の重心よりも後方側の前記吸引部の側面両側に設けた軸に、前記吸引部の上下方向に回動可能な牽引部が設けられ、前記牽引部の先端部は、牽引用のワイヤー類が取り付け可能になっていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、除去対象とする汚泥が堆積している配管、側溝、水槽または貯留槽内に汚泥除去用治具を設置し、牽引用のワイヤー類の一端部を前記牽引部の先端部に取り付け、前記吸引部に吸引ホースを接続する。そして前記一端部を取り付けたワイヤー類を、例えばウインチなどによって前方側に牽引しながら、前記吸引ホースを介して吸引ポンプで吸引部内を吸引することで、前記吸引部の先端に設けられた汚泥切削部材が汚泥を切り崩していき、切り崩されてほぐされた汚泥は吸引部内に送られ、吸引ポンプによる吸引によって、外部へ排出することができる。
したがって汚泥がたとえ固まったものであっても、これを切り崩して吸引することができ、また断水状態にすることなく通水状態、貯留状態のまま配管等の外に排出することができる。また自走式ではないから、汚泥が堆積している配管等内を乱さずこれを除去することが可能である。装置自体も大掛かりなものとはならない。
また前記汚泥切削部材が設けられた状態の吸引部の重心よりも後方側の前記吸引部の側面両側に設けた軸に、前記吸引部の上下方向に回動可能な牽引部が設けられているので、牽引する際に汚泥切削部材の先端部は下方に下がり、汚泥内に潜り込ませることができる。なおここでいうワイヤー類とは、牽引に供するワイヤーなどの線材、ロープをいう。
【0009】
前記吸引部の周面に吸込み孔が形成されていてもよい。これによって吸引部外側の汚泥と排水も同時に吸引部内に取り込んで、吸引部内に取り込んだ汚泥の流動性を高めて、排出をより円滑にすることが可能であり、吸引部内でのつまり、閉塞を抑えることができる。また吸込み孔は孔形状であるから、小石、礫、他の異物を吸引部内に取り込むことを抑制することができる。
【0010】
前記牽引部の回動範囲が制限されていてもよい。これによって、牽引部の回動中心の位置と相まって、牽引時の浮き上がりや過剰な潜り込みを抑え、常に適切な範囲で汚泥を切削、除去することができる。
【0011】
前記牽引部の回動範囲の制限は、前記牽引部に設けられたストッパによって行われるようにしてもよい。
またこの場合、前記ストッパは、前記牽引部の回動中心となる軸よりも後方側に設けられ、前記牽引部が回動した際に前記吸引部の外周に当接することで前記回動範囲を制限する構成のものとしてもよい。例えばストッパを湾曲形状、円弧形状とすることで、ストッパとして機能した際に、吸引部における応力の集中を緩和することができる。
【0012】
前記汚泥切削部材は、前方からみて櫛刃形状の切削部を有するものであってもよい。この櫛刃形状の切削部によって、固まった汚泥や群集した汚泥であってもこれを適切に細かく切り崩してほぐして吸引することができ、吸引部での閉塞を防止して吸引、排出をより円滑にすることが可能である。
【0013】
前記汚泥切削部材の本体は、たとえばすくい部を有するショベルバケット形状とすることが提案できる。かかる形状とすることで、配管内等の底部に堆積した汚泥をすくい上げてこれを切り崩すことができ、底部の汚泥の取り残しを抑制することが可能である。
【0014】
前記汚泥切削部材の本体を上下対称形状とすれば、牽引中に吸引部の上下が反転しても、汚泥切削部材が保有する機能を損ねることなく、そのまま除去作業を実施することができる。
【0015】
本発明の汚泥除去方法は、前記した汚泥除去用治具を、除去対象とする汚泥が堆積している配管、側溝、水槽または貯留槽内に設置し、牽引用のワイヤー類の一端部を前記牽引部の先端部に取り付け、前記吸引部に吸引用のホースを接続し、前記一端部を取り付けたワイヤー類を前方側に牽引しながら、前記吸引用のホースを介して、吸引ポンプで吸引部内を吸引することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配管等の底に堆積した汚泥がたとえ固まったものであっても、断水状態にすることなく、かつ配管等内を乱さずこれを除去し、そして配管等の外に排出することが可能である。また治具自体は大掛かりなものとはならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態にかかる汚泥除去用治具の平面図である。
【
図2】実施の形態にかかる汚泥除去用治具の汚泥切削部材の軸方向から見た正面図である。
【
図3】実施の形態にかかる汚泥除去用治具の側面図である。
【
図4】実施の形態にかかる汚泥除去用治具の前方側から見た斜視図である。
【
図5】実施の形態にかかる汚泥除去用治具の後方側から見た斜視図である。
【
図6】実施の形態にかかる汚泥除去方法の実施の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図1~
図5に示すように、実施の形態にかかる汚泥除去用治具1は、筒状の吸引部10を有している。吸引部10の後端部には、後述の吸引用のホースHと接続される接続部11を有している。また吸引部10の周面には、内部に連通する吸込み孔12が複数設けられている。本実施の形態では吸引部10の長手方向に沿って長い長孔形状であるが、吸込み孔12の形状、並びにその大きさ、数は除去対象とする汚泥の性状、堆積している配管、側溝、水槽、各種貯留槽内の状況に応じて、任意に設定することができる。
【0020】
吸引部10の先端には、汚泥切削部材20が設けられている。汚泥切削部材20の後方側は吸引部10内に連通している。汚泥切削部材20の本体21は、
図3、
図4に示したように、上下にすくい部21a、21bを有するショベルバケット形状を有している。本実施の形態では、汚泥切削部材20の本体21はこのように上下にすくい部21a、21bを有する上下対称形状である。
【0021】
さらに汚泥切削部材20は、
図2、
図4に示したように、前方(正面)からみて櫛刃形状の切削部22を備えている。切削部22は、
図2に示したように、縦方向に配置される刃体を所定間隔、例えば10mm~50mmのピッチで左右方向に並べられている。
【0022】
このようにして汚泥切削部材20が設けられた状態の吸引部10の重心よりも後方側の汚泥切削部材20の両側には、
図1に示したように、牽引部30の回動中心となる軸13、14が設けられている。なお汚泥切削部材20を汚泥に潜り込ませることを容易にするため、汚泥切削部材20は例えば30kg以上の質量を有することが好ましい。
【0023】
牽引部30は、
図1に示したように、平面視でカタカナ文字のコ字型形状を有し、
図1、
図4、
図5に示したように、先端部30aと先端部30aの両端部から後方側へと延びる側面部30b、30cとを有している。
【0024】
牽引部30の先端部には、先端側に突出したブラケット31が設けられており、ブラケット31には、貫通孔31aが形成されている。
【0025】
牽引部30の側面部30b、30cには、吸引部10の両側に設けられた軸13、14が挿通し、軸13、14の端部が側面部30b、30cから外側に突出している。そして突出した軸13、14の端部には、各々脱落防止用の例えばナット部材15、16が設けられている。かかる構成により、牽引部30は
図3に示したように、軸13、14を回動中心として、吸引部10の
上下方向に回動自在である。
【0026】
牽引部30の側面部30b、30cの後端部には、側面部30b、30cの後端部間の上側にまたがる半円弧状の上側ストッパ32と、側面部30b、30cの後端部間の下側にまたがる半円弧状の下側ストッパ33が設けられている。これら上側ストッパ32と下側ストッパ33により、
図3に示したように、牽引部30の回動範囲は制限される。すなわち、牽引部30の前方側が上側に回動する場合には、その後端部に設けられている上側ストッパ32が吸引部10の上側外周に当接するまで回動可能であり、牽引部30の前方側が下側に回動する場合には、その後端部に設けられている下側ストッパ33が吸引部10の下側外周に当接するまで回動可能となる。このように牽引部30の回動範囲は、これら、上側ストッパ32と下側ストッパ33によって回動範囲が制限されている。
【0027】
実施の形態にかかる汚泥除去用治具1は以上の構成を有しており、次にこの汚泥除去用治具1を用いた汚泥除去方法について説明する。
図6は実施の形態にかかる汚泥除去方法の実施の様子を示し、この例では土中に埋設された配管41内に堆積している汚泥Dを除去する場合を説明する。
【0028】
この配管41は、所定間隔ごとに設置されている本管桝42、43、44間に施工されている。そしてまず汚泥除去用治具1を除去対象となる汚泥が堆積している配管41内に設置するのであるが、かかる場合、本管桝42、43、44を利用して配管41内に搬入、設置する。本実施の形態では、本管桝43を利用して搬入する。
【0029】
既述したように、汚泥除去用治具1の吸引部10の後端部には、吸引用のホースHが接続されるが、当該ホースHは、ホースガイド治具45を介して地上にある吸引ポンプ46と接続されている。そして吸引ポンプ46によって吸引された汚泥を含む配管41内の排水は、配管47によって貯留ピット48に送られる。貯留ピット48は沈殿槽として機能し、流入した汚泥は貯留ピット48内で沈殿する。そして貯留ピット48内の上澄みの排水が、配管49を介して濁水処理装置50へと送られ、濁水処理装置50で濁水処理された排水は、例えば配管51を介して本管桝44を経由して配管41内に戻される。
【0030】
汚泥除去用治具1は、例えばクレーンで吊り下げて本管桝43から配管41内に搬入し、例えば作業員が吸引部10の後端部にホースHを接続して、所定位置にセットされる。一方、牽引用のウインチ61は、例えば本管桝42の地上出口付近に設置され、ワイヤー巻き上げ架台62を介して、牽引用のワイヤーWが配管41内に引き出され、その端部が汚泥除去用治具1の牽引部30先端のブラケット31に形成されている貫通孔31aに取り付けられる。
【0031】
その後はウインチ61を作動させてワイヤーWを巻き上げ、汚泥除去用治具1を前方側へ牽引しながら、吸引ポンプ46を作動させて吸引部10内を吸引するだけでよい。これによって、汚泥切削部材20が切り崩してほぐした汚泥Dが、吸引部10内からホースHを経由して、貯留ピット48内へと排出される。
【0032】
またそのような汚泥の除去、排出していく際、また汚泥切削部材20が設けられた状態の吸引部10の重心よりも後方に牽引部30の回動支点が設定されるので、常に汚泥切削部材20を汚泥に潜り込ませることが容易である。しかも牽引部30と吸引部10との相対的回動範囲が上側ストッパ32、下側ストッパ33によって制限されているから、牽引中に汚泥切削部材20が浮き上がってしまうことや過剰に潜り込んでしまうことが抑えられている。したがって常に汚泥Dを適切に切り崩して除去することが可能である。
【0033】
そして本実施の形態にかかる汚泥除去用治具1は自走式ではないため、進行中に汚泥Dを巻き上げることはなくその移動が可能であり、配管41内を乱さず、下流の水質に影響を与えない。もちろん配管41内を断水状態にする必要はなく、配管41内が通水状態のまま汚泥Dの除去、排出が可能である。
【0034】
さらにまた、本実施の形態では、汚泥切削部材20の本体21は、上下にすくい部21a、21bを有するショベルバケット形状を有しているから、堆積している汚泥Dをすくい上げて切削部22で切り崩し、その後吸引部10へと効果的に流入させることが可能である。また汚泥切削部材20、さらには本実施の形態では吸引部10自体も上下対称形状であるから、牽引中に汚泥除去用治具1が反転して上下が入れ替わっても機能的には変わらず、効果を損ねることなく汚泥Dの除去、排出作業を実施することが可能である。
【0035】
また牽引部30と吸引部10との相対的回動範囲を制限している上側ストッパ32、下側ストッパ33の形状は、円弧形状であるから、筒状の吸引部10の外周に当接してストッパとして機能した際も、応力の集中が緩和されている。もちろんストッパの構成は、かかる形状、構成に限られない。例えば汚泥切削部材20の側面に外側に突出したストッパを設けるなどしてもよい。そして前記した例では、上側ストッパ32、下側ストッパ33は、牽引部30の側面部30b、30cの後端部に位置しているから、回動支点となる軸13、15から離れており、その分ストッパとして機能した際の上側ストッパ32、下側ストッパ33にかかる荷重が小さい。
【0036】
そして吸引部10の周面には吸込み孔12が設けられているから、これによって吸引部10外側の汚泥と排水も同時に吸引部10内に取り込んで、吸引部10内に取り込んだ汚泥の流動性を高めて、排出をより円滑にすることが可能である。また吸引部10内でのつまり、閉塞を抑えることができる。
【0037】
なお本実施の形態では、汚泥切削部材20は、櫛刃形状の切削部22を有するものとしたが、切削部22の形状はこれに限られない。
また前記した実施の形態では、汚泥切削部材20の後方側が吸引部10内に連通している構成としていたが、連通しない構成としてもよい。すなわち、吸引部10の先端が閉塞した構造のものを用い、当該閉塞した吸引部10の先端に汚泥切削部材20の後方側を固定してもよい。かかる構成を採ることで汚泥切削部材20と吸引部10との固定をより強固にできる。この場合、汚泥切削部材20で切削して切りほぐした汚泥は、吸引部10の周面に設けられた吸込み孔12から吸引部10内に吸引される。かかる場合、吸引部10の閉塞先端部と固定されていない汚泥切削部材20の後端面は、開口形状としてもよい。これによって、切削部22で切り崩した汚泥を当該開口からも後方へ送ることができ、汚泥切削部材20で切り崩してほぐした汚泥を、より円滑に吸引部10の周面へとガイドすることができる。
【0038】
さらにまた本実施の形態では、配管41内に堆積した汚泥Dを除去する場合について説明したが、もちろんこれに限らず、汚泥が堆積している側溝、水槽、各種貯留槽内の当該汚泥の除去、排出にも適用できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、配管、側溝、水槽、各種貯留槽内の汚泥の除去、排出に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 汚泥除去用治具
10 吸引部
11 接続部
12 吸込み孔
13、14 軸
15、16 ナット部材
20 汚泥切削部材
21 本体21
21a、21b すくい部
22 切削部
30 牽引部
30a 先端部
30b、30c 側面部
31 ブラケット
31a 貫通孔
32 上側ストッパ
33 下側ストッパ
41 配管
42、43、44 本管桝
45 ホースガイド治具
46 吸引ポンプ
47、49、51 配管
48 貯留ピット
50 濁水処理装置
61 ウインチ
62 ワイヤー巻き上げ架台
D 汚泥
H ホース
W ワイヤー