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特許7419156捩じり振動低減装置の製造方法および捩じり振動低減装置
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  • 特許-捩じり振動低減装置の製造方法および捩じり振動低減装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】捩じり振動低減装置の製造方法および捩じり振動低減装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20240115BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16F15/134 D
F16F15/134 A
F16H45/02 Y
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020083167
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021179216
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】300034334
【氏名又は名称】ヴァレオカペックジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】山本 喜誉司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 司
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 宏樹
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0150168(US,A1)
【文献】特開2016-156416(JP,A)
【文献】特開2020-007603(JP,A)
【文献】特開2012-011295(JP,A)
【文献】特開2004-011820(JP,A)
【文献】特開2013-083327(JP,A)
【文献】特開2005-282652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0263340(US,A1)
【文献】特開平09-126298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16D 25/00- 39/00
F16D 48/00- 48/12
F16H 39/00- 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータに内蔵される捩じり振動低減装置の製造方法であって、前記捩じり振動低減装置が、入力回転部材と、中間回転部材と、出力回転部材と、前記入力回転部材および前記中間回転部材の相対回転に伴い圧縮される円周方向に沿って配置された複数の第1コイルスプリングと、前記中間回転部材および前記出力回転部材の相対回転に伴い圧縮される円周方向に沿って配置された複数の第2コイルスプリングとを有し、前記複数の第1コイルスプリングが前記入力回転部材および前記中間回転部材に設けられたスプリング保持部により、そして前記複数の第2コイルスプリングが前記中間回転部材および前記出力回転部材に設けられたスプリング保持部により保持されるように構成されている、前記捩じり振動低減装置の製造方法において、
前記中間回転部材および前記出力回転部材に油抜き用開口が設けられ、
前記製造方法は、
前記捩じり振動低減装置の製造時に用いられた油であって、前記捩じり振動低減装置の内部に滞留する前記油を油洗浄液で洗浄することと、
前記油抜き用開口を介して、前記捩じり振動低減装置内に残留する油または油洗浄剤を重力または遠心力を利用して排出すること、あるいは、前記油抜き用開口を介して、前記捩じり振動低減装置の内部に風を送り込むことにより、前記捩じり振動低減装置内に残留する油または油洗浄剤を別の油抜き用開口のところに移動させて当該別の油抜き用開口から排出することと、
を備えている、前記捩じり振動低減装置の製造方法。
【請求項2】
トルクコンバータに内蔵される捩じり振動低減装置であって、前記捩じり振動低減装置が、入力回転部材と、出力回転部材と、前記入力回転部材および前記出力回転部材の相対回転に伴い圧縮される円周方向に沿って配置された複数のコイルスプリングとを有し、前記複数のコイルスプリングが前記入力回転部材および前記出力回転部材に設けられたスプリング保持部により保持されるように構成されており、
前記出力回転部材は、互いに結合されたピストンプレートおよびホールドプレートを有し、前記ピストンプレートおよび前記ホールドプレートのスプリング保持部の互いに対応する位置に油抜き開口が設けられており、前記捩じり振動低減装置の製造時に、前記油抜き用開口を介して、前記捩じり振動低減装置内に残留する油または油洗浄剤を重力または遠心力を利用して排出すること、あるいは、前記油抜き用開口を介して、前記捩じり振動低減装置の内部に風を送り込むことにより、前記捩じり振動低減装置内に残留する油または油洗浄剤を別の油抜き用開口のところに移動させて当該別の油抜き用開口から排出することが可能となっていることを特徴とする捩じり振動低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側で発生するトルク変動を緩和して出力側へと伝達し得る捩じり振動低減装置の製造方法および捩じり振動低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、燃料を間欠燃焼させて動力を得るので捩じり振動(トルク変動)が発生する。この捩じり振動を低減するため、動力伝達経路の入力側で発生するトルク変動を弾性体により低減して出力側へと動力を伝達する捩じり振動低減装置が設けられる。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている捩じり振動低減装置は、ドライブプレート(ホールドプレート)、ドライブプレートに対設するドリブンプレート、およびバックプレートが同心状に並設され、かつ、バックプレートが、ホールドプレートの外周を覆いドライブプレートとドリブンプレートに対して相対回転可能であり、ホールドプレートの外周面とバックプレートの内周面の間に形成されたばね収容部に振動吸収ばねが保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-156416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
捩じり振動低減装置に関し、ドライブプレートとドリブンプレートとバックプレートはいずれもプレス成型品で構成され成形時にプレス加工油が使用され、さらにドライブプレートとドリブンプレートとバックプレートのうち、コイルスプリングを保持する部品(装置部品)については焼き入れ処理を行うため焼き入れ油が使用され、また組立時には、防錆油が使用される。
【0006】
プレス加工油や焼き入れ油の使用後に油除去剤を用いて装置部品から油除去が行われるが、装置部品を油洗浄剤から引き上げてから、装置部品を濡らしている油洗浄剤を短時間で除去するには、装置部品の回転中心線を水平に保って重力を利用して装置部品の下側に流下させて垂れ落とし、さらに、装置内面側に乾かない状態で付着している液膜を短時間に流下・除去・乾燥させるためハンドドライヤーを用いている。
【0007】
しかしながら、バックプレートは、周方向に直交する断面形状がコイルスプリングを受け止める凹条部になっているので、捩じり振動低減装置の下部に対応するバックプレートの内周面に溜まる液膜についてはハンドドライヤーを用いて乾燥させようとしても、周方向により薄い膜となって逃げてしまい、このため、乾燥に時間がかかり、生産工程上の問題になっている。また、コイルスプリングは両側のばねガイドとバックプレートで覆われているのでコイルスプリングにハンドドライヤーの熱風を空当てにくく、コイルスプリングに付着している油洗浄剤の液膜を短時間に除去することが難しい。
【0008】
防錆油については、油洗浄剤を用いた除去を行うものではなく、防錆油の余分の除去を行うものである。余分の除去は、組立品の回転中心線を水平に保って重力を利用して流下させさらにハンドドライヤーなどを用いて乾燥しているか、または、組立品の回転軸を鉛直に保って回転させ、遠心力を作用させて除去を行い、次いで乾燥を行っている。しかしながら、プレス加工油や焼き入れ油の使用後の油除去剤の除去の場合と同様に、乾燥に時間がかかり、生産工程上の問題になっている。
【0009】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、防錆油の余分の除去、油洗浄剤の除去を良好かつ短時間に行うことができ、また併せて軽量化が図れる捩じり振動低減装置の製造方法および捩じり振動低減装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、トルクコンバータに内蔵される捩じり振動低減装置の製造方法であって、入力回転部材と出力回転部材とが円周配置の複数のコイルスプリングおよび中間回転部材を介して連結され、複数の前記コイルスプリングに対し直径方向外方または側方から保持するスプリング保持部を有する前記入力回転部材、前記中間回転部材および前記出力回転部材の少なくともいずれか1つの部品製造時に遠心力機能、落下機能、風力機能のいずれか少なくとも1つとしての油抜き用開口を前記スプリング保持部に設けることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様は、トルクコンバータに内蔵される捩じり振動低減装置の製造方法であって、入力回転部材と出力回転部材とが円周配置の複数のコイルスプリングを介して連結され、複数の前記コイルスプリングに対し直径方向外方または側方から保持するスプリング保持部を有する前記入力回転部材と前記出力回転部材の少なくともいずれか1つの部品製造時に遠心力機能、落下機能、風力機能のいずれか少なくとも1つとしての油抜き用開口を前記スプリング保持部に設けることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様は、トルクコンバータに内蔵される捩じり振動低減装置であって、入力回転部材と出力回転部材とが円周配置の複数のコイルスプリングおよび中間回転部材を介して連結され、複数の前記コイルスプリングに対し直径方向外方または側方から保持するスプリング保持部を有する前記入力回転部材、前記中間回転部材および前記出力回転部材の少なくともいずれか1つに遠心力機能、落下機能、風力機能のいずれか少なくとも1つとしての油抜き用開口が前記スプリング保持部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の態様は、トルクコンバータに内蔵される捩じり振動低減装置であって、入力回転部材と出力回転部材とが円周配置の複数のコイルスプリングを介して連結され、複数の前記コイルスプリングに対し直径方向外方または側方から保持するスプリング保持部を有する前記入力回転部材と前記出力回転部材の少なくともいずれか1つに遠心力機能、落下機能、風力機能のいずれか少なくとも1つとしての油抜き用開口が前記スプリング保持部に設けられている
ことを特徴とする。
【0014】
遠心力機能、落下機能、風力機能のいずれか少なくとも1つとしての油抜き用開口とは、捩じり振動低減装置の部品製造時に、プレス加工油または焼き入れ油の使用の装置部品の回転中心線を水平に保って重力を利用して装置部品の下側に流下させて集まる油を抜く機能、その後に装置部品を油除去用洗浄剤に浸漬して引き上げてから再び装置部品の回転中心線を水平に保って重力を利用して装置部品の下側に流下させて集まる油除去用洗浄剤を抜く機能、さらに、装置内面側に乾かない状態で付着していてハンドドライヤーを用いて付着位置を移動する液膜を開口に向けて追い込んで追い出す通路としての追い出し通路機能、および捩じり振動低減装置の組み立て後に、防錆油を万遍なく塗布してから余分を除去する際、および防錆油を添付する前に部品製造時より残留していることがある油膜を除去する際に、部品製造時と同様に、重力作用、遠心力作用、またはハンドドライヤー等を用いた風力作用による油膜の追い込み移動におえる油膜の抜け口機能を有する油抜き用開口をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、中間回転部材、出力回転部材は、プレス加工による成形後に第1の油抜き用開口と第2の油抜き用開口を設けてから焼き入れを行い、さらに捩じり振動低減装置として組立後に防錆油を塗布する。この製造工程において、プレス加工油または焼き入れ油の使用の後に洗浄剤による油除去と、油を含む洗浄剤の除去と、余分な防錆油の除去を順に行うが、油抜き用開口とが設けられていることにより、油抜き用開口を通して油除去と油を含む洗浄剤の除去と余分な防錆油の除去と短時間に行うことができる捩じり振動低減装置の製造方法および振動低減装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る捩じり振動低減装置の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る捩じり振動低減装置の構成要素であるドライブプレートの斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る捩じり振動低減装置の要部の概略断面図である。
図4A】本発明の第2の実施の形態に係り、捩じり振動低減装置の斜視図である。
図4B】本発明の第2の実施の形態に係り、図4AにおけるIV-IV断面図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る捩じり振動低減装置を含むトルクコンバータの回転軸に対し上半分を示す縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る捩じり振動低減装置について図面を参照して説明する。本実施の形態に係る捩じり振動低減装置は、自動車の内燃機関とトランスミッションとの間に配設されるトルクコンバータ内に組み込まれるロングトラベルダンパとしての捩り振動低減装置を示す。
【0018】
[第1の実施の形態]
まず、本実施の形態に係る捩じり振動低減装置の基本的構成を説明する。
【0019】
図1に示すように、捩じり振動低減装置1は、タービンハブ11に固定されるドライブプレート(出力回転部材)12と、ドリブンプレート(入力回転部材)13と、バックプレート(中間回転部材)14とが同心状に並設され、これらのプレートが、コイルスプリング(振動吸収ばね)15を保持し、ドライブプレート12とドリブンプレート13との相対回転によってコイルスプリング15が許容最大圧縮状態となる前に、これらの相対回転を規制するストッパー手段として複数のコイルばね16を備えている。
【0020】
図3に示すように、タービンハブ11は、入力回転部材と、筒部と、筒部の奥行端より縮径して延在する円錐台状筒部と、円錐台状筒部の小径端より延在する環状円板部とを有する形状である。タービンハブ11は、筒部の内周面に雌スプラインを有し、トランスミッション(不図示)の入力軸の雄スプラインに被嵌する。
【0021】
ドライブプレート12は、略円環状に形成されており、円環板状の内周部がタービンハブ11の環状円板部と重ねられ第1のリベット17で固定されている。
【0022】
ドリブンプレート13は、略円環状に形成されており、ドライブプレート12と対向するように配され、ドライブプレート12に対して離間せず所定角度だけ相対回動可能に設けられている。
【0023】
具体的には、ドリブンプレート13の中心孔の孔径がドライブプレート12の中心孔の孔径よりも小径であり、ドリブンプレート13の中心孔を取り囲む内周板状部13aに、円環状でかつ断面形状が段差板状の連結ガイド18が重ねられ第2のリベット19で固定されており、ドリブンプレート13の内周板状部13aと連結ガイド18とがドライブプレート12の中心孔を取り囲む内周板状部12fを挟んでいて、かつ、連結ガイド18の外周端がタービンハブ11の環状円板部の内周端と摺動可能に当接しており、さらに、ドライブプレート12の中心孔の縁よりドリブンプレート13の方向に突出する折り曲げ片12aがドリブンプレート13に開設された掛止孔13b内に所定の遊びストロークを有するように進入している。
【0024】
図2図3に示すように、バックプレート14は、円筒部14aと、円筒部14aの両側よりそれぞれ内方に延在する一対の円環状のリブ14b,14cとを有する形状に形成されており、円筒部14aと一対の円環状のリブ14b,14cとでコイルスプリング15の外周側部分を受け入れるばね収容空間となっている。
【0025】
バックプレート14のドリブンプレート13側のリブ14bは、ドライブプレート12の外周縁の複数箇所より延在する外側ガイド部12bと内側ガイド部12cに挟まれて移動を規制されドライブプレート12とドリブンプレート13に対して相対回転可能に設けられている。
【0026】
図1図3に示すように、ドライブプレート12の外周4等分位置に外方にU形に屈曲延在する第1のばね受け部12dと、ドリブンプレート13の外周4等分位置であって、第1のばね受け部12dのU形に屈曲部に進入して屈曲延在する第2のばね受け部13cと、隣り合う第1のばね受け部12dと第1のばね受け部12dとの間で、かつバックプレート14の外周4等分位置より延在していて、バックプレート14の内周面である凹条面を包むように設けられた第3のばね受け部14dとが、8個のコイルスプリング15を所定の圧縮状態(蓄勢状態)に挟んでいる。
【0027】
そして、さらに8個のコイルスプリング15をドライブプレート12の外周位置に形成された第1のばねガイド12eと、ドリブンプレート13の外周位置に形成された第2のばねガイド13dと、バックプレート14の内周面である凹条面とで8個のコイルスプリング15を円周配置に保持している。各第3のばね受け部14dの両側の2個のコイルスプリング15を繋ぎ合わせるように、2個のコイルスプリング15を継ぎ足した長さより短くかつアーチ状に湾曲した金属線20がコイルスプリング15のコイル中心に挿通され、この金属線20を第3のばね受け部(スプリング保持部)14dが包んでいる。
【0028】
ドライブプレート12とドリブンプレート13との相対回転によってコイルスプリング15が許容最大圧縮状態となる前に、これらの相対回転を規制するストッパー手段として、ドライブプレート12とドリブンプレート13との間に保持される複数のコイルばね16を具えている。
【0029】
次に、本実施の形態に係る捩じり振動低減装置1の特徴的構成を説明する。
【0030】
図3に示すように、バックプレート14のばね収容空間は、捩じり振動低減装置1を組立後に油洗浄剤に一定時間浸漬攪拌し引き上げてプレス加工油等を除去するために、捩じり振動低減装置1の回転中心線を水平に保って重力を利用して捩じり振動低減装置1の下側に流下させるときに液溜りとなる。
【0031】
そこで、図1図3に示すように、液溜りとなる状態を解消するために、バックプレート14の周方向に長尺な第1の油抜き用開口21がバックプレート14の最大外径位置(スプリング保持部)に対応してバックプレートの14に複数設けられている。また、ドライブプレート12の周方向に長尺な第2の油抜き用開口22がコイルスプリング15を保持しているドライブプレート12に備える4つの第1のばねガイド12eのそれぞれに設けられている。
【0032】
第2の油抜き用開口22は、ドライブプレート12に備える4つの第1のばねガイド(スプリング保持部)12eのそれぞれに設けられ、かつバックプレート14に備える4つの第3のばね受け部14dのそれぞれを挟む両側位置に設けられた第1の油抜き用開口21に対し放射方向に対応している。
【0033】
第1の油抜き用開口21および第2の油抜き用開口22は、部品製造時に、重力作用、遠心力作用、またはハンドドライヤー等を用いた風力作用によるプレス加工油または焼き入れ油を抜く機能、その後の油除去用洗浄剤を抜く機能、さらに、液膜追い出し通路機能を有する油抜き用開口、および捩じり振動低減装置の組み立て後に、部品製造時と同様に、重力作用、遠心力作用、またはハンドドライヤー等を用いた風力作用による油膜の追い込み移動におえる油膜の抜け口機能を有する油抜き用開口である。
【0034】
本実施の形態に係る捩じり振動低減装置1によれば、ドライブプレート(出力回転部材)12と、バックプレート(中間回転部材)14は、プレス加工による成形後に第1の油抜き用開口21と第2の油抜き用開口22を設けてから焼き入れを行い、さらに捩じり振動低減装置1として組立後に防錆油を塗布する。この製造工程において、プレス加工油または焼き入れ油の使用の後に洗浄剤による油除去と、油を含む洗浄剤の除去と、余分な防錆油の除去を順に行うが、第1の油抜き用開口21と第2の油抜き用開口22とスプリング保持部が設けられていることにより、油抜き用開口を通して油除去と油を含む洗浄剤の除去と余分な防錆油の除去と短時間に行うことができる。
【0035】
より具体的には、第1の油抜き用開口21を備えていることにより、油洗浄剤に浸漬した捩じり振動低減装置を引き上げて捩じり振動低減装置の回転中心線を水平に保ち装置表面を濡らしている油洗浄剤を流下させたときに、バックプレートの内周面である凹面環状面に油洗浄剤が溜まることなく第1の油抜き用開口21から垂れ落ち、ハンドドライヤーを用いて第2の油抜き用開口22を通して熱風を装置上部から下部に向かって吹き当てて装置下部に漸次に移動することにより装置内面側に付着している油洗浄剤の液膜を第1の油抜き用開口21から離脱させることができもって短時間に油洗浄剤を除去することができ、さらに油洗浄剤に少量含まれる乾燥しにくいプレス加工油等が油膜を形成しても短時間に油膜を除去できるという効果を有する。なお、第1の油抜き用開口21を備えていることにより、装置全体の軽量化も併せて達成される。
【0036】
したがって、本実施の形態に係る捩じり振動低減装置よれば、プレス加工油等を除去する油洗浄剤に浸漬後の油洗浄剤、および油洗浄剤に含まれるプレス加工油等の油膜除去を良好かつ短時間に行える点に優位性を有する。
【0037】
さらに、ドライブプレート12の周方向に長尺な第2の油抜き用開口22がドライブプレート12の第3のばね受け部14dに設けられていると、ハンドドライヤーの熱風が第2の油抜き用開口22を通してコイルスプリング15の内部に進入でき、さらに第1の油抜き用開口21へ抜け出るから、装置内面側に付着している油洗浄剤の液膜を一層短時間に除去することができる。なお、第2の油抜き用開口22を備えていることにより、装置全体の軽量化も併せて達成される。
【0038】
[第2の実施の形態]
図4A図4Bに示すこの実施の形態に係るショートトラベルダンパとしての捩り振動低減装置を示す。捩じり振動低減装置1Aは、ピストンプレート31、ホールドプレート(出力回転部材)32、ドリブンプレート(入力回転部材)33、およびコイルスプリング34を具備している。捩じり振動低減装置1Aも、第1の実施の形態のバックプレート14のように、油洗浄剤、および油洗浄剤に含まれるプレス加工油等の油膜除去に時間がかかる同等の屈曲部位として、ピストンプレート31のフランジ部31aおよびホールドプレート32の屈曲部がある。そこで、ピストンプレート31のフランジ部(スプリング保持部)31aには第1の油抜き用開口37が設けられ、ホールドプレート32については、第1の油抜き用開口37に対応する部位(スプリング保持部)に第2の油抜き用開口38が設けられている。第1,第2の油抜き用開口37,38は、第1の実施の形態のバックプレート14に設けられる第1の油抜き用開口21に対応している。第1の油抜き用開口37と第2の油抜き用開口38とが対応する位置に設けられている。
【0039】
ホールドプレート(出力回転部材)32、ドリブンプレート(入力回転部材)33は、プレス加工による成形後にスプリング保持部に第1の油抜き用開口37と第2の油抜き用開口38を設けてから焼き入れを行い、さらに捩じり振動低減装置1Aとして組立後に防錆油を塗布する。この製造工程において、プレス加工油または焼き入れ油の使用の後に洗浄剤による油除去と、油を含む洗浄剤の除去と、余分な防錆油の除去を順に行うが、第1の油抜き用開口37と第2の油抜き用開口38とが設けられていることにより、第1の油抜き用開口37と第2の油抜き用開口38を通して油除去と油を含む洗浄剤の除去と余分な防錆油の除去と短時間に行うことができる。
【0040】
[第3の実施の形態]
図5は、ロングトラベルダンパとしての捩じり振動低減装置を含むトルクコンバータの回転軸に対し上半分を図示している。縦断面の半部を示す。トルクコンバータ100は、エンジン(図示せず)によって回転駆動される二重軸構造の内側軸101を介して前面カバー102および前面カバー102に固着されて回転するポンプインペイラ103とからトルク伝達をするためのオイルが充填されている略円盤形状のハウジング104と、ポンプインペイラ103の内面に設けられたインペイラブレイド105と、二重軸構造の外側軸106に被嵌固定されたタービンハブ107に保持されインペイラブレイド105に対向しているタービンプレート108と、インペイラブレイド105とタービンプレート108との間に位置し方向を変更可能なステータ109と、タービンプレート108と前面カバー102との間の空間に設けられた捩じり振動低減装置1Bと、捩じり振動低減装置1Bの中間回転部材42に支持される振動吸振子部46と、前面カバー101の回転を捩じり振動低減装置1Bの入力回転部材41への伝達を入り切りするクラッチ47とを有する。
【0041】
捩じり振動低減装置1Bは、前面カバー102の内側に前面カバー102に相対可能に設けられクラッチ47の摩擦板を保持している入力回転部材41と、中間回転部材42と、タービンハブ107に保持された出力回転部材43と、入力回転部材41と中間回転部材42の間に設けられる外側配置の複数の第1のコイルスプリング44と、中間回転部材42と出力回転部材43の間に設けられる内側配置の複数の第2のコイルスプリング45とを有している。第1のコイルスプリング44と中間回転部材42と第2のコイルスプリング45は、入力回転部材41の回転を出力回転部材43に直列に伝達するようになっている。
【0042】
中間回転部材42の第1のコイルスプリング44に対して直径方向外方から当接する部分(スプリング保持部)に第1の油抜き用開口48が設けられており、また、出力回転部材43の第2のコイルスプリング45に対して直径方向外方から当接する部分に第2の油抜き用開口49が設けられている。
【0043】
中間回転部材42、出力回転部材43は、各スプリング保持部にプレス加工による成形後に第1の油抜き用開口48と第2の油抜き用開口49を設けてから焼き入れを行い、さらに捩じり振動低減装置1Bとして組立後に防錆油を塗布する。この製造工程において、プレス加工油または焼き入れ油の使用の後に洗浄剤による油除去と、油を含む洗浄剤の除去と、余分な防錆油の除去を順に行うが、第1の油抜き用開口48と第2の油抜き用開口49とが出力回転部材43のスプリング保持部に設けられていることにより、第1の油抜き用開口48または第2の油抜き用開口49を通して油除去と油を含む洗浄剤の除去と余分な防錆油の除去と短時間に行うことができる。
【0044】
本発明の態様によれば、油洗浄剤に浸漬した捩じり振動低減装置を引き上げて捩じり振動低減装置の回転中心線を水平に保ち装置表面を濡らしている油洗浄剤を流下させたときに、バックプレートの内周面である凹面環状面に油洗浄剤が溜まることなく垂れ落ちるか、または、ハンドドライヤーを用いて熱風を装置上部から吹き当てて吹き当て位置を装置下部に漸次に移動することにより熱風を装置内部のコイルスプリングに十分に吹き当てることができ、コイルスプリングに付着している油洗浄剤の液膜を短時間に除去することができ、さらに油洗浄剤に少量含まれる乾燥しにくいプレス加工油等が油膜を形成しても短時間に油膜を除去できるという効果を有し、もって、プレス加工油等を除去する油洗浄剤に浸漬後の油洗浄剤、および油洗浄剤に含まれるプレス加工油等の油膜除去を良好かつ短時間に行うことができ、併せて軽量化が図れる点に優位性を有する捩じり振動低減装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,1A,1B…捩じり振動低減装置、
11…タービンハブ、
12…ドライブプレート(出力回転部材)、
12a…折り曲げ片、
12b…外側ガイド部、
12c…内側ガイド部、
12d…第1のばね受け部、
12e…第1のばねガイド、
12f…内周板状部、
13…ドリブンプレート(入力回転部材)、
13a…内周板状部、
13b…掛止孔、
13c…第2のばね受け部、
13d…第2のばねガイド、
14…バックプレート(中間回転部材)、
14a…円筒部、
14b,14c…リブ、
14d…第3のばね受け部、
15…コイルスプリング、
16…コイルばね、
17…第1のリベット、
18…連結ガイド、
19…第2のリベット、
20…金属線、
21…第1の油抜き用開口、
22…第2の油抜き用開口、
31…ピストンプレート、
32…ホールドプレート、
33…ドリブンプレート、
34…バックプレート、
35…中間回転部材、
36…コイルスプリング、
31a…フランジ部、
37…第1の油抜き用開口、
38…第2の油抜き用開口、
41…入力回転部材、
42…中間回転部材、
43…出力回転部材、
44…第1のコイルスプリング、
45…第2のコイルスプリング、
46…振動吸振子部、
47…クラッチ、
48…第1の油抜き用開口、
49…第2の油抜き用開口、
100…トルクコンバータ、
101…内側軸、
102…前面カバー、
103…ポンプインペイラ、
104…ハウジング、
105…インペイラブレイド、
106…外側軸、
107…タービンハブ、
108…タービンプレート、
109…ステータ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5