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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】画像寸法測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/14 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
G01B11/14 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020094236
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021189026
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若井 達郎
(72)【発明者】
【氏名】松谷 淳史
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090844(WO,A1)
【文献】特開平06-207801(JP,A)
【文献】特開2000-266536(JP,A)
【文献】特開平07-198336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 1/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の寸法を測定する画像寸法測定装置において、
測定対象物を所定の軸周りに回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転軸と交差する光軸を有し、異なる回転角度で測定対象物を撮像した複数の測定対象物画像を生成するための撮像部と、
前記撮像部により生成された第1の測定対象物画像上で基準形状の設定を受け付けるとともに、前記第1の測定対象物画像とは異なる回転角度で撮像された第2の測定対象物画像上で測定要素を設定するための操作部と、
前記第1の測定対象物画像を撮像したときの基準となる回転角度に対し、前記第2の測定対象物画像を撮像したときの相対的な回転角度を記憶する記憶部と、
測定時に、前記複数の測定対象物画像の中から前記操作部により受け付けられた基準形状の設定に基づいて前記基準となる回転角度を特定し、前記記憶部に記憶された前記基準となる回転角度に対する相対的な回転角度に基づいて、前記操作部により設定された前記測定要素を測定するための測定角度を算出し、前記回転機構の回転角度が前記測定角度となるように前記回転機構を制御し、前記回転機構の回転角度が前記測定角度となったときに前記撮像部により撮像された測定対象物画像に基づいて、前記操作部により設定された測定要素の寸法を測定する測定処理を実行する制御部とを備えている画像寸法測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像寸法測定装置において、
前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記複数の測定対象物画像と、各測定対象物画像を撮像したときの前記回転機構の回転角度とに基づいて、前記基準形状が前記撮像部に正対する回転角度を算出し、前記基準形状を前記撮像部に正対させるように前記回転機構を制御する画像寸法測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像寸法測定装置において、
前記画像寸法測定装置は、各回転角度と、該各回転角度で撮像された前記第2の測定対象物画像とが対応付けられて表示されるとともに、測定要素が設定された第2の測定対象物画像に対応する角度の識別が可能に表示される表示部を備えており、
前記操作部は、前記表示部上で前記回転機構の回転角度の選択操作が可能に構成され、
前記制御部は、前記操作部により選択された回転角度となるように前記回転機構を制御する画像寸法測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の画像寸法測定装置において、
前記操作部は、測定対象物画像上における測定対象物の任意の部分のパターン画像及び当該パターン画像の位置情報の登録を可能に構成され、
前記制御部は、測定時に、前記撮像部により撮像された測定対象物画像を用いて、前記操作部により登録された前記パターン画像を探索するパターンサーチを実行するパターンサーチ実行部と、前記パターンサーチ実行部によるパターンサーチの実行結果及び前記操作部で登録された位置情報に基づいて、測定対象物画像のX方向及びY方向の位置補正を実行する画像寸法測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像寸法測定装置において、
前記パターンサーチ実行部は、測定時に、前記撮像部により異なる回転角度で測定対象物を撮像した複数の測定対象物画像を用いて前記パターンサーチを実行し、登録されたパターン画像との一致度が最も高くなる回転角度を特定し、
前記制御部は、前記パターンサーチ実行部により特定された前記回転角度を基準角度とする画像寸法測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像寸法測定装置において、
前記操作部は、前記パターンサーチ実行部がパターンサーチを実行する探索角度範囲を設定可能に構成されている画像寸法測定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の画像寸法測定装置において、
前記操作部は、測定対象物画像上における前記パターン画像で登録する領域の指定を受け付け可能に構成されている画像寸法測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物を回転させる回転機構を備えた画像寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像寸法測定装置は、ステージ上に載置された測定対象物を撮像した画像に基づいて、測定対象物の各部の寸法を測定することが可能に構成されている。例えば特許文献1の装置では、設定時に測定対象物の任意の部分画像を特徴画像として予め登録しておき、運用時に新たに取得された画像上で、上記特徴画像を用いてパターンサーチを行うことで、測定対象物の位置や姿勢を検出することが可能になっている。これにより、ステージ上の測定対象物の位置や姿勢によらず、線分、円、円弧等の測定要素の寸法測定ができる。
【0003】
また、特許文献2には、マシニングセンタの主軸に固定された加工工具をカメラで側方から撮像し、カメラによって撮像された画像に対して画像処理を行って輪郭線画像を抽出し、輪郭線画像から加工工具の寸法を演算する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-169584号公報
【文献】特開2006-284531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような画像寸法測定装置に測定対象物を回転させる回転機構を設けることにより、測定対象物を回転させて測定要素の寸法測定が実行可能になるので利便性が向上する。
【0006】
ところが、例えば測定対象物が円筒状の部材であってその外周面の一部に平坦面が形成されたDカット面や、当該部材に形成された穴などを測定要素として測定する場合、これら測定要素を撮像部によって撮像する必要があるので、測定要素が撮像部によって撮像可能となるように、撮像部に対する測定対象物の回転角度を調整しなければならず、ユーザの手間がかかるという問題があった。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザが測定対象物の回転角度を調整しなくても、測定要素の撮像部による撮像を可能にして利便性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の開示では、測定対象物の寸法を測定する画像寸法測定装置を前提とすることができる。画像寸法測定装置は、測定対象物を所定の軸周りに回転させる回転機構と、前記回転機構の回転軸と交差する光軸を有し、異なる回転角度で測定対象物を撮像した複数の測定対象物画像を生成するための撮像部と、前記撮像部により生成された第1の測定対象物画像上で基準形状の設定を受け付けるとともに、前記第1の測定対象物画像とは異なる回転角度で撮像された第2の測定対象物画像上で測定要素を設定するための操作部と、前記第1の測定対象物画像を撮像したときの基準となる回転角度に対し、前記第2の測定対象物画像を撮像したときの相対的な回転角度を記憶する記憶部と、測定時に、前記複数の測定対象物画像の中から前記操作部により受け付けられた基準形状の設定に基づいて前記基準となる回転角度を特定し、前記記憶部に記憶された前記基準となる回転角度に対する相対的な回転角度に基づいて、前記操作部により設定された前記測定要素を測定するための測定角度を算出し、前記回転機構の回転角度が前記測定角度となるように前記回転機構を制御し、前記回転機構の回転角度が前記測定角度となったときに前記撮像部により撮像された測定対象物画像に基づいて、前記操作部により設定された測定要素の寸法を測定する測定処理を実行する制御部とを備えている。
【0009】
この構成によれば、画像寸法測定装置の設定時に、撮像部により第1の測定対象物画像と第2の測定対象物画像とを生成することができる。これら第1及び第2の測定対象物画像は、測定対象物が互いに異なる回転角度で撮像されたものである。ユーザは、第1の測定対象物画像上で基準形状を設定すると、その情報が操作部で受け付けられ、また、第2の測定対象物画像上で例えば線分、円、円弧等の測定要素を設定すると、その測定要素が設定される。また、第1の測定対象物画像を撮像したときの基準となる回転角度に対し、第2の測定対象物画像を撮像したときの相対的な回転角度が記憶部に記憶されて保持される。
【0010】
画像寸法測定装置の運用時、即ち測定対象物を連続して測定する時には、撮像部が異なる回転角度で測定対象物を撮像した複数の測定対象物画像を生成する。制御部は、複数の測定対象物画像の中から操作部により設定された基準形状に基づいて基準となる回転角度を特定する。基準となる回転角度に対する相対的な回転角度は記憶部から読み出すことができる。制御部は、測定要素を測定するための測定角度を上記相対的な回転角度に基づいて算出すると、算出された測定角度となるように回転機構を制御する。これにより、回転機構の回転角度が自動的に測定角度になるので、測定要素が撮像部によって撮像可能な位置に配置される。したがって、測定対象物の回転角度が自動調整されるので、ユーザが測定対象物の回転角度を調整する必要がなくなる。
【0011】
回転機構の回転角度が測定角度になると撮像部が測定対象物を撮像し、これにより生成された測定対象物画像に基づいて、制御部が測定要素の寸法を測定する処理を実行するので、測定要素の寸法を取得できる。
【0012】
基準となる回転角度は、基準形状に基づいて特定された角度そのものであってもよいし、その角度からオフセットした指定角度であってもよい。
【0013】
また、測定対象物の回転角度はユーザが手動で調整可能にしてもよく、この場合、自動調整と手動調整が併用されることになる。
【0014】
また、例えば、第1の測定対象物画像上で基準形状として、ある特徴形状を入力すると、その特徴形状が設定される。入力形態としては、例えば複数の候補の中から1つを選択させる形態であってもよい。基準形状が入力されると、制御部は、撮像部が生成した複数の測定対象物画像の中から、操作部により受け付けられた基準形状を検出することにより、基準となる回転角度を的確に特定することができる。
【0015】
基準形状としては、例えば測定対象物が円筒状の部材である場合には、その外周面の一部に平坦面が形成されたDカット面や、当該部材に形成された穴、当該部材から径方向に突出するピン、キー溝の形状等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0016】
第2の開示では、前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記複数の測定対象物画像と、各測定対象物画像を撮像したときの前記回転機構の回転角度とに基づいて、前記基準形状が前記撮像部に正対する回転角度を算出し、前記基準形状を前記撮像部に正対させるように前記回転機構を制御することができる。
【0017】
この構成によれば、基準形状が撮像部に正対する回転角度となるように回転機構を制御することで、基準形状が撮像部に正対した状態で測定対象物を撮像することができる。これにより測定精度が向上する。
【0018】
第3の開示では、前記画像寸法測定装置は、各回転角度と、該各回転角度で撮像された前記第2の測定対象物画像とが対応付けられて表示されるとともに、測定要素が設定された第2の測定対象物画像に対応する角度の識別が可能に表示される表示部を備えている。前記操作部は、前記表示部上で回転角度の選択操作が可能に構成されている。前記制御部は、前記操作部により選択された回転角度となるように前記回転機構を制御することができる。
【0019】
この構成によれば。ユーザが表示部上で回転角度を選択すると、選択された回転角度となるように、回転機構が制御されるので、その回転角度で撮像された第2の測定対象物画像を、回転角度と対応付けて表示部に表示することができる。
【0020】
第4の開示は、前記操作部は、測定対象物画像上における測定対象物の任意の部分のパターン画像及び当該パターン画像の位置情報の登録を可能に構成され、前記制御部は、測定時に、前記撮像部により撮像された測定対象物画像を用いて、前記操作部により登録された前記パターン画像を探索するパターンサーチを実行するパターンサーチ実行部と、前記パターンサーチ実行部によるパターンサーチの実行結果及び前記操作部で登録された位置情報に基づいて、測定対象物画像のX方向及びY方向の位置補正を実行することができる。
【0021】
この構成によれば、設定時に測定対象物画像上で、測定対象物画像の任意の部分をサーチ対象のパターン画像として登録することができる。測定時には、パターンサーチ実行部が、撮像部により撮像された測定対象物画像でパターン画像を探索する。探索の結果、測定対象物画像が当該画像中において横方向(X方向)や縦方向(Y方向)に偏位していることが考えられる。例えばX方向に偏位している場合には、登録されている位置情報に基づいて測定対象物画像をX方向に位置補正でき、また、Y方向に偏位している場合には、同様に測定対象物画像をY方向にも位置補正できる。
【0022】
第5の開示では、前記パターンサーチ実行部は、測定時に、前記撮像部により異なる回転角度で測定対象物を撮像した複数の測定対象物画像を用いて前記パターンサーチを実行し、登録されたパターン画像との一致度が最も高くなる回転角度を特定し、前記制御部は、前記パターンサーチ実行部により特定された前記回転角度を基準角度とすることができる。
【0023】
この構成によれば、異なる回転角度で測定対象物を撮像した複数の測定対象物画像の各々に対してパターン画像を探索することで、パターン画像との一致度が最も高くなる回転角度を特定することができる。この回転角度を基準角度にして回転機構を制御することで測定要素の測定が可能になる。
【0024】
第6の開示では、前記操作部は、前記パターンサーチ実行部がパターンサーチを実行する探索角度範囲を設定可能に構成することができる。
【0025】
例えば、パターン画像との一致度が明らかに低くなることが分かっている角度範囲が存在する場合には、その角度範囲を除外するように、ユーザがパターンサーチの探索角度範囲を設定することで、パターンサーチの処理時間を短縮できる。また、測定対象物の表と裏とで同じパターンである場合には、一方を除外するように、ユーザがパターンサーチの探索角度範囲を設定することもできる。
【0026】
第7の開示では、前記操作部は、測定対象物画像上における前記パターン画像で登録する領域の指定を受け付け可能に構成することができる。
【0027】
この構成によれば、ユーザがパターン画像で登録する領域を任意に設定することができる。例えば回転しても測定対象物画像上で形状が変化しない測定対象物がある場合、形状が変化しない部分をパターン画像として登録しておくことで、測定時にパターンサーチの処理時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、測定対象物を回転させる回転機構の回転角度が自動的に測定角度になるので、ユーザが測定対象物の回転角度を調整することなく、測定要素の撮像部による撮像を可能にして利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る画像寸法測定装置の正面図である。
図2】上記画像寸法測定装置の斜視図である。
図3】上記画像寸法測定装置のブロック図である。
図4】回転体とロック機構との位置関係を示す斜視図である。
図5】チャック機構を回転体に取り付けた状態を示す斜視図である。
図6】チャック機構及び回転体を左側から見た分解斜視図である。
図7】チャック機構の別形態を示す斜視図である。
図8A】軸物からなる測定対象物をDカット面が形成されている側から見た図である。
図8B】軸物からなる測定対象物をDカット面が図の下に位置するまで回転させた状態の図である。
図9A】箱物からなる測定対象物の平面図である。
図9B】箱物からなる測定対象物の側面図である。
図10A】測定設定モードの手順の一例を示すフローチャートである。
図10B】測定設定モードの手順の詳細を示すフローチャートである。
図11】設定用ユーザインターフェース画面の一例を示す図である。
図12】特徴形状選択ウインドウを重畳表示させた例を示す図である。
図13A】Dカット面が図の下に位置するまで回転させたときの軸芯とDカット面の距離を示す図である。
図13B】Dカット面を図13Aに示す位置よりも撮像部に近づけたときの軸芯とDカット面の距離を示す図である。
図13C】測定対象物の回転角度と、Dカット面と軸芯の距離との関係を示すグラフである。
図14A】ピンが特徴形状である場合の模式図である。
図14B】測定対象物の回転角度と、ピン先端と軸芯の距離との関係を示すグラフである。
図15】パラメータ設定用ユーザインターフェース画面の一例を示す図である。
図16】プリセット形状と、測定内容、最大/最小の組み合わせ例を示す図である。
図17】編集中にオートアングル機能を実行させるウインドウを表示した例を示す図である。
図18】箱物の測定対象物に対してオートアングル機能を実行した場合を示す図である。
図19】特徴形状が撮像部と正対した状態の図11相当図である。
図20A】ダイアログを閉じた角度が0度の状態の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像の一例を示す図である。
図20B】測定対象物の方向検出に使用した要素が90度回転した状態の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像の一例を示す図である。
図21A】測定対象物の展開画像の一例を示す図である。
図21B】寸法表示を行った場合の図21A相当図である。
図22】回転角度が0度の場合の設定内容の例を示す図である。
図23】回転角度が90度の場合の設定内容の例を示す図である。
図24A】回転角度が0度の場合の測定要素の設定内容の例を示す図である。
図24B】回転角度が90度の場合の測定要素の設定内容の例を示す図である。
図25】パターン画像登録のユーザインターフェース画面の一例を示す図である。
図26A】ダイアログを閉じた角度が0度の状態にある箱物の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像の一例を示す図である。
図26B】箱物の測定対象物の方向検出に使用した要素が180度回転した状態の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像の一例を示す図である。
図27】連続測定モードの手順の一例を示すフローチャートである。
図28A】位置決めガイドを表示した測定対象物画像を示す図である。
図28B】測定対象物を位置決めガイドと一致させた状態を示す図である。
図29】測定結果表示用のユーザインターフェース画像の一例を示す図である。
図30】機械基準要素を含まない設定での測定角度の説明図である。
図31】機械基準要素を含む設定での測定角度の説明図である。
図32】測定対象物が箱物の場合に表示部に表示されるユーザインターフェース画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る画像寸法測定装置1の正面図であり、図2は、本発明の実施形態に係る画像寸法測定装置1の斜視図である。また、図3は、本発明の実施形態に係る画像寸法測定装置1の構成を模式的に示すブロック図である。画像寸法測定装置1は、各種ワーク等の測定対象物W(図1及び図2に示す)の寸法を測定するものであり、図3に示すように、装置本体2と、制御ユニット3と、記憶部4と、回転ユニット5とを備えている。制御ユニット3は、装置本体2と別体とされて通信線等によって通信可能に接続されていてもよいし、装置本体2の内部に組み込まれて一体化されていてもよい。記憶部4も同様に、装置本体2と別体とされていてもよいし、装置本体2の内部に組み込まれて一体化されていてもよい。本例では制御ユニット3と記憶部4とを別体としているが、これらが一体化されていてもよい。
【0032】
なお、本実施形態の説明では、画像寸法測定装置1をユーザから見たときに正面に位置する側を正面側といい、背面に位置する側を背面側といい、また、左に位置する側を左側といい、右に位置する側を右側というものとする。正面側を手前側と呼ぶことができ、また、背面側を奥側と呼ぶこともできる。これは説明の便宜を図るために定義するだけである。
【0033】
(装置本体2及び制御ユニット3の構成)
図1及び図2に示すように、装置本体2は、ベース部10と、ベース部10の背面側から上方へ延びるアーム部11とを備えている。ベース部10の上部には、測定対象物Wを載置するためのステージ12が設けられている。ステージ12は略水平に延びている。ステージ12の中央部近傍には光を透過させる透過部12aが設けられている。ステージ12は、図3に示すステージ駆動部12cによって駆動可能になっている。
【0034】
図3に示すように、装置本体2には、照明部13が設けられている。照明部13は、アーム部11に内蔵された落射照明部13aと、ベース部10に内蔵された透過照明部13bとを含んでいる。落射照明部13aは、ステージ12に載置(静置)された測定対象物Wまたは回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wを上方から照明する照明装置であり、後述する撮像部15の光軸A(図1に示す)を囲むリング状に形成することができる。透過照明部13bは、ステージ12の透過部12aに載置された測定対象物Wまたは回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wを下方から照明する照明装置である。図1及び図2では、回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wのみ示している。
【0035】
ベース部10の正面側には、操作部14が設けられている。操作部14は、ユーザによって操作される各種ボタンやスイッチ、ダイヤル等を含んでいる。操作部14は、制御ユニット3に接続されており、当該制御ユニット3は、操作部14の操作状態を検出し、操作部14の操作状態に応じて各部を制御する。操作部14は、ユーザのタッチ操作を検出可能なタッチパネル等で構成されていてもよく、この場合、後述する表示部16に操作部14を組み込むことができる。また、操作部14は、制御ユニット3に接続可能なキーボードやマウス等で構成されていてもよい。
【0036】
落射照明部13a及び透過照明部13bは、制御ユニット3に接続されて当該制御ユニット3によって制御される。例えば操作部14によって測定対象物Wの測定開始操作がなされたことを制御ユニット3が検出すると、落射照明部13aまたは透過照明部13bをONにして光を照射させることができる。
【0037】
アーム部11には、撮像部15(図3に示す)が設けられている。撮像部15は、ステージ12に載置された測定対象物Wまたは回転ユニット5によって回転可能な測定対象物Wを撮像し、測定対象物画像を生成するための部分である。撮像部15の例としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するカメラを挙げることができる。図1に示すように、撮像部15の光軸Aは鉛直下向きに設定されており、図示しないが、受光レンズや結像レンズを含む光学系が撮像部15の光軸Aと同軸上に設けられている。撮像部15は光学系を含む撮像ユニットであってもよいし、光学系を含まないものであってもよい。撮像部15には、落射照明部13aから照射されて測定対象物Wで反射した光、透過照明部13bから照射されてステージ12の透過部12aを透過した光等が入射するようになっている。光学系によるピント調整の手法は従来から用いられている手法を適用できる。
【0038】
撮像部15では、受光量に基づいて画像を生成する。撮像部15は制御ユニット3に接続されており、撮像部15が生成した画像は、画像データとされて制御ユニット3に送信される。また、制御ユニット3は、撮像部15を制御することができる。例えば操作部14によって測定対象物Wの測定開始操作がなされたことを制御ユニット3が検出すると、落射照明部13aまたは透過照明部13bをONにして光を照射させた状態で、撮像部15に撮像処理を実行させる。これにより、撮像部15で測定対象物画像が生成され、生成された測定対象物画像は制御ユニット3に送信される。
【0039】
制御ユニット3では撮像部15から送信された測定対象物画像をユーザインターフェース画面に組み込んで表示部16に表示させる。すなわち、アーム部11の上部には、表示部16が正面に向くように設けられている。表示部16は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されており、制御ユニット3に接続されている。制御ユニット3は、表示部16を制御して各種ユーザインターフェース画面を当該表示部16に表示させる。
【0040】
制御ユニット3には記憶部4が接続されている。記憶部4は、例えばSSD(Solid State Drive)やハードディスク等で構成されている。制御ユニット3は、上述したような各ハードウェアと接続されており、各ハードウェアの動作を制御するとともに、記憶部4に記憶されているコンピュータプログラムに従って、ソフトウェア的機能を実行する部分である。制御ユニット3には、図示しないがRAM等が設けられており、コンピュータプログラムの実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0041】
制御ユニット3には、エッジ抽出部30及び計測部31が設けられている。エッジ抽出部30は、撮像部15から送信された測定対象物画像に対して画像処理を実行することにより、測定対象物Wのエッジ(輪郭)を抽出する部分である。測定対象物のエッジの抽出手法は従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。エッジ抽出部30からは、測定対象物のエッジを示すエッジ画像が出力される。
【0042】
エッジ抽出部30から出力されたエッジ画像は、計測部31に入力される。計測部31は、エッジ画像を利用して測定対象物Wの各部の寸法を計測する。寸法の計測部位は、ユーザによって予め指定しておくことができる。例えば、ユーザは、表示部16に表示された測定対象物画像を見ながら、操作部14を操作して測定対象物画像上の任意の2点を指定すると、その指定点の位置座標に基づいて測定対象物Wの測定部位を特定することができる。計測部31は、ユーザによって特定された測定部位に対応するエッジ間距離やエッジ長さ等を算出することで、所定部位の寸法を取得することができる。取得された寸法は、表示部16に表示させることができる。このとき、寸法を示す値と寸法線とを測定対象物画像に重畳表示させることができる。
【0043】
(測定対象物Wを回転させる構成)
本実施形態では、測定対象物Wをステージ12に載置して測定するだけでなく、測定対象物Wを回転させて測定することもできる。具体的には、画像寸法測定装置1は、測定対象物Wを回転させる構成及びそれに付随する構成として、回転力を生成して出力する回転ユニット(回転機構)5、測定対象物Wを掴むチャック機構6を備えている。詳細は後述するが、チャック機構6は、回転ユニット5に対して着脱可能に構成されており、チャック機構6が回転ユニット5に装着されると、回転ユニット5から出力される回転力が、チャック機構6を介して測定対象物Wに伝達されて測定対象物Wを回転させる。回転ユニット5は、測定対象物Wを所定角度だけ回転させた状態で停止させておくことができる。
【0044】
(回転ユニット5の構成)
図1に示すように、回転ユニット5は、測定対象物Wをステージ12の透過部12aの上方に配置した状態で所定の回転軸B周りに回転可能にし、任意の回転位置で停止させてその姿勢を保持するためのステージである。この実施形態では、回転ユニット5がステージ12とは別体とされていて、ステージ12に対して着脱可能に構成されているが、回転ユニット5とステージ12とは一体で構成されていてもよい。着脱可能な回転ユニット5の場合、回転ユニット5が必要な時だけ、回転ユニット5をステージ12に取り付けておき、不要時にはステージ12から取り外しておくことができる。
【0045】
回転ユニット5は、モータ50(図3に示す)と、モータ50を内蔵する筐体51と、モータ50により回転される回転体52とを備えている。モータ50は筐体51に固定されている。筐体51は、ステージ12の左端部に取り付けられている。尚、筐体51は、ステージ12の右端部に取り付けてもよく、この場合、図1等に示すステージ12を左右対称にすればよい。
【0046】
筐体51をステージ12に取り付けた状態で、モータ50の出力軸が右側へ向けて水平に延びるように配置される。この出力軸に回転体52が固定されており、従って、回転体52は左右方向に水平に延びる回転軸B周りに回転される。撮像部15の光軸Aは鉛直方向であることから、回転軸Bは撮像部15の光軸Aと交差する関係となる。この実施形態では、回転軸Bは撮像部15の光軸Aと直交しているが、直交させなくてもよい。
【0047】
図1図2に示すように、回転体52には、チャック機構6が取り付けられるようになっている。本実施形態では、回転体52をモータ50の出力軸に直接連結しているが、これに限らず、例えばモータ50と回転体52との間に減速歯車機構(図示せず)を設けてもよい。この場合、減速歯車機構の出力軸に回転体52が連結されることになる。
【0048】
図4に示すように、回転体52は、連結部52aから回転軸B方向(右側)に突出し、当該回転軸Bの周方向に延びる円環状の周壁部52bを有している。連結部52aと周壁部52bとは一体化されている。周壁部52bの軸芯は、回転軸B上に位置している。周壁部52bの外周面にはねじ山が形成されている。
【0049】
周壁部52bには、当該周壁部52bの突出方向の先端(右端)から基端側(左側)へ向けて延びる複数のスリット52cが互いに周方向間隔をあけて形成されている。スリット52cの左端は、周壁部52bの左右方向中間部に位置している。複数のスリット52cを形成することで、周壁部52bに対して径方向外方から内方ヘ向かう締結力を作用させた時、各スリット52cの幅が狭くなることによって周壁部52bを縮径させることが可能になる。このときの周壁部52bの変形は弾性変形域での変形であり、締結力を除くことで元の形状に復元する。スリット52cは、周壁部52bの周方向に等間隔に形成することができる。
【0050】
図1図2に示すように、回転ユニット5は、手動調整ノブ55と、手動調整ノブ55の回転量を検知するエンコーダ56(図3に示す)と、処理回路57(図3に示す)とを備えている。手動調整ノブ55は、回転軸Bと平行な軸周りに回転可能に筐体51に支持されている。手動調整ノブ55の配設位置は、筐体51の正面側かつ左側であり、筐体51から左側へ向けて突出している。これにより、ユーザは画像寸法測定装置1の前に座った状態で、左手で手動調整ノブ55を回転させることができる。尚、手動調整ノブ55の配設位置は特に限定されるものではなく、筐体51の背面側であってもよいし、左側であってもよい。
【0051】
エンコーダ56は、筐体51に内蔵されており、従来から周知のロータリエンコーダ等で構成することができる。例えば、ユーザが手動調整ノブ55を回転させると、その回転量をエンコーダ56で検出することができ、エンコーダ56で検出された結果は、当該エンコーダ56から処理回路57に対して回転量に関する信号として出力される。
【0052】
処理回路57は、モータ50を制御する部分であり、制御ユニット3に内蔵されていてもよいし、装置本体2に内蔵されていてもよい。処理回路57は、エンコーダ56から出力される回転量に関する信号を受け取ってモータ50の回転量に変換し、変換された回転量だけ当該モータ50を回転させる。手動調整ノブ55の回転量と、モータ50の出力軸50aの回転量とは、一致していなくてもよく、対応していればよい。例えば、ユーザが手動調整ノブ55を10゜だけ回転させた場合、手動調整ノブ55が10゜回転したことをエンコーダ56が検出し、回転量に応じた検出信号を処理回路57に出力する。手動調整ノブ55が10゜回転した情報を処理回路57で取得すると、処理回路57は、手動調整ノブ55の回転量を所定の比率で変換してモータ50に対して制御信号を出力する。制御信号は、モータ50の出力軸50aを10゜よりも少なく回転させる信号とすることができる。
【0053】
処理回路57によるモータ50の制御は、ほぼリアルタイムで実行されるので、手動調整ノブ55が回転し始めると、ほぼ同期してモータ50も回転し、手動調整ノブ55が停止すると、ほぼ同期してモータ50も停止する。これにより測定対象物Wをユーザが任意の角度だけ回転させることができる。
【0054】
本例では、モータ5によって回転体52を直接駆動しているので、処理回路57は、手動調整ノブ55の回転量だけモータ50の出力軸50aが回転するように当該モータ50を制御すればよい。モータ50の出力軸50aと回転体52との間に減速歯車機構が設けられている場合には、処理回路57は、その減速比を考慮し、手動調整ノブ55の回転量よりも多くモータ50の出力軸50aを回転させればよい。
【0055】
回転ユニット5には、制御ユニット3または装置本体2に接続される接続線5aが設けられている。接続線5aを介してモータ50への電力が供給される。また、接続線5aを介して回転ユニット5と制御ユニット3との通信、または回転ユニット5と装置本体2との通信が行われるようになっている。
【0056】
(チャック機構6の構成)
図5及び図6に示すように、チャック機構6は、回転体52に着脱されるチャック本体60と、測定対象物Wを3方向から掴むように配置される第1~第3チャック爪61~63と、第1~第3チャック爪61~63の位置を変えるための調整部材64と、チャック本体60を回転体52に締結固定する締結部材80とを備えている。チャック本体60は回転体52に締結固定された状態で、モータ50により回転体52とともに回転軸B周りに回転される。また、チャック本体60は、第1~第3チャック爪61~63を保持する保持部材65と、被締結部を構成している被締結部材69とを備えている。
【0057】
保持部材65は、第1~第3チャック爪61~63を径方向に案内する案内板部65aと、被締結部材69が固定されるボス部65bとを有しており、これらは一体化されている。ボス部65bは、被締結部材69の左側の側面から左側へ向けて突出している。ボス部65bの軸芯と、案内板部65aの軸芯とは、回転軸B(図1に示す)上に位置している。案内板部65aには、第1溝部65c、第2溝部65d、第3溝部65eが設けられている。これら第1~第3溝部65c、65d、65eは、径方向に放射状に延びるとともに、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。第1~第3溝部65c、65d、65eの端部は、案内板部65aの外周面で開放されている。
【0058】
第1~第3チャック爪61~63は、それぞれ第1~第3スライダ66~68を有している。第1~第3スライダ66~68は、それぞれ、案内板部65aの第1~第3溝部65c、65d、65eに挿入され、当該第1~第3溝部65c、65d、65e内を長手方向に摺動する部材である。第1~第3チャック爪61~63は、第1~第3スライダ66~68の右側の面に固定されており、案内板部65aから右側へ突出している。
【0059】
第1~第3スライダ66~68の左側の面には、それぞれ、第1~第3凸部66a、67a、68aが左側へ向けて突出するように設けられている。第1~第3凸部66a、67a、68aは、案内板部65aの左側面よりも左側へ突出している。
【0060】
調整部材64は、チャック本体60に対して回転軸B周りにユーザが手動で回転させることにより、第1~第3チャック爪61~63を第1~第3溝部65c、65d、65eに沿って径方向に移動させるための部材である。すなわち、調整部材64は全体として円盤状に形成されており、その軸芯は回転軸B上に配置されている。調整部材64の中心部にはボス部65bが挿入されるボス挿入孔64aが形成されている。ボス挿入孔64aにボス部65bが挿入された状態で、調整部材64がボス部65bに対して回転軸B周りに回転可能に支持される。図示しないが、調整部材64の右側面には、螺旋条が右側へ向けて突出するように形成されている。螺旋条は、回転軸Bを中心とした螺旋状に延びている。
【0061】
調整部材64のボス挿入孔64aにボス部65bを挿入すると、螺旋条と、第1~第3スライダ66~68の第1~第3凸部66a、67a、68aとが係合するようになっている。この状態で調整部材64を回転軸B周りに回転させると、螺旋条によって第1~第3スライダ66~68に対して径方向の力が作用し、これにより、第1~第3スライダ66~68が第1~第3溝部65c、65d、65e内を長手方向に摺動する。つまり、第1~第3チャック爪61~63を径方向に移動させることができる。尚、螺旋条の代わりに螺旋溝を設けてもよく、回転軸B周りの回転運動を径方向の直線運動に変換できる機構であればよい。
【0062】
調整部材64の回転方向を変えることで、第1~第3チャック爪61~63の移動方向を変えることができる。第1~第3チャック爪61~63によって測定対象物Wを掴む場合には、第1~第3チャック爪61~63が互いに接近する方向に移動するように調整部材64を回転させればよく、これにより、測定対象物Wを第1~第3チャック爪61~63によって掴むことができる。一方、第1~第3チャック爪61~63によって掴んだ測定対象物Wを外す場合には、調整部材64を反対方向に回転させて第1~第3チャック爪61~63を互いに離れる方向に移動させればよい。
【0063】
被締結部材69は、円盤状の部材であり、例えば止め輪81等によって保持部材65のボス部65bに取り付けることができる。被締結部材69がボス部65bに取り付けられた状態で、両者が一体化されて相対的な回転が阻止されている。被締結部材69の軸芯は、回転軸B上に位置している。被締結部材69は、回転ユニット5の回転体52の周壁部52bに挿入可能となるように、その外径が設定されている。
【0064】
図6に示すように、締結部材80は、いわゆるナットであり、この実施形態では円環状の部材で構成されている。締結部材80の軸芯は回転軸B上に位置しており、締結部材80の中心部には、ボス部65bが挿入可能な中心孔80aが形成されている。締結部材80の左側には、円形の凹部80bが形成されている。凹部80bの内周面には、回転体53の周壁部52bのねじ山に螺合するねじ溝80cが形成されている。
【0065】
締結部材80を回転させてねじ溝80cを回転体52の周壁部52bのねじ山に螺合させていくと、周壁部52bが凹部80b内に入っていく。締結部材80を締め込むと、ねじの作用によって周壁部52bに対して径方向外方から内方ヘ向かう締結力が作用し、この締結力によって周壁部52bが縮径方向に弾性変形する。このとき、被締結部材69が回転体53の周壁部52b内に挿入されているので、締結部材80の締め込みによって周壁部52bの内周面が被締結部材69の外周面に強く接触し、両者の間に働く摩擦力が極めて大きくなる。これにより、被締結部材69が回転不能な状態で回転体52に締結されてチャック機構6が回転体52に取り付けられる。チャック機構6を外す際には締結部材80を緩み方向に回転させればよく、これにより、周壁部52bの形状が復元する。
【0066】
(チャック機構の別形態)
チャック機構の構造は、測定対象物Wの形状や大きさに合わせて変更することができる。図7に示すチャック機構700は、第1、第2チャック爪601、602を有している。すなわち、保持部材65の案内板部65aには、径方向に延びる第1、第2溝部65f、65gが形成されている。第1、第2溝部65f、65gは、共に、回転軸Bを通り、かつ、回転軸Bに直交する同一直線上に位置するように形成されている。第1チャック爪601の第1スライダ606が第1溝部65fに挿入され、また、第2チャック爪602の第2スライダ607が第2溝部65gに挿入されている。第1、第2スライダ606、607は、調整部材64の螺旋条(図示せず)に係合する凸部(図示せず)を有しており、調整部材64を回転させることによって径方向に移動させることができる。
【0067】
第1、第2チャック爪601、602を互いに離間させることによって箱物の測定対象物Wを掴むことができる。また、チャック機構700の第1、第2チャック爪601、602を互いに接近させることによっても測定対象物Wを掴むことができる。
【0068】
(チャック機構の共通部)
図5に示すチャック機構6は、軸物を掴む軸物用チャック機構であり、図7に示すチャック機構700は、箱物を掴む箱物用チャック機構である。チャック機構の構造は図示した構造に限定されるものではなく、他の構造のチャック機構であってもよい。本実施形態では、軸物用チャック機構6と、箱物用チャック機構700とを含む複数のチャック機構の中から任意のチャック機構を着脱可能に構成されている。そして、複数のチャック機構6、700は、回転ユニット5に対する着脱部(被締結部材69及び締結部材80)が共通化されており、これにより、チャック機構6、700の付け替え時の作業性が良好になる。つまり、測定対象物Wを軸物から箱物へ変更する作業がハード面で容易になる。
【0069】
図6に示すように、回転体52は筐体50側の部材である一方、チャック機構6については、チャック共通部と、チャック変更部とに分けることができる。チャック共通部とは、図5に示すチャック機構6と、図7に示すチャック機構700とで共通な部分である。チャック共通部は回転体52に締結される部分を含んでおり、回転体52に締結される部分が共通であるということは、チャック機構6、700の全てを回転ユニット5側に変更を加えることなく、簡単に着脱できるということであり、利便性が向上する。
【0070】
一方、チャック変更部は、図5に示すチャック機構6と、図7に示すチャック機構700とで相違する部分である。チャック機構6とチャック機構700とでは、チャック爪の数が異なるとともに、案内板部65aの溝部の数も異なっている。
【0071】
(測定対象物の構造)
ここで、図8A及び図8Bに基づいて軸物の測定対象物Wの構造について説明するが、これは測定対象物Wの構造を限定するものではない。尚、図1及び図2に示す測定対象物Wと、図8A及び図8Bに示す測定対象物Wとは相違しているが、いずれも測定対象物Wは軸物である。軸物とは、円筒状や円柱状の部分を有する部材であり、具体的には、回転軸、支軸、棒材、筒状部品、加工工具等があり、中実であっても中空であってもよい。
【0072】
測定対象物Wの左側はチャック機構6によって掴む部分である。チャック機構6によって掴まれた状態で、回転ユニット5の回転軸Bと、測定対象物Wの軸芯とは略一致する。測定対象物Wは最も太い大径部W1と、大径部W1よりも細い中間部W2と、中間部W2よりも細い小径部W3とを有している。大径部W1の外周面には、その一部に特徴形状としての平坦面W4が設けられている。平坦面W4は、当該平坦面W4の形成によって断面がD字状になることからDカット面とも呼ばれている。平坦面W4の中央部には、測定対象物Wの軸芯方向に長い溝W4aが形成されている。中間部W2の外周面には、その一部に特徴形状としての第1~第3ピンW5~W7が周方向に互いに間隔をあけて設けられている。小径部W3には、その一部に特徴形状としての第1穴W8、第2穴W9及び溝W10が設けられている。第1穴W8、第2穴W9は貫通穴であるが、貫通していなくてもよい。溝W10は、測定対象物Wの端面に形成されている。
【0073】
測定対象物Wの特徴形状となる部分W4~W10は、軸芯方向に互いに間隔をあけて設けられていたり、周方向に互いに間隔をあけて設けられているが、特徴形状の位置、数は特に限定されるものではなく、特徴形状が1つであってもよい。また、特徴形状は、測定時の基準になる場合もあることから基準形状と呼ぶこともできる。
【0074】
また、図9A及び図9Bに示すように、箱物の測定対象物W20であってもよい。測定対象物W20は、直方体に近い形状の箱部W21を有している。特徴形状としては、穴W22、溝W23、ピンW24等が設けられている。
【0075】
(測定設定モード)
画像寸法測定装置1は、運用前に各種設定を行うための測定設定モードの実行が可能になっている。ユーザが画像寸法測定装置1を立ち上げた後、測定設定モードの実行ボタンを操作することで、測定設定モードが開始される。
【0076】
(軸物の測定設定)
以下の説明では、軸物からなる測定対象物Wの場合について説明する。測定設定モードにおける手順について図10Aに示すフローチャートに基づいて説明する。スタート後のステップSA1では、特徴形状の指定及びパターン画像の設定を行う。ステップSA1を行う前に、測定対象物Wをチャック機構6で掴んでおく。後述するオートアングル機能の実行時に、特徴形状によるオートアングルと、パターン画像によるオートアングルの2通りがあり、ステップSA1では、特徴形状によるオートアングル時に使用する特徴形状の指定と、パターン画像によるオートアングル時に使用するパターン画像の設定とを行う。特徴形状によるオートアングルと、パターン画像によるオートアングルの両方を行ってもよいし、いずれか一方のみ行ってもよい。特徴形状によるオートアングルのみ行う場合には特徴形状のみ指定すればよく、パターン画像によるオートアングルのみ行う場合にはパターン画像のみ設定すればよい。パターン画像のみ設定した場合は、パターン画像を特徴画像、つまり特徴形状として探索することができる。
【0077】
ステップSA1における具体的な処理について説明すると、始めの段階で、制御ユニット(制御部)3のUI生成部32が図11に示すような設定用ユーザインターフェース画面100を生成し、表示部16に表示させる。設定用ユーザインターフェース画面100には、撮像部15で撮像された測定対象物画像を表示させる画像表示領域100aと、回転ユニット選択領域100bと、測定対象物Wの形状を選択する形状選択部100cと、測定対象物Wの回転角度を設定する角度設定部100dと、撮像ボタン100eとが設けられている。回転ユニット選択領域100bでは、回転ユニット5の使用・不使用を選択することができるようになっており、ユーザが操作部14を操作することで、回転ユニット5の使用と、不使用とを切り替えることができる。本例では、回転ユニット5を使用する場合について説明する。
【0078】
形状選択部100cは、測定対象物Wが箱物であるか、箱物以外の形状であるかのユーザによる選択を行う部分である。本例では、形状選択部100cにおける選択枝として、「箱物」と「軸物」とを用意しているが、これに限られるものではなく、他の形状を選択枝として用意してもよい。また、「箱物」と「箱物以外」という選択枝であってもよい。ユーザが操作部14を操作して一の選択肢を選択可能になっており、これにより、操作部14は、測定対象物Wが箱物であるか、箱物以外の形状であるかのユーザによる選択操作を受け付けることができる。
【0079】
ユーザが「箱物」を選択すると、UI生成部32が箱物用のユーザインターフェース画面を生成し、表示部16に表示させ、一方、ユーザが「軸物」を選択すると、UI生成部32が軸物用のユーザインターフェース画面を生成し、表示部16に表示させる。例えば、箱物を選択した場合には、特徴形状の選択枝が切り替わる、もしくは特定の特徴形状しか選択できなくなるようなユーザインターフェース画面にすることができる。
【0080】
また、角度設定部100dは、ユーザが手動入力で回転ユニット5の回転角度を設定する部分である。また、撮像ボタン100eは、撮像部15の視野範囲にある測定対象物Wを当該撮像部15により撮像させるためのボタンである。ユーザが操作部14によって撮像ボタン100eを操作すると、撮像部15が視野範囲の撮像を開始する。
【0081】
ステップSA1においては、図11に示す形状選択部100cにおいて軸物が選択されると、図12に示すように特徴形状選択ウインドウ101をUI生成部32が生成し、設定用ユーザインターフェース画面100に重畳表示させる。ステップSA1では、さらに図12において測定対象物Wの特徴形状を選択する。
【0082】
本例では、測定対象物Wの測定要素として特徴形状であるDカット面W4を選択し、そのDカット面W4の寸法を測定する場合について説明する。Dカット面W4の寸法を測定するためには、Dカット面W4を撮像部16に正対させる必要がある。正対とは、Dカット面W4に垂直な線が撮像部15の光軸と平行になることである。また、特徴形状がピンW5~W7の場合にはピンW5~W7を撮像部16に正対させる必要があり、この場合の正対とは、ピンW5~W7の軸線が撮像部15の光軸と平行になることである。また、特徴形状が穴W8、W9の場合には穴W8、W9の開口を撮像部16に正対させる必要があり、この場合の正対とは、穴W8、W9の中心線が撮像部15の光軸と平行になることである。さらに、特徴形状が溝W10の場合には溝W10の端部や開口を撮像部16に正対させる必要がある。尚、キー溝のように軸物の軸方向に延びる溝の場合は、キー溝の開口を撮像部16と正対させる。
【0083】
ところが、測定対象物Wをチャック機構6で掴んだ状態では、図11に示すように、Dカット面W4が撮像部15と正対しておらず、正対位置からずれている場合が殆どである。本例に係る画像寸法測定装置1は、特徴形状が撮像部15と正対していなくても、所定の探索アルゴリズムに基づいて特徴形状を自動的に撮像部15と正対させることが可能なオートアングル機能(自動正対化機能)を搭載している。
【0084】
探索アルゴリズムを設定するステップが図10Aに示すステップSA2である。オートアングル機能の実行時には、特徴形状の種別に応じた複数の探索アルゴリズムの中から、特徴形状に該当する探索アルゴリズムを実行する。特徴形状の種別に応じた複数の探索アルゴリズムは、予め記憶部4のアルゴリズム記憶部41に記憶させておくことができる。
【0085】
まず、オートアングル機能について説明する。オートアングル機能は、図3に示す制御ユニット3が有するオートアングル実行部33によって実行される。オートアングル実行部33は、撮像部15により撮像された複数の測定対象物画像と、各測定対象物画像を撮像したときの測定対象物Wの回転角度とに基づいて、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度を算出し、回転ユニット5の回転角度が、算出された回転角度となるように回転ユニット5を制御する部分である。つまり、オートアングル機能は、特徴形状を撮像部15に正対させることができる測定対象物Wの回転角度を探索する機能である。
【0086】
すなわち、オートアングル機能を実行する際、始めに、特徴形状の種別選択を行う。特徴形状選択ウインドウ101には、特徴形状を模式図で示した複数のアイコン101aが設けられている。各アイコン101aには、特徴形状が文字でも表現されている。
【0087】
ユーザは操作部14を操作して特徴形状選択ウインドウ101内の複数のアイコン101aの中から測定したい特徴形状を示したアイコン101aをクリックする。この操作が特徴形状の種別の選択操作であり、操作部14で受け付けることができる。これにより、図12に示す測定対象物画像(第1の測定対象物画像)上で測定基準に関する情報の入力を受け付けることができる。また、特徴形状の種別の選択操作は、内部的には探索アルゴリズムの設定操作でもある。
【0088】
特徴形状選択ウインドウ101内の実行ボタン101bを操作すると、オートアングル機能が実行され、まず、測定対象物Wを回転ユニット5によって回転させながら撮像部15が複数回撮像する。これにより、撮像部15は、回転角度が異なる測定対象物Wを撮像して複数の測定対象物画像を生成することができる。各測定対象物画像は、生成後、図3に示す記憶部4の画像記憶部40に記憶され、このとき、各測定対象物画像を撮像したときの測定対象物Wの回転角度が関連付けられて記憶されている。
【0089】
Dカット面W4を撮像部15に正対させる場合のアルゴリズムについて図13A~Cに基づいて説明する。図13Aは、測定対象物Wを透過照明部13bによって照明した状態で撮像した測定対象物画像を示している。この画像では、Dカット面W4が図の下、即ちDカット面W4と撮像部15の光軸とが平行になっている。このときの測定対象物Wの軸芯と測定対象物画像上におけるDカット面W4との距離をC1とする。図13Bは、測定対象物Wを、Dカット面W4が図13Aに比べて撮像部15に近い側へ回転させた状態で撮像した測定対象物画像であり、このときの測定対象物Wの軸芯と測定対象物画像上におけるDカット面W4との距離をC2とする。距離C1が距離C2よりも短くなる。
【0090】
測定対象物Wの軸芯と測定対象物画像上におけるDカット面W4との距離と、測定対象物Wの回転角度との関係は、図13Cに示す関係となる。グラフにおいて距離が最も短くなる点は、図13Aの状態であり、Dカット面D4が撮像部15と正対しているときには上記距離が最も長くなる。距離が最も短くなる回転角度を探索し、90度回転させることで、Dカット面D4を撮像部15と正対させることができる。このときの回転方向は、グラフから判定することができる。距離C1、C2は、特徴形状が撮像部15と正対しているか否かを示す評価値である。
【0091】
また、ピンW5を撮像部15に正対させる場合のアルゴリズムについて図14A、Bに基づいて説明する。図14Aは、測定対象物Wを軸方向から見ており、便宜上、ピンW5のみ示している。距離Lは、測定対象物Wの軸芯からピンW5の先端までの距離である。図14Bは、距離Lと測定対象物Wの回転角度との関係を示すグラフである。このグラフに示すように、測定対象物Wを回転させたとき、距離Lがピークとなる部分が2つでき、これら2つのピークの間がピンW5の先端の位置となるので、これに基づいてピンW5を撮像部15と正対させることができる。距離Lは、特徴形状が撮像部15と正対しているか否かを示す評価値である。
【0092】
図10Aに示すステップSA3では、特徴形状を撮像部15に正対させる過程で基準角度を決定する。その後、ステップSA4で特徴形状を撮像部15に正対させる。
【0093】
オートアングル機能の実行時には、各種パラメータの設定を行うことも可能である。図15は、オートアングル機能の実行前に表示部16に表示するパラメータ設定用ユーザインターフェース画面102を示している。このパラメータ設定用ユーザインターフェース画面102はUI生成部32によって生成される。パラメータ設定用ユーザインターフェース画面102には、撮像部15で撮像された測定対象物画像を表示させる画像表示領域102aと、出力パターン選択部102bと、探索範囲設定部102cと、探索ピッチ設定部102dとが設けられている。
【0094】
画像表示領域102aでは、探索を実行する領域を指定することができる。図12に示す枠線200のようにして、図15に示す画像表示領域102a上で枠線201を引くことができる。さらに、指定した領域内でどのような測定値を最大または最小化したいかについても設定できる。例えば、線-線測定、円-円測定などの種類を設定できる。
【0095】
この種類については、図16に示すように、プリセット形状と、測定内容、最大/最小の組み合わせとして予め記憶部4に記憶させておくことができる。これによりユーザの設定の手間を省くことができる。
【0096】
図15に示す出力パターン選択部102bでは、最大と最小の選択枝が設けられており、操作部14によって一方を選択可能になっている。最大を選択すると測定値の最大を探索し、一方、最小を選択すると測定値の最小を探索する。探索範囲設定部102cでは、探索を実行する角度範囲の設定が可能になっている。例えば、基準角度からの角度を設定し、この設定した角度を中心として例えばプラスマイナス90度のようにして角度範囲を設定できる。探索ピッチ設定部102dでは、上記のように設定した角度範囲内での探索ピッチを設定することができ、例えば5度に設定した場合、5度ピッチで探索を実行する。
【0097】
評価値は、上述した寸法測定値であってもよいが、例えば予め登録されたテンプレート画像との一致度であってもよい。テンプレート画像は、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度にある測定対象物Wを撮像した画像とすることができる。テンプレート画像を登録した後、測定対象物Wを回転させながら撮像部15で撮像することで、回転角度が異なる測定対象物画像が連続的に複数生成される。これら測定対象物画像の各々に対して、テンプレート画像をパターンサーチにより探索し、一致度の相関値が最も大きい回転角度を特定する。特定された回転角度は、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度となる。
【0098】
上記パターンサーチにより探索する場合、測定対象物画像ごとに、XY方向の位置サーチを同時に実行した上で相関値を取得することもできる。これにより、測定対象物Wをチャック機構6に装着した直後などのように測定対象物画像上の位置が未知の状態でも、位置サーチと相関値取得とを同時に完了させることができる。
【0099】
また、図17に示すように、測定内容の編集中にオートアングル機能を実行させるウインドウ103を表示部16に表示させることもできる。ウインドウ103は、例えば操作部14の操作によって表示可能になっている。ウインドウ103内の「AA実行」を操作部14の操作によって選択すると、選択ウインドウ103aが表示部16に表示される。選択ウインドウ103aには、特徴形状の種別が表示されており、これらの中からユーザが所望の特徴形状を選択できる。オートアングル実行部33は、選択された特徴形状に対応したアルゴリズムを実行し、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度を算出する。
【0100】
本例では、図18に示すような箱物の測定対象物W20の場合も、特徴形状を撮像部15と正対させるアルゴリズムを実行可能に構成されている。まず、撮像部15が測定対象物W20を撮像して測定対象物画像(図18に示す)を生成し、表示部16に表示させる。測定対象物画像上で、撮像部15と正対させたい領域をユーザが例えば枠線203により指定する。これは操作部14を用いて指定できる。撮像部15と正対させたい領域は、平面部分である。
【0101】
オートアングル実行部33は、枠線203で囲まれた領域のうち、任意の複数点の高さ測定を実行する。高さ測定では、従来の変位測定の手法を用いることができ、接触式の変位センサや光学的な変位センサを使用でき、光学的な変位センサとしては例えばオートフォーカス方式を挙げることができる。測定された高さとXY座標とに基づいて、枠線203で囲まれた領域の面の傾きを求めて、当該面が撮像部15と正対する回転角度を算出する。また、光学的なフォーカス情報から視野内の高さ測定を実行し、測定された高さのエリアマップから枠線203で囲まれた領域の面の傾きを求めることもできる。
【0102】
制御ユニット3は、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度を算出した後、算出された回転角度となるように回転ユニット5を制御する。これにより、図19に示すように、Dカット面W4が撮像部15と正対した状態になり、測定対象物Wの方向決めと基準角度の設定が完了する。
【0103】
操作部14によってダイアログを閉じる操作を行うと、制御ユニット3は、測定対象物Wの方向の検出に使用した要素を作成するとともに、ダイアログを閉じた時点の測定対象物Wの回転角度が指定角度(0度)になるように、形状の検出要素を参照した基準角度を自動で設定する。図20Aは、ダイアログを閉じた角度が0度の状態の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像104であり、測定対象物Wの方向検出に使用した要素はDカット面W4である。また、図20Bは、測定対象物Wの方向検出に使用した要素(本例ではDカット面W4)が90度回転した状態の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像104である。図20A及び図20Bに示す角度関係を相対的な回転角度情報として記憶部4に記憶しておく。
【0104】
ステップSA5では測定要素の設定を行う。測定要素の設定を行う際には、回転ユニット5の回転を停止させて、落射照明部13aで測定対象物Wを照明して撮像した落射画像と、透過照明部13bで測定対象物Wを照明して撮像した透過画像とを合成して1つの画像に統合し、図22に示すユーザインターフェース画像104に組み込み、背景画像として表示させる。例えば、Dカット面W4に形成されている溝W4aの幅を測定要素として設定したり、第1穴W8の径や溝W10の幅も測定要素として設定できる。測定要素の設定は、ユーザが操作部14を操作することで実行される。
【0105】
ユーザインターフェース画像104には、回転ユニット5の指定角度からの回転角度が数値で表示される数値表示領域104aと、回転ユニット5を操作するコントロール部としての回転操作領域104bと、回転ユニット5の回転角度がバー形式で表示される角度表示領域104cとが設けられている。図20Aでは、測定対象物Wの回転角度が指定角度であるため、数値表示領域104a及び角度表示領域104cには約0度であることが表示されている。一方、図20Bでは、図20Aに示す状態から90度回転しているので、数値表示領域104a及び角度表示領域104cには約90度であることが表示されている。角度表示領域104cには、現在角度を示す角度指示線104dが設けられている。また、角度表示領域104cには、設定情報として記憶部4に記憶されている回転角度を示す基準角度指示部104eが設けられている。角度指示線104dを操作部104によって移動させることもできる。角度指示線104dを移動させると、移動後の角度指示線104dの位置を制御ユニット3が検出する。制御ユニット3は、角度指示線104dの位置に対応した回転角度となるように回転ユニット5を制御して測定対象物Wを回転させることができる。
【0106】
回転操作領域104bには、操作ボタンが設けられている。操作部14によって操作ボタンを操作すると、それを制御ユニット3が検出する。制御ユニット3は、操作されたボタンに応じて回転ユニット5を回転させることができ、回転ユニット5を回転させるときの方向も指定できる。操作ボタンには、測定対象物Wを固定角度で回転させるボタンも含まれている。この実施形態では固定角度を90度としているので、操作ボタンを1回操作することで測定対象物Wを90度回転させ、2回操作することで測定対象物Wを180度回転させることができる。操作部14によって操作ボタンを操作することで、測定対象物Wを90度単位で回転させる指示を行うことができる。固定角度は、90度を複数に分割した角度、例えば30度や45度であってもよい。固定角度が30度の場合であっても45度の場合であっても、90度ごとに測定対象物Wの画像を生成する。
【0107】
回転ユニット5の操作は、回転操作領域104bの操作以外にも、上述した手動調整ノブ55による操作が可能であるとともに、展開画像上における位置指定による操作も可能である。展開画像の一例を図21A、Bに示す。展開画像は、測定対象物Wを回転させながら複数回撮像して生成された元画像における中央部を切り取って被連結画像とし、複数の被連結画像を連結することにより、測定対象物Wを展開した形状を示す画像である。この展開画像を表示部16に表示させることで、展開画像上で、ユーザが所望の位置を例えば操作部14であるマウスでクリックすると、クリックした位置が画面の中央に表示するように、ステージ12を移動させるとともに、回転ユニット5を制御する。図21Bに示すように、展開画像に測定値を表示させることもできる。
【0108】
また、測定基準に関する情報の入力を受け付ける測定対象物画像は図12に示す第1の測定対象物画像であるのに対し、測定要素を設定する画像は図22に示す画像、即ち第1の測定対象物画像とは異なる回転角度で撮像された第2の測定対象物画像である。
【0109】
図23は、回転角度が90度の場合の測定対象物画像であり、図22に示す測定対象物画像と同様に落射画像と透過画像とを合成した画像である。図23では、測定要素として第2穴W9の径を設定した例を示している。
【0110】
測定対象物Wを回転させる操作は、回転操作領域104bの操作ボタンを操作してもよいし、オートアングル機能を利用してもよい。オートアングル機能を利用する際には、図17に示すウインドウ103を表示部16に表示させて特徴形状の選択を可能にしてもよい。
【0111】
図24A及び図24Bは、2つの測定要素間の寸法の測定する場合を説明する図である。尚、この例では、測定対象物Wに第1穴W8及び第2穴W9の間に、第3穴W11が設けられており、第1穴W8及び第2穴W9の軸芯と、第3穴W11の軸芯とが直交する関係になっている。
【0112】
図24Aは、回転角度が0度の場合の第1測定要素(第1穴W8)の設定内容の例を示しており、この第1穴W8は第1の測定対象物画像上で設定される。図24Bは、回転角度が90度の場合の第2測定要素(第3穴W11)の設定内容の例を示しており、この第3穴W11は、第1測定要素を設定した測定対象物画像の回転角度とは異なる第2の測定対象物画像上で設定される。第1穴W8及び第3穴W11を測定要素として設定することで、第1穴W8の軸芯と第3穴W11の軸芯との寸法を測定することができる。尚、第1測定要素及び第2測定要素を設定する際に用いる測定対象物画像の回転角度の相違は、90度に限られるものではなく、各測定要素が撮像部15と正対する回転角度にあればよい。また、測定要素の設定の際、任意の回転角度で測定要素を設定してもよい。図10AのステップSA6で記載している3つの設定のうち、角度0度での測定要素設定と、異なる回転角度上の測定要素間の測定設定は必須ではない。
【0113】
以上のようにして図10Aに示すフローチャートのステップSA5が完了すると、ステップSA6に進み、位置補正用パターン画像登録を行う。パターン画像登録を行う際には、図25に示すパターン画像登録のユーザインターフェース画面105を表示部16に表示させる。ユーザインターフェース画面105には、透過照明部13bで測定対象物Wを照明して撮像した透過画像を表示させる画像表示領域105aが設けられている。
【0114】
画像表示領域105aには、パターンサーチを実行する範囲を示すサーチ範囲枠206と、パターン画像として登録する範囲を示す登録範囲枠207とが透過画像に重畳表示される。サーチ範囲枠206及び登録範囲枠207の位置、大きさは、ユーザが操作部104を操作することによって任意に設定できる。操作部104を操作することで、登録範囲枠207により測定対象物Wの任意の部分を囲むことができ、これにより、測定対象物Wの任意の部分をパターン画像として登録できるとともに、パターン画像の位置情報も登録できる。
【0115】
ユーザインターフェース画面105には、撮像角度を選択する選択部105bが設けられている。選択部105bでは、開始時の角度で撮像した画像でパターンサーチを行うか、測定対象物Wを1周回転させながら撮像した画像でパターンサーチを行うか、指定した範囲で回転させながら撮像した画像でパターンサーチを行うかのいずれかを選択できる。
【0116】
以上のようにして図10Aに示すフローチャートのステップSA6が完了すると、ステップSA7に進み、測定設定を記憶部4に記憶させる。このステップSA7では、測定要素及び相対回転角度を記憶させる。つまり、測定要素の設定された回転角度が基準角度から相対的に何度回転しているかを記憶させる。さらに、ステップSA7では、ステップSA6で設定した位置補正用パターン画像も記憶させる。
【0117】
(正対化詳細フロー)
設定時の処理は図10Aに示す手順に限られるものではなく、例えば図10Bに示すフローチャートに示す手順であってもよい。図10Bに示すフローチャートのステップSA11では特徴形状を指定する。この特徴形状の指定は図10AのステップSA1の特徴形状の指定と同様にすることができる。特徴形状ではなく、測定対象物Wのパターン画像のみを設定してもよい。この場合、次のステップSA12では、探索する角度範囲のみ探索することになる。特徴形状の指定と、パターン画像の設定のどちらでもよい。
【0118】
ステップSA12では、評価項目、即ち探索アルゴリズムを設定する。評価項目は、図10AのステップSA2で説明したように、特徴形状の種別を選択すると、自動的に設定されるようにしてもよいし、特徴形状の種別の選択操作とは切り離して独自に設定するようにしてもよい。
【0119】
ステップSA12では、特徴形状である例えばDカット面W4の存在する領域設定を行うことができる。例えば、ユーザは、表示部16に表示された測定対象物画像上でDカット面W4の存在する領域を指定する。Dカット面W4以外の特徴形状であってもよく、特徴形状の存在する領域を指定すればよい。具体的には、図12に示すように、特徴形状である例えばDカット面W4が存在する領域を囲むように枠線200を引く。枠線200を引く操作としては、例えばマウス等を利用して斜めにドラッグ操作する方法があるが、これに限られるものではない。特徴形状が存在する領域の指定は、操作部14によって受け付けられる。特徴形状が存在する領域の指定が受け付けられると、当該領域の位置及び大きさを取得する。例えば、1つの測定対象物Wに複数の特徴形状が含まれていることがあり、その中でDカット面W4のみ寸法測定したい場合がある。この場合、Dカット面W4のみ撮像部15と正対させればよいので、ユーザが、その特徴形状が存在する領域を上述のようにして指定すると、他の特徴形状との正対化は考慮されることなく、Dカット面W4のみ撮像部15と正対させることができる。特徴形状が存在する領域の指定は複数であってもよい。
【0120】
ステップSA12では、特徴形状の探索を行う角度範囲の指定を行うこともできる。例えば、現在表示されている測定対象物Wの回転角度を基準として回転角度範囲を指定する。この指定操作は操作部14によって受け付けられる。例えば、1つの測定対象物WにピンW5~W7のように特徴形状が周方向に互いに間隔をあけて存在していることがあり、その中で、ピンW5のみ寸法測定したい場合がある。この場合、ピンW5のみ撮像部15と正対させればよいので、ユーザが、ピンW5が存在する角度範囲を指定すると、他の特徴形状との正対化は考慮されることなく、ピンW5のみ撮像部15と正対させることができる。
【0121】
探索設定が完了すると、ステップSA13に進んで探索設定を記憶部4に記憶させる。その後、ステップSA14及びSA15に進む。すなわち、本例では、測定対象物Wが回転ユニット5によって回転することに着目した探索手法も適用可能となっている。例えば、撮像部15が、センサーの一辺からもう一辺へとライン毎に画像を順次スキャンするローリングシャッターの場合、測定対象物Wを回転させながら撮像すると測定対象物画像が歪む現象が生じる。このような歪んだ測定対象物画像に基づいて、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度を探索すると精度の低下を招くおそれがある。反面、測定対象物Wを回転させながら撮像した測定対象物画像に基づくことで、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度の探索時間の短縮が可能になるという利点もある。
【0122】
この画像寸法測定装置1では、探索時間を短縮しながら探索精度を高めることが可能な探索処理が実行可能に構成されている。すなわち、撮像部15は、回転中の測定対象物Wを複数回撮像して得た複数の回転時画像と、回転を停止させた測定対象物Wを複数回撮像して得た複数の停止時画像とを測定対象物画像として生成する。ステップSA14において、オートアングル実行部33は、始めに、複数の回転時画像に基づいて、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度の粗サーチを実行する。この粗サーチにより、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度が存在する可能性の相対的に高い回転角度範囲を特定できる。その後、ステップSA15では、ステップSA14の粗サーチで特定された回転角度範囲において、複数の停止時画像に基づいて精密サーチを実行し、特徴形状が撮像部15と正対する回転角度を算出する。粗サーチを実行する回転角度範囲やピッチは変更可能にすることもできる。また、測定対象物Wが回転した状態であると振れが存在するので、その振れ量を検出して除去するアルゴリズムを適用することもできる。尚、ステップSA14の粗サーチを省略してもよい。
【0123】
その後、ステップSA16では、図10Aに示すステップSA3と同様に特徴形状を撮像部15に正対させる過程で基準角度を決定する。基準角度は、特徴形状が撮像部15に正対する時の角度であってもよいし、ステップSA12で設定した評価項目の評価値に特徴が現れる角度であってもよい。
【0124】
ステップSA17では、特徴形状が撮像部15に正対する角度を算出する。次いで、ステップSA18で図10Aに示すステップSA4と同様に特徴形状を正対化させる。尚、ステップSA18の後は、図10AのステップSA5~SA7の処理を実行することができる。
【0125】
(箱物の測定設定)
箱物の測定設定を行う場合には、図10Aに示すフローチャートのステップSA1において、図11に示す設定用ユーザインターフェース画面100上で「箱物」を選択する。その後、図12に示す特徴形状選択ウインドウ101内の「幅最小」を選択する。また、軸物の場合と同様に、探索を実行する領域を指定する。オートアングル実行部33は、評価値としての幅が最小となる回転角度を探索して特徴形状が撮像部15と正対する回転角度を算出する。
【0126】
制御ユニット3は、操作部14によって箱物が選択された場合に、測定対象物W20を90度単位で回転させるように回転ユニット5を制御する。箱物の場合、例えば直方体形状を有していることが多く、測定対象物W20を90度単位で回転させることで、当該直方体の4つの側面をそれぞれ撮像部15により撮像することが可能になる。ある測定対象物画像を撮像したときの回転角度を0度としたとき、次の測定対象物画像を撮像するときの回転角度は、90度であってもよいし、180度であってもよいし、270度であってもよい。また、90度だけ回転させて停止させること、180度連続回転させて停止させること、270度連続回転させて停止させることも、90度単位で回転させることに含まれる。
【0127】
図26Aは、ダイアログを閉じた角度が0度の状態の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像104である。また、図26Bは、測定対象物Wの方向検出に使用した要素が180度回転した状態の測定対象物画像を表示するユーザインターフェース画像104である。以上のようにして図10Aに示すフローチャートのステップSA1を実行できる。
【0128】
ステップSA2では、基本的には軸物の場合と同様に、測定対象物画像である背景画像を表示させた状態で、回転角度が0度のときの測定要素(表面の測定要素)と、回転角度が180度のときの測定要素(裏面の測定要素)とを個別に設定することができる。回転角度が0度のときの測定要素を第1測定要素とし、回転角度が180度のときの測定要素を第2測定要素とすることで、第1測定要素と第2測定要素間の寸法を測定することができる。
【0129】
図26Aに示す背景画像を第1の測定対象物画像(表面画像)とした場合、図26Bに示す背景画像は、第1の測定対象物画像を取得した回転角度から180度回転させた測定対象物を撮像した第2の測定対象物画像(裏面画像)となる。図26Aに示す背景画像と、図26Bに示す背景画像のそれぞれに第1のXY座標系(表側座標系)及び第2のXY座標系(裏側座標系)を設定することができる。第1のXY座標系と、第2のXY座標系とを相互に変換して第1測定要素と第2測定要素間の寸法を測定することができる。具体的には、第1のXY座標系と、第2のXY座標系とを相互に変換するための行列を求めればよい。例えば、裏面画像の表示中には、表面の測定要素を上記行列で変換することで表面の測定要素も裏面画像にずれなく表示することができ、指定も可能になる。表面画像の表示中には裏面の測定要素に対して同様の変換を行えばよい。これにより、回転角度が180度異なる測定要素間の寸法測定をずれなく行うことができる。
【0130】
また、第1の測定対象物画像における測定対象物Wの輪郭と、第2の測定対象物画像における測定対象物Wの輪郭とに基づいて、第1の測定対象物画像及び第2の測定対象物画像を相互変換して表面の測定要素と裏面の測定要素間の寸法を測定することもできる。
【0131】
表面の測定要素の形状と、裏面の測定要素の形状とを表示部16に同時に表示させることができる。この場合、表面の測定要素と、裏面の測定要素とを異なる表示形態で表示させることができる。異なる表示形態としては、例えば、表面の測定要素と、裏面の測定要素とで色を変える、線種を変える等を挙げることができる。
【0132】
(連続測定モード)
画像寸法測定装置1は、上記測定設定モードの後、連続測定モードの実行が可能になっている。ユーザが連続測定モードの実行ボタンを操作することで、連続測定モードが開始される。連続測定モードは、複数の測定対象物Wを順次測定するモードであり、画像寸法測定装置1の運用モードと呼ぶこともできる。
【0133】
(軸物の連続測定)
以下の説明では、軸物からなる測定対象物Wの場合について説明する。連続測定モードにおける手順について図27に示すフローチャートに基づいて説明する。スタート後のステップSB1では測定の設定を行う。具体的には、上記測定設定モードで複数の設定が行われて複数の設定内容が記憶部4に記憶されている場合、その中から連続測定を行う設定ファイルを選択し、実行する。
【0134】
また、測定対象物Wをチャック機構6に装着する。測定対象物Wをチャック機構6に装着した段階では、機械角度(画像寸法測定装置1で規定されている回転角度)と、測定対象物Wの回転角度との関係が不定である。また、測定設定時と、連続測定時とでは、測定対象物Wのチャック機構6に対する装着誤差が生じていることもある。
【0135】
ステップSB1が終わるとステップSB2に進む。ステップSB2では、測定対象物Wの位置及び向きを確認する。このとき、図28Aに破線で示すように、位置決めガイド208を測定対象物画像に重畳表示させてもよい。位置決めガイド208としては、例えばパターン画像を半透明にした画像を用いることや、当該画像の輪郭線等を用いることができる。また、測定設定時にパターン画像と同じ角度で撮像した落射画像があればパターン画像と落射画像の合成画像を半透明にして重畳表示することもできる。図中の符号209で示す枠線は、パターン画像の領域である。
【0136】
位置決めガイド208と、測定対象物Wとが一致するように、ユーザは測定対象物Wの回転角度を調整することができる。測定対象物Wの回転角度の調整は、手動調整ノブ55を回転させることによって行うことができる。図28Bは、測定対象物Wの回転角度の調整が完了した状態を示している。尚、パターン画像の登録時に、測定対象物Wを1周回転させる設定を選択している場合には、測定対象物Wの方向を調整する必要はない。
【0137】
ステップSB2が終わるとステップSB3に進み、連続測定で設定した条件と、測定設定で保持した各情報に基づいて、現在の測定対象物Wに対して測定設定の測定を自動で行う。まず、ステップSB4でパターンサーチを実行する。具体的には、図3に示すパターンサーチ実行部34が、撮像部15により撮像された測定対象物画像を用いて、予め登録されているパターン画像を探索するパターンサーチを実行する。例えば、パターンサーチ実行部34は、撮像部15により異なる回転角度で測定対象物を撮像した複数の測定対象物画像を用いてパターンサーチを実行し、登録されたパターン画像との一致度が最も高くなる回転角度を特定する。このとき、設定されている角度範囲内でパターン画像と最も一致度の高い回転角度を検出することができる。測定対象物Wを回転させるので、回転パターンサーチと呼ぶことができる。
【0138】
回転パターンサーチが終わるとステップSB5に進む。ステップSB5では、ステップSB4で特定された回転角度の測定対象物画像において、パターン画像とのずれ量を検出する。その後、検出されたずれ量及び位置情報に基づいて、検出されたずれ量と同じ量だけ測定要素の位置を補正する。これは位置補正処理である。
【0139】
位置補正処理が終わるとステップSB6に進む。ステップSB6では、オートアングル機能を実行する。例えば、測定設定の基準角度設定で指定した特徴形状を使用し、オートアングル機能によって測定対象物Wの方向を検出する。以下の式で得られる角度を中心として機械角度範囲内で測定を行うことができる。
【0140】
連続測定時におけるパターンサーチ検出角度+測定設定時におけるオートアングル角度-測定設定時におけるパターン画像撮像角度
ステップSB6でオートアングル機能による測定対象物Wの方向の検出が終わるとステップSB7に進み、基準角度及び測定角度を算出する。例えば、測定設定時における特徴形状及び基準角度のオフセット量に基づいて連続測定時における基準角度が機械角度で何度になるかを算出する。つまり、基準となる回転角度を特定し、記憶部4に記憶されている基準となる回転角度に対する相対的な回転角度(オフセット量)に基づいて、測定要素を測定するための測定角度を算出する。
【0141】
測定角度を算出した後、ステップSB8に進む。ステップSB8では、制御ユニット3が、ステップSB7で算出された測定角度となるように回転ユニット5を制御する。これにより、測定対象物Wの回転角度が測定角度になる。
【0142】
回転ユニット制御が終わるとステップSB9に進み、測定要素を測定する。ステップSB9では、まず、回転ユニット5が測定角度となったときに、撮像部15により測定対象物Wを撮像して測定対象物画像を生成する。これにより、測定要素を測定することができる。
【0143】
測定対象物画像の生成後、図3に示すエッジ抽出部30が測定対象物画像に対して画像処理を実行することにより、測定対象物Wの特徴形状のエッジを抽出する。エッジ抽出部30から出力されたエッジ情報は計測部31に入力され、計測部31は、測定対象物画像に基づいて、測定要素の寸法を測定する測定処理を実行する。
【0144】
測定処理が終わるとステップSB10に進んで表示処理を実行する。表示処理では、図29に示すような測定結果表示用のユーザインターフェース画像110をUI生成部32が生成し、制御ユニット3が当該ユーザインターフェース画像110を表示部16に表示させる。ユーザインターフェース画像110には、第1画像表示領域110aと、第2画像表示領域110bと、第3画像表示領域110cと、結果表示領域110dとが設けられている。第1画像表示領域110aには、回転角度が0度のときの測定対象物画像を表示し、第2画像表示領域110bには、回転角度が90度のときの測定対象物画像を表示することができる。つまり、第1画像表示領域110aと第2画像表示領域110bには、回転角度が異なる測定対象物画像を表示することができる。
【0145】
第3画像表示領域110cには、1または2以上の測定要素と、各測定要素の寸法線、測定値等が測定対象物画像に重畳表示される。第3画像表示領域110cは、第1画像表示領域110a及び第2画像表示領域110bよりも大きく設定されている。
【0146】
結果表示領域110dには、各測定要素の名称、測定値、判定が表示されている。判定は、測定値が予め設定された値の範囲から外れているか否かを示すものであり、例えばOK、NG等で表示することができる。表示される判定には、測定要素ごとの判定結果と、それらを総合した総合判定結果とを含むことができる。
【0147】
(機械角度での測定)
測定対象物Wをチャック機構6に着脱するたびに測定対象物Wとチャック機構6との相対的な回転角度は異なる。このことに対し、以下のステップを経ることで測定誤差を無くすことができる。
【0148】
すなわち、このステップにおける処理は、チャック機構6が特定の角度になった状態でしか測定できない箇所を測定したい場合に有効である。例えば、測定対象物Wの全長を測定したい場合には、測定対象物Wのチャック機構6側の端面を撮像する必要があるが、そもそも、測定対象物Wのチャック機構6側の端面はチャック機構6によって掴まれているため撮像できない。ところが、チャック機構6は、図5に示すように3つのチャック爪61~63が間隔をあけて設けられているので、回転角度によってはチャック爪61~63の間から測定対象物Wのチャック機構6側の端面が見えることがあり、この回転角度にあるときに撮像部15が撮像を実行することで、測定対象物Wのチャック機構6側の端面を撮像し、画像として取得できる。
【0149】
これを実現するべく、測定設定で測定対象物Wの測定を行う際に、機械角度を指定することにより、測定する角度を指定する手段を設ける。これにより、測定対象物Wとチャック機構6との相対的な回転角度に関わらず、同じ機械角度で測定が可能になる。具体的には、測定設定時に、回転角度を指定する際に、基準として機械角度を選択可能にし、この機械角度を指定することができるようにする。この操作は、ユーザが操作部14を操作することによって実現できる。
【0150】
図30は、機械基準要素を含まない設定での測定角度の説明図である。測定設定時と連続測定時で測定対象物Wとチャック機構6との相対的な回転角度が異なっても基準角度と機械角度の差が変わるだけで各要素間の相対角度は変わらない。
【0151】
一方、図31は、機械基準要素を含む設定での測定角度の説明図である。要素4が機械角度0度で指定している場合を示している。図30に示す場合と同様に、測定設定時と連続測定時で測定対象物Wとチャック機構6との相対的な回転角度が異なっても基準角度と機械角度の差が変わるだけで各要素間の相対角度は変わらないが、機械角度で指定している要素は基準角度に関わらず同じ機械角度で測定を行うことができる。
【0152】
(箱物の連続測定)
箱物の連続測定モードの処理の流れは軸物の連続測定モードと基本的には同じである。以下、軸物と異なる部分について詳しく説明する。
【0153】
箱物の連続測定モードにおいても図27に示すフローチャートのステップSB1で測定の設定を行い、このとき、連続測定を行う設定ファイルを選択する。箱物の測定対象物W20を箱物のチャック機構700に装着した段階では、機械角度と、測定対象物W20の角度とが不定であるが、このとき、箱物のチャック機構700は、チャック爪が第1、第2チャック爪601、602の2つであるため、装着角度が90度単位でばらつく場合が多い。また、測定設定時と、連続測定時とでは、測定対象物W20の装着位置、傾きが異なっていることがある。
【0154】
その後、ステップSB2では、ユーザは手動調整ノブ55を回転させて2方向以上で測定対象物W20が同じ位置・角度で装着できているかを確認し、測定対象物W20の向きや測定対象物W20の装着位置を調整する。このとき、図28Aに示すような位置決めガイドを測定対象物画像に重畳表示させることができる。
【0155】
次いで、ステップSB3、SB4を経てステップSB5に進む。ステップSB5では、パターンサーチの結果を反映させて位置合わせを行う。このとき、パターン画像を撮像したときの回転角度(θ)と異なる回転角度に位置している測定要素は、Δθに応じたずれ量を補正する。X方向はΔX、Y方向はΔy*cos(Δθ)、Z方向はΔy*sin(Δθ)の補正量となる。ステップSB6~SB10は軸物の場合と同様である。
【0156】
連続測定時には、回転角度が180度異なる2つの測定要素間の寸法を測定できるだけでなく、回転角度が90度異なる2つの測定要素間の寸法を測定することもできる。
【0157】
(表示形態)
図29に示すユーザインターフェース画像110では、第1画像表示領域110aに表示される測定対象物画像と、第2画像表示領域110bに表示される測定対象物画像の左右方向の位置を揃えて上下に並べて表示している。左右の位置を揃える際には、例えば画面の縦に延びる水平仮想線を想定し、第1画像表示領域110aに表示される測定対象物画像の左端と、第2画像表示領域110bに表示される測定対象物画像の左端とが水平仮想線上に位置するようにすればよい。
【0158】
また、図示しないが、第1画像表示領域110aに表示される測定対象物画像と、第2画像表示領域110bに表示される測定対象物画像の上下方向の位置を揃えて左右に並べて表示してもよい。上下の位置を揃える際には、例えば画面の横に延びる鉛直仮想線を想定し、第1画像表示領域110aに表示される測定対象物画像の上端と、第2画像表示領域110bに表示される測定対象物画像の上端とが鉛直仮想線上に位置するようにすればよい。
【0159】
上述したように、箱物の場合、90度単位で回転させているが、加工のもととなる設計図面も同様に90度単位で複数方向から見た図に対して寸法指示や公差の記載があるので、第1画像表示領域110aの画像と第2画像表示領域110bの画像を、上下や左右の位置を揃えて表示することで、両画像を設計図面のように表示できる。これにより、立体的形状が把握しやすくなるとともに、各図の対応関係が容易に認識でき、さらに、図面に指示されている寸法指示や公差との比較も容易になる。
【0160】
ユーザは、第1画像表示領域110aに表示される測定対象物画像と、第2画像表示領域110bに表示される測定対象物画像のうち、一方を選択できる。ユーザによる画像の選択は、操作部14により受け付けられる。制御ユニット3は、受け付けた測定対象物画像を撮像したときの測定対象物W20の回転角度と同じ回転角度となるように回転ユニット5を制御する。つまり、複数の測定対象物画像の中から1つを選択すると、測定対象物W20の回転角角度を自動的に撮像時の回転角度にすることができ、この機能をナビゲーション機能と呼ぶことができる。
【0161】
撮像部15は、測定対象物W20の回転角度が、選択された測定対象物画像を撮像したときの測定対象物W20の回転角度と同じになった状態で当該測定対象物W20を撮像してプレビュー画像を生成する。
【0162】
撮像部15が生成したプレビュー画像は、ユーザインターフェース画像110の第3画像表示領域110cに表示される。第1画像表示領域110a、第2画像表示領域110b及び第3画像表示領域110cには、各画像が同時に表示される。第3画像表示領域110cが最も大きいので、プレビュー画像が他の画像よりも拡大した状態で表示されることになる。これにより、プレビュー画像上の寸法線や測定値が読みやすくなる。
【0163】
ユーザインターフェース画像110には、互いに回転角度が異なる3つ以上の測定対象物画像を表示してもよい。例えば、回転角度が90度、180度、270度の3つの測定対象物画像を表示することもできる。この場合もユーザが選択した測定対象物画像をプレビュー画像として拡大表示できる。
【0164】
図32は、箱物の測定対象物W20の場合に表示部16に表示されるユーザインターフェース画像104の一例を示す図である。この例では、ユーザインターフェース画像104の右側に複数画像が表示されるようになっており、具体的には回転角度の異なる2以上の測定対象物画像が表示可能であり、例えば90度単位で回転させた2つの画像や3つの画像を表示できる。どの画像を表示させるかは、ユーザが選択できる。これにより、加工のもととなる設計図面に対応した表示形態になる。
【0165】
一方、図32のユーザインターフェース画像104の左側にはプレビュー画像が表示されるようになっている。プレビュー画像は、右側の測定対象物画像の中からユーザが選択した画像を拡大した画像である。この例では90度で撮像した測定対象物画像を拡大してプレビュー画像として表示している。プレビュー画像には、測定結果を表示させることができる。
【0166】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、測定設定時に、ユーザが測定対象物画像上で測定基準に関する情報として特徴形状を入力することができ、また、これとは異なる回転角度で生成された測定対象物画像上で例えば線分、円、円弧等の測定要素を設定することができる。特徴形状を入力した測定対象物画像を撮像したときの基準となる回転角度に対し、測定要素を設定した測定対象物画像を撮像したときの相対的な回転角度を記憶部4に記憶しておくことができる。
【0167】
そして、連続測定時には、撮像部15が異なる回転角度で測定対象物Wを撮像した複数の測定対象物画像を生成する。制御ユニット3は、複数の測定対象物画像の中から操作部14により受け付けられた特徴形状に基づいて基準となる回転角度を特定することができる。基準となる回転角度に対する相対的な回転角度は記憶部4から読み出すことができる。制御ユニット3は、測定要素を測定するための測定角度を相対的な回転角度に基づいて算出すると、算出された測定角度となるように回転ユニット5を制御する。これにより、回転ユニット5の回転角度が自動的に測定角度になるので、測定要素が撮像部15によって撮像可能な位置に配置される。したがって、ユーザが撮像部15に対する測定対象物Wの回転角度を調整する必要がなくなる。
【0168】
また、箱物の測定対象物W20を90度単位で回転させることができるので、直方体の4つの側面をそれぞれ撮像部15により撮像することが可能になる。回転角度が0度である測定対象物画像で測定対象物W20の一の側面が撮像されている場合、その測定対象物画像上で第1測定要素を設定することができる。また、回転角度が90度または180度である測定対象物画像で測定対象物W20の他の側面が撮像されている場合、その測定対象物画像上で第2測定要素を設定することができる。制御ユニット3は、異なる2つの面に存在している第1測定要素と第2測定要素間の寸法を測定できる。
【0169】
また、測定対象物Wの特徴形状を指定しておくことで、特徴形状と、測定対象物画像上における形状の変化とに基づいて、特徴形状が撮像部15に正対する回転角度を算出できる。これにより、測定対象物Wの特徴形状を撮像部15に正対させることができるので、属人性が排除されて調整にばらつきが無くなるとともに、調整が短時間で可能になる。
【0170】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0171】
以上説明したように、本発明に係る画像寸法測定装置は、測定対象物を回転させる回転機構を備えたものに適用することができる。
【符号の説明】
【0172】
1 画像寸法測定装置
3 制御ユニット(制御部)
4 記憶部
5 回転ユニット(回転機構)
6 チャック機構(軸物用)
14 操作部
15 撮像部
16 表示部
33 オートアングル実行部
34 パターンサーチ実行部
69 被締結部材(着脱部)
80 締結部材(着脱部)
700 チャック機構(箱物用)
W 測定対象物(軸物)
W20 測定対象物(箱物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26A
図26B
図27
図28A
図28B
図29
図30
図31
図32