(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ハイブリッド符号化を使用するチップレスRFIDタグ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/067 20060101AFI20240115BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G06K19/067 020
H01Q15/14 Z
(21)【出願番号】P 2020104341
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-06-16
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】シャブナミ・ラダン
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・エリック・シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】ファルザド・マイケル・デイヴィッド・イナンロウ
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0114041(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0015248(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K7/00-7/14
G06K17/00-19/18
H01Q15/00-19/32
H04B5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップレスパターン化導体であって、
1つ以上のグリフであって、各グリフが、
ディスクと、
前記ディスクを取り囲む少なくとも1つのリングを備えるリング構造であって、前記少なくとも1つのリングは、前記ディスクを取り囲む第1のリングと、前記ディスクを取り囲む第2のリングと、を備え、前記第2のリングは、前記第1のリング及び前記ディスクの対向電極として機能するように構成されており、前記ディスクと前記少なくとも1つのリングとの間の間隔、及び前記少なくとも1つのリングの幅のうちの1つ以上が、前記グリフの特性共振周波数を判定するように構成されている、リング構造と、
前記ディスクのうちの少なくとも1つ及び前記リング構造の少なくとも1つのリング内の少なくとも1つのノッチであって、前記グリフ内の共振の大きさが、偏光方向に依存するように構成されている、少なくとも1つのノッチと、
を備える、チップレスパターン化導体。
【請求項2】
前記リング構造が、約40GHzから約75~110GHzの帯域で共振するように構成されている、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項3】
前記第1のリングの幅が、前記第2のリングの幅と異なる、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項4】
前記第1のリングの幅が、前記第2のリングの前記幅と実質的に同じである、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項5】
前記第1のリングと前記ディスクとの間の間隔が、前記第2のリングと前記ディスクとの間の間隔とは異なる、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項6】
前記ディスクが、2つのノッチを有する、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項7】
前記2つのノッチが、前記ディスクの両側上にある、請求項6に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項8】
接地面と、
前記1つ以上のグリフと前記接地面との間に配設された誘電体層と、を更に含む、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項9】
前記1つ以上のグリフが複数のグリフを含む、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項10】
前記複数のグリフの第1のグリフが、第1のリング構成及び第1のノッチ構成のうちの1つ以上を有し、前記複数のグリフ
の第2のグリフが、前記第1のリング構成とは異なる第2のリング構成、及び前記第1のノッチ構成とは異なる第2のノッチ構成のうちの1つ以上を有する、請求項9に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項11】
前記少なくとも1つのノッチが前記第2のリング内に配設されている、請求項1に記載のチップレスパターン化導体。
【請求項12】
チップレスパターン化導体を形成する方法であって、
導電箔から少なくとも1つのグリフを形成することであって、
ディスクを形成することと、
前記ディスクを取り囲む少なくとも1つのリングを含むリング構造を形成することであって、前記ディスクと前記少なくとも1つのリングとの間の間隔
、及び少なくとも1つのリングの幅のうちの1つ以上が、前記グリフの特性共振周波数を判定するように構成されている、形成することと、
前記ディスクのうちの少なくとも1つ及び前記リング構造の少なくとも1つのリング内に少なくとも1つのノッチを形成することであって、前記少なくとも1つのノッチが、前記グリフ内の共振の大きさが偏光方向に依存するように構成されている、形成することと、
を含む、少なくとも1つのグリフを形成することと、
前記少なくとも1つのグリフを、
基材の第1の側面、反対側の
前記基材の第2の側面、及び前記基材の前記第2の側面上に配設された導電層を有する
前記基材の前記第1の側面に転写することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのグリフを基材上に形成することと、前記少なくとも1つのグリフを物体に転写することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのグリフを形成することが、前記少なくとも1つのグリフを物体上に直接形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのグリフを形成することが、導電性材料から前記少なくとも1つのグリフを印刷することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのグリフを形成することが、
導電箔から前記少なくとも1つのグリフを形成すること、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記基材が、第1の側面及び反対側の第2の側面を有し、前記少なくとも1つのグリフが、第1のグリフ及び第2のグリフを含み、前記第1のグリフが、前記基材の前記第1の側面上に配設され、前記第2のグリフが、前記基材の前記第2の側面上に配設される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記基材が、第1の基材層及び第2の基材層を含み、導電層が、前記第1の基材層と前記第2の基材層との間に配設される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基材上に導電性接地面を堆積させることと、
前記導電性接
地面上に誘電体層を堆積させることと、
前記誘電体層上に前記少なくとも1つのグリフを形成することと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
パターン化導体を読み取るためのシステムであって、
電磁放射線信号を前記パターン化導体に向けて送信するように構成された送信機であって、前記パターン化導体が、1つ以上のグリフを含み、各グリフが、
ディスクと、
前記ディスクを取り囲む少なくとも1つのリングを備えるリング構造であって、前記少なくとも1つのリングは、前記ディスクを取り囲む第1のリングと、前記ディスクを取り囲む第2のリングと、を備え、前記第2のリングは、前記第1のリング及び前記ディスクの対向電極として機能するように構成されており、前記ディスクと前記少なくとも1つのリングとの間の間隔、及び前記少なくとも1つのリングの幅のうちの1つ以上が、前記グリフの特性共振周波数を判定するように構成されている、リング構造と、
前記ディスクのうちの少なくとも1つ及び前記リング構造の少なくとも1つのリング内の少なくとも1つのノッチであって、前記少なくとも1つのノッチは、前記グリフ内の共振の大きさが偏光方向に依存するように構成され、各グリフが、前記特性共振周波数及び前記共振の大きさに基づいて前記電磁放射線
信号の少なくとも一部分を後方散乱させるように構成されている、少なくとも1つのノッチと、
を含む、送信機と、
後方散乱信号を受信するように構成された受信機と、
前記後方散乱信号をデジタルシグネチャと関連付けるように構成されたプロセッサと、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線自動識別(radio frequency identification、RFID)に関する。
【背景技術】
【0002】
無線自動識別(RFID)タグは、あるタイプの識別デバイスである。質問器とも呼ばれる読み取りデバイスによって問い合わせられるとき、RFIDタグは、コードされた識別情報(identification、ID)を質問器に戻すために、無線周波数信号を反射又は再送信する。RFIDタグデバイスは、2つの基本タイプのものであってもよい。チップ化されたRFIDタグは、データを記憶するマイクロチップを含む。チップレスRFIDタグは、マイクロチップを含まないが、代わりに、データを記憶するために、磁気材料又はトランジスタレスの薄膜回路に依存する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載される実施形態は、1つ以上のグリフを含むチップレスパターン化導体を含む。各グリフは、ディスクと、ディスクを取り囲む少なくとも1つのリングを含むリング構造と、を備える。ディスクと少なくとも1つのリングとの間の間隔、及び少なくとも1つのリングの幅のうちの1つ以上は、グリフの特性共振周波数を判定するように構成される。少なくとも1つのノッチが、ディスクのうちの少なくとも1つ及びリング構造の少なくとも1つのリング内に配設される。少なくとも1つのノッチは、グリフ内の共振の大きさが偏光方向に依存するように構成される。
【0004】
チップレスパターン化導体を形成する方法は、少なくとも1つのグリフを形成することを含む。少なくとも1つのグリフは、ディスクを形成し、ディスクを取り囲む少なくとも1つのリングを含むリング構造を形成することによって形成される。ディスクと少なくとも1つのリングとの間の間隔、及び少なくとも1つのリングの幅のうちの1つ以上は、グリフの特性共振周波数を判定するように構成される。少なくとも1つのノッチが、ディスクのうちの少なくとも1つ及びリング構造の少なくとも1つのリング内に形成される。少なくとも1つのノッチは、グリフ内の共振の大きさが偏光方向に依存するように構成される。
【0005】
パターン化導体を読み取るためのシステムは、21を含む。
【0006】
電磁放射線信号を前記パターン導体に向けて送信するように構成された送信機を備えるパターン化導体を読み取るためのシステムであって、パターン化導体が、1つ以上のグリフを備える、システム。各グリフは、ディスクと、ディスクを取り囲む少なくとも1つのリングを含むリング構造と、を備える。ディスクと少なくとも1つのリングとの間の間隔、及び少なくとも1つのリングの幅のうちの1つ以上は、グリフの特性共振周波数を判定するように構成される。少なくとも1つのノッチが、ディスクのうちの少なくとも1つ及びリング構造の少なくとも1つのリング内に配設される。少なくとも1つのノッチは、グリフ内の共振の大きさが偏光方向に依存するように構成される。各グリフは、特性共振周波数及び共振の大きさに基づいて電磁放射線の少なくとも一部分を後方散乱させるように構成される。受信機は、後方散乱信号を受信するように構成される。プロセッサは、後方散乱信号をデジタルシグネチャと関連付けるように構成される。
【0007】
上記の概要は、各実施形態又は全ての実装態様を説明することを意図したものではない。添付図面と併せて、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって、より完全な理解が明らかとなり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本明細書に記載される実施形態による例示的なグリフを示す。
【
図1B】本明細書に記載される実施形態による例示的なグリフを示す。
【
図1C】本明細書に記載される実施形態による、ノッチ付きディスク及びノッチ付きディスクを取り囲むリングの両方を有するハイブリッドグリフの実施例を示す。
【
図1D】本明細書に記載される実施形態による、ノッチ付きディスク及びノッチ付きディスクを取り囲むリングの両方を有するハイブリッドグリフの実施例を示す。
【
図2A】本明細書に記載される実施形態による、1つ以上のリングが少なくとも1つのノッチを有するグリフの実施例を示す。
【
図2B】本明細書に記載される実施形態による、1つ以上のリングが少なくとも1つのノッチを有するグリフの実施例を示す。
【
図2C】本明細書に記載される実施形態による、1つ以上のリングが少なくとも1つのノッチを有するグリフの実施例を示す。
【
図3A】本明細書に記載される実施形態による、チップレスパターン化導体を形成するためのプロセスを示す。
【
図3B】本明細書に記載される実施形態による、基材上に配設されたグリフの実施例を示す。
【
図3C】本明細書に記載される実施形態による、基材上に配設されたグリフの実施例を示す。
【
図3D】本明細書に記載される実施形態による、2つ以上のグリフを有する実施形態を示す。
【
図3E】本明細書に記載される実施形態による、2つ以上のグリフを有する実施形態を示す。
【
図4A】本明細書に記載される実施形態によるハイブリッドグリフのより詳細な図を示す。
【
図4B】本明細書に記載される実施形態によるハイブリッドグリフのより詳細な図を示す。
【
図5】本明細書に記載される実施形態によるハイブリッドチップパターン化導体のシミュレーション構成を示す。
【
図6】本明細書に記載される実施形態による、リング共振器の共振周波数で観察される深いノッチを示す。
【
図7A】本明細書に記載の実施形態による、
図1Aに示す構成の約57GHzでの表面電流分布を示す。
【
図7B】本明細書に記載される実施形態による、
図1Aに示す構成の約64GHzでの表面電流分布を示す。
【
図8】本明細書に記載される実施形態による、
図1Cのように水平に配向されたノッチのX偏光面によって励起され、ノッチが90°回転され、
図1Dのように垂直に配向された、
図1Bのパターン化導体の後方散乱電界のシミュレーション結果を示す。
【
図9】本明細書に記載される実施形態による、
図1Bに示す構成の約60GHzでの表面電流分布を示す。
【
図10】
図1Cのような入射電界の方向(90°回転)に垂直なノッチを有するパターン化導体の後方散乱電界のシミュレーション結果、及び、
図1Dのような入射電界(180°回転)と同じ方向に配向されたノッチを有するパターン化導体の後方散乱電界のシミュレーション結果を示す。
【
図11A】本明細書に記載される実施形態による、ハイブリッドグリフの約57GHzでの表面電流分布を示す。
【
図11B】本明細書に記載される実施形態による、ハイブリッドグリフの約60GHzでの表面電流分布を示す。
【
図11C】本明細書に記載される実施形態による、ハイブリッドグリフの約64GHzでの表面電流分布を示す。
【
図12】本明細書に記載される実施形態による、グリフの例示的なアレイを示す。
【
図13】本明細書に記載される実施形態を実装することができるRFIDシステムのブロック図を示す。
【0009】
図面は、必ずしも縮尺通りではない。図面に使用される同様の数字は、同様の構成要素を指す。しかしながら、所与の図の構成要素を指すための数字の使用は、同じ数字でラベル付けされた別の図における構成要素を制限することを意図していないことが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
無線自動識別(RFID)技術は、多くの異なる用途を有する。チップレスRFIDは、タグ内に符号化されたデータを抽出するために電磁波を印加する無線データ捕捉技術である。チップレスRFIDタグは、バーコードを交換する可能性を有する。符号化容量の増加、製造の簡素化、及びコスト低下の観点から、チップレスRFIDの性能を向上させる可能性がある。
【0011】
本明細書に記載される実施形態によれば、チップレスRFIDの符号化効率は、単一の導電性グリフ内での複数の周波数符号化と偏光感度を組み合わせることによる、ハイブリッド符号化技術を使用することによって改善され得る。本明細書に記載される実施形態によれば、これはミリメートル波(mm波)方式で行われるが、この技術はこの周波数範囲に限定されず、より高い又はより低い周波数も使用することができる。この設計の1つの動機は、チップレスRFIDタグの符号化効率を向上させることである。一般に、RFIDタグ設計プロセスで符号化能力を増加させるための異なる方法が存在する。いくつかの実施形態は、各グリフが数ビットを保持することができる、複数の単純なグリフの統合を伴う。各単一のグリフの容量を増加させることにより、完全なタグの容量が拡張によって増加する。
【0012】
本明細書に記載される実施形態によれば、データは、特定の周波数で後方散乱信号にいくつかの共振を生成することによって、周波数帯域内で符号化することができる。本明細書に記載される実施形態は、全てのリングが同心形状を形成する共通の中心を有するスロットリング共振器の概念に基づく。これを行うために、様々な直径を有するスロットリング共振器は、各シグネチャが1ビットを表す異なる周波数シグネチャを符号化するように設計される。高調波共振は、設計の対称構成に起因して、偶数及び奇数高調波の電流経路が相殺されるため、後方散乱信号においては観察されない。したがって、データを符号化するために完全な周波数帯域を使用することができる。設計されたタグに偏光ダイバーシティを付加するために、2つの対称な矩形ノッチが、内側円形ディスク及び/又は1つ以上のリング内に形成される。本明細書に記載される実施形態によれば、ハイブリッドタグは接地面を有していなくてもよく、したがって、力線は、基材内に集中されない。
【0013】
パターン化導体は、本明細書に記載される実施形態による1つ以上のグリフを含む。グリフは、誘電体基材上に配設されたパターン化された導電性材料である。いくつかの実施形態によれば、基材の裏側は、連続導体(例えば、「接地面」)を有する。
図1Aは、グリフ100の一実施例を示す。グリフ100は、ディスクを取り囲む2つのリング120、122を有するリング110を含む。本明細書に記載される実施形態によれば、少なくとも1つのリング及び少なくとも1つのリングの幅は、グリフの特性共振周波数を判定するように構成される。
【0014】
図1Bは、本明細書に記載される実施形態によるグリフ105の例を示す。
図1Bのグリフ105は、2つのノッチ132、134を有するディスク130を含む。様々な実装態様によれば、ノッチ132、134は、グリフ内の共振の大きさが偏光方向に依存するように構成される。
【0015】
様々な実施形態によれば、偏光及び周波数の両方に敏感なパターン化導体を印刷することができる。ハイブリッド(偏光及び周波数)構成は、符号化効率を向上させることができ、mm波方式での作業は、より小さいグリフサイズの利点をもたらす。本明細書に記載される実施形態によれば、パターン化導体は、トータルの符号化効率を高めるためにクレジットカードサイズ(例えば、85.60×53.98mm)タグに載置される1つ以上のグリフを含む。より大きいサイズ及びより小さいサイズのタグの両方もまた、実現可能である。いくつかの場合では、ハイブリッドタグは接地面を必要とせず、製造コストの簡略化及び低減をもたらす。本明細書に記載される実施形態は、リングが中央ノッチ付きディスクの対向電極として機能し、波が2つのストリップ間又はノッチ幅内で誘導されるため、接地面無しで放射することができるパターン化導体を伴ってもよい。
【0016】
本明細書に記載される実施形態によれば、単純なグリフは、スロットリングによって取り囲まれたノッチ付き円形パッチを含む。
図1C及び
図1Dは、ノッチ付きディスク及びノッチ付きディスクを取り囲むリングの両方を有するグリフの実施例を示す。具体的には、
図1Cは、周波数ダイバーシティと偏光の両方を有するグリフ150を示し、周波数ダイバーシティは、複数の共振周波数を有するものとして定義される。
【0017】
グリフ150は、2つのノッチ162、164を有するディスク160を有する。この実施例では、ノッチ162、164はディスク160の両側に配設され、X偏光に対応するように配向されるが、
図1Dに示されるように、タグを90°回転させることによってY偏光が可能である。2つのリング170、172が、ノッチ付きディスク160を取り囲む。
図1Dは、周波数ダイバーシティ及び偏光ダイバーシティの両方を有する別のグリフ155を示す。グリフ155は、2つのノッチ182、184を有するディスク180を有する。ノッチ182、184が、ディスク180の両側に配設される。2つのリング190、192が、ノッチ付きディスク180を取り囲む。
図1C及び
図1Dに示される実施例は、2つのノッチ及び2つのリングを有するディスクを示すが、より多い又はより少ないノッチ及びより多い又はより少ないリングが存在し得ることを理解されたい。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、ディスクがノッチ付きではなく、並びに/又は、スロットリングのうちの1つ以上が、開口部及び/又はノッチを含む。
図2Aは、2つのノッチ212、214を有するディスク210を含むグリフ200の例を示す。ディスク210は、リング220を完全に貫通する2つのノッチ222、224を有するリング220によって取り囲まれている。この実施例では、ディスク210内のノッチ212、214はY方向にあり、リング220内のノッチ222、224はX方向にある。いくつかの構成では、ディスク210内のノッチの数及びリング220内のノッチの数は異なっていてもよい。
図2Bは、Y方向に2つのノッチ242、244を有するディスク240を有するグリフ230を示す。ディスク240は、リング250を完全に貫通しない2つのノッチ252、254を有するリング250によって取り囲まれている。
図2Cは、ディスク270を含むグリフ260の一実施例を示す。ディスク270は、内側リング280及び外側リング290によって取り囲まれている。外側リング290は、外側リング290を完全に貫通する2つのノッチ292、294を有する。
図2Cの実施例は外側リングのノッチを示しているが、ノッチは、内側リング280内、又は内側リング280及び外側リング290内に配設され得ることを理解されたい。
【0019】
図3Aは、本明細書に記載される実施形態による、チップレスパターン化導体を形成するためのプロセスを示す。ディスクが形成される(302)。ディスクを取り囲む少なくとも1つのリングが形成される(304)。ディスクと少なくとも1つのリングとの間の間隔、及び少なくとも1つのリングの幅のうちの1つ以上は、グリフの特性共振周波数を判定するように構成される。少なくとも1つのノッチが、ディスクの少なくとも1つ及びリング構造の少なくとも1つのリングに形成される(306)。少なくとも1つのノッチは、グリフ内の共振の大きさが偏光方向に依存するように構成される。
【0020】
パターン化導体は、Cバンド(4~8GHz)、Xバンド(8~12GHz)、Ku、K及びKa(12~40GHz)、Qバンド(33~50)、Vバンド(50~75GHz)、及び/又はWバンド(75~110GHz)を含む任意の周波数帯域で動作するように構成されてもよい。特定の周波数範囲がここに含まれるが、周波数範囲は、110GHz超及び/又は4GHz未満であってもよいことを理解されたい。
【0021】
本明細書に記載される実施形態によれば、少なくとも1つのグリフが、基材上に形成され、基材を有する少なくとも1つのグリフが、物体、例えば、ボックスに転写される。例えば、基材は、物体に転写され得るステッカーであってもよい。様々な実装態様によれば、グリフは、物体上に直接形成される。例えば、グリフは、パッケージ、紙カップ、パレット、及び/又は衣類の物品上に形成されてもよい。少なくとも1つのグリフは、導電性材料から少なくとも1つのグリフを印刷することによって形成されてもよい。例えば、グリフは、銀及び銅のうちの1つ以上を含む印刷インクから製作されてもよい。いくつかの場合では、印刷インクは、ニッケル、炭素、カーボンナノチューブ、及び銀ナノワイヤのうちの1つ以上を含むことができるであろう。様々な構成によれば、印刷後のアニーリングプロセスが行われる。様々な実施形態によれば、グリフは、誘電体基材上の金属をエッチングすることによって製作される。例えば、グリフは、銅及びアルミニウムのうちの1つ以上をエッチングすることによって製作されてもよい。グリフは、例えば、インジウム-スズ酸化物などの透明導体をエッチングすることによって製作することができる。いくつかの実装態様では、グリフは、例えば、銅、アルミニウム、金、及び/又は銀のうちの1つ以上の導電性リボンを使用して、熱転写プロセスで製作される。いくつかの実施形態によれば、グリフは、蒸着によって製作される。例えば、グリフは、スパッタリング及び/又は熱蒸発プロセスを使用して製作されてもよい。これらのプロセスのいずれにおいても、導体がパターン化される基材は、Taconic TLX-8などの高性能誘電体、マイラー、ポリエチレンテトラフタレート(polyethylene tetrapthalate、PET)及び/若しくはポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)などの低コストポリマー、及び/又はポリイミド、ガラス若しくは紙などの別の基材材料、及び/又は導電性フィルムで裏側に予めコーティングされた上記のいずれか、であってもよい。
【0022】
パターン化導体を形成するために使用することができる様々な技術が本明細書に記載されているが、任意の技術を単独で、又は任意の他のプロセスと組み合わせて使用することができることが理解されるべきである。
【0023】
いくつかの構成では、少なくとも1つのグリフが導電箔から形成され、この少なくとも1つのグリフ310は、
図3Bに示されるように、基材320に転写される。様々な実装態様によれば、基材325は、第1の側面327及び対向する第2の側面329を有する。基材325の第2の側面329上に配設された導電層330と、グリフ315は、
図3Cに示すように、基材325の第1の側面327に転写される。様々な構成によれば、導電層は接地面である。
【0024】
図3Dは、本明細書に記載される実施形態による、2つ以上のグリフを有する実施形態を示す。
図3Dは、第1の側面364及び対向する第2の側面366を有する基材層362を示す。第1のグリフ352は、基材層362の第1の側面364上に配設され、第2のグリフ372は、基材層362の第2の側面366上に配設される。
図3Eは、2つ以上のグリフを有する別の実施例を示す。第1のグリフ380は、第1の基材層382の第1の側面390上に配設される。導電層384が、第1の基材層392の第2の側面392と第2の基材層386の第1の側面394との間に配設される。第2のグリフ388は、第2の基材層386の第2の側面396上に配設される。
【0025】
図4A及び
図4Bは、本明細書に記載される実施形態によるハイブリッドグリフのより詳細な図を示す。グリフ400は、約1.5mm~約2.5mmの範囲の半径Rを有する。様々な実装態様によれば、Rは、約1.5mmである。いくつかの場合では、Rは、1.5mm未満又は2.5mm超である。
【0026】
ディスク420は、約0.4mm~約0.8mmの範囲の半径RDを有する。様々な実装態様によれば、RDは、約0.45mmである。この実施例では、ディスクは、第1のノッチ422及び第2のノッチ424を有する。第1のノッチ422は、長さL1及び幅WN1を有する。第2のノッチ424は、長さL2及び幅WN2を有する。本明細書に記載される実施形態によれば、WN1はWN2に実質的に等しく、及び/又はL1は、L2に実質的に等しい。いくつかの場合では、L1はL2とは異なる値であり、及び/又はWN1は、WN2とは異なる値である。本明細書に記載される実施形態によれば、L1及びL2は、約0.4mm~約0.795mmの範囲である。様々な実装態様によれば、L1及び/又はL2は、約0.405mmである。本明細書に記載の実施形態によれば、WN1及びWN2は、約0.1mm~約0.6mmの範囲である。様々な実装態様によれば、WN1及び/又はWN2は、約0.05mmである。
【0027】
第1のリング430及び第2のリング432は、ディスク420を取り囲む。第1のリング430は、約0.05mm~約0.1mmの範囲の幅WR1を有する。様々な実装態様によれば、WR1は、約0.105である。第2のリング432は、約0.04mm~約0.08mmの範囲の幅WR2を有する。様々な実装態様によれば、WR2は、約0.0495である。いくつかの場合では、WR1は、WR2と実質的に等しい。第1の間隙は、約0.025mm~約0.05mmの範囲の幅WG1を有する。第2の間隙は、約0.018mm~約0.03mmの範囲の幅WG2を有する。様々な実装態様によれば、WG1は、約0.025mmであり、及び/又はWG2は、約0.018mmである。いくつかの場合では、WG1は、WG2に実質的に等しい。
【0028】
本明細書に記載される実施形態によれば、グリフの寸法のうちの少なくとも1つは、最適化プロセスに従って選択される。例えば、寸法は、特定の周波数で共振を有するように選択されてもよい。これは、式(1)を使用してディスクのおおよその半径のうちの1つ以上を判定することによって達成することができ、ここで、ノッチの幅及び/又はリングの幅は、最適化プロセスを通じて判定される。
【0029】
【0030】
ここで、cは、自由空間内の光の速度であり、frは、設計の共振周波数であり、εrは、設計に使用された基材の誘電率である。
【0031】
次いで、グリフが、推定された寸法を使用して設計される。シミュレーションが、利用可能な市販の電磁シミュレーションツールを使用して実行され、設計の周波数挙動が監視される。次いで、所望の周波数で共振を得るように寸法が調整される。
【0032】
図5は、本明細書に記載される実施形態によるハイブリッドチップパターン化導体のシミュレーションセットアップ500を示す。直線偏光平面波520は、パターン化導体510の励起に使用される。後方散乱電界を監視するために、1つ以上のプローブは、パターン化導体510から離れた特定の距離に位置されてもよい。例えば、プローブは、パターン化導体510から約10cm離れて位置されてもよい。タグは、基材530上に配設される。例えば、タグは、約2.55の損失、約0.0017の損失の誘電率を有する5milのTaconic TLX-8基材上に配設されてもよい。最適化プロセスは、リングのサイズを最適化するために、及びノッチ付きディスクが所望の周波数で共振を有するために実行されてもよい。
【0033】
平面波が
図1Aに示されるリングに衝突するとき、深いノッチに続くピークを有する周波数選択的な挙動が、2つの深いノッチ610、620が観察される
図6に描かれるように、リング共振器の共振周波数で観察される。第1の共振610は、より大きいリング122に関連する約57GHzで発生する。より小さいリング120による第2の共振620は、約64GHzで起こる。内側円形ディスク110は、所望の周波数帯の外側に入るため、これらの2つの共振は、リングのみに起因する。
【0034】
図1Aに示す構成の約57GHzでの表面電流分布を
図7Aに示す。
図7Bは、
図1Aに示す構成の約64GHzでの表面電流分布を示す。
図7A及び
図7Bは、隣接するスロットのカップリングと共振との間の関係を示す。隣接するスロットの電流密度ベクトルが反対向きであり、磁気共鳴を発生させることを観察することができる。スロットの幅は、カップリング強度及び共振周波数に影響する。より小さいスロット幅は、共振周波数を下方にシフトさせる一方で、より大きいスロット幅は、共振を上方にシフトさせることをもたらす。
【0035】
図8は、
図1Cのように水平に配向されたノッチのX偏光面によって励起された
図1Bのパターン化導体の後方散乱電界のシミュレーション結果810及び、
図1Dのように90°回転され垂直に配向されたノッチの対応するシミュレーション結果820を示す。
図1Bに示す構成の約60GHzでの表面電流分布を
図9に示す。
【0036】
図10は、
図1Cのように入射電界の方向に対して垂直(90°回転)であるノッチを有するグリフを有するパターン化導体の後方散乱電界のシミュレーション結果1010及び、
図1Dのように入射電界と同じ方向(180°回転)に配向されたノッチを有するグリフを有するパターン化導体に関する、後方散乱電界のシミュレーション結果1020を示す。ノッチが入射電界に対して垂直に配向されている場合1010では、監視された周波数帯域において、3つの共振1012、1014、1016が観察される。57GHzでの共振1012及び64GHzでの共振1016は、リングによるものであり、60GHzで観測される共振1014は、ノッチ付きディスクの効果である。ノッチが入射電界と同じ方向に配向される場合1020では、リングによる共振1022、1026のみが観察される。
【0037】
バイナリデータは、共振の存在又は不在によって符号化することができる。例えば、ノッチの除去及び/又はリングの除去は、ノッチの出現が論理「1」として示される場合、論理「0」として示され得る。これは、パターン化導体に論理をどのようにコードすることができるかの一例である。ここでは、パターン化導体の各グリフは、3つの共振の各々について3ビットを表すことができることが示されている。周波数ダイバーシティと偏光ダイバーシティとの両方を使用して各グリフにコードされ得る組み合わせの数は、8に等しい。クレジットカードサイズのチップでは、グリフの最小数は、各々の間の十分な分離を考慮して、40グリフである。したがって、タグは、120ビットのデータを記憶する能力を有する。
【0038】
図11A~
図11Cは、ノッチが入射電界に対して垂直に配向されている、
図1Cに示されるハイブリッド構成の共振周波数での表面電流分布を示す。具体的には、
図11Aは、約57GHzでの表面電流分布を示し、
図11Bは、約60GHzでの表面電流分布を示し、
図11Cは、約64GHzでの表面電流分布を示す。
【0039】
本明細書に記載される実施形態によれば、チップレスRFIDタグは、パターン化導体のアレイを含む。
図12は、パターン化導体のアレイの一実施例を示す。パターン化導体のアレイは、様々なリングサイズ、リング間隔、及び/又はノッチ配向の1つ以上のグリフを有してもよい。
【0040】
図13は、1つ以上のパターン化導体を読み取るように構成されているチップレスRFIDシステム1300を示す。送信機は、電磁放射線信号を前記パターン化導体に向けて送信するように構成されている。システムは、後方散乱信号を受信するように構成された受信機を含む。受信機に結合されたプロセッサは、記憶デバイス1340に記憶された情報を使用して、後方散乱信号をデジタルシグネチャと関連付けるように構成されている。RFIDシステム1300は、ネットワークを介して他のデバイスと通信するための1つ以上のネットワークインターフェース1350を含むことができる。システムは、システム1300とのユーザ対話を可能にする他の入力/出力デバイス1360(例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、ボタンなど)を含むことができる。
図13は、例示目的のための、RFIDシステムの可能な構成要素の高レベルの表現である。
図13に示すRFIDシステムは、他の構成要素を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0041】
別途記載のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される形状サイズ、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって改変されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に指示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に依存して変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)、及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【0042】
上記の様々な実施形態は、特定の結果を提供するために相互作用する回路及び/又はソフトウェアモジュールを使用して実装され得る。コンピューティング技術分野の当業者は、当該技術分野で一般的に知られている知識を使用して、モジュールレベルで又は全体としてのいずれかで、このような記載された機能を容易に実装することができる。例えば、本明細書に示されるフローチャートは、プロセッサによる実行のためのコンピュータ可読命令/コードを生成するために使用されてもよい。このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶され、当該技術分野において既知のように実行するためにプロセッサに転送されてもよい。
【0043】
例示的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的のために提示されている。本発明の概念に網羅的であること、又は本発明の概念を開示される正確な形態に限定することは意図されていない。上記の教示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。開示される実施形態のいずれか又は全ての特徴は、個別に、又は任意の組み合わせで適用することができ、限定することを意図するものではなく、純粋に例示的なものである。発明の範囲は、詳細な説明によってではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によって限定されるものであることが意図されている。