(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20240115BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/20 J
(21)【出願番号】P 2020114390
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】野村 沢哉
(72)【発明者】
【氏名】湯上 誠之
(72)【発明者】
【氏名】高木 渉
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203253(JP,A)
【文献】特開2017-149207(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189507(WO,A1)
【文献】特開2009-277163(JP,A)
【文献】特開2015-203302(JP,A)
【文献】特開2019-110612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータと、前記アクチュエータの駆動を禁止するロック状態と前記アクチュエータの駆動を許可するロック解除状態
とに切換可能なロック装置と、
携帯電話機と通信接続され
、前記携帯電話機を用いたハンズフリーによる通話を制御するコントローラと、
前記携帯電話機の着信時に前記ハンズフリーによる通話の開始を前記コントローラに
指示する指示装置と
、を備え
た建設機械において
、
前記コントローラは
、前記ロック装置が
前記ロック解除状態である場合には、前記指示装置から
の前記ハンズフリーによる
通話の開始を禁止させることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記コントローラは、前記ロック装置が前記ロック状態である場合には、前記指示装置からの前記ハンズフリーによる通話の開始を許可させることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記指示装置は、前記携帯電話機の着信時に、運転者の操作に応じて前記ハンズフリーによる通話の開始指示を前記コントローラに出力し、
前記コントローラは、前記携帯電話機の着信時に、前記ロック装置がロック状態である場合には、前記指示装置から入力された前記開始指示を有効化して、前記ハンズフリーによる通話を開始させ、前記携帯電話機の着信時に、前記ロック装置がロック解除状態である場合には、前記指示装置から入力された前記開始指示を無効化して、前記ハンズフリーによる通話を禁止させることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項
3に記載の建設機械において、
前記指示装置は、運転者の操作に応じて
前記携帯電話機による通話相手の電話番号を設定
および、前記通話相手の電話番号への前記
携帯電話機の発信指示を前記コントローラに出力
可能であり、
前記コントローラは、前記指示装置により前記通話相手の電話番号が設定された時、前記ロック装置がロック状態である場合には、前記指示装置から入力された前記発信指示を有効化して、前記通話相手の電話番号への前記
携帯電話機の発信を開始させ、前記指示装置により前記通話相手の電話番号が設定された時、前記ロック装置がロック解除状態である場合には、前記指示装置から入力された前記発信指示を無効化して、前記通話相手の電話番号への前記
携帯電話機の発信を禁止させることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記アクチュエータの動力源である原動機を備え、
前記コントローラは、前記
携帯電話機の通話時は、前記原動機の回転数を前記
携帯電話機の非通話時と比べて小さくさせることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項
3に記載の建設機械において、
前記
携帯電話機による通話相手の電話番号として登録電話番号を予め前記コントローラに記憶しており、
前記コントローラは、前記
携帯電話機の着信時に、発信元の電話番号が前記登録電話番号である場合には、前記ロック装置がロック状態とロック解除状態のいずれであるかにかかわらず、前記指示装置からの
前記開始指示を有効化して、ハンズフリーによる前記
携帯電話機の通話を開始させることを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項
3に記載の建設機械において、
前記指示装置
からの
前記開始指示の無効化を解除する解除指示を出力する解除スイッチを備え、
前記コントローラは、前記解除スイッチの解除指示が入力された場合には、前記ロック装置がロック状態とロック解除状態のいずれであるかにかかわらず、前記指示装置からの
前記開始指示を有効化することを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項
3に記載の建設機械において、
前記コントローラは、前記指示装置の
前記開始指示を無効化する旨をモニタに表示させることを特徴とする建設機械。
【請求項9】
請求項1に記載の建設機械において、
ロック位置とロック解除位置に選択的に操作されるロックレバーと、
前記ロックレバーの操作位置を検出するロックスイッチとを備え、
前記コントローラは、前記
携帯電話機の非通話時には、前記ロックレバーの操作位置に応じて前記ロック装置を切換え、前記
携帯電話機の通話時には、前記ロックレバーの操作位置にかかわらず、前記ロック装置のロック状態を維持することを特徴とする建設機械。
【請求項10】
アクチュエータと、前記アクチュエータの駆動を禁止するロック状態と前記アクチュエータの駆動を許可するロック解除状態
とに切換可能なロック装置と、
携帯電話機と通信接続されたコントローラと、運転者の操作に応じて前記
携帯電話機の動作指示を前記コントローラに出力する指示装置とを備え、
前記コントローラは、前記動作指示に応じて前記
携帯電話機を制御する、建設機械において、
前記指示装置は、運転者の操作に応じて通話相手の電話番号を設定し、更に、運転者の操作に応じて前記通話相手の電話番号への前記
携帯電話機の発信指示を前記コントローラに出力し、
前記コントローラは、前記指示装置により前記通話相手の電話番号が設定された時、前記ロック装置がロック状態である場合には、前記指示装置から入力された前記発信指示を有効化して、前記通話相手の電話番号への前記
携帯電話機の発信を開始させ、前記指示装置により前記通話相手の電話番号が設定された時、前記ロック装置がロック解除状態である場合には、前記指示装置から入力された前記発信指示を無効化して、前記通話相手の電話番号への前記
携帯電話機の発信を禁止させ
ることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械は、アクチュエータと、アクチュエータを駆動する駆動装置とを備える。駆動装置は、例えば、原動機と、原動機によって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからアクチュエータへの圧油の流れを制御する制御弁と、制御弁を切換える操作装置とを備える。操作装置は、例えば、運転者が操作可能な操作部材と、パイロットポンプの吐出圧を元圧として用い、操作部材の操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とを有する。そして、操作装置で生成されたパイロット圧が制御弁の受圧部へ出力されて、制御弁が切換えられる。
【0003】
建設機械は、アクチュエータの駆動を禁止するロック状態とアクチュエータの駆動を許可するロック解除状態に切換可能なロック装置を更に備える。ロック装置は、例えば、パイロットポンプと操作装置の間に設けられ、コントローラによって遮断位置と連通位置に切換えられるロック弁である。コントローラは、運転者によってロックレバーがロック位置に操作された場合に、ロック弁を遮断位置に切換える。これにより、操作装置のパイロット圧の生成を禁止して、アクチュエータの駆動を禁止する。コントローラは、運転者によってロックレバーがロック解除位置に操作された場合に、ロック弁を連通位置に切換える。これにより、操作装置のパイロット圧の生成を許可して、アクチュエータの駆動を許可する。
【0004】
特許文献1は、上述した建設機械において、運転者が所有する携帯電話機が通話中である場合に、アクチュエータの駆動を禁止する技術を開示する。詳しく説明すると、コントローラは、携帯電話機と通信可能に接続されており、携帯電話機から通話中である旨の信号を受信する。コントローラは、ロックレバーがロック解除位置にある場合でも、携帯電話機から通話中である旨の信号を受信すれば、ロック弁を遮断位置に切換える。これにより、アクチュエータの駆動を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、携帯電話機を直接操作するのでなく、車両の運転室内に設けられた指示装置等を用いて、携帯電話機の通話を開始する技術であって、一般的に「ハンズフリー」と呼ばれる技術が知られている。このような技術と共に、特許文献1に記載の技術を採用すれば、ハンズフリーによる電話機の通話時にアクチュエータの駆動を禁止することが可能である。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、電話機の通話の動作を優先してロック装置の動作を制限している。そのため、アクチュエータの駆動中であるにもかかわらず、運転者が指示装置を不用意に操作してハンズフリーによる電話機の通話を開始すれば、油圧アクチュエータが停止してしまう。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロック装置の動作を優先して電話機の動作を制限することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、アクチュエータと、前記アクチュエータの駆動を禁止するロック状態と前記アクチュエータの駆動を許可するロック解除状態とに切換可能なロック装置と、携帯電話機と通信接続され、前記携帯電話機を用いたハンズフリーによる通話を制御するコントローラと、前記携帯電話機の着信時に前記ハンズフリーによる通話の開始を前記コントローラに指示する指示装置と、を備えた建設機械において、前記コントローラは、前記ロック装置が前記ロック解除状態である場合には、前記指示装置からの前記ハンズフリーによる通話の開始を禁止させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロック装置の動作を優先して電話機の動作を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるショベルの全体構造を表す側面図である。
【
図2】
図1の断面矢視II-IIによる断面図であり、本発明の第1の実施形態におけるショベルの運転室の内部構造を表す。
【
図3】本発明の第1の実施形態におけるショベルの駆動装置の構成を表す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるショベルの制御システムの構成を表すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における電話機の着信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施形態における電話機の発信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施形態における電話機の着信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態における電話機の発信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【
図9】本発明の第3の実施形態におけるショベルの制御システムの構成を表すブロック図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態における電話機の着信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【
図11】本発明の第3の実施形態における電話機の発信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の適用対象としてショベルを例にとり、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態におけるショベルの全体構造を表す側面図である。
図2は、
図1の断面矢視II-IIによる断面図であり、本実施形態におけるショベルの運転室の内部構造を表す。なお、以降、運転室内の運転席に着座した運転者の前側(
図1及び
図2の左側)、後側(
図1及び
図2の右側)、左側(
図2の下側)、右側(
図2の上側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0013】
本実施形態のショベルは、自走可能な下部走行体1と、下部走行体1の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体2とを備えており、下部走行体1及び上部旋回体2が車体を構成している。下部走行体1は、走行モータ(図示せず)によって走行し、上部旋回体2は、旋回モータ(図示せず)によって旋回する。
【0014】
上部旋回体2の前側には作業装置3が連結されている。作業装置3は、上部旋回体2(詳細には、後述の旋回フレーム11)の前側に左右方向に回動可能に連結されたスイングポスト4と、スイングポスト4に上下方向に回動可能に連結されたブーム5と、ブーム5に上下方向に回動可能に連結されたアーム6と、アーム6に上下方向に回動可能に連結されたバケット7とを備える。スイングポスト4、ブーム5、アーム6、及びバケット7は、スイングシリンダ(図示せず)、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、及びバケットシリンダ10によってそれぞれ回動する。
【0015】
上部旋回体2は、基礎構造体をなす旋回フレーム11と、旋回フレーム11に設けられたキャブタイプの運転室12とを備える。運転室12には、運転者が着座する運転席13が設けられている。
【0016】
運転席13の前側には、運転者が操作可能な走行用操作レバー・ペダル14A,14Bが設けられている。操作レバー・ペダル14A,14Bは、前後方向の操作によって下部走行体1の走行動作を指示する。走行用操作レバー・ペダル14Aの左側には、運転者が操作可能なオプション用操作ペダル15Aが設けられている。走行用操作レバー・ペダル14Bの右側には、運転者が操作可能なスイング用操作ペダル15Bが設けられている。操作ペダル15Bは、左右方向の操作によってスイングポスト4の動作を指示する。
【0017】
運転席13の左側には、運転者が操作可能な作業用操作レバー16Aが設けられている。操作レバー16Aは、左右方向の操作によって上部旋回体2の旋回動作を指示し、前後方向の操作によってアーム6の動作を指示する。運転席13の右側には、運転者が操作可能な作業用操作レバー16Bが設けられている。操作レバー16Bは、左右方向の操作によってバケット7の動作を指示し、前後方向の操作によってブーム5の動作を指示する。
【0018】
運転席13の左側には、運転者が操作可能なロックレバー17と、ロックレバー17の操作位置を検出するロックスイッチ18(後述の
図4参照)が設けられている。ロックレバー17は、ロック位置とロック解除位置に選択的に操作される。なお、本実施形態のロックレバー17は、運転室12の乗降口に設けられたゲートロックレバーであり、ロック位置(上昇位置)に操作された場合に運転者の乗降を許容し、ロック解除位置(下降位置)に操作された場合に運転者の乗降を妨げる。運転席13の右側かつ作業用操作レバー16Bの前側には、運転者が視認又は操作可能なモニタ19が設けられている。
【0019】
運転室12には、運転者の操作に応じて携帯電話機20(後述の
図4参照)の動作指示を出力する指示装置21や、マイクロホン22、スピーカ23(後述の
図4参照)が設けられている。指示装置21は、例えば、携帯電話機20の着信時に通話開始を指示したり、携帯電話機20の発信を指示したり、携帯電話機20の通話終了を指示するための通話ボタン(図示せず)を有する。また、指示装置21は、例えば、携帯電話機20の発信を指示する前に、通話相手の電話番号を設定するための設定ボタン(図示せず)を有する。マイクロホン22は運転者の音声を入力する機能を有し、スピーカ23は相手の音声を出力する機能を有しており、携帯電話機20の通話に用いられる。なお、モニタ19は、携帯電話機20の着信情報や発信情報を表示する機能を有する。
【0020】
ショベルは、上述したアクチュエータ(詳細には、走行モータ、旋回モータ、スイングシリンダ、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、及びバケットシリンダ10)を駆動する駆動装置を備える。
図3は、本実施形態におけるショベルの駆動装置の構成のうち、ブームシリンダ8に係わる構成を表す図である。
【0021】
本実施形態の駆動装置は、エンジン24(原動機)と、エンジン24によって駆動される油圧ポンプ25及びパイロットポンプ26と、油圧ポンプ25からブームシリンダ8への圧油の流れ(詳細には、方向及び流量)を制御する制御弁27と、制御弁27を切換える操作装置28とを備える。
【0022】
操作装置28は、上述した操作レバー16Bと、操作レバー16Bの前側操作量に応じてパイロットポンプ26の吐出圧を減圧してパイロット圧を生成するパイロット弁29Aと、操作レバー16Bの後側操作量に応じてパイロットポンプ26の吐出圧を減圧してパイロット圧を生成するパイロット弁29Bとを有する。
【0023】
そして、運転者が操作レバー16Bを前側に操作すると、その操作量に応じてパイロット弁29Aで生成されたパイロット圧が制御弁27の受圧部30Aへ出力され、これによって制御弁27が図示の右側の切換位置に切換えられる。これにより、ブームシリンダ8が縮短する。運転者が操作レバー16Bを後側に操作すると、その操作量に応じてパイロット弁29Bで生成されたパイロット圧が制御弁27の受圧部30Bへ出力され、これによって制御弁27が図示の左側の切換位置に切換えられる。これにより、ブームシリンダ8が伸長する。
【0024】
なお、他のアクチュエータ(詳細には、走行モータ、旋回モータ、スイングシリンダ、アームシリンダ9、及びバケットシリンダ10)に係わる構成も、ブームシリンダ8に係わる構成と同様である。すなわち、対応する操作装置からのパイロット圧によって対応する制御弁が切換えられ、この制御弁を介し供給された油圧ポンプからの圧油によって他のアクチュエータが作動するようになっている。
【0025】
本実施形態の駆動装置は、全てのアクチュエータの駆動を禁止するロック状態と全てのアクチュエータの駆動を許可するロック解除状態に切換可能なロック装置として、全ての操作装置とパイロットポンプ26の間に設けられたロック弁31を更に備える。ロック弁31が図示の右側の遮断位置に切換えられた場合、全ての操作装置にパイロットポンプ26の吐出圧が導入されない。したがって、全てのアクチュエータの駆動を禁止する。一方、ロック弁31が図示の左側の連通位置に切り換えられた場合、全ての操作装置にパイロットポンプ26の吐出圧が導入される。したがって、全てのアクチュエータの駆動を許可する。
【0026】
次に、本実施形態のショベルの制御システムについて説明する。図4は、本実施形態におけるショベルの制御システムの構成を表す図である。
【0027】
本実施形態の制御システムは、エンジンコントローラ32、車体コントローラ33、モニタコントローラ34、及び音響コントローラ35を備えており、それらが通信線(CAN:Controller Area Network)を介し互いに通信可能に接続されている。音響コントローラ35は、無線通信機能を有し、携帯電話機20と通信接続されている。なお、エンジンコントローラ32、車体コントローラ33、モニタコントローラ34、及び音響コントローラ35は、それぞれ、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。また、車体コントローラ33、モニタコントローラ34、及び音響コントローラ35は、コントローラ40を構成する。
【0028】
エンジンコントローラ32は、エンジン24のガバナを制御して、エンジン24の回転数を制御する。
【0029】
車体コントローラ33には、上述したロックスイッチ18及びロック弁31等が配線を介し接続されている。車体コントローラ33は、ロックスイッチ18からの検出信号(すなわち、ロックレバー17の操作位置)に応じてロック弁31の連通位置と遮断位置を切換える機能を有する。詳しく説明すると、車体コントローラ33は、ロックレバー17がロック解除位置に操作された場合に、ロック弁31を連通位置に切換える。これにより、アクチュエータの駆動を許可する。車体コントローラ33は、ロックレバー17がロック位置に操作された場合に、ロック弁31を遮断位置に切換える。これにより、アクチュエータの駆動を禁止する。
【0030】
モニタコントローラ34には、上述したモニタ19及び指示装置21等が配線を介し接続されている。モニタコントローラ34は、モニタ19の表示制御を行うと共に、指示装置21からの指示を車体コントローラ33へ出力する。詳しく説明すると、モニタコントローラ34は、携帯電話機20の着信時に、音響コントローラ35を介し携帯電話機20からの着信情報(詳細には、発信元の電話番号を含む)を入力してモニタ19に表示させる。その後、モニタコントローラ34は、指示装置21からの携帯電話機20の通話開始の指示を車体コントローラ33へ出力する。
【0031】
モニタコントローラ34は、携帯電話機20の発信前に、指示装置21で設定された通話相手の電話番号をモニタ19に表示させると共に、車体コントローラ33へ出力する。その後、モニタコントローラ34は、指示装置21からの携帯電話機20の発信の指示を車体コントローラ33へ出力する。
【0032】
車体コントローラ33は、指示装置21の動作指示に応じて携帯電話機20を制御する機能を更に有する。詳しく説明すると、車体コントローラ33は、携帯電話機20の着信時に、音響コントローラ35を介し携帯電話機20からの着信情報を入力する。その後、モニタコントローラ34を介し指示装置21から入力された携帯電話機20の通話開始の指示を有効化した場合に、音響コントローラ35及び携帯電話機20へ通話開始の指令を出力する。これにより、ハンズフリーによる携帯電話機20の通話を開始させる。その後、モニタコントローラ34を介し指示装置21から入力された携帯電話機20の通話終了に応じて、音響コントローラ35及び携帯電話機20へ通話終了の指令を出力する。これにより、ハンズフリーによる携帯電話機20の通話を終了させる。
【0033】
車体コントローラ33は、携帯電話機20の発信前に、指示装置21で設定された通話相手の電話番号を入力する。その後、モニタコントローラ34を介し指示装置21から入力された携帯電話機20の発信の指示を有効化した場合に、音響コントローラ35及び携帯電話機20へ発信の指令を出力する。これにより、通話相手の電話番号への携帯電話機20の発信を開始させる。
【0034】
音響コントローラ35には、上述したマイクロホン22及びスピーカ23等が配線を介し接続されている。音響コントローラ35は、車体コントローラ33から携帯電話機20の通話開始の指令が入力された場合に、マイクロホン22で入力された運転者の音声を携帯電話機20へ送信し、携帯電話機20から受信された相手の音声をスピーカ23で出力する。なお、音響コントローラ35は、ラジオ放送を受信してスピーカ23で出力する機能を有してもよい。
【0035】
ここで、本実施形態の特徴として、車体コントローラ33は、ロック弁31の切換状態に応じて上述した通信開始の指示の有効化と無効化を切換える機能を有する。また、車体コントローラ33は、ロック弁31の切換状態に応じて上述した発信の指示の有効化と無効化を切換える機能を有する。
図5を用いて前者の機能を説明し、
図6を用いて後者の機能を説明する。
【0036】
図5は、本実施形態における携帯電話機の着信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【0037】
ステップS101にて、車体コントローラ33は、携帯電話機20からの着信情報が入力されたかどうかにより、携帯電話機20の着信があるかどうかを判定する。携帯電話機20の着信がない場合、ステップS101の判定を繰り返す。一方、携帯電話機の20の着信がある場合、ステップS102に移る。
【0038】
ステップS102にて、車体コントローラ33は、ロック弁31が遮断位置であるかどうかを判定する。ロック弁31が遮断位置である場合(言い換えれば、ロック装置がロック状態である場合)、ステップS103に移る。ステップS103にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の通話開始の指示を有効化する。すなわち、携帯電話機20の通話開始の指示が入力されたときに、音響コントローラ35及び携帯電話機20へ通話開始の指令を出力する。これにより、ハンズフリーによる携帯電話機20の通話を開始させる。
【0039】
一方、ロック弁31が連通位置である場合(言い換えれば、ロック装置がロック解除状態である場合)、ステップS104に移る。ステップS104にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の通話開始の指示を無効化する。すなわち、携帯電話機20の通話開始の指示が入力されても、音響コントローラ35及び携帯電話機20へ通話開始の指令を出力しない。これにより、ハンズフリーによる携帯電話機20の通話を禁止させる。そして、車体コントローラ33は、例えば、「通話不能。ロックレバーを上げてから、通話ボタンを再操作してください」のメッセージをモニタ19に表示させる。
【0040】
図6は、本実施形態における携帯電話機の発信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【0041】
ステップS111にて、車体コントローラ33は、指示装置21で設定された通話相手の電話番号が入力されたかどうかにより、通話相手の電話番号が設定されたかどうかを判定する。通話相手の電話番号が設定されない場合、ステップS111の判定を繰り返す。一方、通話相手の電話番号が設定された場合、ステップS112に移る。
【0042】
ステップS112にて、車体コントローラ33は、ロック弁31が遮断位置であるかどうかを判定する。ロック弁31が遮断位置である場合(言い換えれば、ロック装置がロック状態である場合)、ステップS113に移る。ステップS113にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の発信の指示を有効化する。すなわち、携帯電話機20の発信の指示が入力されたときに、音響コントローラ35及び携帯電話機20へ発信の指令を出力する。これにより、通話相手の電話番号への携帯電話機20の発信を開始させる。
【0043】
一方、ロック弁31が連通位置である場合(言い換えれば、ロック装置がロック解除状態である場合)、ステップS114に移る。ステップS114にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の発信の指示を無効化する。すなわち、携帯電話機20の発信の指示が入力されても、音響コントローラ35及び携帯電話機20へ発信の指令を出力しない。これにより、通話相手の電話番号への携帯電話機20の発信を禁止させる。そして、車体コントローラ33は、例えば、「発信不能。ロックレバーを上げてから、通話ボタンを再操作してください」のメッセージをモニタ19に表示させる。
【0044】
以上のように、本実施形態では、ロック弁31の動作を優先して携帯電話機20の動作を制限することができる。具体的には、携帯電話機20の着信時に、ロック弁31が遮断位置でなければ(言い換えれば、ロック装置がロック状態でなければ)、運転者が指示装置21を操作しても、携帯電話機20の通話を開始することができない。また、携帯電話機20の発信前であって通話相手の電話番号の設定時に、ロック弁31が遮断位置でなければ(言い換えれば、ロック装置がロック状態でなければ)、運転者が指示装置21を操作しても、携帯電話機20の発信を行うことができない。従来技術のように、携帯電話機20の動作を優先してロック弁31の動作を制限する場合には、アクチュエータの駆動中に運転者が指示装置21を不用意に操作すれば、アクチュエータが停止する。本実施形態では、ロック弁31の動作を優先して携帯電話機20の動作を制限するので、前述したアクチュエータの停止を回避することができる。
【0045】
なお、第1の実施形態において、特に説明しなかったが、車体コントローラ33は、携帯電話機20の通話時は、エンジン24の回転数を携帯電話機20の非通話時と比べて小さくさせる指令をエンジンコントローラ32へ出力してもよい。これにより、携帯電話機20の通話の妨げとならないように、エンジン24の回転数を小さくさせて騒音を低減してもよい。
【0046】
また、第1の実施形態において、特に説明しなかったが、車体コントローラ33は、携帯電話機20の通話時に、ロックレバー17の操作位置にかかわらず、ロック弁31の遮断位置を維持してもよい(言い換えれば、ロック装置のロック状態を維持してもよい)。すなわち、携帯電話機20の通話中に、運転者がロックレバー17をロック解除位置に操作しても、ロック弁31の遮断位置を維持する。そして、携帯電話機20の通話終了後、運転者がロックレバー17をロック位置に一旦戻して、ロック解除位置に再操作したときに、ロック弁31を連通位置に切換えてもよい。
【0047】
本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、車体コントローラ33は、携帯電話機20による通話相手の電話番号として登録電話番号を予め記憶しており、携帯電話機20の着信時に、携帯電話機20の着信情報に含まれる発信元の電話番号が登録電話番号である場合には、ロック弁31が遮断位置と連通位置のいずれであるかにかかわらず、指示装置21からの通話開始の指示を有効化する機能を有する。また、車体コントローラ33は、携帯電話機20の発信前に、指示装置21で設定された通話相手の電話番号が登録電話番号である場合に、ロック弁31が遮断位置と連通位置のいずれであるかにかかわらず、指示装置21からの発信の指示を有効化する機能を有する。
図7を用いて前者の機能を説明し、
図8を用いて後者の機能を説明する。
【0049】
図7は、本実施形態における電話機の着信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【0050】
携帯電話機の20の着信がある場合、ステップS101を介しステップS105に移る。ステップS105にて、車体コントローラ33は、携帯電話機20の着信情報に含まれる発信元の電話番号が登録電話番号であるかどうかを判定する。通話相手の電話番号が登録電話番号でない場合、上述のステップS102に移る。通話相手の電話番号が登録電話番号である場合、上述のステップS103に移る。ステップS103にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の発信の指示を有効化する。
【0051】
図8は、本実施形態における電話機の発信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【0052】
指示装置21で通話相手の電話番号が設定された場合、ステップS111を介しステップS115に移る。ステップS115にて、車体コントローラ33は、通話相手の電話番号が登録電話番号であるかどうかを判定する。通話相手の電話番号が登録電話番号でない場合、上述のステップS112に移る。一方、通話相手の電話番号が登録電話番号である場合、上述のステップS113に移る。ステップS113にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の発信の指示を有効化する。
【0053】
以上のように、本実施形態では、ロック弁31の動作を優先して携帯電話機20の動作を制限することができる。具体的には、携帯電話機20の着信時に、通話相手の電話番号が登録電話番号でなく、且つ、ロック弁31が遮断位置でなければ(言い換えれば、ロック装置がロック状態でなければ)、運転者が指示装置21を操作しても、携帯電話機20の通話を開始することができない。また、携帯電話機20の発信前に、指示装置21で設定された通話相手の電話番号が登録電話番号でなく、且つ、ロック弁31が遮断位置でなければ(言い換えれば、ロック装置がロック状態でなければ)、運転者が指示装置21を操作しても、携帯電話機20の発信を行うことができない。従来技術のように、携帯電話機20の動作を優先してロック弁31の動作を制限する場合には、アクチュエータの駆動中に運転者が指示装置21を不用意に操作すれば、アクチュエータが停止する。本実施形態では、ロック弁31の動作を優先して携帯電話機20の動作を制限するので、前述したアクチュエータの停止を回避することができる。
【0054】
また、本実施形態では、携帯電話機20の着信時に、通話相手の電話番号が登録電話番号であれば、ロック弁31が連通位置であっても(言い換えれば、ロック装置がロック解除状態であっても)、運転者が指示装置21を操作して、携帯電話機20の通話を開始することができる。また、携帯電話機20の発信前に、指示装置21で設定された通話相手の電話番号が登録電話番号であれば、ロック弁31が連通位置であっても(言い換えれば、ロック装置がロック解除状態であっても)、運転者が指示装置21を操作して、携帯電話機20の発信を行うことができる。これにより、例えば作業監督者の電話番号が予め登録されていれば、作業監督者との通話を行いながら、アクチュエータを駆動することができる。
【0055】
本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0056】
図9は、本実施形態におけるショベルの制御システムの構成を表すブロック図である。
【0057】
本実施形態では、モニタコントローラ34には、運転者が操作可能な解除スイッチ36が配線を介し接続されている。解除スイッチ36は、指示装置21の指示の無効化を解除する解除指示を出力するものである。モニタコントローラ34は、解除スイッチ36からの解除指示を車体コントローラ33へ出力する。
【0058】
車体コントローラ33は、解除スイッチ36の解除指示が入力された場合に、ロック弁31が遮断位置と連通位置のいずれであるかにかかわらず、指示装置21からの通話開始の指示を有効化する機能を有する。また、車体コントローラ33は、解除スイッチ36の解除指示が入力された場合に、ロック弁31が遮断位置と連通位置のいずれであるかにかかわらず、指示装置21からの発信の指示を有効化する機能を有する。
図10を用いて前者の機能を説明し、
図11を用いて後者の機能を説明する。
【0059】
図10は、本実施形態における電話機の着信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【0060】
携帯電話機の20の着信がある場合、ステップS101を介しステップS106に移る。ステップS106にて、車体コントローラ33は、解除スイッチ36の解除指示が入力されたどうか(言い換えれば、解除スイッチ36がONであるかどうか)を判定する。解除スイッチ36がOFFである場合、上述のステップS102に移る。解除スイッチ36がONである場合、上述のステップS103に移る。ステップS103にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の通話開始の指示を有効化する。
【0061】
図11は、本実施形態における電話機の発信に関する車体コントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【0062】
指示装置21で相手の電話番号が設定された場合、ステップS111を介しステップS116に移る。ステップS116にて、車体コントローラ33は、解除スイッチ36の解除指示が入力されたどうか(言い換えれば、解除スイッチ36がONであるかどうか)を判定する。解除スイッチ36がOFFである場合、上述のステップS112に移る。解除スイッチ36がONである場合、上述のステップS113に移る。ステップS113にて、車体コントローラ33は、指示装置21から入力された携帯電話機20の発信の指示を有効化する。
【0063】
以上のように構成された本実施形態でも、解除スイッチ36がOFFであれば、第1の実施形態と同様、ロック弁31の動作を優先して携帯電話機20の動作を制限することができる。
【0064】
また、本実施形態では、解除スイッチ36がONであれば、携帯電話機20の動作を制限しない。これにより、例えば、作業監督者との通話を行いながら、アクチュエータを駆動することができる。
【0065】
なお、第1~第3の実施形態において、車体コントローラ33が、指示装置21からの指示に応じて携帯電話機20の動作を制御する機能を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えばモニタコントローラ34又は音響コントローラ35が、指示装置21からの指示に応じて携帯電話機20の動作を制御する機能を有してもよい。また、携帯電話機20に代えて、ショベルに固定された電話機を用いてもよい。
【0066】
また、第1~第3の実施形態において、操作装置28等は、パイロットポンプ26の吐出圧を元圧として用い、操作部材の操作量に応じてパイロット圧を生成し、生成したパイロット圧を制御弁の受圧部へ出力するパイロット弁を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。操作装置は、操作部材の操作量を検出し、その検出信号を車体コントローラ33へ出力するポテンショメータを有してもよい。この変形例では、車体コントローラ33は、操作装置の検出信号に対応する駆動信号を生成し、生成した駆動信号を電磁比例弁へ出力する。電磁比例弁は、パイロットポンプ26の吐出圧を元圧として用い、駆動信号に対応するパイロット圧を生成し、生成したパイロット圧を制御弁の受圧部へ出力する。車体コントローラ33は、ロックレバー17の操作位置に応じて、パイロットポンプ26と電磁比例弁の間に設けられたロック弁を切換えるか、あるいは、操作装置から出力された検出信号の有効化と無効化を切り換える。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、第1~第3の実施形態において、ショベルは、アクチュエータの動力源である原動機として、エンジン24を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、電動モータを備えてもよい。また、第1~第3の実施形態において、アクチュエータは、油圧ポンプ25から吐出された圧油によって作動する油圧アクチュエータである場合を例にとって説明したが、これに限られず、バッテリから供給された電力によって作動する電動アクチュエータであってもよい。
【0068】
なお、以上においては、本発明の適用対象としてショベルを例にとって説明したが、これに限られず、他の建設機械(具体的には、例えばホイールローダ等)に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
8 ブームシリンダ
9 アームシリンダ
10 バケットシリンダ
17 ロックレバー
18 ロックスイッチ
19 モニタ
20 携帯電話機
21 指示装置
24 エンジン(原動機)
31 ロック弁(ロック装置)
33 車体コントローラ
36 解除スイッチ
40 コントローラ