(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】エンジンヘッド構造
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20240115BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F02M55/02 360Z
F02M55/02 360A
F02F1/24 J
F02F1/24 Z
(21)【出願番号】P 2020117287
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健介
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰
(72)【発明者】
【氏名】松延 新吾
(72)【発明者】
【氏名】奥田 貢
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0163545(US,A1)
【文献】特開2010-043619(JP,A)
【文献】実開昭57-092806(JP,U)
【文献】登録実用新案第3127420(JP,U)
【文献】特開2016-034210(JP,A)
【文献】特開平09-263276(JP,A)
【文献】特開2013-072430(JP,A)
【文献】特開平06-081749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00 - 71/04
F02F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射装置との接合部を備える燃料蓄圧器をシリンダヘッドに取付けるための支持ブラケットが、前記燃料噴射装置の側脇又は隣合う前記燃料噴射装置どうしの間に配置され、
前記支持ブラケットは、前記燃料噴射装置に接合されている前記燃料蓄圧器を載せ付け可能な載置部と、前記シリンダヘッドに取付けるための取付部と、前記載置部に載せ付けられている前記燃料蓄圧器を前記載置部に固定するための固定部とを
備え、
前記取付部は、前記シリンダヘッドをシリンダブロックに取付ける取付ボルトでの共締めにより前記シリンダヘッドに
固定され、
前記シリンダヘッド上に組付けられたヘッドカバーを備え、前記シリンダヘッドのヘッド上面は、前記ヘッドカバーの下端部を載せるカバー載置面部分と、このカバー載置面部分から前記ヘッドカバーの外側に突出するカバー外突出面部分を備え、前記シリンダヘッドは、前記カバー外突出面部分を上面とする突出ヘッド部分を備え、前記カバー外突出面部分から前記突出ヘッド部分の内部に前記燃料噴射装置が差し込まれて装着されていると共に、前記カバー外突出面部分上に前記支持ブラケットが配置され、前記支持ブラケットを前記シリンダヘッドと共締めで前記シリンダブロックに固定する前記取付ボルトが前記カバー外突出面部分から前記突出ヘッド部分の内部に向けて差し込まれているエンジンヘッド構造。
【請求項2】
前記固定部は、前記燃料蓄圧器に被さる押え部材と、前記載置部と前記押え部材との間に前記燃料蓄圧器を挟んだ状態で前記押え部材を前記載置部に締め付け固定する装着ボルトとを有して構成されている
請求項1に記載のエンジンヘッド構造。
【請求項3】
前記固定部は、前記押え部材の一端部の上方移動が不能に前記一端部に係合するように前記支持ブラケットに形成される庇壁を有し、かつ、前記押え部材の他端部に前記装着ボルトを通す通孔を設けることにより構成されている
請求項2に記載のエンジンヘッド構造。
【請求項4】
前記支持ブラケットと前記燃料蓄圧器との相対位置を定める位置決め機構が、前記燃料蓄圧器における前記載置部に載せ付けられる部分と前記載置部に跨る状態で設けられている
請求項1~3の何れか一項に記載のエンジンヘッド構造。
【請求項5】
前記位置決め機構は、前記燃料噴射装置の軸心と平行な軸心を有するノック穴と、前記ノック穴に嵌合するノック部とを、前記燃料蓄圧器と前記載置部とに振り分けて設けることにより構成されている
請求項4に記載のエンジンヘッド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ディーゼルエンジンや自動車用エンジンなどの燃料蓄圧器を有するエンジンのシリンダヘッド廻りの構造、即ちエンジンヘッド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料蓄圧器(コモンレールなど)を用いるエンジンでは、燃料圧送ポンプで燃料蓄圧器に高圧の燃料を蓄圧し、燃料蓄圧器から各気筒に配置された燃料噴射装置(インジェクタ)に高圧に耐える燃料配管を行う構造のものが一般的である。このような技術としては、特許文献1や特許文献2において開示されたものが知られている。
【0003】
前述の従来技術では、次のA.~C.に示す問題のあることが分かってきた。
A.高圧に耐える燃料配管を設けているので、燃料配管において圧力損失が生じる
B.燃料配管は各燃料噴射装置毎に要するので、部品点数が多くなる
C.燃料蓄圧器と燃料噴射装置のそれぞれに支持部材が必要であり、部品点数が増える
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08‐061133号公報
【文献】特開2015-169094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の問題A.~C.を解決するため技術的な課題としては、次に挙げる(1)~(3)が考えられる。
(1)高圧に耐える燃料配管を省略する、或いはできるだけ短くする
(2)燃料蓄圧器又は/及び燃料噴射装置の支持ブラケットの簡素化又は省略
(3)部品点数の削減
【0006】
本発明の目的は、燃料蓄圧器やその支持構造などのさらなる工夫により、前述した課題(1)~(3)のうち、できるだけ多くの解決が図れるエンジンヘッド構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジンヘッド構造において、
燃料噴射装置との接合部を備える燃料蓄圧器をシリンダヘッドに取付けるための支持ブラケットが、前記燃料噴射装置の側脇又は隣合う前記燃料噴射装置どうしの間に配置され、
前記支持ブラケットは、前記燃料噴射装置に接合されている前記燃料蓄圧器を載せ付け可能な載置部と、前記シリンダヘッドに取付けるための取付部と、前記載置部に載せ付けられている前記燃料蓄圧器を前記載置部に固定するための固定部とを備え、
前記取付部は、前記シリンダヘッドをシリンダブロックに取付ける取付ボルトでの共締めにより前記シリンダヘッドに固定され、
前記シリンダヘッド上に組付けられたヘッドカバーを備え、前記シリンダヘッドのヘッド上面は、前記ヘッドカバーの下端部を載せるカバー載置面部分と、このカバー載置面部分から前記ヘッドカバーの外側に突出するカバー外突出面部分を備え、前記シリンダヘッドは、前記カバー外突出面部分を上面とする突出ヘッド部分を備え、前記カバー外突出面部分から前記突出ヘッド部分の内部に前記燃料噴射装置が差し込まれて装着されていると共に、前記カバー外突出面部分上に前記支持ブラケットが配置され、前記支持ブラケットを前記シリンダヘッドと共締めで前記シリンダブロックに固定する前記取付ボルトが前記カバー外突出面部分1から前記突出ヘッド部分の内部に向けて差し込まれているエンジンヘッド構造。
【0008】
第2の本発明以降については、特許請求の範囲を参照のこと。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料蓄圧器と燃料噴射装置とが直接に接合されているので、従来では必要であった高圧に耐える燃料配管が不要となり、部品点数の削減並びにコストダウンが可能になるとともに、燃料配管での圧力損失が生じることは解消される。
【0010】
支持ブラケットは取付部によりシリンダヘッドに取付けられ、燃料蓄圧器は、載置部に載せ付けられた状態での押え部材により支持ブラケットに固定される構造であるから、シリンダヘッドに装着されている燃料噴射装置に燃料蓄圧器を無理なく接合させた状態で、燃料蓄圧器をシリンダヘッドに支持させることが可能になる。また、燃料噴射装置が予め接合されている燃料蓄圧器を、シリンダヘッドに取付けられている支持ブラケットに載置させることで、燃料噴射装置をシリンダヘッドの所定の装着箇所に無理なく装着させた状態で、燃料蓄圧器を支持ブラケットに取付けることも可能である。
【0011】
そして、燃料噴射装置と燃料蓄圧器とが直接接合されていることにより、燃料噴射装置は位置固定されるようになるから、燃料噴射装置のシリンダヘッドへの装着状態を維持するための専用の支持部材を不要にすることが可能になる。
【0012】
その結果、燃料蓄圧器やその支持構造などのさらなる工夫により、前述した課題(1)~(3)のうち、できるだけ多くの解決が図れるエンジンヘッド構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】コモンレールの支持構造を示す要部の一部切欠きの正面図
【
図5】コモンレールやインジェクタの周辺構造を示す要部の一部切欠きの右側面図
【
図6】支持ブラケットの取付構造等を示す斜め前方から見た一部切欠きの右側面図
【
図7】支持ブラケットを示し、(A)は右側面図、(B)は正面図
【
図8】(A)は支持ブラケットの平面図、(B)はコモンレールの正面図
【
図9】コモンレールを示し、(A)は平面図、(B)は右側面図
【
図10】インジェクタのシリンダヘッドに対する傾斜角度を示すために
図2のZ-Z線で切った要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明によるエンジンヘッド構造の実施の形態を、農用トラクタや建機に搭載される産業用ディーゼルエンジン(以下、「エンジン」と略称する)の場合について、図面を参照しながら説明する。なお、エンジンにおいては、冷却ファンなどを駆動する伝動ベルトのある側を前、フライホイールのある側を後、排気マニホルドのある側(排気側)を左、吸気マニホルドのある側(吸気側)を右、と定義する。
【0015】
図1~
図3に、直列3気筒でコモンレール式の産業用ディーゼルエンジンが示されている。このエンジンEは、シリンダブロック11の上にシリンダヘッド12が組付けられ、シリンダヘッド12の上にヘッドカバー13が組付けられている。シリンダブロック11の前には伝動ケース14が、かつ、下にはオイルパン15がそれぞれ組付けられている。
【0016】
エンジンEの前部には、伝動ベルト16、エンジン冷却ファン(図示省略)を駆動するためのエンジン冷却ファン軸17などが配置され、エンジンEの後部には、フライホイール18、フライホイールハウジング19などが配置されている。エンジンEの左部には、オルタネータ20、排気マニホルド21、オイルフィルタ24、セルスタータ22などが配置され、エンジンEの右部には、吸気マニホルド23、燃料供給ポンプ25などが配置されている。エンジンEの上部には、コモンレール(燃料蓄圧器の一例)1、ウォータフランジ26などが配置されている。
【0017】
次に、シリンダヘッド12やヘッドカバー13回りの構造、即ち、エンジンヘッド構造について説明する。
図1~
図3及び
図4~
図6に示されるように、シリンダヘッド12の上方でヘッドカバー13の右側に、前後向き姿勢のコモンレール1が横臥配置されている。そして、シリンダヘッド12に装着されている3つのインジェクタ(燃料噴射装置の一例)2に直接に接合されているコモンレール1は、2つの支持ブラケット3によりシリンダヘッド12に取付けられている。
【0018】
図1~
図3及び
図4~
図6に示されるように、に3つのインジェクタ2,2,2は、気筒直列方向である前後方向に並んでおり、右後に行くほど(右に行くほど、かつ、後に行くほど)高くなる斜め上下方向に向く噴射軸心Pを有している。各インジェクタ2は、シリンダヘッド12の上面であるヘッド上面12Aから起立する状態で、シリンダヘッド12に差し込まれて装填されている。
【0019】
図4、
図5、
図10に示されるように、各噴射軸心Pどうしは互いに平行であって、ヘッド上面12Aとの垂直方向に対して角度θで傾いた軸心に設定されている。角度θは10~30度(10°≦θ≦30°)、好ましくは20度に設定されている。インジェクタ2は、燃焼室(図示省略)に設けられた副室8(
図5,10を参照)に対して高圧燃料を噴射する状態に設けられている。また、シリンダヘッド12には、インジェクタ2のシリンダヘッド12に対する装着高さ位置を定めるための円環状のスリーブ7が、圧入により設けられている。
【0020】
図1~
図6、
図8(B)及び
図9に示されるように、コモンレール1は、気筒直列方向(前後方向)に長い管状のレール本体1Aと、レール本体1Aに形成されるインジェクタ2との3か所の接合部1Bと、隣合う接合部1B,1B間に配置される2ケ所の被支持部1Cとを有している。レール本体1Aの後端には、燃料供給ポンプ25に接続される供給配管27が接続される供給部1Dが、前端部には、オーバーフロー配管(図示省略)が接続されるオーバーフロー出口部1Eがそれぞれ形成されている。
【0021】
レール本体1Aの長手方向中央部には、圧力センサ(図示省略)を螺着などによって取付けるための隆起部1f(
図9参照)が形成されてもよく、レール本体1Aの前端に調圧弁(図示省略)を設けてもよい。コモンレール1は、前後に間隔を設けて並ぶ2つの支持ブラケット3,3によりヘッド上面12Aに取付けられている。各接合部1Bには、その下面である接合面1bに開口するインジェクタ挿入穴1dが形成されており(
図5参照)、各被支持部1C,1Cには、その下面1cに開口するノック穴1aが形成されている(
図4参照)。
【0022】
図4~
図8に示されるように、支持ブラケット3は、インジェクタ2に接合されているコモンレール1を載せ付け可能な載置部3Cと、シリンダヘッド12に取付けるための取付部3Aと、載置部3Cに載せ付けられているコモンレール1を載置部3Cに固定するための固定部3Bとを備えている。ヘッド上面12Aにボルト止めされる取付部3Aと載置部3Cとは一体となった1つの部品であり、固定部3Bは、装着ボルト29により載置部3Cに固定される独立した部品である。
【0023】
載置部3Cは、コモンレール1の被支持部1Cを載せ付ける左上がり傾斜した載せ面3cと、取付部3Aから左上に立ち上がる締結壁4と、取付部3Aの右端部から右上方(右方かつ上方)に立ち上がる鉤状壁5とを有し、前後方向視で右斜め上方に開口するコ字状を呈している。載置部3Cには、載せ面3cに開口するノック穴3aが形成されている。締結壁4には、上方に開口するナット部4aが形成されている。鉤状壁5には、左及び前が開放される状態で後方に張出し形成される庇壁5Aが形成されており、その庇壁5Aには、斜め左下方に開口する上向き穴5aが形成されている。
【0024】
固定部3Bは、球面状に凹んだ支点凹み6が一端部の上側に、かつ、中心孔34aを有して球面状に凹んだ孔付凹み34が他端部の上側にそれぞれ形成されるバー状(棒状)の押え部材9を有して構成されている。また、庇壁5Aの上向き穴5aに嵌入されて支点凹み6に球面当接される支点ピン35、装着ボルト29が通されて孔付凹み34に球面当接される孔付きワッシャ33、及び庇壁5Aも固定部3Bを構成する部品である。
【0025】
支持ブラケット3の形状についてさらに述べる。
図7、
図8(A)に示されるように、取付部3Aは、締結壁4の前側に位置する第1取付壁37と後側に位置する第2取付壁38とが設けられている。各取付壁37,38は、それぞれ水平で互いに同じ高さレベルの座面37a,38aを有し、第1取付壁37の取付用孔4bは左に寄せて、第2取付壁38の取付用孔4bは右に寄せてそれぞれ形成されている。
【0026】
鉤状壁5は、その右端において前に張り出るリブ壁5rを有しており、リブ壁5rは、その上下中間の高さから前方への張り出し量を増やして庇壁5Aの庇部5bに続く状態に形成されている。庇壁5Aの庇部5bの前後方向での位置と、締結壁4の前後方向での位置とが合致されており、庇部5bと締結壁4とに亘って架設される押え部材9が左右向き姿勢となるように設定されている。
【0027】
図4、
図6に、コモンレール1を支持ブラケットで固定する構造が示されている。庇壁5Aの上向き穴5aに嵌入されている支点ピン35が支点凹み6に当接され、かつ、装着ボルト29が中心孔34aに通された孔付きワッシャ33が孔付凹み34に当接された状態で、装着ボルト29がナット部4aに螺着されることにより、押え部材9が支持ブラケット3に取付けられている。
【0028】
レール本体1Aにおける被支持部1Cに対応する位置の上面は、押え部材9が当接される角度の融通が効くように、前後方向視で上方に凸となる円弧面1eに形成されている。被支持部1Cは、そのノック穴1aと載置部3Cのノック穴3aの双方に位置決めピン(ノック部の一例)28が嵌入された状態で載せ面3cに載せ付けられている。これらノック穴1a、位置決めピン28、及びノック穴3aは、噴射軸心Pと平行なノック軸心Yを有している。従って、装着ボルト29を締め込むことにより、固定部3Bと載置部3Cとの上下間に被支持部1Cを挟持でき、コモンレール1を支持ブラケット3に支持固定させることができる。
【0029】
まり、
図4、
図5に示されるように、支持ブラケット3とコモンレール1との相対位置を定める位置決め機構aが、コモンレール1における載置部3Cに載せ付けられる部分である被支持部1Cと載置部3Cに跨る状態で設けられている。位置決め機構aは、インジェクタ2の軸心Pと平行な軸心であるノック軸心Yを有するノック穴1a,3aと、ノック穴1a,3aに嵌合する位置決めピン28とを、被支持部1Cと載置部3Cとに振り分けて設けることにより構成されている。
【0030】
この場合、各ノック穴1a,3aのうちのいずれか一方のノック穴(例:3a)と位置決めピン28とが圧入され、他方のノック穴(例:1a)とが着脱可能に嵌め合い嵌合される構成でもよいし、いずれのノック穴1a,3aと位置決めピン28とも着脱可能に嵌め合い嵌合される構成でもよい。
【0031】
取付部3Aには、締結壁4の前後それぞれにおいて上下に貫通する取付用孔4bが形成されており、
図6に示されるように、各取付用孔4bに通されるヘッドボルト(取付ボルトの一例)32により、シリンダブロック11に形成されたブロックナット部11aに螺着されている。つまり、シリンダヘッド12をシリンダブロック11に取付けるためのボルト、即ち、通常より長さの長いヘッドボルト32を用いての共締めにより、部品点数削減やコストダウンを図りながら支持ブラケット3はシリンダヘッド12に着脱可能に取付けられている。
【0032】
図1~
図3、及び
図4に示されるように、前後に並ぶ2つの支持ブラケット3,3の上部どうしに亘ってボルト止めされる板状のステー36が架設されている。ステー36のフック部36aにはホルダ10が取付けられ、ホルダ10は、コモンレール1の供給部1Dと燃料供給ポンプ25とを接続する供給配管27の中間部を挟んで支持する部材である。鉤状壁5の上部における右側面には、ステー36をボルト止めするためのナット部〔
図7(A)参照、符記省略〕が形成されている。
【0033】
コモンレール1をシリンダヘッド12に組み付けるには、まず、2つの支持ブラケット3をシリンダヘッド12にボルト止めする取付作業を行い、3つのインジェクタ2をシリンダヘッド12に差し込んで装填する装填作業を行う。なお、取付作業と装填作業の順序は入れ換え可能である。次に、各接合部1Bのインジェクタ挿入穴1dと対応するインジェクタ2とを嵌め込み、かつ、位置決めピン28により各被支持部1Cと対応する載置部3Cとを位置決めした状態で、コモンレール1を支持ブラケット3,3に載せ付ける載置作業を行う。それから、固定部3B及び装着ボルト29などを用いて、コモンレール1を支持ブラケット3,3に固定する固定作業を行う。
【0034】
コモンレール1がシリンダヘッド12に組付けられた状態では、コモンレール1と各インジェクタ2とが接合(接続)され、かつ、シリンダヘッド12から上方へ抜け止めされてのインジェクタ2の装着状態が維持されている。コモンレール1と各支持ブラケット3とは位置決めピン28で、かつ、各支持ブラケット3とシリンダヘッド12とは2本のヘッドボルト32でそれぞれ位置決めされている。なお、装着ボルト29を緩く締め付けて支持ブラケット3,3とコモンレールと1とを仮固定し、その仮固定された支持ブラケット3,3をシリンダヘッド12にボルト止めしてコモンレール1と各インジェクタ2とを接合(接続)し、その後に各装着ボルト29を締め込む、という組付け方も可能である。
本発明の実施形態では、図4に示されているように、前記シリンダヘッド12上に組付けられたヘッドカバー13を備え、前記シリンダヘッド12のヘッド上面12Aは、前記ヘッドカバー13の下端部を載せるカバー載置面部分12Abと、このカバー載置面部分12Abから前記ヘッドカバー13の外側に突出するカバー外突出面部分12Aaを備え、前記シリンダヘッド12は、前記カバー外突出面部分12Aaを上面とする突出ヘッド部分12aを備え、図5に示されているように、前記カバー外突出面部分12Aaから前記突出ヘッド部分12aの内部に前記燃料噴射装置2が差し込まれて装着されていると共に、図6に示されているように、前記カバー外突出面部分12Aa上に前記支持ブラケット3が配置され、前記支持ブラケット3を前記シリンダヘッド12と共締めで前記シリンダブロック11に固定する前記取付ボルト32が前記カバー外突出面部分12Aaから前記突出ヘッド部分12aの内部に向けて差し込まれている。
【0035】
本発明の実施形態によるエンジンヘッド構造によれば、次の1.~7.に示す作用効果が得られる。
1.コモンレール1とインジェクタ2とが直接に接合(接続)されているので、それら両者を配管で接続する場合に比べて、圧力損失の軽減やそれによる燃費改善が可能になり、またコスト低減も可能になる。そして、インジェクタ2のためのブラケットが廃止できる点でもコスト低減や部品信頼性向上が図れる。
【0036】
2.コモンレール1が支持ブラケット3によりシリンダヘッド12に取付けられているので、これら両者1,3の振動周波数を同じにすることができ、コスト低減や耐久性や信頼性が向上する利点がある。
【0037】
3.コモンレール1自体にオーバーフロー出口部1E(オーバーフローの機能)が設けられているので、インジェクタ毎にオーバーフロー配管を設ける手段に比べて組付けや分解が簡単化され、またコスト低減にも寄与できる。
【0038】
4.コモンレール1を支持ブラケット3に固定する装着ボルト29は、そのボルト頭部が上となるほぼ上下向きの姿勢で支持ブラケット3の頂部に配置されているから、装着ボルト29の操作をエンジンの上方から容易に行うことができ、組付性の向上が図れる。
【0039】
5.支持ブラケット3は、ボルト頭部が上となる上下向き姿勢のヘッドボルト32によってシリンダヘッド12に取付けられているので、廻りに障害物の少ないエンジン上方からヘッドボルト32の操作が行える。従って、支持ブラケット3の組付性(着脱性)に優れる利点がある。
【0040】
6.支持ブラケット3をシリンダヘッド12に取付けるためのボルトは、シリンダヘッド12をシリンダブロック11に組み付けるボルトが兼用されたヘッドボルト32を用いる共締め構造としてあるので、シリンダヘッド12に支持ブラケット3をボルト止めするための専用のナット部を設ける必要がない。故に、専用のナット部の存在によってシリンダヘッド12の内部の水路を狭めてしまう、という不都合が回避される利点があり、ひいてはシリンダヘッド12のる冷却性向上や砂型の砂抜き性や洗浄性の向上が可能になる。
【0041】
7.インジェクタ2のシリンダヘッド12に対する装着高さを定めるスリーブ7が設けられているので、インジェクタ2とコモンレール1との接合部(接続部)の精度が良くなり、耐久性向上に寄与できる。また、スリーブ7をシリンダヘッド12に圧入すれば、スリーブの回動が防止されて好ましい。
【0042】
〔別実施形態〕
例えば、直列二気筒ディーゼルエンジンにおいて、各インジェクタの外側のそれぞれに支持ブラケットが配置されてコモンレールを設ける構造でもよく、この場合は、「支持ブラケット3が、燃料噴射装置2の側脇に配置され」という構成になる。
【符号の説明】
【0043】
1 燃料蓄圧器(コモンレール)
1C 載せ付けられる部分(被支持部)
1a,3a ノック穴
2 燃料噴射装置(インジェクタ)
3 支持ブラケット
3A 取付部
3B 固定部
3C 載置部
5A 庇壁
9 押え部材
11 シリンダブロック
12 シリンダヘッド
28 ノック部(位置決めピン)
29 装着ボルト
32 取付ボルト(ヘッドボルト)
34a 通孔
P 軸心(噴射軸心)
Y 軸心(ノック軸心)
a 位置決め機構