IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線 図1
  • 特許-液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線 図2
  • 特許-液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線 図3
  • 特許-液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線 図4
  • 特許-液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線 図5
  • 特許-液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240115BHJP
   H01R 13/533 20060101ALI20240115BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H01R13/533 A
H01R13/52 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020120112
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017052
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】吉江 和彦
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-156273(JP,U)
【文献】実公昭29-85(JP,Y1)
【文献】実開昭60-170974(JP,U)
【文献】特開2004-147434(JP,A)
【文献】特開2001-76809(JP,A)
【文献】特開2004-72943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01R 13/533
H01R 13/52
H01B 7/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の両端に端子が接続されて一端側端子が他端側端子よりも高圧環境下に設置される端子付き電線に、開口から見たときに当該端子付き電線の一部が内部空間を横切るように設置される有底筒状の部材であって、前記内部空間に対する出入り口として、周壁に、前記開口の側から深さ方向の中間位置まで切込みが切り込まれた第1部材と、
前記第1部材に前記開口を塞ぐように取り付けられる部材であって、前記第1部材の底面と対面する天井面から突出し、前記端子付き電線における前記内部空間の通過部分の中途を前記底面に向かって前記切込みよりも深い位置まで押圧して当該通過部分を屈曲させ、前記被覆電線の両端間の圧力差に起因して高圧側の端部から液体が被覆内部に浸入するときの当該液体の流れを前記通過部分の屈曲によって抑制する突起部が設けられた第2部材と、
を備えたことを特徴とする液流抑制構造。
【請求項2】
前記第1部材には、前記周壁の内周面から前記底面に掛けて突出し、前記突起部によって押圧される前記通過部分の中途を受け入れる凹溝が設けられたリブ壁であって、前記凹溝における少なくとも前記底面寄りの部分が当該底面へと向かうほど狭くなる幅狭形状を有しており、前記突起部に押圧される前記通過部分の中途を当該突起部と協働して当該通過部分の太さ方向に圧迫し、前記液体の流れを当該通過部分に対する圧迫によって抑制する圧迫リブ壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液流抑制構造。
【請求項3】
前記第2部材を、前記開口を開閉可能に塞ぐように前記第1部材の前記周壁の前記開口側の端縁に連結するヒンジ部を更に備え、
前記第2部材には、前記開口を塞いだときに前記第1部材に係止する係止部が設けられ、
前記第1部材には前記第2部材の前記係止部が係止する被係止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液流抑制構造。
【請求項4】
前記第1部材、前記第2部材、及び前記ヒンジ部が樹脂で一体成形されており、
前記ヒンジ部が、前記第1部材及び前記第2部材よりも厚みが薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液流抑制構造。
【請求項5】
被覆電線の両端に端子が接続されて一端側端子が他端側端子よりも高圧環境下に設置される端子付き電線と、
前記端子付き電線の一部に取り付けられ、前記被覆電線の両端間の圧力差に起因して高圧側の端部から液体が被覆内部に浸入するときの当該液体の流れを抑制する請求項1~4のうち何れか一項に記載の液流抑制構造と、
を備えたことを特徴とする液流抑制構造付き電線。
【請求項6】
前記液流抑制構造が、前記端子付き電線における、長さ方向の中央位置よりも前記一端側端子に近い位置に取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の液流抑制構造付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線の一端側から被覆内部に浸入する液体の流れを抑制する液流抑制構造、及びそのような構造が設けられた液流抑制構造付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスの端部に設けられるコネクタについて、他コネクタの端子接続のためにハウジングに設けられた開口等からの液体の浸入を抑制するための技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような技術の一例としては、ハウジングにおいて上記の開口が設けられた端子収容室と、当該端子収容室に端子が収容される端子付き電線と、の間の間隙をゴム栓や充填剤で塞ぐこと等が挙げられる。
【0003】
ここで、例えば車両等では車室内とエンジンの近傍とを繋ぐようにワイヤハーネスが配策されることがある。このとき、エンジン側コネクタには、水等の液体に曝される可能性があることから、多くの場合、上述のように液体の浸入を抑制する構造が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-076809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジン側コネクタは、エンジン動作時には高温となりエンジンの停止とともにその温度が低下する。上述の構造が設けられ間隙がゴム栓や充填剤で塞がれて内部が略密閉されたエンジン側コネクタでは、温度が低下するとその内部の圧力が低下して低圧環境となる。すると、反対側の車室側コネクタの内部は相対的に高圧環境となる。つまり、ワイヤハーネスを構成し、被覆電線の両端に端子が接続された端子付き電線では、車室側コネクタに搭載れる一端側端子が、エンジン側コネクタに搭載される他端側端子よりも高圧環境下に置かれることとなる。このような状態では、端子付き電線における被覆電線の両端間に圧力差が生じ、その圧力差に起因して高圧側、即ち車室側の端部から液体が被覆内部に浸入する可能性がある。そして、浸入した液体が被覆内部の素線間を低圧側であるエンジン側の端部まで流れてしまうと、エンジン側コネクタに上述のような液体の浸入を抑制する構造が設けられていたとしても結局はコネクタ内部への液体の浸入を許すこととなってしまう。
【0006】
尚、ここまで、端子付き電線における被覆電線の両端間の圧力差に起因して、端部から液体が被覆内部に浸入して流れるという問題について、車両等の車室内とエンジンの近傍とを繋ぐワイヤハーネスの端子付き電線を例に挙げて説明した。しかしながら、このような問題は、車両等の車室内とエンジンの近傍とを繋ぐワイヤハーネスの端子付き電線に限らず、一端側端子が他端側端子よりも高圧環境下に設置される端子付き電線であれば共通に生じ得る問題である。
【0007】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、端子付き電線において被覆電線の両端間の圧力差に起因して液体が被覆内部に浸入するようなことがあっても、その液体の流れを抑制することができる液流抑制構造を提供することを目的とする。また、本発明は、端子付き電線にそのような液流抑制構造が設けられた液流抑制構造付き電線を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、液流抑制構造は、被覆電線の両端に端子が接続されて一端側端子が他端側端子よりも高圧環境下に設置される端子付き電線に、開口から見たときに当該端子付き電線の一部が内部空間を横切るように設置される有底筒状の部材であって、前記内部空間に対する出入り口として、周壁に、前記開口の側から深さ方向の中間位置まで切込みが切り込まれた第1部材と、前記第1部材に前記開口を塞ぐように取り付けられる部材であって、前記第1部材の底面と対面する天井面から突出し、前記端子付き電線における前記内部空間の通過部分の中途を前記底面に向かって前記切込みよりも深い位置まで押圧して当該通過部分を屈曲させ、前記被覆電線の両端間の圧力差に起因して高圧側の端部から液体が被覆内部に浸入するときの当該液体の流れを前記通過部分の屈曲によって抑制する突起部が設けられた第2部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、液流抑制構造付き電線は、被覆電線の両端に端子が接続されて一端側端子が他端側端子よりも高圧環境下に設置される端子付き電線と、前記端子付き電線の一部に取り付けられ、前記被覆電線の両端間の圧力差に起因して高圧側の端部から液体が被覆内部に浸入するときの当該液体の流れを抑制する上述の液流抑制構造と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線によれば、端子付き電線における第1部材の内部空間の通過部分を第2部材の突起部の押圧によって屈曲させることで、被覆電線の被覆内部での液体の流れが抑制される。つまり、上記の液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線によれば、端子付き電線において被覆電線の両端間の圧力差に起因して液体が被覆内部に浸入するようなことがあっても、その液体の流れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態の液流抑制構造が端子付き電線に取り付けられた液流抑制構造付き電線を示す模式図である。
図2図1に模式的に示されている液流抑制構造を示す斜視図である。
図3図2に示されている液流抑制構造を、図2中のV11-V11線に沿った断面で示す図である。
図4図2に示されている液流抑制構造を、図2中のV12-V12線に沿った断面で示す図である。
図5図2に示されている液流抑制構造を、図2中のV13-V13線に沿った断面で示す図である。
図6図1図5に示されている液流抑制構造に対する変形例を、図4と同様の断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線の一実施形態について説明する。
【0013】
図1は、一実施形態の液流抑制構造が端子付き電線に取り付けられた液流抑制構造付き電線を示す模式図である。
【0014】
本実施形態の液流抑制構造付き電線1は、端子付き電線11と、液流抑制構造12と、を備えている。端子付き電線11は、両端にコネクタC1が設けられたワイヤハーネスW1を構成する1本の電線であり、被覆電線111の両端に端子112が接続されたものである。
【0015】
ここで、本実施形態では、ワイヤハーネスW1は、不図示の車両における車室内とエンジンの近傍とを繋ぐように配策される。このワイヤハーネスW1の一端側には、車室に配置される車室側コネクタC11が設けられ、他端側には、エンジンの近傍に配置されるエンジン側コネクタC12が設けられている。エンジン側コネクタC12は、水等の液体に曝される可能性があることから、間隙をゴム栓や充填剤で塞いで内部が略密閉された構造となっている。他方、車室側コネクタC11では、被覆電線111から露出した芯線111aと端子112との接続部分における例えばガルバニック腐食等を防止するために、接続部分に樹脂等の防食材を塗布する等といった防食処理が施されている。
【0016】
ところで、上述したように略密閉されたエンジン側コネクタC12が、エンジン動作時に高温となってエンジンの停止とともに温度が低下すると、内部の圧力が低下して低圧環境となる。すると、反対側の車室側コネクタC11の内部は相対的に高圧環境となる。つまり、ワイヤハーネスW1を構成する端子付き電線1では、車室側コネクタC11に搭載れる一端側端子112aが、エンジン側コネクタC12に搭載される他端側端子112bよりも高圧環境下に置かれることとなる。このような状態では、被覆電線111の両端間の圧力差に起因して高圧側、即ち車室側の端部から液体が被覆内部に浸入し、矢印D11で示されているように低圧側の端部に向かって流れる可能性がある。
【0017】
本実施形態では、被覆電線111の被覆内部におけるこのような液体の流れを抑制するために、端子付き電線11の一部に液流抑制構造12が取り付けられて液流抑制構造付き電線1が構成されている。ワイヤハーネスW1では、端子付き電線11の1本毎に液流抑制構造12が設けられている。また、本実施形態では、液流抑制構造12は、端子付き電線11における、長さ方向D12の中央位置11aよりも一端側端子112aに近い位置に取り付けられる。
【0018】
図2は、図1に模式的に示されている液流抑制構造を示す斜視図である。また、図3は、図2に示されている液流抑制構造を、図2中のV11-V11線に沿った断面で示す図であり、図4は、図2に示されている液流抑制構造を、図2中のV12-V12線に沿った断面で示す図である。また、図5は、図2に示されている液流抑制構造を、図2中のV13-V13線に沿った断面で示す図である。
【0019】
これらの図2図5に示されている液流抑制構造12は、端子付き電線11の一部を挟むように取り付けられる電線クリップであり、第1部材121と、第2部材122と、ヒンジ部123と、を備えている。
【0020】
第1部材121は、端子付き電線11に、開口121aから見たときに当該端子付き電線11の一部が内部空間121bを横切るように設置される有底矩形筒状の部材である。この第1部材121では、内部空間121bに対する出入り口として、周壁121cに、開口121aの側から深さ方向D13の中間位置まで切込み121dが一対切り込まれている。
【0021】
第2部材122は、第1部材121に、その開口121aを塞ぐように取り付けられる矩形蓋状の部材である。この第2部材122では、開口121aを塞いだときに第1部材121の底面121eと対面する天井面122aから突出するようにリブ状の突起部122bが設けられている。この突起部122bは、第2部材122が開口121aを塞いだときに、端子付き電線11における第1部材121の内部空間121bの通過部分11bの中途を底面121eに向かって切込み121dよりも深い位置まで押圧する。この押圧により、端子付き電線11の通過部分11bは図3に示されているように、第1部材121の底面121eに向かって凸に屈曲する。第2部材122における突起部122bは、通過部分11bをこのように屈曲させることで、被覆電線111の両端間の圧力差に起因して高圧側の端部から液体が被覆内部に浸入するときの当該液体の流れを抑制する。
【0022】
ここで、第1部材121には、周壁121cの内周面から底面121eに掛けて突出した次のような圧迫リブ壁121fが設けられている。この圧迫リブ壁121fは、第2部材122の突起部122bによって押圧される端子付き電線11の通過部分11bの中途を受け入れる凹溝121f-1が設けられたリブ壁である。この凹溝121f-1は、開口121aから底面121eへと向かうほど狭くなる幅狭形状を有している。このような凹溝121f-1に突起部122bで押圧される通過部分11bの中途を受け入れることで、圧迫リブ壁121fは、当該通過部分11bの中途を突起部122bと協働して当該通過部分11bの太さ方向D14に圧迫する。圧迫リブ壁121fは、液体の流れをこのような圧迫によって抑制する。
【0023】
ヒンジ部123は、第2部材122を、開口121aを開閉可能に塞ぐように第1部材121の周壁121cの開口121a側の端縁に連結する部位である。そして、第2部材122には、開口121aを塞いだときに第1部材121に係止する係止部122cが設けられている。また、第1部材121には第2部材122の係止部122cが係止する被係止部121gが設けられている。本実施形態では、第1部材121、第2部材122、及びヒンジ部123が樹脂で一体成形されており、ヒンジ部123が、第1部材121及び第2部材122よりも厚みが薄くなるように形成されている。
【0024】
以上に説明した実施形態の液流抑制構造12及び液流抑制構造付き電線1によれば、端子付き電線11における第1部材121の内部空間121bの通過部分11bを第2部材122の突起部122bの押圧によって屈曲させる。この屈曲により、被覆電線111の被覆内部において屈曲部分の芯線間の間隔が狭められて液体の流れが抑制される。つまり、本実施形態によれば、端子付き電線11において被覆電線111の両端間の圧力差に起因して液体が被覆内部に浸入するようなことがあっても、その液体の流れを抑制することができる。
【0025】
ここで、本実施形態では、第1部材121に設けられた圧迫リブ壁121fの凹溝121f-1に突起部122bで押圧される通過部分11bの中途を受け入れることで、当該通過部分11bが太さ方向D14に圧迫される。被覆内部に浸入した液体の流れはこの通過部分11bに対する圧迫によっても抑制されることとなっている。この構成によれば、端子付き電線11における第1部材121の内部空間121bの通過部分11bの屈曲に加えて、圧迫リブ壁121fでの通過部分11bに対する圧迫によっても芯線間の間隔が狭められて液体の流れが抑制される。つまり、上記の構成によれば、圧力差に起因した被覆内部の液体の流れを一層抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態では、第2部材122が第1部材121にヒンジ部123によって開閉可能に連結され、第2部材122には係止部122cが設けられ、第1部材121には被係止部121gが設けられている。この構成によれば、端子付き電線11の一部を挟むように第1部材121に対して第2部材122を閉じることで液流抑制構造12を端子付き電線11に容易に取り付けることができる。また、第2部材122を開くことで液流抑制構造12を容易に取り外すこともできる。
【0027】
また、本実施形態では、第1部材121、第2部材122、及びヒンジ部123が樹脂で一体成形されており、ヒンジ部123は他の部位よりも厚みが薄くなるように形成されている。この構成によれば、液流抑制構造12についての部品点数を低減することができるので好適である。
【0028】
更に、本実施形態では、図1に示されているように、液流抑制構造付き電線1において、液流抑制構造12は、端子付き電線11の中央位置11aよりも、一端側端子112aに近い位置に取り付けられる。この構成によれば、端子付き電線11において、高圧側で液体の吸引側となる一端側端子112aに近い位置に液流抑制構造12が取り付けられるので、液体の流れが被覆内部への浸入後の早い段階で抑制される。このため、他端側端子112bへの液体の到達量を一層低減することができるので好適である。
【0029】
次に、図1図5に示されている液流抑制構造12に対する変形例について説明する。
【0030】
図6は、図1図5に示されている液流抑制構造に対する変形例を、図4と同様の断面で示す図である。尚、この図6では、図4に示されている構成要素と同等な構成要素には図4と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0031】
この変形例の液流抑制構造22は、第1部材221の圧迫リブ壁221fにおいて、第2部材122の突起部122bに押圧される端子付き電線11の通過部分11bを受け入れる凹溝221f-1の形状が、上述の実施形態とは異なっている。本変形例では、凹溝221f-1は、上述の実施形態の凹溝121f-1のように開口121a側で通過部分11bよりも幅広に形成されて底面121eに向かって幅が漸減する形状ではない。本変形例の凹溝221f-1は、開口121aの側で既に通過部分11bよりも幅狭に形成されている。そして、凹溝221f-1は、その狭い幅のままで底面121eに向かって同幅の状態で延び、溝底が通過部分11bの外周面になじむように円弧状に形成されている。本変形例では、凹溝221f-1において底面121e寄りとなるこの円弧状の部分が、底面121eへと向かうほど狭くなる幅狭形状を有することとなっている。
【0032】
この変形例では、ヒンジ部123を介して第1部材221に連結された第2部材122が閉じられて係止部122cが被係止部121gに係止すると、溝口から幅狭に形成された凹溝221f-1へと、突起部122bによって通過部分11bが押し込まれる。このような押込みにより、通過部分11bは特に図6中の幅方向D21について強力な圧迫を受けて芯線間の間隔が狭められる。また、押し込まれた通過部分11bは溝底に達した状態で突起部122bによって図6中の上下方向D22についても強力な圧迫を受けて芯線間の間隔が狭められることとなる。
【0033】
上述の実施形態と変形例とで2例を例示したように、端子付き電線11の通過部分11bを受け入れる凹溝121f-1,221f-1の形状は、端子付き電線11を構成する被覆電線111のサイズや種類に応じて適宜に設計される。
【0034】
また、以上に説明した変形例の液流抑制構造22によっても、上述の実施形態と同様に、端子付き電線11において被覆電線111の被覆内部に液体が浸入するようなことがあっても、その液体の流れを抑制することができることは言うまでもない。
【0035】
尚、以上に説明した実施形態及び変形例は液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線の代表的な形態を示したに過ぎず、液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線は、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0036】
例えば、上述の実施形態及び変形例では、液流抑制構造の一例として、車両の車室内とエンジンの近傍との間を繋いで配策されるワイヤハーネスW1を構成する端子付き電線11に取り付けられる液流抑制構造12,22が例示されている。また、液流抑制構造付き電線の一例として、このような端子付き電線11に液流抑制構造12が取り付けられた液流抑制構造付き電線1が例示されている。しかしながら、液流抑制構造及び液流抑制構造付き電線は、これに限るものではなく、車両以外の対象物に搭載されるワイヤハーネスを構成する端子付き電線に適用されてもよい。また、車両に搭載されるワイヤハーネスの端子付き電線に適用される場合でも、車両の車室内とエンジンの近傍との間以外の配策ルートで配策されるワイヤハーネスを構成する端子付き電線に適用されてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態及び変形例では、液流抑制構造の一例として、1本の端子付き電線11が第1部材121の内部空間121bを通過する液流抑制構造12,22が例示されている。この液流抑制構造12,22では、1本の端子付き電線11を通過させるために、周壁121cに端子付き電線11の出入り口としての切込み121dが一対設けられている。しかしながら、液流抑制構造はこれに限るものではなく、複数本の端子付き電線が第1部材の内部空間を通過するもの等であってもよい。この場合、端子付き電線の出入り口としての切込みを周壁に複数対設けることとしてもよく、あるいは、大き目の切込みを一対設けて束ねられた複数本の端子付き電線の出入り口として利用することとしてもよい。
【0038】
また、上述の実施形態及び変形例では、液流抑制構造の一例として、有底矩形筒状の第1部材121,221と、矩形蓋状の第2部材122と、を備えた液流抑制構造12,22が例示されている。しかしながら、液流抑制構造はこれに限るものではなく、その具体的な形状を問うものではない。
【0039】
また、上述の実施形態及び変形例では、液流抑制構造の一例として、第1部材121,221に圧迫リブ壁121f、221fが設けられた液流抑制構造12,22が例示されている。しかしながら、液流抑制構造はこれに限るものではなく、圧迫リブ壁は設けずに、第2部材の突起部による端子付き電線の屈曲のみで被覆内部の液体の流れを抑制することとしてもよい。ただし、第1部材121,221に圧迫リブ壁121f、221fを設けることで、被覆内部の液体の流れを一層抑制することができる点は上述した通りである。
【0040】
また、上述の実施形態及び変形例では、液流抑制構造の一例として、第2部材122が第1部材121にヒンジ部123で連結され、第2部材122の係止部122cが第1部材121の被係止部121gに係止する液流抑制構造12,22が例示されている。しかしながら、液流抑制構造はこれに限るものではなく、ヒンジ部等は設けずに、第2部材が第1部材にネジ止め等によって固定されることとしてもよい。ただし、ヒンジ部123等を設けた上記の構成によれば、液流抑制構造12,22を端子付き電線11に容易に着脱できることも上述した通りである。
【0041】
また、上述の実施形態及び変形例では、液流抑制構造の一例として、第1部材121、第2部材122、及びヒンジ部123が樹脂で一体成形された液流抑制構造12,22が例示されている。しかしながら、液流抑制構造はこれに限るものではなく、第1部材、第2部材、及びヒンジ部を、互いに別体の部品として設けて組み立てることとしてもよい。ただし、上記のように樹脂で一体成形することで、部品点数を低減することができて好適である点も上述した通りである。
【0042】
また、上述の実施形態及び変形例では、液流抑制構造付き電線の一例として、液流抑制構造12が端子付き電線11の中央位置11aよりも、高圧側となる一端側端子112aに近い位置に取り付けられる液流抑制構造付き電線1が例示されている。しかしながら、液流抑制構造付き電線は、これに限るものではなく、液流抑制構造の取付け位置は任意に設定し得るものである。ただし、液流抑制構造12が高圧側となる一端側端子112aに近い位置に取り付けられることで、低圧側の他端側端子112bへの液体の到達量を一層低減することができて好適である点も上述した通りである。
【符号の説明】
【0043】
1 液流抑制構造付き電線
11 端子付き電線
11a 中央位置
11b 通過部分
12,22 液流抑制構造
111 被覆電線
111a 芯線
112 端子
112a 一端側端子
112b 他端側端子
121,221 第1部材
121a 開口
121b 内部空間
121c 周壁
121d 切込み
121e 底面
121f,221f 圧迫リブ壁
121f-1,221f-1 凹溝
121g 被係止部
122 第2部材
122a 天井面
122b 突起部
122c 係止部
123 ヒンジ部
C1 コネクタ
C11 車室側コネクタ
C12 エンジン側コネクタ
W1 ワイヤハーネス
D12 長さ方向
D13 深さ方向
D14 太さ方向
D21 幅方向
D22 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6