(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】カートイン式の冷却庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
F25D23/00 302M
(21)【出願番号】P 2020139998
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】井口 晃
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-229527(JP,A)
【文献】特開2003-95074(JP,A)
【文献】特開2007-209873(JP,A)
【文献】実開平6-59776(JP,U)
【文献】実開昭56-119990(JP,U)
【文献】特開2002-98475(JP,A)
【文献】特開2003-343971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0073774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/02
A47J 27/00 - 27/64
A47J 39/00 - 39/02
F25D 11/00 - 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレー(24)が多段状に積載されたカート(19)を台車(21)ごと収容する冷却庫本体(1)と、冷却庫本体(1)の内部に冷気を供給し循環させる冷却ユニット(5)とを備えるカートイン式の冷却庫であって、
冷却庫本体(1)には、該冷却庫本体(1)内外へのカート(19)の前後方向における出し入れ操作を許す出入り口(3)と、出入り口(3)を開閉するドア(4)とが設けられており、
冷却庫本体(1)を構成する内箱(13)の内面は鏡面化されており、
カート(19)には、車輪(20)を備える台車(21)と、トレー(24)を多段状に収容するトレーラック(22)とが設けられており、
内箱(13)の底壁(13a)には、紫外光を放射する殺菌ユニット(25)が配置されており、
冷却庫本体(1)内へカート(19)を収容してトレー(24)上の食材に対する冷却動作の実行時に殺菌ユニット(25)を作動させることを特徴とするカートイン式の冷却庫。
【請求項2】
殺菌ユニット(25)は、内箱(13)の底壁(13a)の前後方向の長さ寸法よりも短尺に設定された殺菌灯(26)と、殺菌灯(26)の周囲を覆うカバー体(28)とを備え、
殺菌ユニット(25)が、殺菌灯(26)の伸び方向が前後方向に指向する姿勢であり、且つ庫内における車輪(20)の移動軌跡に干渉しない位置に設置されている、請求項1に記載のカートイン式の冷却庫。
【請求項3】
底壁(13a)の複数個所に殺菌ユニット(25)が配置されている、請求項2に記載のカートイン式の冷却庫。
【請求項4】
カバー体(28)の外面に、紫外光で励起されて有機物を分解する光触媒層(39)が形成されている、請求項2記載のカートイン式の冷却庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材トレーが多段状に積載されたカートを収容して、トレー上の加熱調理された食材を冷却、または冷凍するカートイン式の冷却庫に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却庫において、庫内に殺菌用の紫外線ランプを設けることは、例えば特許文献1に公知である。特許文献1の冷却庫では、冷却庫本体の内部側面の上隅に紫外線ランプが設けられており、冷却運転が停止されて庫内に食品が存在していない状態、即ちカート(ストッカー)が庫外に取出された状態において、紫外線ランプを点灯してオゾンを発生させ、さらにオゾンを庫内に循環させて庫内の殺菌を行うようにしている。特許文献1のカートは、トレーを支持する支持枠構造部分のみが冷却庫本体の内部に収容され、車輪を含む台車は冷却庫本体の底壁の下空間に潜り込むようになっている。
【0003】
本発明の冷却庫においては、冷却庫本体の内部にカート全体を収容するが、この種の冷却庫は特許文献2に公知である。特許文献2の冷却庫では、断熱箱体の底壁の前端に断面三角形状のスロープ部材が固定されており、このスロープ部材を使ってカート全体を冷却庫本体の内部に収容することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-258044号公報
【文献】特開平11-37636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却庫の冷却効率向上の観点からすると、特許文献1のようにトレーを支持する支持枠構造部のみが冷却庫本体の内部に収容され、台車が冷却庫本体の底壁の下空間に潜り込む構成よりも、特許文献2のようにカート全体が冷却庫本体の内部に収容される構成を採る方が好ましく、これは、特許文献2の構成を採るほうが冷却庫本体に設けられた出入口と、当該出入口を開閉するドアとの間のパッキンを主体とする出入口の閉鎖構造を著しく簡素化できることに拠る。但し、特許文献2の冷却庫の構成では、カートの車輪も冷却庫本体の内部に収容されるため、より衛生的な状態で食品の冷却を行うためには、当該車輪に対する殺菌処理が必要となる。一方、従来の殺菌用の紫外線ランプを備える冷却庫(特許文献1)では、上述のように、冷却庫本体の内部側面の上隅に紫外線ランプが設けられており、冷却運転が停止されて庫内に食品が存在していない状態、即ちカートが庫外に取出された状態において、紫外線ランプを点灯するようにしているため、カートの車輪に対して紫外線ランプにより殺菌処理を行うことは全く想定されていない。
【0006】
本発明はカート全体が冷却庫本体の内部に収容される構成を採るカートイン式の冷却庫において、カートの車輪に対する殺菌が可能であり、したがってより衛生的な状態で食品の冷却を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷却庫は、トレー24が多段状に積載されたカート19を台車21ごと収容する冷却庫本体1と、冷却庫本体1の内部に冷気を供給し循環させる冷却ユニット5とを備えるカートイン式の冷却庫を対象とする。冷却庫本体1には、該冷却庫本体1内外へのカート19の前後方向における出し入れ操作を許す出入り口3と、出入り口3を開閉するドア4とが設けられている。冷却庫本体1を構成する内箱13の内面は鏡面化されている。カート19には、車輪20を備える台車21と、トレー24を多段状に収容するトレーラック22とが設けられている。内箱13の底壁13aには、紫外光を放射する殺菌ユニット25が配置されている。そして、冷却庫本体1内へカート19を収容してトレー24上の食材に対する冷却動作の実行時に殺菌ユニット25が作動されることを特徴とする。
【0008】
殺菌ユニット25は、内箱13の底壁13aの前後方向の長さ寸法よりも短尺に設定された殺菌灯26と、殺菌灯26の周囲を覆うカバー体28とを備える。殺菌ユニット25は、殺菌灯26の伸び方向が前後方向に指向する姿勢であり、且つ庫内における車輪20の移動軌跡に干渉しない位置に設置されている。
【0009】
底壁13aの複数個所に殺菌ユニット25が配置されている構成を採ることができる。
【0010】
カバー体28の外面に、紫外光で励起されて有機物を分解する光触媒層39が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷却庫においては、内箱13の底壁13aに、紫外光を放射する殺菌ユニット25を配置したうえで、冷却庫本体1内へカート19を収容してトレー24上の食材に対する冷却動作の実行時に殺菌ユニット25を作動するようにしたので、当該冷却動作の実行時に車輪20を含むカート19に対する殺菌動作を行うことができる。これにより、カート19の全体が冷却庫本体1の内部に収容される構成を採るカートイン式の冷却庫であるにも拘らず、冷却動作の実行時にカート19の車輪20に対する殺菌を行うことができるので、より衛生的な状態で食品の冷却を行うことができる。また、内箱13の底壁13aに紫外光を放射する殺菌ユニット25を配置し、さらに冷却庫本体1を構成する内箱13の内面を鏡面化したので、殺菌ユニット25から放射される直接光だけでなく、内箱13の内面で反射された反射光を、車輪20を含むカート19に照射することができる。したがってカート19の隅々の部分に対して、より確実に殺菌を行うことができる。加えて、内箱13の底壁13aに紫外光を放射する殺菌ユニット25を配置したので、トレー24上の食材に対して紫外光の直接光が照射されることを防ぐことができる。したがって、紫外光の照射に起因して食材が劣化することを効果的に抑えることができる。
【0012】
殺菌ユニット25を、殺菌灯26の伸び方向が前後方向に指向する姿勢であり、且つ庫内における車輪20の移動軌跡に干渉しない位置に設置したので、車輪20が殺菌ユニット25に接当干渉するのを確実に防止して、カート19の出し入れを簡便に行うことができる。例えば殺菌灯26の長さ寸法を、内箱13の底壁13aの前後方向の長さ寸法よりも僅かに短尺に設定した場合には、車輪20に対してより多くの紫外光の直接光を照射することができるので、より確実に車輪20の殺菌を行うことができる。
【0013】
底壁13aの複数個所に殺菌ユニット25を配置したので、車輪20に対して紫外光を複数の方向から満遍なく照射することができ、殺菌効果をさらに高めることができる。
【0014】
カバー体28の外面に、紫外光で励起されて有機物を分解する光触媒層39が形成されていると、内箱13の周囲壁で反射された紫外光によって光触媒層39を励起させることができるので、カバー体28の外面に付着した雑菌や有機物を殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係るカートイン式の冷却庫の要部の横断平面図である。
【
図2】冷却庫のドアを開放した状態の縦断側面図である。
【
図3】殺菌ユニットと車輪の位置関係を示す要部の縦断正面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係るカートイン式の冷却庫の横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)本発明に係るカートイン式の冷却庫の実施例1を
図1ないし
図4に示す。本実施例における前後、左右、上下とは、
図1および
図2に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。
図2に示すように冷却庫を構成する冷却庫本体1は、縦長直方体状の断熱箱である本体ケース2と、本体ケース2の前面の出入り口3を開閉するドア4とを備える。本体ケース2の上方には、冷却庫の内部に冷気を供給し循環させる冷却ユニット5が設けられている。冷却ユニット5は、本体ケース2の上方の機械室に収容される圧縮機6、凝縮器7、凝縮器ファン8と、本体ケース2の内部上方に配置される蒸発器9および循環ファン10などで構成されている。
【0017】
図2に示すように、本体ケース2は、内箱13および外箱14と、これら両者13・14の間に充填される発泡断熱材15とで構成される。内箱13および外箱14は、それぞれステンレス板材で形成されており、内箱13の内面には鏡面処理が施されて鏡面化されている。本体ケース2の内部には、カート19を台車21ごと収容することができ、そのために、出入り口3の前面下部に傾斜板16が着脱可能に装着されている。傾斜板16はドア4が開放された状態でのみ使用される。
【0018】
カート19は左右一対ずつの車輪20を前後に備えた台車21と、台車21上に固定されるトレーラック22と、台車21の前端に固定される門形の手押枠23とを備える。トレーラック22には、食材が載置されたトレー24を多段状に収容することができる。各車輪20は市販されている旋回自在なキャスターからなり、手押枠23側の車輪20には、足踏み式のブレーキ(図示していない)が設けられている。
【0019】
調理場で加熱調理された食品は、各トレー24に収容された状態でトレーラック22に載置され、カート19ごと冷却庫本体1の内部に収容されて冷却される。このとき、車輪20に付着した雑菌や有機物が冷却庫本体1内の衛生状態を損ねるおそれがある。こうした状況を解消するために、カート19の車輪20および台車21に臨む内箱13の底壁13aの左右中央に、紫外光を放射する殺菌ユニット25を設け、食材を冷却する間に殺菌ユニット25を作動させて、車輪20および台車21に付着した雑菌や有機物を殺菌できるようにしている。
【0020】
図3および
図4に示すように、殺菌ユニット25は左右の車輪20の移動軌跡に干渉しない位置、すなわち左右の車輪20の移動軌跡の間に配置されている。殺菌ユニット25は、紫外光を放射する前後に長い直管状の紫外線ランプ(殺菌灯)26と、紫外線ランプ26の前後を支持する板バネ製のホルダー27と、紫外線ランプ26の周囲を覆うカバー体28とを備えている。紫外線ランプ26の駆動部は、圧縮機6などと共に機械室に配置されている。通常の照明用の蛍光灯と同様に、先の駆動部はカバー体28の内部に設けてもよい。ホルダー27は、内箱13の底壁13aに固定した台枠29の上面に固定されている。紫外線ランプ26の前後長さは、車輪20の前後間隔の約9割強になっているので、すべての車輪20の左右方向の内面が紫外線ランプ26の直接放射領域(紫外線ランプ26から照射された紫外光の直接光が照射される領域)に臨むようになっている。したがって、これら車輪20に対してより効果的に殺菌することができる。
【0021】
カバー体28は、紫外線ランプ26の左右両側を覆う一対の側壁31・32と、紫外線ランプ26の前後を覆う前壁33および後壁34と、紫外線ランプ26の上方を覆う上壁35とで前後に長い中空直方体状に形成されている。カバー体28の両側壁31・32および上壁35には、それぞれ前後に長い光放射穴36の一群が多列状に形成されている。前後の車輪20は光放射穴36から放射される紫外線ランプ26の直接放射領域に臨んでいる。カバー体28の両側壁31・32の下縁には締結座37が横向きに張り出されており、その前後3個所がビス38で内箱13の底壁13aに固定されている。締結座37を含むカバー体28の外面には、内箱13の内面で反射された反射光を受けて有機物を分解する光触媒層39が形成されている。
【0022】
上記のように構成した冷却庫においては、加熱調理された食品が収容されたトレー24の一群をトレーラック22に載置した状態で、カート19を冷却庫本体1の内部に収容し、冷却ユニット5を作動させて食品の冷却を行う。庫内の空気は、循環ファン10で加圧されたのち蒸発器9を通過する間に、冷気となって庫内へ吹出される。同時に、紫外線ランプ26を点灯することにより紫外光を一群の光放射穴36から放射させて、車輪20および台車21の表面に付着した雑菌や有機物を殺菌する。同時に内箱13の底壁13aや周囲壁に到達した紫外光は、鏡面化された壁面で反射されて、周囲壁に臨む車輪20および台車21の表面を殺菌する。
【0023】
以上のように、実施例1の冷却庫によれば、食品の冷却処理を行うのと同時に、カート19の車輪20や台車21、およびトレーラック22などを殺菌できるので、常に衛生的な状態で食品の冷却を行うことができる。また、殺菌ユニット25が左右の車輪20の移動軌跡に干渉しない位置に配置したので、カート19を庫内に収容し、あるいは庫内から引出す場合に、車輪20が殺菌ユニット25に接当干渉するのを防止して、カート19の出し入れを簡便に行うことができる。さらに、殺菌灯を前後に長い直管状の紫外線ランプ26で形成したので、すべての車輪20を紫外線ランプ26の直接放射領域に臨ませることができる。したがって、前後の車輪20の左右の内面および台車21の下面全体を光放射穴36から放射された直接放射光で効果的に殺菌することができる。カバー体28の外面に、内箱13の内面で反射された反射光を受けて有機物を分解する光触媒層39を形成したので、内箱13の周囲壁で反射された紫外光によって光触媒層39を励起して、カバー体28の外面に付着した雑菌や有機物を殺菌することができる。必要があれば、カート19を庫外へ取り出した状態で殺菌ユニット25を作動させることにより、内箱13の内面を紫外線ランプ26から放射される紫外光で殺菌することができる。
【0024】
(実施例2)
図5は実施例2に係る冷却庫を示す。この冷却庫においては、台車21の後部の車輪20の左右間隔が、台車21の前部の車輪20の左右間隔より小さく、台車21の後半部と内箱13の左右の側壁の間にデッドスペースがある点に着眼して、内箱13の底壁13aの左右中央の前半部と、底壁13aの左右両側の後半部の合計3個所に殺菌ユニット25を配置している。上記以外の点は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。実施例2から理解できるように、殺菌ユニット25は、内箱13の底壁13aのうち、庫内における車輪20の移動軌跡に干渉しない複数の個所に配置することができる。こうした冷却庫によれば、前後の車輪20の内外側面や、台車21の下面に対して、紫外光を複数の方向から満遍なく照射できるので、殺菌効果をさらに高めることができる。
【0025】
上記の実施例では、本体ケース2の前面に出入り口3が設けられた冷却庫について説明したが、冷却庫は、本体ケース2の前面および後面に出入り口3が設けられており、カート19を前後の出入り口3から出し入れできるようにした冷却庫であってもよい。カバー体28はパンチングメタル材やエキスパンドメタル材などの多孔材で形成することができ、その断面形状は逆U字状やトンネル断面状であってもよい。台枠29を断面山形に形成し、その上面が鏡面化されていると、紫外線ランプ26の下半分側から放射された紫外光をカバー体28の外へ向かって反射させて、庫内における紫外光の放射光量を増加することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 冷却庫本体
2 本体ケース
3 出入り口
4 ドア
5 冷却ユニット
13 内箱
13a 底壁
19 カート
20 車輪
21 台車
22 トレーラック
24 トレー
25 殺菌ユニット
26 紫外線ランプ(殺菌灯)
28 カバー体
39 光触媒層