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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ボルト軸連結具
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/18 20060101AFI20240115BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20240115BHJP
   F16B 2/12 20060101ALI20240115BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16B7/18 A
F16B7/04 301H
F16B2/12 B
F16B19/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020188682
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077717
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】川端 誠規
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-36268(JP,A)
【文献】特開2015-121325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/18
F16B 7/04
F16B 2/12
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差配置された2本のボルト軸を交差部で連結するボルト軸連結具であって、
一方のボルト軸を保持する保持部、及び当該保持部で保持されたボルト軸の軸心と直交する方向が螺心となってねじ溝が連続する雄ねじ部を有する第1保持体と、
他方のボルト軸を保持する保持部、及び当該保持部で保持されたボルト軸と直交する方向が螺心となってねじ溝が連続して、前記第1保持体の雄ねじ部と螺着可能な雌ねじ部を有する第2保持体と、が螺着されており、
互いに螺着された前記第1及び第2の各保持体を、相対的に離間する方向に螺回動させる途中において、各保持体のうち一方に設けられた当接部と、他方に設けられた被当接部とが当接することで、当該当接状態を超えて各保持体が相対的に離間する螺回動である螺退が規制されていることを特徴とするボルト軸連結具。
【請求項2】
前記第1及び第2の各保持体を最接近させた状態から、各保持体の相対的に一回転以内の螺回動による螺退により、前記当接部と被当接部とが当接して当該螺退を規制することを特徴とする請求項1に記載のボルト軸連結具。
【請求項3】
前記各保持体の有する保持部は、前記ボルト軸を軸直角方向への移動により挿入するための挿入開口部が、螺着相手である保持体と反対側に開口されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のボルト軸連結具。
【請求項4】
前記挿入開口部を閉鎖して当該挿入開口部からボルト軸が抜け出るのを防止する閉鎖体が、当該閉鎖体が閉鎖する挿入開口部を有する保持体に、破断可能な連結部を介して連結されていることを特徴とする請求項3に記載のボルト軸連結具。
【請求項5】
前記閉鎖体は、前記保持部内に保持されたボルト軸の軸方向にスライドさせることで前記保持体に取着されることを特徴とする請求項4に記載のボルト軸連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差配置された2本のボルト軸を交差部で連結するボルト軸連結具に関するものである。
【0002】
最初に、「特許請求の範囲」及び本「明細書」で使用される基本用語を以下に定義する。「螺着」とは、2つの部材が螺子構造で結合されている状態、又はその動作をいい、「螺合」とは、雄ねじと雌ねじとが結合された状態、又はその動作をいい、「螺回動」とは、互いに螺着された2つの部材を相対的に回動させて、互いに接近又は離間させることをいい、「螺心」とは、互いに螺着された2つの部材を螺回動させる場合における回動中心をいい、「螺進」及び「螺退」とは、それぞれ2つの部材が前記螺回動により相対的に接近、及び離間することをいう。
【背景技術】
【0003】
上記したボルト軸連結具として、特許文献1に開示のものがあり、係合構造により互いに回動可能に係合されたベース部材V1 と保持部材S1 の各背面に、それぞれボルト軸B1 ,B2 を取着するための一対一組の取着片8,16が設けられ、2本のボルト軸B1 ,B2 の交差角度に対応させて、ベース部材V1 と保持部材S1 とを相対的に回動させることで、2本のボルト軸B1 ,B2 の交差部を連結している。
【0004】
しかし、上記ボルト軸連結具は、各ボルト軸B1 ,B2 を、ベース部材V1 及び保持部材S1 の各背面に設けられた一対一組の取着片8,16に係止させて取着しているため、当該ボルト軸連結具の部分に、地震、或いは他の部材の衝突等により大きな衝撃力等が作用した場合には、前記取着片8,16が破損又は変形されて、2本のボルト軸B1 ,B2 の連結が解除される恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-63758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、互いに螺着された第1及び第2の各保持体を相対的に螺回動させて、各保持体の交差角度の調整作業中において、各保持体を相対的に過剰に螺退させることで、各保持体の螺着強度を弱めたり、極端な場合には、各保持体が分離されるのを防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、交差配置された2本のボルト軸を交差部で連結するボルト軸連結具であって、
一方のボルト軸を保持する保持部、及び当該保持部で保持されたボルト軸の軸心と直交する方向が螺心となってねじ溝が連続する雄ねじ部を有する第1保持体と、
他方のボルト軸を保持する保持部、及び当該保持部で保持されたボルト軸と直交する方向が螺心となってねじ溝が連続して、前記第1保持体の雄ねじ部と螺着可能な雌ねじ部を有する第2保持体と、が螺着されており、
互いに螺着された前記第1及び第2の各保持体を、相対的に離間する方向に螺回動させる途中において、各保持体のうち一方に設けられた当接部と、他方に設けられた被当接部とが当接することで、当該当接状態を超えて各保持体が相対的に離間する螺回動である螺退が規制されていることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明においては、第1及び第2の各保持体は、それぞれが有する雄ねじ部と雌ねじ部との螺合により互いに螺着されていて、相対的に離間する方向に螺回動させる途中において、各保持体のうち一方に設けられた当接部と、他方に設けられた被当接部とが当接することで、当該当接状態を超えて各保持体が相対的に離間する螺回動である螺退が規制されている。従って、第1及び第2の各保持体は、互いに螺着された状態で、各保持体が互いに接近する方向へ螺回動して螺進することは可能であるが、前記当接状態を超えて各保持体が相対的に離間する螺回動である螺退が規制されているため、各保持体が最大に離間された臨界配置位置を基準にして、各保持体の離間量が小さくなる範囲(自由螺回動範囲)においては、各保持体は正逆両方向に螺回動して螺退及び螺進が可能となる。従って、当該自由螺回動範囲において、各保持体を相対的に螺回動させて、当該各保持体の各保持部の交差角度を、2本のボルト軸の交差角度と同一とすることで、請求項1の発明に係るボルト軸連結具を、交差配置された2本のボルト軸を交差部に配置することで、種々の交差角度で交差している当該2本のボルト軸を、請求項1の発明に係るボルト軸連結具を用いて連結可能となる。更に、第1及び第2の各保持体の雄ねじ部及び雌ねじ部の各ねじ溝は、連続しているため、当該雄ねじ部と雌ねじ部とは、常に螺合していて、当該螺合が解除されることはないので、限定された前記自由螺回動範囲においても、常時、安定して螺回動操作を行えると共に、2本のボルト軸の交差角度に対応するように、第1及び第2の各保持体を周方向に沿ったいかなる相対位置に配置しても、当該配置状態は安定している。
【0009】
また、請求項1の発明においては、各保持体は、その一方に設けられた当接部と、その他方に設けられた被当接部とが当接することで、前記臨界配置位置を超えて離間量が大きくならないので、一旦螺着された一対の保持体は、各保持体の離間量が増す方向の螺回動により、分離されることはない。従って、作業中においては、前記自由螺回動範囲においてのみ、各保持体を相対的に正逆両方向に回動させられて、各保持部の交差角度を、2本のボルト軸の種々の交差角度に設定するため、過剰な螺退により、各保持体の各ねじ部のねじ山の螺合数が減少されて、各保持体の螺着強度が小さくなったり、極端な場合には、各保持体が分離される恐れがなくなる。なお、第1及び第2の各保持体が螺着されたボルト軸連結具の保管・運搬中においても、各保持体が分離される恐れはないので、その取り扱いも容易となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1及び第2の各保持体を最接近させた状態から、各保持体の相対的に一回転以内の螺回動による螺退により、前記当接部と被当接部とが当接して当該螺退を規制することを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、前記「自由螺回動範囲」は、第1及び第2の各保持体を最接近させた状態から、当該各保持体の相対的な1回転以内の螺退の範囲内であって、当該「自由螺回動範囲」は、各保持体が最接近する位置の直前位置に設けられているため、各保持体の雄ねじ部と雌ねじ部の螺合条数(螺合ねじ山数)が最大となるため、各保持体の螺着強度が大きくなると共に、各保持体の相対回転が可能な回転数は、1回転以内であれば、2本のボルト軸のいかなる交差角度に対しても対応可能である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記各保持体の有する保持部は、前記ボルト軸を軸直角方向への移動により挿入するための挿入開口部が、螺着相手である保持体と反対側に開口されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、2本のボルト軸の交差角度に対応させて、第1及び第2の各保持体を前記「自由螺回動範囲」において相対的に回動させても、各保持体に設けられたボルト軸の挿入開口部の開口方向は、常に螺着相手である保持体と反対側に開口されているので、2本のボルト軸の交差角度とは無関係に、各保持体の挿入開口部に対応するボルト軸を同一の挿入操作で挿入させられる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記挿入開口部を閉鎖して当該挿入開口部からボルト軸が抜け出るのを防止する閉鎖体が、当該閉鎖体が閉鎖する挿入開口部を有する保持体に、破断可能な連結部を介して連結されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、交差配置された2本の各ボルト軸を、ボルト軸連結具の保持体の保持部に設けられた各挿入開口部に挿入した後に、閉鎖体を保持体から連結部の破断により分離させた後に、当該閉鎖体により、保持部の挿入開口部を閉鎖することで、当該挿入開口部に挿入されたボルト軸の抜け出しを防止できる。また、使用前の閉鎖体は、使用する直前まで、保持体に破断可能な連結部を介して連結されたままであるので、当該閉鎖体の紛失の恐れがないと共に、破断した直後の閉鎖体により、保持体の挿入開口部を閉鎖できるので、作業現場において、所有している閉鎖体を探す必要がなくなって、作業能率が高められる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記閉鎖体は、前記保持部内に保持されたボルト軸の軸方向にスライドさせることで前記保持体に取着されることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、前記閉鎖体は、前記保持体に対してスライド操作で取着されるので、取着が容易であると共に、当該スライドは、前記保持部内に保持されたボルト軸の軸方向であるので、当該ボルト軸の閉鎖長を最も長くできて、当該ボルト軸の抜け出し防止効果が高められる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1及び第2の各保持体は、その一方に設けられた当接部と、その他方に設けられた被当接部とが当接することで、前記臨界配置位置を超えて離間量が大きくならないので、一旦螺着された一対の保持体は、各保持体の離間量が増す方向の螺回動により、分離されることはない。従って、作業中においては、前記自由螺回動範囲においてのみ、各保持体を相対的に正逆両方向に回動させられて、各保持部の交差角度を、2本のボルト軸の種々の交差角度に設定するため、過剰な螺退により、各保持体の各ねじ部のねじ山の螺合数が減少されて、各保持体の螺着強度が小さくなったり、極端な場合には、各保持体が分離される恐れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a),(b)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の分離状態の斜視図である。
図2】(a)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が最接近して螺着した状態の斜視図であり、(b)は、(a)の状態から各保持体S1 ,S2 を相対的に30°だけ螺退させた状態の斜視図である。
図3図2(a)の縦断面図である。
図4-A】(a),(b)は、それぞれ第1保持体S1 の正面図及び(a)のX1 -X1 線断面図である。
図4-B】(c),(d)は、それぞれ第1保持体S1 の背面図及び(c)のY1 -Y1 線断面図である。
図5-A】(a),(b)は、それぞれ第2保持体S2 の正面図及び(a)のX2 -X2 線断面図である。
図5-B】(c),(d)は、それぞれ第2保持体S2 の背面図及び(c)のY2 -Y2 線断面図である。
図6】(a)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の閉鎖体21が重合して、互いに最接近する直前の状態の正面図であり、(b)は、(a)のZ-Z線断面図である。
図7】(a)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 図6に示される状態から90°螺進した状態の正面図であり、(b)は、(a)の図6のZ-Z線に対応する断面図である。
図8】(a)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 図6に示される状態から180°螺進した状態の正面図であり、(b)は、(a)の図6のZ-Z線に対応する断面図である。
図9】(a)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 図6に示される状態から360°螺進して最接近した状態の正面図であり、(b)は、(a)の図6のZ-Z線に対応する断面図である。
図10】(a)は、第2保持体S2 の螺進退規制突起38が、第1保持体S1 の螺退規制段差部18を通過する前後の状態を示す断面図であり、(b)は、第1保持体S1 の螺進規制突起19と螺退規制段差部18との間の中心角が180°の範囲において、螺着された第1及び第2の保持体S1 ,S2 が正逆両方向に螺進及び螺退が可能であることを示す断面図である。
図11】(a),(b)は、それぞれ第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の第1及び第2の各交差角度確認突起13,37の周方向に沿った配置を示す図である。
図12】(a)~(f)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の第1及び第2の各交差角度確認突起13,37により、各部分雌ねじ部9の第1螺心C11と第2螺心C12の交差角度が確認される状態を示す図である。
図13】(a)~(d)は、同様の状態を示す斜視図である。
図14】天井壁Wから吊り下げられた吊りボルト軸B1 と振止めボルト軸B2 との交差部がボルト軸連結具Aで連結された状態の斜視図である。
図15】(a)は、天井壁Wから吊り下げられた振止めボルト軸B2 の交差予定部をボルト軸連結具Aの第2保持体S2 の部分雌ねじ部9に配置して、振止めボルト軸B2 に対してボルト軸連結具Aが仮固定された状態の正面図であり、(b)は、その部分斜視図である。
図16】(a)は、振止めボルト軸B2 を回動させて吊りボルト軸B1 と交差させた状態の正面図であり、(b)及び(c)は、両ボルト軸B1 ,B2 の交差部の部分斜視図及び部分平面図である。
図17】(a)は、ボルト軸連結具Aの第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各ボルト軸挿入開口6が閉鎖体21で閉鎖されて、各ボルト軸B1 ,B2 の交差部がボルト軸連結具Aで連結された状態の正面図であり、(b)は、連結部の部分斜視図である。
図18】(a),(b)は、ボルト軸連結具Aの第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各ボルト軸挿入開口6が閉鎖体21で閉鎖される前後の斜視図である。
図19】(a),(b)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各閉鎖体配置溝12に閉鎖体21がスライド挿入されて配置される前後の図である。
図20】(a),(b)は、ボルト軸連結具Aの閉鎖体21の部分の縦断面図及び横断面図である。
図21】ボルト軸連結具Aの他の使用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。最初に、図1図5を参照して、2本のボルト軸B1 ,B2 を交差部で連結させるボルト軸連結具Aについて説明する。ボルト軸連結具Aは、一対一組となって互いに螺着により一体化される第1及び第2の各保持体S1 ,S2 から成る。互いに螺着される各保持体S1 ,S2 に関して、第1保持体S1 は、保持体本体1に外周面に雄ねじ部2が形成された雄ねじ筒部3が突出して設けられているのに対して、第2保持体S2 は、保持体本体31に形成されたねじ孔32の内周面に、前記雄ねじ部2が螺着される雌ねじ部33が形成されている点が大きく異なっていて、残りの対応部分は、部分的に寸法の相違は存在するが、基本的に同一又は同等の構造となっているので、第1保持体S1 について詳細に説明して、第2保持体S2 に関しては、第1保持体S1 と異なる部分についてのみ詳細に説明し、同一又は同等の構造の部分は、その旨を記載して、同一符号を使用する。
【0021】
第1保持体S1 は、図1図3及び図4に示されるように、短円柱状の保持体本体1の一端面4に、外周面に雄ねじ部2が形成された雄ねじ筒部3が一体となって突設され、他端面5の側には、ボルト軸B1 (B2 )を内部に挿入可能にするためのボルト軸挿入開口6が前記保持体本体1の直径方向に沿って形成されている。保持体本体1には、当該ボルト軸挿入開口6から奥方に向けて前記幅広となるようなボルト軸挿入溝7が形成され、当該ボルト軸挿入溝7の形成端(奥方端)は、ボルト軸B1 (B2 )の横断面に対応する断面半円形のボルト軸配置溝8が形成され、当該ボルト軸配置溝8の内周面には、ボルト軸B1 (B2 )が部分螺着可能な部分雌ねじ部9がほぼ全長に亘って形成されている。前記ボルト軸挿入溝7の対向する内側面における奥側の形成端であって、前記ボルト軸配置溝8の内周面に形成された部分雌ねじ部9の両形成端を超えた保持体本体1の外周面に近い部分には、ボルト軸B1 (B2 )の雄ねじ部の一部を喰い込ませることで、前記ボルト軸配置溝8に配置されたボルト軸B1 (B2 )の後退を防止して、保持体本体1に対するボルト軸B1 (B2 )の配置を固定化させる被喰込み突起11が、対向する一対が一組となって二組形成されている。前記ボルト軸挿入溝7における前記ボルト軸挿入開口6から所定長だけ奥側の部分には、前記ボルト軸配置溝8にボルト軸B1 (B2 )の一部を配置させた後に、当該ボルト軸挿入開口6を閉鎖するための後述の閉鎖体21を差込み配置させる閉鎖体配置溝12が保持体本体1を貫通して形成されている。
【0022】
短円柱状の保持体本体1は、樹脂の射出成形により形成され、上記したようにボルト軸挿入溝7、ボルト軸配置溝8及び閉鎖体配置溝12の計3本の溝が連続又は交差して、当該保持体本体1を貫通して形成され、前記雄ねじ筒部3が形成された側の端面4に臨んで計4個の第1交差角度確認突起13を形成するための連続した同一外径の外周面を有する確認突起形成リング部14が形成され、前記3本の溝7,8,12及び確認突起形成リング部14を除く残りの部分は、溝類は形成されないため、無駄に厚肉化されてしまうので、当該保持体本体1の外周面には、前記雄ねじ部2の第1螺心C1 に沿って第1肉盗み溝15が形成されていると共に、当該保持体本体1のボルト軸挿入開口6が形成された側の端面には、前記第1肉盗み溝15に接続する第2肉盗み溝16が前記雄ねじ部2の螺心C1 の軸直角方向に形成されている。第1及び第2の各肉盗み溝15,16を設けることで、射出成形時における表面ひけの発生の防止又は抑制、保持体本体1の軽量化、使用樹脂原料の節約等が図られる。計4個の第1交差角度確認突起13は、周方向に沿って等間隔をおいて形成されているので、隣接する第1交差角度確認突起13の形成する中心角は、90°である〔図11(a)参照〕。
【0023】
また、図1図3及び図4に示されるように、第1保持体S1 の雄ねじ部2が形成された側の端面4には、当該雄ねじ部2に螺合される雌ねじ部33を有する第2保持体S2 の螺退を防止するための幅Tの近似円環状螺退防止部17が、当該雄ねじ部2に部分的に接続して設けられている。近似円環状螺退防止部17の中心角が略180°の半円形部K1 図6図9参照)の外面は、その外径が雄ねじ部2のねじ山の外径と同一となることで半円を形成しているが、残りの中心角が略180°の非半円形部K2 図6図9参照)の外面は、当該雄ねじ部2の外径に対して漸次外径が大きくなるような非半円を形成しており、非半円形部K2 の周方向の一端部は、半円形部K1 に無段差で接続しているが、その他端部は、所定の螺退規制段差部18を有して半円形部K1 に段差状となって接続されている。図示例では、当該螺退規制段差部18の段差寸法δ〔図4-B(d)及び図6(b)参照〕は、雄ねじ部2の外径が約26mmに対して約1.2mmである。前記半円形部K1 と非半円形部K2 との無段差状の接続部には、螺進規制突起19が雄ねじ筒部3の半径方向外側に突設されており、当該螺進規制突起19の前記雄ねじ部2の第1螺心C1 の方向に沿った寸法Uは、近似円環状螺退防止部17の幅Tの2/3程度となっている。なお、第2保持体S2 の螺進退規制突起38の端面35に対する突出長Vは、第1保持体S1 の近似円環状螺退防止部17の幅Tと同等である。
【0024】
前記保持体本体1の閉鎖体配置溝12にスライド挿入される閉鎖体21を構成する閉鎖体本体22は、確認突起形成リング部14における隣接する第1交差角度確認突起13の中央部に、破断可能な連結部23を介して前記ボルト軸配置溝8の形成方向と直交する方向に当該保持体本体1に一体に連結されている。長方形板状の閉鎖体本体22の長手方向の一端部は、連結部23を介して保持体本体1に連結され、当該閉鎖体本体22の一端部の幅方向の両端部には、前記連結部23の側に開口したスリット29が長手方向に設けられることで弾性片30がそれぞれ形成され、各弾性片30の先端部の外側に係止片24が設けられ、長手方向の他端部には、外周面が円弧状のキャップ部25が一体に形成され、当該キャップ部25の両端部には、前記閉鎖体配置溝12のスライド挿入側の開口の両端外側部に引っ掛かる引掛り部26が段差状となって形成された構成である。閉鎖体本体22の一方の面には、保持体本体1の閉鎖体配置溝12に閉鎖体本体22をスライド挿入して配置した状態で、ボルト軸配置溝8に配置されたボルト軸B1 (B2 )を部分雌ねじ部9と反対側から押圧する一対の押圧突条27が、当該閉鎖体本体22の幅方向に所定間隔をおいて長手方向に沿って設けられている。閉鎖体本体22の他方の面の長手方向の中間部には、当該閉鎖体本体22を保持体本体1の閉鎖体配置溝12にスライド挿入させる際に、その操作を容易にするための把持突起28が閉鎖体本体22の板面に対して垂直に設けられている。前記キャップ部25は、保持体本体1の閉鎖体配置溝12と接続しているボルト軸挿入溝7の一部を含めて当該閉鎖体配置溝12の開口を閉鎖可能にするため、閉鎖体本体22の前記把持突起28が設けられている側の面において、当該閉鎖体本体22の板厚を超えて突出している。
【0025】
次に、図1図3及び図5を参照して、第2保持体S2 について説明する。上記したように、第2保持体S2 は、第1保持体S1 に対して保持体本体31のねじ孔32の内周面に雌ねじ部33が形成されている構成が異なり、残りの構成は、第1保持体S1 と同等であるので、同一又は同等の部分には、同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。第2保持体S2 は、保持体本体31のねじ孔32の内周面に雌ねじ部33が形成されるため、当該第2保持体S2 の雌ねじ部33の第2螺心C2 に沿った長さは、第1保持体S1 の雄ねじ部2の第1螺心C1 に沿った長さよりも僅かに長くなっていて、ねじ孔32には、嵌合円筒体部34が保持体本体31の当該ねじ孔32の内周面に形成された雌ねじ部33の第2螺心C2 と同心に形成され、当該嵌合円筒体部34は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の螺着により、第1保持体S1 の雄ねじ筒部3の内側に嵌合される。
【0026】
保持体本体31の外周面における雌ねじ部33が形成された側の端面35に臨んだ部分には、確認突起形成リング部36が形成され、当該リング部36における周方向の位相が180°異なる部分には、周方向に沿って所定間隔をおいて計3個で一組となった第2交差角度確認突起37がそれぞれ形成されることで、二組の第2交差角度確認突起37が形成されている。隣接する第2交差角度確認突起37の中心角(α) は、15°である〔図11(b)参照〕。保持体本体31の端面35における連続した3個の第2交差角度確認突起37の中央の第2交差角度確認突起37の部分には、螺進時に第1保持体S1 の螺進規制突起19に当接することで、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の最大螺進位置を定めると共に、螺退時に前記螺退規制段差部18に当接することで、最大螺退位置を規制する螺進退規制突起38が、雌ねじ部33の第2螺心C2 の方向に突設されている。螺進退規制突起38の先端面38aは、互いに螺着された第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が螺進するように螺回動させる際に、第1保持体S1 の螺進規制突起19に対して第2保持体S2 の螺進退規制突起38が、互いに干渉した状態を乗り超えられるようなテーパー面に形成されている。なお、図3図5において、C11,C12は、それぞれ第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各部分雌ねじ部9の螺心(軸心)を示す。
【0027】
次に、図6図9を参照して、互いに螺着された第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の螺退規制構造について説明する。なお、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 を同時に逆方向に螺回動させると図示が複雑となるので、説明の都合上、固定配置された第1保持体S1 に対して第2保持体S2 が螺回動する状態を図示する。図6に示される状態は、第1保持体S1 の雄ねじ部2と第2保持体S2 の雌ねじ部33とが最大螺進位置の直前まで螺合されて、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が最接近する直前の状態であって、第1保持体S1 の螺進規制突起19に対して第2保持体S2 の螺進退規制突起38が周方向に沿って接近した状態である。第1保持体S1 の螺進規制突起19の先端面と、第2保持体S2 の螺進退規制突起38の先端面との間には、僅少の隙間E(図6参照)が形成されていて、両先端面は、干渉することなく相対的に通過可能な寸法となっている。なお、第2保持体S2 の螺進退規制突起38の先端面38aは、端面35に対して螺進側が螺退側に比較して低くなるようなテーパー面に形成されており、第1保持体S1 の雄ねじ部2と第2保持体S2 の雌ねじ部33との螺合により生ずるバックラッシュの存在により、仮に、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が螺進方向の螺回動時に、第1保持体S1 の螺進規制突起19と第2保持体S2 の螺進退規制突起38とが僅かに干渉しても、前記螺進規制突起19と前記螺進退規制突起38とは、螺進退規制突起38のテーパー状の先端面38aにより相対的に通過可能なようになっている。また、図6の状態では、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各閉鎖体21は、互いに重合していて、第1保持体S1 の端面4と第2保持体S2 の端面35との端面間間隔D1 は、4.0mmである。なお、図6において、41,42で示される二点鎖線は、それぞれ第1保持体S1 の雄ねじ部2のねじ山及び第2保持体S2 の雌ねじ部33のねじ山の各山頂を示す。
【0028】
ここで、第2保持体S2 の螺進退規制突起38の先端面38aがテーパー面に形成した理由は、上記した通りであるが、図6に示されるように、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が最接近する直前の1回転前の位置(以下、「直前1回転前位置」という)において、互いに螺合している雄ねじ部2と雌ねじ部33のバックラッシュを考慮しても、螺進規制突起19と螺進退規制突起38とが干渉せず、しかも前記「直前1回転前位置」から、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が相対的に螺進方向に1回転して、両保持体S1 ,S2 が最接近した状態で、前記各保持体S1 ,S2 が干渉して、これを超える螺進が防止されることを条件として、前記螺進規制突起19及び螺進退規制突起38の各端面は、保持体本体1,31の各端面4,35と平行にすることも可能である。
【0029】
図7及び図8は、それぞれ図6に示される状態において、固定状態の第1保持体S1 に対して第2保持体S2 が、それぞれ90°及び180°だけ螺進方向に螺回動した状態を示す図であって、端面間間隔D2 ,D3 は、それぞれ3.6mm,3.2mmであり、いずれの状態でも、第2保持体S2 の螺進退規制突起38は、第1保持体S1 の近似円環状螺退防止部17の非半円形部K2 の外周面に対して僅かに押圧された状態で摺動することで、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は相対的に螺回動して螺進し、図8に示される状態は、第2保持体S2 の螺進退規制突起38が、第1保持体S1 の近似円環状螺退防止部17の螺退規制段差部18を通過した直後である。第1保持体S1 の雄ねじ部2と第2保持体S2 の雌ねじ部33とが螺合された状態では、前記バックラッシュのみならず、半径方向に沿っても隙間が僅かに存在しており、当該半径方向の隙間の存在により、第2保持体S2 の全体が雌ねじ部33の半径方向に微動するか、或いは当該第2保持体S2 の全体が僅かに弾性変形することで、第2保持体S2 の螺進退規制突起38は、第1保持体S1 の近似円環状螺退防止部17の非半円形部K2 の外周面に対して押圧状態で摺動可能となる。
【0030】
図10(a)には、第2保持体S2 の螺進退規制突起38が、第1保持体S1 の螺退規制段差部18を通過して、通過後においては、第2保持体S2 の全体は、自身の雌ねじ部33の半径方向(その螺心C2 に対して直交する方向)に微動するか、或いは僅かに弾性変形されていた第2保持体S2 が原形状に復元することで、当該第2保持体S2 は、原形状又は原位置に戻る状態が図示されている。なお、図面の理解の容易のため、図10(a)の図示に限って、螺進退規制突起38及び第2保持体S2 の閉鎖体21には、周方向への移動の前後を、基本符号に対して添字「a」,「b」を付してあり、螺退規制段差部18を通過した後の螺進退規制突起38bは、通過前の螺進退規制突起38aに対して雌ねじ部33の半径方向内側に微動して、螺退規制段差部18に引っ掛かることで、当該位置からの第2保持体S2 の螺退は、不能であることが分かる。ここで、第2保持体S2 の螺進退規制突起38及び第1保持体S1 の螺退規制段差部18は、それぞれ「特許請求の範囲」における「当接部」及び「被当接部」に対応している。
【0031】
そして、図9に示されるように、図6に示される状態から、固定状態の第1保持体S1 に対して第2保持体S2 が360°だけ螺回動して螺進すると、第1保持体S1 の螺進規制突起19の側面に、第2保持体S2 の螺進退規制突起38の側面が当接して、螺進方向への螺回動が不能となることで、互いに螺着されている第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は、雄ねじ部2又は雌ねじ部33の1ピッチ分だけ互いに近接して、最接近状態となり、端面間間隔D4 は、前記端面間間隔D1 (=4.0mm)から、雄ねじ部2又は雌ねじ部33のピッチ(=1.8mm)を減じた2.2mmである。
【0032】
このため、図10(b)に示されるように、第2保持体S2 の螺進退規制突起38が、第1保持体S1 の螺退規制段差部18を通過して、当該螺進退規制突起38が近似円環状螺退防止部17の半円形部K1 の領域に配置された後においては、第1保持体S1 の螺退規制段差部18の存在により、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の相対的な螺退が防止されて、当該第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は、最接近位置を基準にして、前記近似円環状螺退防止部17の半円形部K1 の範囲内においてのみ、螺進及び螺退の両方向(正逆両方向)への螺回動が可能となって、即ち、中心角が約180°の範囲内においてのみ正逆両方向への螺回動が可能となる。従って、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は、最接近位置まで螺進された後においては、当該最接近位置を基準にして約180°の範囲内が「自由螺回動範囲」となって、当該「自由螺回動範囲」においてのみ、正逆両方向の螺回動が可能であって、最接近位置から約180°を超える螺退は不能となる。よって、第2保持体S2 の螺進退規制突起38が第1保持体S1 の螺退規制段差部18に当接する位置が、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の最大螺退位置、即ち、「臨界配置位置」となる。このため、一旦、互いに螺着された第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は、自由な螺退が防止されると共に、取扱い中において各保持体S1 ,S2 が分離されることもない。
【0033】
よって、図2(a)及び図9で示されるように、螺着された第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が最接近して、第1及び第2の各閉鎖体21が完全重合した状態では、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各部分雌ねじ部9の第1及び第2の各螺心C11,C12は、互いに平行である。この状態から、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は、最大で約180°だけ螺退方向に螺回動可能であり、図2(b)で示される状態は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が、最接近状態から螺退方向に30°だけ螺回動した状態であって、各保持体S1 ,S2 の各部分雌ねじ部9の螺心C11,C12は、雄ねじ部2の第1螺心C1 及び雌ねじ部33の第2螺心C2 の方向に沿って所定間隔をおいて、側面視において30°で交差しているが、図12及び図13に示されるように、任意の角度で交差可能である。そして、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各部分雌ねじ部9の第1及び第2の各螺心C11,C12の基本的な交差角度(15°,30°,45°,60°,90°)は、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 に設けられた第1及び第2の各交差角度確認突起13,37の合致により確認できる。
【0034】
次に、図14図17を参照して、天井壁Wから吊り下げられた吊りボルト軸B1 と振止めボルト軸B2 との交差部を前記ボルト軸連結具Aで連結する順序について説明する。図14及び図15に示されるように、吊りボルト軸B1 及び振止めボルト軸B2 は、水平方向に沿って所定間隔をおいて配置されて、各ボルト軸B1 ,B2 の上端部は、天井壁Wに対して当該天井壁Wに固定されたボルト軸端連結体51を介して全方向に回動可能に連結されている。即ち、各ボルト軸B1 ,B2 の上端部は、ボルト軸端連結体51のフレーム52の内部に全方向に回動可能に支持された球状雌ねじ体53に連結されている。吊りボルト軸B1 の下端部には、ブラケット54を介して管体Pが水平となって吊下げ支持されている。
【0035】
まず、図15に示されるように、垂直配置される吊りボルト軸B1 と傾斜配置される振止めボルト軸B2 の交差予定位置、及び交差角度β(図示例では、45°)は、予め分かっているので、ボルト軸連結具Aの第1及び第2の各保持体S1 ,S2 を相対的に螺回動させて、各保持体S1 ,S2 の各部分雌ねじ部9の第1及び第2の各螺心C11,C12の交差角度が、各ボルト軸B1 ,B2 の交差角度と同一角度となるように、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 を前記「自由螺回動範囲」において螺回動させる。その後に、ボルト軸連結具Aの第2保持体S2 のボルト軸挿入開口6を通して、内部の部分雌ねじ部9に振止めボルト軸B2 の交差予定部を配置させると、当該部分雌ねじ部9と振止めボルト軸B2 の雄ねじ部とが、当該部分雌ねじ部9の全長に亘って半周分だけ部分螺合されると共に、振止めボルト軸B2 の雄ねじ部が、第1保持体S1 に形成された各被喰込み突起11に喰い込むことで、振止めボルト軸B2 の交差予定部にボルト軸連結具Aが仮固定される。
【0036】
ここで、ボルト軸連結具Aは、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が前記「自由螺回動範囲」においてのみ正逆両方向に螺回動可能なように螺着された状態で、作業現場に搬入され、前記螺回動操作時において、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は、最大螺退位置を超えて螺退することは不能であるので、現場での螺回動操作が、仮に乱暴又は粗雑であっても、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 は、第1保持体S1 の螺退規制段差部18に対して第2保持体S2 の螺進退規制突起38が当接することで、最大螺退位置を超えて螺退しないので、第1保持体S1 の雄ねじ部2と第2保持体S2 の雌ねじ部33とは、最大の螺合条数が必ず確保されるので、安全に使用できる。
【0037】
次に、図16に示されるように、垂直配置されている吊りボルト軸B1 に対して振止めボルト軸B2 を、上端部のボルト軸端連結体51に支持された部分を中心にして吊りボルト軸B1 の側に回動させると、ボルト軸連結具Aの第1保持体S1 の部分雌ねじ部9の第1螺心C11は、垂直に配置されて、垂直配置されている吊りボルト軸B1 は、当該第1保持体S1 のボルト軸挿入開口6に臨む位置に配置される。この状態で、振止めボルト軸B2 に仮固定されているボルト軸連結具Aを、垂直配置されている吊りボルト軸B1 の側に僅かに水平移動させると、当該吊りボルト軸B1 の交差予定部は、ボルト軸連結具Aの第1保持体S1 のボルト軸挿入開口6を通して、その部分雌ねじ部9の部分に配置されて、垂直配置された吊りボルト軸B1 と傾斜配置された振止めボルト軸B2 との交差部は、ボルト軸連結具Aを介して連結される。最後に、図17に示されるように、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 に連結部23を介して破断可能に連結されている各閉鎖体21を破断して、各保持体S1 ,S2 の各ボルト軸挿入開口6を閉鎖すると、各ボルト軸B1 ,B2 の抜け出しが不能となって、各ボルト軸B1 ,B2 を交差部で連結する作業が終了する。
【0038】
ここで、前記閉鎖体21による第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各ボルト軸挿入開口6の閉鎖の手順は、図18図20に示されている。即ち、図18に示されるように、各保持体S1 ,S2 の各連結部23を破断して、それぞれ各保持体本体1,31から各閉鎖体21を分離し、図19に示されるように、各閉鎖体21の先端部の幅方向の両端部に形成された一対の弾性片30を内側に弾性変形させることで、保持体本体1,31に形成された閉鎖体配置溝12に差し込んで、把持突起28を把持する等して押圧して、そのまま当該閉鎖体21を閉鎖体配置溝12内でスライド挿入させると、一対の弾性片30の先端の各係止片24が閉鎖体配置溝12から抜け出ることで、各弾性片30は、原形状に復元して、保持体本体1,31の外面における各閉鎖体配置溝12の一方の開口に臨む部分に各係止片24が係止されると共に、保持体本体1,31の外面における各閉鎖体配置溝12の他方の開口は、キャップ部25で覆われて、保持体本体1,31の外面における閉鎖体配置溝12に臨む部分に、当該キャップ部25の各引掛り部26が引っ掛けられて、保持体本体1,31の部分雌ねじ部9に部分螺合した状態で、ボルト軸挿入溝7に一部が挿入されているボルト軸B1 ,B2 は、その外側に「嵌殺し構造」で配置された閉鎖体21により、抜け出しが防止される。この状態では、図20(b)に示されるように、閉鎖体本体22の内面に長手方向に沿って形成された一対の押圧突条27は、ボルト軸配置溝8に配置されているボルト軸B1 ,B2 の外周の雄ねじ部に押圧されることで、当該ボルト軸B1 ,B2 の保持具本体1,31の部分雌ねじ部9に配置された部分の雄ねじ部と、当該部分雌ねじ部9との部分螺合と協働して、当該ボルト軸B1 ,B2 が保持体本体1,31に対して軸方向にずれるのを防止している。
【0039】
上記のように、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の各閉鎖体21は、当該各閉鎖体21が必要となる直前までは、保持体本体1,31に連結部23を介して破断可能に連結されているので、各閉鎖体21の紛失の恐れがなくなると共に、必要な場合には、その場で破断して、即座に使用できるので、作業の能率も高められる。
【0040】
また、前記実施例における吊りボルト軸B1 と振止めボルト軸B2 との交差角度βは45°であり、当該交差角度が最も振止め効果が高いことは、知られている。例えば、建築設備耐震設計・施工指針(2014)では、前記交差角度βは、(45°±15°)を推奨している。
【0041】
互いに交差する2本のボルト軸B1 ,B2 の推奨される交差角度βは、(30°~60°)であり、2本のボルト軸B1 ,B2 の理論上の最大交差角は、90°であるのに、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が相対的に螺回動可能な範囲は、前記半円形部K1 の中心角である(約180°)である。このように、推奨される交差角度βに対して遥かに大きな螺回動角度を設定したのは、各ボルト軸B1 ,B2 の交差部における連結作業時において第1及び第2の各保持体S1 ,S2 の正逆両方向への螺回動操作に余裕を持たせるためである。従って、前記半円形部K1 の中心角は、最大1回転の範囲内で自由に選択できるが、螺退規制段差部18の段差寸法δを一定高さ以上に確保する観点からは、前記半円形部K1 の中心角は、270°程度が最大限度であると思われる。
【0042】
また、2本のボルト軸B1 ,B2 の理論上の交差角度βが(0°~90°)に対応して、第1及び第2の各保持体S1 ,S2 が相対的に正逆両方向に螺回動する範囲は、図9に示される最大螺進位置を基準にして、(0°~90°)の範囲であるので、実質的には、第1保持体S1 の雄ねじ部2と第2保持体S2 の雌ねじ部33とは、ほぼ全ねじ山が螺合していて、各保持体S1 ,S2 の螺着強度を最も高く保持した状態で、各保持体S1 ,S2 の各部分雌ねじ部9の第1及び第2の各螺心C11,C12の交差角度の変更を行っていて、各保持体S1 ,S2 の最大螺着強度の確保の面から見ると、第1保持体S1 の螺進規制突起19と、第2保持体S2 の螺進退規制突起38は、最適位置に配置されていることになる。
【0043】
また、本発明に係るボルト軸連結具の使用例は、上記したような、吊りボルト軸B1 と振止めボルト軸B2 の交差部の連結に限定されない。他の使用例としては、図21に示されるよう。に、フレーム枠Fを構成していて、アングル材から成る2本の横天井梁部材61に対して直方体状の被吊下げ物Gを吊り下げて配置する際に、垂直に吊り下げられた計4本の吊りボルト軸のB11の下端部が、当該被吊下げ物Gの対向側面の各ブラケット62に連結されることで、当該重量物は、フレーム枠Fの2本の天井梁部材61に対して吊り下げられるが、このままでは、当該重量物は、ほぼ任意の方向に振れて、吊下げ配置が不安定である。
【0044】
このため、計4本の吊りボルト軸B11で形成される計4箇所の方形状の各空間平面部に、当該各空間平面部の交差する2本の対角線方向に沿ってX字状(交差筋交い状)に2本の筋交いボルト軸B12を、それぞれ配置して補強する構造は知られている。当該補強構造において、特定の1つの前記空間平面部において、2本の筋交いボルト軸B12の交差部、及び当該各筋交いボルト軸B12の斜上下端部と、当該空間平面部の2つの垂直辺を構成する2本の前記吊りボルト軸B11の上下端部との計4箇所の交差部の総計5箇所の各交差部を、本発明に係るボルト軸連結具Aで連結する。残りの3つの各空間平面部も、2本の筋交いボルト軸B12と計5個のボルト軸連結具Aを用いて補強する。これにより、計8本の筋交いボルト軸B12と、計20個のボルト軸連結具Aを用いて、フレーム枠Fの2本の天井梁部材61から吊り下げられた4本の吊りボルト軸B11の下端部に被吊下げ物Gが横振れすることなく吊り下げられた構造が補強される。なお、図21において、63は、フレーム枠Fの縦天井梁部材を示す。
【0045】
また、2本のボルト軸B1 ,B2 の交差連結に関しては、天井壁Wから吊り下げられた吊りボルト軸B1 に対して水平配置された別のボルト軸B2 を直交させて交差連結させる使用例も存在する。更に、本発明のボルト軸連結具は、エアコン室内機の吊りボルト軸と、当該吊りボルト軸の振止めを行う振止めボルト軸との連結にも使用可能である。
【0046】
更に、上記実施例では、ボルト軸連結具Aを構成する第1及び第2の各保持体S1 ,S2 に、それぞれ閉鎖体21が分断可能に連結されているが、いずれか一方の保持体S1 (S2 )に、他方の保持体S2 (S1 )で使用される閉鎖体21を設けることで、1つの保持体S1 (S2 )に2つの閉鎖体21を分断可能に連結しておく構造も可能である。当該各保持体21の形状は同一であるので、1つの保持体S1 (S2 )に2つの閉鎖体21を連結しておくことが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
A:ボルト軸連結具
1,B11:吊りボルト軸(ボルト軸)
2 :振止めボルト軸(ボルト軸)
12 筋交いボルト軸(ボルト軸)
1 :雄ねじ部の第1螺心
2 :雌ねじ部の第2螺心
11:第1保持体の部分雌ねじ部の第1螺心
12:第1保持体の部分雌ねじ部の第2螺心
1 :半円形部(自由螺回動範囲)
2 :非半円形部
1 :第1保持体
2 :第2保持体
1:第1保持体の保持体本体 (保持部)
2:雄ねじ部
6:ボルト軸挿入開口(挿入開口部)
7:ボルト軸挿入溝
8:ボルト軸配置溝
9:部分雌ねじ部
12:閉鎖体配置溝
18:螺退規制段差部(被当接部)
19:螺進規制突起
21:閉鎖体
22:閉鎖体本体
31:第2保持体の保持体本体(保持部)
33:雌ねじ部
38:螺進退規制突起(当接部)
図1
図2
図3
図4-A】
図4-B】
図5-A】
図5-B】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21