(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】消音器の構成部材の製造方法と、消音器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F01N 1/02 20060101AFI20240115BHJP
F01N 1/04 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F01N1/02 K
F01N1/04 K
(21)【出願番号】P 2020197690
(22)【出願日】2020-11-29
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】五十川 康博
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027328(JP,A)
【文献】特開2009-197751(JP,A)
【文献】特開2002-155723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/02
F01N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の連通孔を穿設する第2パイプを形成し、
縮径部を少なくとも2個離間して有し、該縮径部間に、縮径部より大径な大径部を有するとともに、前記第2パイプを挿入可能な開口部を有するU字状部材を形成し、
前記第2パイプの軸方向の長さを、前記U字状部材の軸方向の長さより短くし、
前記第2パイプを、前記開口部よりU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するようにして収容し、
その後、前記開口部が閉塞する方向に、U字状部材を変形させて、少なくとも2個の相互に離間する細径部と、該細径部の相互間に該細径部より径方向の外側に膨らむ膨出部を有する第1パイプを形成するとともに、
前記第2パイプの両端部の各外面と、前記細径部の内面を嵌合させ、前記膨出部の内側に前記第2パイプが位置するようにしたことを特徴とする
消音器の構成部材の製造方法。
【請求項2】
前記第2パイプの外周に、前記連通孔を覆うように吸音材を巻設し、
その後、前記開口部より、前記第2パイプをU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するように配設したことを特徴とする請求項
1記載の
消音器の構成部材の製造方法。
【請求項3】
一つ以上の連通孔を穿設する第2パイプを形成し、
縮径部を少なくとも2個離間して有し、該縮径部間に、縮径部より大径な大径部を有するとともに、前記第2パイプを挿入可能な開口部を有するU字状部材を形成し、
前記第2パイプの軸方向の長さを、前記U字状部材の軸方向の長さより短くし、
前記第2パイプを、前記開口部よりU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するようにして収容し、
その後、前記開口部が閉塞する方向に、U字状部材を変形させて、少なくとも2個の相互に離間する細径部と、該細径部の相互間に該細径部より径方向の外側に膨らむ膨出部を有する第1パイプを形成するとともに、
前記第2パイプの両端部の各外面と、前記細径部の内面を嵌合させ、前記膨出部の内側に前記第2パイプが位置するようにしたことを特徴とする
消音器の製造方法。
【請求項4】
前記第2パイプの外周に、前記連通孔を覆うように吸音材を巻設し、
その後、前記開口部より、前記第2パイプをU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するように配設したことを特徴とする請求項
3記載の
消音器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音器の構成部材の製造方法と、消音器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、内燃機関から排出された排気ガスを車両外へと導く排気管を備えており、排気管には消音器が介装されている。
【0003】
従来、この消音器の消音効果を高めるために、消音器内に位置するパイプの外側にカバーパイプを設け、カバーパイプが位置するパイプの部分に複数の連通孔を穿設し、パイプとカバーパイプとの間の空間に吸音材を充填することが行われている(特許文献1,2参照)。
【0004】
この消音器は、パイプの外周に、パイプに形成した連通孔を覆うようにグラスウール等の吸音材を巻き付けた後に、外嵌したカバーパイプの両端部をプレス型により縮径して、パイプに当接させた後に、スポット溶接等の接合手段によりカバーパイプをパイプに固定することで形成されている。
【0005】
しかし、カバーパイプを縮径型で縮径するため、縮径したカバーパイプとパイプとの間に隙間が生じる恐れがある。この生じた隙間から、消音器内に貯留している凝縮水が侵入し、吸音材が充填された空間の有効体積が減少したり、吸音材が浸潤したりすることで、消音性能が低下する虞がある。
【0006】
この対策として、パイプにおける消音器のハウジングと嵌合する嵌合端部を、嵌合端部以外の部分よりも大径に形成し、パイプに連通孔を形成するとともにその外周に空間部を介してカバーパイプを配置し、カバーパイプの一端を嵌合端部に嵌合することが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6674673号公報
【文献】特開平6-212969号公報
【文献】特開2004-60523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献3記載の消音器では、カバーパイプ全体の長さと直径が大きくなり、消音器における共鳴周波数の調整が困難であるとともに、カバーパイプや吸音材を配置する際の制限が大きくなり、レイアウトの自由度が狭くなるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、パイプの外側に別のパイプを設け、両パイプ間に空間を形成した消音器又は消音器の構成部材において、パイプ間に形成された空間に凝縮水が入ることで消音性能が低下することを防ぐとともに、レイアウトの自由度を高めることができる消音器の構成部材の製造方法と、消音器の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明は、一つ以上の連通孔を穿設する第2パイプを形成し、
縮径部を少なくとも2個離間して有し、該縮径部間に、縮径部より大径な大径部を有するとともに、前記第2パイプを挿入可能な開口部を有するU字状部材を形成し、
前記第2パイプの軸方向の長さを、前記U字状部材の軸方向の長さより短くし、
前記第2パイプを、前記開口部よりU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するようにして収容し、
その後、前記開口部が閉塞する方向に、U字状部材を変形させて、少なくとも2個の相互に離間する細径部と、該細径部の相互間に該細径部より径方向の外側に膨らむ膨出部を有する第1パイプを形成するとともに、
前記第2パイプの両端部の各外面と、前記細径部の内面を嵌合させ、前記膨出部の内側に前記第2パイプが位置するようにしたことを特徴とする消音器の構成部材の製造方法である。
【0011】
前記第2パイプの外周に、前記連通孔を覆うように吸音材を巻設し、
その後、前記開口部より、前記第2パイプをU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するように配設してもよい。
【0014】
一つ以上の連通孔を穿設する第2パイプを形成し、
縮径部を少なくとも2個離間して有し、該縮径部間に、縮径部より大径な大径部を有するとともに、前記第2パイプを挿入可能な開口部を有するU字状部材を形成し、
前記第2パイプの軸方向の長さを、前記U字状部材の軸方向の長さより短くし、
前記第2パイプを、前記開口部よりU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するようにして収容し、
その後、前記開口部が閉塞する方向に、U字状部材を変形させて、少なくとも2個の相互に離間する細径部と、該細径部の相互間に該細径部より径方向の外側に膨らむ膨出部を有する第1パイプを形成するとともに、
前記第2パイプの両端部の各外面と、前記細径部の内面を嵌合させ、前記膨出部の内側に前記第2パイプが位置するようにしたことを特徴とする消音器の製造方法である。
【0015】
前記第2パイプの外周に、前記連通孔を覆うように吸音材を巻設し、
その後、前記開口部より、前記第2パイプをU字状部材の内部に、前記第2パイプが、2カ所の縮径部の内側に位置するように配設してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2個以上の細径部と膨出部を有する第1パイプを備え、第1パイプの内部に、第1パイプの軸方向の長さより、その軸方向の長さが短い第2パイプを設け、第2パイプの両端部の各外面と、前記細径部の内面を嵌合させて膨出部の内側に前記第2パイプが位置するように収容するようにしたことにより、第1パイプと第2パイプの間に水が浸入することを防ぎ、それによる消音性能の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1の消音器に用いる構成部材の斜視図。
【
図5】
図1の構成部材を消音器の部材として適用する例を説明するための図。
【
図6】
図1の構成部材の製造方法を説明するための図。
【
図7】本発明の実施例2の消音器に用いる構成部材の一例の縦断面図。
【
図8】本発明の実施例2の消音器に用いる構成部材の他例の縦断面図。
【
図9】本発明の実施例2の消音器に用いる構成部材の他例の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
図1は、本発明における実施例1の消音器を構成する消音器の構成部材1(以下、構成部材1という)の斜視図、
図2は
図1の軸芯を含む断面図(横断面図)、
図4は軸芯と直交する方向の断面図(縦断面図)を示す。
【0019】
構成部材1は、
図1~
図4に示すように、筒状の第1パイプ2を有し、第1パイプ2は、少なくとも、2個の細径部3,3を、軸方向(X-X方向)に相互に離間して有し、この細径部3,3間に、細径部3より径方向の外側に膨らむ膨出部4が形成されている。
【0020】
本実施例では、第1パイプ2の軸方向(X-X方向)の両端部に、夫々、円筒状の細径部3,3を、各1個、計2個設け、両端部に設けた夫々の細径部3,3の軸方向における内側端から、内側方向に向かって徐々に拡径する拡径部8,8を形成し、拡径部8,8の内側端間に拡径部8の最外径と同じで、かつ、細径部3の内径より大きな内径を有する円筒状の膨出部4を設けた。すなわち、膨出部4は、細径部より径方向の外側に膨らむように形成されている。細径部3と膨出部4と拡径部8は一体に形成されている。
【0021】
第1パイプ2の内部には、
図1~
図4に示すように、筒状の第2パイプ5が収容され、第2パイプ5における軸方向(X-X方向)の両端部の外面が、夫々、細径部3,3の内面に嵌合されて、膨出部4の内側に第2パイプ5が位置し、膨出部4の部分は、第1パイプ2と第2パイプ5により2重パイプで構成されている。第2パイプ5における膨出部4の内側に位置する部分には、一つ以上の連通孔6が穿設されている。
【0022】
第1パイプ2の膨出部4と、第2パイプ5の軸方向(X-X方向)と直交する方向の縦断面形状の外形は、
図4に示すように、夫々、円状に形成され、第1パイプ2の膨出部4の軸芯と第2パイプ5の軸芯は、ほぼ同じになるように設定されている。
【0023】
第1パイプ2の膨出部4と、第2パイプ5との間には空間7が形成され、第2パイプ5の連通孔6を通じて、第2パイプ5内と、空間7内とが連通している。
【0024】
空間7内には、グラスウール等の吸音材10が充填されている。なお、空間7内に吸音材10を設けなくてもよい。
【0025】
第2パイプ5の軸方向(X-X方向)の長さは、
図2に示すように、第1パイプ2の軸方向(X-X方向)の長さより短く設定され、第2パイプ5は全て、第1パイプ2の内部に位置し、第1パイプ2と第2パイプ5との間の間隙や重合端面は、第1パイプ2の外周には現れないため、第1パイプ2の外側から、空間7内に水が浸入することを防ぎ、水の侵入による消音性能の低下を防止できる。
【0026】
また、空間7の容量と空間7内に収容する吸音材10の量のみを変えることで、共鳴周波数のチューニングや、吸音材10による消音性能の調整を容易に行うことができる。
【0027】
構成部材1は、例えば、
図5に示す消音器20のケーシング21内に配置されるパイプ又はパイプの一部に適用することができ、そのインレットパイプ22、アウトレットパイプ23、ケーシング21内に配置されるパイプ25に適用することができる。
【0028】
次に、構成部材1の製造方法について説明する。
【0029】
予め、
図6(a)に示すように、連通孔6を穿設した筒状の第2パイプ5を形成する。
【0030】
また、
図6(b)に示すように、縦断面形状がU字状の縮径部31を相互に離間して少なくとも2個有し、離間した縮径部31,31間に縮径部31より径方向外側に膨出し、かつ、縦断面形状がU字状の大径部33を有するU字状部材30を形成する。縮径部31と大径部33の間には、縮径部31から大径部33に向かう程、徐々に径方向外側に膨出する拡径部34が形成されている。本実施例においては、U字状部材30の両端部に夫々1個の縮径部31、計2個の縮径部31を設けた。
【0031】
U字状部材30の縦断面における両端部は離間し、第2パイプ5が挿入可能な開口部36が形成されている。第2パイプ5の軸方向の長さは、U字状部材30の軸方向の長さより短く設定されている。
【0032】
次に、
図6(c)に示すように、第2パイプ5の全ての連通孔6を覆うように、第2パイプ5の外周に吸音材10を所定量巻設する。なお、第2パイプ5の外周に吸音材10を巻設しなくてもよい。
【0033】
次に、
図6(d)に示すように、第2パイプ5を、開口部36よりU字状部材30の内部に挿入した後に、
図6(e)に示すように、第2パイプ5の両端部が、夫々縮径部31の内側に位置するように、第2パイプ5をU字状部材30の内部に収容する。
【0034】
次に、U字状部材30の開口部36が閉塞する方向に、U字状部材30全体を変形させて、その縦断面形状がO状となるように形成した後に、当接した端部同士を溶接により接合する。これにより、縮径部31は細径部3に変形形成されるとともに、大径部33は膨出部4に変形形成され、少なくとも2個の細径部3,3を離間して形成するとともに、細径部3,3間に、膨出部4を形成して、第1パイプ2を形成する。また、第2パイプ5の両端部の各外面と、細径部3の内面を嵌合させて膨出部4の内側に第2パイプ5が位置するようにする。
【0035】
次に、スポット溶接により、第1パイプ2と第2パイプ5を複数個所接合し、相互に固定して、
図6(f)に示すように、構成部材1となる。
【0036】
なお、構成部材1の製造方法は、上記に記載した製造方法以外にも、任意の製造方法を用いて形成することができる。
[実施例2]
上記実施例1においては、第1パイプ2の膨出部4の軸方向と直交する方向の縦断面の外形を、円状に形成したが、消音器内の周辺部品の形状に応じて、任意の形状に形成することができる。
【0037】
膨出部4の縦断面の外形を、例えば、
図7に示すような楕円形状、
図8に示すような六角形状等の多角形形状、
図9に示すような卵型状に形成してもよい。
【0038】
膨出部4の縦断面の外形に応じて、U字状部材の形状を変更してもよいし、膨出部4の縦断面の外形に応じて、任意の成形工程を用いることで、第1パイプ2の膨出部4の縦断面の外形を、任意の形状に形成することができる。
【0039】
それ以外の構造は、前記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0040】
実施例2においても前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0041】
本実施例2においては、更に、消音器内の周辺部品の形状に応じて、第1パイプ2の膨出部4の縦断面形状の外形を変化させることで、消音器内の周辺部品との干渉を避けるとともに、膨出部4の空間7における消音容量を容易に確保することができる。
[実施例3]
上記実施例では、消音器20のケーシング21内に配置されるパイプに適用したが、構成部材1のみで消音器を構成するようにしてもよい。
【0042】
それ以外の構造は、前記実施例1,2と同様であるのでその説明を省略する。
【0043】
実施例3においても前記実施例1,2と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0044】
1 消音器の構成部材
2 第1パイプ
3 細径部
4 膨出部
5 第2パイプ
6 連通孔
10 吸音材
20 消音器
30 U字状部材
31 縮径部
33 大径部
36 開口部