(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】設備管理装置および設備管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240115BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240115BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20240115BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240115BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q50/10
G06Q10/06
G05B19/418 Z
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2020201142
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】尾島 正禎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0050221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0188434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0059492(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0073619(US,A1)
【文献】特表2020-521200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理装置であって、
前記設備の状態を計測した情報に基づき該設備の異常を検知する異常検知部と、
前記異常の検知結果を入力とし前記設備の保全を管理し保全コストの算出と保全計画を立案する保全管理部
であって、前回の保全作業からの経過時間と保全コストとの関係を示す情報を算出する前記保全管理部と、
前記異常の検知結果を入力とし前記設備の運用を管理し運用計画を立案する運用管理部と、
前記異常の検知結果から前記設備の消費エネルギーの変化を推定する消費エネルギー変化推定部と、
前記推定した消費エネルギーの変化を入力とし前記設備の消費エネルギーを管理しエネルギーコストを算出
し、前記推定した消費エネルギーの変化を入力とし前記設備の消費エネルギー量が消費エネルギー上限値を超えるかを推定するエネルギー管理部
であって、前回の保全作業からの経過時間と前記推定した消費エネルギーの変化を反映した消費エネルギー増加コストとの関係を示す情報を算出する前記エネルギー管理部と、
前記
保全管理部
によって算出され
た前記前回の保全作業からの経過時間と保全コストとの関係を示す情報及び前記エネルギー管理部によって算出された前記前回の保全作業からの経過時間と前記推定した消費エネルギーの変化を反映した消費エネルギー増加コストとの関係を示す情報に基づいて保全タイミングを変えた場合の全体のコストを比較するコスト比較部を備え、
前記保全管理部は、前記コスト比較部の結果に基づき、前記全体のコストを修正前より抑制するように前記保全タイミングを変えることで前記保全計画を修正することにより、前記保全計画の見直しを行い、
前記運用管理部は、前記エネルギー管理部によって、前記設備の消費エネルギー量が前記消費エネルギー上限値を超えると推定した場合、前記設備の稼働率が修正前より小さくなるように前記運用計画を修正することにより、前記運用計画の見直しを行うことを特徴とする設備管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の設備管理装置であって、
前記異常の検知履歴と前記消費エネルギーの履歴から異常の検知結果が消費エネルギーに与える影響をモデル化する消費エネルギー変化モデルを作成する消費エネルギー変化モデル作成部を備え、
前記消費エネルギー変化推定部は、前記異常の検知結果と前記消費エネルギー変化モデルから前記設備の消費エネルギーの変化を推定することを特徴とする設備管理装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の設備管理装置であって、
前記消費エネルギー変化モデル作成部は、前記異常の検知履歴と前記消費エネルギーの履歴を複数の設備運用者から取得し、それらの履歴から前記消費エネルギー変化モデルを作成することを特徴とする設備管理装置。
【請求項4】
請求項1から
3の何れか1項に記載の設備管理装置において、
前記設備の状態を計測した情報は電流センサを用いて計測した情報であって、
前記異常検知部は、基本波周波数の電流強度、電流実効値、直流電流平均値のうちの少なくとも一つを特徴量として算出する特徴量算出部と、
前記設備が正常な場合の特徴量のモデルを生成する正常モデル作成部と、
前記算出された特徴量と前記正常な場合の特徴量のモデルと比較し異常度を出力する異常分析部を有することを特徴とする設備管理装置。
【請求項5】
設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理方法であって、
前記設備の状態を計測した情報に基づき該設備の異常を検知し、
前記異常の検知結果を入力とし前記設備の保全を管理し保全コストの算出と保全計画を立案し、
前回の保全作業からの経過時間と保全コストとの関係を示す情報を算出し、
前記異常の検知結果を入力とし前記設備の運用を管理し運用計画を立案し、
前記異常の検知結果から前記設備の消費エネルギーの変化を推定し、
前記推定した消費エネルギーの変化を入力とし前記設備の消費エネルギーを管理しエネルギーコストを算出し、
前記推定した消費エネルギーの変化を入力とし前記設備の消費エネルギー量が消費エネルギー上限値を超えるかを推定し、前回の保全作業からの経過時間と前記推定した消費エネルギーの変化を反映した消費エネルギー増加コストとの関係を示す情報を算出し、
前記前回の保全作業からの経過時間と保全コストとの関係を示す情報及び前記前回の保全作業からの経過時間と前記推定した消費エネルギーの変化を反映した消費エネルギー増加コストとの関係を示す情報に基づいて保全タイミングを変えた場合の全体のコストを比較し、
該比較結果に基づき
、前記全体のコストを修正前より抑制するように前記保全タイミングを変えることで前記保全計画を修正することにより、前記保全計画の見直しを行い、
前記設備の消費エネルギー量が前記消費エネルギー上限値を超えると推定した場合、前記設備の稼働率が修正前より小さくなるように前記運用計画を修正することにより、前記運用計画の見直しを行うことを特徴とする設備管理方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の設備管理方法であって、
前記異常の検知履歴と前記消費エネルギーの履歴から異常の検知結果が消費エネルギーに与える影響をモデル化する消費エネルギー変化モデルを作成し、
前記異常の検知結果と前記消費エネルギー変化モデルから前記設備の消費エネルギーの変化を推定することを特徴とする設備管理方法。
【請求項7】
請求項
6に記載の設備管理方法であって、
前記異常の検知履歴と前記消費エネルギーの履歴を複数の設備運用者から取得し、それらの履歴から前記消費エネルギー変化モデルを作成することを特徴とする設備管理方法。
【請求項8】
請求項
5から
7の何れか1項に記載の設備管理方法において、
前記設備の状態を計測した情報は電流センサを用いて計測した情報であって、
前記異常の検知は、
基本波周波数の電流強度、電流実効値、直流電流平均値のうちの少なくとも一つを特徴量として算出し、
前記設備が正常な場合の特徴量のモデルを生成し、
前記算出された特徴量と前記正常な場合の特徴量のモデルと比較し異常度を出力することを特徴とする設備管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造設備などの設備を管理する設備管理システムに係り、異常検知の結果に基づき設備の運用計画や保全計画などを修正する手法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造工場における生産ラインの機器管理において、生産を継続するために適切な保全をするだけでなく、省エネの観点でも機器を適切に管理する必要がある。
そのため、特許文献1のように過去の消費エネルギーの増加傾向や保全作業による消費エネルギーの増加の抑制傾向を加味して保全計画策定を支援する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、過去の消費エネルギーの増加傾向から保全計画を策定するため、発生頻度の少ない突発故障が起きた場合や複数の劣化モードがこれまでにない劣化状態の組合せになった場合に、統計的に十分な過去事例を参照することが出来ず、その影響を見積もれないために保全計画に反映することが困難となる課題があった。
【0005】
本発明の目的は、発生頻度の少ない突発故障が起きた際にも正確に消費エネルギーへの影響を算出することが出来、より低コストでの保全計画作成が可能となる設備管理装置および設備管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その一例を挙げるならば、設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理装置であって、設備の状態を計測した情報に基づき設備の異常を検知する異常検知部と、異常の検知結果を入力とし設備の保全を管理し保全コストの算出と保全計画を立案する保全管理部と、異常の検知結果を入力とし設備の運用を管理し運用計画を立案する運用管理部と、異常の検知結果から設備の消費エネルギーの変化を推定する消費エネルギー変化推定部と、推定した消費エネルギーの変化を入力とし設備の消費エネルギーを管理しエネルギーコストを算出するエネルギー管理部と、エネルギー管理部と保全管理部で算出されたコスト情報を比較するコスト比較部を備え、コスト比較部の結果に基づき保全管理部での保全計画および運用管理部での運用計画の見直しを行う構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より低コストでの保全計画作成が可能となる設備管理装置および設備管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1における設備管理システムの機能構成図である。
【
図2】実施例1における設備管理システムのハードウェアイメージの構成図である。
【
図3】実施例1における保全管理部の機能構成図である。
【
図4】実施例1における運用管理部の機能構成図である。
【
図5】実施例1における異常度検知結果と消費エネルギー変化の関係説明図である。
【
図6】実施例1におけるエネルギー管理部の機能構成図である。
【
図7】実施例1における保全コストと消費エネルギー増加コストとの関係説明図である。
【
図8】実施例2における設備管理装置の機能構成図である。
【
図9】実施例2における消費エネルギー上限値を加味した稼働率抑制の説明図である。
【
図10】実施例3における設備管理装置の機能構成図である。
【
図11】実施例3における消費エネルギー変化の推定の説明図である。
【
図12】実施例4における消費エネルギー変化モデル作成部の機能構成図である。
【
図13】実施例5における状態計測部と異常検知部の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施例における製造設備などの設備を管理する設備管理システムの機能構成図である。
図1において、設備管理システムは、状態計測部101とネットワーク150と設備管理装置100で構成される。
【0011】
状態計測部101は、例えば工場内の空調ファンや製造設備であるモータ等の産業機器に接続されており、産業機器の状態を電流センサや振動センサ、騒音計などの各種センサを用いて計測したり、産業機器の制御装置内の信号から状態を計測する。
【0012】
設備管理装置100は、状態計測部101で計測した結果をネットワーク150を介して受信する。
【0013】
設備管理装置100は、異常検知部102と保全管理部103と運用管理部104と消費エネルギー変化推定部106とエネルギー管理部107とコスト比較部108を有する。
【0014】
なお、設備管理装置100のハードウェアイメージを
図2に示す。
図2において、設備管理装置100は、一般的な情報処理装置である、処理装置(CPU)201と記憶装置(メモリ)202と表示装置203と入出力インターフェース(I/F)204とを有する装置によって実現される。すなわち、異常検知部102と保全管理部103と運用管理部104と消費エネルギー変化推定部106とエネルギー管理部107とコスト比較部108の各処理は、メモリ202に格納されたそれらを処理するプログラム及びデータに基づいてCPU201がソフトウェア処理することにより実行される。なお、入出力I/Fを介してネットワーク150と接続され、状態計測部101で計測した結果を得る。また、表示装置203により、後述する立案した保全計画や運用計画を表示する。
【0015】
図1において、異常検知部102は、状態計測部101で計測した結果を用いて、産業機器の故障の兆候や正常とは異なる挙動を検知する。通常、故障の兆候となるような異常が検知された場合、検知された情報は保全管理部103や運用管理部104に送付される。
【0016】
図3は、本実施例における保全管理部103の機能構成図である。
図3において、保全管理部103では、データベースである保全設備情報301や保全作業項目302の情報に基づき保全計画部306で保全計画を立案し、保全計画と保全作業コスト303や部品交換コスト304などの情報から保全コスト推定部305で保全コストを推定する。
【0017】
図4は、本実施例における運用管理部104の機能構成図である。
図4において、運用管理部104では、いつまでにいくつ必要か等の生産計画401に対応するための、設備をいつ動かすのか等の運用計画を運用計画部402で立案する。
【0018】
このような保全管理部103と運用管理部104に異常検知の結果が送付されると、故障を未然に防ぐために運用の停止や保全作業の修正が行われる。
【0019】
ここで、状態計測をしている産業機器が消費エネルギーの大きな機器、例えばファンやポンプ、ヒータなどであった場合、異常が検知されたあとにそれらの消費エネルギーが通常よりも増加してしまうことがある。
図5に異常度検知結果と消費エネルギー変化の例を示す。
図5においては、ある産業機器に関して、異常検知部102において劣化A(実線)と劣化B(破線)の2つの劣化に関して異常度分析を行っている。異常度分析とは、状態監視結果の正常状態からの逸脱を異常度として検出するもので、異常度がある閾値を超えたタイミングで異常が検知されたとするものである。
図5の上段において、劣化Aが劣化Bよりも早く検知されており、最終的には劣化Bの異常度が劣化Aを上回っている。この時、異常度分析に用いる分析モデルの一部などを活用して、消費エネルギーが正常状態と比較してどのように変化するかを算出することができる。
図5の下段にその例を示す。上段の異常検知タイミング移行において、それぞれの劣化に対応する消費エネルギー変化率が上昇し、機器の劣化により消費エネルギーが増加傾向にあることが分かる。ただし、異常度の増加傾向と消費エネルギーの増加傾向は必ずしも一致するものではない。このように消費エネルギーが通常よりも増加している状態で通常の保全作業時期まで運転を継続したとすると、通常よりも多くのエネルギーコストが必要となる。
【0020】
このような消費エネルギー変化傾向の推定を消費エネルギー変化推定部106で行う。消費エネルギー変化推定部106は、推定した消費エネルギー変化傾向をエネルギー管理部107に送付する。
【0021】
図6は、本実施例におけるエネルギー管理部107の機能構成図である。
図6において、エネルギー管理部107はエネルギー単価情報601を有しており、運用管理部104から送付された運用計画に基づきエネルギー消費量を推定するエネルギー消費推定部602を有している。そして、これらの情報から消費エネルギーコストを推定するエネルギーコスト推定部603を有する。このようなエネルギー管理部107に、異常検知後の消費エネルギー増加傾向の情報が送付された場合、増加した消費エネルギーに対応するコスト増加を推定することができる。なお、消費エネルギー制限値604については後述する。
【0022】
図7は、本実施例における保全コストと消費エネルギー増加コストとの関係を説明する図である。
図7において、横軸が前回の保全作業による部品の交換等からの経過時間、縦軸が保全コストと消費エネルギー増加コストを示し、右下がりのグラフ10が保全コストを示し、右上がりのグラフ21、22が消費エネルギー増加コストを示している。また、右上がりのグラフにおいて、異常検知した場合の消費エネルギー増加コストを実線のグラフ21、異常検知されない場合の消費エネルギー増加コストを破線のグラフ22で示している。
【0023】
図7に示すように、前回の保全作業からの経過時間が長くなるにつれてグラフ21、22に示すように消費エネルギー増加コストの影響は大きくなると考えられる。一方、保全作業が遅くなるとライフサイクル全体で見た保全作業回数が減るためグラフ10に示すように保全コストが減少する。そのため、これらのバランスにより最適な保全タイミングを導出することが可能となる。例えば、異常が検知されない場合の最適保全計画タイミングはグラフ10とグラフ22の交点であるのに対して、異常が検知されて消費エネルギーが増加した場合は、その修正後の最適保全計画タイミングはグラフ10とグラフ21の交点となり、その最適時期が短くなり、保全計画を前倒しに修正することで全体のコストを抑制することが出来る。
【0024】
このようなコスト比較をコスト比較部108で行う。ただし、異常検知の結果、消費エネルギーが低下する場合もあり、その場合は故障に至らない限り保全計画を後ろ倒しに修正する場合もある。コスト比較部108の出力を受けて、保全管理部103での保全計画および運用管理部104での運用計画の見直しが行われる。
【0025】
このように、本実施例によれば、設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理装置であって、設備の状態を計測した情報に基づき設備の異常を検知する異常検知部と、異常の検知結果を入力とし設備の保全を管理し保全コストの算出と保全計画を立案する保全管理部と、異常の検知結果を入力とし設備の運用を管理し運用計画を立案する運用管理部と、異常の検知結果から設備の消費エネルギーの変化を推定する消費エネルギー変化推定部と、推定した消費エネルギーの変化を入力とし設備の消費エネルギーを管理しエネルギーコストを算出するエネルギー管理部と、エネルギー管理部と保全管理部で算出されたコスト情報を比較するコスト比較部を備え、コスト比較部の結果に基づき保全管理部での保全計画および運用管理部での運用計画の見直しを行う設備管理装置を構成できる。
【0026】
また、設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理方法であって、設備の状態を計測した情報に基づき設備の異常を検知し、異常の検知結果を入力とし設備の保全を管理し保全コストの算出と保全計画を立案し、異常の検知結果を入力とし設備の運用を管理し運用計画を立案し、異常の検知結果から設備の消費エネルギーの変化を推定し、推定した消費エネルギーの変化を入力とし設備の消費エネルギーを管理しエネルギーコストを算出し、保全コストとエネルギーコストを比較し、比較結果に基づき保全計画および運用計画の見直しを行う設備管理方法を構成できる。
【0027】
以上のように本実施例によれば、発生頻度の少ない突発故障が起きた際にも正確に消費エネルギーへの影響を算出することが出来、より低コストでの保全計画や運用計画の作成が可能となる。
【実施例2】
【0028】
図8は、本実施例における設備管理装置の機能構成図である。
図8において、
図1と同じ機能を有する構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図8において
図1と異なる点は、保全管理部103とコスト比較部108がなく、エネルギー管理部107の出力で運用管理部104を制御する点である。すなわち、エネルギー管理部107には、
図6の消費エネルギー制限値604に示すように、消費エネルギー削減や電力契約料抑制の観点から消費エネルギーの上限値が定められている場合がある。
【0029】
図9は、本実施例における消費エネルギー上限値を加味した稼働率抑制の説明図である。
図9に示すように、ある時刻で異常検知すると、その異常検知により消費エネルギーが増加すると推定され、エネルギー管理部107で推定された消費エネルギー推定量が消費エネルギー上限値を超えると推定された場合、運用管理部104にその情報を送付し装置の稼働率を抑制するように運用計画を修正する。これにより、実際の消費エネルギーは抑制した稼働率に対応して小さくなり、劣化により消費エネルギーが増加したとしても次の保全作業まで運用を継続することが可能となる。また、保全作業後には、消費エネルギーの増加がなくなるため、稼働率を正常に戻すことが出来る。
【0030】
なお、本実施例は、消費エネルギー上限値を加味した運用管理を特徴とするが、
図1における保全管理部103とコスト比較部108による保全管理と運用管理を併用してもよい。
【0031】
このように、本実施例によれば、設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理装置であって、設備の状態を計測した情報に基づき設備の異常を検知する異常検知部と、異常の検知結果を入力とし設備の運用を管理し運用計画を立案する運用管理部と、異常の検知結果から設備の消費エネルギーの変化を推定する消費エネルギー変化推定部と、推定した消費エネルギーの変化を入力とし設備の消費エネルギー量が消費エネルギー上限値を超えるかを推定するエネルギー管理部を備え、運用管理部は、エネルギー管理部が推定した結果に基づき運用計画の見直しを行う設備管理装置を構成できる。
【0032】
また、設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理方法であって、設備の状態を計測した情報に基づき設備の異常を検知し、異常の検知結果を入力とし設備の運用を管理し運用計画を立案し、異常の検知結果から設備の消費エネルギーの変化を推定し、推定した消費エネルギーの変化を入力とし設備の消費エネルギー量が消費エネルギー上限値を超えるかを判定し、判定した結果に基づき運用計画の見直しを行う設備管理方法を構成できる。
【実施例3】
【0033】
図10は、本実施例における設備管理装置100の機能構成図である。
図10において、
図1と同じ機能を有する構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図10において
図1と異なる点は、異常度履歴121と消費エネルギー履歴122と消費エネルギー変化モデル作成部123からなる消費エネルギー変化モデル作成装置120を有する点である。
【0034】
図10において、異常度履歴121は、過去の運用時における異常度検知結果の履歴を保存する。また、消費エネルギー履歴122は、過去の運用時における消費エネルギーの変化履歴を保存する。
【0035】
保存された消費エネルギー及び異常度の履歴の例を
図11に示す。
図11の上段に示すように、時刻の経過に伴い装置が劣化し消費エネルギーが増加していることが履歴として保存されている。この時、保全作業をすることで作業内容に対応する装置の劣化が回復し、消費エネルギーが低下している。また、
図11の中段に示すように、上段の消費エネルギーが観測された際の劣化A、劣化B二つの異常度検知結果の履歴を示す。時刻の経過に伴いそれぞれの劣化の異常度が増加しており、劣化に対応する保全作業を行った後に異常度が低下していることが分かる。このような二つの履歴から、
図10に示す消費エネルギー変化モデル作成部123において回帰分析などを用いて
図11下段に示すような、設備の異常度と設備の消費エネルギーの変化の関係性を示す、消費エネルギー変化の異常度依存性である消費エネルギー変化モデルを算出する。このようにして消費エネルギー変化モデルを算出することで、異常検知から直接消費エネルギー変化を求められない場合においても、機器の劣化と消費エネルギーの変化の関係性を評価することができる。また、この消費エネルギー変化モデルを用いることで、過去に起きたことがないような劣化の程度の組み合わせにおいても、消費エネルギー変化モデルと異常検知結果から正確に消費エネルギーの変化を推定することが可能となる。また、このようにして推定された消費エネルギー変化をエネルギー管理部107に送付することで、消費エネルギーコストを推定し、保全管理部103から推定された保全コストとコスト比較部108での比較結果に基づき保全計画を修正することで、全体のコストを削減することが出来る。
【実施例4】
【0036】
図12は、本実施例における消費エネルギー変化モデル作成装置120の機能構成図である。
図12において、
図10と同じ機能を有する構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図12は、
図10における消費エネルギー変化モデル作成装置120の変形例であって、本実施例における設備管理装置は、消費エネルギー変化モデル作成装置120以外は
図10と同じである。
図12において、
図10における消費エネルギー変化モデル作成装置120と異なる点は、異常度履歴121と消費エネルギー履歴122を複数有する点である。
【0037】
異常度履歴121と消費エネルギー履歴122から消費エネルギー変化モデルを算出する場合、これらの履歴が統計的に十分ある必要がある。特に、異常度履歴に関して、発生頻度の低い故障に関する劣化の場合、単一の運用者の情報では十分な履歴を得られない場合がある。この場合、設備管理システムの提供者が、同様のシステムを運用する複数の運用者から異常度履歴121と消費エネルギー履歴122を提供してもらい、設備管理システムの提供者が消費エネルギー変化モデルを消費エネルギー変化モデル作成部123で作成することで、個々の運用者では十分な履歴が得られない場合でも、高い精度で消費エネルギー変化モデルを作成することが出来る。
【0038】
なお、消費エネルギー変化モデル作成装置120を単独の装置として運用し、作成した消費エネルギー変化モデルを設備管理システムの運用者に送付し提供するシステムやビジネスモデルが構築できる。これにより、設備管理システムは、高い精度での消費エネルギー変化モデルを利用でき、正確に消費エネルギーの変化を推定することが可能となる。そして、保全コストと消費エネルギーコストの比較結果に基づき保全計画を修正することで、より全体のコストを削減することが可能となる。
【0039】
このように、本実施例によれば、設備の運用や保全の計画策定を支援する設備管理装置に用いる消費エネルギー変化モデル作成装置であって、消費エネルギー変化モデルは、設備の異常度と設備の消費エネルギーの変化の関係性を示すモデルであり、設備の異常の検知履歴と設備の消費エネルギーの変化履歴を複数の設備運用者から取得し、それらの履歴から消費エネルギー変化モデルを作成し、作成した消費エネルギー変化モデルを設備運用者に送付する消費エネルギー変化モデル作成装置を構成できる。
【実施例5】
【0040】
図13は、本実施例における状態計測部と異常検知部の機能構成図である。
図13において、状態計測部として電流を計測する電流計測部130を用いて、異常検知部102で電動機などの回転機を備えた産業機器の異常を検知する。異常検知部102は、特徴量算出部131、正常モデル作成部132、異常分析部133で構成される。
【0041】
特徴量算出部131は、電流計測の結果から算出した電流の基本波周波数強度や電流実効値、交流電流から算出した直流電流の平均値のうちどれか一つを特徴量として算出する。また、正常モデル作成部132は、設備が正常な場合の特徴量のモデルを生成する。そして、異常分析部133は、計測された特徴量と正常モデル作成部132で生成された正常な場合の特徴量のモデルと比較し、異常分析を行ない、異常度を出力する。
【0042】
このように、特徴量を用いることで、異常検知と同時に消費エネルギーの変化も推定することで出来るようになり、計測コストを抑えつつ精度の高い消費エネルギー変化の推定を行うことが出来る。
【0043】
以上実施例について説明したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に、他の実施例の構成を加えることも可能となる。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
100:設備管理装置、101:状態計測部、102:異常検知部、103:保全管理部、104:運用管理部、106:消費エネルギー変化推定部、107:エネルギー管理部、108:コスト比較部、120:消費エネルギー変化モデル作成装置、121:異常度履歴、122:消費エネルギー履歴、123:消費エネルギー変化モデル作成部、130:電流計測部、131:特徴量算出部、132:正常モデル作成部、133:異常分析部、150:ネットワーク