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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/12 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
B62D61/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020206232
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093124
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】溝口 祥輝
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-28971(JP,A)
【文献】特開2019-111986(JP,A)
【文献】特開2019-112048(JP,A)
【文献】特開2019-111984(JP,A)
【文献】独国実用新案第202019003735(DE,U1)
【文献】特開平9-142347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/10
B62D 61/12
B62D 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪と、
車体前側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第1モータと、
車体後側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御するモータ制御部と、を備え、
前記モータ制御部は、車速が所定車速未満である場合、前記第1モータ及び前記第2モータの両方を駆動し、
前記モータ制御部は、車速が前記所定車速以上である場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち一方の駆動を停止する制御である駆動停止制御を実行する作業車。
【請求項2】
車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪と、
車体前側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第1モータと、
車体後側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御するモータ制御部と、を備え、
前記モータ制御部は、車速が所定車速以上である場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち一方の駆動を停止する制御である駆動停止制御を実行し、
複数の前記走行車輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、
複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更可能な姿勢変更機構と、
前記姿勢変更機構の作動を制御することにより、各前記走行車輪の昇降を制御可能な昇降制御部と、を備え、
前記屈折リンク機構は、一端部が前記車両本体に横軸芯周りで回動自在に支持された第1リンクと、一端部が前記第1リンクの他端部に横軸芯周りで回動自在に枢支連結され且つ他端部に前記走行車輪が支持された第2リンクと、を有しており、
各前記屈折リンク機構において、前記第1リンクと前記第2リンクとの枢支連結箇所に、補助車輪が設けられており、
前記昇降制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータのうち前記駆動停止制御により駆動が停止された方に対応する前記走行車輪である停止対象車輪を、地面に対して上昇させる作業車。
【請求項3】
前記第2リンクにおける前記他端部は、前記第2リンクにおける前記一端部に対して、車体前後方向外側に位置しており、
前記昇降制御部は、前記第2リンクを、前記枢支連結箇所を中心に揺動させることにより、前記走行車輪の昇降を制御可能に構成されており、
前記昇降制御部は、車速が高いほど前記停止対象車輪の高さ位置が高くなるように、前記停止対象車輪の昇降を制御する請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記モータ制御部は、後進時に、前記第2モータの駆動を停止する制御である後輪停止制御を実行し、
前記昇降制御部は、後進時に、車体後側に位置する前記走行車輪を地面に対して上昇させる請求項2または3に記載の作業車。
【請求項5】
前記モータ制御部は、前記駆動停止制御において、前記第1モータ及び前記第2モータのうち走行方向前側の前記走行車輪を駆動するモータの駆動を停止するように構成されており、
前記昇降制御部は、地面に対して上昇させた前記停止対象車輪を、前記車両本体よりも走行方向前方側に配置する請求項2から4の何れか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記屈折リンク機構を縦軸芯周りに揺動させる旋回機構を備え、
前記昇降制御部は、前記停止対象車輪に対応する前記屈折リンク機構の姿勢を、当該屈折リンク機構に備えられる前記補助車輪が前記駆動停止制御の実行前よりも前記縦軸芯に近づくように制御する請求項2から4の何れか一項に記載の作業車。
【請求項7】
車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪と、
車体前側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第1モータと、
車体後側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御するモータ制御部と、を備え、
前記モータ制御部は、車速が所定車速以上である場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち一方の駆動を停止する制御である駆動停止制御を実行し、
前記第1モータ及び前記第2モータは油圧モータであり、
前記モータ制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータへの作動油の供給を制御することにより、前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御する作業車。
【請求項8】
前記モータ制御部は、前記駆動停止制御において、前記第1モータの駆動を停止する請求項1からの何れか一項に記載の作業車。
【請求項9】
前記モータ制御部は、前記駆動停止制御において、前記第1モータ及び前記第2モータのうち走行方向前側の前記走行車輪を駆動するモータの駆動を停止する請求項1からの何れか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪を備える作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車(特許文献1では「不整地移動装置」)では、四つの走行車輪(特許文献1では「車輪」)がそれぞれ、二つの関節を持ち屈伸操作可能に構成されたリンク機構を介して車両本体(特許文献1では「本体部」)に支持されている。このリンク機構には電動モータと減速機構等が内装されている。この電動モータの駆動力により、リンク機構が屈伸駆動可能である。
【0003】
特許文献1に記載の作業車におけるリンク機構は、第1リンク(特許文献1では「上リンク」)及び第2リンク(特許文献1では「下リンク」)を有している。第1リンクの一端部が車両本体に支持されている。第1リンクの他端部に、第2リンクの一端部が枢支連結されている。そして、第2リンクの他端部に、走行車輪が支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-142347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の作業車において、四つの走行車輪には、それぞれ、駆動モータが設けられている。そして、各走行車輪は、それぞれ、駆動モータによって駆動する。即ち、特許文献1に記載の作業車は、四輪駆動車である。
【0006】
そのため、特許文献1に記載の作業車は、不整地において安定的に走行しやすい。しかしながら、特許文献1に記載の作業車は、四輪駆動車であるため、二輪駆動車に比べて最高車速が低くなりがちである。
【0007】
本発明の目的は、不整地において安定的に走行しやすく、且つ、比較的高速での走行が可能な作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪と、車体前側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第1モータと、車体後側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、車速が所定車速未満である場合、前記第1モータ及び前記第2モータの両方を駆動し、前記モータ制御部は、車速が前記所定車速以上である場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち一方の駆動を停止する制御である駆動停止制御を実行することにある。
【0009】
本発明であれば、第1モータによって車体前側に位置する走行車輪が回転駆動される。また、第2モータによって車体後側に位置する走行車輪が回転駆動される。即ち、本発明であれば、前後輪駆動状態での走行が可能である。例えば、走行車輪の個数が四つである場合は、四輪駆動状態での走行が可能である。これにより、不整地において安定的に走行しやすい。
【0010】
しかも、本発明であれば、車速が所定車速以上である場合、第1モータ及び第2モータのうち一方の駆動が停止される。これにより、第1モータ及び第2モータのうち駆動している方(停止されていない方)へ、駆動エネルギの供給を集中させることができる。その結果、第1モータまたは第2モータを比較的高速で駆動させることができる。これにより、比較的高速での走行が可能となる。
【0011】
従って、本発明であれば、不整地において安定的に走行しやすく、且つ、比較的高速での走行が可能な作業車を実現できる。
【0012】
さらに、本発明による別の作業車の特徴は車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪と、車体前側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第1モータと、車体後側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、車速が所定車速以上である場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち一方の駆動を停止する制御である駆動停止制御を実行し、複数の前記走行車輪を各別に昇降自在に前記車両本体に支持する複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を各別に変更可能な姿勢変更機構と、前記姿勢変更機構の作動を制御することにより、各前記走行車輪の昇降を制御可能な昇降制御部と、を備え、前記屈折リンク機構は、一端部が前記車両本体に横軸芯周りで回動自在に支持された第1リンクと、一端部が前記第1リンクの他端部に横軸芯周りで回動自在に枢支連結され且つ他端部に前記走行車輪が支持された第2リンクと、を有しており、各前記屈折リンク機構において、前記第1リンクと前記第2リンクとの枢支連結箇所に、補助車輪が設けられており、前記昇降制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータのうち前記駆動停止制御により駆動が停止された方に対応する前記走行車輪である停止対象車輪を、地面に対して上昇させることにある。
【0013】
本発明であれば、第1モータによって車体前側に位置する走行車輪が回転駆動される。また、第2モータによって車体後側に位置する走行車輪が回転駆動される。即ち、本発明であれば、前後輪駆動状態での走行が可能である。例えば、走行車輪の個数が四つである場合は、四輪駆動状態での走行が可能である。これにより、不整地において安定的に走行しやすい。
しかも、本発明であれば、車速が所定車速以上である場合、第1モータ及び第2モータのうち一方の駆動が停止される。これにより、第1モータ及び第2モータのうち駆動している方(停止されていない方)へ、駆動エネルギの供給を集中させることができる。その結果、第1モータまたは第2モータを比較的高速で駆動させることができる。これにより、比較的高速での走行が可能となる。
従って、本発明であれば、不整地において安定的に走行しやすく、且つ、比較的高速での走行が可能な作業車を実現できる。
また、停止対象車輪が接地したままで走行する構成では、地面からの抵抗力が停止対象車輪に作用することとなる。その結果、最高車速が低くなりがちである。
【0014】
ここで、上記の構成によれば、停止対象車輪が地面から浮き上がった状態で走行することができる。これにより、地面からの抵抗力が停止対象車輪に作用することを回避できる。従って、上述のように最高車速が低くなってしまう事態を回避できる。また、停止対象車輪を地面から上昇させることにより、旋回性能を向上させることもできる。
【0015】
さらに、本発明において、前記第2リンクにおける前記他端部は、前記第2リンクにおける前記一端部に対して、車体前後方向外側に位置しており、前記昇降制御部は、前記第2リンクを、前記枢支連結箇所を中心に揺動させることにより、前記走行車輪の昇降を制御可能に構成されており、前記昇降制御部は、車速が高いほど前記停止対象車輪の高さ位置が高くなるように、前記停止対象車輪の昇降を制御すると好適である。
【0016】
この構成によれば、停止対象車輪の高さ位置が高くなるほど、停止対象車輪は、車体前後方向内側に移動することとなる。そして、停止対象車輪の位置が車体前後方向において内側であるほど、車体全体の重心は、車体前後方向において、駆動している方の走行車輪に近付くこととなる。
【0017】
例えば、停止対象車輪が車体前側に位置する走行車輪である場合、車体前側に位置する走行車輪の高さ位置が高くなるほど、この走行車輪は後側に移動することとなる。そして、この走行車輪の位置が後側であるほど、車体全体の重心は後側に移動する。つまり、車体全体の重心は、車体前後方向において、車体後側に位置する走行車輪に近付くこととなる。
【0018】
即ち、この構成によれば、車速が高いほど、車体全体の重心は、車体前後方向において、駆動している方の走行車輪に近付く。これにより、駆動している方の走行車輪のトラクション限界が上昇する。その結果、駆動している方の走行車輪が高速で駆動しても、スリップすることなく安定的に走行しやすい。
【0019】
さらに、本発明において、前記モータ制御部は、後進時に、前記第2モータの駆動を停止する制御である後輪停止制御を実行し、前記昇降制御部は、後進時に、車体後側に位置する前記走行車輪を地面に対して上昇させると好適である。
【0020】
この構成によれば、例えば後進による車庫入れ等の際に、車体後側に位置する走行車輪が地面に対して上昇する。これにより、車体後側に位置する走行車輪をバンパー(緩衝装置)として利用することが可能となる。
【0021】
さらに、本発明において、前記モータ制御部は、前記駆動停止制御において、前記第1モータの駆動を停止すると好適である。
【0022】
一般に、車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪を備える車両では、前輪駆動方式よりも後輪駆動方式の方が、高速走行を好適に行うことができる。
【0023】
ここで、上記の構成によれば、車速が所定車速以上である場合、車体前側に位置する走行車輪が停止し、車体後側に位置する走行車輪が回転駆動されることとなる。即ち、車速が所定車速以上である場合、後輪駆動方式となる。従って、上記の構成によれば、高速走行を好適に行うことが可能となる。
【0024】
さらに、本発明において、前記モータ制御部は、前記駆動停止制御において、前記第1モータ及び前記第2モータのうち走行方向前側の前記走行車輪を駆動するモータの駆動を停止させてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、車速が所定車速以上である場合、走行方向前側に位置する走行車輪が停止し、走行方向後側に位置する走行車輪が回転駆動されることとなる。即ち、車速が所定車速以上である場合、前進時には車体後側の走行車輪が回転駆動され且つ車体前側の走行車輪は駆動停止され、後進時には車体前側の走行車輪が回転駆動され且つ車体後側の走行車輪は駆動停止される。これにより、前進時及び後進時のいずれにおいても高速走行を好適に行うことが可能となる。
【0026】
さらに、本発明において、前記モータ制御部は、前記駆動停止制御において、前記第1モータ及び前記第2モータのうち走行方向前側の前記走行車輪を駆動するモータの駆動を停止するように構成されており、前記昇降制御部は、地面に対して上昇させた前記停止対象車輪を、前記車両本体よりも走行方向前方側に配置してもよい。
【0027】
上記の構成によれば、走行方向前側の走行車輪が車両本体よりも走行方向前方側に配置されるので、この走行車輪をバンパーとして好適に利用することができる。
【0028】
さらに、本発明において、前記屈折リンク機構を縦軸芯周りに揺動させる旋回機構を備え、前記昇降制御部は、前記停止対象車輪に対応する前記屈折リンク機構の姿勢を、当該屈折リンク機構に備えられる前記補助車輪が前記駆動停止制御の実行前よりも前記縦軸芯に近づくように制御する構成としてもよい。この構成によれば、旋回性能を向上させることができる。
【0029】
本発明による別の作業車の特徴は車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪と、車体前側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第1モータと、車体後側に位置する前記走行車輪を回転駆動する第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、車速が所定車速以上である場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち一方の駆動を停止する制御である駆動停止制御を実行し、前記第1モータ及び前記第2モータは油圧モータであり、前記モータ制御部は、前記第1モータ及び前記第2モータへの作動油の供給を制御することにより、前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御することにある。
【0030】
本発明であれば、第1モータによって車体前側に位置する走行車輪が回転駆動される。また、第2モータによって車体後側に位置する走行車輪が回転駆動される。即ち、本発明であれば、前後輪駆動状態での走行が可能である。例えば、走行車輪の個数が四つである場合は、四輪駆動状態での走行が可能である。これにより、不整地において安定的に走行しやすい。
しかも、本発明であれば、車速が所定車速以上である場合、第1モータ及び第2モータのうち一方の駆動が停止される。これにより、第1モータ及び第2モータのうち駆動している方(停止されていない方)へ、駆動エネルギの供給を集中させることができる。その結果、第1モータまたは第2モータを比較的高速で駆動させることができる。これにより、比較的高速での走行が可能となる。
従って、本発明であれば、不整地において安定的に走行しやすく、且つ、比較的高速での走行が可能な作業車を実現できる。
上記の構成によれば、車速が所定車速以上である場合、第1モータ及び第2モータのうち一方の駆動が停止される。これにより、第1モータ及び第2モータのうち駆動している方(停止されていない方)へ、作動油の供給を集中させることができる。その結果、作動油の流量を低減するとともに、第1モータまたは第2モータを比較的高速で駆動させることができる。これにより、比較的高速での走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】作業車の全体側面図である。
図2】作業車の全体平面図である。
図3】屈折リンク機構等の構成を示す平面図である。
図4】屈折リンク機構等の構成を示す側面図である。
図5】制御部に関する構成を示すブロック図である。
図6】四輪駆動状態で前進しているときの作業車を示す側面図である。
図7】駆動停止制御が実行された状態の作業車を示す側面図である。
図8】後輪停止制御が実行された状態の作業車を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明に係る作業車の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図1から図4図6から図8に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、図2図3に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図1図4図6から図8に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0033】
〔作業車の全体構成〕
図1及び図2に示すように、作業車は、車両本体1と、複数の走行車輪2と、を備えている。車両本体1は、箱状の外形を有している。複数の走行車輪2は、車両本体1の左右両側における前後それぞれに位置している。
【0034】
即ち、作業車は、車両本体1の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪2を備えている。
【0035】
尚、本実施形態において、走行車輪2の設けられる個数は四つである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、走行車輪2の設けられる個数は五つでも良いし、六つでも良い。
【0036】
また、作業車は、複数の屈折リンク機構10を備えている。各走行車輪2は、それぞれ、屈折リンク機構10を介して、各別に昇降自在に車両本体1に支持されている。
【0037】
即ち、作業車は、複数の走行車輪2を各別に昇降自在に車両本体1に支持する複数の屈折リンク機構10を備えている。
【0038】
図1から図3に示すように、各走行車輪2には、それぞれ、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94が取り付けられている。
【0039】
以下では、左前モータ91及び右前モータ92を総称して、第1油圧モータ9a(本発明に係る「第1モータ」に相当)という。また、左後モータ93及び右後モータ94を総称して、第2油圧モータ9b(本発明に係る「第2モータ」に相当)という。
【0040】
左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94は、何れも、油圧モータである。そして、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94の駆動力が各走行車輪2に伝達されることにより、各走行車輪2が駆動する。そして、各走行車輪2が駆動することにより、作業車は走行可能である。
【0041】
詳述すると、車体左前側に位置する走行車輪2には、左前モータ91が取り付けられている。左前モータ91は、車体左前側に位置する走行車輪2を回転駆動する。
【0042】
車体右前側に位置する走行車輪2には、右前モータ92が取り付けられている。右前モータ92は、車体右前側に位置する走行車輪2を回転駆動する。
【0043】
車体左後側に位置する走行車輪2には、左後モータ93が取り付けられている。左後モータ93は、車体左後側に位置する走行車輪2を回転駆動する。
【0044】
車体右後側に位置する走行車輪2には、右後モータ94が取り付けられている。右後モータ94は、車体右後側に位置する走行車輪2を回転駆動する。
【0045】
即ち、作業車は、車体前側に位置する走行車輪2を回転駆動する第1油圧モータ9aを備えている。また、作業車は、車体後側に位置する走行車輪2を回転駆動する第2油圧モータ9bを備えている。
【0046】
また、図1及び図2に示すように、作業車は、複数の姿勢変更機構5と、作動油供給装置6と、を備えている。各姿勢変更機構5は、複数の屈折リンク機構10の姿勢を各別に変更可能である。尚、姿勢変更機構5の詳しい構成については後述する。
【0047】
即ち、作業車は、複数の屈折リンク機構10の姿勢を各別に変更可能な姿勢変更機構5を備えている。
【0048】
作動油供給装置6は、車両本体1の内部に収納されている。作動油供給装置6は、作業車に搭載されるエンジン或いは電動モータ等の駆動手段(図示せず)にて駆動される。作動油供給装置6は、油圧ポンプ(図示せず)、複数のモータ用油圧制御弁(図示せず)、作動油タンク(図示せず)等を備えている。油圧ポンプは、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94へ作動油を送り出す。複数のモータ用油圧制御弁は、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94のそれぞれに供給される作動油を制御する。作動油タンクは、作動油を貯留する。そして、作動油供給装置6は、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94に対する作動油の給排あるいは流量の調節等を行う。
【0049】
〔屈折リンク機構について〕
図1及び図2に示すように、各屈折リンク機構10は、基端部24、第1リンク25、第2リンク26を有している。基端部24は、平面視で矩形枠状の形状を有している。基端部24は、車両本体1に支持されている。
【0050】
図3及び図4には、車体右前側に位置する姿勢変更機構5及び屈折リンク機構10の構成が示されている。車体左前側、車体左後側、車体右後側に位置する各姿勢変更機構5及び各屈折リンク機構10の構成は、図3及び図4に示す構成と同様である。
【0051】
図4に示すように、第1リンク25は、基端部24から下側へ延びている。第1リンク25の一端部は、第1横軸芯X1(本発明に係る「横軸芯」に相当)周りで回動自在な状態で、基端部24に支持されている。
【0052】
第2リンク26は、第1リンク25の他端部から、車体前後方向外側へ延びている。より具体的には、車体前側に位置する第2リンク26は、前側へ延びている。また、車体後側に位置する第2リンク26は、後側へ延びている。
【0053】
第2リンク26の一端部は、第2横軸芯X2(本発明に係る「横軸芯」に相当)周りで回動自在な状態で、第1リンク25の他端部に枢支連結されている。図3に示すように、第2リンク26は、左右一対の帯板状の板体26a,26bを有している。そして、第2リンク26は、平面視で二股状に形成されている。
【0054】
図3及び図4に示すように、第2リンク26の他端部に、走行車輪2が支持されている。そして、各第2リンク26の他端部に、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94が支持されている。例えば、車体右前側に位置する第2リンク26の他端部に、右前モータ92が支持されている。
【0055】
即ち、屈折リンク機構10は、一端部が車両本体1に第1横軸芯X1周りで回動自在に支持された第1リンク25と、一端部が第1リンク25の他端部に第2横軸芯X2周りで回動自在に枢支連結され且つ他端部に走行車輪2が支持された第2リンク26と、を有している。
【0056】
図4に示すように、第2リンク26における他端部は、第2リンク26における一端部に対して、車体前後方向外側に位置している。尚、第2リンク26における他端部とは、第2リンク26の両端部のうち、走行車輪2を支持する側の端部である。また、第2リンク26における一端部とは、第2リンク26の両端部のうち、第1リンク25に枢支連結される側の端部である。
【0057】
例えば、車体右前側に位置する第2リンク26における前端部は、第2リンク26における後端部に対して、前側に位置している。
【0058】
図1から図4に示すように、各屈折リンク機構10において、第1リンク25と第2リンク26との枢支連結箇所CPに、補助車輪7が設けられている。そして、第1リンク25及び第2リンク26の姿勢が変化することにより、走行車輪2及び補助車輪7が、車両本体1に対して昇降する。
【0059】
尚、補助車輪7は、第2横軸芯X2周りで回動自在に構成されている。
【0060】
〔旋回機構について〕
基端部24は、図2及び図3に示す縦軸芯Y周りに揺動可能な状態で、旋回機構16を介して車両本体1に支持されている。これにより、屈折リンク機構10は、旋回機構16を介して車両本体1に支持されている。また、屈折リンク機構10は、縦軸芯Y周りに揺動可能である。
【0061】
詳述すると、図2に示すように、作業車は、4つの屈折リンク機構10に対応する4つの旋回機構16を備えている。
【0062】
図3に示すように、旋回機構16は、旋回シリンダ18及び連結部20を有している。連結部20は、車体前後方向に延びている。連結部20は、車両本体1に、ボルトによって連結されている。
【0063】
旋回シリンダ18は、油圧シリンダである。旋回シリンダ18の一端部は、連結部20に連結されている。旋回シリンダ18の他端部は、基端部24に連結されている。
【0064】
旋回シリンダ18が伸びると、屈折リンク機構10は縦軸芯Y周りに回動する。このとき、屈折リンク機構10は、走行車輪2が車体左右方向内側に移動する方向に回動する。例えば、車体右前側に位置する旋回シリンダ18が伸びると、車体右前側に位置する走行車輪2が左側に移動すると共に、この走行車輪2の姿勢は、平面視で左旋回方向に傾斜した姿勢となる。
【0065】
また、旋回シリンダ18が縮むと、屈折リンク機構10は縦軸芯Y周りに回動する。このとき、屈折リンク機構10は、走行車輪2が車体左右方向外側に移動する方向に回動する。例えば、車体右前側に位置する旋回シリンダ18が縮むと、車体右前側に位置する走行車輪2が右側に移動すると共に、この走行車輪2の姿勢は、平面視で右旋回方向に傾斜した姿勢となる。
【0066】
以上の構成により、作業車は、各旋回シリンダ18の伸縮によって、左旋回及び右旋回が可能である。
【0067】
〔姿勢変更機構について〕
図1に示すように、姿勢変更機構5は、第1油圧シリンダ3と、第2油圧シリンダ4と、を有している。
【0068】
図4に示すように、第1リンク25は、下側アーム25a及び上側アーム25bを有している。下側アーム25aは、第1リンク25における下部に設けられている。下側アーム25aは、車体前後方向内側へ向かって突出している。例えば、車体右前側に設けられた下側アーム25aは、後側へ向かって突出している。
【0069】
また、上側アーム25bは、第1リンク25における上部に設けられている。上側アーム25bは、車体前後方向外側へ向かって突出している。例えば、車体右前側に設けられた上側アーム25bは、前側へ向かって突出している。
【0070】
第1油圧シリンダ3は、第1リンク25に対して車体前後方向内側に配置されている。そして、第1油圧シリンダ3は、第1リンク25の長手方向に沿う状態で設けられている。
【0071】
第1油圧シリンダ3の一端部は、円弧状の第1連動部材51を介して、基端部24の下部に連動連結されている。また、第1油圧シリンダ3の一端部は、円弧状の第2連動部材52を介して、第1リンク25の上部に連動連結されている。第1油圧シリンダ3と第1連動部材51との連結箇所、第1連動部材51と基端部24との連結箇所、第1油圧シリンダ3と第2連動部材52との連結箇所、第2連動部材52と第1リンク25との連結箇所は、それぞれ、相対回動可能に枢支連結されている。
【0072】
第1油圧シリンダ3の他端部は、下側アーム25aに連動連結されている。
【0073】
また、第2リンク26は、内側アーム27を有している。内側アーム27は、第2リンク26における車体前後方向内側の端部に設けられている。内側アーム27は、下側へ向かって突出している。
【0074】
第2油圧シリンダ4は、第1リンク25に対して車体前後方向外側に配置されている。そして、第2油圧シリンダ4は、第1リンク25の長手方向に沿う状態で設けられている。
【0075】
第2油圧シリンダ4の一端部は、上側アーム25bに連動連結されている。第2油圧シリンダ4の他端部は、円弧状の第3連動部材53を介して、内側アーム27に連動連結されている。また、第2油圧シリンダ4の他端部は、円弧状の第4連動部材54を介して、第1リンク25の下部に連動連結されている。第2油圧シリンダ4と第3連動部材53との連結箇所、第3連動部材53と内側アーム27との連結箇所、第2油圧シリンダ4と第4連動部材54との連結箇所、第4連動部材54と第1リンク25との連結箇所は、それぞれ、相対回動可能に枢支連結されている。
【0076】
第2油圧シリンダ4の作動が停止した状態で第1油圧シリンダ3が伸縮すると、第1リンク25、第2リンク26、走行車輪2のそれぞれが、相対姿勢を一定に維持したまま一体的に、第1横軸芯X1周りで揺動する。その結果、車両本体1に対する第1リンク25の揺動姿勢が変化する。
【0077】
また、第1油圧シリンダ3の作動が停止した状態で第2油圧シリンダ4が伸縮すると、第1リンク25の姿勢が一定に維持されたまま、第2リンク26及び走行車輪2が、一体的に、第2横軸芯X2周りで揺動する。その結果、第1リンク25に対する第2リンク26の揺動姿勢が変化する。
【0078】
以上で説明した構成により、第1油圧シリンダ3は、車両本体1に対する第1リンク25の揺動姿勢を変更可能である。また、第2油圧シリンダ4は、第1リンク25に対する第2リンク26の揺動姿勢を変更可能である。
【0079】
尚、図1に示すように、本実施形態における作業車は、四つの走行車輪2及び四つの補助車輪7の全てが接地した状態で走行可能である。また、本実施形態における作業車は、姿勢変更機構5の作動によって、四つの走行車輪2が接地しており、且つ、四つの補助車輪7が地面から浮き上がった状態(接地してない状態)でも走行可能である。以下の説明では、四つの補助車輪7の全てが接地した状態であるものとする。
【0080】
〔制御部に関する構成〕
図1及び図5に示すように、作業車は、制御部13を備えている。また、図示はしていないが、各第1油圧シリンダ3、各第2油圧シリンダ4、各旋回シリンダ18は、伸縮ストローク量を検出可能なストロークセンサ、及び、油室の圧力を検出可能な油圧センサを備えている。各ストロークセンサ及び各油圧センサは、検出結果を制御部13にフィードバックするように構成されている。
【0081】
図5に示すように、制御部13は、入力装置8からの信号を受け取るように構成されている。本実施形態において、入力装置8は、ユーザが操作可能なリモコンである。しかしながら、本発明はこれに限定されず、入力装置8は、車両本体1に設けられた操作ボタン等であっても良い。
【0082】
また、制御部13は、モータ制御部13aを有している。モータ制御部13aは、入力装置8から受け取った信号に応じて、上述の作動油供給装置6の動作を制御することにより、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94への作動油の供給を制御する。これにより、モータ制御部13aは、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94の駆動を制御する。
【0083】
即ち、作業車は、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bへの作動油の供給を制御することにより、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bの駆動を制御するモータ制御部13aを備えている。
【0084】
本実施形態では、入力装置8に目標車速を入力可能である。入力装置8に入力された目標車速を示す信号が、制御部13へ送られる。この信号に応じて、モータ制御部13aが、作業車の車速が目標車速に近付くように、左前モータ91、右前モータ92、左後モータ93、右後モータ94を制御する。
【0085】
また、図1図2図5に示すように、作業車は、左前第2シリンダ41、右前第2シリンダ42、左後第2シリンダ43、右後第2シリンダ44を備えている。
【0086】
左前第2シリンダ41は、車体左前側に設けられた第2油圧シリンダ4である。右前第2シリンダ42は、車体右前側に設けられた第2油圧シリンダ4である。左後第2シリンダ43は、車体左後側に設けられた第2油圧シリンダ4である。右後第2シリンダ44は、車体右後側に設けられた第2油圧シリンダ4である。
【0087】
また、上述の作動油供給装置6は、各第1油圧シリンダ3及び各第2油圧シリンダ4に対応する複数のシリンダ用油圧制御弁(図示せず)を備えている。
【0088】
作動油供給装置6は、油圧ポンプにより、各第1油圧シリンダ3及び各第2油圧シリンダ4へ作動油を送り出す。そして、各シリンダ用油圧制御弁は、各第1油圧シリンダ3及び各第2油圧シリンダ4に対する作動油の給排あるいは流量の調節等を行う。
【0089】
そして、制御部13は、各シリンダ用油圧制御弁を制御することにより、各第1油圧シリンダ3及び各第2油圧シリンダ4の作動を制御する。言い換えれば、制御部13は、各姿勢変更機構5の作動を制御する。
【0090】
特に、図5に示すように、制御部13は、昇降制御部13bを有している。昇降制御部13bは、姿勢変更機構5の作動を制御することにより、各走行車輪2の昇降を制御可能である。
【0091】
即ち、作業車は、姿勢変更機構5の作動を制御することにより、各走行車輪2の昇降を制御可能な昇降制御部13bを備えている。
【0092】
詳述すると、昇降制御部13bは、入力装置8から受け取った信号に応じて、各第2油圧シリンダ4を制御する。これにより、第2油圧シリンダ4が伸縮すると、対応する第2リンク26が、枢支連結箇所CPを中心に揺動する。その結果、図4に示すように、走行車輪2が昇降することとなる。これにより、昇降制御部13bは、各走行車輪2の昇降を制御可能である。
【0093】
即ち、昇降制御部13bは、第2リンク26を、枢支連結箇所CPを中心に揺動させることにより、走行車輪2の昇降を制御可能に構成されている。
【0094】
具体的には、昇降制御部13bは、第2油圧シリンダ4を縮ませることにより、走行車輪2を上昇させる。また、昇降制御部13bは、第2油圧シリンダ4を伸ばすことにより、走行車輪2を下降させる。
【0095】
尚、制御部13、及び、制御部13に含まれるモータ制御部13a等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0096】
〔駆動停止制御について〕
図5に示したモータ制御部13aは、車速が所定車速以上である場合、駆動停止制御を実行するように構成されている。駆動停止制御とは、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち一方の駆動を停止する制御である。
【0097】
即ち、モータ制御部13aは、車速が所定車速以上である場合、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち一方の駆動を停止する制御である駆動停止制御を実行する。
【0098】
尚、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bの両方が駆動しているとき、作業車は、四輪駆動状態である。また、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち一方の駆動が停止しているとき、作業車は、二輪駆動状態である。
【0099】
また、作業車の実車速、及び、目標車速は、何れも本発明に係る「車速」の具体例である。即ち、モータ制御部13aは、実車速が所定車速以上である場合に駆動停止制御を実行するように構成されていても良い。また、モータ制御部13aは、目標車速が所定車速以上である場合に駆動停止制御を実行するように構成されていても良い。
【0100】
また、所定車速は、特に限定されないが、例えば時速10キロメートルであっても良い。所定車速は適宜変更可能である。
【0101】
また、本実施形態での駆動停止制御においては、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち、第1油圧モータ9aの駆動が停止される。より具体的には、駆動停止制御において、左前モータ91及び右前モータ92の駆動が停止される。
【0102】
即ち、モータ制御部13aは、駆動停止制御において、第1油圧モータ9aの駆動を停止する。
【0103】
図6及び図7では、駆動停止制御が実行される場合の例が示されている。図6に示す状態では、作業車は、四輪駆動状態である。即ち、このとき、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bの両方が駆動している。また、このときの作業車の実車速は第1車速V1であるとする。また、第1車速V1は、上述の所定車速よりも低いものとする。
【0104】
図6に示す状態から、作業車が加速し、実車速が所定車速以上となると、駆動停止制御が実行され、図7に示す状態となる。図7に示す状態では、作業車の実車速は第3車速V3である。第3車速V3は、上述の所定車速以上であるとする。
【0105】
図7に示す状態では、モータ制御部13aにより、既に駆動停止制御が実行されているため、第1油圧モータ9aの駆動は停止している。つまり、左前モータ91及び右前モータ92の駆動は停止している。そのため、車体前側に位置する走行車輪2は停止している。また、図7に示す状態では、図6に示す状態に比べて、第2油圧モータ9bの駆動速度は高くなっている。言い換えれば、左後モータ93及び右後モータ94の駆動速度は高くなっている。そのため、車体後側に位置する走行車輪2が、高速で回転駆動している。
【0106】
このように、車体後側に位置する走行車輪2が高速で回転駆動するように第2油圧モータ9bが制御される場合、モータ制御部13aにより、駆動停止制御が実行される。
【0107】
また、図5に示した昇降制御部13bは、停止対象車輪を、地面に対して上昇させるように構成されている。停止対象車輪とは、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち、駆動停止制御により駆動が停止された方に対応する走行車輪2である。
【0108】
即ち、昇降制御部13bは、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち駆動停止制御により駆動が停止された方に対応する走行車輪2である停止対象車輪を、地面に対して上昇させる。
【0109】
例えば、上述の通り、図7に示す状態では、モータ制御部13aにより、既に駆動停止制御が実行されているため、第1油圧モータ9aの駆動は停止している。言い換えれば、左前モータ91及び右前モータ92の駆動は停止している。この場合、第1油圧モータ9aに対応する走行車輪2は、停止対象車輪である。即ち、この場合、車体前側に位置する走行車輪2が、停止対象車輪である。
【0110】
そして、図7に示す状態では、昇降制御部13bによる制御によって、停止対象車輪が地面に対して上昇した状態となっている。即ち、車体前側に位置する走行車輪2が、地面から浮き上がっている。
【0111】
また、図7において、第2車速V2が示されている。第2車速V2は、上述の所定車速以上であり、且つ、第3車速V3よりも低いものとする。
【0112】
作業車の実車速が第2車速V2である場合、車体前側に位置する走行車輪2の高さ位置は、昇降制御部13bによる制御によって、第1位置H1まで上昇する。また、作業車の実車速が第3車速V3である場合、車体前側に位置する走行車輪2の高さ位置は、昇降制御部13bによる制御によって、第2位置H2まで上昇する。第2位置H2は、第1位置H1よりも高い。
【0113】
このように、昇降制御部13bは、車速が高いほど停止対象車輪の高さ位置が高くなるように、停止対象車輪の昇降を制御する。
【0114】
尚、本実施形態では、作業車の車速が所定車速以上である状態から、作業車の車速が所定車速未満である状態に変化した場合、駆動停止制御は終了する。即ち、この場合、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち、駆動停止制御により駆動が停止されていた方の駆動が再開する。そして、昇降制御部13bは、停止対象車輪であった走行車輪2を下降させ、その走行車輪2を接地させる。これにより、作業車は、二輪駆動状態から四輪駆動状態へ変化する。
【0115】
〔後輪停止制御について〕
図5に示したモータ制御部13aは、後進時に、後輪停止制御を実行するように構成されている。後輪停止制御とは、第2油圧モータ9bの駆動を停止する制御である。言い換えれば、後輪停止制御とは、左後モータ93及び右後モータ94の駆動を停止する制御である。
【0116】
即ち、モータ制御部13aは、後進時に、第2油圧モータ9bの駆動を停止する制御である後輪停止制御を実行する。
【0117】
また、図5に示した昇降制御部13bは、後進時に、車体後側に位置する走行車輪2を地面に対して上昇させるように構成されている。
【0118】
図8では、後輪停止制御が実行される場合の例が示されている。図8に示す状態では、モータ制御部13aによる制御によって、第1油圧モータ9aが後進方向に駆動されている。言い換えれば、左前モータ91及び右前モータ92が後進方向に駆動されている。これにより、作業車は、第4車速V4で後進している。
【0119】
尚、第4車速V4は、上述の第1車速V1に一致している。ただし、後進時の車速は特に限定されない。作業車は、第1車速V1よりも低い車速で後進可能であっても良いし、第1車速V1よりも高い車速で後進可能であっても良い。
【0120】
本実施形態において、モータ制御部13aは、後進の開始時に後輪停止制御を実行する。また、昇降制御部13bは、後進の開始時に、車体後側に位置する走行車輪2を地面に対して上昇させる。
【0121】
そのため、図8に示す状態では、後輪停止制御によって、第2油圧モータ9bの駆動は停止した状態である。言い換えれば、左後モータ93及び右後モータ94の駆動は停止した状態である。これにより、車体後側に位置する走行車輪2は停止している。また、昇降制御部13bによる制御によって、車体後側に位置する走行車輪2が、地面に対して上昇した状態となっている。即ち、車体後側に位置する走行車輪2が、地面から浮き上がっている。
【0122】
尚、本発明は上記の構成に限定されない。モータ制御部13aは、後進の開始時よりも前または後に後輪停止制御を実行しても良い。また、昇降制御部13bは、後進の開始時よりも前または後に、車体後側に位置する走行車輪2を地面に対して上昇させても良い。
【0123】
以上で説明した構成であれば、第1油圧モータ9aによって車体前側に位置する走行車輪2が回転駆動される。また、第2油圧モータ9bによって車体後側に位置する走行車輪2が回転駆動される。即ち、以上で説明した構成であれば、前後輪駆動状態での走行が可能である。例えば、走行車輪2の個数が四つである場合は、四輪駆動状態での走行が可能である。これにより、不整地において安定的に走行しやすい。
【0124】
しかも、以上で説明した構成であれば、車速が所定車速以上である場合、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち一方の駆動が停止される。これにより、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち駆動している方(停止されていない方)へ、駆動エネルギの供給を集中させることができる。その結果、第1油圧モータ9aまたは第2油圧モータ9bを比較的高速で駆動させることができる。これにより、比較的高速での走行が可能となる。
【0125】
従って、以上で説明した構成であれば、不整地において安定的に走行しやすく、且つ、比較的高速での走行が可能な作業車を実現できる。
【0126】
〔その他の実施形態〕
(1)モータ制御部13aは、入力装置8に入力された目標車速が所定車速以上である場合、駆動停止制御を実行するように構成されていても良い。
【0127】
(2)入力装置8は、作業車を前進走行させる指令である前進指令、及び、作業車を後進走行させる指令である後進指令を入力可能であっても良い。この場合、入力装置8に後進指令が入力されたことに応じて、モータ制御部13aが後輪停止制御を実行すると共に、昇降制御部13bが車体後側に位置する走行車輪2を地面に対して上昇させる構成であっても良い。
【0128】
(3)上記実施形態では、各旋回シリンダ18の伸縮によって左旋回及び右旋回が可能である。しかしながら、旋回シリンダ18は設けられていなくても良い。その場合、電気式あるいは油圧式のモータによって屈折リンク機構10が縦軸芯Y周りに回動するように構成されていても良い。
【0129】
(4)補助車輪7が駆動可能であっても良い。その場合、電気式あるいは油圧式のモータによって補助車輪7が駆動される構成であっても良い。
【0130】
(5)補助車輪7が設けられていなくても良い。
【0131】
(6)上記実施形態では、第2リンク26における他端部は、第2リンク26における一端部に対して、車体前後方向外側に位置している。尚、第2リンク26における他端部とは、第2リンク26の両端部のうち、走行車輪2を支持する側の端部である。また、第2リンク26における一端部とは、第2リンク26の両端部のうち、第1リンク25に枢支連結される側の端部である。
【0132】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。第2リンク26における他端部は、第2リンク26における一端部に対して、車体前後方向内側に位置していても良い。
【0133】
(7)屈折リンク機構10が設けられていなくても良い。この場合、例えば、各走行車輪2が、屈折リンク機構10を介することなく、車両本体1に直接的に取り付けられていても良い。
【0134】
(8)上記実施形態では、第1油圧モータ9aとして、左前モータ91及び右前モータ92が設けられている。即ち、上記実施形態における第1油圧モータ9aの個数は二つである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。第1油圧モータ9aの設けられる個数は、一つでも良いし、三つ以上でも良い。
【0135】
(9)上記実施形態では、第2油圧モータ9bとして、左後モータ93及び右後モータ94が設けられている。即ち、上記実施形態における第2油圧モータ9bの個数は二つである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。第2油圧モータ9bの設けられる個数は、一つでも良いし、三つ以上でも良い。
【0136】
(10)モータ制御部13aは、後進時に、車速が所定車速以上である場合、駆動停止制御を実行するように構成されていても良い。
【0137】
(11)モータ制御部13aは、駆動停止制御において、第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bのうち走行方向前側の走行車輪2を駆動する油圧モータの駆動を停止するようにしてもよい。すなわち、前進時には車体前側の走行車輪2を停止対象車輪とし、後進時には車体後側の走行車輪2を停止対象車輪としてもよい。
【0138】
(12)昇降制御部13bが、地面に対して上昇させた停止対象車輪を、車両本体1よりも走行方向前方側に配置してもよい。
【0139】
(13)屈折リンク機構10を縦軸芯Y周りに揺動させる旋回機構16を備え、昇降制御部13bは、停止対象車輪に対応する屈折リンク機構10の姿勢を、当該屈折リンク機構10に備えられる補助車輪7が駆動停止制御の実行前よりも縦軸芯Yに近づくように制御してもよい。
【0140】
(14)第1油圧モータ9a及び第2油圧モータ9bに代えて、電気モータを備えていてもよい。この場合、電気モータは、本発明に係る「第1モータ」及び「第2モータ」に相当する。
【0141】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、車両本体の左右両側における前後それぞれに位置する複数の走行車輪を備える作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0143】
1 車両本体
2 走行車輪
5 姿勢変更機構
7 補助車輪
9a 第1油圧モータ(第1モータ)
9b 第2油圧モータ(第2モータ)
10 屈折リンク機構
13a モータ制御部
13b 昇降制御部
25 第1リンク
26 第2リンク
CP 枢支連結箇所
X1 第1横軸芯(横軸芯)
X2 第2横軸芯(横軸芯)
Y 縦軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8