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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】PD1結合剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240115BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240115BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240115BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240115BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/46
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/18
A61P31/10
A61P33/00
A61K47/68
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020542297
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055901
(87)【国際公開番号】W WO2019170885
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】1803745.7
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1807176.1
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1811302.7
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1816372.5
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1817652.9
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520284090
【氏名又は名称】ウルトラヒューマン エイト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フィンレー,ウィリアム ジェームズ ジョナサン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533763(JP,A)
【文献】mAbs,2013年,Vol. 5, No. 3,p. 445-470
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PD1抗体又はその抗原結合部分であって、当該抗体又は抗原結合部分は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含有し、
(a)VH領域のアミノ酸配列が、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、及びQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、及びQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含むか、
(b)VH領域のアミノ酸配列が、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、及びQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、及びQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含むか、
(c)VH領域のアミノ酸配列が、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、及びQLYFFDY(配列番号45)のHCDR3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、及びQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含むか、
(d)VH領域のアミノ酸配列が、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、及びQLYAFDY(配列番号46)のHCDR3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、及びQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含むか、
(e)VH領域のアミノ酸配列が、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48)のHCDR2、及びQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、及びQQSYSIPWT(配列番号47)のLCDR3を含むか、又は
(f)VH領域のアミノ酸配列が、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49)のHCDR2、及びQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列が、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQD(配列番号50)のLCDR2、及びQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含む、
抗PD1抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
(a)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号1を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号2を含むか、
(b)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号3を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号4を含むか、
(c)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号5を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号6を含むか、
(d)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号7を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号8を含むか、
(e)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号9を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号10を含むか、又は
(f)前記VH領域のアミノ酸配列が配列番号11を含み、かつ、前記VL領域のアミノ酸配列が配列番号12を含む、請求項1記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項3】
前記抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項1又は2に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項4】
前記VH領域、前記VL領域、又は前記VH領域と前記VL領域との両方が、1つ又は複数のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項5】
前記VH領域、前記VL領域、又は前記VH領域と前記VL領域との両方が、前記CDRが挿入されたヒト可変領域フレームワークスキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項6】
前記VH領域が、前記HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列が挿入されたIGHV3-7ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項7】
前記VL領域が、前記LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列が挿入されたIGKV1-39ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有する、請求項1又は6に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項8】
前記抗体又は前記抗原結合部分が、免疫グロブリン定常領域を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項9】
前記免疫グロブリン定常領域が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgYである、請求項8記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項10】
前記免疫グロブリン定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2である、請求項9記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項11】
前記免疫グロブリン定常領域が、免疫学的に不活性である、請求項8記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項12】
前記免疫グロブリン定常領域が、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、L234A、L235A及びG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域、又は野生型ヒトIgG2定常領域であり、番号付けが、KabatにあるEUインデックスによる、請求項8記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項13】
前記免疫グロブリン定常領域が、配列番号13~19のいずれか1つを含有する、請求項8記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項14】
前記抗体又は抗原結合部分が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、マキシボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又はbis-scFvである、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗原結合部分。
【請求項15】
前記抗体又は前記抗原結合部分が、モノクローナルである、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項16】
前記抗体又は前記抗原結合部分が、四量体、四価、又は多特異性である、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項17】
前記抗体又は前記抗原結合部分が、第一の抗原及び第二の抗原に特異的に結合する二特異性抗体又は抗原結合部分であり、前記第一の抗原がPD1であり、前記第二の抗原がPD1ではない、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項18】
前記抗体又は抗原結合部分が、(a)ヒトPD1に特異的に結合する、又は(b)ヒトPD1及びカニクイザルPD1に特異的に結合する、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項19】
前記抗体又は抗原結合部分がIgG1形式であり、前記抗原結合部分が、約90℃から約93℃の溶融温度(Tm)である、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項20】
前記抗体又は抗原結合部分が、ヒト化抗体Mab005の可変ドメイン配列を含有する抗PD1抗体と比較して、露出アミノ酸残基の酸化が減少する、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分。
【請求項21】
治療剤に結合された、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分を含有する免疫結合体。
【請求項22】
前記治療剤が、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、細胞増殖抑制酵素、細胞溶解性酵素、治療用核酸、抗血管新生剤、抗増殖剤、又はアポトーシス促進剤である、請求項21記載の免疫結合体。
【請求項23】
請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合部分、又は請求項21もしくは22に記載の免疫結合体と、薬学的に許容可能な担体と、希釈剤又は賦形剤と、を含有する、医薬組成物。
【請求項24】
核酸分子であって、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分のVH領域及びVL領域の両方のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸分子を含有する発現ベクター。
【請求項26】
請求項24に記載の核酸分子、又は請求項25に記載の発現ベクターを含有する組換え宿主細胞。
【請求項27】
抗PD1抗体又はその抗原結合部分を作製する方法であって、
核酸分子が発現される条件下で、請求項25に記載の発現ベクターを含有する組換え宿主細胞を培養し、それにより抗体又は抗原結合部分を作製することと、
当該宿主細胞又は培養物から、前記抗体又は抗原結合部分を単離することと、
を含む、方法。
【請求項28】
対象において、免疫反応を強化するために使用される、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合部分、請求項21もしくは22に記載の免疫結合体、又は請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項29】
癌、感染症、又は免疫性疾患の治療における使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合部分、請求項21もしくは22に記載の免疫結合体、又は請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記癌が、膵臓癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳腫瘍又は中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌又は子宮内膜癌、口腔又は咽頭の癌、肝癌、腎癌、精巣癌、胆管癌、小腸癌又は虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、又は血液組織の癌である、請求項29に記載の使用のための抗体もしくは抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項31】
前記感染症が、ウイルス性、細菌性、真菌性、又は寄生虫性である、請求項29に記載の使用のための抗体もしくは抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項32】
前記感染症が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症である、請求項29に記載の使用のための抗体もしくは抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項33】
癌、感染症、又は免疫疾患の治療における抗体もしくは抗原結合部分、免疫結合体又は医薬組成物の使用は、血管腫を誘発しない、又は最小限の血管腫を誘発する、請求項29に記載の使用のための抗体もしくは抗原結合部分、免疫結合体、又は医薬組成物。
【請求項34】
医薬品としての使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合部分、請求項21もしくは22に記載の免疫結合体、又は請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月29日に出願された英国特許出願第1817652.9号明細書、2018年10月8日に出願された英国特許出願第1816372.5号明細書、2018年7月10日に出願された英国特許出願第1811302.7号明細書、2018年5月1日に出願された英国特許出願第1807176.1号明細書、および2018年3月8日に出願された英国特許出願第1803745.7号明細書の利益を主張するものであり、それら各開示内容は、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出されるテキストファイルに関する説明
本明細書とともに電子的に提出される以下のテキストファイルの内容は、その全体で参照により本明細書に援用される:コンピューター読み取り可能な形式の配列表のコピー(ファイルの名称:UHEL_001_01WO_SeqList_ST25.txt、データ記録日:2019年3月7日、ファイルサイズは113,139バイト)。
【0003】
本発明は、PD1(プログラム細胞死1、PDCD1、CD279、PD-1、SLEB2、PD-l、SLE1としても知られる)に特異的に結合する抗体分子およびその医療用途に関する。
【背景技術】
【0004】
PD1は免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである細胞表面受容体であり、主にT細胞上で発現するが、プロB細胞上でも観察される、細胞表面受容体である。PD1は2つの公知のリガンド、PD-L1およびPD-L2を結合する。これらリガンドとT細胞上のPD1との相互作用により、T細胞炎症活性が下方制御されるが、これが免疫自己寛容を促進する。したがって、PD1は免疫「チェックポイント」であると説明されている。このチェックポイント活性は、自己抗原に反応するリンパ節常在性T細胞においてアポトーシス(プログラム細胞死)を促進することによって、自己免疫リスクを最小化することが実証されている。重要なことには、PD1ライゲーションもまた、制御性(抗炎症性)T細胞の生存を促進する。
【0005】
非病的状態におけるPD1/PD-L1(2)結合の役割は、自己寛容に重要であるが、それはまた、それによって腫瘍細胞が免疫監視の間に「外来性」として特定されることを免れる重要な機序でもある。実際にPD-L1は、数種の癌において高度に発現されることが示されている。したがってPD1を標的とし、またその機能に拮抗するモノクローナル抗体は、高PD-L1発現を伴うおよび/または高レベルの変異が現れる、悪性細胞に対する免疫反応を後押しすることによって、癌治療の際に有意な潜在的価値があるものとなり得る。数多くの前臨床のエビデンスおよびより最近の臨床のエビデンスが、PD1/PD-L1(2)結合を遮断することが、T細胞の抗腫瘍活性を促進して、また血液悪性腫瘍および固形悪性腫瘍の両方の成長を阻害することが可能であるということを示唆する。PD1/PD-L1活性はまた、例えばHIV等である慢性疾患で誘導され得るため、抗PD1アンタゴニスト抗体もまた、感染症環境において治癒的価値を有し得る。ゆえに、アンタゴニスト性の抗PD1 mAbは、癌、免疫疾患および感染症の環境において免疫治療剤として作用し、現在確立されている治療法の有効性を増幅させる可能性を有している。
【0006】
現在承認されている抗体治療剤の大部分は、免疫化されたげっ歯類に由来する。そうした抗体の多くが、マウスCDRのヒトv-遺伝子フレームワーク配列への「移植」を介した、「ヒト化」として知られるプロセスを経ている(Nelson et al.,2010,Nat Rev Drug Discov 9:767-774を参照のこと)。このプロセスは多くの場合、不正確であり、得られた抗体の標的結合アフィニティの低下が生じる。元の抗体の結合アフィニティに戻すために、通常、移植されたv-ドメインの可変ドメインフレームワーク中の重要な位置にマウス残基が導入される(「復帰突然変異(back-mutation)」としても知られる)。
【0007】
CDR移植および復帰突然変異によりヒト化された抗体は臨床において、完全マウスv-ドメインによるものと比較して低い免疫反応率を誘導することが示されているが、この基礎的な移植法を使用してヒト化された抗体は、物理的に不安定である可能性があり、移植CDRループ内に免疫原性モチーフがいまだ保存されていることから、いまだ重大な臨床開発リスクを負っている。タンパク質の免疫原性に関する動物実験は、ヒトでの免疫反応の予測とはならないことが多く、治療用途の抗体操作は、予測されるヒトT細胞エピトープ含量、非ヒト生殖細胞系列アミノ酸含量、および精製タンパク質が凝集してしまう可能性を最小化することに焦点が置かれている。
【0008】
ゆえに理想的なヒト化アゴニスト性抗PD1抗体は、v-ドメイン中に、詳細に特徴解析されたヒト生殖細胞系列配列のフレームワークとCDRの両方に存在する残基と同一の残基を可能な限り多く有している抗体である。Townsendら(2015;PNAS 112:15354-15359)は、抗体の作製方法を記載しており、当該方法においてラット抗体、ウサギ抗体およびマウス抗体に由来するCDRは、好ましいヒトフレームワーク内に移植され、次いで「拡張バイナリー置換(augmented binary substitution)」と呼ばれるヒト生殖細胞系列化(human germ-lining)方法が行われる。この方法は、元の抗体のパラトープにおいては基礎的な柔軟性を示したが、研究者らが正確性の高い抗体-抗原の共結晶構造データを有している場合であっても、任意の所与の抗体のCDRループ中のどの個々の残基がどの組み合わせでヒト生殖細胞系列に転換され得るかを確実に予測することは未だ不可能である。さらにTownsendらの研究では、ヒト生殖細胞系列中に存在する残基を超えた、開発リスクモチーフの除去が有益となる可能性がある位置に突然変異誘導を加えることには対処していない。これは技術の限界であり、この限界によってプロセスが本質的に非効率的となり、開始抗体配列を改変する余剰な段階が必要となる。さらに現時点では、個々のv-ドメインのタンパク質配列で離れた位置にある改変のいずれが、リスクモチーフを排除しながら、抗原結合のアフィニティと特異性の維持を促進し得るのかは、たとえパートナーv-ドメイン上であったとしても正確に予測することはできない。
【0009】
このようにCDRの生殖細胞系列化および開発クオリティの最適化は複雑で多因子的な課題であるため、本例においては以下をはじめとする複合的な分子の機能特性が維持されるまたは改善されることが好ましい:標的結合特異性、PD1/PD-L1シグナル伝達アンタゴニズム、高い正確性の前臨床安全性試験を容易にするできる限り類似する必要があるヒトおよび実験動物種(例えばカニクイザルとして知られるcynomolgus monkey、すなわちMacaca fascicularis)の両方に由来するPD1に対するアフィニティ、v-ドメインの生物物理的安定性、ならびに/または製造目的に最適である必要があるIgG発現収率。抗体操作実験から、重要なCDR中のたった1つの残基位置での突然変異であっても、これら望ましい分子特性のすべてに対し劇的な負の影響を与え得ることが示されている。
【0010】
国際公開第2015/085847A1号は、「MAb005」と名づけられたアンタゴニスト性マウス抗PD1 IgG分子、ならびにMAb005のヒト化型の調製を記載している。そのMAb005のヒト化型は、古典的なヒト化技術、すなわちKabat規定のマウスCDRをヒトの重鎖および軽鎖のフレームワーク配列に移植することにより作製されており、ヒトフレームワーク残基の一部は、対応する位置のMAb005マウス残基に復帰突然変異されている可能性がある。上述の理由によって、国際公開第2015/085847A1号に記載されるMAb005のヒト化型は理想的ではない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、多くの抗PD1抗体、およびその医療用途を提供する。
【0012】
本発明の1つの態様によると、ヒトPD1に、および任意でカニクイザルPD1にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分が提供され、当該抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-F-T-F-S-S-Y-Lまたは任意のアミノ酸(例えば、A/D/E/F/G/H/I/N/P/Q/S/T/V/W/Y)-M-S(配列番号26)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:VまたはV-A-T/N-I-S-G-G-G-A/S-E/N-T/K-Y-Y-P/V-D-S-V-K-Gの保存的置換(配列番号27)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Qまたは任意のアミノ酸(例えば、T/L/M/N)-Lまたは任意のアミノ酸(例えば、G/K/M/Q/S/V)-YまたはYの保存的置換(例えば、H)-Yまたは任意のアミノ酸(例えば、A/D/F/G/M-A/D/E/F/I/K/M/S/W)-Fまたは任意のアミノ酸(例えば、A/D/EI/K/M/S/W)-D-Y(配列番号28)と、を伴う重鎖可変領域を含む。
【0013】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR1は、配列GFTFSSYMMS(配列番号29、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のHCDR1)、TISGGGANTYYPDSVKG(配列番号30、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のHCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR3は、配列QLYYFDY(配列番号31、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のHCDR3)を除外してもよい。
【0014】
抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR1:R-A-S-Q-S-I-S、またはS-Sの保存的置換、またはS-Yの保存的置換、またはY-Lの保存的置換、またはL-N/Tの保存的置換、またはNもしくはTの保存的置換(配列番号32)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR2:A/T、またはAもしくはT-A-Sの保存的置換、またはS-S-L-Qの保存的置換または任意のアミノ酸(例えば、A/H)-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、D、Y)(配列番号33)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR3:Q-Q-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、V)-Y-S-Tまたは任意のアミノ酸(例えば、I)-P-Wまたは任意のアミノ酸(例えば、L)-T(配列番号34)と、を伴う軽鎖可変領域をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR1は、配列LASQTIGTWLT(配列番号35、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のLCDR1)を除外してもよく、および/または、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR2は、配列TATSLAD(配列番号36、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のLCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR3は、配列QQVYSIPWT(配列番号37、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のLCDR3)を除外してもよい。
【0016】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含有する重鎖可変(VH)領域、ならびにLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含有する軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)HCDR1は、アミノ酸配列G-F-T-F-S-S-Y-X-M-Sを含み、式中、XはLまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号26)、
(b)HCDR2は、アミノ酸配列X-A-X-I-S-G-G-G-X-X-X-Y-Y-X-D-S-V-K-Gを含み、式中、XはV、またはVの保存的置換であり、XはTまたはNであり、XはAまたはSであり、XはEまたはNであり、XはTまたはKであり、またXはPまたはVであり(配列番号27)、
(c)HCDR3は、アミノ酸配列X-X-X-X-X-D-Yを含み、式中、XはQまたは任意の他のアミノ酸(例えば、T、L、MまたはN)であり、XはLまたは任意の他のアミノ酸(例えば、G、K、M、Q、SまたはV)であり、XはY、またはYの保存的置換(例えば、H)であり、XはYまたは任意の他のアミノ酸(例えば、A、D、F、G、M、E、I、K、SまたはW)であり、またXはFまたは任意の他のアミノ酸(例えば、A、D、E、I、K、M、SまたはW)であり(配列番号28)、
(d)LCDR1は、アミノ酸配列R-A-S-Q-S-I-X-X-X-X-Xを含み、式中、XはS、またはSの保存的置換であり、XはS、またはSの保存的置換であり、XはY、またはYの保存的置換であり、XはL、またはLの保存的置換であり、またXはNもしくはT、またはNもしくはTの保存的置換であり(配列番号32)、
(e)LCDR2は、アミノ酸配列X-A-X-S-L-X-Xを含み、式中、XはAもしくはT、またはAもしくはTの保存的置換であり、XはS、またはSの保存的置換であり、XはQまたは任意の他のアミノ酸であり、またXはSまたは任意の他のアミノ酸であり(配列番号33)、ならびに
(f)LCDR3は、アミノ酸配列Q-Q-X-Y-S-X2-P-X-Tを含み、式中、XはSまたは任意の他のアミノ酸であり、XはTまたは任意の他のアミノ酸であり、またXはWまたは任意の他のアミノ酸である(配列番号34)。
【0017】
一部の態様において、本発明は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を提供するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYFFDY(配列番号45)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYAFDY(配列番号46)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSIPWT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQD(配列番号50)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSIPWT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQD(配列番号50)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(i)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSNTYYVDSVKG(配列番号51)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISTWLN(配列番号52)のLCDR1、AASSLAS(配列番号53)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(j)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLHS(配列番号54)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、または
(k)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含む。
【0018】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
当該VH領域のアミノ酸配列は、
(a)配列番号38のHCDR1と、
(b)配列番号39、配列番号48、配列番号49、または配列番号51のHCDR2と、
(c)配列番号40、配列番号44、配列番号45、または配列番号46のHCDR3とを含み、
当該VL領域のアミノ酸配列は、
(a’)配列番号41または配列番号52のLCDR1と、
(b’)配列番号42、配列番号50、配列番号53、または配列番号54のLCDR2と、
(c’)配列番号43、または配列番号47のLCDR3とを含む。
【0019】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含み、または
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含む。
【0020】
さらに本発明により、治療剤に連結された、融合された、または結合された、本明細書に規定される抗体分子またはその抗原結合部分を含有する免疫結合体が提供される。
【0021】
別の態様において、本発明は、本明細書に規定される抗体分子またはその抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。
【0022】
さらに、本発明の核酸分子を含有するベクターが提供される。
【0023】
また、本明細書に規定される本発明の核酸分子またはベクターを含有する宿主細胞も提供される。
【0024】
さらなる態様において、抗PD1抗体および/またはその抗原結合部分を作製する方法も提供され、当該方法は、当該抗体および/もしくはその抗原結合部分の発現ならびに/または産生が生じる条件下で、本発明の宿主細胞を培養することと、当該宿主細胞または培養物から、当該抗体および/またはその抗原結合部分を単離することと、を含む。
【0025】
本発明の別の態様において、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクターを含有する医薬組成物が提供される。
【0026】
さらに、対象において免疫反応を強化する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0027】
さらなる態様において、対象において癌を治療または予防する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0028】
さらに、医薬品としての使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。本発明はさらに、癌の治療における使用のための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクター、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、例えば抗癌剤などの第二の治療剤と組み合わされる併用において、別個に使用する、連続して使用する、または同時に使用するための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または免疫結合体、または核酸分子、または使用のためのベクター、または治療方法を提供する。
【0030】
さらなる態様において、癌の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の使用、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の使用、または本明細書に規定される本発明のベクターの使用、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0031】
本発明はさらに、対象において感染症を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0032】
感染症は、すべての態様において、ウイルス性、細菌性、真菌性、または寄生虫性からなる群から選択されてもよい。一実施形態において、感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症である。
【0033】
また、感染症の治療における使用のための、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される免疫結合体、または本明細書に規定される核酸分子、または本明細書に規定されるベクター、または本明細書に規定される医薬組成物が提供される。
【0034】
さらに、感染症の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される免疫結合体の使用、または本明細書に規定される核酸分子の使用、または本明細書に規定されるベクターの使用、または本明細書に規定される医薬組成物の使用が提供される。
【0035】
本発明はさらに、対象において感染症を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を投与することを含む。
【0036】
本発明はさらに、ヒトPD1に特異的に結合し、および任意でカニクイザルのPD1にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を作製する方法を提供するものであり、当該方法は、
(1)非ヒト源由来の抗PD1 CDRをヒトv-ドメインフレームワーク内に移植し、ヒト化抗PD1抗体分子またはその抗原結合部分を作製する工程、
(2)CDR中に1つまたは複数の変異を含有する当該ヒト化抗PD1抗体分子またはその抗原結合部分のクローンのライブラリーを作製する工程、
(3)ヒトPD1への結合、および任意でカニクイザルのPD1への結合についても当該ライブラリーをスクリーニングする工程、
(4)スクリーニングする工程(3)から、ヒトPD1に特異的に結合する、および任意でカニクイザルPD1にも特異的に結合するクローンを選択する工程、ならびに
(5)ヒトPD1に特異的に結合し、および任意でカニクイザルPD1にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を、工程(4)から選択されたクローンから作製する工程、を含む。
【0037】
当該方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づき、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDR中の特定の位置でのさらなる探索的な突然変異誘導に基づき、追加のクローンを作製して、ヒト化を強化し、および/またはヒトT細胞エピトープ含量を最小化し、および/または工程(5)で作製された抗体分子もしくはその抗原結合部分の製造特性を改善するさらなる工程を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1。ヒトおよびカニクイザルのPD1-Fcタンパク質に対する、ライブラリー由来抗PD1 Fabの直接結合ELISA。複数のファージ選択ブランチからクローンが誘導された。選択ブランチにおいて、ファージ群は、ビオチン化されたヒトまたはカニクイザルのPD1タンパク質に対し各ラウンドで選択された。標準選択は、R2~R4と番号付けされた。「ハンマー-ハグ」ラウンドは、R2-HおよびR3-Hと番号付けされた。各選択ラウンドの後、ライブラリー由来クローン(黒色円)は、ヒト(h)およびカニクイザル(c)の両方のPD1に対し、ペリプラズム発現したFabタンパク質としてスクリーニングされた。各ラウンドの平均±SD値は、灰色の棒で表されている。ヒトIgG1 Fabとして発現されるmAb005 v-ドメインを、各プレートにおける陽性対照(灰色円)として用いた。
図2図2A図2B。ヒトおよびカニクイザルのPD1-Fcタンパク質への精製単量体Fab結合に関する、直接的力価測定ELISA。Mab005、およびヒトFab形式のライブラリー由来クローンが、ヒト(図2A)およびカニクイザル(図2B)のPD1-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位nM)された。
図3A図3A図3B。生殖細胞系列への変異に関する、CDR残基の寛容の分析。ELISA陽性の64個の固有scFvクローン群のCDRにおける、マウスアミノ酸保持頻度の図をそれぞれV図3A、配列番号110、114および116)ドメインおよびV図3B、配列番号95、92および106)ドメインについて示す。HCDR3以外では、ヒト/マウス残基の突然変異誘導の標的とされた残基のみプロットされている。X軸上のカッコ内に記載されるCDR残基は、移植に使用されたヒト生殖細胞系列(IGKV1-39およびIGHV3-7)中に存在する残基と同一である。両方の図において、75%での灰色の破線は、ヒト生殖細胞系列によるマウス残基の置換の寛容性に対するカットオフを表している。
図3B】同上。
図4図4A図4B。ヒトおよびカニクイザルのPD1-Fcタンパク質への、ライブラリー由来IgG1ヌルクローンの結合に関する、直接的力価測定ELISA。Mab005、およびヒトIgG1ヌル形式のライブラリー由来クローンが、ヒト(図4A)およびカニクイザル(図4B)のPD1-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位nM)された。
図5A図5A図5D。ヒトおよびカニクイザルのPD1-Fcタンパク質への、デザインIgG1ヌルクローンIgG1-01からIgG1-15の結合に関する、直接的力価測定ELISA。Mab005、およびヒトIgG1ヌル形式のデザインクローンが、ヒト(図5A図5B)およびカニクイザル(図5C図5D)のPD1-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位nM)された。
図5B】同上。
図5C】同上。
図5D】同上。
図6図6A図6B。AlphascreenにおけるIgG1ヌルタンパク質のエピトープ競合解析。抗PD1 IgG1ヌルクローンに、Alphascreen技術を使用したエピトープ競合アッセイを行った。このアッセイにおいて、ライブラリー由来IgG(図6A)およびデザインIgG(図6B)は、Mab005 IgG1ヌルに対して、溶液中のヒトPD1タンパク質への結合を競合することにより、相対的アフィニティと、親Mab005エピトープの保持に関して解析された。解析されたすべてのクローンは、PD1に対するMab-005結合の、強力で濃度依存性の中和を示した。
図7図7A図7C。ヒトPD1+CHO細胞に対するフローサイトメトリー結合。ヒトPD1を発現するCHO-K1細胞に対する特異的な結合に関して、IgG1-Mab005(ヒト化)、リードライブラリー由来IgG(図7A)およびデザインIgG(図7B)を検証した。ほぼすべてのクローンについてヒトPD1に対して濃度依存性の結合が観察されるとともに、IgG1-Mab005(ヒト化)ではより弱い結合が観察された。唯一の例外がクローンIgG1-15であり、IgG1-Mab005(ヒト化)よりも弱い結合を示した(図7C)。
図8図8A図8B。カニクイザルPD1+ CHO細胞に対する結合のフローサイトメトリー試験。カニクイザルPD1を発現するCHO-K1細胞に対する特異的な結合に関して、IgG1-Mab005(ヒト化)、リードライブラリー由来IgG(図8A)およびデザインIgG(図8B)を検証した。ほぼすべてのクローンについてカニクイザルPD1に対して濃度依存性の結合が観察されるとともに、IgG1-Mab005(ヒト化)では有意により強い結合が観察された。
図9図9。細胞系PD1/PD-L1アンタゴニズムアッセイ。ヒトIgG1ヌル形式でのリードクローンIgG1-11、IgG1-14、IgG1-06D02およびIgG1-16H10に関する、細胞表面におけるヒトPD1機能のアンタゴニズムの分析では、新規クローンすべてが、濃度依存性拮抗作用を呈して、IgG1-Mab005(ヒト化)およびIgG4 ニボルマブアナログの両方と比較してより高い相対効力を伴うことが示された。
図10図10A図10E。非特異的(off-target)結合解析チップアレイアッセイ。IgG1-Mab005(ヒト化)のための4975個のヒト受容体に対して、アレイ系結合スクリーニングを実行した後で、結合特異性の確認分析を、チップ上で行ったが、当該チップにおいては、PD1をコードするプラスミドおよび推定上のMab005非特異的結合タンパク質が配置されており、これを用いてHEK293細胞がトランスフェクトされた。すべてのプラスミドの有効なトランスフェクションは、一緒にコードされたマーカーのZSグリーンをスクリーニングすることにより確認された(図10A)。次いでそれぞれのチップを、IgG1-Mab005(ヒト化)(図10B)、アイソタイプIgG1(図10C)、リツキシマブ(図10D)および一次抗体なし(図10E)を用いてデュプリケートで調べた。これら解析により、IgG1-Mab005(ヒト化)のみがPD1に対する結合を示したが、IgG1-Mab005(ヒト化)はまたKDR、FZD5およびULBP2タンパク質に対する予期せぬ非特異的な結合を示した。
図11-1】図11A図11T。非特異的結合解析再アレイアッセイ。結合特異性の解析をチップに対して行った。チップには、関連性のある標的をコードするプラスミドが配置されており、当該プラスミドを使用してHEK293細胞がトランスフェクトされた。すべてのプラスミドのトランスフェクションは、一緒にコードされたマーカーのZSグリーンをスクリーニングすることにより確認された(図11A)。次いでそれぞれのチップを、ペムブロリズマブアナログ(図11B)、リツキシマブ(図11C)、アイソタイプIgG1(図11D)、mVH/mVL Mab005-IgG1(図11E)、IgG1-Mab005(ヒト化)(図11F)ならびにライブラリー由来のリードIgGおよびデザインリードIgG(図11G図11T)を用いてデュプリケートで調べた。これら解析により、mVH/mVL Mab005 IgG1(オリジナルのマウスハイブリドーマv-ドメイン)およびIgG1-Mab005(ヒト化)がいずれもPD1に対する結合を示したが、これらはまたKDR、FZD5およびULBP2タンパク質に対する予期せぬ非特異的な結合も示した。対照的に、リード抗体(図11G図11T)のうち、PD1以外の任意のタンパク質に対して測定可能なシグナル(すなわち、結合していること)を示すものはなかった。
図11-2】同上。
図11-3】同上。
図11-4】同上。
図12-1】図12A図12P。一過性トランスフェクトしたHEK293細胞を用いたフローサイトメトリによるPD1結合解析。結合特異性の解析は、ヒトPD1(灰色線)またはZSグリーンマーカ(黒色線)のいずれかをコードしたプラスミドで一過性トランスフェクトしたHEK293細胞で行った。次いでトランスフェクトした細胞は、mVH/mVL Mab005-IgG1、IgG1-Mab005(ヒト化)、ペムブロリズマブアナログ、アイソタイプIgG1、およびリード抗体のサブセット(IgG1-06D02、IgG1-12HO4、IgG1-05、IgG1-08)を用いて染色した。各抗体は、高濃度(5μg/ml)と中程度の濃度(1μg/ml)とで繰り返し染色で用いた。これら解析により、全ての抗体(アイソタイプコントロールIgG1以外)が、PD1に対する結合を示したが、ZSグリーンをトランスフェクトした細胞に対して測定可能なシグナルを示す抗体はないということが確認された。
図12-2】同上。
図13-1】図13A図13P。一過性トランスフェクトしたHEK293細胞を用いたフローサイトメトリによるFZD5結合解析。結合特異性の解析は、ヒトFZD5(灰色線)またはZSグリーンマーカ(黒色線)のいずれかをコードしたプラスミドで一過性トランスフェクトしたHEK293細胞で行った。次いでトランスフェクトした細胞は、mVH/mVL Mab005-IgG1、IgG1-Mab005(ヒト化)、ペムブロリズマブアナログ、アイソタイプIgG1、およびリード抗体のサブセット(IgG1-06D02、IgG1-12HO4、IgG1-05、IgG1-08)を用いて染色した。各抗体は、高濃度(5μg/ml)と中程度の濃度(1μg/ml)とで繰り返し染色で用いた。これら解析により、FZD5発現細胞に対する結合を示した抗体は、mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)のみであることが確認された。
図13-2】同上。
図14-1】図14A図14P。一過性トランスフェクトしたHEK293細胞を用いたフローサイトメトリによるKDR結合解析。結合特異性の解析は、ヒトKDR(灰色線)またはZSグリーンマーカ(黒色線)のいずれかをコードしたプラスミドで一過性トランスフェクトしたHEK293細胞で行った。次いでトランスフェクトした細胞は、mVH/mVL Mab005-IgG1、IgG1-Mab005(ヒト化)、ペムブロリズマブアナログ、アイソタイプIgG1、およびリード抗体のサブセット(IgG1-06D02、IgG1-12HO4、IgG1-05、IgG1-08)を用いて染色した。各抗体は、高濃度(5μg/ml)と中程度の濃度(1μg/ml)とで繰り返し染色で用いた。これら解析により、KDR発現細胞に対する結合を示した抗体は、mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)のみであることが確認された。
図14-2】同上。
図15-1】図15A図15P。一過性トランスフェクトしたHEK293細胞を用いたフローサイトメトリによるULBP2結合解析。結合特異性の解析は、ヒトULBP2(灰色線)またはZSグリーンマーカ(黒色線)のいずれかをコードしたプラスミドで一過性トランスフェクトしたHEK293細胞で行った。次いでトランスフェクトした細胞は、mVH/mVL Mab005-IgG1、IgG1-Mab005(ヒト化)、ペムブロリズマブアナログ、アイソタイプIgG1、およびリード抗体のサブセット(IgG1-06D02、IgG1-12HO4、IgG1-05、IgG1-08)を用いて染色した。各抗体は、高濃度(5μg/ml)と中程度の濃度(1μg/ml)とで繰り返し染色で用いた。これら解析により、ULBP2発現細胞に対する結合を示した抗体は、mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)のみであることが確認された。
図15-2】同上。
図16-1】図16A図16F。非特異的結合解析ELISAアッセイ。IgG1-Mab005(ヒト化)、mVH/mVL Mab005-IgG1、ライブラリー由来クローンおよびヒトIgG1ヌル形式でのデザインクローンを、ヒトPD1(図16A)およびカニクイザルPD1(図16B)、ヒトVEGFR2(図16C)およびアカゲザルVEGFR2(図16D)、ヒトFZD5(図16E)およびBSA(図16F)のタンパク質に対する直接結合ELISAにおいて力価測定(単位μg/ml)した。これら解析により、全ての抗PD1抗体がPD1に対する結合を示したが、IgG1-Mab005(ヒト化)およびmVH/mVL Mab005-IgG1のみが、VEGFR2およびFZD5のタンパク質への測定可能な非特異的結合を示すことが確認された。
図16-2】同上。
図16-3】同上。
図17図17。ビアコア(Biacore)による、mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)に対するVEGFR2結合。ヒトおよびアカゲザルの単量体VEGFR2-hisタンパク質を、抗ヒトIgG1-Fc抗体で捕捉した、mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)に対する直接結合ELISAにおいて、力価測定(単位nM)した。これら解析により、両方の抗PD1抗体がVEGFR2組換えタンパク質に対する結合を示したが、結合は、高濃度の可溶性分析物でのみ観察されることが確認された。結果的に、信頼できるKD値は生成されなかった。
図18図18。細胞系VEGFR2アゴニズムアッセイ。mVH/mVL Mab005-IgG1、IgG1-Mab005(ヒト化)、ライブラリー由来クローンおよびヒトIgG1ヌル形式でのデザインクローンを、ヒトVEGFR2シグナル伝達アッセイにおいて力価測定(単位nM)した。mVH/mVL Mab005-IgG1、IgG1-Mab005(ヒト化)および陽性対照のタンパク質(ヒトVEGF-165)の全てが、強い、濃度依存性のVEGFR2アゴニズムを誘発した。リードクローンIgG1-04、IgG1-08、IgG1-06D02およびIgG1-12H04は、1μM程度の高い濃度であっても、測定可能なアゴニズムを示さなかった。
図19図19。IgGの示差走査熱量測定法(DSC:Differential Scanning Calorimetry)。以下のIgG1ヌル形式での抗体に関するDSCアッセイのデータ:(mAb-1)IgG1-05、(mAb-2)IgG1-08、(mAb-3)IgG1-Mab005(ヒト化)、(mAb-4)IgG1-06D02、および(mAb-5)IgG1-12H04。
図20A図20A図20B。強制酸化の前および後のIgGからのトリプシン処理ペプチドの逆相クロマトグラフィー解析。逆相クロマトグラムが、以下のIgG1ヌル形式での抗体に関して:IgG1-Mab005(ヒト化)(図20A)が最大6ペプチドで三価後の変化を示すこと、一方で例えばIgG1-06D02(図20B)であるリードクローンは、2つの変形体のみで酸化に対する強い抵抗性を示すこと、が示された。
図20B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の第一の態様によると、ヒトPD1、およびカニクイザルPD1にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分が提供され、当該抗体分子または抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR1:G-F-T-F-S-S-Y-Lまたは任意のアミノ酸(例えば、A/D/E/F/G/H/I/N/P/Q/S/T/V/W/Y)-M-S(配列番号26)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR2:VまたはV-A-T/N-I-S-G-G-G-A/S-E/N-T/K-Y-Y-P/V-D-S-V-K-Gの保存的置換(配列番号27)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するHCDR3:Qまたは任意のアミノ酸(例えば、T/L/M/N)-Lまたは任意のアミノ酸(例えば、G/K/M/Q/S/V)-YまたはYの保存的置換(例えば、H)-Yまたは任意のアミノ酸(例えば、A/D/F/G/M-A/D/E/F/I/K/M/S/W)-Fまたは任意のアミノ酸(例えば、A/D/EI/K/M/S/W)-D-Y(配列番号28)と、を伴う重鎖可変領域を含む。
【0040】
一部の態様では、本明細書に提供される抗PD1抗体または抗原結合部分は、配列番号20または配列番号21を含有する、または配列番号20または配列番号21からなる、PD1タンパク質に特異的に結合する。一部の態様では、本明細書に提供される抗PD1抗体または抗原結合部分は、配列番号20または配列番号21に対して、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を有するPD1タンパク質に特異的に結合する。
【0041】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR1は、配列GFTFSSYMMS(配列番号29、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のHCDR1)、および/または配列TISGGGANTYYPDSVKG(配列番号30、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のHCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のHCDR3は、配列QLYYFDY(配列番号31、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のHCDR3)を除外してもよい。
【0042】
本発明による抗体分子またはその抗原結合部分は、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR1:R-A-S-Q-S-I-S、またはS-Sの保存的置換、またはS-Yの保存的置換、またはY-Lの保存的置換、またはL-N/Tの保存的置換、またはNもしくはTの保存的置換(配列番号32)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR2:A/T、またはAもしくはT-A-Sの保存的置換、またはS-S-L-Qの保存的置換または任意のアミノ酸(例えば、A/H)-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、D、Y)(配列番号33)と、
以下の順序で配列中にアミノ酸を有するLCDR3:Q-Q-Sまたは任意のアミノ酸(例えば、V)-Y-S-Tまたは任意のアミノ酸(例えば、I)-P-Wまたは任意のアミノ酸(例えば、L)-T(配列番号34)と、を伴う軽鎖可変領域をさらに含んでもよい。
【0043】
本発明の態様において、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR1は、配列LASQTIGTWLT(配列番号35、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のLCDR1)を除外してもよく、および/または、抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR2は、配列TATSLAD(配列番号36、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のLCDR2)を除外してもよく、および/または抗体分子もしくは抗原結合部分のLCDR3は、配列QQVYSIPWT(配列番号37、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるMAb005マウス/ヒト化抗体のLCDR3)を除外してもよい。
【0044】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含有する重鎖可変(VH)領域、ならびにLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含有する軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)HCDR1は、アミノ酸配列G-F-T-F-S-S-Y-X-M-Sを含み、式中、XはLまたは任意の他のアミノ酸(例えば、A、D、E、F、G、H、I、N、P、Q、S、T、V、W、またはY)であり(配列番号26)、
(b)HCDR2は、アミノ酸配列X-A-X-I-S-G-G-G-X-X-X-Y-Y-X-D-S-V-K-Gを含み、式中、XはV、またはVの保存的置換であり、XはTまたはNであり、XはAまたはSであり、XはEまたはNであり、XはTまたはKであり、またXはPまたはVであり(配列番号27)、
(c)HCDR3は、アミノ酸配列X-X-X-X-X-D-Yを含み、式中、XはQまたは任意の他のアミノ酸(例えば、T、L、MまたはN)であり、XはLまたは任意の他のアミノ酸(例えば、G、K、M、Q、SまたはV)であり、XはY、またはYの保存的置換(例えば、H)であり、XはYまたは任意の他のアミノ酸(例えば、A、D、F、G、M、E、I、K、SまたはW)であり、またXはFまたは任意の他のアミノ酸(例えば、A、D、E、I、K、M、SまたはW)であり(配列番号28)、
(d)LCDR1は、アミノ酸配列R-A-S-Q-S-I-X-X-X-X-Xを含み、式中、XはSまたはSの保存的置換であり、XはSまたはSの保存的置換であり、XはYまたはYの保存的置換であり、XはLまたはLの保存的置換であり、またXはNもしくはTまたはNもしくはTの保存的置換であり(配列番号32)、
(e)LCDR2は、アミノ酸配列X-A-X-S-L-X-Xを含み、式中、XはAもしくはT、またはAもしくはTの保存的置換であり、XはS、またはSの保存的置換であり、XはQまたは任意の他のアミノ酸(例えば、AまたはH)であり、またXはSまたは任意の他のアミノ酸(例えば、DまたはY)であり(配列番号33)、
(f)LCDR3は、アミノ酸配列Q-Q-X-Y-S-X2-P-X-Tを含み、式中、XはSまたは任意の他のアミノ酸(例えば、V)であり、XはTまたは任意の他のアミノ酸(例えば、I)であり、またXはWまたは任意の他のアミノ酸(例えば、L)である(配列番号34)。
【0045】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、この場合において当該抗体は、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4を含有する重鎖可変(VH)領域、およびアミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4を含有する軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、HCDR1は、配列番号26であり、HCDR2は、配列番号27であり、HCDR3は、配列番号28であり、LCDR1は、配列番号32であり、LCDR2は、配列番号33であり、そしてLCDR3は、配列番号34であり、この場合において当該重鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列は、配列番号120(表2を参照のこと)内の重鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列であり、またこの場合において当該軽鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列は、配列番号122(表2を参照のこと)内の軽鎖のFR1、FR2、FR3およびFR4のアミノ酸配列である。
【0046】
本明細書に詳述されるように、本発明者らは、国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号に開示されるマウス抗PD1抗体MAb005から誘導されたCDR配列を使用し、多数の最適化された抗PD1抗体分子を作製することに初めて成功した。本発明の実施形態において、これら抗体分子は、ヒトPD1ならびにカニクイザルPD1に対する結合特異性およびアフィニティを同等に有するよう選択された(最大限に正確な霊長類の毒性試験およびpk試験を容易にするため)。本明細書に記載される最適化抗体分子にさらなる改善を行うことによって、カニクイザルのPD1オルソログへの結合の改善、PD1/PD-L1シグナル伝達の中和における有効性の改善、可変ドメインの安定性の改善、高い発現収率、および/または免疫原性の可能性の低下が提供される。詳細には、これら抗体はまた、ヒト受容体であるKDR(VEGFR2としても知られる)、FZD5およびULBP2への非特異的結合を切断することによって、MAb005と比較してPD1結合の特異性を劇的に改善させた。
【0047】
一部の態様において、本発明の最適化抗PD1抗体分子は、対応するマウスCDRまたはその他(例えばフレームワーク)のアミノ酸の位置で、必ずしも最大数のヒト生殖細胞系列の置換を有するとは限らない。以下の実施例の項に詳述されるように、本発明者らは、「最大限にヒト化された」抗体分子は、抗PD1結合特性および/または他の望ましい性質に関して、必ずしも「最大限に最適化」されているとは限らないことを見出した。
【0048】
一部の実施形態では、本発明の最適化抗PD1抗体分子は、カニクイザルPD1における機能的に同一のエピトープのそれらの結合で、Mab005抗体(国際公開第2015/085847A1号、米国特許出願公開第2016/376367A1号)よりも改善される。以下の実験の項で詳述するように、本発明者らは、いくつかの最適化クローンが、単量体カニクイザルPD1タンパク質への結合に関して32nMより低い値のビアコアKD値(例えば、2.7~15nM)およびカニクイザルPD1を発現するCHO細胞のフローサイトメトリー染色において6.5nM(例えば、0.86~2.17nM)より低いEC50値を示すことを見出した。
【0049】
本発明は、本明細書に記載される抗体分子またはその抗原結合部分のアミノ酸配列に対する改変を包含する。例えば本発明は、その性質に大きな影響を与えない、機能的に同等の可変領域およびCDRを含有する抗体分子およびその対応する抗原結合部分、ならびに活性および/もしくはアフィニティが強化された、および/または低下したバリアントを包含する。例えばアミノ酸配列は、PD1に対し所望の結合アフィニティを有する抗体が得られるように変異されてもよい。1残基から数百以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ末端融合および/またはカルボキシル末端融合を含み、ならびに単一アミノ酸残基または複数のアミノ酸残基の配列間挿入を含む挿入が予期される。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体分子、またはエピトープタグに融合された抗体分子が挙げられる。抗体分子のその他の挿入バリアントとしては、酵素またはポリペプチドの、抗体N末端または抗体C末端への融合が挙げられ、それにより血液循環中の抗体の半減期が延長される。
【0050】
本発明の抗体分子または抗原結合部分は、グリコシル化ポリペプチドおよび非グリコシル化ポリペプチド、ならびに他の翻訳後修飾を有するポリペプチド、例えば異なる糖類でのグリコシル化、アセチル化およびリン酸化を有するポリペプチドを含んでもよい。例えば1つまたは複数のアミノ酸残基を付加、除去または置換させ、グリコシル化部位を形成または除去させることにより、本発明の抗体分子または抗原結合部分を変異させて、当該翻訳後修飾を変化させてもよい。
【0051】
本発明の抗体分子または抗原結合部分は、例えば抗体中の潜在的なタンパク質分解部位を除去するアミノ酸置換により改変されてもよい。
【0052】
抗体分子またはその抗原結合部分において、HCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G-F-T-F-S-S-Y-A/D/E/F/H/I/L/N/P/Q/S/T/V/W/Y-M-S(配列番号55);HCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:V-A-T/N-I-S-G-G-G-S/A-E/N-T/K-Y-Y-V/P-D-S-V-K-G(配列番号56);またHCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:Q/L/M/N/T-L/G/K/Q/M/S/V-Y/H-Y/A/D/G/F/M-F/A/D/E/I/K/M/S/W/Y-D-Y(配列番号57)。
【0053】
例えば、HCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:G-F-T-F-S-S-Y-L/A/S-M-S(配列番号58);HCDR2は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:V-A-T-I-S-G-G-G-S/A-E/N-T/K-Y-Y-V-D-S-V-K-G(配列番号59);またHCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:Q-L/V-Y-Y/G/F/A-F/Y/A-D-Y(配列番号60)。
【0054】
抗体分子またはその抗原結合部分において、LCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R-A-S-Q-T/S-I-G/S-T/S-W/Y-L-T/N(配列番号61);LCDR2は、アミノ酸配列T/A-A-T/S-S-L-A/Q/H-D/S(配列番号62)を有してもよい;またLCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:Q-Q-V/S-Y-S-I/T-P-W/L-T(配列番号63)。
【0055】
例えば、LCDR1は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:R-A-S-Q-S-I-G/S-T/S-W/Y-L-N(配列番号64);LCDR2は、アミノ酸配列A-A-S-S-L-Q/H-S(配列番号65)を有してもよい;またLCDR3は、以下のアミノ酸配列を有してもよい:Q-Q-S-Y-S-I/T-P-W-T(配列番号66)。
【0056】
本発明の特定の実施形態において、抗体分子または抗原結合部分は、以下を含有してもよい:
(a)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSIPWT(配列番号47;LCDR3)[クローン06D02];または
(b)アミノ酸配列
GFTFSSYAMS(配列番号67;HCDR1)、VATISGGGSNKYYVDSVKG(配列番号68;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISTWLN(配列番号52;LCDR1)、AATSLAS(配列番号69;LCDR2)およびQQSYSIPWT(配列番号47;LCDR3)[クローン08F04];
(c)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGAETYYVDSVKG(配列番号70;HCDR2)、QLYFFDY(配列番号45;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、TASSLQD(配列番号71;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローン11G05];
(d)アミノ酸配列
GFTFSSYAMS(配列番号67;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYYADY(配列番号72;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、TASSLAD(配列番号73;LCDR2)およびQQSYSIPWT(配列番号47;LCDR3)[クローン12E02];
(e)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQD(配列番号50;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローン12H04];
(f)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSNTYYVDSVKG(配列番号51;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISTWLN(配列番号52;LCDR1)、AASSLAS(配列番号53;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローン12B07];
(g)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISSYLN(配列番号74;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローン13G02];
(h)アミノ酸配列
GFTFSSYSMS(配列番号75;HCDR1)、VATISGGGAETYYVDSVKG(配列番号70;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSIPWT(配列番号47;LCDR3)[クローン14C07];
(i)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSNKYYVDSVKG(配列番号68;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSIGTYLN(配列番号76;LCDR1)、AATSLQS(配列番号77;LCDR2)およびQQSYSIPWT(配列番号47;LCDR3)[クローン15C10];
(j)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49;HCDR2)、QLYAFDY(配列番号46;HCDR3)、RASQSIGSYLN(配列番号78;LCDR1)、TASSLQS(配列番号79;LCDR2)およびQQSYSIPWT(配列番号47;LCDR3)[クローン16C07];
(k)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QVYYFDY(配列番号44;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLHS(配列番号54;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローン16H10];
(l)アミノ酸配列
GFTFSSYPMS(配列番号80;HCDR1)、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48;HCDR2)、QLYYYDY(配列番号81;HCDR3)、RASQSISTWLN(配列番号52;LCDR1)、AASSLQY(配列番号82;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローン17B11];
(m)アミノ酸配列
GFTFSSYAMS(配列番号67;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYYADY(配列番号72;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-01(VLドメインはJK4配列を含有する)];
(n)アミノ酸配列
GFTFSSYAMS(配列番号67;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYYADY(配列番号72;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-02(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(o)アミノ酸配列
GFTFSSYAMS(配列番号67;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYYADY(配列番号72;HCDR3)、RASQSISSYLN(配列番号74;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-03(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(p)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QVYYFDY(配列番号44;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-04(VLドメインはJK4配列を含有する)];
(q)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QVYYFDY(配列番号44;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-05(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(r)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QVYYFDY(配列番号44;HCDR3)、RASQSISSYLN(配列番号74;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-06(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(s)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-07(VLドメインはJK4配列を含有する)];
(t)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-08(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(u)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYGFDY(配列番号40;HCDR3)、RASQSISSYLN(配列番号74;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-09(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(v)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYFFDY(配列番号45;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-10(VLドメインはJK4配列を含有する)];
(w)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYFFDY(配列番号45;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-11(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(x)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYFFDY(配列番号45;HCDR3)、RASQSISSYLN(配列番号74;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-12(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(y)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYAFDY(配列番号46;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-13(VLドメインはJK4配列を含有する)];
(z)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYAFDY(配列番号46;HCDR3)、RASQSISSWLN(配列番号41;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-14(VLドメインはJK1配列を含有する)];
(z1)アミノ酸配列
GFTFSSYLMS(配列番号38;HCDR1)、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39;HCDR2)、QLYAFDY(配列番号46;HCDR3)、RASQSISSYLN(配列番号74;LCDR1)、AASSLQS(配列番号42;LCDR2)およびQQSYSTPWT(配列番号43;LCDR3)[クローンIgG1-15(VLドメインはJK1配列を含有する)]。
【0057】
一部の態様において、本発明は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を提供するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYFFDY(配列番号45)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYAFDY(配列番号46)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSIPWT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQD(配列番号50)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSIPWT(配列番号47)のLCDR3を含み、
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQD(配列番号50)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(i)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSNTYYVDSVKG(配列番号51)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISTWLN(配列番号52)のLCDR1、AASSLAS(配列番号53)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、
(j)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLHS(配列番号54)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、または
(k)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、ならびにVL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含む。
【0058】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、この場合において当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において当該VH領域は、表17のVH領域アミノ酸配列のうちのいずれか1つを含有し、当該VL領域は、表17のVL領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有する。
【0059】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含み、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含み、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含み、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含み、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含み、または
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含み、かつ、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含む。
【0060】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域アミノ酸配列は、配列番号1に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号2に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(b)VH領域アミノ酸配列は、配列番号3に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号4に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(c)VH領域アミノ酸配列は、配列番号5に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号6に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(d)VH領域アミノ酸配列は、配列番号7に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号8に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;
(e)VH領域アミノ酸配列は、配列番号9に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号10に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である;または
(f)VH領域アミノ酸配列は、配列番号11に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であり、VL領域アミノ酸配列は、配列番号12に対し、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一である。一部の態様において、抗PD1抗体のCDRアミノ酸配列は、列挙される配列中のCDRアミノ酸配列に対して100%同一であるが、FRアミノ酸配列は、列挙される配列中のFRアミノ酸配列に対し、100%未満の同一性である。
【0061】
一部の態様において、本明細書に規定される抗体または抗原結合部分は、単離されてもよい。
【0062】
本明細書に規定される抗体分子または抗原結合部分は、PD1への結合を、本明細書に開示されるCDRセットを含有する抗体またはその抗原結合部分と交差競合できる。一部の実施形態において、本発明は、単離された抗PD1抗体またはその抗原結合部分を提供するものであって、当該抗体または抗原結合部分は、本明細書に開示するCDRのセットを含む抗体または抗原結合部分と、PD1との結合に関して交差競合し、また(a)完全なヒト生殖細胞系列フレームワークのアミノ酸配列を含み;(b)ヒトPD1およびカニクイザルPD1に特異的に結合し;(c)260ng/mlより低いEC50でヒトPD1のヒトPD-L1への結合を拮抗し;(d)32nMより低いKDで単量体カニクイザルPD1と結合し;(e)6.5nMより低いEC50でカニクイザルPD1発現細胞に結合し;(f)カニクイザルPD1およびヒトPD1における機能的に同一のエピトープに結合し;(g)LCDR2において高いMHCクラスII結合アフィニティをもつヒト生殖細胞系列ペプチド配列を含み;(h)抗体Mab005の可変ドメイン配列を含む抗PD1抗体と比較して少ない数の免疫原性ペプチドを含み;(i)抗体Mab005の可変ドメイン配列を含む抗PD1抗体と比較して低い免疫原性を示し;(j)脱免疫化VL領域(例えば、完全脱免疫化VL領域)を含み;(k)KDR、FZD5、ULBP2およびEPHB6のうちの1もしくは複数への結合を示さず;ならびに/または(l)KDR、FZD5、ULBP2およびEPHB6のうちの1もしくは複数を無効にしないもしくは最小限で無効にする。一部の実施形態では、抗体または抗原結合部分のKD値は、ビアコア解析により決定できる。一部の実施形態では、抗体または抗原結合部分のEC50値は、PD-1発現細胞(例えば、CHO細胞)のフローサイトメトリー染色により決定できる。一部の実施形態では、KDR、FZD5、ULBP2またはEPHB6への結合は、フローサイトメトリー解析により決定できる。
【0063】
一部の実施形態では、抗PD1抗体または抗原結合部分は、低い免疫原性を有する。特定の場合においては、抗体または抗原結合部分は、GFTFSSYMMS(配列番号29)のHCDR1、TISGGGANTYYPDSVKG(配列番号30)のHCDR2、QLYYFDY(配列番号31)のHCDR3、LASQTIGTWLT(配列番号35)のLCDR1、TATSLAD(配列番号36)のLCDR2、およびQQVYSIPWT(配列番号37)のLCDR3を含む抗PD1抗体と比べて、低い免疫原性を示す。一部の例では、抗体または抗原結合部分の免疫原性リスクは、インシリコで、当該抗体または部分(例えば抗体または部分の可変領域にある)におけるT細胞エピトープの位置を特定することにより決定されてもよい。
【0064】
例えば、抗体または抗原結合部分にあるT細胞エピトープは、iTope(商標)を使用して特定されてもよい。iTope(商標)を使用して、ヒトMHCクラスIIに対する無差別的な高いアフィニティの結合を有するペプチドのVL領域およびVH領域の配列を分析することができる。無差別的な高いアフィニティのMHCクラスII結合ペプチドは、薬剤タンパク質の臨床免疫原性に関する高いリスク指標であるT細胞エピトープの存在と相関すると考えられている。iTope(商標)ソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖と、34種のヒトMHCクラスIIアレルの開放末端結合溝(groove)内の特定の結合ポケット(特にポケット位置;p1、p4、p6、p7およびp9)との間の有益な相互作用を予測する。これらのアレルは、広く存在する最も普遍的なHLA-DRアレルであり、任意の特定の民族集団で最も多く存在するものによって起こる重み付けはない。当該アレルのうちの20種が、「開いた」p1構造を含有している。そして14種が「閉じた」構造を含有しており、83位のグリシンがバリンで置換されている。重要な結合残基の位置は、被験タンパク質配列にわたり8アミノ酸が重複している9merペプチドのインシリコ生成により取得される。このプロセスによって、MHCクラスII分子に結合する、または結合しないペプチド同士を高い正確性で識別することに成功した。
【0065】
抗体または抗原結合部分中のT細胞エピトープは、TCED(商標)(T細胞エピトープデータベース(T Cell Epitope Database(商標)))を使用してVL領域配列とVH領域配列とを解析し、過去にインビトロでの他のタンパク質配列のヒトT細胞エピトープマッピング解析により特定されたT細胞エピトープとの合致を検索することにより特定されてもよい。TCED(商標)を使用して、非関連タンパク質に由来するペプチドの大きな(10,000個を超えるペプチド)データベースに対する任意の被験配列と、抗体配列とを検索する。
【0066】
一部の実施形態では、抗PD1抗体または抗原結合部分は、その配列において以下のペプチドのうちの1つまたは複数の数が少ないことから、低い免疫原性を呈する場合がある:高アフィニティ外来物(「HAF」-高免疫原性リスク)、低アフィニティ外来物(「LAF」-低免疫原性リスク)、および/またはTCED+(過去にTCED(商標)データベースにおいて特定されたエピトープ)。
【0067】
一部の実施形態では、抗PD1抗体または抗原結合部分は、その配列において高い生殖細胞系列エピトープ(GE)含量を有する場合がある。一部の例では、抗PD1抗体または抗原結合部分は、その配列(例えば、VL領域配列および/またはVH領域配列において)において3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個(または20個より多い)生殖細胞系列エピトープを有する。生殖細胞系列エピトープは、高いMHCクラスII結合アフィニティをもつヒト生殖細胞系列ペプチド配列として規定され得る。生殖細胞系列エピトープの9merペプチドは、広範な生殖細胞系列ペプチドを用いた過去の研究により立証されたように、T細胞寛容によって免疫原性である可能性は低い。重要なことは、そうした生殖細胞系列のv-ドメインエピトープ(ヒト抗体定常領域中の類似配列によりさらに補助される)は、抗原提示細胞の細胞膜でのMHCクラスII占有に関しても競合するため、T細胞刺激に必要とされる「活性化閾値」を達成するのに充分な外来性ペプチド提示のリスクを低下させることである。ゆえにGE含量の高さは抗体治療剤の臨床開発では有益な性質であり、低免疫原性をもたらし得る。一部の例では、抗PD1抗体または抗原結合部分は、高いMHCクラスII結合アフィニティをもつヒト生殖細胞系列ペプチド配列(例えば生殖細胞系列エピトープ)を、LCDR2に含有する。
【0068】
ある実施形態では、抗PD1抗体または抗原結合部分は、抗体Mab005の可変ドメイン配列(表2)を含む抗PD1抗体と比較して、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方のフレームワークに存在するHAF、LAF、および/またはTCED+エピトープの数が少ない場合がある。一部の実施形態では、HAF、LAFおよび/またはTCED+エピトープは、抗PD1抗体もしくは抗原結合部分のVL領域配列および/またはVH領域配列に存在しない。
【0069】
例えば、Mab005のLCDR-1中に存在するTCED+およびHAFペプチドの「VTITCLASQ」(配列番号83)は、抗PD1抗体または抗原結合部分において6位でLをRに変異させることで除去され得、この配列は軽鎖GEの「VTITCRASQ」(配列番号84)に転換される。
【0070】
一部の実施形態では、Mab005のLCDR-1中に存在するLAFペプチド「IGTWLTWYQ」(配列番号85)は、抗PD1抗体または抗原結合部分において(表12)、4位に単一のマウス残基Wのみを保持することで除去され得、この配列は「ISSWLNWYQ」(配列番号86)に転換される。
【0071】
一部の実施形態では、Mab005 HAFペプチド「LLIYTATSL」(配列番号87)および「LIYTATSLA」(配列番号88)、ならびにLAFペプチド「IYTATSLAD」(配列番号89)は、抗PD1抗体または抗原結合部分において、マウス配列「TATSLAD」(配列番号36)から完全な生殖細胞系列配列「AASSLQS」(配列番号42)へのLCDR2の変異によって、除かれてGE配列に変換できる。
【0072】
Mab005 FW3/LCDR3領域はまた、LAFペプチド「YYCQQVYSI」(配列番号90)をコードする。一部の実施形態では、このエピトープは、抗PD1抗体または抗原結合部分において、6位のVのSへの生殖細胞系列化変異によって除くことができる。
【0073】
Mab005のVH領域において、ペプチド配列「LYYFDYWGQ」(配列番号91)(HCDR3およびFW4にわたる)は、LAFであることがわかった。一部の実施形態において、このペプチドにおける3位のYのAへの変異により、抗PD1抗体または抗原結合部分(表4、12)におけるこのエピトープの除去が可能になる。
【0074】
「交差競合する」、「交差競合」、「交差遮断する」、「交差遮断される」、および「交差遮断すること」という用語は本明細書において相互交換可能に使用され、抗体またはその部分がもつ、標的PD1(例えば、ヒトPD1)に対する直接結合または本発明の抗PD1抗体のアロステリック調節を介した間接的結合を干渉する能力を意味する。抗体またはその部分が、別物質による標的結合に干渉することができる度合、つまり本発明により交差遮断する、または交差競合すると言えるかどうかは、競合結合アッセイを使用して決定され得る。結合競合アッセイの一例は、HTRF法(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)である。1つの特に適した定量的交差競合アッセイは、FACS系またはAlphaScreen系の方法を使用して、標識(例えばHisタグ化、ビオチン化、または放射性標識)された抗体またはその部分と、他の抗体またはその部分との間の、標的への結合に関する競合を測定する。概して、交差競合抗体またはその部分は、例えば、アッセイの間に、および第二の抗体またはその部分の存在下で、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録される変位が、所与の量で存在する潜在的に交差遮断する抗体またはその断片による、(例えばFACS系競合アッセイにおける)理論上の最大変位(例えばコールド(例えば非標識)抗体または交差遮断されるために必要なその断片による変位)の100%以下となるように、交差競合アッセイにおいて標的に結合することとなるものである。交差競合抗体またはその部分は、10%~100%、または50%~100%の記録される変位を有することが好ましい。
【0075】
本明細書において規定される抗PD1抗体分子または抗原結合部分は、熱的に安定であってもよい。一部の場合では、抗体分子または抗原結合部分は、マウス抗PD1抗体のMab005またはMab005-IgG1(ヒト化)と実質的に同じ熱的安定性を有してもよい。一部の場合では、抗体分子または抗原結合部分は、マウス抗PD1抗体のMab005またはMab005-IgG1(ヒト化)よりも熱的な安定性が高くてもよい。一部の例では、抗体分子または抗原結合部分は、約90℃~約93℃の融解温度(Tm)を有してもよく、およびIgG1形式であってもよい。一部の態様では、抗体分子または抗原結合部分は、約90.8℃~約92.2℃のTmを有してもよく、およびIgG1形式であってもよい。一部の態様においては、抗原結合部分は、Fab形式であってもよい。抗体分子またはその抗原結合部分の融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)アッセイにより解析されてもよい。
【0076】
本明細書に規定される抗PD1抗体分子または抗原結合部分は、酸化に対して抵抗性(例えば、露出アミノ酸残基の酸化に対する抵抗性)であってもよい。一部の場合では、抗体分子または抗原結合部分は、マウス抗PD1抗体のMab005またはMab005-IgG1(ヒト化)と比較して、または抗体Mab005-IgG1(ヒト化)の可変ドメイン配列を含有する抗PD1抗体と比較して、低い露出アミノ酸残基の酸化を経てもよい。抗体分子またはその抗原結合部分の酸化抵抗性は、酸化試薬(例えば、H)を抗体分子または抗原結合部分に添加し、酸化により誘導された変化を逆相(RP)および疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)法により解析することにより解析されてもよい。
【0077】
ある実施形態では、抗体分子またはその抗原結合部分はPD1に特異的に結合して、細胞膜受容体KDR(VEGFR2としても知られている)、FZD5(Frizzledクラス受容体5)、ULBP2(UL16結合タンパク質2)およびEPHB6のうちの1または複数とは結合しない(または特異的に結合しない)。一部の態様においては、KDR、FZD5、ULBP2および/またはEPHB6は、ヒトタンパク質である。一部の実施形態においては、KDRは、アカゲザルタンパク質である。一部の実施形態では、ヒトKDRタンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列か、または配列番号22に対して、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む、またはこれらからなる。一部の実施形態では、アカゲザルKDRタンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列か、または配列番号23に対して、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む、またはこれらからなる。一部の実施形態では、ヒトFZD5タンパク質は、配列番号24のアミノ酸配列か、または配列番号24に対して、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む、またはこれらからなる。一部の実施形態では、ヒトULBP2タンパク質は、配列番号25のアミノ酸配列か、または配列番号25に対して、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一であるアミノ酸配列を含む、またはこれらからなる。一部の実施形態では、抗体分子またはその抗原結合部分は、KDR、FZD5、ULBP2およびEPHB6のうちのいずれとも結合しない。一部の実施形態では、抗体分子またはその抗原結合部分は、抗体Mab005またはIgG1-Mab005(ヒト化)が示す前記細胞膜受容体への結合と比較して、KDR、FZD5、ULBP2およびEPHB6のうちの1または複数への結合は少ない。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分のPD1、KDR、FZD5、ULBP2またはEPHB6への結合は、フローサイトメトリー解析で決定できる。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書で開示する抗体分子またはその抗原結合部分は、PD1に特異的に結合して、KDR、FZD5、ULBP2およびEPHB6(例えば、ヒトKDR、ヒトFZD5、ヒトULBP2またはヒトEPHB6)のうちの1または複数を無効にしないまたは最小限で無効にする。一部の実施形態では、本明細書で開示する抗体分子またはその抗原結合部分は、PD1に特異的に結合して、抗体Mab005またはIgG1-Mab005(ヒト化)で示されるKDR、FZD5、ULBP2またはEPHB6のアゴニズムと比較して、KDR、FZD5、ULBP2およびEPHB6(例えば、ヒトKDR、ヒトFZD5、ヒトULBP2またはヒトEPHB6)のうちの1または複数のアゴニズムが少ない。一部の場合では、抗体分子またはその抗原結合部分によるKDR、FZD5、ULBP2またはEPHB6のアゴニズムは、KDR(またはVEGFR2)、FZD5、ULBP2またはEPHB6のシグナル伝達レポーターアッセイによって決定できる。
【0079】
本明細書に規定される抗体分子または抗原結合部分は、1つまたは複数の置換、欠失および/または挿入を含んでもよく、それらにより例えばグリコシル化部位(N結合型またはO結合型)、脱アミノ化部位、リン酸化部位または異性化/断片化部位などの翻訳後修飾(PTM:post-translational modification)部位が除去される。
【0080】
350を超えるタイプのPTMが公知である。重要なPTMの型としては、リン酸化、グリコシル化(N結合型およびO結合型)、SUMO化、パルミトイル化、アセチル化、硫酸化、ミリストイル化、プレニル化、および(K残基およびR残基の)メチル化が挙げられる。特定のPTMの原因となる推定アミノ酸部位を特定するための統計的手法は、当分野に周知である(Zhou et al.,2016,Nature Protocols 1:1318-1321を参照のこと)。例えば置換、欠失および/または挿入によりそうした部位を除去し、次いで任意で(a)結合活性、および/または(b)PTMの消失を検証(実験的に、および/または理論的に)することが予期される。
【0081】
例えば、MAb005マウスHCDR2(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列VATISGGGANTYYPDSVKG(配列番号92))は、10位の残基(N)で推定脱アミド化部位を有すると特定されている。本発明のHCDR2中の同等の位置にあるこの部位を、例えば保存的置換または非保存的置換(例えば、E、Q、SまたはDへの)により除去することが予期される(例えばクローン06D02、ならびに表3および4の他のクローンと同様に)。
【0082】
同様に、MAb005マウスHCDR1(本明細書に規定される、すなわちアミノ酸配列GFTFSSYMMS(配列番号29))は、8位の残基(M)で推定酸化部位を有すると特定されている。本発明のHCDR1中の同等の位置にあるこの部位を、例えば保存的置換または非保存的置換(例えば、A/D/E/F/H/I/L/N/P/Q/S/T/V/W/Yへの)により除去することが予期される(例えばクローン06D02、ならびに表3および4のさらなる配列と同様に)。
【0083】
抗体分子またはその抗原結合部分は、ヒト、ヒト化またはキメラであってもよい。
【0084】
抗体分子またはその抗原結合部分は、1つまたは複数のヒト可変ドメインフレームワークスキャホールドを含有してもよく、その中にはCDRが挿入されている。例えば、VH領域、VL領域、またはVH領域およびVL領域の両方が、1つまたは複数のヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列を含有してもよい。
【0085】
抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV3-7ヒト生殖細胞系列スキャホールドを含有してもよく、その中には対応するHCDR配列が挿入されている。抗体分子またはその抗原結合部分は、IGHV3-7ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域を含有してもよく、その中には対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されている。
【0086】
抗体分子またはその抗原結合部分は、IGKV1-39ヒト生殖細胞系列スキャホールドを含有してもよく、その中には対応するLCDR配列が挿入されている。抗体分子またはその抗原結合部分は、IGKV1-39ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVL領域を含有してもよく、その中には対応するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されている。
【0087】
抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR配列が挿入されているIGHV3-7ヒト生殖細胞系列スキャホールドと、中に対応するLCDR配列が挿入されているIGKV1-39ヒト生殖細胞系列スキャホールドとを含有してもよい。抗体分子またはその抗原結合部分は、中に対応するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGHV3-7ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVH領域と、中に対応するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットが挿入されているIGKV1-39ヒト生殖細胞系列スキャホールドのアミノ酸配列を含有するVL領域とを含有してもよい。HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列は、表4のクローンのいずれか1つのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のアミノ酸配列であってもよい(6つすべてのCDR配列が、同じクローン由来である)。
【0088】
一部の態様では、抗体分子またはその抗原結合部分は、免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1またはIgA2である。追加的な実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1またはIgA2である。抗体分子またはその抗原結合部分は、免疫学的に不活性な定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗PD1抗体またはその抗原結合部分は、野生型ヒトIgG1定常領域か、L234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域か、またはL234A、L235A、G237AおよびP331Sのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域かを含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗PD1抗体またはその抗原結合部分は、野生型ヒトIgG2定常領域または野生型ヒトIgG4定常領域を含有する、免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗PD1抗体は、表18のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。表18のFc領域配列は、CH1ドメインから始まる。一部の態様では、抗PD1抗体は、ヒトIgG4、ヒトIgG4(S228P)、ヒトIgG2、ヒトIgG1、ヒトIgG1-3MまたはヒトIgG1-4MのFc領域のアミノ酸配列を含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。例えば、ヒトIgG4(S228P)のFc領域は、野生型のヒトIgG4のFc領域と比較して以下の置換を含有する:S228P。例えば、ヒトIgG1-3MのFc領域は、野生型のヒトIgG1のFc領域と比較して以下の置換を含有する:L234A、L235AおよびG237A。一方で、ヒトIgG1-4MのFc領域は、野生型のヒトIgG1のFc領域と比較して以下の置換を含有する:L234A、L235A、G237AおよびP331S。一部の態様では、免疫グロブリン分子の定常領域中のアミノ酸残基の位置は、EUの命名法(Ward et al.,1995 Therap.Immunol.2:77-94)に従って番号付けされる。一部の態様では、免疫グロブリン定常領域は、RDELT(配列番号93)モチーフ、またはREEM(配列番号94)モチーフ(表18の下線部分)を含有してもよい。REEM(配列番号94)アロタイプは、RDELT(配列番号93)アロタイプよりも少ないヒト集団に存在する。一部の態様では、抗PD1抗体は、配列番号13~19のいずれか1つを含有する免疫グロブリン定常領域を含有してもよい。一部の態様では、抗PD1抗体は、表4のクローンのいずれか1つの6つのCDRアミノ酸配列、および表18のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有してもよい。一部の態様では、抗PD1抗体は、表18のFc領域アミノ酸配列のいずれか1つを含有する免疫グロブリン重鎖定常領域、およびカッパ軽鎖定常領域またはラムダ軽鎖定常領域である免疫グロブリン軽鎖定常領域を含有してもよい。
【0089】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(b)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(c)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYFFDY(配列番号45)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(d)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQLYAFDY(配列番号46)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(e)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSIPWT(配列番号47)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(f)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQD(配列番号50)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(g)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSETYYVDSVKG(配列番号48)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSIPWT(配列番号47)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(h)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGAEKYYVDSVKG(配列番号49)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQD(配列番号50)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(i)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSNTYYVDSVKG(配列番号51)のHCDR2、およびQLYGFDY(配列番号40)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISTWLN(配列番号52)のLCDR1、AASSLAS(配列番号53)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;
(j)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLHS(配列番号54)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含み;または
(k)VH領域のアミノ酸配列は、GFTFSSYLMS(配列番号38)のHCDR1、VATISGGGSEKYYVDSVKG(配列番号39)のHCDR2、およびQVYYFDY(配列番号44)のHCDR3を含み、VL領域のアミノ酸配列は、RASQSISSWLN(配列番号41)のLCDR1、AASSLQS(配列番号42)のLCDR2、およびQQSYSTPWT(配列番号43)のLCDR3を含み、ならびに重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含む。
【0090】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、または配列番号1からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含有し、または配列番号2からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含有し、または配列番号3からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含有し、または配列番号4からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含有し、または配列番号5からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含有し、または配列番号6からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、または配列番号7からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含有し、または配列番号8からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含有し、または配列番号9からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含有し、または配列番号10からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有し、または、
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含有し、または配列番号11からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含有し、または配列番号12からなり、および重鎖定常領域は、野生型ヒトIgG4定常領域、S228Pのアミノ酸置換を含有するヒトIgG4定常領域、野生型ヒトIgG2定常領域、野生型ヒトIgG1定常領域、またはL234A、L235A、およびG237Aのアミノ酸置換を含有するヒトIgG1定常領域を含有する。
【0091】
一部の態様において、本明細書は、抗PD1抗体またはその抗原結合部分を開示するものであり、当該抗体は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、および重鎖定常領域を含有し、この場合において、
(a)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号1を含有し、または配列番号1からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号2を含有し、または配列番号2からなり、および重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含有する;
(b)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号3を含有し、または配列番号3からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号4を含有し、または配列番号4からなり、および重鎖定常領域は、配列番13~19のいずれか1つを含有する;
(c)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号5を含有し、または配列番号5からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号6を含有し、または配列番号6からなり、重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含有する;
(d)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号7を含有し、または配列番号7からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号8を含有し、または配列番号8からなり、重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含有する;
(e)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号9を含有し、または配列番号9からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号10を含有し、または配列番号10からなり、重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含有する;または
(f)VH領域のアミノ酸配列は、配列番号11を含有し、または配列番号11からなり、VL領域のアミノ酸配列は、配列番号12を含有し、または配列番号12からなり、および重鎖定常領域は、配列番号13~19のいずれか1つを含有する。
【0092】
一部の態様では、抗PD1抗体は、免疫エフェクターが無効であってもよい。一部の態様では、抗PD1抗体またはその抗原結合部分は、免疫エフェクター機能を誘導せず、任意で免疫エフェクター機能を抑制する。一部の態様では、抗PD1抗体は、ヒトFcγRI受容体、FcγRIIa受容体、FcγRIIIa受容体、およびFcγRIIIb受容体への測定可能な結合を欠いてもよいが、ヒトFcγRIIb受容体への結合は維持し、任意で、ヒトFcRn受容体への結合も維持する。FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbは、活性化受容体の例示である。FcγRIIbは、阻害性受容体の例示である。FcRnは、リサイクル受容体の例示である。一部の態様では、抗PD1抗体またはその抗原結合部分のヒトFc受容体への結合アフィニティは、ビアコア(BIACORE(登録商標))解析により測定されてもよい。一部の態様では、HTRF法(Homogeneous Time Resolved Fluorescence)を使用して、ヒトFc受容体への抗PD1抗体の結合を試験することができる。HTRF法の1つの例において、ヒトIgG1(野生型)が標識され、一揃いのFcガンマ受容体も同様にされ、次いで組換えFc断片を含む抗体が、力価測定競合に使用される。一部の態様では、PD1陽性細胞と、ヒト白血球および抗PD1抗体とが混合されてもよく、そしてCDC、ADCCおよび/またはADCPによる細胞殺傷が測定されてもよい。一部の態様では、ヒトIgG1-3M(表18を参照)のFc領域のアミノ酸配列を含有する抗PD1抗体は、エフェクターが無効である。一部の態様では、ヒトIgG1-3M(表18を参照)のFc領域のアミノ酸配列を含有する抗PD1抗体は、エフェクターが無効でない。
【0093】
抗体分子またはその抗原結合部分は、Fab断片、F(ab)断片、Fv断片、四量体抗体、四価抗体、多特異性抗体(例えば二価抗体)、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、モノクローナル抗体、または融合タンパク質であってもよい。1つの実施形態では、抗体は、第一の抗原と第二の抗原とに特異的に結合する二特異性抗体であってもよく、この場合において第一の抗原はPD1であり、第二の抗原はPD1ではない。抗体分子、ならびにその構築方法および使用方法は、例えばHolliger&Hudson(2005,Nature Biotechnol.23(9):1126-1136)に記載されている。
【0094】
本発明の別の態様では、治療剤に結合された、本明細書に規定される本発明の抗体分子またはその抗原結合部分を含有する免疫結合体が提供される。
【0095】
適切な治療剤の例示としては、細胞毒素、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、アポトーシス促進剤、ならびに細胞増殖抑制酵素および細胞溶解性酵素(例えば、RNAse)が挙げられる。さらなる治療剤としては、例えば免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤またはアポトーシス促進剤をコードする遺伝子などの治療用核酸が挙げられる。これら薬剤の記述子は、相互排他的ではなく、ゆえに治療剤は、上述の用語の1つまたは複数を使用して記載されてもよい。
【0096】
免疫結合体における使用に適した治療剤の例としては、タキサン、メイタンシン、CC-1065、およびデュオカルマイシン、カリケアミシンおよび他のエンジイン、ならびにオーリスタチン(auristatin)が挙げられる。他の例としては、抗葉酸剤、ビンカアルカロイド、およびアントラサイクリンが挙げられる。植物毒素、他の生物活性タンパク質、酵素(すなわちADEPT)、放射性同位体、光増感剤が、免疫結合体において使用されてもよい。さらに結合体は、細胞毒性剤として二次的な担体、例えばリポソームまたはポリマーなどを使用して作製され得る。適切な細胞毒素としては、細胞の機能を阻害または妨害し、および/または細胞の破壊をもたらす薬剤が挙げられる。代表的な細胞毒素としては、抗生物質、チューブリン重合の阻害剤、DNAに結合し、破壊するアルキル化剤、そしてタンパク質合成を破壊する、または例えばタンパク質キナーゼ、ホスファターゼ、トポイソメラーゼ、酵素およびサイクリンなどの必須の細胞タンパク質の機能を破壊する薬剤が挙げられる。
【0097】
代表的な細胞毒素としては、以下に限定されないが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、カルビシン、ノガラマイシン、メノガリル、ピタルビシン(pitarubicin)、バルルビシン、シタラビン、ゲムシタビン、トリフルリジン、アンシタビン、エノシタビン、アザシチジン、ドキシフルジン(doxifluhdine)、ペントスタチン、ブロクスジン(broxuhdine)、カペシタビン、クラドビン(cladhbine)、デシタビン、フロクスジン(floxuhdine)、フルダラビン、グーゲロチン、ピューロマイシン、テガフール、チアゾフン(tiazofuhn)、アダマイシン(adhamycin)、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、メクロレタミン、プレドニゾン、プロカルバジン、メトトレキサート、フルロウラシル(flurouracil)、エトポシド、タキソール、タキソールアナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチンなどのプラチン類、マイトマイシン、チオテパ、タキサン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、タモキシフェン、イダルビシン、ドラスタチン/オーリスタチン(auristatin)、ヘミアステリン(hemiasterlin)、エスペラミシン、ならびにマイタンシノイドが挙げられる。
【0098】
適切な免疫調節剤としては、腫瘍に対するホルモンの作用を遮断する抗ホルモン剤、およびサイトカイン産生を抑制する、自己抗原発現を下方制御する、またはMHC抗原をマスクする免疫抑制剤が挙げられる。
【0099】
さらに、本明細書に規定される本発明の抗体分子またはその抗原結合部分をコードする核酸分子も提供される。核酸分子は、本明細書に記載される抗PD1抗体またはその抗原結合部分の、(a)VH領域のアミノ酸配列、(b)VL領域のアミノ酸配列、または(c)VH領域とVL領域の両方のアミノ酸配列をコードしてもよい。一部の態様では、本明細書に規定される核酸分子が単離されてもよい。
【0100】
さらに、本明細書に規定される本発明の核酸分子を含有するベクターが提供される。ベクターは、発現ベクターであってもよい。
【0101】
また、本明細書に規定される本発明の核酸分子またはベクターを含有する宿主細胞も提供される。宿主細胞は、組換え宿主細胞であってもよい。
【0102】
さらなる態様において、抗PD1抗体および/またはその抗原結合部分を作製する方法も提供され、当該方法は、当該抗体および/もしくはその抗原結合部分の発現ならびに/または産生が生じる条件下で、本発明の宿主細胞を培養することと、当該宿主細胞または培養物から、当該抗体および/またはその抗原結合部分を単離することと、を含む。
【0103】
本発明の別の態様において、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクターを含有する医薬組成物が提供される。
【0104】
さらに、対象において免疫反応を強化する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子またはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0105】
さらなる態様において、対象において癌を治療または予防する方法が提供され、当該方法は、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の有効量、または本明細書に規定される本発明のベクターの有効量、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。一部の場合では、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクターを対象に投与することは、対象において血管腫を誘発しないかまたは最小限の血管腫を誘発する。
【0106】
例えば、癌は、膵臓癌、メラノーマ、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳腫瘍または中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝癌、腎癌、精巣癌、胆管癌、小腸癌または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、または血液組織の癌であり得る。
【0107】
本発明はさらに、癌の治療における使用のための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体、または本明細書に規定される本発明の核酸分子、または本明細書に規定される本発明のベクター、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物を提供する。
【0108】
別の態様において、本発明は、例えば抗癌剤などの第二の治療剤と組み合わせた併用において、別個に使用する、連続して使用する、または同時に使用するための、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、または免疫結合体、または核酸分子、または使用のためのベクター、または治療方法を提供する。
【0109】
さらなる態様において、癌の治療のための医薬品の製造における、本明細書に規定される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分の使用、または本明細書に規定される本発明の免疫結合体の使用、または本明細書に規定される本発明の核酸分子の使用、または本明細書に規定される本発明のベクターの使用、または本明細書に規定される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0110】
本発明はさらに、対象において感染症もしくは免疫疾患を治療または予防する方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に規定される抗体分子もしくはその抗原結合部分の有効量、または本明細書に規定される免疫結合体の有効量、または本明細書に規定される核酸分子の有効量、または本明細書に規定されるベクターの有効量、または本明細書に規定される医薬組成物の有効量を当該対象に投与することを含む。
【0111】
一実施形態において、本発明は、治療における使用のための本明細書に開示されるアミノ酸配列を含有する抗PD1抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0112】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な賦形剤は、二次的な反応を引き起こさない医薬組成物に入れられる化合物または化合物の組み合わせであってもよく、例えば、抗PD1抗体分子の投与の促進、その持続期間の延長、および/もしくは体内におけるその有効性の増加、または溶液中の可溶度の上昇を可能にする。これら薬学的に許容可能なビヒクルは周知であり、抗PD1抗体分子の投与形態の効果に応じて当業者により適合される。
【0113】
一部の実施形態では、抗PD1抗体分子は、凍結乾燥されて提供され、投与前に再構成されてもよい。例えば凍結乾燥された抗体分子は、滅菌水で再構成され、個体への投与前に生理食塩水と混合される。
【0114】
抗PD1抗体分子は通常、医薬組成物の形態で投与され、当該医薬組成物は、抗体分子に加えて少なくとも1つの構成要素を含有してもよい。したがって医薬組成物は、抗PD1抗体分子に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、または当業者に周知の他の物質を含有してもよい。そうした物質は、非毒性でなければならず、そして抗PD1抗体分子の効能に干渉してはならない。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路に依存することとなり、これは、以下に検討されるように、ボーラス、点滴、注射または任意の他の適切な経路によるものであってもよい。
【0115】
例えば注射などによる皮下投与または静脈内投与などの非経口投与に関しては、抗PD1抗体分子を含有する医薬組成物は、発熱物質を含まず、そして適切なpH、等張性および安定性の非経口に受容可能な水溶液の形態であってもよい。当業者であれば、例えば塩化ナトリウム注射溶液、リンゲル注射溶液、乳酸リンゲル注射溶液などの等張ビヒクルを使用して適切な溶液を調製することができる。保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加剤を必要に応じて採用してもよく、例えばリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3’-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド;例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;例えばポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンなどの単糖、二糖および他の炭水化物;例えばEDTAなどのキレート剤;例えばショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;例えばナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0116】
抗PD1抗体分子を含有する医薬組成物は、治療される状態に応じて、単独で投与されてもよく、または他の治療と併用されて、同時に、または連続のいずれかで投与されてもよい。
【0117】
本明細書に記載の抗PD1抗体分子は、ヒトまたは動物の身体の治療方法に使用されてもよく、治療には、予防的または防止的な治療が含まれる(例えば、個体において症状が発生する前に、当該個体において当該症状が発生するリスクを低下させるため、その発生を遅延させるため、または発生後の重症度を低下させるための治療)。治療方法は、抗PD1抗体分子を、その必要のある個体に投与することを含んでもよい。
【0118】
投与は通常、「治療有効量」でされ、これは、患者に対し有益性を示すのに充分な量である。そうした有益性は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であってもよい。投与される実際の量、投与速度、および投与の経時変化は、治療されるものの、特に治療される哺乳動物の、性質および重症度、個々の患者の臨床状態、障害の原因、組成物の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者がわかっている他の因子に依存することとなる。例えば用量の決定などの治療の指示は、一般開業医および他の医師の責の範囲内にあり、治療される疾患の症状の重症度、および/または治療される疾患の進行に依存し得る。抗体分子の適切な投与量は、当分野に周知である(Ledermann J.A.et al.,1991,Int.J.Cancer 47:659-664;Bagshawe K.D.et al.,1991,Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915-922)。具体的な用量は、本明細書において、またはPhysician’s Desk Reference(2003)において示され、投与される薬剤のタイプに応じた用量が、使用され得る。抗体分子の治療有効量または適切な用量は、そのインビトロ活性と、動物モデルにおけるインビボ活性とを比較することにより決定され得る。マウスおよび他の被験動物における有効用量を、ヒトに外挿する方法は公知である。正確な投与量は、抗体が予防用であるかまたは治療用であるか、治療される領域の大きさおよび位置、抗体の正確な性質(例えば全抗体、断片)および抗体に付加された任意の検出可能な標識または他の分子の性質をはじめとする多くの因子に依存することとなる。
【0119】
典型的な抗体投与量は、全身投与に対しては100μg~1g、また局所投与に対しては1μg~1mgの範囲である。初回に高い負荷投与量で、その後は1回または複数回の低投与量が投与されてもよい。典型的には、抗体は、例えばIgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプなどの全抗体である。これは成人患者の単回治療用の投与量であり、小児および幼児に対しては相対的に調整され得、そして分子量に比例して他の抗体形式にも調整され得る。治療は、医師の裁量で毎日、週2回、毎週、または毎月の間隔で繰り返され得る。個々の治療スケジュールは、抗体組成物の薬物動態および薬力学的性質、投与経路、ならびに治療される症状の性質に依存し得る。
【0120】
治療は定期的であってもよく、投与の間の期間は、約2週間またはそれ以上であってもよく、例えば約3週間以上、約4週間以上、約1カ月に1回以上、約5週間以上、または約6週間以上であってもよい。例えば、治療は、2週~4週ごと、または4週~8週ごとであってもよい。治療は、外科手術の前、および/もしくは後に行われてもよく、ならびに/または外科的治療もしくは浸潤的手順の解剖学的位置に直接投与または適用されてもよい。適切な製剤および投与経路は、上記に記載される。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗PD1抗体分子は、皮下注射として投与されてもよい。皮下注射は、例えば長期間の予防用/治療用の自己注射器を使用して投与されてもよい。
【0122】
一部の好ましい実施形態では、抗PD1抗体分子の治療効果は、いくつかの半減期の間、持続し得、投与量に依存する。例えば抗PD1抗体分子の単回投与の治療効果は、個体において、1カ月以上、2カ月以上、3カ月以上、4カ月以上、5カ月以上、または6カ月以上、持続し得る。
【0123】
本発明はさらに、ヒトPD1に特異的に結合し、および任意でカニクイザルのPD1にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を作製する方法を提供するものであり、当該方法は、
(1)非ヒト源由来の抗PD1 CDRをヒトv-ドメインフレームワーク内に移植し、ヒト化抗PD1抗体分子またはその抗原結合部分を作製する工程、
(2)CDR中に1つまたは複数の変異を含有する当該ヒト化抗PD1抗体分子またはその抗原結合部分のクローンのライブラリーを作製する工程、
(3)ヒトPD1への結合について、および任意でカニクイザルのPD1への結合についても当該ライブラリーをスクリーニングする工程、
(4)スクリーニングする工程(3)から、ヒトPD1に特異的に結合する、および任意でカニクイザルPD1にも特異的に結合するクローンを選択する工程、ならびに
(5)ヒトPD1に特異的に結合し、および任意でカニクイザルPD1にも特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合部分を、工程(4)から選択されたクローンから作製する工程、を含む。
【0124】
当該方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づき、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDR中の特定の位置でのさらなる探索的な突然変異誘導に基づき、追加のクローンを作製して、ヒト化を強化し、および/またはヒトT細胞エピトープ含量を最小化し、および/または工程(5)で作製された抗体分子もしくはその抗原結合部分の製造特性を改善するさらなる工程を含んでもよい。
【0125】
上述の方法に適用可能な改善は、以下の実施例1に記載されるとおりである。
【0126】
本明細書で用いる場合、“PD1”の語は、PD1の生物学的活性の少なくとも一部を保持する、プログラム細胞死タンパク質1およびそのバリアントを指す。本明細書において使用される場合、PD1は、ヒト、ラット、マウスおよびニワトリを含むすべての種の天然配列PD1を含む。“PD1”の語は、ヒトPD1のバリアント、アイソフォームおよび種のホモログを含むために使用される。本発明の抗体は、ヒト以外の種に由来するPD1、特にカニクイザル(Macaca fascicularis)由来のPD1と交差反応し得る。ヒトおよびカニクイザルのPD1アミノ酸配列の例を、表19に提供する。ある実施形態では、抗体は、完全にヒトPD1に特異的であってもよく、非ヒトとの交差反応性を呈さなくてもよい。
【0127】
本明細書において使用される場合、本発明の抗体の文脈において使用される場合の「アンタゴニスト」、または「抗PD1アンタゴニスト抗体」(「抗PD1抗体」と相互交換可能に称される)とは、PD1に結合することができる、ならびにPD1の生物学的活性を阻害することができる、および/またはPD1シグナル伝達により介在される下流経路を阻害することができる抗体を指す。抗PD1アンタゴニスト抗体には、例えばPD1に対する受容体結合および/または細胞反応の惹起など、PD1シグナル伝達により介在される下流経路を含めた、(有意に)PD1の生物学的活性(を含めた)を遮断する、拮抗する、抑制する、または低下させることができる抗体を包含する。本発明の目的に対し、「抗PD1アンタゴニスト抗体」という用語は、PD1それ自体、およびPD1の生物学的活性(限定されないが、T細胞の抗腫瘍細胞活性の活性化を抑制する能力を含む)、または活性もしくは生物学的活性の結果が、任意の意義のある程度に実質的に無効化される、減少される、または中和されるすべての用語、タイトル、ならびに機能的状態および機能的特性を包含することが明示的に理解されるであろう。
【0128】
他の受容体よりも高いアフィニティ、高いアビディティ、より容易に、および/またはより長い期間、PD1と結合する場合、当該抗体は、PD1に「特異的に結合する」、「特異的に相互作用する」、「優先的に結合する」、「結合する」または「相互作用する」。
【0129】
「抗体分子」は、例えば炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書において使用される場合、「抗体分子」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のみならず、任意の抗原結合断片(例えば「抗原結合部分」)またはその一本鎖、抗体を含む融合タンパク質、ならびに例えば限定されないが、scFv、単一ドメイン抗体(例えばサメ抗体およびラクダ科抗体)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびbis-scFvを含む抗原認識部位を含有する免疫グロブリン分子の任意の他の改変構造体も包含する。
【0130】
「抗体分子」は、例えばIgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を包含するが、抗体はいずれか特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、様々なクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5種類の主要なクラスがある。これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられる場合があり、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2がある。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域はそれぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。このサブユニットの構造、および様々なクラスの免疫グロブリンの三次元構造は周知である。
【0131】
抗体分子の「抗原結合部分」という用語は、本明細書において使用される場合、PD1に特異的に結合する能力を保持する、インタクトな抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体分子の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片により実現され得る。抗体分子の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例示としては、Fab;Fab’;F(ab’)2;VHドメインとCH1ドメインとからなるFd断片;抗体の1つのアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;単一ドメイン抗体(dAb)断片、および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0132】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域またはバリアントのFc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、Cys226の位置のアミノ酸残基、またはPro230の位置のアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端に及ぶと規定される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatにあるEUインデックスの番号である。免疫グロブリンのFc領域は通常、CH2とCH3の2つの定常ドメインを含有する。当分野に知られているように、Fc領域は、二量体型または単量体型で存在し得る。
【0133】
抗体の「可変領域」とは、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域の、いずれか単独または組み合わせを指す。当分野に知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても知られている3つの相補性決定領域(CDR)に繋がる4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRに隣接するFRを選択するとき、例えば抗体のヒト化または最適化を行うとき、同じ基準クラスのCDR配列を含有する抗体由来のFRが好ましい。
【0134】
本出願において使用されるCDRの定義は、当分野で創出された多くの異質的な、しばしば矛盾するスキームにおいて使用されるドメインを組み合わせており、免疫グロブリンレパートリー分析と、遊離状態および抗原との共結晶状態の抗体の構造分析との組み合わせに基づいている(Swindells et al.,2016,abYsis:Integrated Antibody Sequence and Structure-Management,Analysis,and Prediction.J Mol Biol.[PMID:27561707;Epub 22 August 2016]によるレビューを参照のこと)。本明細書において使用されるCDRの定義(「統合(Unified)」定義)は、そうしたすべての過去の洞察の教示を組み込んでおり、潜在的に標的-結合の相補性を介在する完全な残基の状況を抽出するために必要なすべての適切なループ位置を含む。
【0135】
表1は、本明細書に規定されるMAb005マウス抗PD1抗体のCDRのアミノ酸配列(「統合」スキーム)を、同じCDRを規定する周知の代替的な系と比較して示している。
【0136】
“Mab005-IgG1(ヒト化)”の語は、表2における可変重鎖領域配列の標識PD1-VH1および可変軽鎖領域配列の標識PD1-VL1ならびにヒトIgG1定常領域を含む抗PD1抗体を指す。
【0137】
本明細書において使用される場合、「保存的置換」という用語は、アミノ酸を、機能活性を大きく有害には変化させない別のアミノ酸で置換することを指す。「保存的置換」の好ましい例は、1つのアミノ酸を、以下のBLOSUM 62置換マトリクス(Henikoff&Henikoff,1992,PNAS 89:10915-10919を参照のこと)において0以上の値(≧0)を有する別のアミノ酸で置換することである。
【0138】
【化1】
【0139】
「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、例えば任意の真核細胞クローン、原核細胞クローンもしくはファージクローンなどの1つのコピーまたはクローンから誘導された抗体またはその抗原結合部分を指し、それが作製された方法ではない。本発明のモノクローナル抗体は、均質、または実質的に均質な集団で存在することが好ましい。
【0140】
「ヒト化」抗体分子とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限に含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または他の抗原結合性の抗体下位配列)である、非ヒト(例えばマウス)抗体分子またはその抗原結合部分の形態を指す。ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、アフィニティおよび能力を有する例えばマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であってもよい。
【0141】
「ヒト抗体または完全ヒト抗体」とは、ヒト抗体遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから誘導された、またはヒト細胞から誘導された抗体分子またはその抗原結合部分を指す。
【0142】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列は別の種に由来する抗体分子またはその抗原結合部分を指すことが意図され、例えば、可変領域配列はマウス抗体に由来し、定常領域配列はヒト抗体に由来する抗体分子などである。
【0143】
「抗体-薬剤結合体」および「免疫結合体」とは、PD1に結合し、ならびに細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、および/または治療剤と結合される抗体分子またはその抗原結合部分を指し、抗体誘導体を含む。
【0144】
本発明の抗体分子、またはその抗原結合部分は、例えば組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、またはそうした技術もしくは当分野に既に公知である他の技術との組み合わせなどの当分野に周知の技術を使用して作製され得る。
【0145】
「単離された分子」(分子が、例えばポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体である場合)という用語は、その起源または誘導の源によって、(1)自然状態では付随する天然の関連構成要素と関連していない分子、(2)同じ種由来の他の分子を実質的に含まない分子、(3)異なる種由来の細胞により発現された分子、または(4)自然に発生しない分子である。したがって、化学的に合成された分子、または天然での起源である細胞とは異なる細胞系で発現された分子は、その天然の関連構成要素から「単離される」。さらに分子は、当分野に周知の精製技術を使用した単離によって、天然の関連構成要素を実質的に含まない状態にされ得る。分子純度または均質性は、当分野に周知の多くの手段により解析され得る。例えばポリペプチドサンプルの純度は、当分野に周知の技術を使用してポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用し、ゲルを染色してポリペプチドを可視化して解析されてもよい。ある目的に対し、HPLC、または精製分野で周知の他の手段を使用することにより、さらに高い分解能が提供される場合がある。
【0146】
「エピトープ」という用語は、抗体分子の抗原結合領域のうちの1つまたは複数で抗体分子に認識され、結合されることができる分子の部分、またはその抗原結合部分を指す。エピトープは、一次、二次または三次のタンパク質構造の規定領域からなる場合があり、抗体またはその抗原結合部分の抗原結合領域に認識される標的の二次構造単位または二次構造ドメインの組み合わせを含む。同じくエピトープは、例えばアミノ酸または糖側鎖などの規定の化学的に活性な分子の表面群からなる場合があり、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する場合がある。本明細書において使用される場合、「抗原性エピトープ」という用語は、当分野に周知の任意の方法、例えば従来的な免疫アッセイ法、抗体競合結合アッセイ、またはx線結晶法もしくは関連する構造決定法(例えばNMR)により決定されたときに、抗体分子が特異的に結合することができるポリペプチドの部分として規定される。
【0147】
「結合アフィニティ」または「KD」という用語は、特定の抗原-抗体の相互作用の解離速度を指す。KDは、「off-rate(koff)」とも呼ばれる解離速度の、「on-rate(kon)」、すなわち会合速度に対する比率である。ゆえにKは、koff/konに等しく、モル濃度(M)として表される。従って、Kが小さくなると、結合アフィニティは強くなる。ゆえにKが1μMであれば、Kが1nMの場合と比較して結合アフィニティが弱いことを示す。抗体のKD値は、当分野に確立された方法を使用して決定され得る。抗体のKDの決定方法の1つは、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用するものであり、典型的には、例えばビアコア(Biacore(登録商標))システムなどのバイオセンサーシステムを使用する。
【0148】
「有効性」という用語は、生物活性の測定値であり、本明細書に記載のPD1活性アッセイにおいて測定される活性の50%を阻害する、抗原PD1に対する抗体または抗体薬剤結合体のIC50すなわち有効濃度として表す場合もある。
【0149】
本明細書において使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という文言は、所望の治療結果を実現するために必要な(用量での、および期間に対する、および投与手段に対する)量を指す。有効量は、活性剤の、対象に治療上有益な影響を与えるために必要な少なくとも最小量であるが、対象に毒性のある量よりは少ない量である。
【0150】
本発明の抗体分子の生物活性に関して本明細書において使用される場合、「阻害する」または「中和する」という用語は、限定されないが、PD1に対する抗体分子の生物活性、または抗体分子とPD1の結合相互作用を含む、阻害されるものの例えば進行または重症度を実質的に拮抗する、妨げる、予防する、抑える、減速させる、破壊する、除去する、停止させる、低下させる、または反転させる抗体の能力を意味する。
【0151】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクターに対するレシピエントであってもよく、またはレシピエントである個々の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫物を含み、当該子孫物は、自然の、偶発的な、または意図的な変異により、元の親細胞と完全に同一(形態において、またはゲノムDNAの相補体において)であるとは限らない場合がある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドをインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0152】
本明細書において使用される場合、「ベクター」とは、宿主細胞において、関心の1つまたは複数の遺伝子または配列を送達することができる、そして好ましくは発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては限定されないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNAの発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン縮合剤と会合したDNAまたはRNAの発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAまたはRNAの発現ベクター、および例えば産生細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。
【0153】
本明細書において使用される場合、別段が示唆されない限り、「治療すること」という用語は、そうした用語が適用される障害もしくは症状、またはそうした障害もしくは症状の1つまたは複数症状を反転させる、改善させる、その進行を阻害する、その進行を遅延させる、発症を遅延させる、または予防することを意味する。本明細書において使用される場合、別段の示唆が無い限り、「治療」という用語は、上述に規定される治療の行為を指す。「治療すること」という用語は、対象のアジュバント療法およびネオアジュバント療法も含む。誤解を避けるために、本明細書において「治療」という言及は、治癒的、緩和的、および予防的な治療に対する言及を含む。誤解を避けるために、本明細書において「治療」という言及は、治癒的、緩和的、および予防的な治療に対する言及もさらに含む。
【0154】
本明細書において、実施形態は、「含む、含有する」という文言で記載されているか、さもなければ「~からなる」および/または「本質的に~からなる」として記載される類似した実施形態も提供されることを理解されたい。
【0155】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の択一的な群で記載されている場合、本発明は、概して列挙される群全体のみならず、当該群の各メンバーを個々に、および当該主要群のうちの可能性のあるすべての亜群、そして当該群メンバーの1つまたは複数を欠いた主要群も包含する。本発明はさらに、請求される本発明の群メンバーのいずれかの1つまたは複数の明白な除外を予期するものである。
【0156】
別段の規定がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、本明細書が定義を含めて主導をとるものとする。本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、「含む、含有する」という文言、または例えば「含む、含有する」または「含むこと、含有すること」といった変化形は、記述される整数値の含有、または整数値の群の含有を示唆するが、任意の他の整数値または整数値の群の除外は示唆しないと理解される。文脈により別段であることを要しない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形は単数を含むものとする。「例えば」という用語の後に続くあらゆる例示は、包括的または限定であることは意味しない。
【0157】
本発明の実施は、別段の示唆が無い限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来的な技術を採用し、それら技術は当分野の技術範囲内にある。
【0158】
本発明の特定の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照しながら記載することとする。
【実施例
【0159】
実施例1.最適化抗PD1治療用抗体の作製
イントロダクション
本実施例において、本発明者らは、アゴニスト性の最適化抗PD1抗体のパネルの作製に成功した。これら抗PD1抗体は良好に発現され、生物物理的に安定であり、溶解度が高く、そして好ましいヒト生殖細胞系列に対し最大の同一性を有している。
【0160】
材料及び方法
PD1ライブラリーの作製および選択
PD1 Fabレパートリーは、大量オリゴ合成およびPCRにより組み立てられた。次いで増幅されたFabレパートリーを制限酵素-ライゲーションを介してファージミドベクター内にクローニングし、大腸菌TG-1細胞内に形質転換した。ファージレパートリーは、原則として過去に詳述されるようにレスキューされた(Finlay et al.,2011,Methods Mol Biol 681:383-401)。
【0161】
ファージ選択は、ストレプトアビジン磁気マイクロビーズをビオチン化PD1標的タンパク質(ヒトまたはカニクイザルのいずれか)でコーティングし、ビーズをPBSで3回洗浄して、5%スキムミルクタンパク質を加えたPBS pH7.4中に再懸濁させることにより実施された。これらビーズは、選択のラウンド1では100nMの標的タンパク質でコーティングされており、その後の3回の連続ラウンドでは抗原濃度は減少した。各ラウンドにおいて、ファージはトリプシンを使用して溶出され、その後、TG1細胞内に再感染された。
【0162】
ペリプラズム抽出物の作製(小スケール)
個々の大腸菌クローンにおいて、可溶性Fabの産生が行われた。対数増殖期の大腸菌TG1細胞は、1-チオ-β-D-ガラクトピラノシドイソプロピルを用いて誘導された。可溶性Fabを含有するペリプラズム抽出物は、以下の凍結/融解サイクルにより作製された:細菌細胞沈殿物を一晩、-20℃で凍結させ、その後室温で融解させ、PBS pH7.4中に再懸濁させた。室温で振とうし、遠心分離を行った後に、可溶性Fabを含有する上清を収集した。
【0163】
Fabの産生と精製
大規模産生のために、抗PD1 Fabのパネルを選択した。大腸菌TG1 培養液(500ml)を調製して、上記のような可溶性Fab発現を誘導した。可溶性Fabを含有するペリプラズム抽出物は、上記のような凍結/融解サイクルによって抽出した。可溶性Fabを含有する上清を、1時間後に、室温での天地反転、遠心分離および0.22μmの膜を通る濾過で回収した。可溶性Fabは、His-Trap HPアフィニティカラム(関連したHisタグによる精製用)と、その後の修飾プロテインAまたはCaptureSelect(商標)IgG-CH1アフィニティマトリックスカラムでの精製による2段階の精製手順により精製した。
【0164】
IgGの発現および精製
Mab005バリアントおよびペムブロリズマブアナログを合わせたリードパネル抗PD1抗体の重鎖ならびに軽鎖の可変ドメインをコードする哺乳動物コドン最適化合成遺伝子を、エフェクター機能を無効化したヒトIgG1(「IgG1ヌル(IgG1null)」;正常免疫グロブリンADCC、ADCPおよびCDC機能を無効にする、下方ヒンジ内にL234A、L235A、G237A変異を含有するヒトIgG1)およびヒトCκドメインをそれぞれ含有する、哺乳動物発現ベクターにクローン化した。哺乳動物発現系において、重鎖および軽鎖を含有するベクターの共トランスフェクションを実施し、次いでプロテインA系のIgG精製、定量、ならびに変性SDS-PAGEおよび非変性SDS-PAGE上でQCを行った。
【0165】
FabおよびIgGに対する直接結合ELISA
組換えタンパク質に対するリードパネルの結合および交差反応性は、最初に結合ELISAにより評価した。ヒトPD1のヒトFcタグ化組換えタンパク質、およびカニクイザルPD1のヒトFcタグ化組換えタンパク質で、MaxiSorp(商標)平底96ウェルプレートの表面上を1μg/mlでコーティングした。精製されたFabまたはIgGのサンプルは、500nMから始まり0.98nMまでの2倍連続希釈で漸増して、コーティングされた抗原に結合できるようにした。Fabは、マウス抗c-myc抗体、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したロバ抗マウスIgGを使用して検出した。IgGは、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したマウス抗ヒトIgGを使用して検出した。結合シグナルは、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン基質溶液(TMB)を用いて可視化され、吸光度は450nmで測定した。
【0166】
IgG1ヌル抗体に対する、Alphascreenエピトープ競合アッセイ
AlphaScreenアッセイ(パーキンエルマー社)は、384ウェルの白色マイクロタイタープレート(グライナー社)において25μlの最終量で実施した。反応緩衝液は、1xPBS pH7.3(Oxoid社、カタログ番号BR0014G)および0.05%(v/v)のTween(登録商標)20(シグマ社、カタログ番号P9416)を含有した。精製したIgGサンプルは、500nMの最終濃度で始まる3倍連続希釈で漸増され、室温で20分間、0.6nMの最終濃度でビオチン化ヒトPD1-His/Aviタグとともにインキュベートした。0.3nMでの親IgGおよび20μg/ml(最終濃度)での抗ヒトIgG1アクセプタービーズを添加し、混合物を室温で1時間インキュベートした。次いで、ストレプトアビジンドナービーズを20μg/ml(最終濃度)で添加し、室温で30分間インキュベートした。発光は、EnVisionマルチラベルプレートリーダー(パーキンエルマー社)において測定され、EnVisionマネージャーソフトウェアを使用して解析した。値は、1秒当たりのカウント数(CPS:Counts Per Second)として報告され、クロストークに対して補正した。EC50値は、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software社、カリフォルニア州ラホヤ)においてMFI値と、4つのパラメータとを使用して算出された。
【0167】
単量体型のヒトおよびカニクイザルのPD1溶液に対する、IgGアフィニティのビアコア(Biacore)解析
精製したIgGのアフィニティ(KD)は、Biacore3000(GE社)上で、抗原溶液を用いてSPRを介して決定した。マウス抗ヒト抗体(CH1特異的)を、2チャンネル用のウィザード指示に従い、pH4.5の酢酸緩衝液中、アミンカップリングを使用してCM5センサーチップ上に2000RUレベルにまで固定した。1つのチャンネルは、バックグラウンドシグナルの補正用に使用した。標準的なランニング緩衝液であるHBS-EP pH7.4を使用した。10μlの10mMグリシンをpH1.5で、20μl/分で単回注入することにより、再生を行った。IgGサンプルは、30μl/分、50nMで2分間注入され、その後、60秒間の解離速度(off-rate)が続いた。単量体抗原(ヒトPD1 HisタグしたまたはカニクイザルPD1 Hisタグ)は、100nMから3.1nMへと希釈する2倍連続希釈で、2分間、30μl/分で注入され、次いで300秒の解離速度が続いた。得られたセンサーグラム(sensorgram)は、ビアコア3000エバリュエーション(BIAevaluation社)ソフトウェアを使用して解析した。KDは、1:1のラングミュア結合モデルに対し、会合相および解離相の同時フィッティングを行うことにより算出した。
【0168】
IgGのフローサイトメトリー
精製したIgGを、CHO-K1安定発現株およびCHO-K1野生型細胞上で発現したヒトならびにカニクイザルのPD1に対する結合に関して、FACにおいて試験した。IgGサンプルは、500nMに始まり0.98nMまでの3倍連続希釈で漸増した。IgGの結合は、FITCに結合したマウス抗ヒトIgGを用いて検出した。結果は、フローサイトメーターのBL-1チャンネル検出器(Attune(商標) NxT Acoustic Focusing Cytometer、Invitrogen/ThermoFisher Scientific社)において、1サンプル当たり10000個の細胞の平均蛍光強度(MFI)を検証することにより解析した。
【0169】
PD1/PD-L1細胞に基づくアンタゴニズムアッセイ
PD1/PD-L1遮断細胞系バイオアッセイ(プロメガ社)を用いて、抗体のPD1/PD-L1相互作用遮断能を測定した。アッセイ前日に、PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞を融解して、細胞回復培地(90%のハムF12/10%のFBS)に移した。96ウェル白色平底アッセイプレート2枚の60個の内側ウェルそれぞれに、1ウェル当たり100μlで、細胞懸濁液を注入した。外側ウェルとアッセイプレートとのそれぞれに細胞回復培地を加えて、37℃/5%のCO2で一晩インキュベートした。アッセイの当日、サンプルIgGを、アッセイ緩衝液(99%のRPMI 1640/1%のFBS)中で300nMから0.04nMに4倍希釈し、希釈当たり40μlを、PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞を含有するアッセイプレートに添加した。陽性阻害対照には、ヒトPD1抗体AF1086(R&Dシステムズ社)、IgG1ヌル形式でのmAb005およびIgG1ヌル形式でのペムブロリズマブmabアナログを含めた。陰性阻害対照としては、無関係のIgGを含めた。次いでアッセイ緩衝液(99%のRPMI 1640/1%のFBS)中で、PD1エフェクター細胞を融解して、細胞懸濁液を、PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞およびIgG用量設定サンプルを含有するアッセイプレートのウェルに添加した。アッセイプレートを、37℃/5%CO2のインキュベーター内で6時間インキュベートし、5~10分間周囲温度と平衡にし、次いで80μlのBio-Glo(商標)試薬(プロメガ社)を添加した。アッセイプレートを、さらに5~30分間周囲温度でインキュベートし、次いで10分、20分、および30分において発光シグナルを測定した。
【0170】
抗体v-ドメインT細胞エピトープ含量:インシリコ分析
インシリコ技術(Abzena社(Abzena,Ltd.))は、治療用抗体および治療用タンパク質中のT細胞エピトープの位置の特定に基づいており、抗体v-ドメイン中の潜在的な免疫原性を評価するために使用した。iTope(商標)を使用して、ヒトMHCクラスIIに対して無差別的な高いアフィニティ結合を有するペプチドに関し、重要なリードのVL配列およびVH配列を解析した。無差別的な高いアフィニティのMHCクラスII結合ペプチドは、薬剤タンパク質の臨床免疫原性に関する高いリスク指標であるT細胞エピトープの存在と相関すると考えられている。iTope(商標)ソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖と、34種のヒトMHCクラスIIアレルの開放末端結合溝(groove)内の特定の結合ポケット(特にポケット位置;p1、p4、p6、p7およびp9)との間の有益な相互作用を予測する。これらアレルは、広く存在する最も普遍的なHLA-DRアレルであり、任意の特定の民族集団で最も多く存在するものによって起こる重み付けはない。当該アレルのうちの20種が、「開いた」p1構造を含有している。そして14種が「閉じた」構造を含有しており、83位のグリシンがバリンで置換されている。重要な結合残基の位置は、被験タンパク質配列にわたり8アミノ酸が重複している9merペプチドのインシリコ生成により取得される。このプロセスによって、MHCクラスII分子に結合する、または結合しないペプチド同士を高い正確性で識別することに成功した。
【0171】
さらに、TCED(商標)(T細胞エピトープデータベース(T Cell Epitope Database(商標)))を使用して配列を解析し、過去にインビトロでの他のタンパク質配列のヒトT細胞エピトープマッピング解析により特定されたT細胞エピトープとの合致を検索した。TCED(商標)を使用して、非関連タンパク質に由来するペプチドの大きな(10,000個を超えるペプチド)データベースに対する任意の被験配列と、抗体配列とを検索する。
【0172】
抗体v-ドメインの特異性検証:ヒト受容体アレイ解析
ヒト細胞膜受容体プロテオームアレイを、Retrogenix社(Retrogenix Ltd.)で実施した。プライマリスクリーン:5μg/mlのIgG1-Mab005(ヒト化)抗体を、4975個のヒト原形質膜タンパク質を個々に発現する1スライド当たりの固定HEK293細胞(14スライドセット、1スライドセット当たりn=2スライド)に対する結合についてスクリーニングした。すべてのトランスフェクション効率が、最小閾値を超えていた。抗体結合は、AF647蛍光二次抗ヒトIgG1抗体を使用して検出した。プライマリーヒット(デュプリケートスポット)は、ImageQuant上で蛍光(AF647およびZsGreen1)を解析することにより特定した。全ヒットをコードするベクターを配列解析して、その正確な正体を確認した。確認/特異性スクリーニング:全ヒットをコードするベクターに加えて、MS4A1(CD20)およびEGFRをコードする対照ベクターが、新しいスライド上にデュプリケートでスポットされ、これを使用して、前述のようにヒトHEK293細胞を逆トランスフェクトした。すべてのトランスフェクション効率が、最小閾値を超えていた。同一の固定スライドを、各被験抗体をそれぞれ5μg/mlで、陰性対照抗体を5μg/mlで、リツキシマブのバイオシミラー(陽性対照)を1μg/mlで、アイソタイプIgG1(Ab00102ヒトIgG1抗フルオレセイン)、または被験分子無し(二次抗体のみ、陰性対照)(1処理あたりn=2スライド)を用いて処理した。スライドは上述のように解析された。フローサイトメトリー確認スクリーニング:ZsGreen1のみをコードする発現ベクター、またはZsGreen1と、PD1、FZD5、KDRまたはULBP2とを、ヒトHEK293細胞にトランスフェクトした。各生存形質移入体を、被験抗体およびアイソタイプコントロール抗体それぞれの1mg/mlおよび5mg/mlと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、細胞マイクロアレイスクリーニングで用いられるのと同じAF647抗ヒトIgG Fc検出抗体と共にインキュベートした。細胞を再び洗浄し、Accuriフローサイトメーター(BD社)を用いてフローサイトメトリーで解析した。7AADのLIVE/DEAD染色を用いて、死細胞を除外して、ZsGreen1-陽性細胞(すなわち、トランスフェクト細胞)を解析のために選択した。
【0173】
DSC解析
被験物質のTmは、MicroCal PEAQ-DSC(Malvern Instruments社、英国モルバーン)ランニングバージョン1.22ソフトウェアを使用して解析した。20~110℃の範囲にわたり200℃/時の速さでサンプルを加熱した。温度データは、タンパク質濃度に基づき正規化された。タンパク質のTmは、加熱スキャンデータから決定された。
【0174】
強制酸化解析
以下のインタクトなIgGの強制酸化解析のために:PBS緩衝液中のIgG1ヌルサンプルを、室温で2時間、0.5%のHで処理し、次いでDionex Ultimate 3000RS HPLCシステム(ThermoFisher Scientific社、英国ヘメルヘムステッド)でのRP解析(インタクトな抗体およびサブユニット、トリプシンペプチド)前に-80℃で保存した。インタクトな抗体の還元に関して、DTTを最終濃度0.33Mまで添加して、サンプルを室温で1時間インキュベートし、RPで直ちに解析した。クロマトグラフィー分離は、Dionex Ultimate 3000RS HPLCシステム(ThermoFisher Scientific社、英国へメルヘムステッド)に接続されたPLRP-S 1000、5μm、2.1mm×50mmのカラム(Agilent Technologies社、英国ストックポート)を使用して実施した。この方法は、24分間にわたる、80%緩衝液A(0.02%のTFA、7.5%のアセトニトリルの水溶液)から50%緩衝液B(0.02%のTFA、7.5%のHOのアセトニトリル溶液)までの直線勾配で構成された。流速は、0.5mL/分、温度は解析中、70℃で維持された。検出は、280nmのUV吸収により実施された。
【0175】
以下の消化IgGの強制酸化解析のために:天然のおよび酸化したIgG1ヌルサンプルを、SMART Digest(商標)キット(ThermoFisher Scientific社、英国へメルヘムステッド)を用いて、メーカーのプロトコールに従い使用してトリプシンで消化した。得られたトリプシンペプチドは、RPで直ちに解析した。クロマトグラフィーによる分離は、Dionex Ultimate 3000RS HPLCシステム(ThermoFisher Scientific社、英国へメルヘムステッド)に接続されたAcquity UPLC CSH C18カラム、130Å、1.7μm、2.1mm×150mm(Waters社、英国エルストリー)を使用して実施した。この方法は、4分間にわたる95%緩衝液A(0.1%FAの水溶液)から15%緩衝液B(0.085%FAの75%アセトニトリル溶液)までの直線勾配、次いで22分間にわたる15%緩衝液Bから60%緩衝液Bまでの直線勾配で構成された。流速は、0.2mL/分、温度は解析中、40℃で維持された。検出は、280nmのUV吸収により実施された。
HIC解析に関して、クロマトグラフィーによる分離は、Dionex Ultimate 3000RS HPLCシステム(ThermoFisher Scientific社、英国へメルヘムステッド)に接続されたTSKgel Butyl-NPR 4.6mm×35mm HICカラム(TOSOH Bioscience Ltd.社、英国レディング)を使用して実施した。この方法は、9分間にわたる60%緩衝液A(100mMリン酸ナトリウム、pH7.0、2M硫酸アンモニウム)から90%緩衝液B(100mMリン酸ナトリウム、pH7.0)までの直線勾配で構成された。流速は、1.2mL/分であった。検出は、280nmのUV吸収により実施された。
【0176】
結果および考察
好ましいヒト生殖細胞系列v-遺伝子へのCDR移植
アゴニストマウス抗PD1 IgG MAb005のCDR(mVH/mVL、国際公開第2015/085847A1号および表2を参照のこと)を、CDR移植法を使用して、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのv-ドメインフレームワーク配列スキャホールドに最初に導入した。最適な薬剤様性能を有する最終リード治療用IgG化合物に向けて、遺伝子操作の努力を傾けるために、親抗体のCDRを、「好ましい」生殖細胞系列スキャホールドのIGHV3-7およびIGKV1-39に移植することを選択した。それらスキャホールドは、良好な溶解性および薬剤開発クオリティを有することが知られており、発現されたヒト抗体レパートリーにおいて高頻度に使用されている。
【0177】
これらスキャホールドおよび移植されたCDRの定義は、表2に概要を掲載した。マウス抗PD1抗体の重鎖配列と軽鎖配列とについても表2に示す。このCDR移植のプロセスは周知であるが、ヒトv-ドメイン配列の所与のセットが非ヒトCDR移植にとって適切なアクセプターフレームワークとして機能するかどうかを予測するのは未だ困難である。不適切なフレームワークの使用は、標的結合機能の減少、タンパク質安定性の問題、さらには最終IgGの発現の低下につながり得る。そこでCDR突然変異誘導の鋳型としてIGHV3-7/IGKV1-39移植が採用され、改善クローンの選択が行われた。
【0178】
ライブラリー作製およびスクリーニング
CDRが移植されたIGHV3-7/IGKV1-39のv-ドメイン配列を、Fabファージディスプレイ形式に組み込み、突然変異誘導ライブラリーカセットを、オリゴ合成およびアセンブリにより作製した。最終Fabライブラリーをファージディスプレイベクター内にライゲートし、エレクトロポレーション法を介して大腸菌内に形質転換して、1.3×10個の独立したクローンを生成した。ライブラリーの構造品質は、96個のクローンを配列解析することにより検証された。この配列解析データにより、マウスまたはヒトいずれかの生殖細胞系列の各相違位置の残基をコードする位置を、効率的におよそ50%の頻度でサンプリングされたことが示された。ライブラリーは、ヘルパーファージM13を使用してレスキューされ、選択はビオチン化されたヒトおよびカニクイザルのPD1-Fcタンパク質に対し、複数の別個のブランチにおいて実施された。
【0179】
選択後スクリーニング(図1)およびDNAシーケンシングにより、ELISAにおいてヒトおよびカニクイザルPD1に強い結合と、AlphascreenアッセイにおいてヒトおよびカニクイザルPD1へのIgG1-Mab005(ヒト化)の結合の>50%の阻害とを示した、64個の固有のヒトおよびカニクイザルPD1結合Fabクローンの存在が明らかになった。これら64個のクローンの中で、フレームワーク配列は完全に生殖細胞系列を維持していた一方で、すべてのCDR中における変異も観察された(表3)。リードクローンは、ヒトおよびカニクイザルのPD1-Fcの両方への結合に対するELISAシグナルと比較したCDR生殖細胞系列化のレベルに基づき格付けされた。次いでこの格付けの上位12個のクローンのv-ドメインをIgG発現ベクターにサブクローニングし、以下のさらなる検証を行った(表4)。上位12個のクローンはまた、大腸菌の発現からFabタンパク質として発現され、均質に精製され、定量され、ヒトPD1-FcおよびカニクイザルPD1-Fcにおける直接ELISA結合解析に適用された(図2AおよびB、表5)。予期せずに、カニクイザルPD1タンパク質におけるFabタンパク質の力価測定により、いくつかのライブラリー由来クローンに関して、Mab005(ヒト化)Fabのものよりも有意に改善された結合のEC50値が示された(表5)。このことが、ヒトPD1結合で観察されたものとほぼ同等であるライブラリー由来クローン全てについてのEC50値を導き、一方で、カニクイザルのMab005(ヒト化)Fabの結合は、ヒトよりも有意に低かった。実際には、Mab005(ヒト化)Fabの結合は、カニクイザルPD1において十分に弱く、与えられた最も高い濃度(500nM)であっても結合シグナル飽和は達成されなかったが、これはこのタンパク質に関して、カニクイザルPD1 EC50値が算出できなかったことを意味する(表5)。これら値が、立証された単量体Fabタンパク質で生じるので、それらは、いくつかのクローンにおけるカニクイザルタンパク質に関して、1:1結合の改善を反映していた。
【0180】
生殖細胞系列化変異は、ライブラリー選択から直接誘導されたリードクローンのすべてのCDRにおいて観察されたが、配列解析を行うことで、ヒト化が最大となるようクローンをさらに設計することが可能となる可能性がある。したがって、ヒトおよびカニクイザルのタンパク質に対する結合シグナルを有する64個の配列-固有ヒットを使用して、この機能的に特徴解析された集団のCDRにおけるマウスアミノ酸の保持頻度を解析した。位置的なアミノ酸保持頻度は、VドメインおよびVドメインでの百分率として表されている(それぞれ図3Aおよび3B)。RF<75%を有するマウス残基は、一連のコンビナトリアルデザインにおいて、標的-結合パラトープに必須ではない可能性がある位置とみなされ、生殖細胞系列化に対し開かれている可能性がある(表4)。Vドメインにおいて(CDR-H3は除外する)、CDR-H1およびH2における9個のマウス残基のうちの4個のみが、約75%の保持頻度を示し、またCDR-H1に存在する単独のマウス残基(M)は、機能性クローンのいずれにも存在せず、頻度値は0%であった(図3B)。Vドメインにおいて、Mab005配列由来の13個のマウスCDR残基のうち2個のみが、>75%の頻度で保持されていた(図3A)。この解析は、CDR-L2配列全体が、IGKV1-39に対して生殖系列同一性を与える可能性があることを強く示唆した。重要なことには、Mab005のCDR-L3内に存在し、ほぼ100%で保持される(図3A)ものであるトリプトファン(W)残基は、軽鎖スプライシング中Jセグメントによって提供される位置にあり、また開始ライブラリーにおけるヒトJK4配列の使用に起因して、非ヒトとしてみなされるだけであった。この観察により、ヒトJK1は天然に、その位置にW残基を含有し、得られる軽鎖配列はCDR-L2およびL3において完全な生殖系列を与える(表4)ため、一連のデザインクローン内の軽鎖の再設計にJK4の代わりにヒトJK1配列を含むことが可能になる。
【0181】
RF>75%のマウス残基のみを含有するデザインには、「MH」という接頭辞(MH=最大限にヒト化(Maximally Humanized))をつけた。別のデザインv-ドメインセット(「TTP」=完全に理論的に可能(Total Theoretically Possible))もまた生成され、VおよびVの両ドメインについて、集団で観察される最もヒト化されたCDRを組み合わせた。トータルで、以下の5個のデザインVドメインおよび3個のデザインVドメインが生成された:CDR-H1およびH3におけるVHドメインMH-AA-VH、MH-LV-VH、MH-LG-VH、MH-LF-VH、MH-LA-VHのサンプリングバリアント配列、一方CDR-L1におけるMH-VL、MH-JK1-VL、TTP-JK1-VLサンプリングバリアントであって、またJK4がJK1に置換されてもいる。実際、TTP-JK1-VLにおけるWからYへの変異およびJK4からJK1への変異が、この配列をv-ドメイン全体にわたる完全ヒト生殖系列にさせる。これら構造は、マトリックス化された手法により共トランスフェクトされて、合計で15個の最終デザインIgGを生成した(表4)。MHおよびTTPのクローンは、遺伝子合成により生成され、(上述の12個のライブラリー由来クローン、ならびに陽性対照のIgG1-Mab005(ヒト化)とともに)ヒト発現ベクターにクローニングされ、IgG1ヌル形式で作製された。すべてのIgGが、哺乳動物細胞の一過性トランスフェクションから容易に発現され、精製された。
【0182】
リードIgGの特異性および有効性の特徴解析
次いで上述の精製IgGを、直接力価測定ELISA形式において、ヒトおよびカニクイザルのPD1-Fcへの結合に関して試験した。この解析により、いくつかのライブラリー由来クローンが、ヒトおよびカニクイザルのPD1結合プロファイルと、IgG1-Mab005(ヒト化)と類似したEC50値(2倍以内)またはIgG1-Mab005(ヒト化)よりも改善したEC50値とを有することを示した(図4AおよびB、表6)。注目すべき例外の1つは、PD1の両オルソログに対して低い結合性を示したクローンIgG1-14C07であり、このクローンのEC50値を決定することを不可能にさせている。同様に、デザインIgGの大半が、IgG1-Mab005(ヒト化)と類似したEC50値(3倍以内)またはIgG1-Mab005(ヒト化)より改善されたEC50値を有した(図5A~D、表7)。しかしながら、クローンIgG1-01、IgG1-02およびIgG1-03は、PD1の1つのまたは両オルソログに対して低い結合性を示した、これは、これらクローンにおけるCDR-H1およびH3の変異が、組合せで用いた場合に結合を崩壊させるということを示している。直接結合IgGのELISAのEC50値は、真の1:1結合アフィニティよりもアビディティに強く影響を受けるため、本発明者らは次に、以下に概要されるように高感度な液相エピトープの競合およびビアコア結合アフィニティ決定を実施した。
【0183】
ビオチン化単量体型ヒトPD1に対するIgG1-Mab005(ヒト化)結合とのエピトープ競合に関するIgGの試験が可能であるAlphascreenアッセイを確立した。このアッセイにおいて、上位の性能を有するライブラリー由来IgGおよびデザインIgGは、IC50値を介してより効率的に識別された(表8)。多くのクローンは、IgG1-Mab005(ヒト化)に対して同等または改善されたMab005エピトープに関する競合を示したが(図6Aおよび6B)、いくつかは、以下を含む欠陥的なエピトープ競合(Mab005より2倍以上低い)を示した:IgG1-15C10、IgG1-13G02、IgG1-08F04、IgG1-16C07、IgG1-12H11、IgG1-12E02、IgG1-14C07、IgG1-01、IgG1-02、IgG1-03、IgG1-06、IgG1-09、IgG1-12およびIgG1-15(表8)。特に、このアッセイで最も低い性能のデザインIgGは、ELISAアッセイにおいて低いカニクイザルオルソログ交差反応性を有することが先にわかっているもの、およびWからYへのCDR-L1生殖細胞系列化変異を含む全てのクローンを含んでいた。
【0184】
結合アフィニティのビアコア解析は、すべてのIgGに関して、液相の単量体型ヒトおよびカニクイザルのPD1タンパク質に対して実施された。全ての場合において、低いChi値を伴う正確な1:1結合アフィニティが得られた(表9)。これらの解析から、FabおよびIgGのELISAならびにAlphascreenアッセイにおいて最も高いEC50値およびIC50値を一貫して与えるライブラリー由来クローンは、ヒトおよびカニクイザルのPD1に対し最も高いアフィニティ結合も示したことが示された。重要なことには、ライブラリー由来クローンIgG1-06D02、IgG1-12B07、IgG1-12H04およびIgG1-16H10ならびにデザインクローンIgG1-04、IgG1-05、IgG1-08、IgG1-10、IgG1-11、IgG1-13およびIgG1-14の全てが、IgG1-Mab005(ヒト化)と比較してヒトおよびカニクイザルの両PD1に関して改善された結合アフィニティを示した。重要なことは、これらアフィニティにおける改善が、予期せずに、これらクローンのヒト/カニクイザルのアフィニティを3倍未満(すべてのKD値が<4.9nM)に正規化させたことであり、IgG1-Mab005(ヒト化)が8倍の差を呈したこととは対照的である(ヒトKD-4.0nM、カニクイザルKD-32.0nM)。ヒトおよびカニクイザルの標的オルソログの間で3倍未満のアフィニティ差であることは、前臨床薬剤開発解析において非常に有益であり、これによって例えばサルの安全性試験、PKおよびPDのモデリング試験などの有意に良好なデザインおよび解釈が可能となる。両方のPD1オルソログに対する結合のこの相対的な正規化により、IgG1-ペムブロリズマブアナログに結合する際にリード化合物同士が類似性が高くなるようにさせて、これは2.7のアフィニティ差を呈する。さらに、クローンIgG1-14およびIgG1-15のアフィニティの比較で、IgG1-14のCDR-L1(表4)における単一の「マウス」W残基の影響が確認されたが、これはこの単一の残基のIgG1-15におけるYへの変異が、ヒトおよびカニクイザルのPD1に対するKDが約10倍欠如することをもたらすからである(表9)。この知見は、CDR残基がヒト生殖系列同一性に変換され得るかまたはされ得ないかを「事前的」に決定することの困難さを強調したが、これはWからYへの変異が、通常、比較的に保存的置換であるとされているからである。
【0185】
細胞膜でのリードIgG結合特異性のフローサイトメトリー解析
PD1に対する抗体を、フローサイトメトリーを介して、細胞表面での濃度依存性結合に関して分析した。最初の解析は、ヒトまたはカニクイザルPD1で安定的にトランスフェクトしたCHO細胞で行った。これら解析では、リードライブラリー由来のクローン(図7A)およびデザインクローン(図7B、7C)が、IgG1-Mab005(ヒト化)と同等またはIgG1-Mab005(ヒト化)よりも改善された有効性で、膜に存在するヒトPD1に対する濃度依存性結合を呈することが示された(図10)。重要なことには、CDR-L1の「W」残基の影響は、IgG1-14がヒトPD1に関してIgG1-15よりも強い結合を示したことから再び観察された(図7C)。カニクイザルPD1 CHO細胞で行った解析では、さらに、いくつかのライブラリー由来(図8A)およびデザイナーリード(図8B)が、IgG1-Mab005(ヒト化)と比較してカニクイザルPD1に対する有意に改善された結合を呈することが確認された(表10)。非トランスフェクトCHO細胞においては、最も高い濃度であっても、いずれのクローンでも結合シグナルは観察されなかった。
【0186】
PD1-PDL1遮断アッセイにおけるリードIgG解析
細胞系PD1/PD-L1遮断レポーターアッセイでは、全ての被験クローンが、PD1の濃度依存性アンタゴニズムを呈した。重要なことには、複数のクローン(IgG1-06D02、IgG1-12H04、IgG1-16H10、IgG1-05、IgG1-08、IgG1-11およびIgG1-14を含む)が、IgG1-Mab005(ヒト化)と比較して、PD1遮断において改善された有効性を呈した(表11)。さらには、クローンIgG1-06D02およびIgG1-16H10は、IgG1-Mab005(ヒト化)及びIgG4ニボルマブアナログよりも高い、アッセイにおいて最大のシグナルを呈した(図9)。
【0187】
抗体v-ドメインT細胞エピトープ解析
インシリコ技術(Abzena,Ltd.社)は、治療用抗体および治療用タンパク質中のT細胞エピトープの位置の特定に基づいており、Mab005およびリード抗体のv-ドメイン両方の免疫原性の評価に使用した。v-ドメイン配列の解析は、重複する9merペプチド(各々が最後のペプチドと8残基重複する)を用いて実施され、34種のMHCクラスIIアロタイプの各々に対して試験した。各9merを、MHCクラスII分子との潜在的な「適合」および相互作用に基づいてスコア化した。ソフトウェアにより算出されるペプチドスコアは、0~1の間である。高い平均結合スコアを出したペプチド(iTope(商標)スコアリング機能において>0.55)が強調された。MHCクラスII結合ペプチドの>50%(すなわち34種のアレルのうちの17種)が高い結合アフィニティ(スコア>0.6)を有する場合、そうしたペプチドは、「高アフィニティ」MHCクラスII結合ペプチドとして規定され、CD4+T細胞エピトープを含有するリスクが高いとみなされる。低アフィニティMHCクラスII結合ペプチドは、多くのアレル(>50%)に、>0.55の結合スコア(しかし大部分は>0.6ではない)で結合する。配列のさらなる解析は、TCED(商標)を使用して実施された。この配列を使用して、BLASTサーチによりTCED(商標)をデータ検索し、過去にAbzena Ltd.社で実施されたインビトロT細胞エピトープマッピング研究でT細胞反応を刺激した非関連タンパク質/抗体由来のペプチド(T細胞エピトープ)間で任意の高い配列相同性を特定した。
【0188】
ペプチドを、以下の4つのクラスに分類した:高アフィニティ外来物(「HAF」-高免疫原性リスク)、低アフィニティ外来物(「LAF」-低免疫原性リスク)、TCED+(過去にTCEDデータベースにおいて特定されたエピトープ)、および生殖細胞系列エピトープ(「GE」-高いMHCクラスII結合アフィニティを有するヒト生殖細胞系列ペプチド配列)。生殖細胞系列エピトープの9merペプチドは、広範な生殖細胞系列ペプチドを用いた過去の研究により立証されたように、T細胞寛容によって免疫原性である可能性は低い。重要なことは、そうした生殖細胞系列のv-ドメインエピトープ(ヒト抗体定常領域中の類似配列によりさらに補助される)は、抗原提示細胞の細胞膜でのMHCクラスII占有に関しても競合するため、T細胞刺激に必要とされる「活性化閾値」を達成するのに充分な外来性ペプチド提示のリスクを低下させることである。ゆえにGE含量が高いことは、抗体治療剤の臨床開発において有益な性質である。
【0189】
表12に示されるように、重要なリードv-ドメインは、IgG1-Mab005(ヒト化)と比較してペプチドエピトープ含量において有意に有益な変化を示した(表12)。IgG1-Mab005(ヒト化)のv-ドメインフレームワーク領域(すなわち、CDR配列の外側)および全てのリードは、生殖細胞系列の配列であったため(表2)、予測された免疫原性における改善の全ては、CDR残基の生殖細胞系列化の結果として生じた(表4、12)。実際に、いくつかのクローンでは、完全に脱免疫化したVLドメインが存在した。GEエピトープ含量もまた、リードクローン(全てのリードにおいて1から≧3)のVL領域内で有意に増加しており、またTCED+エピトープは、すべてのリードにおけるVLドメインから除去されていた(表12)。重要なことは、複数のHAFおよびLAFエピトープが、リードクローンのVL CDR中に存在する生殖細胞系列化変異によって除去されていたことである。例えば、IgG1-Mab005(ヒト化)のLCDR-1中に存在するTCED+およびHAFペプチドの「VTITCLASQ」(配列番号83)は、すべてのリードクローンにおいて、6位のLからRへの変異により除去され、この配列は、軽鎖GEの「VTITCRASQ」(配列番号84)に転換された。同様に、IgG1-Mab005(ヒト化)のLCDR-1に存在するLAFペプチド「IGTWLTWYQ」(配列番号85)は、すべてのリードクローンにおいて、4位に単一のマウス残基Wのみを保持することで除去され、この配列は、「ISSWLNWYQ」(配列番号86)に転換された(表12)。クローン06D02、IgG1-05、IgG1-08、IgG1-11およびIgG1-14においては、IgG1-Mab005(ヒト化)HAFペプチド「LLIYTATSL」(配列番号87)および「LIYTATSLA」(配列番号88)、ならびにLAFペプチド「IYTATSLAD」(配列番号89)は、マウス配列「TATSLAD」(配列番号36)から完全な生殖細胞系列配列「AASSLQS」(配列番号42)へのLCDR-2の変異によって、除かれてGE配列に変換できる。IgG1-Mab005(ヒト化)FW3/LCDR3領域はまた、LAFペプチド「YYCQQVYSI」(配列番号90)をコードする。このエピトープは、6位のVをSに生殖細胞系列化変異することで、全てのリードにおいて除去された。IgG1-Mab005(ヒト化)のVH領域において、ペプチド配列「LYYFDYWGQ」(配列番号91)(HCDR3およびFW4にわたる)は、LAFであることがわかった。このペプチドの3位におけるYからAへの変異により、クローンIgG1-14におけるこのエピトープの除去が可能になる(表4、12)。
【0190】
抗体結合特異性解析
早期臨床試験において、Mab005のヒト化形態が、例えば血管腫等である、ヒト患者における異常な毒性が報告されたが、これは他の抗PD1療法または抗PD-L1療法では見られていない。これらの報告は、ヒト化Mab005が、他の抗PD1抗体に存在しなかった、固有の「非特異的な」結合特性を有する可能性を示唆している。血管腫は、過剰な血管の集合により形成される良性の腫瘍であり、しばしば皮膚で発達するが、それらはまた肝臓や他の器官で発達可能である。発明者らは、Mab005は、血管発生または組織分化と関連する未確認かつ予測不可能受容体と結合する可能性があると仮定した。この可能性を検証するために、4975個の固有のヒト細胞膜受容体を発現する細胞の高密度アレイの使用に基づくインビトロ技術(Retrogenix,Ltd.社)を使用して、IgG1-Mab005(ヒト化)での非特異的(off-target)な結合の特異性をスクリーニングした。この受容体アレイ結合スクリーニングにより、IgG1-Mab005(ヒト化)が膜発現PD1への強い結合を示すこと、しかし以下の4種の潜在的な非特異的結合の特異性も有することが特定された:FZD5(Frizzledクラス受容体5)、ULBP2(UL16結合タンパク質2)、EphB6およびKDR(VEGFR2としても知られる)。血管腫は、例えばVEGFR2等である血管生物学関連受容体において変異を有する患者において自然発生することが知られており、また例えばラムシルマブ(抗VEGFR2)等である、癌治療用血管標的薬剤の使用において、報告されている副作用がある。さらに、FZD5は、血管腫発症に関連するWnt経路シグナル伝達受容体であるため、これら受容体のうちのいずれかの機能を調節することは、血管生物学を調節することのようである。さらに、ULBP2は、ナチュラルキラー細胞活性化受容体NKG2D用であることがわかっているリガンドであるため、抗PD1での癌治療中のこのタンパク質への結合の結果は不明である。
【0191】
これら非特異的結合事象を確認するために、これら受容体および対照をコードするプラスミドを、DNA配列に関して提出した。これら解析により、コードされたタンパク質が、確かに正しい配列であったことが確認された。次いで対照および可能性のある標的受容体に関するプラスミドサンプルを、デュプリケートでの繰り返し解析用の新規チップ上に再配列した。再配列したプラスミドの全てからの発現の有効な誘導は、ZSグリーン用のチップのスキャンを介して確認されたが、ZSグリーンは、内部対照マーカーとして全ての発現プラスミドに対して同時にコードされた。この解析により、プラスミドが点在していた全ての場所において、はっきりと検出可能なZSの発現が見られた(図10A)。さらに、次いで同様に点在したスライドを用いて、IgG1-Mab005(ヒト化)で(図10B)、アイソタイプIgG1で(陰性対照、図10C)、リツキシマブ(IgG1の陽性対照、図10D)でトランスフェクトした細胞、および一次抗体プローブを適用しなかったチップ(図10E)を再検出した。これら解析により、IgG1-Mab005(ヒト化)は再び、PD1、FZD5、ULBP2およびKDRでトランスフェクトした細胞上のバックグラウンド(両チップ上)に対して測定可能な結合を示すが、FcγR1a(IgG1ヌルアイソタイプ)への、またはEphB6(図10B)を含むその他のスポットへの結合は示さないことがわかった。リツキシマブは、予測通り、CD20およびFcγR1a(IgG1アイソタイプに起因する)に対する結合を示したが、PD1、FZD5、ULBP2、EphB6およびKDRに対しては観察可能な結合はなかった(図10D)。アイソタイプコントロール抗体(図10C)でプローブしたチップおよび一次抗体でプローブしなかったチップ(図10E)において、予期された制御タンパク質のみが何らかのシグナルを示した。この制御チップの明白な性能により、PD1、FZD5、ULBP2およびKDRにおけるIgG1-Mab005(ヒト化)結合シグナルが特異的であるということが確認された。
【0192】
この非特異的結合活性の起源と、これがこの試験において生成したライブラリー由来IgGおよびデザインIgGにおいて保持されているのか否かを調べるために、さらなるチップ結合解析を実施した(図11A~T)。上記のように、再配列したプラスミドを再び、トランスフェクション性能について確認し、ZSグリーン発現の導入を確認した(図11A)。さらなるコントロール抗体、ペムブロリズマブアナログ(図11B)およびリツキシマブ(図11C)の両方は、それらのそれぞれの同族標的にのみ結合して、またアイソタイプコントロールIgG1は結合が見られなかった(図11D)。mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)を用いた一次解析(それぞれ図11E及びF)は、先にIgG1-Mab005(ヒト化)でのみ観察された(図10B)非特異的結合シグナルがまた、mVH/mVL Mab005-IgG1でプローブしたチップに存在することがわかった。この知見により、IgG1-Mab005(ヒト化)の非特異的結合反応性は、元のマウスハイブリドーマから直接誘導されるものであり、またヒト化過程の間に誘導されるポリリアクティビティ(polyreactivity)の結果ではないことが確認された。したがって、IgG1-Mab005(ヒト化)の非特異的結合活性は、CDR内に直接含まれているが、これはマウスCDRがヒト生殖細胞系列フレームワークに移植されたときに保持されたからである。
【0193】
次いで、リードライブラリー由来抗体およびデザイン抗体を用いて、この同一のチップセットをプローブした。驚くべきことに、抗体IgG1-06D02(図11G)、IgG1-11G05(図11H)、IgG1-12H04(図11I)、IgG1-16H10(図11J)、IgG1-04(図11K)、IgG1-05(図11L)、IgG1-06(図11M)、IgG1-08(図11N)、IgG1-11(図11O)、IgG1-13(図11P)IgG1-14(図11Q)、IgG1-15(図11R)、IgG1-12B07(図11S)およびIgG1-10(図11T)のいずれもが、デュプリケート解析のいずれかにおいて、PD1とは別のターゲットに対する測定可能な結合を何も示さなかった。この知見により、リード抗体が高度な特異性とPD1のみへの強力な結合とを保持することと、IgG1-Mab005(ヒト化)で観察された非特異的反応性が除かれたこととが示された。
【0194】
直交性の、高感度アッセイによりこの知見を最終的に確認するために、KDR、ULBP2、FZD5およびZSグリーンのみ(陰性対照)に関して配列検証プラスミドを用いて、ヒト細胞株HEK293の一過性トランスフェクションを実行した。次いで、トランスフェクト細胞は、mVH/mVL Mab005-IgG1、IgG1-Mab005(ヒト化)、ペムブロリズマブアナログ、アイソタイプIgG1、およびリード抗体のサブセット(IgG1-06D02、IgG1-12HO4、IgG1-05、IgG1-08)を用いて染色した。各抗体を、受容体トランスフェクト細胞およびZSグリーントランスフェクト細胞の両方に対して、高濃度(5μg/ml)および中程度の濃度(1μg/ml)で繰り返し染色で用いた(バックグラウンド結合を測定するため)。PD1トランスフェクト細胞の5μg/mlおよび1μg/ml両方での染色(図12A~12P)において、アイソタイプコントロール以外の全ての被験抗体が、PD1トランスフェクト細胞で予測された強力で特異的な染色を示したが、ZSグリーントランスフェクト細胞では示さなかった。対照的に、FZ5トランスフェクト細胞(図13A~13P)、KDRトランスフェクト細胞(図14A~14P)およびULBP2トランスフェクト細胞(図15A~15P)の染色は、図11よりのチップデータと完全に一致したが、mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)のみは、5μg/mlおよび1μg/mlの両方で3標的の全てにおいて強い結合シグナル示した。抗体IgG1-06D02、IgG1-12HO4、IgG1-05、IgG1-08、ペムブロリズマブアナログ、またはアイソタイプIgG1のいずれもが、どちらの濃度でも、FZ5、KDRまたはULBP2をトランスフェクトした細胞のうちのいずれに対しても、バックグラウンド上で測定可能な結合を示すものはなかった。さらなる高感度のELISAアッセイでは、これら抗体はまた、ヒトおよびカニクイザルPD1(図16A、B)に結合するが、ヒトもしくはアカゲザルVEGFR2(図16C、D)、ヒトFZD5(図16E)の組換え外部ドメインに対して、またはBSAタンパク質(図16F)に対しては結合しなかった。これら知見により、突然変異誘導および再選択工程で誘導されるCDR配列は、IgG1-Mab005(ヒト化)と関連した臨床毒性の一次ドライバであり得る受容体KDR、FZD5およびULBP2の非特異的結合を予期せずに除いたということを完全に確認した。
【0195】
最後に、PD1アフィニティ評価に関して上記した条件を用いて、ビアコアを介してVEGFR2に対するmVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)のアフィニティを評価する試みを行った。ヒトおよびアカゲザルの単量体VEGFR2-hisタンパク質を、mVH/mVL Mab005-IgG1およびIgG1-Mab005(ヒト化)に対して力価測定した。ここでまた、両抗体は、VEGFR2組換えタンパク質に対して結合を示したが、結合シグナルは、非常に高濃度の可溶性分析物でのみ観察された(図17)。結果として、乏しい適合値(Chi>6.6)である複雑な曲線が、生成できたもののすべてであり、信頼できるKD値は正確には導かれなかった。このことは、ヒトVEGFR2であってもアカゲザルVEGFR2であってもいずれの抗体のアフィニティが低く、μM領域にある可能性があるということを示した。
【0196】
VEGFR2活性解析
IgG1-Mab005(ヒト化)におけるVEGFR2反応性が、受容体を活性化することが可能であるかどうかを検証するために、ヒトVEGFR2受容体アッセイを用いて、天然のVEGF反応エレメントNFAT(プロメガ社)の制御下での、ルシフェラーゼ発現の誘導を調べた。このアッセイにおいて、IgG1-Mab005(ヒト化)およびmVH/mVL Mab005-IgG1の両方が、VEGFR2シグナル伝達の強い濃度依存性活性を示し(nM領域にある)、IgG1-Mab005(ヒト化)はmVH/mVL Mab005-IgG1よりも強力であった(図18)。しかしながら、IgG1-Mab005(ヒト化)の活性化能は、有意に、組換えヒトVEGF-163のものよりも低かった(図18)。重要なことには、クローンMAB04、MAB08、06D02および12H04のそれぞれがまた、このアッセイで解析されたが、1μMの高さの濃度であっても、観測可能な活性化シグナルは現れなかった。実際には、リードIgGクローンに関して、最大濃度でのシグナルは、アイソタイプコントロールIgG1で観察されたシグナルよりも少なかった(図18)。
【0197】
IgG安定性解析
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、全体的な分子構造の安定性の指標としてのタンパク質の熱的安定性を測定する。試験されたすべてのIgG1ヌルタンパク質が、DSC解析と完全に適合可能であり、同等のサンプル均一性および協同性を示した(図19)。各抗体に対し測定された温度遷移中点(Tm:thermal transition midpoints)を表13に示す。5個すべてのIgGが、CH2ドメインと同様に、72.2℃から72.4℃のTm1値を示し、すべてのサンプルが高い完全性を有していたことが示唆された。しかしながら、予期せずに、全てのリードIgG(IgG1-05、IgG1-08、IgG1-06D02およびIgG1-12H04)が、それらのFabドメインで極めて高い安定性を示し、Tm2の値は90.8℃から92.2℃の範囲であった(表13)。対照的に、Mab005-IgG1(ヒト化)は、有意に低いFab安定性であり、Tm値は83.8℃であった(表13)。すべての抗体の可変ドメインフレームワーク領域および抗体定常領域が、同一の配列であり、したがってすべての改善が、CDR配列の差異によってのみ介在されたという点から、Mab005-IgG1(ヒト化)よりもリード抗体に関する、Fab安定性の大幅な上昇は予想外であった。
【0198】
例えばトリプトファンおよびメチオニンなどの露出アミノ酸残基の酸化は、mAbの一般的な分解経路である。重要なことは、抗体のCDR中の重要な側鎖の酸化も、標的結合アフィニティの低下をもたらすことから、潜在的に生物活性に影響を与え得るということである。酸化は通常、タンパク質の保存中に経時的に発生するプロセスであり、リアルタイムで酸化リスクを解析する標準的な実験方法は、タンパク質に参加試薬を添加することである。この実験において、0.5% HのPBS溶液を用いて2時間、室温で処理することによりIgGを強制的に酸化させた。酸化は、例えば酸化型の極性を上昇させることで、抗体全体の疎水性を変化させる場合があるため、強制酸化により誘導された潜在的な変化を、逆相(RP)および疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)法により解析した。
RP解析では、インタクトなIgG形式(表14)または還元されたIgG形式(表15)のいずれにおける、クローンIgG1-05、IgG1-08、IgG1-06D02およびIgG1-12H04のいずれに関しても、保持時間の変化は観察されず、これは側鎖において有意な酸化は生じなかったことを示唆する。対照的に、Mab005-IgG1(ヒト化)のH処理により、インタクトなIgG(表14)のカラム保持時間の約0.6分の減少が、また還元された軽鎖(表15)では約0.8分の減少が観察され、これは露出アミノ酸の酸化が、抗体軽鎖内で特異的に生じていたことを示唆した。H処理の前後における、トリプシンペプチドフィンガープリントのRP解析もまた、Mab005-IgG1(ヒト化)ではないすべてのIgGでは、側鎖の酸化による変化は最小限であったことを示した。Mab005-IgG1(ヒト化)では、強制酸化後の5つのペプチドの欠如または還元に次いで、6つのさらなるペプチドが出現した(図20A)。対照的にクローンIgG1-05、IgG1-08、IgG1-06D02およびIgG1-12H04は、有意に少ないペプチドが同時の欠如を示した。例えば、IgG1-06D02は、H処理後に、ちょうど2つのトリプシンペプチドの欠如と、2つのさらなるピークの出現を示した(図20B)。
【0199】
処理はまた、5つすべての被験体で、HICにおける保持時間の減少を誘導したが、これは露出アミノ酸の酸化がわずかであったことを示唆した(表16)。ここでまた、HICで最も大きく減少した保持時間(1.1分)が、Mab005-IgG1(ヒト化)で観察された一方で、クローンIgG1-05、IgG1-08、IgG1-06D02およびIgG1-12H04での減少はほんの0.2~0.3分であった。総じて、これら知見により、リードクローンIgG1-05、IgG1-08、IgG1-06D02およびIgG1-12H04は、予期せずに、Mab005-IgG1(ヒト化)と比較して、改善された物理的安定性と酸化による変化に対する抵抗性とを有することが示唆された。
【0200】
本明細書に概要される解析を組み合わせると、驚くべきことに、これら抗体のCDRにおいて、生殖細胞系列と非生殖細胞系列のアミノ酸の両方を深くサンプリングすることで、複数の最終分子において標的結合特異性、免疫原性リスク、有効性、生物物理的安定性および化学的安定性のリスクを同時に最適化することが可能となったことが示された。
【0201】
限定されないが特許、特許出願、記事、書誌、および論文を含む本明細書に引用されるすべての書面、または書面の一部は、その全体ですべての目的に対し、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。組み込まれた書面、または書面の一部の1つまたは複数が、本出願の用語定義と矛盾する用語を定義する場合、本出願にある定義が優先される。しかしながら、本明細書に引用されるすべての参照文献、記事、公表文献、特許、公表特許、および特許出願に関する言及は、それらが正当な先行技術を構成する、または世界の任意の国における普遍的で一般的な知識の一部を形成するという承認、または任意の形態の示唆として見なされず、または見なされるべきではない。
【0202】
本発明は好ましい実施形態または例示的実施形態を参照して記載されているが、当業者であれば、本発明の主旨および範囲を逸脱することなくそれらに対する様々な改変および変動を行うことが可能であること、およびそうした改変は本明細書において予期されることが明白であると認識するであろう。本明細書に開示される、および添付の請求の範囲に記載される特定の実施形態に関し、限定は意図されておらず、何らの示唆もないものとする。
【表1】

【表2】

【表3-1】

【表3-2】

【表4-1】

【表4-2】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19-1】

【表19-2】
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図17
図18
図19
図20A
図20B
【配列表】
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