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特許74192405N標準に適合する色を有する金合金及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】5N標準に適合する色を有する金合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 5/02 20060101AFI20240115BHJP
   C22C 1/02 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C22C5/02
C22C1/02 503A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020543743
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2019052092
(87)【国際公開番号】W WO2019175834
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】00328/18
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】515138724
【氏名又は名称】アルゴー-ヘラエウス エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロッシーニ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】アルナボルディ,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ナウアー,マルコ
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505710(JP,A)
【文献】特表2014-530962(JP,A)
【文献】特開2005-120465(JP,A)
【文献】特表2016-536470(JP,A)
【文献】特開2005-082890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/02
C22F 1/00- 1/18
C22C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 780重量‰から、840重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 125重量‰~167重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 15重量‰~54重量‰の間に含まれる量の銀と、
- 白金又はパラジウムと
からなる、宝石類のための金合金であって、
前記パラジウム又は白金の含有量は、金、銅、銀及び白金の集合体、又は金、銅、銀及びパラジウムの集合体が、前記合金の1000重量‰に達するようなものであり、
そのように構成された金合金が、ISO DIS 8654:2017標準で示される条件下において、5N合金の色の標準に適合する色を示す、宝石類のための金合金。
【請求項2】
金が、790重量‰~840重量‰の量で存在する、請求項1に記載の宝石類のための金合金。
【請求項3】
パラジウムが、4重量‰~17重量‰の量で含まれ、前記金合金が、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する環境において、24時間以内に3.5未満の色の変化ΔE(L,a,bを有するように構成される、請求項1又は2に記載の宝石類のための金合金。
【請求項4】
パラジウムが、5重量‰~15重量‰の量で含まれる、請求項3に記載の宝石類のための金合金。
【請求項5】
銀が15重量‰~37重量‰の量で含有される、請求項1~4のいずれか一項に記載の宝石類のための金合金。
【請求項6】
銀が、15重量‰~35重量‰の量で含有される、請求項5に記載の宝石類のための金合金。
【請求項7】
金が790重量‰~800重量‰の区間に含まれる量で存在し、銅が154重量‰~167重量‰の間に含まれる量で存在し、23重量‰~37重量‰の間に含まれる量の銀と、二者択一的に:
- 9重量‰~11重量‰の間に含まれる量のパラジウム;
- 4重量‰~6重量‰の間に含まれる量の白金
とが組み合わせられた、請求項5又は6に記載の宝石類のための金合金。
【請求項8】
パラジウムが、10重量‰で存在し、または、白金が、5重量‰で存在する、請求項7に記載の宝石類のための金合金。
【請求項9】
金が790重量‰~792重量‰の間に含まれる量で存在し、銅が165重量‰~167重量‰の間に含まれる量で存在し、銀が32重量‰~40重量‰の間に含まれる量で存在し、白金が4重量‰~6重量‰の間に含まれる量で存在し、且つ、パラジウムを含まない、請求項1又は2に記載の宝石類のための金合金。
【請求項10】
金が810重量‰~835重量‰の間に含まれる量で存在し、銅が128重量‰~154重量‰の間に含まれる量で存在し、18重量‰~35重量‰の間に含まれる量の銀と、5重量‰~15重量‰の間に含まれる量のパラジウムとが組み合わせられ、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する環境における24時間以内の色の変化ΔE(L,a,b)が3.8未満である、請求項5又は6に記載の宝石類のための金合金。
【請求項11】
二次相を含まない、及び/又は結晶性である、請求項1~10のいずれか一項に記載の宝石類のための金合金。
【請求項12】
a)
- 780重量‰から、840重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 125重量‰~167重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 15重量‰~54重量‰の間に含まれる量の銀と、
- 白金又はパラジウムと
からなる混合物であって、前記白金又はパラジウムの含有量が、金、銅、銀及び白金の集合体、又は金、銅、銀及びパラジウムの集合体が前記混合物の1000重量‰に達するようなものである混合物を混合するステップと、
b)前記混合物をるつぼに導入し、続いて、溶融するまで加熱により溶融させるステップと
を含む、宝石類のための金合金の製造方法。
【請求項13】
金が、790重量‰~840重量‰の量で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶融が連続溶融であり、溶融した混合物が、黒鉛で実現されたモールドにおいて鋳造され、前記混合物が、黒鉛の表面に対するアンチグリッピング特性を有する材料の混合物である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融が鋳造ステップを含む連続又は不連続溶融であり、溶融した混合物が、黒鉛で実現されたダイ又は黒鉛のブラケットにおいて鋳造される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記連続又は不連続溶融の後に前記溶融した混合物が冷却ステップを受け、その後、1回又は複数回の熱間又は冷間塑性変形ステップと、1回又は複数回の熱処理とを受ける、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融の間、前記るつぼがガス制御雰囲気にさらされ、前記溶融の間、前記るつぼが、少なくとも一時的に真空条件にさらされる、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記連続溶融の間、前記るつぼが、環境圧力以下の圧力までの制御雰囲気にさらされ、前記連続溶融の間、前記るつぼがガス制御雰囲気にさらされ、前記ガスが、不活性ガス、又は還元性ガスである、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載の金合金を含む宝石類の物品であって、前記宝石類の物品が、宝石又は時計又は時計用ブレスレット又は時計用ムーブメント若しくは機械式ムーブメントの一部を含み、前記時計又は時計用機械式ムーブメントがそれぞれ、着用される又は腕時計に取り付けられるように構成される、宝石類の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は金合金の分野に関連し、特に、5N標準に適合する色を有する金合金に関する。
【0002】
また本発明は、5N標準に適合する色を有する金合金の製造方法にも関する。
【0003】
本発明に従う金合金及び金合金の製造方法はそれぞれ、宝石類及び時計製造の用途のための合金及び金合金の製造方法である。
【背景技術】
【0004】
背景技術
宝石類及び時計製造の分野では、金は非常に延性があるために純粋な形態では使用されない。宝石類及び時計製造の用途のためには通常、純粋な形態の金に関して、及び/又は低硬度又は高延性の金合金に関して、より高い硬度を特徴とする宝石類又は時計製造用の金合金が使用される。
【0005】
一般に、金合金は、侵食性環境との相互作用の後に、時間と共に望まれない色の変化を受ける可能性のあることが知られている。これらの相互作用は反応生成物の薄層の形成をもたらし、これは合金表面に付着して留まり、色及び光沢の変化を引き起こす(文献“Observations of onset of sulfide tarnish on Gold-base alloys”; JPD, 1971, Vol. 25, issue 6, pag. 629-637)。
【0006】
金合金の色の変化を促進することができる環境は様々であり、その用途と関連がある。
【0007】
金合金の標準色は、第1のLパラメータ、第2のaパラメータ及び第3のbパラメータに基づいて色を定義するCIELAB 1976色空間において一義的に測定することができ、ここで、第1のLパラメータは輝度を特定し、0(黒色)と100(白色)の間に含まれる値を採用するが、第2のaパラメータ及び第3のbパラメータは色度パラメータを表す。特に、CIELAB 1976カラーチャートにおいて、グレーの無彩色スケールはa=b=0の点で検出され;第2のパラメータaの正の値は、第2のパラメータの値が高くなるにつれてより大きく赤色に傾いた色を示し;第2のパラメータaの負の値は、第2のパラメータaの値が負であっても絶対値が高いと、より大きく緑色に傾いた色を示し;第3のパラメータbの正の値は、第3のパラメータの値が高くなるにつれてより大きく黄色に傾いた色を示し;第3のパラメータbの負の値は、第3のパラメータbの値が負であっても絶対値が高いと、より大きく青色に傾いた色を示す。
【0008】
特に、ISO DIS 8654:2017標準は、宝石類の金合金に関して7つの色指定を定義する。特に、これらの合金は以下の表に従って定義され、ここで、色は、0N~6Nの間で規定される標準基準で定義される。
【0009】
【表1】
【0010】
合金の色の測定について、特に、ISO DIS 8654標準は、合金の色を測定するための測定機器が、CIE N°15刊行物に準拠しなければならないことを規定する。特に、この測定機器は積分球を有する分光光度計であり、8°又は8°(正反射光を含む)の指定(the designations of: 8° or 8°: of (included specular component))に適合する測定形状により反射スペクトルを測定することができる。機器は、以下のパラメータに従って調整される:
- 正反射光を含む
- 標準照射 6504KのD65
- 標準オブザーバー 2°
色測定は、測定と測定の間で旋回(pivoting)を保証する再配置により、サンプルの5回の異なる測定の平均から得られる。
【0011】
ISO DIS 8654:2017標準から、5N標準色の合金の三色座標として、許容範囲を含む公称値L、a、bを示す以下の表が得られる。
【0012】
【表2】
【0013】
標準から始まり、次にCIE L色空間内で合金が0N...6N色を示すと断定することが可能である色区間をそれぞれが表す複数の領域を得ることが可能である。5Nに関連するこの領域は図1に示される。
【0014】
金合金の成分の量を測定することが可能である現在の精度は、通常、重量で0,1ppt(各10000に対する部分)よりも高い精度を有し、合金の溶融前でもその後(溶融後分析)でも、高い正確さで色を特定することを可能にする。またISO DIS 8654:2017標準は、0N~6N合金のそれぞれに対して推奨される化学組成も提唱する。特に、5N呈色に対して、推奨される化学組成は以下の表で規定されるものである:
【0015】
【表3】
【0016】
本出願人は、特に、塩化物又は硫化物が存在する環境に曝露されたときに、5N金合金がかなりの色の不安定性を示すことに気付いた。
【0017】
CIE1976カラーチャートで定義される色であって、
- L が時間t=0における初期条件の第1のパラメータとして定義され、
- a が時間t=0における初期条件の第2のパラメータとして定義され、
- b が時間t=0における初期条件の第3のパラメータとして定義される
E=f(L,a,b)座標によって規定されるような色に従う金合金の色の変化は、以下の式で定義される:
【数1】
【0018】
また、貴重な材料に熟練した技術者のヒトの目は、色の変化ΔE(L,a,b)>1を検出できることも気付かれた。
【0019】
特に、最近の研究(国際公開第2014/0872216A1号)によると、チオアセトアミドの蒸気に150時間曝露された(UNI EN ISO 4538:1998標準に従う)5N金合金は、5.6に等しい色の変化ΔE(L,a,b)を示し、50g/リットルの塩化ナトリウム水溶液(NaCl)に35℃で175時間曝露されたときには、5N金合金は3.6に等しい色の変化ΔE(L,a,b)を示す。
【0020】
5N金合金は宝石類の分野で高く評価される色を示すが、化学的侵食性環境に曝露されたときにその色がかなり不安定であることは、宝石類物品がそれを使用するのを特に難しくし、発汗を伴う又は海洋環境における集中的な使用に適応されにくくなる。
【0021】
JP2000336470号文献は、常用品上に付着させるのに適した抗菌特性を有する金合金を示しており、特に、抗菌性であることにとどまらず、「ピンクゴールド」として定義される色を示す、約80%の金重量、約12%の銅重量、及び5%のパラジウム重量を有する金合金が記載される。少量でもパラジウムを金合金に添加すると明らかな色の変化が起こり、5重量%のパラジウムの添加は、かなり薄い色になるように合金の色の変化を引き起こす。
【0022】
米国特許出願公開第2017/0241003A1号文献は、多数の相を有し、且つケイ素を含むガラスマトリックス複合体構造を有する合金の複数の実施形態を示す。ケイ素は妥当なサイズでもある包含物をもたらし、そしてその使用は、ハイジュエリーの用途では不都合である。さらに、ケイ素は合金の色をつや消しすることが知られており、米国特許出願公開第2017/0241003A1号によると、ケイ素の存在は薄い又は白い色をもたらす。また多数の相を有する複合体構造は、その脆弱性のために、ハイジュエリー用途に十分な品質及び色の均一性を有する表面を得ることをできなくする。
【0023】
欧州特許出願公開第1512765A1号は、金合金の複数の特定の例を開示しており、それぞれ、正確な特定値と共に表(表1)に示されている。金が917重量‰で存在する例を除いて、他の例は、金が750重量‰、750,5重量‰、760重量‰、770重量‰に等しい合金に関する。欧州特許出願公開第1512765A1号の表1の特定の例は、金が917重量‰で存在し、銅が83重量‰である例を除いて、とにかく210‰~244,5‰の間に含まれる銅の量の正確な値も示す。白金又はパラジウムは、存在する場合、20‰又は30‰(白金)、及び20‰又は40‰(パラジウム)に等しい割合で開示される。合金は、水道水、海水、プール用水、塩水又はせっけん水に曝露されたときに色の変化に対する強さを提供するように考えられる。欧州特許出願公開第1512765号文献において特許請求される金合金はピンクの金合金であり、特に、その色はISO標準に従う5N色の範囲から外れている。
【0024】
出願人により行われた試験によると、例えば、768重量‰に等しい量の金、218重量‰に等しい量の銅、及び14重量‰に等しい量のパラジウムを有する合金は、5N合金のISO 8654:2017標準の範囲からかなり離れた色、特に、以下の座標:L84.93 a8.78 b13.82を示す色を示す。パラジウムはその重量が増大するにつれて、合金の色を変化させてより薄い色にすることが観察されているので、例えば20重量‰超のパラジウム及び800重量‰未満の金を有する合金は、5N合金のISO 8654:2017標準の範囲内に含まれる色を有さない。
【0025】
DE202011102731号は、長期にわたってその色を保持するように考えられた金合金を開示する。DE202011102731号文献は、そのターンにおいて欧州特許出願公開第1512765A1号に従う既知の技術を参照する。段落[0007]には、0,5重量%~13重量%の間の銀、0,5重量%~5重量%の間の白金、0,5重量%~5重量%の間のパラジウム、及び残り部分の銅を含む、75重量%の金合金が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、本発明の目的は、5Nの色に適合する色を示し、且つ変色(discoloration)及び/又は曇り(tarnishing)に対して耐性があり、ISO参照標準により提唱される組成に従う5N合金よりも高い性能を有する金合金を説明することである。特に、本発明の目的は、ISO標準に従う5Nの色に対応する色を示す、宝石類又は時計製造のための金合金を説明することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
概要
これら及び他の目的は、以下の態様において記載される合金及びその製造方法によって得られる。これらの態様は、それらの間で又は以下の詳細な記載の一部と組み合わせることができ、ここで記載される態様の依存関係は、好ましく且つ非限定的であることが意図される。
【0028】
本発明の第1の態様は、
- 780重量‰、より好ましくは790重量‰、及び840重量‰に等しい量の金と、
- 125重量‰~167重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 15重量‰~54重量‰の間に含まれる量の銀と、
- 白金又はパラジウムと
を含む、宝石類のための金合金を形成し、ここで、白金又はパラジウムの含有量は、金、銅、銀及び白金の集合体、又は金、銅、銀及びパラジウムの集合体が、合金の少なくとも980重量‰に等しい、より好ましくは1000重量‰に等しい割合又は量に達するようなものであり、
そのように構成された金合金は、ISO DIS 8654:2017標準で示される条件下において、5N合金の色標準に適合する色を示す。
【0029】
第2の非限定的な態様によると、前記合金は、4‰~17‰の間に含まれる量のパラジウムを含むことを特徴とする。
【0030】
より具体的には、第2の態様に依存する第3の非限定的な態様によると、前記合金は、5‰~15‰の間に含まれる量のパラジウムを含むことを特徴とする。
【0031】
第4の非限定的な態様によると、先行する態様の1つ又は複数に依存して、前記金合金は、23‰~37‰の間に含まれる量の銀、及び9‰~11‰の間に含まれる量、より好ましくは実質的に10‰に等しい量のパラジウムと組み合わせて、790‰~800‰の間に含まれる量の金と、154‰~167‰の間に含まれる量の銅とを含む。
【0032】
或いは、第5の非限定的な態様によると、先行する第1~第3の態様の1つ又は複数に依存して、前記金合金は、23‰~37‰の間に含まれる量の銀、及び4‰~6‰の間に含まれる量、好ましくは実質的に5‰に等しい量の白金と組み合わせて、790‰~800‰の間に含まれる量の金と、154‰~167‰の間に含まれる量の銅とを含む。
【0033】
第6の非限定的な態様によると、先行する態様の1つ又は複数に依存して、色の変化及び/又は曇りに抵抗するために、且つチオアセトアミドを含有する環境、特に、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する環境において経験するために、合金は、24時間以内に3.5未満、より好ましくは3.2未満、さらにより好ましくは3未満の色の変化ΔE(L,a,b)を有する。
【0034】
第7の非限定的な態様によると、先行する第1~第3の態様の1つ又は複数、及び第6の態様に依存して、銀は、15‰~37‰の間、任意選択的に15‰~35‰の間に含まれる量で含有される。
【0035】
第8の非限定的な態様によると、先行する態様の1つ又は複数に依存して、合金は鉄を含まない4元合金であり、任意選択的に白金及び鉄を含まない。
【0036】
第9の非限定的な態様によると、先行する第1~第3又は第6の態様の1つ又は複数に依存して、前記合金は、790‰~792‰の間に含まれる量の金、165‰~170‰の間に含まれる量、より好ましくは167‰の量の銅、32‰~40‰の間に含まれる量の銀、4‰~6‰の間の白金を含む合金であり、鉄及び/又はパラジウムを含まないことを特徴とする。
【0037】
第10の非限定的な態様によると、先行する第1~第3又は第6の態様の1つ又は複数に依存して、前記金合金は、金が810‰~835‰の間に含まれる量で存在し、18‰~35‰の間に含まれる量の銀、及び5‰~15‰の間に含まれる量のパラジウムと組み合わせて、銅が128‰~154‰の間、任意選択的に129‰~153‰の間に含まれる量で存在する合金であり、この合金では、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する前記環境における24時間以内の色の変化ΔE(L,a,b)が3.8未満である。
【0038】
第11の非限定的な態様によると、先行する第1~第3又は第6の態様の1つ又は複数、及び前記10の態様に依存して、前記合金は、831‰~834‰の間に含まれる量、特に実質的に833‰に等しい量の金、4‰~6‰の間に含まれる量、より好ましくは実質的に5‰に等しい量のパラジウム、142‰~146‰の間に含まれる量の銅、及び12‰~22‰の間に含まれる量の銀を含む。
【0039】
第11の非限定的な態様によると、先行する第1~第3又は第6の態様の1つ又は複数、及び先の第10の態様に依存して、前記合金は、831‰~834‰の間に含まれる量、特に実質的に833‰に等しい量の金、14‰~17‰の間の範囲に含まれる量、より好ましくは16‰の量のパラジウム、実質的に127‰~131‰の間の範囲に含まれる銅、及び実質的に19‰~25‰の間の範囲に含まれる銀を含む。
【0040】
第13の非限定的な態様によると、先行する態様の1つ又は複数に依存して、前記合金は均一な金合金であり、第2相を含まず、特に、炭化物及び/又は酸化物を含まない。
【0041】
本発明によると、「二次相を含まない」又は「第2相を含まない」として、特に、他の熱処理を伴わない溶融及びその後の凝固の手順において、前記第2相を生成し得る元素を含まない合金が意図される;液相で形成され、合金凝固の下流でも残存する第2相は有害な第2相、例えば、炭化物及び/又は酸化物であり、これらは、研磨ステップの間に、研磨した物品の表面に肉眼で見ることができ、そしてハイジュエリー分野で要求される必要性に適合する表面品質の高い物品を得ることを妨げる。合金を硬化させることができる熱処理プロセスに合金を暴露することが可能であり、従って、前記熱処理の結果として、沈殿のためにわずかな沈殿物が存在し得る;この場合、これらは、材料の機械特性を増大させ、本発明の合金により実現された物品における変形の発生を対比させることにより、変位の動き(the movement of displacement)を防止する沈殿物である。
【0042】
第14の非限定的な態様によると、先行する態様の1つ又は複数に依存して、前記合金は、炭化物及び/又は酸化物の生成を引き起こしやすい化学元素を含まない金合金である。
【0043】
第15の非限定的な態様によると、先行する第13又は第14の態様の1つ又は複数に依存して、前記金合金は、バナジウム、マグネシウム、インジウム、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、イットリウム、レニウム、ゲルマニウムが存在しないこと、すなわちこれらを含まないことを特徴とする。
【0044】
特に、第16の非限定的な態様によると、金合金はケイ素を含まない合金であり、及び/又は4元若しくは5元合金である。
【0045】
第17の非限定的な態様によると、金合金は結晶性合金であり、任意選択的に100%結晶性である。
【0046】
第18の非限定的な態様によると、先行する態様の1つ又は複数に依存して、前記合金は、ニッケル、コバルト、ヒ素及びカドミウムを含まない。
【0047】
第19の非限定的な態様によると、先行する態様の1つ又は複数に依存して、前記金合金が呈する色は、少なくとも840時間に等しい時間空気に曝露した後でも5N合金のISO DIS 8564:2017標準によって与えられる限界に準拠する。
【0048】
第20の非限定的な態様によると、先行する第1~第3及び/又は第13~第19の態様の1つ又は複数に依存して、前記金合金は、790‰~800‰の間に含まれる量の金、4‰~17‰の間、より好ましくは4‰~16‰の間に含まれる量、さらにより好ましくは5‰~15‰の間に含まれる量のパラジウム,及び35‰~40‰の間に含まれる銀を含む金合金であり、銅は157‰~160‰の間で含まれ、より好ましくは実質的に158‰に等しく、そして3‰~7‰の間に含まれる量の鉄が存在する。
【0049】
第21の態様によると、金合金の製造方法も本発明の目的であり、前記方法は、
a)合金を構成する純元素が全て、均一な混合物を得るような方法で溶解される(以下、均質化と定義される)ステップであって、この混合物が、
- 780重量‰、より好ましくは790重量‰から、840重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 125重量‰~167重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 15重量‰~54重量‰の間に含まれる量の銀と、
- 白金又はパラジウムと
を含み、白金又はパラジウムの含有量が、金、銅、銀及び白金の集合体、又は金、銅、銀及びパラジウムの集合体が合金の少なくとも980重量‰に等しい、より好ましくは1000重量‰に等しい割合に達するようなものである、ステップと、
b)混合物をるつぼに導入し、続いて、溶融するまで加熱により溶融させるステップと
を含むことを特徴とする。
【0050】
第22の非限定的な態様によると、前記第21の態様に依存して、前記溶融は鋳造ステップを含む連続又は不連続溶融であり、溶融した材料は黒鉛で実現されたダイ又は黒鉛のブラケットにおいて鋳造され、前記混合物は、黒鉛の表面に対して化学的に親和性でない特性を有する材料の混合物である。
【0051】
第23の非限定的な態様によると、先の第21又は第22の態様に依存して、前記溶融は連続溶融であり、溶融した材料は黒鉛で実現されたダイにおいて鋳造され、前記混合物は、特に少なくともバナジウムを含まず、黒鉛の表面に対するアンチグリッピング(anti-gripping)特性を有する材料の混合物である。
【0052】
第24の非限定的な態様によると、第21~第23の態様の1つ又は複数に依存して、連続又は不連続溶融の後に前記合金は冷却ステップを受け、その後、1回又は複数回の熱間又は冷間塑性変形ステップと、1回又は複数回の熱処理とを受ける。
【0053】
第25の非限定的な態様によると、先行する第21~第24の態様の1つ又は複数に依存して、前記溶融の間、るつぼはガス制御雰囲気にさらされ、特に少なくとも一時的に真空条件にさらされる。
【0054】
第26の非限定的な態様によると、先行する第22~第25の態様の1つ又は複数に依存して、前記連続鋳造ステップの間、前記るつぼは、環境圧力以下の圧力までの制御雰囲気にさらされ、前記ガスは、不活性ガス、好ましくはアルゴン、又は還元性ガス、好ましくはフォーミングガスである。
【0055】
第27の非限定的な態様によると、先行する第22~第26の態様の1つ又は複数に依存して、前記不連続鋳造ステップの間、前記るつぼは800mbar未満、好ましくは700mbar未満の制御雰囲気にさらされ、前記ガスは、不活性ガス、好ましくはアルゴンである。
【0056】
第28の態様によると、前記金合金に関する先行する態様の1つ又は複数に従う金合金を含む宝石類の物品も本発明の目的である。
【0057】
本明細書に記載される金合金に関する態様、及び/又は以下の詳細な説明に従う態様の特徴は、第21の態様に従う方法と組み合わせて便利に適用することもできる。
【0058】
別の非限定的な態様又は第29の態様によると、先の態様に依存して、前記宝石類の物品は、宝石又は時計又は時計用ブレスレット又は時計用ムーブメント若しくは機械式ムーブメントの一部を含む。
【0059】
別の非限定的な態様又は第30の態様によると、先の態様に依存して、前記時計又は時計用機械式ムーブメントはそれぞれ、着用される又は腕時計に取り付けられるように構成される。
【0060】
第31の態様によると、
- 780重量‰、より好ましくは790重量‰から、900重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 85重量‰~170重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 4重量‰~17重量‰の間に含まれる量のパラジウムと
を含む、宝石類のための金合金も本発明の目的であり、ここで、金及び銅の量の合計は、少なくとも958重量‰に等しく、そのように構成された金合金は、ISO DIS 8654:2017標準で示される条件下において、5N合金色標準に適合する色を示す。
【0061】
別の非限定的な態様又は第32の態様によると、先行する第31の態様に依存して、金、銅及びパラジウムの量の合計は、少なくとも963重量‰に等しい。
【0062】
別の非限定的な態様又は第33の態様によると、先行する第32の態様に依存して、金、銅及びパラジウムの量の合計は、少なくとも980重量‰に等しく、パラジウムは、8重量‰、より好ましくは10重量‰から、17重量‰、より好ましくは15重量‰までの間に含まれる量で含まれる。
【0063】
別の非限定的な態様又は第34の態様によると、先行する第31又は第32の態様に依存して、合金は3元合金であり、金は、873重量‰~902重量‰の間に含まれる量で含有される。
【0064】
別の非限定的な態様又は第35の態様によると、先行する第34の態様に依存して、金は、875‰~900‰の間に含まれる量で含有される。
【0065】
別の非限定的な態様又は第36の態様によると、先行する第31~第35の態様の1つ又は複数に依存して、金、銅及びパラジウムの量の合計は、実質的に1000‰に等しい。
【0066】
別の非限定的な態様又は第37の態様によると、先行する第31~第33の態様の1つ又は複数に依存して、合金は、13重量‰~22重量‰の間に含まれる量のインジウムを含む4元合金である。
【0067】
別の非限定的な態様又は第38の態様によると、先行する第34の態様に依存して、合金は、15‰~20‰の間に含まれる量のインジウムを含む4元合金である。
【0068】
別の非限定的な態様又は第39の態様によると、先行する第37及び/又は第38の態様に依存して、合金は、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する環境において24時間以内に3.5未満の色の変化ΔE(L,a,b)を有する。
【0069】
別の非限定的な態様又は第40の態様によると、先行する第37~第39の態様の1つ又は複数に依存して、合金は、35℃に温度調節された50g/LのNaCl溶液中で70時間以内に2.4未満、より好ましくは2.3未満の色の変化ΔE(L,a,b)を有する。
【0070】
別の非限定的な態様又は第41の態様によると、先行する第37~第40の態様の1つ又は複数に依存して、合金は、35℃に温度調節された50g/LのNaCl溶液中で24時間以内に1.75未満、より好ましくは1.5未満の色の変化ΔE(L,a,b)を有する。
【0071】
別の非限定的な態様又は第42の態様によると、先行する第31又は第33の態様に依存して、合金は、790重量‰~793重量‰の間に含まれる量の金、及び32重量‰以上の量の銀を含む。
【0072】
別の非限定的な態様又は第43の態様によると、先行する第31~第32の態様及び/又は第42の態様に依存して、合金は、4重量‰以上の量の白金、及び165重量‰超の量の銅を含む。
【0073】
別の非限定的な態様又は第44の態様によると、先行する第34~第36の態様の1つ又は複数に依存して、合金は、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する環境において24時間以内に3未満、任意選択的に2.7未満の色の変化ΔE(L,a,b)を有する。
【0074】
別の非限定的な及び第45の態様によると、宝石及び/又は時計、特に腕時計又は懐中時計の実現のための、本開示の金合金の使用が記載される。
【0075】
図面の説明
本発明は好ましく且つ非限定的な実施形態において以下に説明され、その説明は添付図面に関連している。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】座標L、a、bに従うCIELAB 1976色空間の一部を示しており、5N ISO DIS 8654:2017標準に従って金合金に対して認められる色区間又は許容範囲に対応する領域が検出されており、本発明の目的の合金に対する典型的な色の位置が示される。
図2】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的の合金の一部(LRS359、LRS391、LRS386、LRS387)について、UNI EN ISO 4538:1998に従うチオアセトアミドへの曝露時間による色の変化チャートを示す。
図3】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的の合金の一部(LRS359、LRS391、LRS386、LRS387)について、空気への曝露時間による色の変化チャートを示す。
図4】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的の合金の一部(LRS386、LRS387、LRS431)について、50g/LのNaCl溶液への曝露時間による色の変化チャートを示す。
図5】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的の合金の一部(LRS386、LRS387、LRS431)について、チオアセトアミドへの曝露時間による色の変化チャートを示す。
図6】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的の合金の一部(LRS386、LRS387、LRS431)について、空気への曝露時間による色の変化チャートを示す。
図7】CIELAB 1976色空間の一部を示しており、空気に0、72、240、500、840時間曝露したときに、本発明のいくつかの合金の色がどのように展開するかが示される。
図8】CIELAB 1976色空間の一部を示しており、UNI EN ISO 4538:1998に従ってチオアセトアミドに1、2、4、24時間曝露したときに、本発明のいくつかの合金の色がどのように展開するかが示される。
図9】CIELAB 1976色空間の一部を示しており、50g/LのNaCl溶液に0、2、4、24、72時間曝露したときに、本発明のいくつかの合金の色がどのように展開するかが示される。
図10】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的のLRS354及びLRS359合金について、UNI EN ISO 4538:1998に従うチオアセトアミドへの曝露時間による色の変化チャートを示す。
図11】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的のLRS354及びLRS359合金について、空気への曝露時間による色の変化チャートを示す。
図12】参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、本発明の目的のLRS354及びLRS359合金について、50g/LのNaCl溶液への曝露時間による色の変化チャートを示す。
図13】本発明に従う他の合金について、及び参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、UNI EN ISO 4538:1998に従うチオアセトアミドへの曝露時間による色の変化チャートを示す。
図14】本発明に従う他の合金について、及び参照サンプルとして使用されるISO組成に従う5N合金が呈する色の変化に関して、50g/LのNaCl溶液への曝露時間による色の変化チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
詳細な説明
本発明の目的は、耐曇り特性を有すると共に、5N ISO DIS 8654:2017標準に適合する色を有する、特に宝石類のための金合金群である。
【0078】
本発明において記載される合金は、硫化物又は塩化物を含有する環境における色の変化(曇り)に対する耐性の観点から試験された。本発明の説明において、チオアセトアミドを含む環境で実行される試験へのそれぞれの言及は、UNI EN ISO4538:1998標準の表示に従って行われる。
【0079】
本発明に従って試験を実行するために、サンプルは、容量が2~20リットルの間に含まれなければならない試験チャンバ内で、酢酸ナトリウム三水和物CHCOONa・3HOの飽和溶液の存在により相対湿度が75%に維持された雰囲気においてチオアセトアミドCHCSNHの蒸気に曝露されており、ここで、チャンバ自体の構築のために使用される材料は全て揮発性硫化物に対して耐性でなければならないと共に、試験結果に影響を与え得るガス又は蒸気を発生してはならない。
【0080】
塩化ナトリウム溶液の存在を特徴とする環境における腐食及び色の変化に対する耐性の評価に関して、試験は、金合金のサンプルを35℃に温度調節された50g/LのNaCl溶液中に浸漬することによって実行された。
【0081】
特に上記の規定に従うチオアセトアミド及びNaClの溶液を含む環境において耐曇り特性を得るために、そしてまた、ISO DIS 8654:2017標準に従って測定されるその色が、5N配合物に適合するとみなされる色区間に含有される金合金を得るために、本出願人は、
- 780重量‰、より好ましくは790重量‰から、840重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 125重量‰~167重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 15重量‰~54重量‰の間に含まれる量の銀と、
- 白金又はパラジウムと
を含む金合金群を考えた。ここで、白金又はパラジウムの含有量は、金、銅、銀及び白金の集合体、又は金、銅、銀及びパラジウムの集合体が、合金の少なくとも980重量‰に等しい、より好ましくは1000重量‰に等しい割合に達するようなものである。
【0082】
本発明によると、「曇り」とは、合金の色の変化を引き起こす金合金の表面腐食が意図される。
【0083】
本発明の目的の金合金群は、少なくとも4元合金、より具体的には、4元又は5元合金を含む。したがって、本発明の目的の金合金群中に無視できない量で含まれる元素の数は、少なくとも4に等しく、好ましくは、5以下である。4元又は5元合金への限定により、最小限の量でも存在する元素間の相互作用に起因して、特許請求される合金の間で異なる挙動を有するリスクの低減が可能になる。
【0084】
本出願人は、曇りに対する耐性と、そのように得られた合金の色とを評価するための種々の実験を実行し、特に、以下の表に示される特定の実施形態における実験を実行した。
【0085】
【表4】
【0086】
上記の表には、5N ISO DIS 8654:2017標準に従う金合金の特定の配合物も存在する。この配合物は、特に、推奨される銀の含有量に関して最小基準値を使用する。
【0087】
上記の表に示される実施形態は、金タイトルに従って定義される2つの合金群に実質的に関連する特定の非限定的な実施形態である。第1の群は、780‰、より好ましくは790‰から、800‰までの間に含まれる金の濃度又は量を有する合金によって構成され、第2の群は、金の濃度が800‰、好ましくは810‰から、840‰までの間に含まれる合金によって構成される。
【0088】
一般に、本出願人は、金の濃度が780‰、より好ましくは790‰から、800‰までの間に含まれ、4‰~17‰の間、より好ましくは4‰~16‰の間、さらにより好ましくは5‰~15‰の間に含まれる量のパラジウム濃度を有する、第1の群の宝石類のための金合金が、空気及びチオアセトアミド及びNaCl溶液中における曇りの観点から、参照サンプルとして使用される配合の5N ISO合金がとる挙動よりも優れた挙動を特徴とすることを観察した。
【0089】
特に、本出願人は、790‰~800‰の間に含まれる金を用いると、15‰~37‰の間、より好ましくは15‰~35‰の間に含まれる量で銀が含有される組成物について、さらに、18‰~35‰の間に含まれる量で銀が有される合金について、空気、チオアセトアミド及びNaCl溶液中での曇りに対する耐性が、5N合金に関する色の適合性と共に最適化されることを観察した。
【0090】
鉄が存在しないことにより、所要の組成物は5N ISO標準に適合する色を得ることが可能になった。
【0091】
より具体的には、780‰、より好ましくは790‰から、800‰までの間に含まれる量の金の含有量を有する宝石類のための第1の金合金群において、23‰~37‰の間に含まれる量の銀、及び9‰~11‰の間に含まれる量、より好ましくは実質的に10‰に等しい量のパラジウムと組み合わせて、銅は154‰~167‰の間に含まれる量で存在する。
【0092】
或いは、780‰、より好ましくは790‰から、800‰までの間に含まれる量の金の含有量を有する宝石類のための第1の金合金群において、23‰~37‰の間に含まれる量の銀、及び4‰~6‰の間に含まれる量、任意選択的に実質的に5‰に等しい量の白金と組み合わせて、銅は154‰~167‰の間に含まれる量で存在する。
【0093】
チオアセトアミドを含む環境への曝露におけるLRS359、386、387及び391合金の挙動を示す図2のチャートから観察することが可能であるように、24時間の色の変化ΔE(L,a,b)は、感度よく、ISO DIS 8654:2017 5N標準により推奨される標準配合に従う5N合金、特に、参照サンプルとして使用される5N組成物が耐える24時間の色の変化ΔE(L,a,b)よりも小さいので、特に、4‰~17‰の間、より好ましくは4‰~16‰の間、さらにより好ましくは5‰~15‰の間に含まれる量のパラジウムの存在が共に作用して金合金の挙動を最適化する。これらの試験から、特に、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する環境において24時間以内に、5N合金が(同一条件下で)実質的に3.5に等しいかそれ以上の色の変化を示す場合に、3.5未満、より好ましくは3.3未満、さらにより好ましくは3未満の色の変化ΔE(L,a,b)が見出された。
【0094】
第2の群は、特に、金の濃度が810‰~835‰の間に含まれ、18‰~35‰の間に含まれる量の銀、及び5‰~15‰の間に含まれる量のパラジウムと組み合わせて、銅が128‰~154‰の間、より正確には129‰~153‰の間に含まれる量で存在する、宝石類のための金合金群であり、ここで、UNI EN ISO 4538:1998標準に従うチオアセトアミドを含有する前記環境における24時間以内の色の変化ΔE(L,a,b)は2.75未満である。この第2の群は、その含有量がより好ましくは812‰~833‰の間に含まれる量で含有される4元金合金を指す。この第2の群は、特にチオアセトアミド中で、本発明の他の合金に関してより改善された挙動を示す。
【0095】
上記の配合物で行われた試験から、特に、4‰~17‰の間、より好ましくは4‰~16‰の間に含まれる量のパラジウムを使用する第1又は第2の群の他の配合物に関して、パラジウムを白金で置換すると(LRS391合金)、チオアセトアミドを含む環境中24時間での色の変化ΔE(L,a,b)の観点から性能の著しい悪化が起こることが観察された。しかしながら、そのように得られた合金の挙動は、5N ISO標準に従う参照サンプルの1つに関してとにかくより優れている。
【0096】
本出願人は、LRS391合金の挙動が、LRS391と実質的に類似している組成の金合金の部分群について実質的に同じであることを観察した;この部分群は、特に、790‰~792‰の間に含まれる量の金、165‰~170‰の間に含まれる量の銅、32‰~40‰の間に含まれる量の銀、4‰~6‰の間の白金を含有することを特徴とし、且つ鉄及び/又はパラジウムを含まないことを特徴とする。
【0097】
より詳細には、この部分群は、鉄及びパラジウムを含まない、特にバナジウムを含まない4元金合金の部分群である。
【0098】
特に、本出願人は、LRS391合金と、LRS386合金との間の比較を行った;これらの2つの合金はいずれも同じ金濃度(791‰)を特徴とする。図2のチャートにおいて観察できるように、本発明に従う合金は全て、5N合金と等しく、チオアセトアミドを含有する環境において経時的な色の変化曲線を示し、これは、経時的な色の変化ΔE(L,a,b)が実質的な直線性を得るよりこともさらに、安定化変曲点(stabilization inflection)を示す。本発明の目的の合金のこの安定化変曲点は、実質的に、2~4時間の間に含まれる。
【0099】
LRS391合金は、前記安定化変曲点の後に、実質的に5N合金がとる傾きに等しい傾きを示す経時的な色の変化を示すとしても、有利なことに、チオアセトアミド蒸気への等しい曝露時間について、試験の5N ISOサンプルよりも小さい絶対的な色の変化を示す。
【0100】
詳細には、上記のような置換により、LRS391合金の曲線自体がとる傾きに関して、及び5N ISO合金の曲線自体がとる傾きに関して、特に安定化変曲点より先で、チオアセトアミド蒸気への曝露時間による色の変化ΔE(L,a,b)曲線の傾きを小さくすることができる。
【0101】
金合金がチオアセトアミド蒸気に曝露されたときの色の変化に対する耐性の特徴をさらにより増大させるために、本出願人は、LRS386合金の濃度に関して金の含有量の増大を提供した。810‰超、特に実質的に812‰に等しい金の量を示すLRS359合金は、そのようにして考えられた。
【0102】
LRS386合金に関して、LRS359合金は21‰多い金を示し、これは、銅及び銀(それぞれ、-11‰及び-5‰)並びにパラジウム(-5‰)の減少によって補償される。本出願人は、LRS359合金により、チオアセトアミド中のその挙動がLRS386合金により得られるものとほぼ同様であるが、特に安定化変曲点の後に、LRS386合金の場合に同じ条件でチオアセトアミド蒸気への曝露時間による色の変化ΔE(L,a,b)曲線がとる傾きに関して、チオアセトアミド蒸気への曝露時間によるその色の変化ΔE(L,a,b)曲線がより小さい傾きを示す合金を得た。
【0103】
第2の群から、本出願人は次に、種々の濃度のパラジウムを含み、831‰~834‰の間隙の金濃度、特に実質的に833‰に等しい金濃度を有する4元金合金の部分群を考えた。特に、4‰~6‰の間に含まれる、より好ましくは実質的に5‰に等しいパラジウム量と共に、銅は142‰~146‰の間に含まれる量で含有され、銀は12‰~22‰の間に含まれる量で含有される;或いは、14‰~17‰の区間に含まれる、より好ましくは15‰のパラジウム量と共に、銅は実質的に127‰~131‰の間の区間に含まれるが、銀は実質的に19‰~25‰の間の区間に含まれる。本出願人は、この部分群、特に、そのパラジウ含有量が14‰~17‰の間の区間に含まれ、より好ましくは15‰である合金では、チオアセトアミド中、空気中、及びNaCl中での色の変化に対する耐性が最大化されることを観察した。
【0104】
図2のグラフはLRS387合金の挙動も示しており、これは、5N ISO標準に従う色を有し、曇りに対して耐性がある合金においてパラジウム濃度の増大による挙動を観察するために本出願人が考えたものである。特に、LRS387合金は、10‰以上のパラジウム濃度を有する合金の挙動を検証するために考えられた。本出願人は、LRS359合金に関して、金(+21‰)及びパラジウム(+10‰)濃度の増大と、それに続く銅(-24‰)及び銀(-7‰)の減少とを示す387合金を考えた。特に、5N合金のISO標準の許容範囲により定義される色の限界内の性能に準拠するために、また靭性と、チオアセトアミドを含有する環境中の耐曇り性能との妥協を得るために、本出願人は、パラジウム濃度が10‰以上であれば、合金は鉄を含んでいてはならず、少なくとも790‰に等しい、より好ましくは791‰に等しい金の量、及び154‰以上の銅含有量、及び37‰未満、より具体的には35‰以下の銀含有量を有することを観察した;特にパラジウム含有量が約15‰であれば、本出願人は、金の濃度を831‰以上の値まで、特に833‰まで増大させなければならなかった。実際のところ、パラジウム濃度の増大は合金色の彩度の低下を引き起こし、これは、LRS359合金に関して金の増大及び銅の減少を伴わなければ、もはや5N合金のISO標準により与えられる限界内に含まれていないであろう。その特定の配合において、LRS387合金は、5N合金のISO標準により与えられる色の許容範囲のほぼ限界である。しかしながら、本出願人は、驚くことに、金及びパラジウムの濃度の増大が共に作用して、その複合体において、ISO標準5N合金などの他の3元合金に関して、チオアセトアミド蒸気を含む環境における曇りに対する感受性を低くすることにとどまらず、820‰未満の金の割合、及び140‰超の銅の割合、及び実質的に13‰以下のパラジウムの割合を有する、常に4元Au-Cu-Ag-Pdである他の合金に関して、合金が受ける色の変化も著しく少なくすることを発見した。
【0105】
さらに詳細には、驚くことに、831‰~834‰の区間の量の金、146‰未満の量の銅、及び5‰超の量のパラジウム、特に、131‰未満の量の銅、及び14‰超、より具体的にはほぼ15‰に等しい量のパラジウムを有する4元金合金の使用は、安定化変曲点の前及び/又は安定化変曲点に一致するところで、チオアセトアミドの蒸気への曝露時間による色の変化ΔE(L,a,b)曲線が有する変曲を著しく水平化させ得ることが発見された。
【0106】
言い換えれば、チオアセトアミド蒸気への曝露時間による色の変化ΔE(L,a,b)曲線は、安定化変曲点に到達する前は、本発明の目的である全ての他の合金がとる傾きに関して、著しくより小さい傾きを有し、特に、3~6の間の曝露時間に約0.2の最大ΔE利得(L,a,b)を有する。
【0107】
LRS387合金は、特にチオアセトアミド蒸気への24時間の曝露時間後に、LRS359合金が受ける色の変化よりも少ない色の変化を示し、実際に、24時間の曝露後に2.4未満、実質的に2.25に等しい最大ΔE(L,a,b)を有する。金及びパラジウムの濃度が理想的に共に作用して、延性であり且つあまり強靭でない金合金が考えられたとしても、HV5測定法に従って、参照サンプルとして使用される5N合金が260HVに等しい靭性を示す場合に、LRS359は、アニーリング及び75%のひずみ硬化後も259HVの靭性を示す。
【0108】
本発明に従う合金は、空気に曝露したときの挙動に関しても研究された;特に、サンプルの調製及び研磨の瞬間から最大800時間までの空気への曝露時間による色の変化ΔE(L,a,b)の観点からとられる挙動を評価するために研究が実行された。
【0109】
表1に従う金合金は全て、800時間の空気への曝露時間の後に、5N合金参照サンプルが呈する色の変化ΔE(L,a,b)よりも著しく低い、特に少なくとも21%低い色の変化ΔE(L,a,b)を示すことが観察された。
【0110】
特に、合金が鉄を含まなければ、空気への曝露時間による色の変化ΔE(L,a,b)は、鉄を含有する合金に関して著しく低下する。
【0111】
本出願人は、鉄を含まず、
- 780重量‰、より好ましくは790重量‰から、840重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 125重量‰~167重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 15重量‰~54重量‰の間に含まれる量の銀と、
- 白金又はパラジウムと
を含み、白金又はパラジウムの含有量が、金、銅、銀及び白金の集合体、又は金、銅、銀及びパラジウムの集合体が少なくとも980重量‰、より好ましくは1000重量‰に等しい割合に達するようなものである、4元配合の本発明に従う合金が、800時間の空気への曝露時間後に0.8未満の色の変化ΔE(L,a,b)を特徴とし、そしてこの場合、参照サンプルとして使用されるISO 5N合金よりも35%以上優れた性能を示すことを観察した。
【0112】
特に、本出願人は、831‰~834‰の間に含まれ、特に実質的に833‰に等しい金の濃度を有し、4‰~6‰の間に含まれ、より好ましくは5‰に等しい量のパラジウムを含み、銅が142‰~146‰の間に含まれる量で含有され、銀が12‰~22‰の間に含まれる量で含有される4元金合金の部分群が、800時間の空気への曝露時間後に0.83未満、通常0.78以下の色の変化ΔE(L,a,b)を特徴とすることを観察した。
【0113】
本出願人は、831‰~834‰の間に含まれ、特に実質的に833‰に等しい金の濃度を有し、14‰~17‰の間の区間に含まれ、より好ましくは15‰に等しい量のパラジウムを有し、銅が実質的に127‰~131‰の間の区間で含まれ、銀が実質的に19‰~25‰の間の区間で含まれる4元金合金の部分群では、800時間の空気への曝露時間後の色の変化ΔE(L,a,b)が常に0.72未満であり、通常0.7以下であることを観察した。
【0114】
LRS359、LRS386、LRS387及びLRS391合金の間の特定の比較から、本出願人は、前述の段落で言及されるような4元合金中の金の濃度の増大が、他の元素の銅、銀、白金又はパラジウムの割合も考慮しなければ、空気中の曇りに対する耐性の特徴の改善を表すのに十分でないことを観察した。特に、実際、本出願人は、等しい値、好ましくは780‰、より好ましくは790‰から、800‰までの間に含まれる金の濃度、特に、790‰~792‰の間に含まれる金の濃度、並びに実質的に等しい、及び164‰~167‰の区間、及び35~37‰の区間にそれぞれ含まれる銅及び銀の量の場合、10‰のパラジウムによる5‰の白金の置換は、合金の性能の実質的な変化を引き起こさない(LRS391合金と386合金の比較)ことを観察した。
【0115】
LRS391合金とLRS359合金との比較において、金の増大(+21‰)、並びに銅(-14‰)及び銀(-7‰)の状況的な低下は、空気中の色の変化の低減の観点から、必ずしも性能の増大を引き起こさない。LRS359及びLRS354合金の色の変化の空気中での挙動(図11に従うグラフ)の観察から、さらに、本出願人は、金含有量を812‰から833‰へ増大させ、パラジウム濃度(5‰)を一定に保持し、銅(-9‰)及び銀(-12‰)の割合を低下させることにより、空気に800時間曝露した後、2つの合金が呈する色の変化の差は約0.2に等しいことを観察した。
【0116】
驚くべきことに、観察されたのは、特に、少なくとも831‰に等しく、いずれにしても831‰~834‰の区間に含まれる金の濃度を有する金-銀-銅-パラジウム4元合金において、14‰よりも高く、いずれにしても14‰~17‰の区間、より好ましくは14‰~16‰の区間に含まれるパラジウムの値が、色の変化に対する耐性の観点から、空気中の合金の性能の著しい増大を引き起こすことである。実際、LRS354合金とLRS387合金との間では金の含有量は同じ(833‰)であり、LRS387合金に有利に、銅-銀の2元組み合わせが対応するパラジウムの濃度の増大により置換されており、パラジウムは15‰に等しい濃度を獲得し、銅及び銀濃度はそれぞれ129重量‰及び23重量‰に等しい。
【0117】
この場合、合金の挙動は他のものに関して著しく改善され、空気に800時間曝露したときに、LRS387合金(空気に曝露したときの曇りに対する耐性に関して本出願人が試験したものの中で最良)は、LRS386合金(これはさらに、この場合の絶対的な耐性の観点から、すぐ次のものである)に関して13%最適化された性能を示す。
【0118】
また本出願人は、特にLRS386、387及び431合金について、50g/LのNaClを含有する溶液中での試験も行った。図4のグラフは、参照サンプルとして使用される5N ISO合金と比較して、50g/LのNaClを含有する溶液への曝露時間によるLRS386、387及び431合金の色の変化曲線ΔE(L,a,b)を示す。
【0119】
本出願人は、特に、本発明の目的の全ての合金、特に、LRS386、LRS387及びLRS431合金が、参照サンプルとして使用される3元5N ISOに関して、著しくより優れた挙動を示すことを観察した;本発明の目的の合金のこれらの特定の実施形態は、これらの間の著しく異なる金の濃度(791‰~833‰の間)を特徴とするので、塩化ナトリウムを含有する環境における曇りに対する耐性の点で特徴の改善により大きく影響を与えるものは、特に少なくとも10重量%に等しい割合のパラジウムの存在であることが観察された。
【0120】
本出願人は、最後に、空気へ又は特にチオアセトアミド若しくはNaCl溶液を含有する化学的侵食性環境へ決められた時間曝露した後の色の変化ΔE(L,a,b)のみの測定は、合金がどの色を得るかを正確に決定するのに十分ではないので、金合金の色の変化の分析において考慮する別のパラメータが、絶対値の観点での色の変化の傾向であることを観察した。次に、ISO DIS 8654:2017標準によって定義される標的の色に関して、絶対値の点で色がどのように変化するかを評価することが重要である。特に、本出願人は、宝石類の物品又は宝石を実現するために金合金が変形及び/又は加工されるかどうかに関係なく実現されると、金合金は少なくともかなりの時間空気に曝露されたままになり得ることを観察した;そこで、800時間の空気への曝露の測定のパラメータが適している。本出願人は、空気中で800時間を超えても、特に840時間まで、5N合金のISO標準に準拠する組成物に対してISO DIS 8654:2017標準により定義される限界内の色の保持を得ることを可能にする金合金の配合を探索することに関心を持った。
【0121】
化学的侵食性環境への曝露時間についての色の変化の試験は、チオアセトアミド及び塩化ナトリウムを含有する環境においても行われた。図7、8及び9に従うグラフは、本説明の初めに記載された条件において空気中並びにチオアセトアミド及び(又は)NaCl中で、参照サンプルとして使用される5N ISO合金に関して、LRS386及びLRS387合金の色の展開経路を示す。特にチオアセトアミドへの曝露については、1、2、4及び24時間後に色を評価した。NaClへの曝露については、0、2、4、24及び72時間において色を評価し、空気中では、0、72、240、500、840時間において色を評価した。
【0122】
試験の目的の5N ISO標準に従う参照サンプルに従う合金は、24時間後に既に、そして72時間後にはさらにいっそう、5N合金のISO DIS 8654:2017標準により与えられる色の限界にもはや準拠できないことが観察された。塩化ナトリウムの溶液に72時間曝露した後でもまだISO DIS 8654:2017標準に適合する色を示す合金を得るために、特に10‰超の量のパラジウムの影響は記載される配合においてきわめて重大である。本出願人は次に、少なくとも790‰に等しく、いずれにしても少なくとも790‰~840‰の区間に含まれる金の濃度、及び少なくとも10‰に等しいパラジウムの濃度を有し、鉄を含まず、127‰~167‰の間に含まれる銅の濃度、及び23‰~37‰の間に含まれる銀の濃度を有する4元金合金、特に、LRS386及びLRS387配合物が、5N合金のISO DIS 8654:2017標準により与えられる色の限界の範囲内にとどまることができることを観察した。
【0123】
チオアセトアミドを含有する環境に曝露されたときに、本出願人は、LRS386及びLRS387合金が、少なくとも最初の4時間の曝露の間、常に色を5N合金のISO DIS 8654:2017によって与えられる限界内に保持することを観察した;LRS386合金は、高濃度の金及びパラジウム(それぞれ、833‰及び15‰)を有し、その色は基本的に(0時間)標準の下限に隣接し、特にbパラメータは標準により与えられる許容範囲の最小限界にあるので、チオアセトアミドに24時間曝露した後も、ISO DIS 8654:2017標準に従って定義される5Nの色に適合する色を保持する。
【0124】
同じ時間区間において、参照サンプルとして使用される5N ISO標準に従う合金は、LRS386合金及びLRS387合金のいずれに関しても著しく悪い耐変色性を保持し、5N合金のISO DIS 8654:2017標準によって与えられる色の限界から著しく外れる;特に、わずか4時間後に既に、参照サンプルの5N ISO合金が呈する色は、所与の色の許容範囲の限界にある。
【0125】
また本出願人は、特許請求される主要な群の範囲内で、金合金のための特定の配合物、特にLRS431及びLRS432も考えた。これらは5元合金であり、5N合金のISO DIS 8654:2017標準により与えられる許容範囲の限界の色を示し、少なくとも決められた条件下で、上述の標準により与えられる色の限界内に完全に入る。
【0126】
特に、LRS431及び432合金は、790‰~800‰の間に含まれる量の金、4‰~17‰の間、好ましくは4‰~16‰の間に含まれる量、さらにより好ましくは5‰~15‰の間に含まれる量のパラジウム、及び35‰~40‰の間に含まれる銀を含む合金の群に属し、銅は157‰~160‰の間で含まれ、より好ましくは実質的に158‰に等しく、そして3‰~7‰の間に含まれる量の鉄が存在する。本出願人は、これらの合金が、特に部分的な曇りの後、5N合金のISO DIS 8654:2017標準に完全に適合する色を示すことを観察した。
【0127】
本発明に従う合金は全て、炭化物及び/又は酸化物を生じやすい材料を含まず、特にバナジウムを含まない。これは、考慮される合金が加工されるときに特定の品質を保持することを可能にする。特に、本発明に従う合金は、マグネシウム、インジウム、ケイ素、スズ、チタン、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、イットリウム、レニウム、ゲルマニウムを含まない。特に、ケイ素は得られた合金の色をかなり不透明にし、従って、ここで記載される配合に従う合金にケイ素をわずかに添加しただけでも、得られた合金は、特にISO DIS 8654:2017標準に従う5N合金の色の許容範囲に適合しない色を有し得ることが観察された。さらに、ケイ素は、かなりの大きさを有することが多い包含物の形成を引き起こし、これは、本明細書に記載されるものなどの高品質の宝石類物品のための合金を製造しなければならない場合には不都合である。
【0128】
本発明に従う合金は全て、さらに明確に、ニッケル、コバルト、ヒ素及びカドミウムを含まない。これにより、皮膚と接触する宝石又は宝石類物品の一部を製造するための使用にも適するようになる。
【0129】
本発明に従う合金は全て、LRS431及び432合金が属する合金群を除いて、鉄を含まない合金である;鉄はNaClを含有する溶液中でその挙動を悪化させ、単位時間当たりの耐曇り性を悪くするので、有利なことに、これは前記溶液中での合金の挙動を最適化させる。
【0130】
意図されない不純物の排除を害することなく、本発明に従う合金は、総量、すなわち合計で、2‰以下、より好ましくは1‰以下である付加的な金属を含むことができる;前記付加的な材料のリストには、イリジウム、ルテニウム及びレニウムが含まれる。これらの材料は、以下でさらに良く説明される特定の条件下で、細粒化特性を有することができる。最後に、このリストは、溶融プロセスの間に合金中に溶解される酸素の含有量を低減することができる元素として亜鉛も含む。
【0131】
特に、イリジウムは、好ましくは、高い銅含有量を含有する合金において使用される(後者の元素との広範囲の混和性を有するので);限定はされないが好ましくは、存在する場合、イリジウムは0.3重量‰以下の量で存在する;代わりに、亜鉛は0.5重量‰以下の量で存在し得る。
【0132】
より珍しいのは、0.1重量‰までの量のルテニウム及びレニウムの使用である。ルテニウム及びレニウムは、好ましくは、高レベルのパラジウムを含有する白色又はグレーの金合金において使用される。
【0133】
しかしながら、イリジウム、レニウム及び/又はルテニウムの使用は、プレ合金中にこれらの元素の包含物が生じやすいことが知られている。実際、これらの元素は、これらに親和性のある材料とプレ合金化せずにるつぼ内に直接導入されれば合金を形成せず、従って合金の特性の悪化の一因となることが観察された。他方で、銅(イリジウム)又はパラジウム(レニウム及びルテニウム)とのプレ合金において使用される場合に限り、プレ合金と合金自体を構成する元素の残りとを注意して結合させることによって、結果として細粒化の特性が得られる。
【0134】
また本発明の目的は、ISO DIS 8654:2017 5N標準に適合する色を有する金合金の製造プロセスでもある。
【0135】
本発明の目的の金合金は、純元素から、特に、99.99%の金、99.99%のCu、99.95%のPd、99.99%のFe、99.99%のAg、99.95%のPtから作られる。
【0136】
本発明に従う金合金を作製するための純元素の溶融プロセスは、詳細には、金の不連続溶融プロセス又は金の連続溶融プロセスであり得る。金の不連続溶融プロセスは、混合物が溶融されて、黒鉛製の鋳型又はインゴットモールドに鋳造されるプロセスである。この場合、上記の元素は制御雰囲気中で溶融及び鋳造される。より具体的には、溶融操作は、好ましくは、溶融チャンバの雰囲気の少なくとも3回の条件付けサイクルを行った後でのみ実行される。この条件付けは、まず第1に、1x10-2mbar未満の圧力までの真空レベルに到達させ、続いてアルゴンにより500mbarで部分飽和させることを含む。溶融の間、アルゴン圧は、500mbar~800mbarの間の圧力レベルに保持される。純元素の完全溶融が達成されたら、混合物の過熱ステップが行われ、金属浴の化学組成物を均質化するために混合物は約1250℃の温度、いずれの場合も1200℃を超える温度まで加熱される。過熱ステップの間、溶融チャンバ内の圧力値は、再度1x10-2mbar未満の減圧レベルに達する。
【0137】
鋳造ステップのこの時点で、溶融材料はモールド又はインゴットモールドに鋳造され、溶融チャンバは、不活性ガス、好ましくはアルゴンにより再度加圧され、800mbar未満、特に700mbar未満の圧力で注入される。
【0138】
凝固の後、バー又は鋳物はブラケットから抽出される。合金の凝固の後、金合金バー又は鋳物が得られ、これは、固体状態の相変態を低減し、恐らく回避するために、水中での浸漬ステップによる急速冷却を受ける。言い換えれば、バー又は鋳物は、固体状態での相変化を回避するために、限定はされないが好ましくは水中で、急速冷却ステップを受ける。
【0139】
金の連続溶融プロセスは、金の凝固及び凝固した金の抽出が、金のバー又は鋳物の一方の自由端から連続的に実行されるプロセスである。特に、連続溶融プロセスでは黒鉛ダイが使用される。黒鉛は固体潤滑剤であり、通常その表面と凝固した金属の表面との間に低摩擦を有し、通常、その表面に割れが存在せず、最少量の欠損しか存在せずにその中に含有される元素の容易な抽出を得ることを可能にするので、黒鉛ダイの使用が知られている。
【0140】
より一般的な実施形態では、本発明に従う金合金の製造プロセスは、上記に従う純元素から出発して、本開示に従う元素、特に、
- 780重量‰、より好ましくは790重量‰から、840重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 125重量‰~167重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 15重量‰~54重量‰の間に含まれる量の銀と、
- 白金又はパラジウム(白金又はパラジウムの含有量は、金、銅、銀及び白金の集合体、又は金、銅、銀及びパラジウムの集合体が、合金の少なくとも980重量‰に等しい、より好ましくは1000重量‰等しい割合に達するようなものである)と
の混合ステップを含み、これらは次に、上記に規定される量でるつぼに導入される。
【0141】
上記の混合ステップにおいて、基本的な純元素は、均一な混合物、すなわち特に1つの元素が他の元素に関して過剰であることによって特に著しく顕著な部分又は領域のない混合物を得るような方法で混合される。
【0142】
イリジウム、ルテニウム及びレニウムなどの元素の包含物が細粒化のために存在する場合、製造プロセスはプレ合金の製造ステップを含み、前記プレ合金は、
a)既に表示された量の銅にプレ合金化されたイリジウム、或いは
b)既に表示された量のパラジウムにプレ合金化されたレニウム又はルテニウム
を含む。
【0143】
続いて、不連続又は連続融合によって得られたバー又は鋳物は、熱間又は冷間塑性変形ステップ、限定はされないが好ましくは、フラット圧延ステップを受ける。
【0144】
フラット圧延の間、より一般的には、冷間塑性加工ステップの間に、上記手順に従って溶融された種々の組成物は60%を超えて変形され、そして650℃よりも高い温度で再結晶の熱処理を受け、続いて冷却される。
【0145】
以下の表は、5N ISO標準に従って作られた組成を有する参照サンプルに関して、特定の製造形態に従う合金、LRS359、386、387、391及び431が呈する色の変化の値を示す。特に、第1及び第2の表は、チオアセトアミドに曝露されたとき(試験1及び試験2)に上記の合金が呈する色の変化の値を示し、第3及び第4の表は、空気に曝露されたとき(試験1及び試験2)に、上記の合金が呈する色の変化の値を示し、そして第5の表は、50g/Lの溶液に曝露されたときに上記の合金が呈する色の変化の値を示す。
【0146】
【表5】
【0147】
【表6】
【0148】
【表7】
【0149】
【表8】
【0150】
【表9】
【0151】
【表10】
【0152】
【表11】
【0153】
【表12】
【0154】
【表13】
【0155】
以下の表は、本発明の目的の合金について本出願人が収集した硬度データを示す。
【0156】
【表14】
【0157】
本出願人は、最後に、ISO DIS 8654:2017標準で示される条件下において、実質的に5N合金色標準に適合する色を示し、且つ耐曇り性がある別の合金群を考えた。この合金群は、そのより一般的な配合において、
- 780重量‰、より好ましくは790重量‰から、900重量‰までの間に含まれる量の金と、
- 85重量‰~170重量‰の間に含まれる量の銅と、
- 4重量‰~17重量‰の間に含まれる量のパラジウムと
を含み、金及び銅の量の合計は、少なくとも958重量‰に等しい。
【0158】
より詳細には、上記の群において、金、銅及びパラジウムの量の合計は、少なくとも963重量‰に等しい。上記の群は、実質的にISO DIS 8654:2017標準に従う5N合金色に適合する色を示し、そして特にチオアセトアミドを含有する環境中、50g/LのNaCl溶液中、及び空気中において、特に参照として使用されるISO 5N標準に従う参照サンプルに関して、5N配合の合金が呈するよりも優れた耐曇り性を示す。
【0159】
この特定の群には、例えば、その組成が、例えば、
- LRS494:791重量‰に等しい量のAu、167重量‰に等しい量のCu、32重量‰に等しい量のAg、5重量‰に等しい量のPd、及び5重量‰に等しい量のPt
に実質的に類似しているが、これに限定されない金合金の特定の実施形態が属する。
【0160】
本出願人は、上記の群の一般的な配合から、金、銅及びパラジウムの量の合計が少なくとも980重量‰に等しく、パラジウムが8重量‰、より好ましくは10重量‰から、17重量‰、より好ましくは15重量‰までの間に含まれる量で含まれる第1の部分群が導出され得ることに気付いた。特に、金の量がそれ自体で800重量‰を超える場合、この配合物は、チオアセトアミドを含有する環境中の色の変化に関して、そのように得られた合金の挙動の最適化を可能にする。
【0161】
本出願人は特に、合金の第1の部分群において、金が873重量‰~902重量‰の間に含まれる量で含有される3元合金の存在に気付いた。好ましく且つ非限定的な実施形態は、この場合、
- LRS487:875重量‰に等しい量のAu、115重量‰に等しい量のCu、10重量‰に等しい量のPd;及び
- LRS488:900重量‰に等しい量のAu、85重量‰に等しい量のCu、15重量‰に等しい量のPd
によって構成される。
【0162】
両方の特定の実施形態において、Au、Cu及びPdの量の重量での合計は実質的に、特にきっちり1000‰に等しい。
【0163】
第1の部分群では、ISO DIS 8654:2017標準に従うチオアセトアミドを含有する環境において24時間以内に3.8未満、好ましくは2未満である色の変化ΔE(L,a,b)が気付かれた。
【0164】
また本出願人は、上記の主要な群にとにかく属する合金の第2の部分群に気付いた。ここで合金は、13重量‰~22重量‰の間に含まれる量、より正確には15‰~20‰の間に含まれる量のインジウムを含む4元合金である。
【0165】
この第2の部分群は、ISO DIS 8654:2017標準に従うチオアセトアミドを含有する環境における24時間以内のその色の変化ΔE(L,a,b)が3.5未満である金合金を示す。この合金の第2の部分群は、35℃の50g/LのNaCl溶液中で72時間後のその色の変化が2.4以下、より好ましくは2.3未満に保持される合金の部分群である。24時間以内に、35℃の50g/LのNaCl溶液中の色の変化ΔE(L,a,b)は1.75未満、より好ましくは1.5未満である。この第2の部分群には、以下の好ましく且つ非限定的な実施形態の合金が属する:
- LRS490:800重量‰に等しい量のAu、170重量‰に等しい量のCu、10重量‰に等しい量のPd、20重量‰に等しい量のIn、並びに
- LRS491:833重量‰に等しい量のAu、137重量‰に等しい量のCu、15重量‰に等しい量のPd、及び15重量‰に等しい量のIn。
【0166】
2つの特定の配合物において、金タイトルの増大は、50g/LのNaCl溶液を含有する環境中の色の変化に対する耐性の観点から、LRS490合金に関して、LRS491合金の性能の著しい改善を可能にすることが気付かれた:実際、72時間の曝露後に、LRS491合金は1.71に等しい色の変化ΔE(L,a,b)を示すが、LRS490は、2.21に等しい色の変化ΔE(L,a,b)を示す。金タイトルがより低いLRS490合金に関して、金タイトルがより高いLRS491合金が示す、色の変化に対する耐性についての改善は、NaClへの曝露時間が長くなるにつれて顕著である。
【0167】
合金の第2の部分群において、金タイトルの増大は、チオアセトアミドを含有する環境における色の変化の傾向の低減においてさらに効率的である。実際、48時間後に、LRS491合金は3.21に等しい色の変化ΔE(L,a,b)を示すが、同じ条件下で、LRS490合金は4.20に等しい色の変化ΔE(L,a,b)を示す。
【0168】
LRS494合金に関して、この合金は、790重量‰~793重量‰の間に含まれる量の金及び32重量‰以上の量の銀を含む第3の合金部分群に属する。この第3の部分群では、特に、4重量‰以上の量の白金、及び165重量‰超の量の銅が存在する。
【0169】
以下の表は、上記の実施形態の再表示を示す。
【0170】
【表15】
【0171】
以下の表は、チオアセトアミドを含有する環境において言及される合金が呈する色の変化を示す。
【0172】
【表16】
【0173】
以下の表は、35℃に温度調節された50g/LのNaCl溶液を含有する環境において言及される合金が呈する色の変化を示す。
【0174】
【表17】
【0175】
本発明に従う合金は、第2相を含まない、特に炭化物及び/又は酸化物を含まない均一な金合金であり、及び/又は結晶性合金であり、特に100%結晶性である。これにより、高い強度及び品質及び表面均一性を有することが可能になる。「二次相を含まない」又は「第2相を含まない」として、特に、他の熱処理を伴わない溶融及びその後の凝固プロセスにおいて、それらを生成し得る元素を含まない合金が意図される;液相で形成され、合金凝固の下流でも残存する第2相は有害な第2相、例えば、炭化物及び/又は酸化物であり、これらは、研磨ステップの間に、研磨した物品の表面に肉眼で見ることができ、そしてハイジュエリー分野で要求される必要性に適合する表面品質の高い物品を得ることを妨げる。
【0176】
本明細書に記載される金合金の製造プロセスにおいて、合金を硬化させることができる熱処理プロセスに合金を曝露することが可能であり、従って、前記熱処理の結果、沈殿のためにわずかな沈殿物が存在し得る;この場合、これらは、材料の機械特性を増大させることにより変位の動き(the movement of displacement)を防止し、本発明の合金により実現された物品における変形の発生に抵抗する沈殿物である。次に、本発明の目的は、既に記載された特徴に従う金合金を含む宝石類物品である。この宝石類物品はほとんどの様々な形状及び特徴を有することができるが、特に、例えば、ブレスレット、同様にシャトンブレスレット(chaton bracelet)、ネックレス(collier)、イヤリング、指輪であるがこれらに限定されない宝石、又は時計又は時計用ブレスレット又は時計用ムーブメント若しくは機械式ムーブメントの一部を含む。特に、前記時計又は時計用機械式ムーブメントはそれぞれ、着用される又は腕時計に取り付けられるように構成される。本発明の目的の金合金の使用により、これらの宝石類物品は、特に侵食性環境、例えば、多量の汗をかいたときの皮膚及び海洋環境(しかしながら、後者は通常、結婚指輪、及び/又は例えば金のブレスレット若しくはケースの部分を有するダイビング時計が、通常使用者によって着用されている環境である)などにおける使用に対しても十分に安定した、5N標準に従って「レッド」として定義される色を有し、アレルギーを引き起こす可能性のある構成要素がなく、十分な硬度を有する。
【0177】
最後に、本発明の目的は、当業者には明らかである修正、付加又は変形を、それによって特許請求の範囲により提供される保護の範囲から外れることなく受けることが可能であることは明白である。
図1
図2
図3
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図9
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図11
図12
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