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特許7419243アフリカブタ熱ウイルスおよび古典的ブタ熱ウイルスの化学的緩和
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】アフリカブタ熱ウイルスおよび古典的ブタ熱ウイルスの化学的緩和
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/158 20160101AFI20240115BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20240115BHJP
   A23K 50/30 20160101ALI20240115BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 36/8962 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 36/9066 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A23K20/158
A23K10/30
A23K50/30
A61K31/20
A61K36/8962
A61K36/9066
A61K36/81
A61K36/53
A61P31/12
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020545709
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019020273
(87)【国際公開番号】W WO2019169256
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】62/637,825
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/780,740
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502330573
【氏名又は名称】カンザス・ステート・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】メーガン、シー.ニーダーヴェルダー
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド、アール.アール.ローランド
(72)【発明者】
【氏名】カサンドラ、ジョンズ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン、エス.ドリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン、シー.ウッドワース
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/081716(WO,A1)
【文献】特開2010-138162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物飼料または動物飼料成分中のアフリカブタ熱ウイルスの抑制方法であって、
前記飼料または飼料成分に化学的緩和剤を導入することを含んでなり、前記化学的緩和剤は中鎖脂肪酸を含んでなり、
前記化学的緩和剤は、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して0.125重量%~2重量%未満の含有率で導入される、方法。
【請求項2】
前記化学的緩和剤がさらに精油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中鎖脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学的緩和剤が、2種類以上の中鎖脂肪酸の混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化学的緩和剤が、カプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記化学的緩和剤が、およそ等量のカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記精油が、ニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、ワイルドオレガノ精油、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2または請求項2を直接的または間接的に引用する請求項~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化学的緩和剤が、中鎖脂肪酸の混合物と精油とを含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記動物飼料または動物飼料成分が、ブタ完全食、血粉、ブタ肉骨粉(MBM)、噴霧乾燥動物血漿、羽毛粉、鳥類血粉、家禽副産物粉、ビタミンD、塩酸リジン、塩化コリン、および大豆粕からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記動物飼料または動物飼料成分が、ドライペットキブルであり、前記ドライペットキブルの表面に重硫酸ナトリウムを適用することをさらに含んでなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記重硫酸ナトリウムが、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して0.1重量%~2重量%の含有率で前記ドライペットキブルの表面に適用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
動物飼料または動物飼料成分中のアフリカブタ熱ウイルスの抑制において使用するための化学的緩和剤であって、中鎖脂肪酸を含んでなる、化学的緩和剤。
【請求項13】
前記化学的緩和剤がさらに精油を含む、請求項12に記載の化学的緩和剤。
【請求項14】
前記中鎖脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12または13に記載の化学的緩和剤。
【請求項15】
2種類以上の中鎖脂肪酸の混合物である、請求項12~14のいずれか一項に記載の化学的緩和剤。
【請求項16】
カプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、請求項12~15のいずれか一項に記載の化学的緩和剤。
【請求項17】
およそ等量のカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、請求項12~16のいずれか一項に記載の化学的緩和剤。
【請求項18】
前記精油が、ニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、ワイルドオレガノ精油、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13または請求項13を直接的または間接的に引用する請求項14~17のいずれか一項に記載の化学的緩和剤。
【請求項19】
中鎖脂肪酸の混合物と精油とを含んでなる、請求項12~18のいずれか一項に記載の化学的緩和剤。
【請求項20】
およそ等量のニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、およびワイルドオレガノ精油を含んでなる、請求項12~19のいずれか一項に記載の化学的緩和剤。
【請求項21】
アフリカブタ熱ウイルスに対する抵抗性を有する、処理された動物飼料または動物飼料成分であって、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して0.125重量%~2重量%未満の化学的緩和剤を含んでなり、前記化学的緩和剤は中鎖脂肪酸を含んでなり、ここで、前記動物飼料または動物成分はブタ完全食、血粉、ブタ肉骨粉(MBM)、噴霧乾燥動物血漿、羽毛粉、鳥類血粉、家禽副産物粉、ビタミンD、塩酸リジン、塩化コリン、大豆粕、ドライペットキブル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、動物飼料または動物飼料成分。
【請求項22】
前記化学的緩和剤がさらに精油を含む、請求項21に記載の処理された動物飼料または動物飼料成分。
【請求項23】
請求項21に記載のアフリカブタ熱ウイルスに対する抵抗性を有する処理された動物飼料または動物飼料成分であって、前記動物飼料または動物飼料成分がドライペットキブルであり、前記ドライペットキブルはその表面の重硫酸ナトリウムをさらに含んでなる、動物飼料または動物飼料成分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年3月3日に出願された「中鎖脂肪酸を用いたアフリカブタ熱ウイルス(ASFV)および古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)などのウイルスの不活化(INACTIVATION OF VIRUSES SUCH AS AFRICAN SWINE FEVER VIRUS (ASFV) AND CLASSICAL SWINE FEVER VIRUS (CSFV) WITH MEDIUM CHAIN FATTY ACIDS)」という名称の米国仮特許出願第62/637,825号並びに2018年12月17日に出願された「アフリカブタ熱ウイルスの化学的緩和(CHEMICAL MITIGATION OF AFRICAN SWINE FEVER VIRUS)」という名称の米国仮特許出願第62/780,740号の優先件を主張するものである。
【0002】
本発明は、広くは、動物飼料、飼料成分、およびペットフード中のアフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスの抑制方法に関する。
【背景技術】
【0003】
中鎖脂肪酸は、特定の家畜病原体、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)およびサルモネラ菌属種に対して有効であることが示されている(引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる、2017年12月14日に出願された米国特許出願第2017/0354167号)。
【0004】
アフリカブタ熱ウイルスおよび古典的ブタ熱ウイルスは、経口経路で伝染することが知られている外来の動物疾病である。特に、アフリカブタ熱ウイルス(ASFV)は、世界で最大の養豚国である中国から急速に拡散している、極めて大型の複雑なDNAウイルスである。ASFVは、ブタで高い死亡率を生じ、現在、北米およびほとんどの欧州諸国で外来動物疾病となっている。現在、有効なワクチンは存在せず、このウイルスは経口経路で伝染することが知られている。ASFVは、渡洋輸送を模した様々な環境条件に曝された飼料および飼料成分中で生存することができる。ASFVは、極めてユニークな二本鎖DNAウイルスであり、アスファウイルス科(Asfarviridae)およびアスフィウイルス(Asfivirus)属の唯一のウイルスである。重要なことに、ASFVには適当な代替ウイルスが存在しない。古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)は、フラビウイルス科(Flaviviridae)の一本鎖RNAウイルスである。ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)は、どちらのウイルスにも関連がなく、コロナウイルス科(Coronaviridae)である。これらの3つのウイルスのゲノムは大きさが非常に異なり、CSFVの12.3kbおよびASFVの190kbに比べてPEDVは28kbである。ウイルスは環境中での安定性および消毒剤に対する感受性に関して大きく異なることがよく知られている。同じ科のウイルスであっても不活化率に関して異なる特徴を有する場合があり、これらの3つのウイルスに同じ科のものはない。発表されている研究で、外来動物疾患を引き起こす数種のウイルス間で安定性を比較し、かなりの違いがあることが示されている。さらに、他の従前に発表されている研究で、PEDV、ASFVおよびウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV、同じ科で、CSFVの代替として使用されるウイルス)間で、飼料成分中での安定性に関してかなりの違いが示されている。飼料成分中での安定性に関する違いは、MCFAおよび緩和に対する感受性に関する差異と予測される。よって、他のウイルスまたは細菌に対する緩和剤の効果を、そのウイルス自体に対するその緩和剤の直接的エビデンスなしに、ASFVまたはCSFVに対して拡張または解釈することはできない。
【発明の概要】
【0005】
動物飼料および飼料成分中でASFVおよびCSFVの緩和(例えば、不活化)に有効であるとともにブタおよび他の動物に対する経口投与に安全な処理が必要とされる。
【0006】
本願は、動物飼料または動物飼料成分中のアフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスの抑制方法を記載する。これらの方法は、飼料または飼料成分に化学的緩和剤を導入することを含んでなる。化学的緩和剤は、中鎖脂肪酸および/または精油を含んでなり(から本質的になり、またはさらには、からなり)、この化学的緩和剤は、飼料または飼料成分に、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して2重量%未満(一般には少なくとも約0.125重量%)の含有率で導入される。
【0007】
別の態様において、動物飼料または動物飼料成分中でのアフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスの抑制に使用するための化学的緩和剤が提供される。化学的緩和剤は、中鎖脂肪酸および/または精油を含んでなる。
【0008】
本明細書にはまた、アフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスに対して抵抗性を有する動物飼料および/または動物飼料成分も処理される。これらの飼料または飼料成分は、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して約0.125重量%~2重量%未満の化学的緩和剤を含んでなる。化学的緩和剤は、中鎖脂肪酸および/または精油を含んでなる。本発明において使用するための処理された動物飼料または動物飼料成分の例としては、ブタ完全食、血粉、ブタ肉骨粉(MBM)、噴霧乾燥動物血漿、羽毛粉、鳥類血粉、家禽副産物粉、ビタミンD、塩酸リジン、塩化コリン、大豆粕、ドライペットキブル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0009】
本特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれる。本特許または特許出願の写しはカラー図面とともに、請求し、必要な費用を支払えば特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、種々の濃度の1:1:1 MCFA混合物に曝したASFV(BA71V株)の用量応答不活化曲線を示すグラフであり、データは、陽性対照と比較したウイルス濃度の減少率ともに、0.125%~2.0%のMCFA濃度に曝した後の力価として示す。
図2図2は、30日越境輸送モデルの過程でのASFVジョージア2007ゲノムの検出を示す一連のグラフであり、データは、接種後1、8、17および30日目の2倍複製の平均サイクル閾値(Ct)として示す。
図3図3は、非処理対照(白いバー)および28dpiのMCFAで処理したサンプル(黒いバー)において30日越境輸送モデルの終了時にqPCRにより測定した場合のASFV DNAの量を示すグラフである。
図4図4は、種々の濃度の1:1:1 MCFA C6:C8:C10混合物に曝したCSFV(Brescia単離株)の用量応答不活化曲線を示すグラフであり、データは、陽性対照と比較したウイルス濃度の減少率とともに、0.125%~2.0%のMCFA濃度に曝した後の力価として示す。
図5図5Aは、MCFAに曝したおよび曝していないブタ腎臓細胞に対するCSFV Bresciaの間接的蛍光抗体検出に関する実験から得られた陽性対照画像である。図5Bは、0.625%MCFAで処理したブタ腎臓細胞に対するCSFV Bresciaの間接的蛍光抗体検出に関する実験から得られた画像である。図5Cは、MCFAに曝したおよび曝していないブタ腎臓細胞に対するCSFV Bresciaの間接的蛍光抗体検出に関する実験から得られた陰性対照画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は一般に、動物飼料、飼料成分、およびペットフードにおけるアフリカブタ熱ウイルス(ASFV)および/または古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)を抑制する方法に関する。より具体的には、本発明は、種々のタイプの動物およびペットフード成分、ならびに完全飼料ミールおよびペットフード製品中でのASFVおよび/またはCSFVの抑制において使用するための化学的緩和剤に関する。一般に、化学的緩和剤は、中鎖脂肪酸および/または精油を含んでなる。本明細書で使用する場合、「抑制する」または「抑制すること」は、非処理対照と比較した場合の標的微生物(すなわち、ASFVまたはCSFV)の測定可能なレベルの減少または微生物の増殖率の減少を指す。1以上の態様において、本発明による方法は、動物飼料または動物飼料成分中のASFVおよび/またはCSFVを、例えば、RT-PCRおよび/または細胞培養におけるウイルス単離による検出レベルを下回る濃度に抑制するために、有効量の化学的緩和剤を使用する。本明細書で使用する場合、「有効量」は、所望の性能改善を達成するために十分な、有効化合物(例えば、中鎖脂肪酸および/または精油)の生物学的に利用可能なレベルを提供し得る量を指す。好ましい態様において、本発明による方法は、有利には、動物飼料成分の輸送および保管に使用するのに適している。
【0012】
本発明の1以上の態様において使用するための化学的緩和剤は、中鎖脂肪酸および/または精油を含み得る。1以上の態様において、化学的緩和剤は、中鎖脂肪酸、より具体的には、少なくとも1種類の中鎖脂肪酸を含んでなる(から本質的になる、またはさらには、からなる)。中鎖脂肪酸は、6~12個の炭素原子の脂肪族テールを有する酸である。1以上の態様において、本発明において使用するための中鎖脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、および/またはラウリン酸が含まれる。よって、特定の態様において、化学的緩和剤は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。しかしながら、ある特定の他の態様においては、化学的緩和剤はラウリン酸を含まない。よって、このような態様においては、化学的緩和剤は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。1以上の態様において、中鎖脂肪酸の混合物が使用され得る。例えば、1以上の態様において、2種類以上の中鎖脂肪酸の混合物が、飼料または飼料成分に導入され得る。1以上の態様において、カプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の混合物は、約1:1:1の重量比(等分)で飼料または飼料成分に導入される。この組合せは、中鎖脂肪酸の溶解度を高め、経口投与した際にウイルスの不活化およびブタの成長の改善に有効である。しかしながら、他の重量比のカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる混合物が使用され得ることも本発明の範囲内にある。
【0013】
1以上の態様において、化学的緩和剤は、精油、より具体的には、少なくとも1種類の精油を含んでなる(から本質的になる、またはさらには、からなる)。精油は、植物に由来する揮発性芳香化合物を含有する、濃縮された疎水性の液体である。本発明の1以上の態様において使用され得るいくつかの異なる精油が存在する。これらの精油の非網羅的一覧として、沈香油(アガー油)、アジョワン油、アンジェリカルート油、アニス油、アギ(Asafoetida)、ペルーバルサム、バジル油、ベイ油、ベルガモット油、ブラックペッパー、ブチュー油、バーチ、樟脳、カンナビスフラワー精油、キャラウェイ油、カルダモン種子油、ニンジン種子油、シダーウッド油、カモミール油、カラムスルート、シナモン油、シスタス種、シトロン、シトロネラ油、クラリセージ、クローブ油、コーヒー、コリアンダー、コストマリー油(バイブルリーフ油)、コスタスルート、クランベリー種子油、キュベブ、クミン油/ブラックシードオイル、サイプレス、シプリオール、カレーリーフ、ダバナ油、ディル油、エレカンパン、ユーカリ油、フェンネル種子油、フェヌグリーク油、ファー、フランキンセンス油、ガランガル、ガルバナム、ゼラニウム油、ジンジャー油、ゴールデンロッド、グレープフルーツ油、ヘナ油、ヘリクリサム、ヒッコリーナッツ油、セイヨウワサビ油、ヒソップ、アイダホタンジー、ジャスミン油、ジュニパーベリー油、ゲッケイジュ、ラベンダー油、リーダム、レモン油、レモングラス、ライム、リツェア・クベバ油、リナロエ、マンダリン、マジョラム、メラレウカ・シー・ティー・トゥリー油、メリッサ油(レモンバーム)、ハッカ油/ミント油、モリンガ油、マウンテン・セイボリー、ヨモギ油、カラシ油(精油)、ミルラ油、マートル、ニーム油またはニームトゥリー油、ネロリ、ナツメグ、オレンジ油、オレガノ油、オリス油、パロサント、パセリ油、パチョリ油、エゴマ精油、ペニローヤル油、ペパーミント油、プチグレン、パイン油、ラベンサラ、レッドシダー、ローマンカモミール、ローズ油、ローズヒップ油、ローズマリー油、ローズウッド油、セージ油、サンダルウッド油、サッサフラス油、セイバリー油、ゴミシ油、スペアミント油、スパイクナード、トウヒ、スターアニス油、タンジェリン、タラゴン油、ティートゥリー油、タイム油、ツガ、ウコン、バレリアン、ベチバー油(クス油)、ベイスギ、ウィンターグリーン、ヤロー油、イランイラン、およびガジュツが含まれる。1以上の態様において、化学的緩和剤は、ニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、ワイルドオレガノ精油、およびそれらの混合物からなる群から選択される。1以上の態様において、精油の混合物を使用することができる。例えば、1以上の態様において、2種類以上の精油の混合物を飼料または飼料成分に導入することができる。1以上の態様において、等分のニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、およびワイルドオレガノ精油を含んでなる精油の混合物が飼料または飼料成分に導入される。しかしながら、他の重量比のニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、およびワイルドオレガノ精油を含んでなる混合物が使用され得ることも本発明の範囲内にある。
【0014】
1以上の態様において、中鎖脂肪酸および精油、より具体的には、1種類以上の中鎖脂肪酸および1種類以上の精油を含んでなる(から本質的になる、またはさらには、からなる)混合物が化学的緩和剤として使用され得る。しかしながら、特定の他の態様において、中鎖脂肪酸以外には、精油も他のタイプの緩和剤も使用されない。さらに、本発明の態様は、動物飼料、飼料成分、またはペットフードに導入されないホルムアルデヒドなどの毒性化学物質の使用を避ける。よって、1以上の態様において、化学的緩和剤は、1種類以上の中鎖脂肪酸から本質的になる(またはさらには、からなる)。特定の好ましい態様において、化学的緩和剤は、カプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の混合物から本質的になる(またはさらには、からなる)。
【0015】
いずれの有効量の化学的緩和剤も使用可能であるが、1以上の態様では、化学的緩和剤は、動物飼料(ペットフードを含む)または飼料成分に、100重量%とする飼料または飼料成分の総重量に対して約0.01重量%~約10重量%、好ましくは約0.05重量%~約5重量%、より好ましくは約0.1重量%~約2重量%、最も好ましくは約0.5重量%~約0.9重量%の含有率で導入される。有利には、本明細書に記載の化学的緩和剤、特に、中鎖脂肪酸は、従来技術で他の微生物に関して有効であることが示されている用量よりもずっと低い0.6重量%(ASFVに関して)および0.5%重量%(CSFVに関して)といった低い含有率で、ASFVおよびCSFVの有効な(すなわち、4-対数減衰の)不活化剤である。よって、1以上の態様において、化学的緩和剤は、動物飼料または飼料成分に、100重量%とする飼料または飼料成分の総重量に対して2重量%未満、1.5重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、または0.6重量%未満の含有率で導入される。1以上の態様において、例えば、4-対数減衰のASFVまたはCSFVが必要でない場合には、より低用量も使用可能である。1以上のこのような態様において、化学的緩和剤は、動物飼料(ペットフードを含む)または飼料成分に、100重量%とする飼料または飼料成分の総重量に対して約0.125重量%~約0.5重量%の含有率で導入され得る。しかしながら、特定の他の態様において、化学的緩和剤は、動物飼料または飼料成分に、100重量%とする飼料または飼料成分の総重量に対して少なくとも0.125重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%,または少なくとも1重量%の含有率で導入される。
【0016】
1以上の態様において、中鎖脂肪酸および/または精油に加えて重硫酸ナトリウムもまた動物飼料または飼料成分に加えてよい。重硫酸ナトリウムは、FDAにより「一般に安全と認められる」(GRAS)および「天然物」であると見なされる酸性塩である。1以上の態様において、重硫酸ナトリウムは溶解させて溶液とし、細菌増殖を防止または低減するために動物飼料または飼料成分の表面に適用される。1以上の態様において、重硫酸ナトリウム溶液は、ドライペットフードまたはペットフード成分の表面に適用される。例えば、この溶液は、ドライドッグフード(キブル)またはドライキャットフードの表面に適用され得る。1以上の態様において、この溶液は、飼料または成分の表面に、100重量%とする飼料または飼料成分の総重量に対して約0.1重量%~約2重量%、より好ましくは約0.15重量%~約1.5重量%、いっそうより好ましくは約0.2重量%~約1重量%の含有率で重硫酸ナトリウムを提供するように適用され得る。
【0017】
本発明に従って使用される化学的緩和剤は、広範な動物飼料または動物飼料成分を処理するために使用することができる。しかしながら、1以上の態様において、本発明による方法は、ブタ飼料および飼料成分との併用のために特に適している。このような態様において、動物飼料または動物飼料成分は、ブタ完全食、血粉、ブタ肉骨粉(MBM)、および噴霧乾燥動物血漿からなる群から選択され得る。1以上の態様において、動物飼料成分は、ビタミンD、塩酸リジン、塩化コリン、および大豆粕からなる群から選択される成分を含んでなり得る。他の態様において、化学的緩和剤は、ペットフードおよびペットフード成分とともに使用され得る。1以上の態様において、ペットフードおよびペットフード成分は、ドライドッグフード(キブル)および/またはキャットフードを含んでなる。用語「ペットフード」は、ペットにより消費されることを意図したいずれの組成物も意味し、「ドライ」フードは一般に、当技術分野で、約20%未満(好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%未満)の水分含量を有するペットフードを指す。用語「キブル」は、当技術分野で、ドライペットフードのペレットを指して使用される。
【0018】
本発明の1以上の態様による方法は、動物またはペット飼料の製造において使用され得る。よって、本発明の一態様において、100重量%とする飼料の総重量に対して約0.01重量%~約10重量%、より好ましくは約0.05重量%~約5重量%、いっそうより好ましくは約0.1重量%~約2重量%、最も好ましくは約0.5重量%~約0.9重量%の化学的緩和剤または化学的緩和剤混合物(本明細書に記載の化学的緩和剤および混合物など)を含んでなる動物飼料またはペットフードが提供される。1以上の態様において、100重量%とする飼料の総重量に対して2重量%未満、1.5重量%未満、1重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、または0.6重量%未満の化学的緩和剤または化学的緩和剤混合物(本明細書に記載の化学的緩和剤および混合物など)を含んでなる動物飼料またはペットフードが提供される。1以上の態様において、100重量%とする飼料の総重量に対して約0.125重量%~約0.5重量%の化学的緩和剤または化学的緩和剤混合物(本明細書に記載の化学的緩和剤および混合物など)を含んでなる動物飼料またはペットフードが提供される。1以上の態様において、100重量%とする飼料の総重量に対して少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、または少なくとも1重量%の化学的緩和剤または化学的緩和剤混合物(本明細書に記載の化学的緩和剤および混合物など)を含んでなる動物飼料またはペットフードが提供される。
【0019】
本発明の態様は、飼料および飼料成分の輸送、特に、国際輸送および保管において使用するために特に好適である。本発明の以前には、中鎖脂肪酸は、米国産業にとって外来の疾病、特に、ウイルスに対する有効な緩和剤であると示されたことはなかった。飼料または成分は、加工の時点でASFVおよび/またはCSFVに汚染されることがある。有利には、本発明の態様は、これらの汚染の蔓延を不活化および抑制するために特に好適である。よって、1以上の態様において、本発明による方法は、加工後に飼料または飼料成分に化学的緩和剤を導入することを含んでなる。化学的緩和剤は、均質な混合物を提供するために十分な時間、飼料または飼料成分と混合され得る。1以上の態様において、本発明による方法は、加工後少なくとも約90日の輸送および保管、加工後少なくとも約60日の輸送および保管、加工後少なくとも約40日の輸送および保管、または加工後少なくとも約30日の輸送および保管の間、飼料および/または成分中でASFVおよび/またはCSFVを防止または低減し得る。
【0020】
本発明の態様は有利には、動物またはペット飼料および成分中でASFVおよび/またはCSFVを防止または低減する安全な代替法を提供する。有害な化学物質を使用する従前の方法は、動物のタンパク質およびアミノ酸代謝に対して悪影響を示していた。従前の方法とは異なり、本発明は一般に、無害な化学的緩和剤を、ASFVおよび/またはCSFVの有効な緩和を達成することが見出された用量で使用する。本発明に従って使用される化学的緩和剤は、労働者の安全または環境に本質的にリスクのない天然の代替法である。
【0021】
本発明の種々の態様のさらなる利点は、本明細書の開示および以下の実施例を検討すれば当業者には自明であろう。本明細書に記載の種々の態様は、本明細書において特に断りのない限り、必ずしも互いに排他的ではないことが認識されるであろう。例えば、1つの態様において記載または描写されている特徴は、他の態様に含まれてもよいが、必ずしも含まれない。よって、本発明は、本明細書に記載の特定の態様の様々な組合せおよび/または統合を包含する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「および/または」という句は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙されている項目のいずれか1つはそれ自体で使用することもできるし、または列挙されている項目の2つ以上の組合せを使用することもできることを意味する。例えば、組成物が成分A、Bおよび/またはCを含有するまたは除外すると記載されている場合、その組成物はA単独;B単独;C単独;AとBの組合せ;AとCの組合せ;BとCの組合せ;またはA、B、およびCの組合せを含有または除外する場合がある。
【0023】
本明細書はまた、本発明の種々の態様に関する特定のパラメーターを定量化するために数値範囲を使用する。数値範囲が示される場合、そのような範囲は、その範囲の下方の値が列挙されているだけのクレーム限定ならびにその範囲の上方の値が列挙されているだけのクレーム限定に文言上の補助を与えると解釈されるものと理解されるべきである。例えば、開示される約10~約100の数値範囲は、「約10以上」(上限がない)と示されているクレームおよび「約100以下」(下限がない)と示されているクレームに文言上の補助を与える。
本発明は以下の通りである。
[1]動物飼料または動物飼料成分中のアフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスの抑制方法であって、
前記飼料または飼料成分に化学的緩和剤を導入することを含んでなり、前記化学的緩和剤は中鎖脂肪酸および/または精油を含んでなり、
前記化学的緩和剤は、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して約0.125重量%~2重量%未満の含有率で導入される、方法。
[2]前記中鎖脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記[1]に記載の方法。
[3]前記化学的緩和剤が、2種類以上の中鎖脂肪酸の混合物である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記化学的緩和剤が、カプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記化学的緩和剤が、およそ等量のカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記精油が、ニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、ワイルドオレガノ精油、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記化学的緩和剤が、中鎖脂肪酸の混合物と精油とを含んでなる、上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記動物飼料または動物飼料成分が、ブタ完全食、血粉、ブタ肉骨粉(MBM)、噴霧乾燥動物血漿、羽毛粉、鳥類血粉、家禽副産物粉、ビタミンD、塩酸リジン、塩化コリン、および大豆粕からなる群から選択される、上記[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記動物飼料または動物飼料成分が、ドライペットキブルであり、前記ドライペットキブルの表面に重硫酸ナトリウムを適用することをさらに含んでなる、上記[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[10]前記重硫酸ナトリウムが、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して約0.1重量%~約2重量%の含有率で前記ドライペットキブルの表面に適用される、上記[9]に記載の方法。
[11]動物飼料または動物飼料成分中のアフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスの抑制において使用するための化学的緩和剤であって、中鎖脂肪酸および/または精油を含んでなる、化学的緩和剤。
[12]前記中鎖脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記[11]に記載の化学的緩和剤。
[13]2種類以上の中鎖脂肪酸の混合物である、上記[1]または[12]に記載の化学的緩和剤。
[14]カプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、上記[11]~[13]のいずれかに記載の化学的緩和剤。
[15]およそ等量のカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸を含んでなる中鎖脂肪酸の混合物を含んでなる、上記[11]~[14]のいずれかに記載の化学的緩和剤。
[16]前記精油が、ニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、ワイルドオレガノ精油、およびそれらの混合物からなる群から選択される、上記[11]~[15]のいずれかに記載の化学的緩和剤。
[17]中鎖脂肪酸の混合物と精油とを含んでなる、上記[11]~[16]のいずれかに記載の化学的緩和剤。
[18]およそ等量のニンニク含油樹脂、ウコン含油樹脂、トウガラシ含油樹脂、ローズマリー抽出物、およびワイルドオレガノ精油を含んでなる、上記[11]~[17]のいずれかに記載の化学的緩和剤。
[19]アフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスに対する抵抗性を有する、処理された動物飼料または動物飼料成分であって、100重量%とする動物飼料または飼料成分の総重量に対して約0.125重量%~2重量%未満の化学的緩和剤を含んでなり、前記化学的緩和剤は中鎖脂肪酸および/または精油を含んでなり、ここで、前記動物飼料または動物成分はブタ完全食、血粉、ブタ肉骨粉(MBM)、噴霧乾燥動物血漿、羽毛粉、鳥類血粉、家禽副産物粉、ビタミンD、塩酸リジン、塩化コリン、大豆粕、ドライペットキブル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、動物飼料または動物飼料成分。
[20]上記[19]に記載のアフリカブタ熱ウイルスおよび/または古典的ブタ熱ウイルスに対する抵抗性を有する処理された動物飼料または動物飼料成分であって、前記動物飼料または動物飼料成分がドライペットキブルであり、前記ドライペットキブルはその表面の重硫酸ナトリウムをさらに含んでなる、動物飼料または動物飼料成分。
【実施例
【0024】
以下の実施例は、飼料および飼料成分中のASFVおよびCSFVに対する化学的緩和戦略の有効性を示す。しかしながら、これらの実施例は説明のために示され、本発明の全範囲で限定と見なされるべきものはないと理解されるべきである。
種々の濃度の中鎖脂肪酸混合物(MCFA)をASFV(BA71v単離株)およびCSFV(Brescia単離株)と希釈および混合するためのプロトコールおよび手順を開発した。本研究は、それらの各細胞培養物、ベロ細胞およびブタ腎臓細胞で行った。第1段階として、MCFAを等容量のC6:C8:C10(カプロン酸:カプリル酸:カプリン酸)を1:1:1の容量比となるように混合することによって調製する。第2に、MCFA処理物を10%~0.625%の範囲の濃度で調製し、標準的な高濃度のウイルス(10TCID50/ml)と混合する。MCFAはこれらの実験に使用された細胞培養物を破壊せず、各アッセイにおいて陽性対照および陰性対照を含んでいたことが確認されている。予備的結果は、MCFAが10%~0.625%で試験した総ての用量でCSFVおよびASFVの両方を効果的に不活化することを示した。
【0025】
実施例I
アフリカブタ熱ウイルスの試験
特定のプロトコールおよび手順を用いて、20%DMSO中の種々の濃度の中鎖脂肪酸混合物をASFV(BA71v単離株)とベロ細胞において希釈および混合した。第1段階として、等容量のC6:C8:C10を20%DMSO中1:1:1の容量比となるように混合することによって中鎖脂肪酸を調製した。第2に、中鎖脂肪酸を2%~0.125%の範囲の濃度で調製し、標準的な高濃度ASFV(10TCID50/ml)と混合した。ウイルスの用量応答不活化を決定するために各アッセイに陽性対照を含めた。
【0026】
結果(表1、図1)は、中鎖脂肪酸処理が、0.7%~2.0%の間で試験した総ての用量で、間接的蛍光抗体試験によって検出不能なレベルにまでASFVを効果的に不活化することを示した。0.6%~0.125%の中鎖脂肪酸濃度ではASFVの用量依存的減少が見られる。細胞培養物で試験した中鎖脂肪酸の最低濃度(0.125%中鎖脂肪酸)では、ウイルス力価におよそ0.75log10 TCID50/mlの減少が見られる。0.25%の中鎖脂肪酸を含有する場合、ウイルス力価はおよそ98.2%減少する。0.6%の中鎖脂肪酸を含有する場合には、ウイルス力価のおよそ4-対数減衰が見られる。ウイルス力価の4-対数減衰は、ウイルスの不活化に関して国際獣疫事務局(OIE)が記載している標準である。まとめると、本発明者らは、中鎖脂肪酸は細胞培養物中のASFVの有効な不活化剤であること、およびおよそ4-対数減衰に必要とされる用量は0.6%であり、1%の標準含有率よりもずっと低い用量であることを示した。
【0027】
【表1】
【0028】
9種類の高リスク成分中、1%(重量%)の中鎖脂肪酸含有率も、様々な環境温度および湿度条件を模した30日越境輸送モデルにおいてASFVジョージア2007単離株を用い、ASFV生存に関して試験した。ASFVジョージア2007は、現在、中国で循環している高病原性ASFV単離株である。高リスク飼料成分には、大豆粕(通常)、大豆粕(オーガニック)、大豆油粕、コリン、モイストキャットフード、モイストドッグフード、ドライドッグフード、ポークソーセージの皮、および完全飼料が含まれる。ASFV DNAの検出および定量はqPCRにより行い、非処理の接種飼料と中鎖脂肪酸で処理した接種飼料を比較した。最初の試験では、飼料を、接種後日数(dpi)0日のASFV接種直前に、C6:C8:C10を1:1:1比で含む1%中鎖脂肪酸で処理した。PCR結果は、総ての非処理対照サンプルおよび0dpiのMCFA処理サンプルが1、8、17および30日目にASFV DNA陽性であったことを示した(図2)。図2で、非処理対照(白四角)および0dpiのASFV接種直前にMCFAで処理したサンプル(黒四角)に関するデータを示す。総てのサンプルが30日越境輸送モデルの終了時に検出可能なASFV DNAを有した。Ct値>40を陰性と見なした。注:PCRはウイルスDNAを検出するが、その感染力を調べるものではない。
【0029】
第2の試験では、ASFV DNAの検出および定量を非処理の接種飼料と28dpiに1:1:1の1%中鎖脂肪酸で処理した、中鎖脂肪酸処理した接種飼料を比較した。結果は、総ての非処理サンプルおよび28dpiの中鎖脂肪酸処理サンプルが30dpiにASFV DNA陽性であったことを示した(図3)。図3で、データは、2反復の平均サイクル閾値(Ct)として示す。総てのサンプルが越境輸送モデルの終了時にASFV DNA陽性であった。Ct値>40を陰性と見なした。
【0030】
次に、非処理の接種飼料および0dpiおよび28dpiの両方において1%中鎖脂肪酸で処理した接種飼料を、PCRにより検出されたASFV DNAに感染力があるかどうかを判定するために、ブタ肺胞マクロファージでのウイルス単離によって試験した。ウイルス単離は、総ての無処理陽性対照には感染性ウイルスが存在したが、0dpiまたは28dpiのいずれかに中鎖脂肪酸で処理したいずれのサンプルにも感染性ウイルスは検出できなかったことを示した(表2)。感染性ウイルスは、陽性の無処理サンプルにおいて、ASFV p30タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いて検出された。
【0031】
【表2】
【0032】
0dpiまたは28dpiのいずれかにおいて中鎖脂肪酸で処理したサンプルを、次にさらに、感染性ウイルスの存在を評価するために養豚ブタ生物検定モデルで試験した。中鎖脂肪酸で処理した飼料から得たサンプルを筋肉内に注射した(これが感染力のあるASFVを検出するための最も高感度の方法であったため)。用いるブタの頭数を減らすために1つまたは2つのサンプルをブタに注射した。プールしたサンプルは定量的PCR結果に基づいた。0dpiに中鎖脂肪酸で処理した総ての飼料サンプルにおいて、ブタ生物検定で感染性ASFVは陰性であった(表3)。28dpiに中鎖脂肪酸で処理した飼料サンプルは、2サンプルを除く総てのサンプルで、ブタ生物検定において感染性ASFVが陰性であった(表3)。これら2つの飼料サンプル(一方または両方に感染性ASFVが存在した可能性がある)は、大豆粕(オーガニック)およびドライドッグフードであった。これらの2つのサンプルを、脾臓のウイルス単離でASFVが検出された1頭のブタに注射した。総合すると、本発明者らのデータは、中鎖脂肪酸は細胞培養物および飼料成分中の感染性ASFVの有効な緩和剤であることを裏づける。
【0033】
【表3】
【0034】
実施例II
古典的ブタ熱ウイルスの試験
細胞培養物中のCSFVに対するMCFAの効果を表4、ならびに図4および図5A~5Cに示す。種々のレベルの中鎖脂肪酸処理(1:1:1比のC6:C8:C10)を、細胞培養モデルにおいてCSFV Brescia単離株のウイルス力価の不活化または低減における有効性に関して試験した。10%~0.5%で試験したMCFAレベルは、CSFウイルス力価を、ブタ腎臓細胞での間接的蛍光抗体試験によって検出可能なレベルを下回るレベルに低減した。図5Bに示されるように、CSFVは、MCFA処理後に検出可能であった。CSFVウイルス力価の用量依存的低減が、0.4%~0.125%のレベルでMCFAに曝した後に示された。試験した最低のMCFA含有率(0.125%)は、緩和を行わなかった陽性対照と比較して、ウイルス力価に82.2%の低減をもたらした。
【0035】
【表4】
【0036】
また、越境輸送環境条件に曝した飼料成分中でのCSFV生存に対するMCFAの効果も試験した。1%MCFA混合物(1:1:1比のC6:C8:C10)を、2種類の飼料成分中でCSFVを不活化するその能力に関して試験したところ、輸送を模した37日越境輸送モデルでCSFVの生存を裏づけた。試験したこれら2つの成分には、大豆粕(通常)およびポークソーセージの皮が含まれていた。MCFA混合物を飼料成分に、接種後日数(dpi)0日のCSFV接種(10TCID50)前に加え飼料成分中にMCFAを混合するためにボルテックスで撹拌した。1dpiという早期に、MCFAで処理したサンプルはウイルス単離および力価測定で陰性であったが、陽性対照は、大豆粕(通常)およびポークソーセージの皮に関してそれぞれ104.3 TCID50および103.7 TCID50の検出可能なCSFV力価を有していた。37dpiまで、総てのサンプル(無処理陽性対照を含む)はウイルス単離および力価測定で陰性であった。MCFAで処理した、および処理しなかった大豆粕(通常)サンプルからの上清を37日越境輸送モデルの終了時に採取し、3週齢のブタ生物検定において筋肉内注射により試験した。無処理の大豆粕サンプルはブタ生物検定でCSFV陽性であったが、MCFAで処理した大豆粕サンプルはブタ生物検定でCSFV陰性であり、越境輸送の条件に曝した大豆粕中でのCSFVの感染性の排除におけるMCFAの有効性が証明された。
図1
図2
図3
図4
図5