(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ウエットシート
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20240115BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20240115BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240115BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240115BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/20
A61K8/55
A61Q15/00
A47K7/00 G
A47K7/00 E
(21)【出願番号】P 2020545968
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019034955
(87)【国際公開番号】W WO2020054570
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018170856
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 由樹
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 有喜子
(72)【発明者】
【氏名】間中 勇太
(72)【発明者】
【氏名】森下 薫
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊一
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205642(JP,A)
【文献】特開2010-159513(JP,A)
【文献】特開2016-084317(JP,A)
【文献】特開2016-013475(JP,A)
【文献】特開2012-001551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A47K 7/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーヨンを含むシートと、該シートに含浸される液状組成物とを含むウエットシートであって、前記液状組成物がフェノールスルホン酸亜鉛、塩化マグネシウムおよびリン酸アスコルビルマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の
、レーヨンに起因する硫黄臭を抑制する硫黄臭低減物質を、前記液状組成物の全量に対して1×10
-6~2×10
-2mol/L含有するウエットシート。
【請求項2】
前記硫黄臭低減物質が、25℃における水への溶解性が1×10
6mol/L以上である請求項1記載のウエットシート。
【請求項3】
前記シートが不織布である請求項1または2記載のウエットシート。
【請求項4】
前記シートのレーヨン含有量が50質量%以上である請求項1、2または3記載のウエットシート。
【請求項5】
前記硫黄臭低減物質の含有量が前記液状組成物の全量に対して1×10
-5~1×10
-2mol/Lである請求項1~4のいずれか1項記載のウエットシート。
【請求項6】
ウエットシートが清拭用である請求項1~5いずれか1項記載のウエットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーヨンを含むシートに液状組成物を含浸させたウエットシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート状の不織布等に液状組成物を含浸させたウエットシートは、皮膚等を拭くものとして、あるいは湿潤マスク等として広く使用されている。例えば、特許文献1には清拭用基材にマグネシウム水溶液を0.2~6.0重量%含有させてなる殺菌や治癒力を備えたウェットティシュが記載されている。また、特許文献2には、害虫忌避成分としてN,N-ジエチルトルアミドと、アルコール溶解性をもつ制汗成分としてパラフェノールスルホン酸亜鉛を5~50重量%含んだ薬剤を、汚れの拭き取り性を有する不織布へ含浸させたものが記載されている。
【0003】
一方、液状組成物を含浸させる不織布等としては、綿、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ナイロン等の合成繊維等の繊維綿、レーヨン、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、綿、ビニロンなど、様々な材質が知られているが、吸湿性や放湿性、弾力性、耐熱性等の様々な利点を有することから、レーヨンが用いられる場合がある。
【0004】
レーヨンは木材パルプや竹等の天然の原料セルロースをアルカリ(苛性ソーダ)および二硫化炭素と反応させてセルロース誘導体を製造し、これをアルカリ水溶液中に溶解させて原液とし、この原液を口金から硫酸水溶液中に押しだし、引き延ばして繊維素(セルロース)を凝固、再生して(湿式紡糸法と称される)製造される。精錬工程において水洗することで不純物である二硫化炭素は除去されるが、残留する硫化物は水が存在すると硫黄由来の火薬臭い臭気が発生するという問題がある。このような問題を解決するために、特許文献3には、レーヨンを含む不織布に、1-p-メンテン-8-チオールおよび/またはベンゾチアゾールを1~1000ppmを含有させた湿潤シートが記載されている。
【0005】
一般に、消臭効果があるとされる物質として、例えば、非特許文献1には酸化亜鉛が汗臭抑制効果のある物質として、特許文献4には酸化マグネシウムが体幹部から発生するアブラ臭さを抑制する物質として記載されている。また、特許文献5には0.1~40重量%の有機亜鉛化合物を含む反応型脱臭剤が、下水処理、ゴミ処理、工業・農業などの産業廃棄物処理といった分野において、臭気源に直接噴霧もしくは撒布して、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルスルフイド、二酸化イオウなどに対して優れた脱臭効果を有することが記載されている。さらに、特許文献6には、亜鉛化合物、ヨノンケトンテルペン誘導体およびミントフレーバーの併用物を含む組成物に口腔防臭の効果があること、フェノールスルホン酸亜鉛には口腔でおきる醗酵および腐敗臭の抑制効果があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3153497号公報
【文献】特許第4348670号公報
【文献】特許第5598174号公報
【文献】特許第5170398号公報
【文献】特公平6-47004号公報
【文献】特公平7-098737号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】神田不二宏ら,日本化粧品技術者会誌,vol23,p217(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3に記載されている1-p-メンテン-8-チオールやベンゾチアゾールは硫黄臭低減効果が必ずしも充分とは言えない上、これらの物質そのものに香気があるため、ウエットシートを無香料としたい場合には使用することができず、また、香料を使用する場合には、その香料に与える影響も考慮しなければならないため、使用しにくい側面がある。また、非特許文献1や、特許文献4や6に記載されている消臭効果は硫黄臭を抑制するものではないため、硫黄臭に効果があるか否かは不明である。特許文献5に記載されている有機亜鉛化合物は臭気源に直接噴霧もしくは撒布するものであって、使用態様が全く異なるものである。また、選択できる消臭物質は、シートに対して液状組成物を含浸させるという製造工程から、製造工程において分散性が良好で含浸充填時に均一性があることも必要であり、かかる側面からの検討も必要である。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、レーヨンを含むシートに液状組成物を含浸させたウエットシートにおいて、硫黄臭が抑制されたウエットシートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のウエットシートは、レーヨンを含むシートと、このシートに含浸される液状組成物とを含むウエットシートであって、
液状組成物が有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および無機マグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄臭低減物質を、液状組成物の全量に対して1×10-6~2×10-2mol/L含有するものである。
【0011】
硫黄臭低減物質は、25℃における水への溶解性が1×10-6mol/L以上であることが好ましい。
【0012】
シートは不織布であることが好ましい。
【0013】
シートのレーヨン含有量は50質量%以上であることが好ましい。
【0014】
硫黄臭低減物質は、フェノールスルホン酸亜鉛、塩化マグネシウムおよびリン酸アスコルビルマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、その含有量は、液状組成物の全量に対して1×10-5~1×10-2mol/Lであることが好ましい。
【0015】
ウエットシートは清拭用とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のウエットシートは、レーヨンを含むシートと、シートに含浸される液状組成物とを含むウエットシートであって、液状組成物が有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および無機マグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄臭低減物質を、液状組成物の全量に対して1×10-6~2×10-2mol/L含有するものであるので、ウエットシートの硫黄臭を効果的に抑制することができるとともに、製造工
程において分散性、均一性を確保することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のウエットシートについて詳細に説明する。
本発明のウエットシートは、レーヨンを含むシートと、シートに含浸される液状組成物とを含むウエットシートであって、液状組成物が有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および無機マグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄臭低減物質を、液状組成物の全量に対して1×10-6~2×10-2mol/L含有するものである。
【0018】
[シート]
レーヨンを含むシートは、レーヨンを含んでいる繊維を含むシートであれば特に限定されるものではなく、不織布の他、繊維の編織布、和紙、多孔性フィルム、連続気孔を有する発泡体シートであってもよく、単層あるいはこれらの積層物であってもよい。また、これら単層または積層物は、さらに植毛により繊維で覆ったり、凹凸のエンボス加工したもの等の二次加工により、表面の特徴を変えたものやメッシュ状にしたもの等であってもよい。
シートの形状は特に限定されるものではなく、例えば、正方形、長方形の他、楕円形、円形、ハート形、半円形、半楕円形、台形、顔型等が挙げられる。
【0019】
シートの厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、シートが不織布の場合には、0.1~10mmが好ましく、0.1~5mmがより好ましい。また、目付は10~80g/m2が好ましく、30~50g/m2がより好ましい。目付が10g/m2以上であると、使用する際に破けたりすることがなく、また、80g/m2以下であることで、コスト高を抑制することができる。
【0020】
シートにおけるレーヨンの含有量はシートの含浸前の自重に対して50~100質量%が好ましく、70~100質量%が好ましい。他の材質としては、親水性繊維、疎水性繊維等が挙げられ、1種のみをレーヨンと組み合わせて用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。親水性繊維としては、綿、パルプ、麻等の天然セルロース系繊維;テンセル等の再生セルロース系繊維;キチン、アルギン酸繊維、コラーゲン繊維等の再生繊維等が挙げられる。疎水性繊維としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなる繊維、ナイロン等のポリアミド系樹脂からなる繊維、ポリアクリロニトリル系樹脂からなる繊維、ポリビニルエタノール系樹脂からなる繊維、ポリウレタン系樹脂からなる繊維等が挙げられる。
【0021】
中でも、疎水性繊維が好ましく、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる繊維が好ましい。また、シート中の材質組成の質量比は、レ-ヨン/疎水性繊維=90/10~50/50が好ましく、80/20~70/30がより好ましい。
【0022】
シートは市販品を用いることができ、不織布であれば、例えばダイワボウポリテック株式会社、フタムラ化学株式会社、三昭紙業株式会社等から市販されている種々の不織布を用いることができる。
【0023】
[液状組成物]
(硫黄臭低減物質)
液状組成物は、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および無機マグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄臭低減物質を含有する。ここで、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物、無機マグネシウム化合物の各化合物の、25℃における水への溶解性は好ましくは1×10-6mol/L以上、より好ましくは1×10-5mol/L以上、さらに好ましくは1×10-4mol/L以上、特に好ましくは1×10-3mol/L以上である。25℃における水への溶解性が1×10-6mol/L以上であることで、粉末がより凝集しにくく製造性が良くなる。
【0024】
有機亜鉛化合物としては、フェノールスルホン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p-tert-ブチル安息香酸亜鉛等を好ましく挙げることができる。
また、有機マグネシウム化合物としては、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、EDTAマグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、トルエンスルホン酸マグネシウム、キシレンスルホン酸マグネシウム、クメンスルホン酸マグネシウム、リン酸アスコルビルマグネシウム等を挙げることができる。
無機マグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム等を、挙げることができる。
汎用性等の観点からすれば、フェノールスルホン酸亜鉛、塩化マグネシウムまたはリン酸アスコルビルマグネシウムが望ましい。これらの硫黄臭低減物質は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記硫黄臭低減物質は、液状組成物の全量に対して1×10-6~2×10-2mol/L含有し、好ましくは1×10-5~1×10-2mol/L、より好ましくは1×10-5~2×10-3mol/L、特には5×10-5~2×10-4mol/Lである。なお、硫黄臭低減物質を2種以上含む場合には、含有する硫黄臭低減物質の総量を意味する。
硫黄臭低減物質が液状組成物の全量に対して1×10-6mol/L以上であることで、硫黄臭を効果的に低減することができる。また、硫黄臭低減物質が液状組成物の全量に対して2×10-2mol/L以下であることで、液状組成物に含まれる香料が相殺されることを抑制することができる。また、液状組成物に香料を含まない場合であっても、硫黄臭低減物質が液状組成物の全量に対して2×10-2mol/L以下であることで、金属イオンが液状組成物中に含まれる他成分と不溶性物質を生成することを防止でき、また、ウエットシートの適用対象部位に香水等の香料を適用している場合に、その香料を取り去ることを軽減することができる。
【0026】
(液状組成物に含まれるその他の物質)
シートに含侵させる液状組成物の量は、シートの含浸前の自重に対して1~10倍であることが好ましい。清拭用シートの場合は、1~5倍が好ましく、2~4倍、特に3.5倍程度とすることが望ましい。1倍以上であることで、使用時に十分な液が放出され、清拭用の場合は5倍以下とすることで使用後に適度な液が肌上に残るため、べたつかない使用性となる。
【0027】
液状組成物には、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば水、保湿剤、界面活性剤、液体油脂、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、水溶性高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、可溶化剤、清涼剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、着色剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0028】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、アルキレンオキシド誘導体、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。保湿剤が含まれると、より使用感が良く、化粧料をなじませたり、除去したりするのに好適である。
【0029】
その他の配合可能成分としては、例えばコラーゲン、エラスチン、フィトコラージュ、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【0030】
[ウエットシートの製造]
本発明のウエットシートにおいて、シートへの液状組成物の含浸方法は公知の手段により行うことができ、例えば、滴下法、噴霧法、加圧法、ディッピング加工法が挙げられる。シートはそのままあるいは折りたたむなどして1枚または複数枚を用い、これに液状組成物を含浸させる。
【0031】
含浸させたシートは、直ちに気密性の高い容器に封入することが好ましく、特にアルミラミネート製包装体やポリエチレンテレフタレート(PET)で内面コートした包装体等の光を通さず、気密の良い袋等に密封装填することがより好ましい。本発明のウエットシートは、硫黄臭低減物質が亜鉛やマグネシウムの金属塩であっても、液状組成物に含まれる硫黄臭低減物質が2×10-2mol/L以下であるため、金属イオンが液状組成物中に含まれる他成分と不溶性物質を生成することを防止できる。
【0032】
[使用形態]
本発明のウエットシートの使用形態は特に限定されないが、例えば、顔用汗拭きシート、身体用汗拭きシート、身体用デオドラントシート、足用拭き取りシート、介護用清拭シート、皮脂拭き取り用シート等の清拭シートや、化粧水や乳液等の化粧料を含侵させたスキンケア用シート、美容液等の化粧料を含侵させ、顔(全体、あるいは頬部、目元部、口元部等)、腕部、脚部、胸部、腹部、首部等の全体または局所の部位に密着させ、適当な時間放置後に剥離して使用するマスク用(パック用)シート等に用いることができる。
【実施例】
【0033】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
表1および2に示す処方により実施例および比較例の液状組成物を常法により調製した。各液状組成物を、レーヨンを80%含む不織布(レーヨン:疎水性繊維(PP/PE(50/50))=80:20で、目付40g/m2)に、不織布質量の約3倍量の液状組成物を含浸させた。
【0034】
(評価)
(硫黄臭低減効果)
上記含浸させた不織布について、4時間後にブラインドで3名により硫黄臭について、以下の基準で評価した。
A:硫黄臭を感じない
B:硫黄臭を感じにくい
C:硫黄臭は感じないが、香料の質がやや変化している
D:硫黄臭を感じる
【0035】
(粉末の分散安定性)
実施例および比較例で用いた液状組成物を撹拌した後、撹拌停止1分後に粉末の分散状態を目視により、以下の基準で評価した。
A:溶解していて固体として分散しない
B:均一に分散している
C:ビーカーの底に沈殿物が観察される
液状組成物の処方とともに、評価結果を表1および2に示した。なお、表中のPPGはポリプロピレングリコール、PEGはポリエチレングリコールの略である。
【0036】
【0037】
【0038】
表1に示すように、実施例1、4~7のフェノールスルホン酸亜鉛、実施例2の塩化マグネシウム、実施例3のリン酸アスコルビルマグネシウムは硫黄臭低減効果がいずれも良好で、その粉末も分散安定性がよく製造性にも優れていた。一方、表2に示すように、香料のみでは硫黄臭は低減できず(比較例1および2)、比較例3の酸化亜鉛は、硫黄臭低減効果は良好であったものの、粉末の分散安定性が悪いため、製造性に劣ると考えられた。また、比較例4~6は粉末の分散安定性は良好であったので、製造性はよいと考えられたものの、硫黄臭低減効果は認められなかった。
【0039】
表3にその他の液状組成物の処方例を示す。
【0040】