(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】二次電池システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240115BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240115BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240115BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240115BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240115BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20240115BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240115BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H01L27/04 U
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H10B12/00 801
H10B12/00 671Z
H02J7/10 H
H02J7/10 B
H02J7/10 L
H01M10/48 P
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2020557015
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 IB2019059724
(87)【国際公開番号】W WO2020109901
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2018220233
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】上妻 宗広
(72)【発明者】
【氏名】田島 亮太
(72)【発明者】
【氏名】井上 広樹
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-115862(JP,A)
【文献】特開2014-64354(JP,A)
【文献】特開2015-156319(JP,A)
【文献】特開2013-16244(JP,A)
【文献】特開2015-41388(JP,A)
【文献】特開平11-28642(JP,A)
【文献】国際公開第2012/101822(WO,A1)
【文献】特開2011-109802(JP,A)
【文献】特開2010-200553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/088
H10B 12/00
H02J 7/10
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
半導体装置と、を有し、
前記半導体装置は
、
第1の記憶部と、
第2の記憶部と、
判定部と、を有し、
前記第1の記憶部は、一群の記憶素子を備え、
前記一群の記憶素子は、半導体素子を含み、
前記半導体素子は、酸化物半導体を有する半導体層を備え、
前記第1の記憶部は、温度に関する情報を検知し、
前記第1の記憶部は、
前記温度に関する情報を保持し、
前記第2の記憶部は、前記二次電池の充電回数ごとの標準データおよび許容差情報を保持し、
前記判定部は、
前記温度に関する情報を前記標準データと比較し、
前記判定部は、
前記温度に関する情報および前記標準データの間に、前記許容差情報を超える乖離がある場合、制御信号を供給し、
前記二次電池は、前記半導体装置と電気的に接続される、二次電池システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記半導体装置は、前記二次電池に所定の電流または所定の電圧を供給する機能を備え、
前記半導体装置は、前記制御信号に基づいて動作する、二次電池システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記半導体層は、インジウムおよび亜鉛のうち、少なくとも一方を含む、二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明の一様態は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置または電子機器に関する。また、本発明の一様態は、蓄電装置の充電制御方法に関する。また、本発明の一様態は、充電装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置(「バッテリ」または「二次電池」ともいう。)とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池、全固体電池、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【背景技術】
【0003】
トランジスタに適用可能な半導体薄膜として、シリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体(OS:Oxide Semiconductor)が注目されている。酸化物半導体としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛などの一元系金属の酸化物のみでなく、多元系金属の酸化物も知られている。多元系金属の酸化物の中でも、特に、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZOとも呼ぶ。)に関する研究が盛んに行われている。
【0004】
IGZOに関する研究により、酸化物半導体において、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造およびnc(nanocrystalline)構造が見出された(非特許文献1乃至非特許文献3参照。)。非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術も開示されている。さらに、CAAC構造およびnc構造よりも結晶性の低い酸化物半導体でさえも、微小な結晶を有することが、非特許文献4および非特許文献5に示されている。
【0005】
さらに、IGZOを活性層として用いたトランジスタは極めて低いオフ電流を持ち(非特許文献6参照。)、その特性を利用したLSIおよびディスプレイが報告されている(非特許文献7および非特許文献8参照。)。
【0006】
また、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(以下、「OSトランジスタ」とも呼ぶ。)を利用した様々な半導体装置が提案されている。
【0007】
また、近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電体の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話やスマートフォン、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ等の電子機器、あるいは医療機器、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展に伴い急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0008】
リチウムイオン電池に求められる特性として、高エネルギー密度化、サイクル特性の向上及び様々な動作環境での安全性、長期信頼性の向上などがある。
【0009】
また、リチウムイオン電池の一例としては、少なくとも、正極、負極、及び電解液を有している(特許文献1)。
【0010】
また、特許文献2では、二次電池の微小短絡を検出する電池状態検知装置及びそれを内蔵する電池パックが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-9418号公報
【文献】特開2010-66161号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】S.Yamazaki et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2012,volume 43,issue 1,p.183-186
【文献】S.Yamazaki et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2014,volume 53,Number 4S,p.04ED18-1-04ED18-10
【文献】S.Ito et al.,“The Proceedings of AM-FPD’13 Digest of Technical Papers”,2013,p.151-154
【文献】S.Yamazaki et al.,“ECS Journal of Solid State Science and Technology”,2014,volume 3,issue 9,p.Q3012-Q3022
【文献】S.Yamazaki,“ECS Transactions”,2014,volume 64,issue 10,p.155-164
【文献】K.Kato et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2012,volume 51,p.021201-1-021201-7
【文献】S.Matsuda et al.,“2015 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers”,2015,p.T216-T217
【文献】S.Amano et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2010,volume 41,issue 1,p.626-629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一態様は、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することを課題の一とする。または、利便性または信頼性に優れた新規な二次電池システムを提供することを課題の一とする。または、新規な半導体装置または新規な二次電池システムを提供することを課題の一とする。
【0014】
蓄電装置の充電は、蓄電装置の正極負極間の電圧が一定値になるまで両電極間に一定電流を流す方法が多く用いられる。蓄電装置の充電に最適な電流値は、正極、負極、および電解液の構成材料によって異なる。また、蓄電装置の劣化(蓄電容量の低下など)を低減するため、充電時の環境温度(蓄電装置の発熱を含む)によって、電流値を適切に設定する必要がある。
【0015】
本発明の一態様は、蓄電装置の劣化が生じにくい充電を実現する半導体装置を提供することを課題の一とする。または、蓄電装置の劣化が生じにくい充電方法を提供することを課題の一とする。または、蓄電装置を損壊しにくい充電方法を提供することを課題の一とする。または、新規な半導体装置を提供することを課題の一とする。または、新規な充電装置を提供することを課題の一とする。または、新規な充電方法を提供することを課題の一とする。
【0016】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)本発明の一態様は、検知部と、第1の記憶部と、第2の記憶部と、判定部と、を有する半導体装置である。
【0018】
検知部は検知信号を供給し、第1の記憶部は検知信号を保持する。
【0019】
第2の記憶部は、標準データおよび許容差情報を保持する。
【0020】
判定部は検知信号を標準データと比較し、判定部は、検知信号および標準データの間に、許容差情報を超える乖離がある場合、制御信号を供給する。
【0021】
これにより、検知信号が、標準データから逸脱した信号か否かを判断することができる。または、異常を検知することができる。または、異常を検知して制御信号を供給することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0022】
(2)また、本発明の一態様は、制御部を有する上記の半導体装置である。
【0023】
制御部は、選択信号を供給する。
【0024】
第1の記憶部は一群の記憶素子および選択回路を備え、一群の記憶素子は記憶素子を含む。
【0025】
記憶素子は、検知信号を保持する。
【0026】
選択回路は、選択信号に基づいて、記憶素子を選択する。
【0027】
これにより、第1の記憶部は、例えば、複数回のサンプリングによって得た、複数の検知信号を保持することができる。または、例えば、電圧、電流および温度等、複数の異なる事象を検知して得た、複数の検知信号を保持することができる。または、連続して変化する複数の検知信号を保持することができる。または、例えば、継時的に変化する検知信号を検知時刻の情報と共に保持することができる。または、損耗に伴い変化する検知信号を使用履歴の情報と共に保持することができる。または、複数の検知信号と標準データの間に、許容差情報を超える乖離があるか否かを判断することができる。または、許容差情報を超える乖離を検知して制御信号を供給することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0028】
(3)また、本発明の一態様は、選択回路が、開閉器を備える上記の半導体装置である。
【0029】
これにより、例えば、複数の記憶素子から一を選択することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0030】
(4)また、本発明の一態様は、選択回路が、ソース・フォロワ回路を備える、上記の半導体装置である。
【0031】
これにより、例えば、複数の記憶素子から一を選択することができる。または、選択動作に伴うアナログデータの劣化を抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0032】
(5)また、本発明の一態様は、記憶素子が半導体層を備え、半導体層が酸化物半導体を含む、上記の半導体装置である。
【0033】
これにより、例えば、検知信号を保持することができる。または、検知信号を繰り返し書き換えることができる。または、書き換えに伴う記憶素子の劣化を低減することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0034】
(6)また、本発明の一態様は、第1の半導体装置と、上記の半導体装置と、を有する半導体装置である。
【0035】
第1の半導体装置は、所定の電流または所定の電圧を供給する機能を備え、第1の半導体装置は、第2の半導体装置と電気的に接続される。
【0036】
第1の半導体装置は制御信号を供給され、第1の半導体装置は制御信号に基づいて動作する。
【0037】
これにより、第2の半導体装置を用いて、第1の半導体装置をフィードバック制御することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0038】
(7)また、本発明の一態様は、検知部が電圧検出器を備える上記の半導体装置である。
【0039】
電圧検出器は、所定の電流を供給する際に要する電圧を計測する。
【0040】
第2の記憶部は、電圧に関する標準データを保持する。
【0041】
これにより、検知する電圧および標準データの間に生じる、許容差情報を超える乖離を、監視することができる。または、第2の半導体装置に電気的に接続される第1の半導体装置の異常を、電圧を用いて、監視することができる。または、第1の半導体装置に電気的に接続される負荷の異常を、電圧を用いて、監視することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0042】
(8)また、本発明の一態様は、検知部が電流検出器を備える上記の半導体装置である。
【0043】
電流検出器は、所定の電圧を供給する際に要する電流を計測する。
【0044】
第2の記憶部は、電流に関する標準データを保持する。
【0045】
これにより、検知する電流および標準データの間に生じる、許容差情報を超える乖離を、監視することができる。または、第2の半導体装置に電気的に接続される第1の半導体装置の異常を、電流を用いて、監視することができる。または、第1の半導体装置に電気的に接続される負荷の異常を、電流を用いて、監視することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0046】
(9)また、本発明の一態様は、検知部が端子を備える。上記の半導体装置である。
【0047】
端子は、温度に関する検知信号を供給される。
【0048】
第2の記憶部は、温度に関する標準データを保持する。
【0049】
これにより、検知する温度および標準データの間に生じる、許容差情報を超える乖離を、監視することができる。または、第2の半導体装置に接続される第1の半導体装置または負荷の異常を、温度を用いて、監視することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0050】
(10)また、本発明の一態様は、二次電池と、上記の半導体装置を有する二次電池システムである。
【0051】
二次電池は、半導体装置と電気的に接続される。
【0052】
これにより、例えば、充電中の二次電池に加わる、許容差情報を超える電圧を検知することができる。または、例えば、充電中の二次電池流れる、許容差情報を超える電流を検知することができる。または、二次電池の特性に由来する許容差情報に基づいて、制御信号を供給できる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な二次電池システムを提供することができる。
【0053】
(11)また、本発明の一態様は、二次電池と、上記の半導体装置と、を有する二次電池システムである。
【0054】
二次電池は、電池セルおよび温度検出器を備える。
【0055】
温度検出器は、端子と電気的に接続され、温度検出器は、電池セルの温度を検知する。
【0056】
これにより、例えば、充電中の二次電池の許容差情報を超える温度変化を検知することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な二次電池システムを提供することができる。
【0057】
(12)また、本発明の一態様は、環境温度に応じて充電電流の大きさを調整する。低温環境下での充電は、充電電流を小さくして行う。環境温度が低すぎるか、高すぎる場合は充電を停止する。環境温度の測定は、酸化物半導体を用いた記憶素子で行う。酸化物半導体を用いた記憶素子を用いることで、環境温度の測定と、当該温度情報の保持を同時に行う。
【0058】
本発明の一態様は、第1記憶素子と、第2記憶素子と、比較回路と、電流調整回路と、を有し、第1記憶素子は、基準温度情報を保持する機能を有し、第2記憶素子は、半導体層に酸化物半導体を含むトランジスタを有し、第2記憶素子は、環境温度を測定する機能と、環境温度を環境温度情報として保持する機能と、を有し、比較回路は、基準温度情報と環境温度情報を比較して、電流調整回路の動作を決定する機能を有し、電流調整回路は、二次電池に電流を供給する機能を有する半導体装置である。
【0059】
第1記憶素子を複数有してもよい。それぞれの第1記憶素子は、互いに異なる基準温度情報を保持することが好ましい。
【0060】
半導体層は、インジウムおよび亜鉛のうち、少なくとも一方を含むことが好ましい。インジウムおよび亜鉛の双方を含むことがより好ましい。
【0061】
二次電池として、例えばリチウムイオン二次電池を用いることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の一態様によれば、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。または、利便性または信頼性に優れた新規な二次電池システムを提供することができる。または、新規な半導体装置または新規な二次電池システムを提供することができる。
【0063】
また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の劣化が生じにくい充電を実現する半導体装置を提供できる。または、蓄電装置の劣化が生じにくい充電方法を提供できる。または、蓄電装置を損壊しにくい充電方法を提供できる。または、新規な半導体装置を提供できる。または、新規な充電装置を提供できる。または、新規な充電方法を提供できる。
【0064】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明の一態様の半導体装置は、検知部と、第1の記憶部と、第2の記憶部と、判定部と、を有する半導体装置であって、検知部は検知信号を供給し、第1の記憶部は検知信号を保持し、第2の記憶部は標準データおよび許容差情報を保持し、判定部は検知信号を標準データと比較し、判定部は検知信号および標準データの間に、許容差情報を超える乖離がある場合、制御信号を供給する。
【0067】
これにより、検知信号が、標準データから逸脱した信号か否かを判断することができる。または、異常を検知することができる。または、異常を検知して制御信号を供給することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0068】
また、以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0069】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域などは、発明を明瞭化するために誇張または省略されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0070】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲などにおいて序数詞が付される場合がある。
【0071】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の構成について、
図1および
図18を参照しながら説明する。
【0072】
図1は本発明の一態様の半導体装置の構成を説明する図である。
図1Aは本発明の一態様の半導体装置のブロック図であり、
図1Bは
図1Aの一部である。
【0073】
図18は本発明の一態様の半導体装置の構成を説明する図である。
図18Aは本発明の一態様の半導体装置の斜視図であり、
図18Bは
図18Aの積層構造を説明する分解図である。
【0074】
なお、本明細書において、1以上の整数を値にとる変数を符号に用いる場合がある。例えば、1以上の整数の値をとる変数pを含む(p)を、最大p個の構成要素のいずれかを特定する符号の一部に用いる場合がある。また、例えば、1以上の整数の値をとる変数mおよび変数nを含む(m,n)を、最大m×n個の構成要素のいずれかを特定する符号の一部に用いる場合がある。
【0075】
<半導体装置700の構成例1.>
本実施の形態で説明する半導体装置700は、検知部702と、記憶部701Aと、記憶部701Bと、判定部703と、を有する(
図1A参照)。
【0076】
《検知部702の構成例1.》
検知部702は、検知信号DS(i)を供給する。例えば、電圧検知器、電流検知器、温度検知器またはタイマーなどを、検知部702に用いることができる。例えば、電圧、電流または温度などの情報を含む信号を、検知信号DS(i)に用いることができる。また、例えば、アナログ信号を検知信号DS(i)に用いることができる。
【0077】
《記憶部701Aの構成例1.》
記憶部701Aは検知信号DS(i)を保持する。
【0078】
《記憶部701Bの構成例1.》
記憶部701Bは、標準データDATAおよび許容差情報TIを保持する。例えば、電気的に接続された負荷の平均的な特性を標準データDATAに用いることができる。または、使用回数毎に異なる特性を、標準データDATAに用いることができる。または、使用履歴に依存して変化する特性を、標準データDATAに用いることができる。または、直前の使用時に検知した特性を標準データDATAに用いることができる。
【0079】
また、例えば、記憶部701Aに用いる記憶素子と同様の構成の記憶素子を、記憶部701Bに用いることができる。具体的には、実施の形態2において説明する記憶素子を記憶部701Bに用いることができる。また、フラッシュメモリを記憶部701Bに用いることができる。
【0080】
《判定部703の構成例1.》
判定部703は、検知信号DS(i)を標準データDATAと比較する。また、判定部703は、検知信号DS(i)および標準データDATAの間に、許容差情報TIを超える乖離がある場合、制御信号CI1を供給する。例えば、コンパレータを判定部703に用いることができる。具体的には、実施の形態2において説明する比較回路103と同様の構成の比較回路を、判定部703に用いることができる。
【0081】
これにより、検知信号DS(i)が、標準データDATAから逸脱した信号か否かを判断することができる。または、異常を検知することができる。または、異常を検知して制御信号CI1を供給することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0082】
<半導体装置700の構成例2.>
また、本実施の形態で説明する半導体装置700は、制御部705を有する(
図1A参照)。
【0083】
《制御部705の構成例1.》
制御部705は選択信号CI2を供給する。
【0084】
《記憶部701Aの構成例2.》
記憶部701Aは、一群の記憶素子701A(1)乃至記憶素子701A(n)および選択回路SCを備える(
図1B参照)。
【0085】
一群の記憶素子701A(1)乃至記憶素子701A(n)は、記憶素子701A(i)を含み、記憶素子701A(i)は、検知信号DS(i)を保持する。
【0086】
《選択回路SCの構成例1.》
選択回路SCは、選択信号CI2に基づいて、記憶素子701A(i)を選択する。
【0087】
これにより、第1の記憶部701Aは、例えば、複数回のサンプリングによって得た、複数の検知信号DS(1)乃至検知信号DS(n)を保持することができる。または、例えば、電圧、電流および温度等、複数の異なる事象を検知して得た、複数の検知信号DS(1)乃至検知信号DS(n)を保持することができる。または、連続して変化する複数の検知信号を保持することができる。または、例えば、継時的に変化する検知信号を検知時刻の情報と共に保持することができる。または、損耗に伴い変化する検知信号DS(i)を使用履歴の情報と共に保持することができる。または、複数の検知信号DS(1)乃至検知信号DS(n)と標準データDATA(i)の間に、許容差情報TIを超える乖離があるか否かを判断することができる。または、許容差情報TIを超える乖離を検知して制御信号CI1を供給することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0088】
《選択回路SCの構成例2.》
選択回路SCは、開閉器SWを備える。
【0089】
これにより、例えば、記憶素子701A(1)乃至記憶素子701A(n)から一を選択することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0090】
《選択回路SCの構成例3.》
選択回路SCは、ソース・フォロワ回路SFを備える。
【0091】
これにより、例えば、記憶素子701A(1)乃至記憶素子701A(n)から一を選択することができる。または、選択動作に伴うアナログデータDATA(i)の劣化を抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0092】
《記憶素子701A(i)の構成例3.》
記憶素子701A(i)は、半導体層260を備え、半導体層260が、酸化物半導体を含む、上記の半導体装置である。例えば、実施の形態3において説明する金属酸化物を、半導体層260に用いることができる。
【0093】
これにより、例えば、検知信号DS(i)を保持することができる。または、検知信号DS(i)を繰り返し書き換えることができる。または、書き換えに伴う記憶素子701A(i)の劣化を低減することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0094】
<半導体装置700の構成例3.>
また、本実施の形態で説明する半導体装置700は、集積回路750および集積回路760を含む(
図18参照)。
【0095】
《集積回路750の構成例》
集積回路750は判定部703を含む(
図18B参照)。例えば、Siトランジスタを集積回路750に用いることができる。これにより、集積回路750に用いるトランジスタの電流駆動能力を高めることができる。または、動作速度を高めることができる。なお、例えば、実施の形態3において説明する集積回路150の構成を、集積回路750に用いることができる。
【0096】
《集積回路760の構成例》
集積回路760は記憶素子701A(i)を含む。例えば、酸化物半導体を備えるトランジスタを集積回路760に用いることができる。これにより、繰り返し書き換えることができる記憶素子を、集積回路760に含めることができる。
【0097】
集積回路760は集積回路750と重なる領域を備え、集積回路760は集積回路750と電気的に接続される。これにより、半導体装置700の専有面積を小さくすることができる。なお、例えば、実施の形態3において説明する集積回路160と同様の構成を、集積回路760に用いることができる。
【0098】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0099】
(実施の形態2)
本発明の一態様の半導体装置100の構成例および動作例について、図面を用いて説明する。
図17は半導体装置100を説明するためのブロック図である。
【0100】
<構成例>
半導体装置100は、記憶素子101、記憶素子102、比較回路103、電流調整回路104、制御回路105、および入出力回路106を有する。半導体装置100は、二次電池200と電気的に接続され、二次電池200を充電する機能を有する。
【0101】
〔記憶素子101〕
記憶素子101は、1以上の記憶素子を有する。本実施の形態では、記憶素子101が、3つの記憶素子(記憶素子101_1、記憶素子101_2、および記憶素子101_3)を有する場合を示している。
【0102】
記憶素子101には、充電時の環境温度によって充電電流を変化させるための情報(電位または電荷)が保持される。本実施の形態では、記憶素子101_1、記憶素子101_2、および記憶素子101_3のそれぞれに、判断基準となる温度に相当する情報(「基準温度情報」ともいう。)が保持される。
【0103】
記憶素子101に用いることができる回路構成例を
図2A乃至
図2Gに示す。
図2A乃至
図2Gは、それぞれが記憶素子として機能する。
図2Aに示す記憶素子410は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。記憶素子410は、1つのトランジスタと1つの容量素子を有する記憶素子である。
【0104】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BLと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM1の第1端子と容量素子CAの第1端子が電気的に接続される節点をノードNDという。
【0105】
実際のトランジスタにおいて、ゲートとバックゲートは、半導体層のチャネル形成領域を介して互いに重なるように設けられる。ゲートとバックゲートは、どちらもゲートとして機能できる。よって、一方を「バックゲート」という場合、他方を「ゲート」または「フロントゲート」という場合がある。また、一方を「第1ゲート」、他方を「第2ゲート」という場合がある。
【0106】
バックゲートは、ゲートと同電位としてもよいし、接地電位や、任意の電位としてもよい。また、バックゲートの電位をゲートと連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0107】
バックゲートを設けることで、更には、ゲートとバックゲートを同電位とすることで、半導体層においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタのオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
【0108】
したがって、トランジスタを占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタにすることができる。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0109】
配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0110】
データの書き込みおよび読み出しは、配線WLに高レベル電位を印加し、トランジスタM1を導通状態にし、配線BLとノードNDを電気的に接続することによって行われる。
【0111】
配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。配線CALには、固定電位を印加するのが好ましい。
【0112】
図2Bに示す記憶素子420は、記憶素子410の変形例である。記憶素子420では、トランジスタM1のバックゲートが、配線WLと電気的に接続される。このような構成にすることによって、トランジスタM1のバックゲートに、トランジスタM1のゲートと同じ電位を印加することができる。よって、トランジスタM1が導通状態のときにおいて、トランジスタM1に流れる電流を増加することができる。
【0113】
また、
図2Cに示す記憶素子430のように、トランジスタM1をシングルゲート構造のトランジスタ(バックゲートを有さないトランジスタ)としてもよい。記憶素子430は、記憶素子410および記憶素子420のトランジスタM1からバックゲートを除いた構成となっている。よって、記憶素子430は、記憶素子410、および記憶素子420よりも作製工程を短縮することができる。
【0114】
記憶素子410、記憶素子420、および記憶素子430は、DRAM型の記憶素子である。
【0115】
トランジスタM1のチャネルが形成される半導体層には、金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることが好ましい。本明細書などでは、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を含むトランジスタを「OSトランジスタ」ともいう。
【0116】
例えば、酸化物半導体として、インジウム、元素M(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)、亜鉛のいずれか一つを有する金属酸化物を用いることができる。特に、酸化物半導体は、インジウム、ガリウム、亜鉛を含む金属酸化物であることが好ましい。
【0117】
OSトランジスタは、オフ電流が極めて少ないという特性を有している。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができる。よって、記憶素子のリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、記憶素子のリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、記憶素子410、記憶素子420、記憶素子430において多値データ、またはアナログデータを保持することができる。
【0118】
本明細書などでは、OSトランジスタを用いたDRAMを、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)という。
【0119】
図2Dに、2つのトランジスタと1つの容量素子で構成するゲインセル型の記憶素子の回路構成例を示す。記憶素子440は、トランジスタM1と、トランジスタM2と、容量素子CAと、を有する。
【0120】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WWLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM2の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線RWLと接続され、トランジスタM2のゲートは、容量素子CAの第1端子と接続されている。トランジスタM1の第1端子と、容量素子CAの第1端子と、トランジスタM2のゲートと、が電気的に接続される節点をノードNDという。
【0121】
ビット線WBLは、書き込みビット線として機能し、ビット線RBLは、読み出しビット線として機能し、ワード線WWLは、書き込みワード線として機能し、ワード線RWLは、読み出しワード線として機能する。トランジスタM1は、ノードNDとビット線WBLとを、導通または非導通とするスイッチとしての機能を有する。
【0122】
トランジスタM1にOSトランジスタを用いることが好ましい。前述したとおり、OSトランジスタはオフ電流が非常に少ないため、トランジスタM1にOSトランジスタを用いることで、ノードNDに書き込んだ電位を長時間保持することができる。つまり、記憶素子に書き込んだデータを長時間保持することができる。
【0123】
トランジスタM2に用いるトランジスタに特段の限定は無い。トランジスタM2として、OSトランジスタ、Siトランジスタ(半導体層にシリコンを用いたトランジスタ。)、またはその他のトランジスタを用いてもよい。
【0124】
なお、トランジスタM2にSiトランジスタを用いる場合、半導体層に用いるシリコンは、非晶質シリコン、多結晶シリコン、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)、または単結晶シリコンとすればよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合があるため、読み出しトランジスタとして、Siトランジスタを用いると、読み出し時の動作速度を高めることができる。
【0125】
トランジスタM1にOSトランジスタを用い、トランジスタM2にSiトランジスタを用いる場合、両者を異なる層に積層して設けてもよい。OSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置および同様のプロセスで作製することが可能である。よって、OSトランジスタとSiトランジスタの混載(ハイブリッド化)が容易であり、高集積化も容易である。
【0126】
また、トランジスタM2にOSトランジスタを用いると、非選択時のリーク電流を極めて少なくすることができるため、読み出し精度を高めることができる。トランジスタM1およびトランジスタM2の両方にOSトランジスタを用いることで、半導体装置の作製工程が低減され、生産性を高めることができる。例えば、400℃以下のプロセス温度で半導体装置を作製することもできる。
【0127】
トランジスタM1およびトランジスタM2にバックゲートを有するトランジスタ(4端子型のトランジスタ。「4端子素子」ともいう。)を用いる場合の回路構成例を
図2E乃至
図2Gに示す。
図2Eに示す記憶素子450、
図2Fに示す記憶素子460、および
図2Gに示す記憶素子470は、記憶素子440の変形例である。
【0128】
図2Eに示す記憶素子450では、トランジスタM1のゲートとバックゲートが電気的に接続されている。また、トランジスタM2のゲートとバックゲートが電気的に接続されている。
【0129】
図2Fに示す記憶素子460では、トランジスタM1のバックゲート、およびトランジスタM2のバックゲートを配線BGLと電気的に接続している。配線BGLを介して、トランジスタM1およびトランジスタM2のバックゲートに所定の電位を印加することができる。
【0130】
図2Gに示す記憶素子470では、トランジスタM1のバックゲートが配線WBGLと電気的に接続され、トランジスタM2のバックゲートが配線RBGLと電気的に接続されている。トランジスタM1のバックゲートとトランジスタM2のバックゲートをそれぞれ異なる配線に接続することで、それぞれ独立してしきい値電圧を変化させることができる。
【0131】
記憶素子440乃至記憶素子470は、2Tr1C型のメモリセルである。本明細書などにおいて、トランジスタM1にOSトランジスタを用いて、2Tr1C型のメモリセルを構成した記憶装置をNOSRAM(Non-volatile Oxide Semiconductor Random Access Memory)という。また、記憶素子440乃至記憶素子470は、ノードNDの電位をトランジスタM12で増幅して読みだすことができる。また、OSトランジスタはオフ電流が非常に少ないため、ノードNDの電位を長期間保持することができる。また、読み出し動作を行ってもノードNDの電位が保持される非破壊読み出しを行うことができる。
【0132】
記憶素子101に保持されている情報は、書き換え頻度が少ない情報である。よって、記憶素子101としては、情報の非破壊読み出しが可能かつ長期保持が可能であるNOSRAMを用いることが好ましい。
【0133】
また、
図2A、
図2B、(E)乃至(G)に示したトランジスタは、4端子素子であるため、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)特性を利用したMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、ReRAM(Resistive Random Access Memory)、相変化メモリ(Phase-change memory)などに代表される2端子素子と比較して、入出力の独立制御が簡便に行うことができるといった特徴を有する。
【0134】
また、MRAM、ReRAM、相変化メモリは、情報の書き換えの際に、原子レベルで構造変化が生じる場合がある。一方で、本発明の一態様の記憶装置は、情報の書き換えの際にトランジスタを介した電荷のチャージ、またはディスチャージにより動作するため、繰り返し書き換え耐性に優れ、構造変化も少ないといった特徴を有する。
【0135】
〔記憶素子102〕
記憶素子102も記憶素子101と同様の記憶素子を用いることができる。記憶素子102はDOSRAMまたはNOARAMを用いることが好ましい。
【0136】
ここで、トランジスタの電気特性の1つであるId-Vg特性の温度依存性について説明しておく。
図3Aおよび
図3Bに、トランジスタの電気特性の1つであるId-Vg特性の一例を示す。Id-Vg特性は、ゲート電圧(Vg)の変化に対するドレイン電流(Id)の変化を示す。
図3Aおよび
図3Bの横軸は、Vgをリニアスケールで示している。また、
図3Aおよび
図3Bの縦軸は、Idをログスケールで示している。
【0137】
図3Aは、OSトランジスタのId-Vg特性を示している。
図3Bは、チャネルが形成される半導体層にシリコンを用いたトランジスタ(Siトランジスタ)のId-Vg特性を示している。なお、
図3Aおよび
図3Bは、どちらもnチャネル型トランジスタのId-Vg特性である。
【0138】
図3Aに示すように、OSトランジスタは高温環境下の動作においてもオフ電流が増加しにくい。OSトランジスタは動作温度が125℃以上150℃以下であっても10桁以上のオン/オフ比が実現できる。一方で、
図3Bに示すように、Siトランジスタは、温度の上昇と共に、オフ電流が増加する。また、Siトランジスタは、温度の上昇と共にVthがプラス方向にシフトし、オン電流が低下する。
【0139】
トランジスタM1にOSトランジスタを用いることで、高温下の動作においても長期間の情報保持が実現できる。
【0140】
また、酸化物半導体は、温度が上昇すると抵抗値が小さくなる性質を有する。この性質を利用して、環境温度を電位に変換することができる。例えば、
図2Cに示す記憶素子430を用いる場合、始めにトランジスタM1をオン状態にして配線BLに0Vを供給し、ノードNDに0Vを書き込む。次に、配線BLにVDDを供給し、一定時間後にトランジスタM1をオフ状態にする。酸化物半導体は、温度によって抵抗値が変化する。よって、測定時の環境温度に対応した電位(「環境温度情報」ともいう。)がノードNDに保持される。また、環境温度が高いほど、ノードNDに保持される電位が高くなる。
【0141】
このように、記憶素子102は温度センサとして機能できる。酸化物半導体を用いることで、記憶素子101と記憶素子102を同一工程で同時に作製することができる。また、別途サーミスタなどの温度センサを設ける必要がないため、半導体装置100の生産性を高めることができる。
【0142】
〔比較回路103〕
比較回路103は、記憶素子101に保持されている温度情報と、記憶素子102に保持されている環境温度を比較して、電流調整回路の動作を決定する機能を有する。具体的には、記憶素子101のノードNDの電位と、記憶素子102のノードNDの電位を比較する。比較回路103は、コンパレータなどにより構成することができる。
【0143】
〔電流調整回路104〕
電流調整回路104は、比較回路103から供給される信号によって、二次電池200に供給する電流値を制御する機能を有する。電流調整回路104は、パワートランジスタなどにより構成することができる。
【0144】
〔制御回路105、入出力回路106〕
制御回路105は、記憶素子101、記憶素子102、比較回路103、電流調整回路104、および入出力回路106の動作を統括的に制御する機能を有する。また、制御回路105には、入出力回路106を介して、外部より制御信号や記憶素子101の設定情報などが供給される。また、制御回路105は、二次電池200の充電電圧、電流調整回路104から出力される電流値、および記憶素子102で取得した環境温度情報などを、入出力回路106を介して外部に出力する機能を有する。
【0145】
<動作例>
次に、半導体装置100を用いた二次電池200の充電動作の一例について説明する。
【0146】
〔充電方法〕
二次電池の充電は、例えば下記のように行うことができる。
【0147】
[CC充電]
まず、充電方法の1つとしてCC充電について説明する。CC充電は、充電期間のすべてで一定の電流を二次電池に流し、所定の電圧になったときに充電を停止する充電方法である。二次電池を、
図4Aに示すように内部抵抗Rと二次電池容量Cの等価回路と仮定する。この場合、二次電池電圧V
Bは、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rと二次電池容量Cにかかる電圧V
Cの和である。
【0148】
CC充電を行っている間は、
図4Aに示すように、スイッチがオンになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、V
R=R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rも一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cは、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧V
Bは、時間の経過とともに上昇する。
【0149】
そして二次電池電圧V
Bが所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、充電を停止する。CC充電を停止すると、
図4Bに示すように、スイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが0Vとなる。そのため、二次電池電圧V
Bが下降する。
【0150】
CC充電を行っている間と、CC充電を停止してからの、二次電池電圧V
Bと充電電流の例を
図4Cに示す。CC充電を行っている間は上昇していた二次電池電圧V
Bが、CC充電を停止してから若干低下する様子が示されている。
【0151】
[CCCV充電]
次に、上記と異なる充電方法であるCCCV充電について説明する。CCCV充電は、まずCC充電にて所定の電圧まで充電を行い、その後CV(定電圧)充電にて流れる電流が少なくなるまで、具体的には終止電流値になるまで充電を行う充電方法である。
【0152】
CC充電を行っている間は、
図5Aに示すように、定電流電源のスイッチがオン、定電圧電源のスイッチがオフになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、V
R=R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rも一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cは、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧V
Bは、時間の経過とともに上昇する。
【0153】
そして二次電池電圧V
Bが所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、CC充電からCV充電に切り替える。CV充電を行っている間は、
図5Bに示すように、定電圧電源のスイッチがオン、定電流電源のスイッチがオフになり、二次電池電圧V
Bが一定となる。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cは、時間の経過とともに上昇する。V
B=V
R+V
Cであるため、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rは、時間の経過とともに小さくなる。内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが小さくなるに従い、V
R=R×Iのオームの法則により、二次電池に流れる電流Iも小さくなる。
【0154】
そして二次電池に流れる電流Iが所定の電流、例えば0.01C相当の電流となったとき、充電を停止する。CCCV充電を停止すると、
図5Cに示すように、全てのスイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが0Vとなる。しかし、CV充電により内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが十分に小さくなっているため、内部抵抗Rでの電圧降下がなくなっても、二次電池電圧V
Bはほとんど降下しない。
【0155】
CCCV充電を行っている間と、CCCV充電を停止してからの、二次電池電圧V
Bと充電電流の例を
図5Dに示す。CCCV充電を停止しても、二次電池電圧V
Bがほとんど降下しない様子が示されている。
【0156】
[充電レートについて]
ここで、充電レートについて説明しておく。充電レートとは、電池容量に対する充電電流の相対的な比率であり、単位Cで表される。定格容量X[Ah]の電池において、1C相当の電流は、X[A]である。2X[A]の電流で充電した場合は、2Cで充電したといい、X/5[A]の電流で充電した場合は、0.2Cで充電したという。
【0157】
〔充電動作例〕
一般に、二次電池の充電条件は、二次電池に含まれる正極、負極、および電解液の構成材料によって異なる。本実施の形態では、半導体装置100が表1に示す充電条件で、二次電池200に対してCC充電を行なう例を説明する。
【0158】
【0159】
図6は、半導体装置100の充電動作を説明するフローチャートである。
図7Aは、環境温度と充電電流の関係を説明する図である。また、
図7Aでは、0℃未満の温度域P0、0℃以上10℃未満の温度域P1、10℃以上45℃未満の温度域P2、45℃以上の温度域P3を示している。
【0160】
まず、環境温度Tpを取得する(ステップS501)。
【0161】
次に、記憶素子101_1に保持されている温度条件T1と環境温度Tpを比較する(ステップS502)。環境温度Tpが温度条件T1よりも低い場合は、二次電池200が温度域P0にあると判断し、二次電池200の充電を停止(電流の供給を停止)する(ステップS505)。
【0162】
環境温度Tpが温度条件T1よりも高い場合は、記憶素子101_2に保持されている温度条件T2と環境温度Tpを比較する(ステップS503)。環境温度Tpが温度条件T2よりも低い場合は、二次電池200が温度域P1にあると判断し、電流ILを二次電池200に供給する(ステップS511)。本実施の形態では、電流ILは充電レート0.25Cに相当する電流である。よって、電流ILは750mAである。
【0163】
環境温度Tpが温度条件T2よりも高い場合は、記憶素子101_3に保持されている温度条件T3と環境温度Tpを比較する(ステップS504)。環境温度Tpが温度条件T3よりも低い場合は、二次電池200が温度域P2にあると判断し、電流ISDを二次電池200に供給する(ステップS512)。本実施の形態では、電流ISDは充電レート0.5Cに相当する電流である。よって、電流ISDは1500mAである。
【0164】
環境温度Tpが温度条件T3よりも高い場合は、二次電池200が温度域P3にあると判断し、二次電池200の充電を停止(電流の供給を停止)する(ステップS505)。
【0165】
続いて、ステップS505、ステップS511、またはステップS512の状態を一定時間維持する(ステップS506)。
【0166】
一定時間経過後、二次電池200の電圧が充電最大電圧未満か否かを判断する。本実施の形態では、二次電池200の電圧が4.3V未満か否かを判断する。二次電池200の電圧が充電最大電圧未満の場合は、ステップS501に戻る(ステップS507)。二次電池200の電圧が充電最大電圧以上の場合は、充電動作を終了する。
【0167】
なお、CCCV充電を行なう場合は、この後CV充電を行なえばよい。
【0168】
環境温度が低い(本実施の形態では10℃未満)状態では、負極材料とLiの反応速度が低下し、Li析出が生じやすくなる。Li析出は、電池容量の低下や、内部ショートによる発火事故の一因となる場合がある。よって、充電電流を小さくすることが好ましい。さらに、環境温度が低過ぎる(本実施の形態では0℃未満)場合は、充電電流の供給を停止する。
【0169】
また、環境温度が高過ぎる(本実施の形態では45℃以上)状態で充電すると、電解液の酸化分解や、正極材料からの金属成分の溶出が促進され、電池容量低下の一因となる場合がある。
【0170】
充電電流を環境温度に応じて調節することにより、二次電池の劣化を防ぎ、より安全に充電することができる。
【0171】
また、
図7Bでは、0℃未満の温度域P0、0℃以上10℃未満の温度域P1、10℃以上25℃未満の温度域P2、25℃以上45℃未満の温度域P3、45℃以上の温度域P4を示している。
【0172】
図7Bに示すように、特定の温度域で、環境温度と充電電流を連続的に変化させてもよい。
図7Bでは、温度域P2において、環境温度に合わせて充電電流を連続的に変化させる例を示している。このように制御することで、二次電池200の充電時間を短縮することができる。
【0173】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0174】
(実施の形態3)
比較回路103、電流調整回路104、制御回路105、および入出力回路106には、高い電流駆動能力および/または高速動作が求められる場合がある。この場合、比較回路103、電流調整回路104、制御回路105、および入出力回路106にSiトランジスタを用いることが好ましい。
【0175】
また、上記実施の形態で説明したように、記憶素子101および記憶素子102には、OSトランジスタを用いることが好ましい。
【0176】
OSトランジスタとSiトランジスタは積層して設けることができる。例えば、半導体装置100として、比較回路103、電流調整回路104、制御回路105、および入出力回路106を含む集積回路150上に、記憶素子101および記憶素子102を含む集積回路160を設けてもよい。各種回路を積層して設けることで、半導体装置100の小型化を実現できる。言い換えると、半導体装置100の占有面積を小さくすることができる。
【0177】
<断面構成例>
図8Aは、集積回路150と集積回路160を含む半導体装置100の斜視図である。また、
図8Bは、集積回路150と集積回路160の位置関係をわかりやすく示すための図である。
図9は、半導体装置100の一部の断面図である。
【0178】
〔集積回路150〕
図9において、集積回路150は、基板231上にトランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cを有する。
図9では、トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cのチャネル長方向の断面を示している。
【0179】
トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cのチャネルは、基板231の一部に形成される。集積回路に高速動作が求められる場合は、基板231として単結晶半導体基板を用いることが好ましい。
【0180】
トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233cは、素子分離層232によって他のトランジスタと電気的に分離される。素子分離層の形成は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法や、STI(Shallow Trench Isolation)法などを用いることができる。
【0181】
また、トランジスタ233a、トランジスタ233b、およびトランジスタ233c上に絶縁層234、絶縁層235、絶縁層237が設けられ、絶縁層237中に電極238が埋設されている。電極238はコンタクトプラグ236を介してトランジスタ233aのソースまたはドレインの一方と電気的に接続されている。
【0182】
また、電極238および絶縁層237の上に、絶縁層239、絶縁層240、および絶縁層241が設けられ、絶縁層239、絶縁層240、および絶縁層241の中に電極242が埋設されている。電極242は、電極238と電気的に接続される。
【0183】
また、電極242および絶縁層241の上に、絶縁層243、および絶縁層244が設けられ、絶縁層243、および絶縁層244の中に電極245が埋設されている。電極245は、電極242と電気的に接続される。
【0184】
また、電極245および絶縁層244の上に、絶縁層246および絶縁層247が設けられ、絶縁層246および絶縁層247の中に電極249が埋設されている。電極249は、電極245と電気的に接続される。
【0185】
また、電極249および絶縁層247の上に、絶縁層248および絶縁層250が設けられ、絶縁層248および絶縁層250の中に電極251が埋設されている。電極251は、電極249と電気的に接続される。
【0186】
〔集積回路160〕
集積回路160は、集積回路150上に設けられる。
図9において、集積回路160は、トランジスタ210、および容量素子220を有する。
図9では、トランジスタ210のチャネル長方向の断面を示している。また、トランジスタ210は、バックゲートを有するトランジスタである。
【0187】
トランジスタ210の半導体層に、金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることが好ましい。すなわち、トランジスタ210にOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0188】
トランジスタ210は、絶縁層361上に設けられている。また、絶縁層361上に絶縁層362が設けられている。トランジスタ210のバックゲートは、絶縁層362中に埋設されている。絶縁層362上に、絶縁層371および絶縁層380が設けられている。トランジスタ210のゲートは、絶縁層380中に埋設されている。
【0189】
また、絶縁層380上に絶縁層374および絶縁層381が設けられている。また、絶縁層361、絶縁層362、絶縁層365、絶縁層366、絶縁層371、絶縁層380、絶縁層374、および絶縁層381中に電極355が埋設されている。電極355は、電極251と電気的に接続される。電極355は、コンタクトプラグとして機能できる。
【0190】
また、絶縁層381上に電極152が設けられている。電極152は電極355と電気的に接続される。また、絶縁層381および電極152上に、絶縁層114、絶縁層115、絶縁層130が設けられている。
【0191】
容量素子220は、絶縁層114および絶縁層115に形成された開口中に配置された電極110と、電極110および絶縁層115上の絶縁層130と、絶縁層130上の電極120と、を有する。絶縁層114および絶縁層115に形成された開口の中に、電極110の少なくとも一部、絶縁層130の少なくとも一部、および電極120の少なくとも一部が配置される。
【0192】
電極110は容量素子220の下部電極として機能し、電極120は容量素子220の上部電極として機能し、絶縁層130は、容量素子220の誘電体として機能する。容量素子220は、絶縁層114および絶縁層115の開口において、底面だけでなく、側面においても上部電極と下部電極とが誘電体を挟んで対向する構成となっており、単位面積当たりの静電容量を大きくすることができる。よって、当該開口を深くするほど、容量素子220の静電容量を大きくすることができる。このように容量素子220の単位面積当たりの静電容量を大きくすることにより、半導体装置の微細化または高集積化を推し進めることができる。
【0193】
絶縁層114および絶縁層115に形成された開口を上面から見た形状は、四角形としてもよいし、四角形以外の多角形状としてもよいし、多角形状において角部を湾曲させた形状としてもよいし、楕円を含む円形状としてもよい。
【0194】
また、絶縁層130および電極120上に、絶縁層116および絶縁層154を有する。また、絶縁層114、絶縁層115、絶縁層130、絶縁層116、および絶縁層154中に電極112が埋設されている。電極112は、電極152と電気的に接続される。電極112は、コンタクトプラグとして機能できる。また、絶縁層154上に電極153が設けられている。電極153は電極112と電気的に接続される。
【0195】
また、絶縁層154および電極153上に、絶縁層156が設けられている。
【0196】
[変形例1]
図10に半導体装置100の変形例である半導体装置100Aを示す。半導体装置100Aは、集積回路150Aと集積回路160を重ねて設けている。集積回路150Aは、集積回路150に含まれるトランジスタ233aおよびトランジスタ233bなどのトランジスタにOSトランジスタを用いている。半導体装置100Aに含まれるトランジスタを全てOSトランジスタとすることで、半導体装置100Aを単極性の集積回路にすることができる。
【0197】
[変形例2]
図11に半導体装置100Aの変形例である半導体装置100Bを示す。半導体装置100に含まれるトランジスタを全てOSトランジスタとする場合は、集積回路150Aと集積回路160を基板231上に同一工程で作製することができる。よって、半導体装置の生産性を高めることができる。また、半導体装置の生産コストを低減することができる。
【0198】
また、基板231にシリコン基板などの熱伝導率の高い基板を用いると、絶縁性基板などを用いた場合よりも半導体装置の冷却効率を高めることができる。よって、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0199】
<構成材料について>
例えば、基板、絶縁層、導電層、半導体層、金属酸化物などを、半導体装置に用いることができる。
【0200】
〔基板〕
基板として用いる材料に大きな制限はない。例えば、絶縁体基板、半導体基板、または導電体基板を用いればよい。
【0201】
絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。
【0202】
また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムを材料とした半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いてもよい。
【0203】
前述したように、集積回路に高速動作が求められる場合は、基板として単結晶半導体基板を用いることが好ましい。
【0204】
導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。半導体基板上に歪トランジスタやFIN型トランジスタなどの半導体素子が設けられたものなどを用いることもできる。すなわち、基板は、単なる支持基板に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。
【0205】
〔絶縁層〕
絶縁層に用いる材料としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0206】
例えば、トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁層の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁層として機能する絶縁層に、high-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながらトランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。一方、層間絶縁層として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁層の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0207】
また、比誘電率の高い絶縁物としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0208】
また、比誘電率が低い絶縁物としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などがある。
【0209】
また、トランジスタとしてOSトランジスタを用いる場合は、当該トランジスタを水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層(絶縁層365、および絶縁層371など)で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、またはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどの金属窒化物を用いることができる。
【0210】
また、ゲート絶縁層として機能する絶縁層は、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する絶縁体であることが好ましい。例えば、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを半導体層260と接する構造とすることで、半導体層260が有する酸素欠損を補償することができる。
【0211】
なお、本明細書等において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0212】
また、半導体層として金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いる場合は、半導体層中の水素濃度の増加を防ぐために、絶縁層中の水素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の水素濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。特に、半導体層と接する絶縁層の水素濃度を低減することが好ましい。
【0213】
また、半導体層として金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いる場合は、半導体層中の窒素濃度の増加を防ぐために、絶縁層中の窒素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁層中の窒素濃度を、SIMSにおいて5×1019atoms/cm3以下、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0214】
また、絶縁層の少なくとも半導体層と接する領域は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが少ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察されるE’センターが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダングリングボンドに起因する。例えば、絶縁層として、酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を用いる場合、E’センター起因のスピン密度が、3×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下である酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を用いればよい。
【0215】
また、上述のシグナル以外に二酸化窒素(NO2)に起因するシグナルが観察される場合がある。当該シグナルは、Nの核スピンにより3つのシグナルに分裂しており、それぞれのg値が2.037以上2.039以下(第1のシグナルとする)、g値が2.001以上2.003以下(第2のシグナルとする)、およびg値が1.964以上1.966以下(第3のシグナルとする)に観察される。
【0216】
例えば、絶縁層として、二酸化窒素(NO2)に起因するシグナルのスピン密度が、1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未満である絶縁層を用いると好適である。
【0217】
なお、二酸化窒素(NO2)を含む窒素酸化物(NOx)は、絶縁層中に準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体層のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物(NOx)が、絶縁層と酸化物半導体層の界面に拡散すると、当該準位が絶縁層側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁層と酸化物半導体層の界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。したがって、絶縁層および絶縁層として窒素酸化物の含有量が少ない膜を用いると、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することができる。
【0218】
窒素酸化物(NOx)の放出量が少ない絶縁層としては、例えば、酸化窒化シリコン層を用いることができる。当該酸化窒化シリコン層は、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒素酸化物(NOx)の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下である。なお、上記のアンモニアの放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。
【0219】
窒素酸化物(NOx)は、加熱処理においてアンモニアおよび酸素と反応するため、アンモニアの放出量が多い絶縁層を用いることで窒素酸化物(NOx)が低減される。
【0220】
また、酸化物半導体層に接する絶縁層のうち少なくとも1つは、加熱により酸素が放出される絶縁層を用いて形成することが好ましい。具体的には、絶縁層の表面温度が100℃以上700℃以下、好ましくは100℃以上500℃以下の加熱処理で行われるTDSにて、酸素原子に換算した酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、1.0×1019atoms/cm3以上、または1.0×1020atoms/cm3以上である絶縁層を用いることが好ましい。なお、本明細書などにおいて、加熱により放出される酸素を「過剰酸素」ともいう。
【0221】
また、過剰酸素を含む絶縁層は、絶縁層に酸素を添加する処理を行って形成することもできる。酸素を添加する処理は、酸化性雰囲気下における熱処理やプラズマ処理などで行なうことができる。または、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いて酸素を添加してもよい。酸素を添加する処理に用いるガスとしては、16O2もしくは18O2などの酸素ガス、亜酸化窒素ガス、またはオゾンガスなどの、酸素を含むガスが挙げられる。なお、本明細書では酸素を添加する処理を「酸素ドープ処理」ともいう。酸素ドープ処理は、基板を加熱して行なってもよい。
【0222】
また、絶縁層として、ポリイミド、アクリル系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ系樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low-k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0223】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi-O-Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
【0224】
絶縁層の形成方法は、特に限定されない。なお、絶縁層に用いる材料によっては焼成工程が必要な場合がある。この場合、絶縁層の焼成工程と他の熱処理工程を兼ねることで、効率よくトランジスタを作製することが可能となる。
【0225】
絶縁層の形成方法は、特に限定されない。なお、絶縁層に用いる材料によっては焼成工程が必要な場合がある。この場合、絶縁層の焼成工程と他の熱処理工程を兼ねることで、効率よくトランジスタを作製することが可能となる。
【0226】
〔導電層〕
導電層としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0227】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0228】
なお、半導体層として金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いる場合は、ゲート電極として機能する導電層には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0229】
特に、ゲート電極として機能する導電層として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0230】
なお、コンタクトプラグなどに用いる導電性材料としては、例えば、タングステン、ポリシリコン等の埋め込み性の高い導電性材料を用いればよい。また、埋め込み性の高い導電性材料と、チタン層、窒化チタン層、窒化タンタル層などのバリア層(拡散防止層)を組み合わせて用いてもよい。
【0231】
〔半導体層〕
半導体層として、単結晶半導体、多結晶半導体、微結晶半導体、または非晶質半導体などを、単体でまたは組み合わせて用いることができる。半導体材料としては、例えば、シリコンや、ゲルマニウムなどを用いることができる。また、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、酸化物半導体、窒化物半導体などの化合物半導体や、有機半導体などを用いることができる。
【0232】
また、半導体層として有機物半導体を用いる場合は、芳香環をもつ低分子有機材料やπ電子共役系導電性高分子などを用いることができる。例えば、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレンジイミド、テトラシアノキノジメタン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレンなどを用いることができる。
【0233】
なお、半導体層を積層してもよい。半導体層を積層する場合は、それぞれ異なる結晶状態を有する半導体を用いてもよいし、それぞれ異なる半導体材料を用いてもよい。
【0234】
また、金属酸化物の一種である酸化物半導体のバンドギャップは2eV以上あるため、半導体層に酸化物半導体を用いると、オフ電流が極めて少ないトランジスタを実現することができる。具体的には、ソースとドレイン間の電圧が3.5V、室温(代表的には25℃)下において、チャネル幅1μm当たりのオフ電流を1×10-20A未満、1×10-22A未満、あるいは1×10-24A未満とすることができる。すなわち、オンオフ比を20桁以上とすることもできる。また、半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタ(OSトランジスタ)は、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高い。よって、信頼性の良好なトランジスタを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧なトランジスタを提供できる。また、信頼性の良好な記憶装置などを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧な記憶装置を提供することができる。
【0235】
結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタよりも比較的高い移動度を得やすい。一方で、結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタのように極めて少ないオフ電流の実現が困難である。よって、半導体層に用いる半導体材料は、目的や用途に応じて適宜使い分けることが肝要である。例えば、目的や用途に応じて、OSトランジスタと結晶性Siトランジスタなどを組み合わせて用いてもよい。
【0236】
半導体層として酸化物半導体層を用いる場合は、酸化物半導体層をスパッタリング法で形成することが好ましい。酸化物半導体層は、スパッタリング法で形成すると酸化物半導体層の密度を高められるため、好適である。スパッタリング法で酸化物半導体層を形成する場合、スパッタリングガスには、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、または、希ガスおよび酸素の混合ガスを用いればよい。また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスや希ガスは、露点が-60℃以下、好ましくは-100℃以下にまで高純度化したガスを用いる。高純度化されたスパッタリングガスを用いて成膜することで、酸化物半導体層に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0237】
また、スパッタリング法で酸化物半導体層を形成する場合、スパッタリング装置が有する成膜室内の水分を可能な限り除去することが好ましい。例えば、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、成膜室内を高真空(5×10-7Paから1×10-4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、成膜室内のH2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10-4Pa以下とすることが好ましく、5×10-5Pa以下とすることがより好ましい。
【0238】
〔金属酸化物〕
金属酸化物に含まれる元素の組成を変化させることにより、導電体、半導体、絶縁体を作り分けることができる。導電体物性を有する金属酸化物を「導電性酸化物」という場合がある。半導体物性を有する金属酸化物を「酸化物半導体」という場合がある。絶縁体物性を有する金属酸化物を「絶縁性酸化物」という場合がある。
【0239】
金属酸化物の一種である酸化物半導体は、インジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0240】
ここで、酸化物半導体が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有する場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素として、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0241】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0242】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0243】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0244】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0245】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0246】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0247】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0248】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0249】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0250】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0251】
[金属酸化物を有するトランジスタ]
続いて、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合について説明する。
【0252】
なお、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0253】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。例えば、金属酸化物は、キャリア密度が8×1011cm-3未満、好ましくは1×1011cm-3未満、さらに好ましくは1×1010cm-3未満であり、1×10-9cm-3以上とすればよい。
【0254】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0255】
また、金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0256】
したがって、トランジスタの電気特性を安定にするためには、金属酸化物中の不純物濃度を低減することが有効である。また、金属酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0257】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0258】
また、金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0259】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。さらに、当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0260】
このため、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0261】
トランジスタの半導体に用いる金属酸化物として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性または信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶金属酸化物の薄膜または多結晶金属酸化物の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶金属酸化物の薄膜または多結晶金属酸化物の薄膜を基板上に形成するには、高温またはレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
【0262】
2009年に、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(CAAC-IGZOと呼ぶ。)が発見されたことが、非特許文献1および非特許文献2で報告されている。ここでは、CAAC-IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC-IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性および信頼性を有することが報告されている。
【0263】
また、2013年には、nc構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(nc-IGZOと呼ぶ。)が発見された(非特許文献3参照。)。ここでは、nc-IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
【0264】
非特許文献4および非特許文献5では、上記のCAAC-IGZO、nc-IGZO、および結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶サイズの結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC-IGZOの薄膜およびnc-IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC-IGZOの薄膜またはnc-IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
【0265】
金属酸化物を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10-24A/μm)オーダである、ことが非特許文献6に示されている。例えば、金属酸化物を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(非特許文献7参照。)。
【0266】
また、金属酸化物を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献8参照。)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
【0267】
CAAC構造およびnc構造の発見は、CAAC構造またはnc構造を有する金属酸化物を用いたトランジスタの電気特性および信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下およびスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置およびLSIへの応用研究が進められている。
【0268】
〔成膜方法について〕
絶縁層を形成するための絶縁性材料、導電層を形成するための導電性材料、または半導体層を形成するための半導体材料は、スパッタリング法、スピンコート法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(熱CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法、高密度プラズマCVD(High density plasma CVD)法、LPCVD(low pressure CVD)法、APCVD(atmospheric pressure CVD)法等を含む)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、または、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、または、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、ディップ法、スプレー塗布法、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)を用いて形成することができる。
【0269】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。MOCVD法、ALD法、または熱CVD法などの、成膜時にプラズマを用いない成膜方法を用いると、被形成面にダメージが生じにくい。例えば、記憶装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、記憶装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない成膜方法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、記憶装置の歩留まりを高くすることができる。また、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0270】
また、ALD法は、原子の性質である自己制御性を利用し、一層ずつ原子を堆積することができるので、極薄の成膜が可能、アスペクト比の高い構造への成膜が可能、ピンホールなどの欠陥の少ない成膜が可能、被覆性に優れた成膜が可能、低温での成膜が可能、などの効果がある。また、ALD法には、プラズマを利用するPEALD(Plasma Enhanced ALD)法も含まれる。プラズマを利用することで、より低温での成膜が可能となり好ましい場合がある。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
【0271】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0272】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間の分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、記憶装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0273】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0274】
(実施の形態4)
本実施の形態では、トランジスタ210に用いることができる、トランジスタ210Aおよびトランジスタ210Bの構成例について、図面を用いて説明する。
【0275】
<トランジスタの構造例1>
図12A、
図12Bおよび
図12Cを用いてトランジスタ210Aの構造例を説明する。
図12Aはトランジスタ210Aの上面図である。
図12Bは、
図12Aに一点鎖線で示すL1-L2部位の断面図である。
図12Cは、
図12Aに一点鎖線で示すW1-W2部位の断面図である。なお、
図12Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0276】
図12A、
図12Bおよび
図12Cでは、トランジスタ210Aと、層間絶縁層として機能する絶縁層361、絶縁層362、絶縁層365、絶縁層366、絶縁層371、絶縁層380、絶縁層374、および絶縁層381を示している。また、トランジスタ210Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能する導電層340(導電層340a、および導電層340b)を示している。なお、コンタクトプラグとして機能する導電層340の側面に接して絶縁層341(絶縁層341a、および絶縁層341b)が設けられる。
【0277】
層間絶縁層としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba,Sr)TiO3(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0278】
トランジスタ210Aは、第1のゲート電極として機能する導電層360(導電層360a、および導電層360b)と、第2のゲート電極として機能する導電層305(導電層305a、および導電層305b)と、第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁層349と、第2のゲート絶縁層として機能する絶縁層365および絶縁層366と、チャネルが形成される領域を有する半導体層260(半導体層260a、半導体層260b、および半導体層260c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電層342aと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電層342bと、絶縁層371とを有する。
【0279】
導電層305は、絶縁層362に埋め込まれるように配置され、絶縁層365は、絶縁層362および導電層305の上に配置されている。絶縁層366は絶縁層365の上に配置されている。また、半導体層260(半導体層260a、半導体層260b、および半導体層260c)は絶縁層366の上に配置されている。絶縁層349は半導体層260の上に配置され、導電層360(導電層360a、および導電層360b)は絶縁層349上に配置されている。
【0280】
導電層342aおよび導電層342bは、半導体層260bの上面の一部と接して配置され、絶縁層371は、絶縁層366の上面の一部、半導体層260aの側面、半導体層260bの側面、導電層342aの側面、導電層342aの上面、導電層342bの側面、および導電層342bの上面に接して配置されている。
【0281】
絶縁層341は、絶縁層380、絶縁層374、絶縁層381に形成された開口の側壁に接して設けられ、その側面に接して導電層340の第1の導電体が設けられ、さらに内側に導電層340の第2の導電体が設けられている。ここで、導電層340の上面の高さと、絶縁層381の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ210Aでは、導電層340の第1の導電体および導電層340の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電層340を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0282】
半導体層260は、絶縁層366の上に配置された半導体層260aと、半導体層260aの上に配置された半導体層260bと、半導体層260bの上に配置され、少なくとも一部が半導体層260bの上面に接する半導体層260cと、を有することが好ましい。半導体層260bの下に半導体層260aを有することで、半導体層260aよりも下方に形成された構造物から、半導体層260bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、半導体層260b上に半導体層260cを有することで、半導体層260cよりも上方に形成された構造物から、半導体層260bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0283】
トランジスタ210Aは、半導体層260に、金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることが好ましい。
【0284】
チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流(オフ電流)が少ない。よって、消費電力が低減された半導体装置を実現できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて形成できるため、高集積型の半導体装置の実現が容易となる。
【0285】
例えば、半導体層260として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、半導体層260として、In-M酸化物、In-Zn酸化物、またはM-Zn酸化物を用いてもよい。
【0286】
トランジスタ210Aでは、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能する導電層360が、絶縁層380などに形成されている開口を埋めるように自己整合的に形成される。導電層360をこのように形成することにより、導電層342aと導電層342bとの間の領域に、導電層360を位置合わせすることなく確実に配置することができる。
【0287】
導電層360は、導電層360aと、導電層360aの上に配置された導電層360bと、を有することが好ましい。例えば、導電層360aは、導電層360bの底面および側面を包むように配置されることが好ましい。また、
図12Bに示すように、導電層360の上面は、絶縁層349の上面および酸化物260cの上面と略一致している。
【0288】
導電層305は、第2のゲート(ボトムゲートともいう。)電極として機能する場合がある。その場合、導電層305に印加する電位を、導電層360に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ210Aのしきい値電圧(Vth)を制御することができる。特に、導電層305に負の電位を印加することにより、トランジスタ210AのVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電層305に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電層360に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0289】
また、例えば、導電層305と導電層360を半導体層260のチャネル形成領域を介して重畳して設けることで、導電層305、および導電層360に電圧を印加した場合、導電層360から生じる電界と、導電層305から生じる電界と、がつながり、半導体層260のチャネル形成領域を覆うことができる。
【0290】
つまり、第1のゲート電極としての機能を有する導電層360の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電層305の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。本明細書などにおいて、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0291】
絶縁層365、および絶縁層371は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁層365、および絶縁層371は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁層365、および絶縁層371は、それぞれ絶縁層366よりも水素および酸素の一方または双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁層365、および絶縁層371は、それぞれ絶縁層349よりも水素および酸素の一方または双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁層365、および絶縁層371は、それぞれ絶縁層380よりも水素および酸素の一方または双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。
【0292】
なお、本明細書などにおいて、水素または酸素の拡散を抑制する機能を有する膜を、水素または酸素が透過しにくい膜、水素または酸素の透過性が低い膜、水素または酸素に対してバリア性を有する膜、水素または酸素に対するバリア膜などと呼ぶ場合がある。また、バリア膜に導電性を有する場合、当該バリア膜を導電性バリア膜と呼ぶことがある。
【0293】
また、
図12Bに示すように、絶縁層371は、導電層342aおよび導電層342bの上面と、導電層342aと導電層342bとが互いに向かい合う側面以外の、導電層342aおよび導電層342bの側面と、半導体層260aおよび半導体層260bの側面と、絶縁層366の上面の一部と、に接することが好ましい。これにより、絶縁層380は、絶縁層371によって、絶縁層366、半導体層260a、および半導体層260bと離隔される。したがって、絶縁層380などに含まれる水素などの不純物が、絶縁層366、半導体層260a、および半導体層260bへ混入するのを抑制することができる。
【0294】
また、
図12Bに示すように、トランジスタ210Aは、絶縁層374が、導電層360、絶縁層349、および半導体層260cのそれぞれの上面と接する構造となっている。このような構造とすることで、絶縁層381などに含まれる水素などの不純物が、絶縁層349へ混入することを抑えることができる。したがって、トランジスタの電気特性およびトランジスタの信頼性への悪影響を抑制することができる。
【0295】
上記構造を有することで、オン電流が大きいトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さいトランジスタを提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0296】
<トランジスタの構造例2>
図13A、
図13Bおよび
図13Cを用いてトランジスタ210Bの構造例を説明する。
図13Aはトランジスタ210Bの上面図である。
図13Bは、
図13Aに一点鎖線で示すL1-L2部位の断面図である。
図13Cは、
図13Aに一点鎖線で示すW1-W2部位の断面図である。なお、
図13Aの上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0297】
トランジスタ210Bはトランジスタ210Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ210Aと異なる点について説明する。
【0298】
第1のゲート電極として機能する導電層360は、導電層360a、および導電層360a上の導電層360bを有する。導電層360aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0299】
導電層360aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電層360bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電層360aを有することで、導電層360bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0300】
また、導電層360の上面および側面、絶縁層349の側面、および半導体層260cの側面を覆うように、絶縁層371を設けることが好ましい。なお、絶縁層371は、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0301】
絶縁層371を設けることで、導電層360の酸化を抑制することができる。また、絶縁層371を有することで、絶縁層380が有する水、および水素などの不純物がトランジスタ210Bへ拡散することを抑制することができる。
【0302】
トランジスタ210Bは、導電層342aの一部と導電層342bの一部に導電層360が重なるため、トランジスタ210Aよりも寄生容量が大きくなりやすい。よって、トランジスタ210Aに比べて動作周波数が低くなる傾向がある。しかしながら、絶縁層380などに開口を設けて導電層360や絶縁層349などを埋めこむ工程が不要であるため、トランジスタ210Aと比較して生産性が高い。
【0303】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0304】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の構成について、
図19を参照しながら説明する。
【0305】
図19は本発明の一態様の半導体装置の構成を説明する図である。
【0306】
<半導体装置800の構成例1.>
本実施の形態で説明する半導体装置800は、半導体装置100と、半導体装置700と、を有する(
図19参照)。例えば、実施の形態2において説明する半導体装置を、半導体装置100に用いることができる。また、例えば、実施の形態1において説明する半導体装置を、半導体装置700に用いることができる。
【0307】
《半導体装置100の構成例1.》
半導体装置100は所定の電流または所定の電圧を供給する機能を備える。
【0308】
半導体装置100は第2の半導体装置700と電気的に接続され、半導体装置100は制御信号CI1を供給される。また、半導体装置100は制御信号CI1に基づいて動作する。
【0309】
例えば、半導体装置100は、制御信号CI1に基づいて、電力の供給を停止することができる。具体的には、制御信号CI1は入出力回路106に供給され、御信号CI1に基づいて、制御回路105は、電流調整回路104に電力の供給を停止させる(
図17参照)。
【0310】
これにより、第2の半導体装置700を用いて、第1の半導体装置100をフィードバック制御することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0311】
《検知部702の構成例1.》
検知部702は、電圧検出器VDを備える。電圧検出器VDは所定の電流を供給する際に要する電圧を計測する。
【0312】
《記憶部701Bの構成例2.》
記憶部701Bは、電圧に係る標準データDATAを保持する。
【0313】
これにより、検知する電圧および標準データDATAの間に生じる、許容差情報TIを超える乖離を、監視することができる。または、第2の半導体装置700に接続される第1の半導体装置100の異常を、電圧を用いて、監視することができる。または、第1の半導体装置100に接続される負荷の異常を、電圧を用いて、監視することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0314】
《検知部702の構成例2.》
検知部702は電流検出器CDを備え、電流検出器CDは、所定の電圧を供給する際に要する電流を計測する。
【0315】
《記憶部701Bの構成例3.》
記憶部701Bは、電流に関する標準データDATAを保持する。
【0316】
これにより、検知する電流および標準データDATAの間に生じる、許容差情報TIを超える乖離を、監視することができる。または、第2の半導体装置700に電気的に接続される第1の半導体装置100の異常を、電流を用いて、監視することができる。または、第1の半導体装置100に電気的に接続される負荷の異常を、電流を用いて、監視することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0317】
《検知部702の構成例3.》
検知部702は、端子TTを備える(
図1A参照)。また、端子TTは、温度に関する検知信号を供給される。
【0318】
《記憶部701Bの構成例4.》
記憶部701Bは、温度に関する標準データDATAを保持する。
【0319】
これにより、検知する温度および標準データDATAの間に生じる、許容差情報TIを超える乖離を、監視することができる。または、第2の半導体装置700に接続される第1の半導体装置100または負荷の異常を、温度を用いて、監視することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な半導体装置を提供することができる。
【0320】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0321】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池システムの構成について、
図19を参照しながら説明する。
【0322】
図19は本発明の一態様の二次電池システムの構成を説明する図である。
【0323】
<二次電池システムの構成例1.>
本実施の形態で説明する二次電池システムは、二次電池200と、半導体装置800と、を有する。例えば、実施の形態5において説明する半導体装置800を用いることができる。
【0324】
《二次電池200の構成例1.》
二次電池200は、半導体装置800と電気的に接続される。
【0325】
これにより、例えば、一定の電流で充電中の二次電池200に加わる、許容差情報TIを超える電圧を検知することができる。または、例えば、一定の電圧で充電中の二次電池200に流れる、許容差情報TIを超える電流を検知することができる。または、二次電池200の特性に由来する許容差情報TIに基づいて、制御信号を供給できる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な二次電池システムを提供することができる。
【0326】
<二次電池システムの構成例2.>
また、本実施の形態で説明する二次電池システムは、二次電池200と、半導体装置800と、を有する。
【0327】
《二次電池200の構成例2.》
二次電池200は半導体装置800と電気的に接続される。また、二次電池200は、電池セルおよび温度検知器TDを備える。例えば、実施の形態5において説明する半導体装置800を用いることができる。
【0328】
温度検知器TDは、端子TTと電気的に接続され、温度検知器TDは、電池セルの温度を検知する。
【0329】
これにより、例えば、充電中の二次電池200の許容差情報TIを超える温度変化を検知することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な二次電池システムを提供することができる。
【0330】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0331】
(実施の形態7)
本実施の形態では、二次電池200の一例として、円筒型の二次電池600について
図14Aおよび
図14Bを参照して説明する。円筒型の二次電池600は、
図14Aに示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ(電池蓋)601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0332】
図14Bは、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極604、負極606およびセパレータ605が捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF
4やLiPF
6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液などにより構成される。
【0333】
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子611には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0334】
電解液を用いるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、外装体とを有する。なお、リチウムイオン二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書などにおいては、充電中であっても、放電中であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0335】
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、リチウムイオン二次電池に限定されず、二次電池の正極材料として例えば、元素A、元素X、および酸素を有する材料を用いることができる。元素Aは第1族の元素および第2族の元素から選ばれる一以上であることが好ましい。第1族の元素として例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を用いることができる。また、第2族の元素として例えば、カルシウム、ベリリウム、マグネシウム等を用いることができる。元素Xとして例えば金属元素、シリコンおよびリンから選ばれる一以上を用いることができる。また、元素Xはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄、およびバナジウムから選ばれる一以上であることが好ましい。代表的には、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。
【0336】
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0337】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。
【0338】
また、二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0339】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0340】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置を適用できる電子機器について説明する。
【0341】
本発明の一態様に係る半導体装置は、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、自動車、二輪車、船舶、および航空機などの移動体も電子機器と言える。本発明の一態様に係る半導体装置は、これらの電子機器に内蔵されるバッテリの充電監視装置に用いることができる。
【0342】
電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナおよび二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0343】
電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0344】
電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0345】
図15において、本発明の一態様の半導体装置と二次電池を用いた移動体を例示する。
図15Aに示す自動車8400の二次電池8024は、電気モータ8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。自動車8400の二次電池8024は、
図14Aおよび
図14Bに示した円筒形の二次電池600を複数用いた電池モジュールとしたものを用いてもよい。充電監視装置8025は本発明の一態様の半導体装置を含み、環境温度に応じた二次電池8024の充電を行う。
【0346】
図15Bに示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。
図15Bに、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、本発明の一態様の半導体装置を含む充電監視装置8025によって、環境温度に応じた充電を行うことができる。なお、本発明の一態様の半導体装置を含む充電監視装置を充電装置8021に設けてもよい。
【0347】
充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0348】
また、図示しないが、受電装置を移動体に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、移動体どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、移動体の外装部に太陽電池を設け、停止時や移動時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0349】
また、
図15Cは、二次電池を用いた二輪車の一例である。
図15Cに示すスクータ8600は、二次電池8602、充電監視装置8625、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。また、本発明の一態様の半導体装置を含む充電監視装置8625によって、環境温度に応じた二次電池8602の充電を行うことができる。
【0350】
また、
図15Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0351】
本発明の一態様に係る半導体装置は、移動体に限らず、二次電池および無線モジュールを有するデバイスに適用することができる。
【0352】
図16Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407および蓄電装置7407の充電監視装置を有している。
【0353】
図16Bは、情報処理装置1200の外観の一例を説明する投影図である。本実施の形態で説明する情報処理装置1200は、演算装置と入出力装置と、筐体1210と、表示部1230、表示部1240と、蓄電装置1250および充電監視装置とを有する。
【0354】
情報処理装置1200は、通信部を有し、ネットワークに情報を供給する機能と、ネットワークから情報を取得する機能と、を備える。また、通信部を用いて特定の空間に配信された情報を受信して、受信した情報に基づいて、画像情報を生成してもよい。情報処理装置1200は、表示部1230、表示部1240のいずれか一方をキーボード表示させた画面をタッチ入力パネルと設定することで、パーソナルコンピュータとして機能させることができる。
【0355】
また、
図16Cに示すようなウェアラブルデバイスに、本発明の一態様に係る二次電池の充電監視装置を設けてもよい。
【0356】
例えば、
図16Cに示すような眼鏡型デバイス400に充電監視装置を設けてもよい。眼鏡型デバイス400は、フレーム400aと、表示部400bと、無線モジュールを有する。湾曲を有するフレーム400aのテンプル部に蓄電装置、充電監視装置、および無線モジュールを設けてもよい。充電監視装置を設けることで、蓄電装置の劣化が抑えられ、連続使用時間の低下を防ぐことができる。また、充電の異常が生じにくくなり、安全な眼鏡型デバイス400とすることができる。
【0357】
また、ヘッドセット型デバイス401に蓄電装置、充電監視装置、および無線モジュールを搭載することができる。ヘッドセット型デバイス401は、少なくともマイク部401aと、フレキシブルパイプ401bと、イヤフォン部401cを有する。フレキシブルパイプ401b内やイヤフォン部401c内に蓄電装置、充電監視装置、および無線モジュールを設けることができる。
【0358】
また、身体に直接取り付け可能なデバイス402に搭載することができる。デバイス402の薄型の筐体402aの中に、蓄電装置402bおよび蓄電装置の充電監視装置を設けることができる。
【0359】
また、衣服に取り付け可能なデバイス403に搭載することができる。デバイス403の薄型の筐体403aの中に、蓄電装置403bおよび蓄電装置の充電監視装置を設けることができる。
【0360】
また、腕時計型デバイス405に搭載することができる。腕時計型デバイス405は表示部405aおよびベルト部405bを有し、表示部405aまたはベルト部405bに、蓄電装置および蓄電装置の充電監視装置を設けることができる。
【0361】
表示部405aには、時刻だけでなく、メールや電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
【0362】
また、腕時計型デバイス405は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康維持に役立てることができる。
【0363】
また、ベルト型デバイス406に蓄電装置および蓄電装置の充電監視装置を搭載することができる。ベルト型デバイス406は、ベルト部406aおよびワイヤレス給電受電部406bを有し、ベルト部406aの内部に、蓄電装置、充電監視装置、および無線モジュールを搭載することができる。
【0364】
また、日用電子製品の蓄電装置として本発明の一態様の蓄電装置および蓄電装置の充電監視装置を用いることで、軽量で安全な製品を提供できる。例えば、日用電子製品として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の蓄電装置としては、使用者の持ちやすさを考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、大容量の蓄電装置が望まれている。
図16Dはタバコ収容喫煙装置(電子タバコ)とも呼ばれる装置の斜視図である。
図16Dにおいて電子タバコ7410は、加熱素子を含むアトマイザ7411と、アトマイザに電力を供給する蓄電装置7414と、液体供給ボトルやセンサなどを含むカートリッジ7412で構成されている。安全性を高めるため、蓄電装置の充電監視装置を蓄電装置7414に電気的に接続してもよい。
図16Dに示した蓄電装置7414は、充電機器と接続できるように外部端子を有している。蓄電装置7414は持った場合に先端部分となるため、トータルの長さが短く、且つ、重量が軽いことが望ましい。
【0365】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0366】
100:半導体装置、101:記憶素子、102:記憶素子、103:比較回路、104:電流調整回路、105:制御回路、106:入出力回路、110:電極、112:電極、114:絶縁層、115:絶縁層、116:絶縁層、120:電極、130:絶縁層、150:集積回路、152:電極、153:電極、154:絶縁層、156:絶縁層、160:集積回路、200:二次電池、210:トランジスタ、700:半導体装置、701(i):記憶素子、701:記憶部、702:検知部、703:判定部、705:制御部、750:集積回路、760:集積回路、800:半導体装置