(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】高分子量高密度画分を有する二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240115BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240115BHJP
C08F 10/04 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08L23/00
C08F10/04
(21)【出願番号】P 2020569798
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2019036975
(87)【国際公開番号】W WO2019241518
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハート、カイル イー.
(72)【発明者】
【氏名】デミロール、メフメト
(72)【発明者】
【氏名】ギャンブレル、ティモシー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ、フィリップ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】カリハリ、ヴィヴェーク
(72)【発明者】
【氏名】オラジデ、 ジュニア、フランシス オー.
(72)【発明者】
【氏名】パテル、ラジャン エム.
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537656(JP,A)
【文献】特表2017-520548(JP,A)
【文献】特表2010-523798(JP,A)
【文献】特表2009-517497(JP,A)
【文献】特表2007-502907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08J
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルムであって、
前記二峰性エチレン系ポリマーが
、
温度93℃~119℃で結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される、
3.0%~25.0%の高密度画分(HDF)と
、
I
2
は、荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスであり、I
10は、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスである
、5.5~7.5のI
10
/I
2比と
、
CEF半値全幅
をパラメータとして説明される、10℃以下の短鎖分岐分布(SCBD)と
、
ASTM D792 方法Bに従って測定される、
0.902g/cc~0.925g/ccの密度と
、
190℃、2.16kgでASTM D1238に従って測定される、
0.5g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I
2)と、を含むインフレーションフィルム。
【請求項2】
前記二峰性エチレン系ポリマーが、0.910g/cc~0.920g/ccの密度を有する、請求項1に記載のインフレーションフィルム。
【請求項3】
前記二峰性エチレン系ポリマーが、0.7g/10分~1.8g/10分のメルトインデックス(I
2)を有する、請求項1または2のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項4】
前記二峰性エチレン系ポリマーが、1.1~3.0のゼロせん断
粘度比を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項5】
前記インフレーションフィルムが、97.0%~99.5%の平均透明度を有し、前記平均透明度が、ASTM D 1746で指定された通りにBYK Gardner Haze-gardを使用して測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項6】
前記インフレーションフィルムが、50~75の平均光沢を有し、前記平均光沢が、ASTM D2457に従って、45°でBYK Gardner Glossmeter Microglossを使用して測定される、請求項1~5のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項7】
前記インフレーションフィルムが、6.25%~13.75%の平均バルクヘイズを有し、前記平均バルクヘイズが、ASTM D1003に従って、BYK Gardner Haze-gardを使用して測定される、請求項1~6のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項8】
前記インフレーションフィルムが、450g/ミル~700g/ミルの平均ダーツ衝撃強度を有し、前記平均ダーツ衝撃強度が、ASTM-D 1709-04、方法Aに従って測定される、請求項7に記載のインフレーションフィルム。
【請求項9】
前記インフレーションフィルムが、125.0ft・lb/in
3~175.0ft・lb/in
3の平均穿刺を有し、前記平均穿刺が、ASTM D5748-95に従って測定される、請求項1~8のいずれか一項のインフレーションフィルム。
【請求項10】
前記インフレーションフィルムが、325g/ミル~550g/ミルの機械横断方向の平均引裂きを有し、前記平均引裂きが、ASTM D1922に従って測定されるエルメンドルフ引裂き抵抗である、請求項1~9のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項11】
前記インフレーションフィルムが、250g/ミル~350g/ミルの機械方向の平均引裂きを有し、前記平均引裂きが、ASTM D1922に従って測定されるエルメンドルフ引裂き抵抗である、請求項1~10のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項12】
前記インフレーションフィルムが、10,000psi~39,000psiの機械横断方向の平均割線弾性係数を有し、前記平均割線弾性係数が、ASTM D882に従って測定される。請求項1~11のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項13】
前記インフレーションフィルムが、機械方向に10,000psi~33,500psiの平均割線弾性係数を有し、前記平均割線弾性係数が、ASTM D882に従って測定される、請求項1~12のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項14】
前記インフレーションフィルムが、機械横断方向に7500.0psi~8000.0psiの平均引張強度を有し、前記平均引張強度が、ASTM D882に従って測定される、請求項1~13のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項15】
前記インフレーションフィルムが、機械横断方向に8000.0psi~8700.0psiの平均引張強度を有し、前記平均引張強度が、ASTM D882に従って測定される、請求項1~14のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項16】
前記インフレーションフィルムが、二峰性エチレン系ポリマーと、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、プロピレン系ポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーとの混合物を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項17】
前記二峰性エチレン系ポリマーが、3.0~7.5のHDFを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項18】
前記二峰性エチレン系ポリマーが、5.5~6.0のI
10/I
2比を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【請求項19】
前記二峰性エチレン系ポリマーが、8℃以下のSCBDを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のインフレーションフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月15日に出願された米国仮特許出願第62/685,540号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、高密度画分を有する二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルムに関し、特に、高密度画分を有し、酷使および視覚特性が改善された二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
インフレーションフィルムプロセスにおけるエチレン系ポリマーなどのポリマー材料の使用はよく知られている。押出しインフレーションフィルムプロセスは、プラスチックフィルムの調製でよく知られたプロセスである。押出しインフレーションフィルムプロセスは、溶融ポリマーを加熱、溶融、および搬送し、環状ダイを通って押し出す押出機を使用する。溶融ポリマーは、ダイから延伸され、チューブ形状の形態に形成され、最終的に一対の延伸ローラーまたはニップローラーを通過する。次に、内部の圧縮空気がマンドレルから導入され、チューブの直径が大きくなり、それによって目的のサイズの気泡が形成される。溶融物がダイを出るときに溶融物を冷却するため、気泡の周囲に外気も導入される。フィルム幅は、通常、多少の内部空気を気泡に導入し、したがって気泡サイズを増減することによって変わる。フィルム厚は、通常、ドローダウン速度を制御するために、延伸ロールまたはニップロールの速度を増減することによって、制御される。次に、延伸ロールまたはニップロールを通過した直後に、気泡はフィルムの2つの二重層に崩壊する。冷却されたフィルムは、次に切断またはシールすることによって、さらに加工して様々な消費者製品を製造することができる。
【発明の概要】
【0004】
インフレーションポリマーフィルムのフィルム特性は、ポリマーの分子構造によって影響を受ける可能性がある。改善された光学特性(例えば、ヘイズ、光沢、および透明度の試験によって証明される)、改善された酷使特性(例えば、ダーツ、穿刺、および引裂きの試験によって証明される)、および改善された機械的特性(例えば、引張および弾性率の試験によって証明される)などの改善されたフィルム特性は、さまざまな用途に明らかに望ましい。そのような改善特性を達成するために、異なるポリマーが提案されてきた。
【0005】
したがって、プラスチックフィルム業界での競争が激化するにつれ、エチレン系ポリマーの生産者は、改善された光学特性、酷使特性、および機械的特性の組み合わせを備えたフィルムを形成するために使用できるより広い範囲の特性を備えた製品の製造に努めている。このように、例えば、高分子量高密度画分など、より幅広い特性を有するエチレン系ポリマーに対する継続的なニーズが存在する。第1の反応器の上流および第2の反応器の下流になるように触媒入口の位置を制御することにより、触媒の存在下での成分の反応をよりよく制御できることが見出された。さらに、触媒は、反応器の大部分と比較して、流れ制限領域内の成分と組み合わされるため、触媒と該成分は、それらが第2の反応器に到達する前に十分に混合され、第2の反応器は、非攪拌反応器であり、コストとエネルギー消費が削減される。このような方法で製造されるエチレン系ポリマーは、単独で、または他のポリエチレンフィルムと組み合わせて、プラスチックフィルムに使用できる高分子量高密度画分を有し、改善された光学特性、酷使特性、および機械的特性をフィルムに提供する。
【0006】
本開示は、高密度画分を有する二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルム、ならびにそのような二峰性エチレン系ポリマーを製造するためのプロセスおよび方法を提供する。
【0007】
本開示の実施形態は、二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルムに関し、該二峰性エチレン系ポリマーは、93℃~119℃の温度で結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される、3.0%~25.0%の高密度画分(HDF)と、5.5~7.5のI10/I2比であって、I2が2.16kgの荷重および190℃の温度でASTM D 1238に従って測定されるメルトインデックスであり、I10が10kgの荷重および190℃の温度でASTM D 1238に従って測定されるメルトインデックスであるI10/I2比と、CEF半値全幅によって測定される、10℃以下の短鎖分岐分布(SCBD)と、ASTM D792、方法Bに従って測定される、0.902g/cc~0.925g/ccの密度と、ならびにASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定される、0.5g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I2)と、を含む。
【0008】
追加の特徴および利点は、後に続く詳細な説明において記載され、その説明から当業者にとって容易に部分的に明らかになるか、後に続く詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0009】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付の図面が、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原則および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に開示および記載された実施形態による、高分子量高密度画分を有する二峰性エチレン系ポリマーを製造するためのシステムを概略的に示す。そして
【
図2】実施形態および比較例によるポリマーのCEFプロットをグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本出願の特定の実施形態について説明する。しかしながら、本開示は異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0012】
一実施形態によれば、二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルムであって、該二峰性エチレン系ポリマーは、93℃~119℃の温度で結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される、3.0%~25.0%の高密度画分(HDF)と、5.5~7.5のI10/I2比であって、I2は、荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスであり、I10は、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスであるI10/I2比と、CEF半値全幅によって測定される10℃以下の短鎖分岐分布(SCBD)と、ASTM D792 B法に従って測定される0.902g/cc~0.925g/ccの密度と、ASTM D1238に従って190℃、2.16kgで測定される0.5g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I2)と、を含む。
【0013】
定義
【0014】
「ポリマー」という用語は、同一または異なる種類のモノマーに関わらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。このため、総称のポリマーは、通常、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および2種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーという用語は、コポリマーと、ターポリマー等の3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーとを含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、「二峰性」は、様々な密度および重量平均分子量を有する少なくとも2つのポリマー副成分、すなわち「画分」を有することを特徴とし、任意選択で、異なるメルトインデックス値も有し得る組成物を意味する。一実施形態において、二峰性は、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラムにおいて少なくとも2つの異なるピークを有することによって定義され得る。別の実施形態において、二峰性は、短鎖分岐分布を示す結晶化溶出分別(CEF)クロマトグラムにおいて、少なくとも2つの異なるピークを有することによって定義され得る。二峰性は、2つのピークを有する樹脂、ならびに3つ以上のピークを有する樹脂を含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」は、溶液重合を行う容器であり、エチレンモノマーおよび少なくともC3-C12α-オレフィンコモノマーが、触媒を含有する非反応性溶媒に溶解した後に共重合する。溶液重合プロセスでは、水素が利用され得るが、全ての溶液重合プロセスにおいて必要なわけではない。
【0017】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマー由来の50mol%超の単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系のホモポリマーまたはコポリマー(単位が2つ以上のコモノマーに由来することを意味する)が含まれる。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の両方の低密度樹脂を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「LDPE」という用語は、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも称され、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照されたい)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)超の圧力で、オートクレーブまたは管状反応器中で、部分的または完全に、ホモ重合または共重合されることを意味するように定義される。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.940g/cmの範囲の密度を有する。
【0019】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、ならびにこれらに限定されないが、ビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、および拘束幾何触媒を含むシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂、およびこれらに限定されないが、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)を含むポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれる。LLDPEには、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均一なエチレン系コポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、および同第5,733,155号にさらに定義されている、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号に記載されるものなどの均質に分岐したエチレンポリマー、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されるものなどの不均一に分岐したエチレンポリマー、ならびにこれらのブレンド(例えば、米国特許第3,914,342号、または米国特許第5,854,045号に開示されているもの)を含む。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはこれらの任意の組み合わせによって作製され得る。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはこれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0020】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に転換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「共触媒」および「活性化剤」という用語は、交換可能な用語である。
【0021】
「非攪拌反応器」という用語は、攪拌機、ミキサー、ニーダーなどによる攪拌などの機械的攪拌を含まない反応器を指す。非撹拌反応器の例には、プラグフロー反応器、タンク反応器、およびループ反応器が含まれ、これらはすべて攪拌機、ミキサーなどを備えていない。
【0022】
「ミキサー」という用語は、装置内に存在する成分を機械的に混合する装置を指す。ミキサーの例には、静的ミキサー、フローシェイパー、およびスターラー、ミキサー、ニーダーなどを含む容器が含まれる。実施形態では、モノマー、コモノマーなどのミキサーに存在する成分は、ミキサー内で反応する。
【0023】
グラム/ミル(g/ミル)という用語は、ミルで測定されたフィルムの厚さあたりのグラム力の測定単位である。
【0024】
システム構成
【0025】
ここで、本明細書に開示および記載された実施形態にしたがって、高分子量高密度画分を有する二峰性エチレン系ポリマーを製造するためのシステムを詳細に参照する。
【0026】
ここで
図1を参照すると、実施形態による高分子量高密度画分を有する二峰性エチレン系ポリマーを製造するためのシステム100は、第1の反応器110および第1の反応器110に流体接続された第2の反応器120を含む。第1の反応器110および第2の反応器120に使用される反応器の種類は限定されず、実施形態では、溶液重合反応器として使用するのに適した反応器である。実施形態では、第1の反応器110は、例えば、ループ反応器、等温反応器、断熱反応器、および連続撹拌槽型反応器などの撹拌溶液重合反応器であり、並列、直列、およびそれらの任意の組み合わせである。第2の反応器120は、実施形態によれば、例えば、非攪拌槽反応器または管状反応器(例えば、プラグフロー反応器、ピストンフロー反応器など)などの非攪拌溶液重合反応器である。
【0027】
実施形態によれば、1つまたは複数のミキサー130は、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に配置される。図は1つのミキサーのみを示しているが、追加のミキサーは、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に直列または並列に配置できることを理解されたい。ミキサー130は、フローシェイパーまたは静的ミキサーであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ミキサー130は、フローシェイパーおよび静的ミキサーを含み得る。本明細書で使用される「フローシェイパー」は、例えば、テーパパイプ、ディフューザー、またはノズルなどの構成要素流の流れを変更する任意の種類の装置であり得る。
図1に示される実施形態などの実施形態では、ミキサー130および非攪拌レクター120は、別個の物理的装置であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、ミキサー130および非攪拌反応器120は、2つの別個のゾーンを有する単一の物理的装置であり得る。一例として、実施形態では、ミキサー130および非攪拌反応器120は両方とも細長い管内に収容され得る。静的ミキサーは、細長い管の第1の部分に配置され得るが、細長い管の第2の部分は、静的ミキサーまたは任意の他の種類の攪拌機を含まない。このような実施形態では、静的ミキサーが存在する細長い管の第1のゾーンはミキサー130であり、攪拌機が存在しない細長い管の第2のゾーンは非攪拌反応器120である。このような実施形態では、ミキサー130および非攪拌反応器は、単一の物理的装置に収容されている。
【0028】
図に示す実施形態に示すように、第1の反応器110は、溶媒中にエチレンモノマーおよびC3-C12αオレフィンコモノマーを含む供給流101、第1の触媒流103、および任意選択で、水素(H2)流102を受け入れるように構成される。供給流101、第1の触媒流103、および任意選択の水素流102の成分は、第1の反応器110内で反応し、第1のポリマー画分を生成する。この第1のポリマー画分は、第1の反応器110から流出物111aとして産出される。実施形態では、流出物111aは、第1のポリマー画分に加えて、未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3-C12αオレフィンコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101の成分は、一緒にまたは別個の流として第1の反応器110に追加され得ることが理解されよう。例えば、エチレンモノマーおよび溶媒は、C3-C12αオレフィンコモノマーと異なる流として第1の反応器に添加してもよい。第1の反応器110へのエチレンモノマー、C3-C12αオレフィンコモノマー、および溶媒の順は限定されない。
【0029】
さらに図を参照すると、第2の触媒流112は、第1の反応器110(すなわち、攪拌溶液重合反応器)の下流および第2の反応器120(すなわち、非攪拌溶液重合反応器)の上流の流出物111aに添加される。第2の触媒流112は、実施形態では、ミキサー130に追加することができる。他の実施形態では、第2の触媒流112は、ミキサー130の直前に加えることができる。第2の触媒流112は、第1の触媒流103とは異なる触媒を含み、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3-C12αオレフィンコモノマーの反応を促進し、第2のポリマー画分を製造する。実施形態では、第2のポリマー画分は、第1のポリマー画分の密度およびメルトインデックス(I2)とは異なる密度およびメルトインデックス(I2)を有する。第1のポリマー画分、第2のポリマー画分、および第2の触媒を含む改変流出物111bは、ミキサー130から第2の反応器120に移る。
【0030】
追加のエチレンモノマー、追加のC3-C12αオレフィンコモノマー、および溶媒を含む第2の供給流の121は、第2の反応器120に移る。第2の供給流121からの追加のエチレンモノマーおよび追加のC3-C12αオレフィンコモノマーは、第2の反応器120に導入された第2の触媒の存在下で、改変流出物111bによって反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。したがって、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含む二峰性エチレン系ポリマーは、生成物流122において第2の反応器120から産出される。
【0031】
第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に第2の触媒流112を導入することにより、第2の触媒流112は、第2の触媒を第2の反応器120に導入する前に、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3-C12αオレフィンコモノマーと混合する。これは、第2の触媒が第2の反応器120に直接導入される場合に発生する一般的な問題を回避する。つまり、第2の反応器120に添加される第2の触媒の量を不必要に制限する第2の触媒入口の目詰まりである。したがって、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に第2の触媒流112を提供することにより、第2の反応器120において攪拌は不要であり、これは装置および操業コストを削減することができる。ミキサー130は、流出物111aおよび第2の触媒流112を第2の反応器120に移す前に、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3-C12αオレフィンコモノマーと第2の触媒流112を混合する。第2の触媒の存在下で、ミキサー130において未反応エチレンモノマーと未反応C3-C12αオレフィンコモノマーとを混合することにより、低温および高エチレンモノマー濃度で、未反応のエチレンモノマーと未反応C3-C12αオレフィンコモノマーとの反応を可能にし、これにより、高密度で高分子量の部分を有する第2のポリマー画分がミキサー130で形成される。
【0032】
さらに、いくつかの実施形態では、追加のエチレンモノマーを、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流で、例えばミキサー130に添加し、改変流出物111bが第2の反応器120に入る前に、第2のポリマー画分の形成を促進し得る。いくつかの実施形態では、追加のエチレンモノマーを流出物111aに追加することができ(すなわち、第2の触媒流112をミキサー130に導入する前に)、他の実施形態では、追加のエチレンモノマーをミキサー130に追加することができる。
【0033】
方法および構成要素
【0034】
ここで、本明細書に開示および記載された実施形態による高分子量高密度画分を有する二峰性エチレン系ポリマーを製造するために上記に開示された実施形態のシステムで使用される方法および構成要素を詳細に参照する。
【0035】
本明細書で以前に開示したように、ならびに
図1を参照して、攪拌溶液重合反応器である第1の反応器110は、供給流101、第1の触媒流103、および任意選択で水素流102を受け入れる。供給流101の成分(任意選択で水素流102からの水素と)は、第1の触媒流103を通じて第1の反応器110に導入される第1の触媒の存在下で反応し、第1のポリマー画分を形成する。第1のポリマー画分および未反応成分は、流出物111aを通じて第1の反応器110を出る。これらの流れのそれぞれおよび第1の反応器110内の反応条件は、以下でより詳細に記載される。
【0036】
供給流101は、溶媒中にエチレンモノマーおよびC3-C12αオレフィンコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、コモノマーは、C3-C8αオレフィンである。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、実施形態において、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択され得る。供給流中に存在する溶媒は、実施形態では、芳香族およびパラフィンの溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、例えば、ExxonMobil Chemicalによって製造されるISOPAR Eなどのイソパラフィンであり得る。
【0037】
水素流102は、本質的に純粋な水素であり、実施形態では、97体積パーセント(vol.%)超の水素、例えば、98体積%超の水素、または99体積%超の水素を含む。
【0038】
第1の触媒は、第1の触媒流103を通じて第1の反応器110に添加され、エチレンモノマー、C3-C12αオレフィンコモノマー、および、任意に、水素の間の反応を促進する。実施形態で使用され得る触媒には、ポストメタロセン触媒、拘束幾何錯体(CGC)触媒、ホスフィンイミン触媒、またはビス(ビフェニルフェノキシ)触媒が挙げられ得るが、これらに限定されない。CGC触媒の詳細および例は、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第6,812,289号、および国際公開第93/08221号で提供され、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒の詳細および例は、米国特許第6,869,904号、同第7,030,256号、同第8,101,696号、同第8,058,373号、同第9,029,487号で提供されており、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。実施形態において、第1の触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも呼ばれる)を含むがこれらに限定されない分子触媒であり得る。
【0039】
ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒、該プロ触媒を活性化する共触媒、および他の任意選択の成分を含む多成分触媒系である。実施形態では、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒は、式(I)による金属-配位子錯体を含み得る。
【化1】
【0040】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選択される金属であり、その金属は、+2、+3、または+4のホルマール酸化状態にあり、nは0、1、または2であり、nが1である場合、Xは単座配位子または二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じかまたは異なり、金属-配位子錯体は全体的に中性であり、OはO(酸素原子)であり、各Zは、-O-、-S-、-N(R
N)-、または-P(R
P)-から独立して選択され、Lは(C
1-C
40)ヒドロカルビレンまたは(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビレンであり、(C
1-C
40)ヒドロカルビレンは、式(1)の2つのZ基(Lが結合している)を連結する1炭素原子~10炭素原子のリンカー骨格を含む部分を有するか、または(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(1)の2つのZ基を連結する1原子~10原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビレンの1原子~10原子のリンカー骨格の1~10原子の各々は、独立して炭素原子またはヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は独立して、O、S、S(O)、S(O)
2、Si(R
C)
2、Ge(R
C)
2、P(R
C)、またはN(R
C)であり、各R
Cは独立して、(C
1-C
30)ヒドロカルビルまたは(C
1-C
30)ヘテロヒドロカルビルであり、R
1およびR
8は、(C
1-C
40)ヒドロカルビル、(C
1-C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R
N)-、(R
N)
2NC(O)-、ハロゲン、および式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルから成る群から独立して選択される。
【化2】
【化3】
【化4】
【0041】
式(II)、(III)、および(IV)において、R31-35、R41-48、またはR51-59の各々は、R1またはR8のうちの少なくとも1つが、式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルであることを条件として、(C1-C40)ヒドロカルビル、(C1-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RN)2NC(O)-、ハロゲン、または-Hから独立して選択される。
【0042】
式(I)において、R2-4、R5-7、およびR9-16の各々は、(C1-C40)ヒドロカルビル、(C1-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RC)2NC(O)-、ハロゲン、および-Hから独立して選択される。
【0043】
式(I)~(IV)に示される組成物に存在することができる様々な官能基の詳細な実施形態を次に詳細に記載する。以下の官能基は例示的であり、実施形態に従って使用することができるビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒の非限定的な例を提供するために開示されることを理解されたい。
【0044】
本明細書で使用される「独立して選択される」という用語は、R1、R2、R3、R4、およびR5などのR基が、同一であっても異なっていてもよいこと(例えば、R1、R2、R3、R4、およびR5はすべて、置換アルキルであってもよく、またはR1およびR2は、置換アルキルであってもよく、R3は、アリールであってもよい等)を示す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は、ヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を補足し、例示することを意図したものであり、排除するものではない。
【0045】
ある特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用される場合、「(Cx-Cy)」の形態を有する括弧付きの表現または「Cx-Cy」の形態を有する括弧なしの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子までを有することを意味する。例えば、(C1~C40)アルキルは、その非置換形態において1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造において、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換されてもよい。括弧付きの「(Cx~Cy)」または括弧なしの「Cx~Cy」を使用して定義される化学基のRS置換版は、任意の基RSの同一性に応じてy個超の炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である厳密に1つの基RSで置換された(C1~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx-Cy)」括弧なしの「Cx~Cy」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子を含有する置換基RSによって置換される場合、化学基の炭素原子の最小および最大の合計数は、xとyとの両方に、炭素原子を含有する置換基RSすべてに由来する炭素原子の合計数を加えることによって決定される。
【0046】
いくつかの実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X、R等)の各々は、非置換であり、RS置換基を有しない。他の実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基のうちの少なくとも1つは独立して1つまたは複数のRSを含有し得る。いくつかの実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基におけるRSの総数は、20個を超えない。他の実施形態において、化学基におけるRSの総数は10を超えない。例えば、各R1-5が2つのRSで置換された場合、XおよびZをRSで置換することはできない。別の実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基におけるRSの総数は、5つのRSを超えない場合がある。2つまたは3つ以上のRSが式(I)の金属-配位子錯体の同じ化学基に結合する場合、各RSは独立して同じかまたは異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合し、化学基の過置換を含み得る。
【0047】
本明細書で用いる「置換」とは、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子もしくはヘテロ原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。本明細書で用いる「過置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合したすべての水素原子(H)が置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。本明細書で用いる「多置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した、少なくとも2個の、ただし、すべてよりは少ない水素原子が置換基によって置き換えられることを意味する。
【0048】
本明細書で用いられるように、「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素または水素ラジカルを意味する。「水素」および「-H」は、交換可能であり、明記されていない限り、同一のことを意味する。
【0049】
本明細書で用いる「(C1-C40)ヒドロカルビル」とは、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C1-C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカルおよび各炭化水素ジラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(二環式、3個以上の炭素原子を含む、単環式および多環式、縮合および非縮合を含む)または非環式であり、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されている。
【0050】
本開示で用いられるように、(C1-C40)ヒドロカルビルは、非置換もしくは置換の(C1-C40)アルキル、(C3-C40)シクロアルキル、(C3-C20)シクロアルキル-(C1-C20)アルキレン、(C6-C40)アリール、または(C6-C20)アリール-(C1-C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態において、上記の(C1-C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子(すなわち、(C1-C20)ヒドロカルビル)を有し、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0051】
本明細書で用いる「(C1-C40)アルキル」および「(C1-C18)アルキル」とは、1~40個の炭素原子または1~18個の炭素原子の飽和、直鎖または分岐の炭化水素ラジカルをそれぞれ意味し、該ラジカルは、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されている。非置換(C1~C40)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C1-C40)アルキルの例は、置換(C1-C20)アルキル、置換(C1-C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。本明細書で用いる「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含むラジカルに最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C1~C5)アルキルである1つのRSによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C1-C5)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、または1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0052】
本明細書で用いる「(C6~C40)アリール」は、6~40個の炭素原子の非置換または置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、または三環式の芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は、芳香環炭素原子であり、単環式、二環式または三環式ラジカルは、それぞれ1つ、2つまたは3つの環を含み、1つの環は、芳香族であり、2つまたは3つの環は、独立して縮合または非縮合であり、2つまたは3つの環の少なくとも1つは、芳香族である。非置換(C6-C40)アリールの例は、非置換(C6-C20)アリール、非置換(C6-C18)アリール、2-(C1-C5)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C1-C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレンである。置換(C6-C40)アリールの例は、置換(C1-C20)アリール、置換(C6-C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびフルオレン-9-オン-1-イルである。
【0053】
本明細書で用いる「(C3~C40)シクロアルキル」は、非置換であるかまたは1つ以上のRSで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(Cx-Cy)シクロアルキル)は、同様に、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されているかのいずれかであると定義される。非置換(C3-C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3-C20)シクロアルキル、非置換(C3-C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、置換(C3~C20)シクロアルキル、置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、および1-フルオロシクロヘキシルである。
【0054】
(C1~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換の(C6~C40)アリーレン、(C3~C40)シクロアルキレン、および(C1~C40)アルキレン(例えば(C1~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ジラジカルは、同じ炭素原子上にあるか(例えば、-CH2-)であるか、または隣接する炭素原子上にあるか(すなわち、1,2-ジラジカル)、または1個、2個、または2個より多くの介在する炭素原子によって離間されている(例えば、それぞれ、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカル等)。一部のジラジカルには、α,ω-ジラジカルが含まれる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2-C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CH2CH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6~C40)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0055】
本明細書で用いる「(C1~C40)アルキレン」は、非置換または1つ以上のRSで置換された炭素原子1~40の飽和、直鎖または分枝鎖のジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子ではない)を意味する。非置換(C1-C40)アルキレンの例は、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、および-(CH2)4C*(H)(CH3)を含む非置換(C1-C20)アルキレンであり、「C*」は、第2級または第3級アルキルラジカルを形成するために水素原子が除去される炭素原子を意味する。置換(C1~C40)アルキレンの例は、置換(C1~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、および-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(即ち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。上記のように、2つのRSは一緒になって、(C1~C18)アルキレンを形成することができ、置換(C1~C40)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0056】
本明細書で用いる「(C3~C40)シクロアルキレン」とは、非置換または1つ以上のRSによって置換されている3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0057】
本明細書で用いる「ヘテロ原子」とは、水素または炭素以外の原子を指す。1個または2個以上のヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)2、Si(RC)2、P(RP)、N(RN)、-N=C(RC)2、-Ge(RC)2-、または-Si(RC)-が挙げられ、各RCおよび各RPは、非置換(C1-C18)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各RNは非置換(C1-C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子または分子骨格を指す。「(C1-C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1-C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素が1つ以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子またはヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1つまたは2つの炭素原子、(2)1つまたは2つのヘテロ原子、または(3)炭素原子とヘテロ原子上に存在し得る。(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルおよび(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンは各々、非置換または(1つ以上のRSによって)置換、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含む)または非環式であってもよい。
【0058】
(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換であってもよく、または置換されてもよい。(C1-C40)ヘテロヒドロカルビルの非限定的な例としては、(C1-C40)ヘテロアルキル、(C1-C40)ヒドロカルビル-O-、(C1-C40)ヒドロカルビル-S-、(C1-C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1-C40)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1-C40)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(Cl-C40)ヒドロカルビル-N(RN)-、(Cl-C40)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2-C40)ヘテロシクロアルキル、(C2-C19)ヘテロシクロアルキル-(C1-C20)アルキレン、(C3-C20)シクロアルキル-(C1-C19)ヘテロアルキレン、(C2-C19)ヘテロシクロアルキル-(C1-C20)ヘテロアルキレン、(C1-C50)ヘテロアリール、(C1-C19)ヘテロアリール-(C1-C20)アルキレン、(C6-C20)アリール-(C1-C19)ヘテロアルキレン、または(C1-C19)ヘテロアリール-(C1-C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。
【0059】
本明細書で用いる「(C1-C40)ヘテロアリール」とは、1~40個の総炭素原子および1~10個のヘテロ原子の非置換または置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、または三環式のヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、または三環式ラジカルは、それぞれ1つ、2つまたは3つの環を含み、2つまたは3つの環は、独立して縮合または非縮合であり、2つまたは3つの環のうちの少なくとも1つはヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、(Cx-Cy)ヘテロアリール、概して(C1-C12)ヘテロアリール)は、x~y個の炭素原子(1~12個の炭素原子等)を有し、非置換であるか、または1つもしくは2つ以上のRSによって置換されているものと類似した様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1、2、または3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、またはPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1または2であり得、ヘテロ原子は、NまたはPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、およびピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イル、およびベンズイミダゾール-1-イルが挙げられる。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、キノリン-2-イル、およびイソキノリン-1-イルが挙げられる。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例としては、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合5,6,6-環系の例としては、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0060】
前述のヘテロアルキルは、(C1-C40)の炭素原子またはそれより少ない炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖または分岐鎖ラジカルであってもよい。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖または分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されるようなヘテロ原子は、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、およびS(O)2を含んでもよく、ヘテロアルキル基およびヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されている。
【0061】
非置換(C2-C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C2-C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2-C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0062】
本明細書で用いる「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)のハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0063】
本明細書で用いる「飽和」とは、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素の二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSで置換されている場合、1つ以上の二重および/または三重結合は、任意選択で、置換基RS中に存在してもしなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を含有すること、存在する場合、置換基RS中に存在し得るか、または存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得る任意のそのような二重結合を含まないことを意味する。
【0064】
様々なプロセス制御方法論が企図される。一実施形態において、フーリエ変換近赤外(FTnIR)分光計をプロセス制御フィードバックループで利用することができる。例えば、第1の溶液重合反応器において、第1および第2のエチレン系成分は、十分に異なる反応性比を有する2つの触媒を使用して、十分に異なる密度で製造される。次いで、各成分の重量パーセントは、最初の反応器出口でFTnIR分光計によって測定されたコモノマー濃度を介してリアルタイムで正確に監視され得る。それに応じて、触媒供給比を調整して、第1の反応器内の各成分の目標重量パーセントの達成に関与する目標コモノマー濃度を達成することができる。あるいは、フーリエ変換近赤外(FTnIR)分光計よりも優れたコモノマー濃度測定の分解能および精度を提供するため、プロセス制御フィードバックループでラマン分光計が利用されてもよい。
【0065】
上記のように、第1の触媒は、実施形態では、プロ触媒(例えば、上記のビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒など)と、プロ触媒を活性化する1つまたは複数の共触媒とを含み得る。実施形態にしたがって使用するのに好適な活性化共触媒として、アルキルアルミニウム、ポリマーまたはオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られる)、中性または強いルイス酸、および非ポリマー性、非配位性のイオン形成化合物が挙げられる(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)。例示的な好適な共触媒としては、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、トリエチルアルミニウム(TEA)およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。好適な活性化技術は、バルク電気分解である。前述の活性化共触媒および技術のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。本明細書で用いる「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハロゲン化物、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハロゲン化物、またはトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマーアルモキサンまたはオリゴマーアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、およびイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0066】
実施形態によるルイス酸活性化剤(共触媒)は、本明細書に記載するように、1~3個の(C1-C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)置換アルミニウムまたはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態において、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)置換アルミニウム、トリ(ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C1-C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C6-C18)アリール)ホウ素化合物、およびそのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。さらなる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化共触媒は、テトラキス((C1~C20)ヒドロカルビル)ボレート(例えばトリチルテトラフルオロボレート)またはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C1~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C1~C20)ヒドロカルビル)4N+、((C1~C20)ヒドロカルビル)3N(H)+、((C1~C20)ヒドロカルビル)2N(H)2
+、(C1~C20)ヒドロカルビルN(H)3
+、またはN(H)4
+である窒素カチオンを意味し、各(C1~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【0067】
本明細書に記載するような中性ルイス酸活性化剤(共触媒)の組み合わせとしては、トリ((C1-C4)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C6-C18)アリール)ホウ素化合物、とりわけ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、および単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば(第4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモルの数の比は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では1:1:1.5~1:5:10である。
【0068】
実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と1つ以上の活性化共触媒の総モル数との比は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、他のいくつかの実施形態では少なくとも1:1000、および10:1以下であり、さらにいくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサン単独が活性化共触媒として使用される場合、幾つかの実施形態では、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍である。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化共触媒として使用する場合、他のいくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数を、0.5:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~5:1とする。残りの活性化共触媒は一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0069】
ここで、第1の触媒(上記で提供された実施形態)の存在下で、エチレンモノマー、C3-C12αオレフィンコモノマー、および、任意選択で水素を反応させるための第1の反応器110における反応条件を記載する。
【0070】
第1の触媒の存在下で、C3-C12αオレフィンコモノマーとエチレンモノマーの反応を促進するために、実施形態では、第1の反応器110を、155℃~190℃、例えば160℃~190℃、165℃~190℃、170℃~190℃、175℃~190℃、180℃~190℃、または185℃~190℃の温度に加熱する。実施形態では、第1の反応器は、155℃~185℃、例えば、155℃~180℃、155℃~175℃、155℃~170℃、155℃~165℃、または155℃~160℃の温度に加熱される。上記の温度範囲は、本明細書に列挙される端点を含み(例えば、「155℃~190℃」とは、155℃と190℃の両方を含む)、第1の反応器110の温度は、任意の従来の反応器温度監視システムおよびソフトウェアで測定できることを理解されたい。
【0071】
実施形態では、第1の反応器110に導入される供給流101は、高濃度のエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101は、70グラム/リットル(g/L)~135g/Lのエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101は、75g/L~135g/Lのエチレンモノマー、例えば、80g/L~135g/Lのエチレンモノマー、85g/L~135g/Lのエチレンモノマー、90g/L~135g/Lのエチレンモノマー、95g/L~135g/Lのエチレンモノマー、100g/L~135g/Lのエチレンモノマー、105g/L~135g/Lのエチレンモノマー、110g/L~135g/Lのエチレンモノマー、115g/L~135g/Lのエチレンモノマー、120g/L~135g/Lのエチレンモノマー、125g/L~135g/Lエチレンモノマー、または130g/L~135g/Lのエチレンモノマーを含む。他の実施形態では、供給流101は、70g/L~130g/Lのエチレンモノマー、例えば、70g/L~125g/Lのエチレンモノマー、70g/L~120g/Lのエチレンモノマー、70g/L~115g/Lのエチレンモノマー、70g/L~110g/Lのエチレンモノマー、70g/L~105g/Lのエチレンモノマー、70g/L~100g/Lのエチレンモノマー、70g/L~95g/Lのエチレンモノマー、70g/L~90g/Lのエチレンモノマー、70g/L~85g/Lのエチレンモノマー、70g/L~80g/Lエチレンモノマー、または70g/L~75g/Lのエチレンモノマーを含む。
【0072】
供給流101中のコモノマーの濃度は、限定されず、0.0g/L~95.0g/L、例えば5.0g/L~95.0g/L、15.0g/L~95.0g/L、25.0g/L~95.0g/L、35.0g/L~95.0g/L、45.0g/L~95.0g/L、55.0g/L~95.0g/L、65.0g/L~95.0g/L、75.0g/L~95.0g/L、または85.0g/L~95.0g/Lの濃度で存在することができる。いくつかの実施形態では、供給流101中のコモノマーの濃度は、0.0g/L~90.0g/L、0.0g/L~80.0g/L、0.0g/L~70.0g/L、0.0g/L~60.0g/L、0.0g/L~50.0g/L、0.0g/L~40.0g/L、0.0g/L~30.0g/L、0.0g/L~20.0g/L、または0.0g/L~10.0g/Lである。
【0073】
実施形態では、第1の触媒は、0.06マイクロモル/リットル(μモル/L)~3.00μモル/L、例えば、0.500μモル/L~3.00μモル/L、1.00μモル/L~3.00μmol/L、1.50μmol/L~3.00μmol/L、2.00μmol/L~3.00μmol/L、または2.50μmol/L~3.00μmol/Lの濃度で第1の反応器110に存在する。実施形態では、第1の触媒は、0.06μモルL~2.50μモル/L、例えば、0.06μモル/L~2.00μモル/L、0.06μモル/L~1.50μモル/L、0.06μmol/L~1.00μmol/L、0.06μmol/L~0.500μmol/L、0.06μmol/L~0.250μmol/L、または0.06μmol/L~0.100μmol/Lの濃度で第1の反応器110に存在する。
【0074】
これらの反応条件下で、エチレンモノマー、C3-C12αオレフィンコモノマー、および、任意選択で水素は、第1の触媒、例えば上記の触媒などの存在下で反応させ、第1のポリマー画分を形成する。実施形態では、この第1のポリマー画分は、ミキサー130で形成された第2のポリマー画分よりも密度が低く、メルトインデックス(I2)が低い。
【0075】
本開示において上述したように、少なくとも第1のポリマー画分、未反応のエチレンモノマー、および未反応C3-C12αオレフィンコモノマーは、第1の反応器110を出て流出物111aに入る。第2の触媒は第2の触媒流112を通じて流出物111aに導入され、未反応のエチレンモノマーおよび未反応のC3-C12αオレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し、第2のポリマー画分を形成する。供給流101および流出物111aの両方に存在する高濃度のエチレンモノマーは、第2の触媒流112がミキサー130で流出物111aに導入され、第2のポリマー画分を形成できる際に十分なエチレンが存在することを確実にする。
【0076】
実施形態では、流出物111aは、20グラム/リットル(g/L)~45g/Lのエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、流出物111aは、25g/L~45g/Lのエチレンモノマー、例えば、30g/L~45g/Lのエチレンモノマー、35g/L~45g/Lのエチレンモノマー、または40g/L~45g/Lのエチレンモノマーを含む。他の実施形態では、流出物111aは、20g/L~40g/Lのエチレンモノマー、例えば、20g/L~35g/Lのエチレンモノマー、20g/L~30g/Lのエチレンモノマー、または20g/L~25g/Lのエチレンモノマーを含む。
【0077】
改変された流出物111b(エチレンモノマー、C3-C12αオレフィンコモノマー、第2の触媒、および第2のポリマー画分を含む)は、ミキサー130の中を第2の反応器120に向かって進み、改変された流出物111bに存在するエチレンモノマーおよびC3-C12αオレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し続け、第2のポリマー画分を形成する。第2の触媒流112が流出物111aに導入される温度は、第1の反応器110内の温度(すなわち、155℃~190℃)にほぼ等しく、第2の反応器の温度よりも低いことを理解されたい。さらに、エチレンモノマーは第1の反応器110で反応して第1のポリマー画分を形成するが、第1の反応器110に導入されるエチレンの量は、流出物111a中の未反応エチレンモノマーの濃度が第2のポリマー画分を形成するのに十分であるような量である。いくつかの実施形態では、追加の新鮮なエチレンモノマーを、流出物111a(すなわち、第2の触媒流112が流出物に導入される前)または改変された流出物111b(すなわち、第2の触媒流112が流出物に導入された後)のいずれかに添加することができる。実施形態では、第2の触媒の存在下におけるエチレンモノマーとC3-C12αオレフィンコモノマーとの反応は、ミキサー130で生じる。改変された流出物111bは第2の反応器120に導入される前に、第2の触媒の存在下でエチレンモノマーとC3-C12αオレフィンコモノマーとを反応させ、高分子量高密度画分を有する第2のポリマー画分を生成し、順に密度とメルトインデックスのバランスがより優れた二峰性エチレン系ポリマーが順に得られる。特定の理論に拘束されることなく、改変された流出物111bの比較的低い温度および改変された流出物111b中の高濃度のエチレンモノマーは、例えば、第2の触媒が第2の反応器およびより高温で添加される従来のプロセスで達成される伝播速度よりも2~4倍高い伝播速度などの伝播速度の増加をもたらすと考えられる。伝播速度の増加は、二峰性エチレン系ポリマーにおいて高分子量高密度画分を提供すると考えられている。
【0078】
第2の触媒流112を通じて流出物111aに導入される第2の触媒は、実施形態では、上記で詳細に説明されたチーグラー・ナッタ触媒または第2の分子触媒である。実施形態において、例示的なチーグラー・ナッタ触媒は、(1)有機マグネシウム化合物、(2)ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アルミニウムまたは塩化水素、および(3)遷移金属化合物から誘導されるものである。そのような触媒の例は、米国特許第4,314,912号(Lowery,Jr.et al.)、同第4,547,475号(Glass et al.)、および同第4,612,300号(Coleman,III)に記載されており、その教示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。チーグラー・ナッタ・プロ触媒は、(a)炭化水素に可溶な有機マグネシウム化合物またはその複合体と活性な非金属または金属ハロゲン化物とを反応させてハロゲン化マグネシウム担体を形成すること、b)ハロゲン化マグネシウム担体を、調整されたハロゲン化マグネシウム支持体を形成するのに十分な条件下で、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびテルルからなる群から選択される元素を含む調整化合物と接触させること、(c)ハロゲン化マグネシウム担体と、第1の金属としてチタンを含む化合物とを接触させて、担持チタン化合物を形成すること、(d)任意選択で、第2の金属および第3の金属が同じでないという条件で、さらにマグネシウムとチタンおよび第2および第3の金属の組み合わせとのモル比が30:1~5:1の範囲であるという条件で、担持チタン化合物と、遷移金属系列から独立して選択される第2の金属および任意選択で第3の金属とを接触させること、によって、すべてプロ触媒を形成するのに十分な条件下で、形成することができる。
【0079】
特に、チーグラー・ナッタ触媒で使用するのに好適な有機マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムジアルキルおよびマグネシウムジアリールなどの炭化水素に可溶なジヒドロカルビルマグネシウムが挙げられる。例示的な好適なマグネシウムジアルキルとしては、特に、n-ブチル-secブチルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、イソプロピル-n-ブチル-マグネシウム、エチル-n-ヘキシル-マグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム等が挙げられ、アルキルが1~20個の炭素原子を有する。例示的な好適なマグネシウムジアリールとしては、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、およびジトリルマグネシウムが挙げられる。好適な有機マグネシウム化合物としては、アルキルおよびアリールマグネシウムアルコキシドならびにアリールオキシド、ならびにアリールおよびアルキルマグネシウムハロゲン化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物は、ハロゲンを含まない有機マグネシウムである。
【0080】
改変された流出物111b(未反応メチレン、未反応C3-C12αオレフィンコモノマー、第2の触媒、第1のポリマー画分、および第2のポリマー画分を含む)は、第2の反応器120に導入される前に、3分~5分、または3分~4分など、3分~6分の持続時間、ミキサー130中に存在する。
【0081】
改質された流出物111bが、非攪拌溶液重合反応器である第2の反応器120に導入された後、改変された流出物111bは、第1の反応器110の温度よりも高く、ミキサー130内の改変された流出物111bの温度よりも高い温度に加熱される。実施形態では、第2の反応器120内の温度は、190℃~265℃である。第2の反応器120内の温度は、いくつかの実施形態では、195℃~265℃、例えば、200℃~265℃、205℃~265℃、210℃~265℃、215℃~265℃、220℃~265℃、225℃~265℃、230℃~265℃、235℃~265℃、240℃~265℃、240℃~265℃、245℃~265℃、250℃~265℃、または255℃~265℃である。他の実施形態では、第2の反応器内の温度は、190℃~260℃、例えば、190℃~255℃、190℃~250℃、190℃~245℃、190℃~240℃、190℃~235℃、190℃~230℃、190℃~225℃、190℃~220℃、190℃~215℃、190℃~210℃、190℃~205℃、190℃~200℃、または190℃~195℃である。上記の温度範囲は、本明細書に列挙された端点を含み(例えば、「190℃~265℃」とは190℃と265℃の両方を含む)、第2の反応器120の温度は、任意の従来の反応器温度監視システムおよびソフトウェアで測定できることを理解されたい。
【0082】
第2の反応器120に入る改変流出物111b中の未反応エチレンモノマーおよび未反応C
3-C
12αオレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。加えて、溶媒中にエチレンモノマーおよびC
3-C
12αオレフィンコモノマーを含む第2の供給流121は、第2の反応器120に導入される。第2の供給流121からのエチレンモノマーおよびC
3-C
12αオレフィンコモノマーも、第2の触媒の存在下で反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。
図1は、第2の供給流121を単一の供給流として示しているが、成分は、第2の反応器120に個別に導入され得ることが理解されよう。
【0083】
第2の反応器120で十分な時間が経過した後、二峰性エチレン系ポリマーを含む生成物流122は、第2の反応器120を出る。生成物流122に存在する二峰性エチレン系ポリマーの特性は、以下でより詳細に説明される。
図1および
図2には示されていないが、生成物流122に存在する任意の未反応エチレンモノマー、未反応C
3-C
12αオレフィンコモノマー、および溶媒は、二峰性のエチレン系ポリマーから分離され、第1の反応器110への供給流101または第2の反応器120への第2の供給流121におけるシステム100または200に再循環できることが理解されよう。
【0084】
システム100におけるエチレンモノマーの過剰変換率は、90%~94%、例えば、91%~94%、92%~94%、または93%~94%である。
【0085】
二峰性エチレン系ポリマー特性
【0086】
ここで、本明細書に開示および記載された実施形態に従って製造された二峰性エチレン系ポリマーの例示的な特性が提供される。上記のように、特定の理論に拘束されることなく、以下に列挙される例示的な特性の組み合わせは、上記に開示および説明されたプロセスおよびシステムによって可能になると考えられる。
【0087】
実施形態によると、二峰性エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定された0.900~0.925g/ccの密度を有し得る。いくつかの実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、0.910g/cc~0.925g/cc、0.915g/cc~0.925g/cc、または0.920g/cc~0.925g/ccなどの0.905g/cc~0.925g/ccの密度を有する。他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、0.900g/cc~0.915g/cc、0.900g/cc~0.910g/cc、または0.900g/cc~0.905g/ccなどの0.900g/cc~0.920g/ccの密度を有する。さらに他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、0.910g/cc~0.915g/ccなどの0.905g/cc~0.920g/ccの密度を有する。さらに他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、0.910g/cc~0.920g/cc、または0.910g/cc~0.918g/ccの密度を有する。上記の密度範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0088】
実施形態の二峰性エチレン系ポリマーは、93℃~119℃の温度で結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される3.0%~25.0%の高密度画分(HDF)を有し、例えば、5.0%~25.0%、7.5%~25.0%、10.0%~25.0%、12.5%~25.0%、15.0%~25.0%、17.5%~25.0%、20.0%~25.0%、または22.5%~25.0%である。他の実施形態において、実施形態の二峰性エチレン系ポリマーは、3.0%~22.5%のHDFを有し、例えば、3.0%~20.0%、3.0%~17.5%、3.0%~15.0%、3.0%~12.5%、3.0%~10.0%、3.0%~7.5%、または3.0%~5.0%である。さらに他の実施形態では、実施形態の二峰性エチレン系ポリマーは、5.0%~22.5%、例えば、7.5%~20.0%、10.0%~17.5%、または12.5%~15.0%のHDFを有する。上記のHDF範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0089】
実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、10分あたり0.5グラム(g/10分)~2.0g/10分のメルトインデックス(I2)(2.16kgの負荷でASTM D 1238に従って測定される)を有し、たとえば、0.7g/10分~2.0g/10分、0.9g/10分~2.0g/10分、1.0g/10分~2.0g/10分、1.2g/10分~2.0g/10分、1.4g/10分~2.0g/10分、1.6g/10分~2.0g/10分、または1.8g/10分~2.0g/10分である。他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、0.5g/10分~1.8g/10分のI2を有し、たとえば、0.5g/10分~1.6g/10分、0.5g/10分~1.4g/10分、0.5g/10分~1.2g/10分、0.5g/10分~1.0g/10分、0.5g/10分~0.9g/10分、または0.5g/10分~0.7g/10分である。さらに他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、0.7g/10分~1.8g/10分のI2を有し、たとえば、0.9g/10分~1.6g/10分、1.0g/10分~1.4g/10分、または1.1g/10分~1.2g/10分、または3.0g/10分~3.5g/10分である。上記のI2範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0090】
二峰性エチレン系ポリマーは、5.5~7.5のI10/I2比(I2は、荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスであり、I10は、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスである)を有し、例えば6.0~7.5、6.5~7.5、または7.0~7.5、7.0~7.5である。いくつかの実施形態において、二峰性エチレン系ポリマーは、5.5~6.5、または5.5~6.0などの5.5~7.0のI10/I2比を有し得る。さらに他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、6.0~7.0のI10/I2比を有する。上記のI10/I2比範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0091】
二峰性エチレン系ポリマーの短鎖分岐分布(SCBD)は、実施形態によれば、10℃未満であり、CEF半値全幅によって測定される。いくつかの実施形態において、二峰性エチレン系ポリマーのSCBDは、9℃未満、8℃未満、7℃未満、6℃未満、5℃未満、4℃未満、または3℃未満である。上記のSCBD範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0092】
二峰性エチレン系ポリマーは、実施形態に従って、1.1~3.0のゼロせん断粘度比を有し、例えば、1.2~3.0、1.3~3.0、1.4~3.0、1.5~3.0、1.6~3.0、1.7~3.0、1.8~3.0、1.9~3.0、2.0~3.0、2.1~3.0、2.2~3.0、2.3~3.0、2.4~3.0、2.5~3.0、2.6~3.0、2.7~3.0、2.8~3.0、または2.9~3.0である。いくつかの実施形態において、二峰性エチレン系ポリマーは、1.1~2.9、1.1~2.8、1.1~2.7、1.1~2.6、1.1~2.5、1.1~2.4のゼロせん断粘度比を有し、例えば、1.1~2.3、1.1~2.2、1.1~2.2、1.1~2.1、1.1~2.0、1.1~1.9、1.1~1.8、1.1~1.7、1.1~1.6、1.1~1.5、1.1~1.4、1.1~1.3、または1.1~1.2である。さらに他の実施形態において、二峰性エチレン系ポリマーは、1.2~2.9のゼロ先端速度比を有し、例えば1.3~2.8、1.4~2.7、1.5~2.6、1.6~2.5、1.7~2.4、1.8~2.3、1.9~2.2、または2.0~2.1である。上記のゼロせん断粘度比の範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0093】
実施形態による二峰性エチレン系ポリマーは、第1のポリマー画分の70.0重量パーセント(重量%)~92.0重量%、および第2のポリマー画分の8.0重量%~30.0重量%を含む。いくつかの実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、第1のポリマー画分の72.0重量%~92.0重量%を含み、例えば、第1のポリマー画分の74.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の76.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の78.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の80.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の82.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の84.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の86.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の88.0重量%~92.0重量%、または第1のポリマー画分の90.0重量%~92.0重量%である。他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、第1のポリマー画分の70.0重量%~90.0重量%を含み、例えば、第1のポリマー画分の70.0重量%~88.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~86.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~84.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~82.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~80.0、第1のポリマー画分の70.0重量%~78.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~76.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~74.0重量%、または第1のポリマー画分の70.0重量%~72.0重量%である。さらに他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、第1のポリマー画分の72.0重量%~90.0重量%を含み、例えば、第1のポリマー画分の74.0重量%~88.0重量%、第1のポリマー画分の76.0重量%~86.0重量%、第1のポリマー画分の78.0重量%~84.0重量%、または第1のポリマー画分の80.0重量%~82.0重量%である。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0094】
いくつかの実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、第2のポリマー画分の10.0重量%~30.0重量%を含み、例えば、第2のポリマー画分の12.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の14.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の16.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の18.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の20.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の22.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の24.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の26.0重量%~30.0重量%、または第2のポリマー画分の28.0重量%~30.0重量%である。他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、第2のポリマー画分の8.0重量%~28.0重量%を含み、例えば、第2のポリマー画分の8.0重量%~26.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~24.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~22.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~20.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~18.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~16.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~14.0重量%、または第2のポリマー画分の8.0重量%~12.0重量%である。さらに他の実施形態では、二峰性エチレン系ポリマーは、第2のポリマー画分の10.0重量%~28.0重量%、第2のポリマー画分の12.0重量%~26.0重量%、第2のポリマー画分の14.0重量%~24.0重量%、第2のポリマー画分の16.0重量%~22.0重量%、または第2のポリマー画分の18.0重量%~20.0重量%を含む。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0095】
二峰性エチレン系ポリマーの各ポリマー画分の量は、用途または使用に基づいて調整され得る。例えば、二峰性エチレン系ポリマーがより高い温度(例えば、40℃超の温度)に曝される用途に対して低温用途(例えば、0℃未満)では、特性の異なるバランスが望ましい場合がある。
【0096】
実施形態では、第2のポリマー画分のメルトインデックスおよび密度は、ミキサー130および第2の反応器120の反応環境で形成されるポリマー画分からなる。ミキサー130で作製されたポリマー画分は、より低いメルトインデックス(MI)を有し、第2の反応器120で形成されたポリマー画分は、より高いMIを有する(例えば、ミキサー130で形成されたポリマー画分よりも約4倍高い)。ミキサー130および第2の反応器120で形成され組み合わされた第2のポリマー画分は、第1のエチレン系ポリマー画分の密度よりも少なくとも0.03g/cc大きい高密度画分を有し、例えば、CEFピーク温度で示されるように少なくとも0.04g/cc大きい密度である。さらに、本明細書に開示および記載される実施形態による二峰性エチレン系ポリマーを形成するためのプロセスを用いて、最終的な二峰性エチレン系ポリマー(すなわち、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含む)は、第1のポリマー画分より高い密度およびより高いメルトインデックス(I2)を有する。また、ミキサーで形成された第2のポリマー画分の部分は、第2の非攪拌反応器で形成された第2のポリマー画分の部分よりも高分子量である。
【0097】
実施形態では、インフレーションフィルムで使用される二峰性エチレン系ポリマーは、3.0%~25.0%の高密度画分(HDF)を含み、高密度画分は、93℃~119の温度で結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定され、I10/I2比は、5.5~7.5であり、I2は、荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスであり、I10は、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスであり、短鎖分岐分布(SCBD)は、10℃以下であり、短鎖分岐分布は、CEF半値全幅によって測定され、ゼロせん断粘度比は、1.0~2.5であり、密度は、0.902g/cc~0.925g/ccであり、メルトインデックス(I2)は、0.5g/10分~2.0g/10分である。
【0098】
インフレーションフィルムおよび特性
【0099】
実施形態では、インフレーションフィルムは、インフレーションフィルム押出しプロセスによって形成され、ここで、上記に開示された二峰性エチレン系ポリマーは、環状円形ダイを通して溶融押出しされ、それによってチューブを形成する。チューブは、空気によって、例えばその直径の2倍または3倍に膨張し、同時に、冷却空気はウェブを固体状態へと冷却する。吹込みまたは伸張の程度によって、引張特性および衝撃特性のバランスとレベルが決まる。押出し量および光学品質を向上させるために、内部空冷リングを同様に使用することもできる。透明で光沢のあるフィルムを得るのに必要な結晶構造を実現するには、急速な冷却が不可欠である。次に、フィルムチューブは、ローラーのV字型フレーム内で折りたたまれ、フレームの端で挟まれて気泡内に空気を閉じ込める。ニップロールはまた、フィルムをダイから延伸する。延伸速度は、ブロー延伸比によって達成される横方向特性と物理的特性とのバランスをとるように制御される。チューブは、それ自体で巻かれてもよく、またはスリットされて、単一フィルム層として1つまたは複数のロール上に巻かれてもよい。チューブは直接バッグに加工することもできる。
【0100】
実施形態では、インフレーションフィルムはインフレーションフィルム押出しプロセスによって形成され、該プロセスでは、上記に開示された二峰性エチレン系ポリマーが別のポリマーまたは添加剤と混合され、該混合物が環状円形ダイを通して溶融押出され、それによってチューブを形成する。チューブは、空気によって、例えばその直径の2倍または3倍に膨張し、同時に、冷却空気はウェブを固体状態へと冷却する。吹込みまたは伸張の程度によって、引張特性および衝撃特性のバランスとレベルが決まる。押出し量および光学品質を向上させるために、内部空冷リングを同様に使用することもできる。透明で光沢のあるフィルムを得るのに必要な結晶構造を実現するには、急速な冷却が不可欠である。次に、フィルムチューブは、ローラーのV字型フレーム内で折りたたまれ、フレームの端で挟まれて気泡内に空気を閉じ込める。ニップロールはまた、フィルムをダイから延伸する。延伸速度は、ブロー延伸比によって達成される横方向特性と物理的特性とのバランスをとるように制御される。チューブは、それ自体で巻かれてもよく、またはスリットされて、単一フィルム層として1つまたは複数のロール上に巻かれてもよい。チューブは直接バッグに加工することもできる。
【0101】
一部のプロセスでは、可塑剤などの加工助剤を二峰性エチレン系ポリマー製品に含めることもできる。これらの助剤は、ジオクチルフタレートおよびジイソブチルフタレートなどのフタレート、ラノリンなどの天然油、ならびに石油精製から得られるパラフィン、ナフテン油および芳香油、ならびにロジンまたは石油原料由来の液体樹脂を含むが、これらに限定されない。加工助剤として有用で例示的な等級の油は、KAYDOL油(Chemtura Corp.、Middlebury,Conn.)およびSHELLFLEX 371ナフテン油(Shell Lubricants、Houston,Tex.)などの白色鉱油を含む。別の好適な油は、TUFFLO油(Lyondell Lubricants、Houston、Tex.)である。
【0102】
一部のプロセスでは、二峰性エチレン系ポリマー組成物は、1つまたは複数の安定剤、たとえば、IRGANOX 1010およびIRGAFOS168(Ciba Specialty Chemicals、Glattbrugg、Switzerland)などの酸化防止剤で処理される。一般に、ポリマーは、押出しまたは他の溶融プロセスの前に1つまたは複数の安定剤で処理される。他の実施形態プロセスにおいて、他の重合体添加剤には、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核形成剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、煙抑制剤、粘度調整剤、およびブロッキング防止剤が挙げられるが、これらに限定されない。二峰性エチレン系ポリマー組成物は、例えば、本発明のエチレン系ポリマー組成物の重量に基づいて、合計重量で10パーセント未満の1つ以上の添加剤を含むことができる。
【0103】
生成された二峰性エチレン系ポリマー組成物が、さらに配合され得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗酸化剤は、二峰性エチレン系ポリマー組成物にさらに配合され、配合されたポリマーはペレット化される。配合されたエチレン系ポリマー組成物は、任意の量の1つまたは複数の抗酸化剤を含み得る。例えば、配合された二峰性エチレン系ポリマー組成物は、二峰性エチレン系ポリマー組成物100万部あたり約200~約600部の1つまたは複数のフェノール系酸化防止剤を含み得る。さらに、配合されたエチレン系ポリマー組成物は、本発明のエチレン系ポリマー組成物100万部あたり約800~約1200部の亜リン酸塩系酸化防止剤を含み得る。
【0104】
二峰性エチレン系ポリマー組成物は、単層フィルムなどの少なくとも1つのフィルム層、またはキャスト、ブロー、カレンダー、または押出しコーティングプロセスによって調製された多層フィルムの少なくとも1つの層を含む物体、ブロー成形品、射出成形品、または回転成形品などの成形品、押出し品、繊維、ならびに織布または不織布を含む有用な物品を製造するために、様々な従来の熱可塑性製造プロセスで使用され得る。二峰性エチレン系ポリマー組成物を含む熱可塑性組成物には、他の天然材料または合成材料、ポリマー、添加剤、強化剤、耐発火性添加剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤、および可塑剤とのブレンドが含まれる。
【0105】
添加剤およびアジュバントは、形成後に本発明のエチレン系ポリマー組成物に添加することができる。適切な添加剤には、粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末状金属を含む有機または無機の粒子、炭素繊維、窒化ケイ素繊維、鋼線またはメッシュ、およびナイロンまたはポリエステルのコードを含む有機または無機の繊維、ナノ粒子、粘土などの充填剤、粘着付与剤、パラフィン油またはナフテン油を含むエクステンダー油、ならびに本実施形態の方法にしたがって作製されるまたは作製できる他のポリマーを含む他の天然および合成のポリマーが含まれる。
【0106】
二峰性エチレン系ポリマー組成物と他のポリオレフィンとのブレンドおよび混合物を実施することができる。本発明のエチレン系ポリマー組成物とブレンドするのに好適なポリマーとしては、天然および合成のポリマーを含む熱可塑性および非熱可塑性ポリマーが挙げられる。ブレンド用ポリマーの例としては、ポリプロピレン(衝撃性改良ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、およびランダムエチレン/プロピレンコポリマー)、高圧フリーラジカル低密度ポリエチレン(LDPE)、チーグラー・ナッタ直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンPEを含み、多重反応器PE(例えば米国特許第6,545,088号(Kolthammer,et al.)、同第6,538,070号(Cardwell,et al.)、同第6,566,446号(Parikh,et al.)、同第5,844,045号(Kolthammer,et al.)、同第5,869,575号(Kolthammer,et al.)、および同第6,448,341号(Kolthammer,et al.)に開示されている生成物などのチーグラー・ナッタPEとメタロセンPEとの「反応器内」ブレンド)を含む、様々な種類のポリエチレン(PE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、衝撃性改良ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、およびこれらの水素化誘導体(スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)およびスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、ならびに熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。オレフィンプラストマーおよびエラストマーなどの均一ポリマー、エチレンおよびプロピレン系コポリマー(例えば、VERSIFY(商標)Plastomers&Elastomers(The Dow Chemical Company)、SURPASS(商標)(Nova Chemicals)およびVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)の商品名で入手可能なポリマー)もまた、本発明のエチレン系ポリマーを含むブレンドの構成成分として有用であり得る。本明細書に開示される二峰性エチレン系ポリマーと混合するのに適したポリマーには、実施形態において、例えば、AGILITY 1200(The Dow Chemical Companyによって製造される)などのLDPEおよびLLDPEが含まれる。
【0107】
ここで、本明細書に開示および記載された実施形態に従って製造された二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルムの例示的な特性が提供される。上記のように、二峰性エチレン系ポリマーの分子構成(例えば、分子量分布、分岐構造など)は、様々な二峰性エチレン系ポリマーから製造されたインフレーションフィルムの特性に影響を及ぼす。本明細書に開示されるインフレーションフィルムの特性は、本開示の範囲内で任意の方法で組み合わせることができることを理解されたい。以下のフィルム特性は、上記のように製造され(二峰性エチレン系ポリマーを別のポリマーと混合しない)、約2.0ミルの厚さを有するインフレーションフィルムで測定された。
【0108】
実施形態のインフレーションフィルムは、97.0%~99.5%、例えば、97.5%~99.5%、98.0%~99.5%、98.5%~99.5%、または99.0%~99.5%の範囲の平均透明度を有する。実施形態では、インフレーションフィルムは、97.0%~99.0%、例えば、97.0%~98.5%、97.0%~98.0%、または97.0%~97.5%の平均透明度を有する。さらに他の実施形態では、インフレーションフィルムは、97.5%~99.0%、例えば、98.0%~98.5%の平均透明度を有する。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0109】
実施形態では、インフレーションフィルムは、50~75、例えば55~75、60~75、65~75、または70~75の平均光沢を有する。いくつかの実施形態によれば、インフレーションフィルムは、50~65、50~60、または50~55などの50~70の平均光沢を有する。他の実施形態では、インフレーションフィルムは、60~65など、55~70の平均光沢を有する。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0110】
実施形態のインフレーションフィルムは、6.25%~13.75%、例えば6.50%~13.75%、7.00%~13.75%、7.50%~13.75%、8.00%~13.75%、8.50%~13.75%、9.00%~13.75%、9.50%~13.75%、10.00%~13.75%、10.50%~13.75%、11.00%~13.75%、11.50%~13.75%、12.00%~13.75%、12.50%~13.75%、13.00%~13.75%、または13.50%~13.75%の平均バルクヘイズを有する。いくつかの実施形態では、インフレーションフィルムは、6.25%~13.50%、例えば、6.25%~13.00%、6.25%~12.50%、6.25%~12.00%、6.25%~11.50%、6.25%~11.00%、6.25%~10.50%、6.25%~10.00%、6.25%~9.50%、6.25%~9.00%、6.25%~8.50%、6.25%~8.00%、6.25%~7.50%、6.25%~7.00%、または6.25%~6.50%の平均バルクヘイズを有する。他の実施形態において、インフレーションフィルムは、6.50%~13.50%、例えば、7.00%~13.00%、7.50%~12.50%、8.00%~12.00%、8.50%~11.50%、9.00%~11.00%、または9.50%~10.50%の平均バルクヘイズを有する。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0111】
実施形態によれば、インフレーションフィルムは、450g/ミル~700g/ミル、例えば475g/ミル~700g/ミル、500g/ミル~700g/ミル、525g/ミル~700g/ミル、550g/ミル~700g/ミル、575g/ミル~700g/ミル、600g/ミル~700g/ミル、625g/ミル~700g/ミル、650g/ミル~700g/ミル、または675g/ミル~700g/ミルの平均ダーツ衝撃強度を有する。実施形態では、インフレーションフィルムは、450g/ミル~675g/ミル、例えば、450g/ミル~650g/ミル、450g/ミル~625g/ミル、450g/ミル~600g/ミル、450g/ミル~575g/ミル、450g/ミル~550g/ミル、450g/ミル~525g/ミル、450g/ミル~500g/ミル、または450g/ミル~475g/ミルの平均ダーツ衝撃強度を有する。他の実施形態では、インフレーションフィルムは、475g/ミル~675g/ミル、例えば、500g/ミル~650g/ミル、525g/ミル~625g/ミル、または550g/ミル~600g/ミルの平均ダーツ衝撃強度を有する。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0112】
実施形態のインフレーションフィルムは、立方インチ当たり125.0フィートポンド(フィートポンド/インチ3)~175.0フィートポンド/インチ3、例えば、130.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3、135.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3、140.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3、145.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3、150.0フィートポンド/インチ3~175.0フフィートポンド/インチ3、155.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3、160.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3、165.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3、または170.0フィートポンド/インチ3~175.0フィートポンド/インチ3の平均穿刺を有する。実施形態では、インフレーションフィルムは、125.0フィートポンド/インチ3~170.0フィートポンド/インチ3、例えば125.0フィートポンド/インチ3~165.0フィートポンド/インチ3、125.0フィートポンド/インチ3~160.0フィートポンド/インチ3、125.0フィートポンド/インチ3~155.0フィートポンド/インチ3、125.0フィートポンド/インチ3~150.0フィートポンド/インチ3、125.0フィートポンド/インチ3~145.0フィートポンド/インチ3、125.0フィートポンド/インチ3~140.0フィートポンド/インチ3、125.0フィートポンド/インチ3~135.0フィートポンド/インチ3、または125.0フィートポンド/インチ3~130.0フィートポンド/インチ3の平均穿刺を有する。実施形態では、インフレーションフィルムは、130.0フィートポンド/インチ3~170.0フィートポンド/インチ3、例えば135.0フィートポンド/インチ3~165.0フィートポンド/インチ3、140.0フィートポンド/インチ3~160.0フィートポンド/インチ3、または145.0フィートポンド/インチ3~155.0フィートポンド/インチ3の平均穿刺を有する。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0113】
実施形態のインフレーションフィルムは、機械横断方向(CD)において、325g/ミル~550g/ミル、例えば、350g/ミル~550g/ミル、375g/ミル~550g/ミル、400g/ミル~550g/ミル、425g/ミル~550g/ミル、450g/ミル~550g/ミル、475g/ミル~550g/ミル、500g/ミル~550g/ミル、または525g/ミル~550g/ミルの平均引裂きを有する。いくつかの実施形態では、インフレーションフィルムは、CDにおいて、325g/ミル~525g/ミル、例えば325g/ミル~500g/ミル、325g/ミル~475g/ミル、325g/ミル~450g/ミル、325g/ミル~425g/ミル、325g/ミル~400g/ミル、325g/ミル~375g/ミル、または325g/ミル~350g/ミルの平均引裂きを有する。いくつかの実施形態では、インフレーションフィルムは、CDにおいて、350g/ミル~525g/ミル、例えば375g/ミル~500g/ミル、375g/ミル~475g/ミル、または400g/ミル~450g/ミルの平均引裂きを有する。上記の範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0114】
実施形態によれば、インフレーションフィルムは、機械方向(MD)において、250g/ミル~350g/ミル、例えば、275g/ミル~350g/ミル、300g/ミル~350g/ミル、または325g/ミル~350g/ミルの平均引裂きを有する。実施形態では、インフレーションフィルムは、MDにおいて、250g/ミル~325g/ミル、例えば、250g/ミル~300g/ミル、または250g/ミル~275g/ミルの平均引裂きを有する。実施形態では、インフレーションフィルムは、MDにおいて、275g/ミル~325g/ミルの平均引裂きを有する。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0115】
実施形態のインフレーションフィルムは、CDにおいて、10,000ポンド/平方インチ(psi)~39,000psiの平均割線弾性係数を有し、例えば15,000psi~39,000psi、20,000psi~39,000psi、25,000psi~39,000psi、30,000psi~39,000psi、または35,000psi~39,000psiである。実施形態では、インフレーションフィルムは、CDにおいて、10,000psi~35,000psiの平均割線弾性係数を有し、例えば10,000psi~30,000psi、10,000psi~25,000psi、10,000psi~20,000psi、または10,000psi~15,000psiである。実施形態では、インフレーションフィルムは、CDにおいて、15,000psi~35,000psiの平均割線弾性係数を有し、例えば20,000psi~30,000psiである。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0116】
実施形態によれば、インフレーションフィルムは、MDにおいて、10,000ポンド/平方インチ(psi)~39,000psiの平均割線弾性係数を有し、例えば15,000psi~39,000psi、20,000psi~39,000psi、25,000psi~39,000psi、30,000psi~39,000psi、または35,000psi~39,000psiである。実施形態では、インフレーションフィルムは、MDにおいて、10,000psi~35,000psiの平均割線弾性係数を有し、例えば10,000psi~30,000psi、10,000psi~25,000psi、10,000psi~20,000psi、または10,000psi~15,000psiである。実施形態では、インフレーションフィルムは、MDにおいて、20,000psi~30,000psiなどの15,000psi~35,000psiの平均割線弾性係数を有する。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0117】
実施形態のインフレーションフィルムは、CDにおいて、7500.0psi~8000.0psiの平均引張強度を有し、例えば、7550.0psi~8000.0psi、7600.0psi~8000.0psi、7650.0psi~8000.0psi、7700.0psi~8000.0psi、7750.0psi~8000.0psi、7800.0psi~8000.0psi、7850.0psi~8000.0psi、7900.0psi~8000.0psi、または7950.0psi~8000.0psiである。実施形態では、インフレーションフィルムは、CDにおいて、7500.0psi~7950.0psiの平均引張強度を有し、例えば7500.0psi~7900.0psi、7500.0psi~7850.0psi、7500.0psi~7800.0psi、7500.0psi~7750.0psi、7500.0psi~7700.0psi、7500.0psi~7650.0psi、7500.0psi~7600.0psi、または7500.0psi~7550.0psiである。実施形態では、フィルムは、CDにおいて、7550.0psi~7950.0psiの平均引張強度を有し、例えば7600.0psi~7900.0psi、7650.0psi~7850.0psi、または7700.0psi~7800.0psiである。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0118】
実施形態では、インフレーションフィルムは、MDにおいて、8000.0psi~8700.0psiの平均引張強度を有し、例えば、8050.0psi~8700.0psi、8100.0psi~8700.0psi、8150.0psi~8700.0psi、8200.0psi~8700.0psi、8250.0psi~8700.0psi、8300.0psi~8700.0psi、8350.0psi~8700.0psi、8400.0psi~8700.0psi、8450.0psi~8700.0psi、8500.0psi~8700.0psi、8550.0psi~8700.0psi、8600.0psi~8700.0psi、または8650.0psi~8700.0psiである。実施形態によれば、インフレーションフィルムは、MDにおいて、8000.0psi~8650.0psiの平均引張強度を有し、例えば、8000.0psi~8600.0psi、8000.0psi~8550.0psi、8000.0psi~8500.0psi、8000.0psi~8450.0psi、8000.0psi~8400.0psi、8000.0psi~8350.0psi、8000.0psi~8300.0psi、8000.0psi~8250.0psi、8000.0psi~8200.0psi、8000.0psi~8150.0psi、8000.0psi~8100.0psi、または8000.0psi~8050.0psiである。実施形態では、インフレーションフィルムは、8050.0psi~8650.0psiの平均引張強度を有し、例えば8100.0psi~8600.0psi、8150.0psi~8550.0psi、8200.0psi~8500.0psi、8250.0psi~8450.0psi、または8300.0psi~8400.0psiである。上記の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0119】
上に開示したように、本明細書に開示した二峰性エチレン系ポリマーからインフレーションフィルムを形成すると、インフレーションフィルムは、光学特性、酷使特性のバランスが良く、機械的特性を定式化できる。すなわち、本明細書に開示されるインフレーションフィルムの個々の光学特性、酷使特性、および機械的特性は、個別に考慮した場合、他の既知のフィルムよりも良好に機能しない可能性があるが、フィルムの光学特性、酷使特性、および機械的特性を全体として考慮すると、本明細書に開示されるインフレーションフィルムは、他の既知のフィルムよりも良好に機能する。一例として、本明細書に開示されるインフレーションフィルムは、他の既知のフィルムと同等な酷使特性を有し得るが、本明細書に開示されるインフレーションフィルムは、例えば、他の既知のフィルムよりも優れた光学特性を有する。したがって、従来、インフレーションフィルムの特性のバランスをとることは不可能であり、インフレーションフィルムの全体的な性能を本明細書に開示および記載した。
【0120】
試験方法
【0121】
試験方法は、以下を含む。
【0122】
メルトインデックス(I2)および(I10)
【0123】
ASTM D1238に従って190℃、2.16kgで測定された二峰性エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I2)値。同様に、二峰性エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I10)値は、ASTM D1238に従って190℃、10kgで測定した。値はg/10分で報告し、g/10分は10分あたりに溶出したグラムに対応する。第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分のメルトインデックス(I2)値は、式30および下記の方法に従って計算した。
【0124】
密度
【0125】
二峰性エチレン系ポリマーの密度測定を、ASTM D792、方法Bに従って行った。第1および第2のエチレン系成分については、式28および下記の方法論を用いて密度の値を得た。第3のエチレン系成分について、密度値は式29を使用して計算した。
【0126】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来型GPC)
【0127】
クロマトグラフィーシステムは、内蔵型IR5赤外線検出器(IR5)を備えたPolymerChar GPC-IR(バレンシア、スペイン)高温GPCクロマトグラフから構成された。オートサンプラーオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有した。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。
【0128】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/モルの範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準は、1,000,000g/モル以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラム、および1,000,000g/モル未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムで調製された。ポリスチレン標準を、80℃で30分間穏やかに撹拌しながら溶解した。ポリスチレン標準のピーク分子量は、式6を用いてエチレン系ポリマー分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り)。
【数1】
(式6)
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0129】
5次多項式を用いて、それぞれのエチレン系ポリマー等価較正点に適合させた。NIST標準NBS1475が52,000g/モルの分子量で得られるように、カラム分解能およびバンド広がり効果を補正するために、Aに対するわずかな調整(約0.39~0.44)を行った。
【0130】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、エイコサン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(式7)および対称性(式8)を、以下の式に従って、200マイクロリットル注入で測定した。
【数2】
(式7)
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、半分の高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数3】
(式8)
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも前の保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は22,000超であるべきであり、対称性は0.98~1.22であるべきである。
【0131】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製され、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪しながら160℃で3時間溶解した。
【0132】
M
n(GPC)、M
w(GPC)、およびM
z(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点i(IR
i)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および式6からの点iの狭い標準較正曲線から得られたエチレン系ポリマー当量分子量(g/molで示されるM
ポリエチレン、i)を使用して、式9~12に従ってPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内蔵型IR5検出器(測定チャネル)を使用したGPCの結果に基づいていた。続いて、エチレン系ポリマー試料についてのGPC分子量分布(GPC-MWD)プロット(wt
GPC(lgMW)対lgMWプロット、ここで、wt
GPC(lgMW)はlgMWの分子量を有するエチレン系ポリマー分子の重量分率である)を得ることができる。分子量はg/モルであり、wt
GPC(lgMW)は式9に従う。
【数4】
(式9)
【0133】
数平均分子量M
n(GPC)、重量平均分子量M
w(GPC)およびz平均分子量M
z(GPC)は、次の式のように計算することができる。
【数5】
(式10)
【数6】
(式11)
【数7】
(式12)
【0134】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料(RV(FM試料))内のそれぞれのデカンピークのRVを、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのRVと一致させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を直線的に補正するために使用した。その後、デカンマーカーピークの時間におけるあらゆる変化は、実験全体における流量(流量(有効))の線形シフトに関連すると仮定した。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合する。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に関して)有効流量を式13のように計算する。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容可能な流量補正は、有効流量が公称流量の0.5%以内であるようになされる。
【数8】
(式13)
【0135】
IR5 GPCコモノマー含有量(GPC-CC)プロット
【0136】
IR5検出器の比率の較正は、既知の短鎖分岐(SCB)周波数の少なくとも10個のエチレン系ポリマー標準(エチレン系ポリマーホモポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマー)を使用して実行され(参照材料のコモノマー含有量は、例えば、米国特許第5,292,845号(Kawasaki,et al.)およびJ.C.RandallによりRev.Macromol.Chem.Phys.,C29,201-317に記載されている技術にしたがって13C NMR分析を用いて決定し、該文献は本明細書に参照により組み込まれる)、ホモポリマー(0SCB/1000総C)から約50SCB/1000総Cまでの範囲であり、ここで、総Cは、骨格の炭素に分岐の炭素を加えたものに等しい。各標準は、GPCによって測定された、36,000g/モル~126,000g/モルの重量平均分子量を有し、2.0~2.5の分子量分布を有していた。典型的なコポリマー標準の特性と測定値を表Aに示す。
【0137】
【0138】
「IR5メチルチャネルセンサーのベースラインを差し引いた面積応答」対「IR5測定チャネルセンサーのベースラインを差し引いた面積応答」の「IR5面積比(または「IR5
メチルチャネル面積/IR5
測定チャネル面積」)」(PolymerCharによって供給される標準フィルターおよびフィルターホイール:Part Number IR5_FWM01はGPC-IR機器の一部として含まれる)を、「コポリマー」標準の各々について計算した。重量%コモノマー対「IR5領域比」の線形適合を、以下の式14の形態で構築した。
【数9】
(式14)
【0139】
したがって、GPC-CC(GPC-コモノマー含有量)プロット(重量%コモノマー対lgMW)を得ることができる。各クロマトグラフスライスで決定された分子量を介してコモノマーの終端(メチル)との有意なスペクトルオーバーラップがある場合、重量%コモノマーデータの末端基補正を、終端メカニズムの知識を介して行うことができる。
【0140】
結晶化溶出分別(CEF)
【0141】
コモノマー分布分析は、通常、短鎖分岐分布(SCBD)とも呼ばれ、 IR(IR-4またはIR-5)検出器(PolymerChar、スペイン)および2角度式光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在はAgilent Technologies)を装備した結晶化溶出分別(CEF)(PolymerChar、スペイン)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Monrabal et al,Macromol.Symp.257,71-79(2007))で測定した。600ppmの酸化防止剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む蒸留した無水オルト-ジクロロベンゼン(ODCB)を溶媒として使用した。N2パージ機能を備えたオートサンプラーの場合、BHTは追加されなかった。検出器オーブンのIR検出器の直前に、GPCガードカラム(20ミクロン、または10ミクロン、50X7.5mm)(Agilent Technologies)を取り付ける。試料調製は、160℃で2時間の振盪下で、4mg/ml(特に明記されていない限り)でオートサンプラーによって行う。注入体積は、300μLである。CEFの温度プロファイルは、3℃/分で110℃~30℃での結晶化、30℃で5分間の熱平衡、3℃/分で30℃~140℃での溶出である。結晶化中の流量は、0.052ml/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0142】
CEFカラムには、Dow Chemical Companyによって、1/8インチのステンレス管を用いて125μm+6%のガラスビーズ(MO-SCI Specialty Products)が充填されている。The Dow Chemical Company~の要望に従って、ガラスビーズをMO-SCISpecialtyにより酸洗浄する。カラム容量は、2.06mlである。カラム温度の較正は、ODCB中のNIST標準参照物質、直鎖状エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とエイコサン(2mg/ml)との混合物を用いて行った。NIST直鎖状エチレン系ポリマー1475aが101.0℃にピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃にピーク温度を有するように溶出加熱速度を調節することによって温度を較正する。CEFカラム分解能を、NIST直鎖状エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とヘキサコンタン(Fluka、プルム(purum)≧97.0%、lmg/ml)との混合物を用いて計算した。ヘキサコンタンとNISTエチレン系ポリマー1475aのベースライン分離が達成された。67.0~110.0℃のNIST1475aの面積に対するヘキサコンタンの面積(35.0~67.0℃)は50対50であり、35.0℃未満の可溶性画分の量は1.8重量%未満である。CEFカラム分解能を、式15に定義する:
【数10】
(式15)
式中、半値幅は温度で測定され、分解能は少なくとも6.0である。
【0143】
短鎖分岐分布(SCBD)-CEF半値全幅
【0144】
短鎖分岐分布を説明する追加のパラメータは、CEF半値全幅である。これは、以下に概説する手順によって行われる。
【0145】
(A)以下の式に従って、CEFから0.20℃の温度段階的上昇で20.0℃~119.0℃の各温度(T)(w
T(T))での重量分率を得ること、
【数11】
および (式16)
【0146】
(B)35.0℃~119.0℃の最高ピークについて各データポイントを調べることにより、CEFコモノマー分布プロファイルから最大ピーク高さを得ること。SCBD CEF半値全幅は、最大ピーク高さの半値での前部温度と後部温度の間の全体の温度差として定義される。最大ピークの半値での前部温度は、35.0℃より前方で調べ、最大ピーク高さの半値以上の最初のデータポイントである。最大ピークの半値での後部温度は、119.0℃より後方で調べ、最大ピーク高さの半値以上の最初のデータポイントである。
【0147】
高密度画分(HDF)は、93℃~119℃のCEF曲線から積分として計算できる。これは、次の式に従って、93℃~119℃の範囲の溶出温度でのIR-4クロマトグラム(ベースラインを補正した測定チャネル)の積分を20℃~140℃の合計積分で割ったものとして定義される。
【数12】
(式17)
式中、Tは(上記の較正からの)溶出温度である。
【0148】
ゼロせん断粘度比(ZSVR)
【0149】
ゼロせん断粘度比(ZSVR)は、以下の式18に従って、等価重量平均分子量(Mw(従来のgpc))における分岐ポリエチレン材料のゼロせん断粘度(ZSV)対直鎖ポリエチレン材料のZSVの比として定義される(下記のANTEC議事録を参照)。
【0150】
【0151】
ZSV値は、上述した方法により190℃でのクリープ試験から得た。Mw(従来gpc)値は、上で考察されるように、従来のGPC法(式3)によって決定した。直鎖状ポリエチレンのZSVとそのMw(従来のgpc)との間の相関は、一連の直鎖状ポリエチレン参照材料に基づいて確立された。ZSV-Mwの関係についての説明は、ANTECの議事録:Karjala et al.,Detection of Low Levels of Long-chain Branching in Polyolefins,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th 887-891に見出すことができる。
【0152】
透明度
【0153】
平均透明度は、ASTM D1746で指定されている通り、BYK Gardner Haze-gardを使用して測定される。
【0154】
ダート
【0155】
平均ダーツ衝撃強度は、ASTM-D 1709-04、方法Aに従って測定された。
【0156】
光沢
【0157】
平均光沢は、ASTM D2457に従って、BYK Gardner Glossmeter Microgloss45°を使用して測定した。
【0158】
バルクヘイズ
【0159】
平均バルクヘイズは、ASTM D1003に従って、BYK Gardner Haze-gardを使用して測定した。
【0160】
耐破壊性
【0161】
穿刺抵抗は、TestXpertIIソフトウェアを備えたZWICKモデルZ010で測定される。試験片のサイズは「6インチ×6インチ」であり、平均穿刺値を判定するために、少なくとも5回の測定が行われる。丸型試験片ホルダーと共に、1000ニュートンのロードセルを使用する。試験片は、直径4インチの円形試験片である。穿刺抵抗手順は、本明細書に記載のプローブに対する修正を伴って、ASTM D5748-95規格に従う。穿刺プローブは、直径1/2インチのボール型研磨ステンレススチールプローブである。ゲージ長は存在せず、プローブは、試験片に可能な限り接近しているが接触はしていない。プローブが試験片に接触するまでプローブを上げることによって、プローブを設定する。次いで、プローブが試験片に接触しなくなるまで、プローブを徐々に下げる。次いで、クロスヘッドをゼロに設定する。最大移動距離を考慮すると、この距離はおよそ0.10インチであろう。使用されるクロスヘッド速度は、250mm/分である。厚さを、試験片の中央で測定する。フィルムの厚さ、クロスヘッドの移動距離、およびピーク荷重を使用して、ソフトウェアによる穿刺を判定する。穿刺プローブは、各試験片後に洗浄される。破断時の穿刺力は、破断時の最大ピーク荷重(ニュートン)であり、そして穿刺エネルギーは、荷重/伸び曲線(ジュール)の曲線下面積である。
【0162】
エルメンドルフ引裂抵抗
【0163】
平均エルメンドルフ引裂抵抗は、ASTM D1922に従って、機械方向(MD)および機械横断方向(CD)で測定する。
【0164】
割線弾性係数
【0165】
平均割線弾性率は、ASTM D882に従って、機械方向(MD)および機械横断方向(CD)で測定される。
【0166】
引張り強度
【0167】
平均引張強度は、ASTM D882に従って、機械方向(MD)および機械横断方向(CD)で測定される。
【実施例】
【0168】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0169】
実施例1
【0170】
この実施例は、本明細書に開示および記載された実施形態に従って調製されたフィルムの2つの試料(試料1および試料2)(すなわち、二峰性エチレン系ポリマーで形成されたインフレーションフィルムは高分子量高密度画分を有する)を比較例1~3のインフレーションフィルムと比較し、これらは、市販のエチレン系ポリマーELITE 5400、INNATE ST 50(両方ともDow Chemical Company0によって製造され、およびEXCEED 1018(Exon Mobil Corporationによって製造された)からそれぞれ形成された。
【0171】
特に、試料1は、第1の反応器としてループ反応器を使用し、第2の反応器としてプラグフロー反応器を使用して形成された二峰性エチレン系ポリマーである。第1の反応器への供給流には、1117ポンド/時(lb/hr)のISOPAR-E溶媒、196lb/時のエチレンモノマー、78lb/時のオクテンが含まれていた。水素も6398sccmで第1の反応器に導入された。第1の反応器の出口エチレン濃度は28g/Lであった。第1の反応器に導入された第1の触媒は、プロ触媒および共触媒を含んでいた。プロ触媒は、次の構造を有するジルコニウム、ジメチル[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-kO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-メチル[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-2’-オラト-kO]](2-)]であった。
【化5】
必要に応じて、プロ触媒を添加し、28g/Lの反応器出口のエチレン濃度を制御し、プロ触媒の充填は、通常、反応器出口で0.15μmol/Lであった。共触媒は、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミンであった。
【0172】
第1の反応器を165℃の温度に加熱し、エチレンモノマーおよびオクテンを第1の触媒の存在下で反応させて、第1のポリマー画分を形成した。
【0173】
第2の触媒を、第1の反応器の下流および第2の反応器の上流の流出物に添加し、改変された流出物を形成した。第2の触媒は、約1.1μmol/Lの濃度のチーグラー・ナッタ触媒であった。改変された流出物は、第2のプラグフロー反応器に導入され、そこで未反応のエチレンおよび未反応のオクテンおよび未反応の水素が第2の触媒の存在下で反応し、第2のポリマー画分を形成した。
【0174】
試料2は、第1の反応器としてループ反応器を使用し、第2の反応器としてプラグフロー反応器を使用して形成された二峰性エチレン系ポリマーである。第1の反応器への供給流には、1130ポンド/時(lb/hr)のISOPAR-E溶媒、198lb/時のエチレンモノマー、72lb/時のオクテンが含まれていた。水素も5523sccmで第1の反応器に導入された。流出物のエチレン濃度は30g/Lであった。第1の反応器に導入された第1の触媒は、プロ触媒および共触媒を含んでいた。プロ触媒は、化学式C
86H
126F
2GeO
4Zrのものであり、以下の構造を有した。
【化6】
必要に応じて、プロ触媒を添加し、流出物中の30g/Lのエチレン濃度を制御し、プロ触媒の充填は通常、流出物中0.12μmol/Lであった。共触媒は、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミンであった。
【0175】
第1の反応器を165℃の温度に加熱し、エチレンモノマーおよびオクテンを第1の触媒の存在下で反応させ、第1のポリマー画分を形成した。
【0176】
第2の触媒を、第1の反応器の下流および第2の反応器の上流の流出物に添加し、改変された流出物を形成した。第2の触媒は、約0.8μmol/Lの濃度のチーグラー・ナッタ触媒であった。改変された流出物は、第2のプラグフロー反応器に導入され、そこで未反応のエチレンおよび未反応のオクテンおよび未反応の水素が第2の触媒の存在下で反応し、第2のポリマー画分を形成した。
【0177】
得られた二峰性エチレン系ポリマー試料は、表Bに示される特性を有し、これらは、本明細書に開示および記載される技術に従って測定された。
【0178】
【0179】
試料1と試料2、および比較試料1~3の二峰性エチレン系ポリマーは、ID3.5インチの半溝付きバレル、30/1 L/D比、バリアスクリュー、およびアルパインエアリングを備えたスターリング押出し機でインフレーションフィルムに成形された。押出しラインは、内部気泡冷却を備えた8インチのダイを有した。インフレーションフィルムラインは、以下のとおり表Cに列挙する以下の特性を有していた。さらに、比較例1~3のポリエチレン系ポリマーを使用して、同じインフレーションフィルムライン上に3つの比較インフレーションフィルムを形成した。この実施例の各インフレーションフィルムの厚さは2ミルであった。
【0180】
【0181】
試料1および2ならびに比較試料1~3のポリマーから調製されたインフレーションフィルムの特性は、本明細書に開示された試験パラメータに従って測定され、表Dに提供される。
【0182】
【0183】
実施例1のインフレーションフィルムの特性から分かるように、本明細書に開示および記載された実施形態に従って調製された試料1および試料2のインフレーションフィルムは、比較試料1~3と同等の酷使特性および機械的特性を有し、該比較試料は従来のエチレン系ポリマーから調製されたが、試料1および試料2は、比較試料1~3と比較して光学特性が改善されており、本明細書に開示および記載された実施形態にしたがって作製されるインフレーションフィルムの光学特性、酷使特性、および機械的特性のバランスが改善されていることを示す。
【0184】
実施例2
【0185】
この実施例は、本明細書に開示および記載された実施形態に従って調製され、10重量%のLDPE(Dow Chemical Companyによって製造されたAGILITY 1200)と混合されたフィルムの2つの試料(すなわち、二峰性エチレン系ポリマーで形成されたインフレーションフィルムは、高分子重量高密度画分を有する)を、10重量%のLDPE(Dow Chemical Companyによって製造されたAGILITY 1200)と混合された市販のエチレン系ポリマーから形成されたインフレーションフィルムと比較する。
【0186】
試料1および試料2のインフレーションフィルムは、10重量%のAGILITY 1200と混合された実施例1の試料1および試料2の二峰性エチレン系ポリマーからそれぞれ作製される。この実施例のインフレーションフィルムは、実施例1で開示されたものと同じインフレーションフィルムラインおよび特性を用いて、これらのポリマー混合物(すなわち、AGILITY 1200と混合された二峰性エチレン系ポリマー)から形成された。同様に、この実施例の比較試料1~3は、それぞれ、10重量%のAGILITY 1200と混合された実施例1からの試料1~3のポリマーからそれぞれ作製され、インフレーションフィルムは、実施例1に開示されたものと同じインフレーションフィルムラインおよび特性を用いてこれらのポリマー混合物から形成された。
【0187】
試料1および2ならびに比較試料1~3のポリマー用に調製されたインフレーションフィルムの特性は、本明細書に開示された試験パラメータに従って測定され、表Eに提供される。
【0188】
【0189】
実施例2のインフレーションフィルムの特性から分かるように、本明細書に開示および記載する実施形態に従って調製され10重量%のLDPEと混合された試料1および試料2のインフレーションフィルムは、10重量%LDPEと混合した従来のエチレン系ポリマーから調製された比較試料1~3と同等な酷使特性および機械的特性を有したが、試料1および試料2は、比較試料1~3と比較して光学特性が改善されており、LDPEと混合した場合でさえ、本明細書に開示および記載された実施形態に従って作製されるインフレーションフィルムの光学特性、酷使特性、および機械的特性のバランスが改善されていることを示す。
【0190】
実施例3
【0191】
この実施例は、本明細書に開示および記載された実施形態に従って調製され、20重量%のLDPE(Dow Chemical Companyによって製造されたAGILITY 1200)と混合されたフィルムの2つの試料(すなわち、二峰性エチレン系ポリマーで形成されたインフレーションフィルムは、高分子重量高密度画分を有する)を、20重量%のLDPE(Dow Chemical Companyによって製造されたAGILITY 1200)と混合された市販のエチレン系ポリマーから形成されたインフレーションフィルムと比較する。
【0192】
試料1および試料2のインフレーションフィルムは、20重量%のAGILITY 1200と混合された実施例1の試料1および試料2の二峰性エチレン系ポリマーからそれぞれ作製される。この実施例のインフレーションフィルムは、実施例1で開示されたものと同じインフレーションフィルムラインおよび特性を用いて、これらのポリマー混合物(すなわち、AGILITY 1200と混合された二峰性エチレン系ポリマー)から形成された。同様に、この実施例の比較試料1~3は、それぞれ、20重量%のAGILITY 1200と混合された実施例1からの試料1~3のポリマーからそれぞれ作製され、インフレーションフィルムは、実施例1に開示されたものと同じインフレーションフィルムラインおよび特性を用いてこれらのポリマー混合物から形成された。
【0193】
試料1および2ならびに比較試料1~3のポリマー用に調製されたインフレーションフィルムの特性は、本明細書に開示された試験パラメータに従って測定され、表Fに提供される。
【0194】
【0195】
実施例3のインフレーションフィルムの特性から分かるように、本明細書に開示および記載する実施形態に従って調製され20重量%のLDPEと混合された試料1および試料2のインフレーションフィルムは、20重量%のLDPEと混合した従来のエチレン系ポリマーから調製された比較試料1~3と同等な酷使特性および機械的特性を有したが、試料1および試料2は、比較試料1~3と比較して光学特性が改善されており、LDPEと混合した場合でさえ、本明細書に開示および記載された実施形態に従って作製されるインフレーションフィルムの光学特性、酷使特性、および機械的特性のバランスが改善されていることを示す。
【0196】
添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると認識されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。さらに、本開示で列挙されるすべての範囲は、特に明記しない限り(「未満」または「超」など)、範囲の端点を含む。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 二峰性エチレン系ポリマーを含むインフレーションフィルムであって、前記二峰性エチレン系ポリマーが、
3.0%~25.0%の高密度画分(HDF)であって、温度93℃~119℃で結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される、高密度画分(HDF)と、
5.5~7.5のI
10
/I
2
比であって、I
2
は、荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスであり、I
10
は、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D 1238に従って測定する場合のメルトインデックスである、I
10
/I
2
比と、
10℃以下の短鎖分岐分布(SCBD)であって、CEF半値全幅によって測定される、短鎖分岐分布(SCBD)と、
0.902g/cc~0.925g/ccの密度であって、ASTM D792 方法Bに従って測定される、密度と、
0.5g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I
2
)であって、190℃、2.16kgでASTM D1238に従って測定される、メルトインデックス(I
2
)と、を含むインフレーションフィルム。
(2) 前記二峰性エチレン系ポリマーが、0.910g/cc~0.920g/ccの密度を有する、前記(1)に記載のインフレーションフィルム。
(3) 前記二峰性エチレン系ポリマーが、0.7g/10分~1.8g/10分のメルトインデックス(I
2
)を有する、前記(1)または(2)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(4) 前記二峰性エチレン系ポリマーが、1.1~3.0のゼロせん断速度比を有する、前記(1)~(3)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(5) 前記インフレーションフィルムが、97.0%~99.5%の平均透明度を有し、前記平均透明度が、ASTM D 1746で指定された通りにBYK Gardner Haze-gardを使用して測定される、前記(1)~(4)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(6) 前記インフレーションフィルムが、50~75の平均光沢を有し、前記平均光沢が、ASTM D2457に従って、45°でBYK Gardner Glossmeter Microglossを使用して測定される、前記(1)~(5)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(7) 前記インフレーションフィルムが、6.25%~13.75%の平均バルクヘイズを有し、前記平均バルクヘイズが、ASTM D1003に従って、BYK Gardner Haze-gardを使用して測定される、前記(1)~(6)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(8) 前記インフレーションフィルムが、450g/ミル~700g/ミルの平均ダーツ衝撃強度を有し、前記平均ダーツ衝撃強度が、ASTM-D 1709-04、方法Aに従って測定される、前記(7)に記載のインフレーションフィルム。
(9) 前記インフレーションフィルムが、125.0ft・lb/in
3
~175.0ft・lb/in
3
の平均穿刺を有し、前記平均穿刺が、ASTM D5748-95に従って測定される、前記(1)~(8)のいずれかのインフレーションフィルム。
(10) 前記インフレーションフィルムが、325g/ミル~550g/ミルの機械横断方向の平均引裂きを有し、前記平均引裂きが、ASTM D1922に従って測定されるエルメンドルフ引裂き抵抗である、前記(1)~(9)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(11) 前記インフレーションフィルムが、250g/ミル~350g/ミルの機械方向の平均引裂きを有し、前記平均引裂きが、ASTM D1922に従って測定されるエルメンドルフ引裂き抵抗である、前記(1)~(10)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(12) 前記インフレーションフィルムが、10,000psi~39,000psiの機械横断方向の平均割線弾性係数を有し、前記平均割線弾性係数が、ASTM D882に従って測定される。前記(1)~(11)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(13) 前記インフレーションフィルムが、機械方向に10,000psi~33,500psiの平均割線弾性係数を有し、前記平均割線弾性係数が、ASTM D882に従って測定される、前記(1)~(12)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(14) 前記インフレーションフィルムが、機械横断方向に7500.0psi~8000.0psiの平均引張強度を有し、前記平均引張強度が、ASTM D882に従って測定される、前記(1)~(13)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(15) 前記インフレーションフィルムが、機械横断方向に8000.0psi~8700.0psiの平均引張強度を有し、前記平均引張強度が、ASTM D882に従って測定される、前記(1)~(14)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(16) 前記インフレーションフィルムが、二峰性エチレン系ポリマーと、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、プロピレン系ポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーとの混合物を含む、前記(1)~(15)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(17) 前記二峰性エチレン系ポリマーが、3.0~7.5のHDFを有する、前記(1)~(16)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(18) 前記二峰性エチレン系ポリマーが、5.5~6.0のI
10
/I
2
比を有する、前記(1)~(17)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(19) 前記二峰性エチレン系ポリマーが、8℃以下のSCBDを有する、前記(1)~(18)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。
(20) 前記二峰性エチレン系ポリマーが、2.800未満のMw対Mnの比を有する、前記(1)~(19)のいずれかに記載のインフレーションフィルム。