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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】保湿養生方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
E04G21/02 104
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021097523
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022189131
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000155034
【氏名又は名称】株式会社本間組
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 義信
(72)【発明者】
【氏名】安藤 恭平
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003240(JP,A)
【文献】特開2016-196755(JP,A)
【文献】特開2009-144321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養生のためにコンクリートの表面に養生マットを配置し、これらコンクリートの表面と養生マットの間に、吸水材で覆った水分センサを配置し、この水分センサの測定値に基づいて前記養生マットに給水
前記養生に使用する前記養生マット,前記吸水材及び前記水分センサと同一のものを用いたコンクリートの表面の予備実験を行い、この予備実験により得られた養生に適した状態における前記水分センサの測定値から給水閾値を設定し、この給水閾値により給水を制御し、
前記予備実験により得られた養生に適した状態における前記水分センサの測定値から飽和閾値を設定し、前記吸水材で覆った前記水分センサを複数用い、これら複数の水分センサの少なくとも1の測定値が前記給水閾値以下になったら給水を行い、全ての水分センサの測定値が前記飽和閾値以上になったら給水を停止するように制御する保湿養生方法であって、
前記飽和閾値に達した後、給水の停止が延長可能であり、その延長の時間が任意に設定可能なことを特徴とする保湿養生方法。
【請求項2】
前記給水閾値により給水を制御する制御手段を用い、この制御手段により給水を制御する自動モードと、手動で給水を操作する手動モードに切り換え可能なことを特徴とする請求項記載の保湿養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの保湿養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、第1分割領域、第2分割領域、第3分割領域それぞれに水分センサを設置し、それぞれ水分センサの水分計測値を受け取った制御部が、閾値に照らして分割領域ごとに散水の要否判断を行い、具体的には、あらかじめ定められた閾値と照らし合わせ、水分計測値が閾値を超える場合は、待機状態に戻り、水分計測値が閾値以下である場合は、水分計測値に応じた散水時間を設定し、例えば、水分計測値が閾値をやや下回るときは短い散水時間を設定し、水分計測値が閾値を大幅に下回るときは長い散水時間を設定する散水システム(例えば特許文献1)が提案されている。
【0003】
上記散水システムでは、養生範囲を分割した分割領域ごとに湿潤状態を判定し、その判定結果に応じて分割領域ごとに自動散水を行うことにより、従来の管理に要する手間と作業コストを軽減し、良好な品質のコンクリート構造物を提供することができる。
【0004】
そして、上記散水システムは、閾値に照らして散水の要否判断及び散水時間を設定するものであるから、実際の現場にあった閾値を用いることにより安定した養生を行うことができるが、現場で養生に使用する養生マットなどにより適した閾値に設定する必要がある。また、散水時間の長短で調整した場合、条件によっては、必要な散水量を超えたり、必要な散水量より少なくなったりすることが懸念される。
【0005】
ところで、打設形成されたコンクリート体の養生方法において、前記コンクリート体形成用の型枠を撤去した後に、前記コンクリート体の表面に、繊維材と、この繊維材中に埋設された多孔性ドレーン管とを備えた養生シートを、前記繊維材が前記コンクリート体の表面に接触し、かつ、前記多孔性ドレーン管が略水平になるように覆設して、前記多孔性ドレーン管に給水するコンクリート体の養生方法(例えば特許文献2)があり、縦面の養生において給水を適宜行うことにより、コンクリート体の表面を常時湿潤状態に保つことができると記載されているが、具体的な給水条件については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-196755号公報
【文献】特開平10-46816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した課題に鑑み、養生に適した湿潤状態に保持することができる保湿養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項に係る発明は、養生のためにコンクリートの表面に養生マットを配置し、これらコンクリートの表面と養生マットの間に、吸水材で覆った水分センサを配置し、この水分センサの測定値に基づいて前記養生マットに給水、前記養生に使用する前記養生マット,前記吸水材及び前記水分センサと同一のものを用いたコンクリートの表面の予備実験を行い、この予備実験により得られた養生に適した状態における前記水分センサの測定値から給水閾値を設定し、この給水閾値により給水を制御し、前記予備実験により得られた養生に適した状態における前記水分センサの測定値から飽和閾値を設定し、前記吸水材で覆った前記水分センサを複数用い、これら複数の水分センサの少なくとも1の測定値が前記給水閾値以下になったら給水を行い、全ての水分センサの測定値が前記飽和閾値以上になったら給水を停止するように制御する保湿養生方法であって、前記飽和閾値に達した後、給水の停止が延長可能であり、その延長の時間が任意に設定可能なことを特徴とする。
【0009】
請求項に係る発明は、前記給水閾値により給水を制御する制御手段を用い、この制御手段により給水を制御する自動モードと、手動で給水を操作する手動モードに切り換え可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項の構成によれば、制御手段が、予備実験で得られた飽和閾値と給水閾値により前記給水手段を制御するため、給水作業の手間が削減され、省力化が図れる。特に、コンクリートを用いた予備実験で得らえた閾値を用いることにより、実際の現場にあった養生を行うことができ、品質の高いコンクリートが得られる。
【0011】
また、請求項の構成によれば、複数の水分センサを用いて養生マットの複数個所で測定を行うことにより、養生マット全体の湿潤状態に基づいて、給水手段を制御し、養生マット全体が養生に適した湿潤状態になるように給水することができ、しかも、予備実験で得られた飽和閾値で給水を停止するため、無駄な給水を行うことが無くなる。
【0012】
また、請求項の構成によれば、養生マットの中央部分から離れた箇所などの給水が遅れ易い箇所にも、給水することができる。
【0013】
請求項の構成によれば、自動モードを行うための水分センサなどの機器に故障が発生した場合、手動モードに切り換えることにより、湿潤状態を保って養生を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1を示すコンクリート構造物の斜視図であり、養生マットの一部を切り欠いている。
図2】同上、全体説明図である。
図3】同上、水分センサの斜視図である。
図4】同上、コンクリートの表面と養生マットの間に水分センサを配置した状態の断面図である。
図5】同上、コンクリートの表面と養生マットの間に潅水ホースを配置した状態の断面図である。
図6】同上、管理画面の図である。
図7】同上、制御を説明する説明図である。
図8】同上、運転切換部の正面図であり、図8(A)は手動モードに切り換えた状態、図8(B)は自動モードに切り換えた状態を示す。
図9】同上、手動モードの説明図である。
図10】同上、詳細設定画面の図である。
図11】同上、管理画面にテンキー入力表示部を表示した状態の図である。
図12】同上、予備実験1の写真である。
図13】同上、予備実験1の写真であり、図13(A)は給水状態を示し、図13(B)は開始から418分経過後の状態を示す。
図14】同上、複数の予備実験により得られた水分センサの測定値と飽和度の関係を示すグラフ図である。
図15】本発明の実施例2を示す平面図であり、養生マットの一部を切り欠いている。
図16】本発明の実施例3を示す全体説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1図14は、本発明の実施例1を示し、同図に示すように、保湿養生システム1は、養生するコンクリート2の表面たる鉛直方向の縦面3を覆う養生マット4と、これら縦面3と養生マット4の間に配置する水分センサ5と、この水分センサ5を覆うようにして設けられた吸水材たる多孔質素材6と、前記縦面3と養生マット4に給水する給水手段7と、前記水分センサ5の測定値により前記給水手段7を制御する制御手段8とを備える。
【0017】
図3に示すように、前記水分センサ5は、本体11から突出した一対の電極12,12を備え、これら一対の電極12,12が前記多孔質素材6に覆われる。また、前記水分センサ5には、誘電率から土壌水分を測定する誘電率土壌水分センサー、例えばEC-5土壌水分センサー(METER社製)を用いることができる。この土壌水分センサーは、土壌の誘電率が土壌水分量と略比例し、比誘電率は、水が81、土粒子が3~4、空気が1で、この水の比誘電率の大きな変化を利用することで土壌中の体積含水率を求めることができる。
【0018】
これを利用し、土壌水分センサーが電極を土壌に入れて測定するのに対して、本実施例では前記多孔質素材6に水分センサ5の電極12,12を挿入し、電極12,12間に電圧を印加し、ここで水分センサ5は前記多孔質素材6の水分量に相関する誘電率を測定し、この誘電率に基づく測定値を出力し、その測定値が電圧で表示される。
【0019】
さらに、本実施例では、後述する予備実験を行うことにより、多孔質素材6の誘電率の測定値から養生マット4の飽和度に相関する測定値を得ることができる。
【0020】
前記多孔質素材6は、スポンジなどの吸水性を備えたものであって、方形で一定の厚さを有する。図4に示すように、前記多孔質素材6には、その厚さ方向中央にスリット15を設け、このスリット15に前記電極12,12全体を挿入配置し、水分センサ5に多孔質素材6を固定すると共に、電極12,12全体を多孔質素材6により覆っている。
【0021】
前記多孔質素材6には、一例として、ウレタンフォーム発泡体及び繊維製不織布などをマット状に加工し、保水性と保温性を備えたコンマット2号(登録商標:アオイ化学工業株式会社製)を用いており、また、前記養生マット4には、一例として、うるおんマットR(登録商標:早川ゴム株式会社製)を用いた。
【0022】
保湿養生システム1は、前記水分センサ5を複数備え、この例ではコンクリート製構造物であるケーソン101の外壁102の養生に用いている。また、それら水分センサ5は有線又は無線により前記制御手段8に電気的に接続され、この例では有線を用いている。前記ケーソン101は、例えば平面形状が方形で幅が10m程度の外壁102,102,102,102を備え、これらの外面が縦面3,3,3,3である。
【0023】
そして、外壁102,102,102,102は、高さ方向においてはコンクリート2を多段に打設して形成され、1回の打設により2m程度の高さに形成され、複数回の打設によりケーソン101は10m以上に形成される。尚、図1は、外壁102の1段目を形成した状態である。
【0024】
図1に示すように、コンクリート2の打設後、前記縦面3を形成する型枠(図示せず)を外し、露出した縦面3を前記養生マット4により覆う。5つの水分センサ5の中で4つは、縦面3,3,3,3の幅方向中央で、縦面3の上端から20~30cm程度下方の縦面3の上部側に配置する。この場合、縦面3の高さは200cmであり、縦面3の高さの2/3である133.3cmの高さ位置より上部に水分センサ5を配置しており、縦面3は上部側が下部側に比べて乾き易いから、乾き易い上部側に水分センサ5を配置することにより、乾き易い部分を基準にして給水を制御するから、縦面3の全体を湿潤状態に保持することができる。
【0025】
また、残りの1つの水分センサ5はいずれか1つの縦面3の幅方向中央で、高さ方向中央に配置する。このようにすれば、通常、潅水ホース22の給水は、先に上部側の水分センサ5の多孔質素材6に達するが、何らかの原因で高さ方向中央側の水分センサ5の測定値が先に上がれば、何らかの異常が発生したことが判り、また、給水停止状態においても、上下に並んだ二つの水分センサ5,5の測定値を比較して湿潤状態を確認できる。尚、好ましくは、水分センサ5を縦面3の高さの3/4以上の位置の上部に配置すれば、水分センサ5が養生マット4の上縁に近い乾き易い部分に配置できるから、乾き易い上部側を水分センサ5により測定して湿潤状態に保持できる。
【0026】
そして、コンクリート2の縦面3の水分が多い場合はその水分が多孔質素材6により吸収され、一方、縦面3の水分が減少すると、多孔質素材6内の水分がコンクリート2側に移動し、コンクリート2の表面たる縦面3の湿潤状態により多孔質素材6の水分量が変化し、この水分量に比例する水分センサ5の水分量に係る測定値を得ることによりコンクリート2の表面の湿潤状態を計測することができる。
【0027】
尚、仮に養生マット4の周囲の縁部に電極12,12を直接挿入すると、取付位置が中央部から離れた周囲の縁部となるため、養生マット4の飽和度を的確に測定できないのに対して、多孔質素材6を用いることにより、水分センサ5の測定位置を任意に設定することができる。
【0028】
また、本実施例では、後述する予備実験により得られた飽和閾値と給水閾値とに基づき、給水の制御を行う。尚、本発明における養生マット4の飽和度とは、養生マット4が保水可能な最大水分量を保水した状態を飽和度100%とし、保水した水分量を前記最大水分量で除した百分率で表される。前記飽和度は前記水分センサ5で検出した測定値と相関関係にあり、水分センサ5により検出した多孔質素材6の水分量の測定値により、養生マット4の飽和度を推定することができる。
【0029】
図2に示すように、前記給水手段7は、水源たる水タンク21と、前記養生マット4の内面の上側とコンクリート2の縦面3の間に配置する潅水ホース22と、これら水タンク21と潅水ホース22とを接続するホースなどの給水管路23と、この給水管路23の途中に設けられた開閉手段たる電動開閉弁24とを備え、この電動開閉弁24は前記制御手段8の制御により開閉操作される。尚、電動開閉弁24としては電動ボールバルブが例示される。尚、水源として水道などを用いることができる。
【0030】
図1及び図5に示すように、養生マット4の内面の上側に、前記潅水ホース22を配置し、この潅水ホース22は、ホース全体に微小なヒビがあり、水圧が掛かると前記ヒビによりホースの表面から水が染み出すものであるから、内部の水が少しずつ滴下され、前記縦面3及び養生マット4内に水が供給される。また、水源に前記水タンク21を用いた場合は、水タンク21を潅水ホース22より上方に配置し、水頭圧により水を流すようにする。また、前記潅水ホース22はケーソン101の外周の全周で同一高さ位置に設けられ、前記潅水ホース22の両端部(図示せず)は水密に塞がれている。尚、潅水ホース22の両端部は、ケーソン101の中心に対して、給水管路23の潅水ホース22の接続箇所と点対称の位置に配置することが好ましい。また、給水管路23は潅水ホース22の長さ方向中央に連結され、前記潅水ホース22は上部側に1本のみ設けられている。
【0031】
図2などに示すように、前記制御手段8は、タッチパネルやキーボードなどの入力手段31と、システム1の状態などを表示するモニターなどの表示手段32とを備える。そして、この例のように入力手段31がタッチパネル式のものであれば、表示手段32とタッチパネル式の入力手段31を組み合わせたタッチパネル式入力表示手段を用いることができる。また、保湿養生システム1は、該システム1を駆動するための電源33を備え、この電源33はソーラー発電パネル(図示せず)を有する。尚、電源33として商用電源を用いることもできる。
【0032】
図6は表示手段32に表示した管理画面50の一例を示し、この管理画面50には、上下5段に各水分センサ5に関するセンサ情報表示部51,51,51,51,51が設けられており、上から第1~第5の水分センサ5,5,5,5,5に対応する。また、センサ情報表示部51,51,51,51,51の左側には、第1~第5の水分センサ5,5,5,5,5に対応して、記号CH1~CH5が表示される。
【0033】
前記センサ情報表示部51には、左側から水分センサ5の測定値を表示する測定値表示部52、設定した飽和閾値を表示する飽和閾値表示部53、設定した給水閾値を表示する給水閾値表示部54、判定状態を表示する判定状態表示部55が横に並んで設けられている。また、センサ情報表示部51の右側には、上側から給水状況を表示する給水状況表示部56、システム1の運転状況を表示する運転状況表示部57が設けられている。尚、前記運転状況表示部57の下には、各種の操作をするためのタッチ操作部58が複数配置されている。
【0034】
前記水分センサ5の測定値の測定値表示部52には、5秒ごとに水分センサ5の最新の測定値が表示される。また、前記飽和閾値表示部53及び給水閾値表示部54は、任意に閾値が設定可能であり、後述する予備実験の結果に基づいて設定される。
【0035】
前記制御手段8による制御の一例を説明し、この例では飽和閾値を450mV、給水閾値を400mVに設定している。自動モードでは、自動で電動開閉弁24を開成して給水を開始し、図7の下段に示すように、全ての水分センサ5,5,5,5,5の測定値が飽和閾値以上になると、制御手段8の制御により電動開閉弁24を閉成して給水を停止する。尚、電動開閉弁24を閉成した後も、電動開閉弁24の位置より上流側に残った水は重力により潅水ホース22から養生マット4に供給される。
【0036】
このように前記飽和閾値は、給水を開始する給水開始閾値であり、前記給水閾値は、給水を停止する給水停止閾値である。また、給水は、後述する潅水ホースを用いる方式や、シャワーによる散水方式などの水を供給するやり方は各種の方式を用いることができる。
【0037】
前記給水の停止後、即ち電動開閉弁24が閉成した後、図7の中段に示すように、少なくとも1台の水分センサ5の測定値が給水閾値以下になると、電動開閉弁24を開成して給水を開始する。この給水の開始後、図7の下段に示すように、全ての水分センサ5,5,5,5,5の測定値が飽和閾値以上になると、給水を停止する。
【0038】
このように複数の水分センサ5,5,5,5,5の少なくとも1台の測定値が給水閾値以下になると、給水を開始し、全ての水分センサ5,5,5,5,5の測定値が飽和閾値以上になると、給水を停止する。
【0039】
次に、制御手段8による給水を所定延長時間TEだけ延長する制御について説明する。上記自動モードの制御では、通常は全ての水分センサ5,5,5,5,5の測定値が飽和閾値以上になると同時に、電動開閉弁24を閉成して給水を停止するように制御するが、同時に停止せずに、所定延長時間TEだけ給水を延長することができ、前記所定延長時間TEは任意に設定することができる。
【0040】
例えば、前記所定延長時間TEを10秒程度に設定することができ、縦面3の上方からの給水が縦面3の下方に到達するまでには時間が掛かり、水分センサ5の位置と縦面3の下方では給水にタイムラグが生じ、これに対して、所定延長時間TEだけ給水時間を延長することにより前記タイムラグを解消することができ、実際に測定を行う水分センサ5を配置した箇所から離れた位置にも給水を行き渡らせることができる。尚、前記潅水ホース22の両端は水密に塞がれている。
【0041】
以下、予備実験について説明する。この予備実験では、コンクリート構造物の本製品に使用する同一の養生マット4,水分センサ5及び多孔質素材6を使用する。予備実験において、前記多孔質素材6は前記本製品に用いるものと材質が同一で好ましくは大きさが同一のものを用いる。また、コンクリート2は配合が同一のものを用いることが好ましく、また、コンクリート2の養生する表面の仕上がりを同一とすることが好ましく、表面が縦面3の場合は、使用する型枠パネル(図示せず)の表面を同一のものとすることが好ましい。
【0042】
尚、同一の水分センサ5を用いるが、予備実験で用いる水分センサ5の数は本製品の養生に用いる数より少なくてもよく、少なくとも同一の水分センサ5を1個用いればよい。また、予備実験では、養生するコンクリート2の表面の面積は本製品より小さく、養生マット4もコンクリート2の表面に合わせて小さく、本実施例では1m程度のコンクリート2の縦面3の養生を行った。
【0043】
尚、上述したように、予備実験でも、養生マット4には、うるおんマットR(登録商標:早川ゴム株式会社製)、多孔質素材6には、コンマット2号(登録商標:アオイ化学工業株式会社製)、水分センサ5には、EC-5土壌水分センサー(METER社製)を用いた。
【0044】
予備実験において、乾燥状態の養生マット4の乾燥時重量WKを測定し、乾燥状態の養生マット4に最大限で保水可能な量の水を加水し、加水後の養生マット4の重量を測定し、この重量が予備実験の開始時における養生マット4の開始時重量WSである。そして、前記開始時重量WSから前記乾燥時重量WKを減じた重量が、養生マット4における飽和度100%の水分量の重さである。
【0045】
また、予備実験では開始後、養生マット4に給水を行わず、時間経過と共に、水分センサ5による測定と養生マット4の重量の測定を行った。そして、時間経過後の養生マット4の重量から前記乾燥時重量WKを減じた重量が、時間経過後の養生マット4の水分量の重量であり、この時間経過後の水分量の重さを前記飽和度100%の水分量の重量で割った値の100分率が、時間経過後の養生マット4の飽和度である。
【0046】
図12及び図13は予備実験1の写真を示し、図13(A)は図12(A)を拡大したものであり、図13(B)は図12(I)を拡大したものである。図12(A)及び図13(A)に示すように、予備実験1用のコンクリート2の縦面3を養生マット4で覆い、その養生マット4にバケツで給水し、保水可能な量の水を養生マット4に給水した後、縦面3から養生マット4を外し、この養生マット4の開始時重量WSを測定した。尚、予備実験1では、養生マット4の乾燥時重量WKは224g、養生マット4の開始時重量WSは519gであり、開始時の養生マット4の保水する水の重量は295g(519g-224(WS)g)であった。開始時重量WSの測定後、すぐに養生マット4を縦面3に取り付け、水分センサ5による測定を行い、測定値は460.87mVであった。尚、開始時の飽和度は100%である。尚、予備実験においても水分センサ5を縦面3の上部に配置して測定した。
【0047】
図12(B)のように、開始から48分後の水分センサ5の測定値は441.23mVで、縦面3から外して測定した養生マット4の重量は431gであり、48分後の水分量は207g(431g-224(WS)g)であり、飽和度(207g/295g×100)は70.2%であった。また、養生マット4を取り外して重量を測定した後、すぐに養生マット4を縦面3に取り付けた。図12(B)では、養生マット4を外した部分の縦面3が他より黒く、目視により十分に保湿されていることが判る。
【0048】
前記予備実験1の開始からの経過時間-水分センサ5の測定値-飽和度は、0分-460.87mV-100%,48分-441.23mV-70.2%,83分-429.22mV-65.7%,118分-426.65mV-62.0%,148分-411.38mV-57.6%,239分-408.56mV-52.2%,327分-401.42mV-47.5%,387分-400.56mV-45.8%,418分-397.29mV-44.7%であった。
【0049】
尚、非破壊式のコンクリート用水分計(図示せず)により縦面3の表面水分率を計測した結果、予備実験1の給水前の乾燥時の縦面3の表面水分率が3.7%、図12(I)の418分経過後の縦面3の上部側の表面水分率が4.1%であり、図12(I)の乾いて見える縦面3の上部側も乾燥していないことが確認できた。
【0050】
図13(B)に示す開始から418分が経過した状態では、水分センサ5の測定値は397.29mV、飽和度は44.7%であった。418分経過後の縦面3は上部が乾いており、手で触った感じでは湿り気を感じるが、図13(B)のように、縦面3は養生マット4の上縁位置の上部と下部で同様な色合いを示し、目視と併せて、給水閾値は、前記測定値397.29より僅かに大きい400mV以上が好ましいと判断できる。
【0051】
予備実験2では、養生マット4の乾燥時重量WKは222g、養生マット4の開始時重量WSは536gであり、開始時の養生マット4の保水する水の重量は314gであった。また、予備実験2の開始からの経過時間-水分センサ5の測定値-飽和度は、0分-460.42mV-100%,28分-429.45mV-60.2%,60分-421.93mV-56.1%,92分-428.52mV-51.6%,20分-417.94mV-51.6%,152分-418.83mV-49.7%,183分-416.87mV-46.8%,215分-411.63mV-43.9%,246分-409.36mV-41.4%,279分-410.15mV-40.4%であった。
【0052】
さらに、図14のグラフは、上記予備実験1~2とこれら別に行った複数の予備実験で得られた水分センサ5の測定値(単位mV)と養生マット4の飽和度(単位%)のデータによる回帰直線であり、決定係数Rは0.8531であった。
【0053】
水分センサ5の測定値と養生マット4の飽和度の関係を示す図14のグラフによれば、最小値のデータから約380mVで飽和度10%程度となり、約380mV以上であれば養生マット4が乾燥した状態とならず、縦面3も乾燥した状態にならないことが分かるが、目視による確認では、要給水の状態であった。そして、予備実験において測定値が400mVであれば縦面3が湿潤状態に保たれことが確認されたことと、図14のグラフによれば、測定値400mVでは、養生マット4の飽和度も32%と30%以上の水分量を保持した状態となることから、380mVに比べて大きな値である400mVを給水閾値とした。
【0054】
予備実験の結果から、飽和閾値は、設定した前記給水閾値400mVを超える値で、給水が飽和度100%を超えないように飽和度100%以下の範囲が好ましいことが判る。この例では、乾き易い部分を測定するため、縦面3の高さの2/3より上方に水分センサ5を配置しており、この水分センサ5の高さ位置より上方に潅水ホース22を配置したことにより、潅水ホース22からの給水が比較的早く多孔質素材6に達するから、飽和度100%側に近い飽和度80%の場合の水分センサ5の測定値である450mVを給水閾値とした。
【0055】
次に、システム1の特徴構成について説明する。前記制御手段8による自動モードを、手動による手動モードに切り換えることができる。このために制御手段8は、図2及び図9に示すように、操作部61を備える。この操作部61は、運転表示部62と、摘み式の回転スイッチである運転切換部63と、押しボタン式のスイッチである給水操作部64とを備える。
【0056】
前記運転表示部62は、表示灯などからなり、運転表示部62が点灯すると、システム1に電源が供給されて正常動作中であることを示し、運転表示部62が点滅すると、電源が供給されているが、システム1に異常があることを示し、運転表示部62が消灯すると、電源が供給されていないことを報知する。
【0057】
また、前記運転切換部63は、その摘み63Aに点灯手段63Bを内蔵し、図8(A)のように、その運転切換部63を一側に回すと、手動モードに切り換わり、図8(B)のように、運転切換部63を他側に回すと自動モードに切り換り、自動モードで前記点灯手段63Bが点滅すると、使用する水分センサ5の条件が設定されていないことを報知する。尚、自動モードでは、使用する水分センサ5の条件が全て設定されていれば前記点灯手段63Bが点灯し、手動モードでは前記点灯手段63Bが消灯する。
【0058】
従って、現在のモードが手動モードと自動モードであるかは、摘み63Aの向き以外に、点灯手段63Bと点灯と消灯で簡便に判断することができる。尚、水分センサ5の条件とは、飽和閾値と給水閾値の設定などが例示される。
【0059】
また、前記給水操作部64は点灯手段を内蔵し、この点灯手段により、給水操作部64は、電動開閉弁24が開成している給水状態で点灯し、電動開閉弁24が開閉駆動している状態で点滅し、電動開閉弁24が閉成している給水停止状態で消灯する。
【0060】
さらに、以下、前記制御手段8の制御について説明する。運転切換部63を操作することにより自動モードと手動モードに切り換えることができ、自動モードによる運転中(図9(A))に、図9(B)のように、運転切換部63を一側に回して手動モードに切り換えると、この切り換え前が自動モードによる給水状態であれば、給水を継続する。尚、給水状態は電動開閉弁24が開成している状態である。
【0061】
そして、手動モードでは、非給水状態(図9(B))において、図9(C)のように、給水操作部64を押すと、給水を開始し、給水状態で給水操作部64を押すと、図9(D)のように、非給水状態に切り換えることができる。この場合、給水操作部64を押すことにより、電動開閉弁24の開成・閉成操作を行うことができるように構成されている。
【0062】
このように切り換え前が自動モードによる給水状態であれば、飽和閾値に達していない状態であるから、給水を継続することにより湿潤状態とすることができる。尚、給水操作部64を押すことにより操作する例を示したが、他の操作方法により給水状態と非給水状態を切り替えてもよく、同様に、運転切換部63も回す以外の操作方法を用いることができる。
【0063】
<手動モードの停止タイマー機能>
さらに、手動モードにおいて、非給水状態で、制御手段8に対して、給水の開始を指示する操作として給水操作部64を押すと、この手動操作後、手動給水停止時間TSが経過すると、電動開閉弁24が自動で閉成するように、前記制御手段8は停止タイマー機能を有している。例えば、給水停止状態から給水操作部64を押して給水が開始され、給水状態になり、もう一度、給水の停止を指示する操作として給水操作部64を押すと給水が停止するが、手動による停止操作を忘れた場合、前記手動給水停止時間TSが経過すると、電動開閉弁24を閉成するように制御する。
【0064】
このように、手動モードで、給水開始後、停止のために給水操作部64を押し忘れても、自動で給水が停止する。尚、手動給水停止時間TSは、任意に設定可能であって、例えばこの例では5分(300秒)程度に設定される。
【0065】
また、この例では、複数(5個)の水分センサ5により制御するように構成しているが、使用する水分センサ5の数を変更することができる。以下、3個の水分センサ5により制御する例を説明すると、3個の水分センサ5を用いる場合は、一般に5個の水分センサ5を用いる場合に比べて、コンクリート2の表面が小さい場合などが例示される。
【0066】
具体的には、前記タッチ操作部58に設けた詳細設定部58Aにタッチして操作すると、図10に示すように、前記表示手段32に詳細設定画面70が表示される。この詳細設定画面70の左側には、第1~第5の水分センサ5を示す記号「CH1」~「CH5」が上から下に並んで配置されると共に、記号の右側に沿って状態表示部71が設けられている。
【0067】
図10のように、全ての状態表示部71,71,71,71,71が「有効」を表示する場合は、5個の水分センサ5を用いて制御を行っている状態である。ここから例えば下の2つの状態表示部71,71をタッチし、「無効」(図示せず)が表示されると、上側で「有効」が表示された3つの水分センサ5を用いて制御を行っている状態を示す。
【0068】
また、前記詳細設定画面70には、中央上部に前記所定延長時間TEの表示操作部72が設けられ、図10では所定延長時間TEを10秒程度に設定している。また、表示操作部72の下には、前記手動給水停止時間TSの表示操作部73が設けられ、図10では手動給水停止時間TSが300秒に設定されている。
【0069】
ここで表示手段32において、任意に設定表示できる数値の入力方法について説明する。飽和閾値表示部53を例として説明すると、図11に示すように、管理画面50において、給水閾値表示部54にタッチなどして選択すると、タッチして選択した給水閾値表示部54の数値が反転表示され、給水閾値表示部54が隠れない範囲で、管理画面50にテンキー入力表示部81が表示される。このテンキー入力表示部81には0~9の数字入力部82があり、対応する数字の数字入力部82をタッチして指定することにより、上部の設定値表示部83に数値が表示され、入力キーであるENTキー表示部84にタッチすることにより、給水閾値表示部54に数値が表示されると共に、テンキー入力表示部81が消える。尚、本実施例では、タッチして選択する例を説明するが、非接触式で選択するようにしてもよい。
【0070】
また、テンキー入力表示部81には、飽和閾値表示部53の数値を0にするクリアーキー85と、入力をキャンセルして設定値表示部83の数値を入力前に戻すキャンセルキー86が設けられている。尚、詳細設定画面70においては、設定する表示部が隠れないように前記テンキー入力表示部81が表示される。また、図10では、設定値表示部83に「390.0」を表示した状態を示し、ここでENTキー表示部84にタッチすると、反転表示された給水閾値表示部54の「400.0」が「390.0」に切り換わると共に、給水閾値表示部54が反転前の表示状態に戻る。
【0071】
また、同様に、詳細設定画面70においては、前記表示操作部72,73をタッチすると、タッチした表示操作部72,73が隠れないように前記テンキー入力表示部81が表示され、表示操作部72,73の数値をテンキー入力表示部81により任意に設定変更することができる。
【0072】
このように本実施例では、養生のためにコンクリート2の表面たる縦面3に養生マット4を配置し、これらコンクリート2の縦面3と養生マット4の間に、吸水材たる多孔質素材6で覆った水分センサ5を配置し、この水分センサ5の測定値に基づいて給水手段7を駆動して養生マット4に給水する保湿養生システム1において、予備実験により得られた養生に適した状態における水分センサ5の測定値から給水閾値を設定し、この給水閾値により給水手段7を制御する制御手段8を備えるから、制御手段8が、予備実験で得られた給水閾値により給水手段7を制御するため、給水作業の手間が削減され、省力化が図れる。特に、コンクリートを用いた予備実験で得らえた閾値を用いることにより、実際の現場にあった養生を行うことができ、品質の高いコンクリート2が得られる。
【0073】
このように本実施例では、表面が縦面3であり、この縦面3の高さの2/3以上の位置に水分センサ5を配置したから、縦面3の養生において上部側に水分センサ5を配置することにより、乾き易い上部側を湿潤状態に保持することができる。
【0074】
このように本実施例では、請求項に対応して、養生のためにコンクリート2の表面たる縦面3に養生マット4を配置し、これらコンクリート2の縦面3と養生マット4の間に、吸水材たる多孔質素材6で覆った水分センサ5を配置し、この水分センサ5の測定値に基づいて養生マット4に給水する保湿養生方法において、前記養生に使用する養生マット4,多孔質素材6及び水分センサ5と同一のものを用いたコンクリート2の縦面3の予備実験を行い、この予備実験により得られた養生に適した状態における水分センサ5の測定値から給水閾値を設定し、この給水閾値により給水を制御するから、給水作業の手間が削減され、省力化が図れる。特に、コンクリート2を用いた予備実験で得らえた閾値を用いることにより、実際の現場にあった養生を行うことができ、品質の高いコンクリート2が得られる。
【0075】
また、このように本実施例では、請求項に対応して、予備実験により得られた養生に適した養状態における前記水分センサ5の測定値から飽和閾値を設定し、吸水材たる多孔質素材6で覆った水分センサ5を複数用い、これら複数の水分センサ5の少なくとも1の測定値が給水閾値以下になったら給水を行い、全ての水分センサ5の測定値が飽和閾値以上になったら給水を停止するように制御するから、複数の水分センサ5を用いて養生マット4の複数個所で測定を行うことにより、養生マット4全体の湿潤状態に基づいて、給水手段7を制御し、養生マット4全体が養生に適した湿潤状態になるように給水することができ、しかも、予備実験で得られた飽和閾値で給水を停止するため、無駄な給水を行うことが無くなる。
【0076】
また、このように本実施例では、請求項に対応して、飽和閾値に達した後、給水の停止が延長可能であり、その延長の時間である所定延長時間TEが任意に設定可能であるから、養生マット4の中央部分から離れた箇所などの給水が遅れ易い箇所にも、給水することができる。
【0077】
このように本実施例では、請求項に対応して、前記給水閾値により給水を制御する制御手段8を用い、この制御手段8により給水を制御する自動モードと、手動で給水を操作する手動モードに切り換え可能であるから、自動モードを行うための水分センサ5などの機器に故障が発生した場合、手動モードに切り換えることにより、湿潤状態を保って養生を継続することができる。
【0078】
以下、実施例上の効果として、水分センサ5として、気温や湿度等の外的要因の影響が少ない土壌センサーを用い、この土壌センサーでは、前記電極12,12間に電圧をかけ、電極12,12間におけるコンデンサーの充電時間から静電容量を測定し、静電容量が比誘電率の影響を受けることから、比誘電率を測定し、土壌の誘電特性が測定され、土壌水分量が計測でき、養生マット4の湿潤状態をより正確に測定することができる。また、水分センサ5を縦面3の上部側には配置すると共に、水分センサ5の上方に潅水ホース22を配置することより、縦面3においては水平面に比べて養生マット4は下側に水が移動し易いから、上部側で給水の増加を水分センサ5で検知することにより、速やかに湿潤状態を検出して余分な給水を抑えることができる。
【0079】
予備実験により得られた養生に適した前記養生マットの飽和度と水分センサ5の測定値から給水閾値を設定し、具体的には、飽和閾値は、設定した給水閾値を超える値で、給水が飽和度100%を超えないように飽和度100%以下の範囲で設定したから、一層、養生に適した湿潤状態にコンクリート2の表面を保持することができると共に、過剰な給水を抑制することができる。また、前記養生マット4の内面の上側とコンクリート2の縦面3の間に潅水ホース22を配置したから、養生マット4の外面側や縁側から給水する場合に比べて、潅水ホース22が縦面3に接すると共に、潅水ホース22が養生マット4により覆われるため、縦面3及び養生マット4の内面側に無駄なく効率よく給水を行うことができる。
【0080】
自動モードと手動モードを切り換える運転切換部63を備え、現在のモードが手動モードと自動モードであるかを、摘み63Aの向き以外に、点灯手段63Bと点灯と消灯で簡便に判断することができる。また、手動モードで給水を開始した後、手動給水停止時間TSが経過すると、自動で給水を停止する停止タイマー機能を備えるから、給水停止操作を忘れても、大量の水を無駄にすることがない。
【0081】
使用する水分センサ5の数を変更することができるから、縦面3の面積等の現場の条件に合わせた制御を行うことができる。また、表示手段32は、管理画面50及び詳細設定画面70などにテンキー入力表示部81が表示可能であるから、キーボードなどを用いることなく、養生の現場で、数値の変更設定を簡便に行うことができる。
【実施例2】
【0082】
図15は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例ではコンクリート2の構造物の表面である略水平面の上面91を養生する例であり、上面91の長さ方向に略等間隔に並んで前記水分センサ5,5,5,5,5を配置している。また、潅水ホース22は、上面91の幅方向一側で上面91の長さ方向に配置され、上面91と養生マット4の間に配置されている。尚、上面91の幅方向に水勾配が設けられている場合は、幅方向の両側の高い側に潅水ホース22を配置することが好ましい。尚、この例では、予備実験も上面91を水平にして行われる。
【0083】
このように本実施例では、請求項1、に対応して、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0084】
また、この例では、養生マット4において、上面91の長さ方向両端の第1及び第5の水分センサ5,5の両側は、水分センサ5,5の間の位置に比べて、水の供給が遅れたり、乾き易かったりすることが予想されるから、所定延長時間TEだけ散水時間を延長することにより、両端の水分センサ5,5から離れた位置まで確実に給水することができる。
【実施例3】
【0085】
図16は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では2つ保湿養生システム1,1により2つの表面の養生を行う例である。そして、2つ保湿養生システム1,1において、前記水タンク21を共通して使用し、この水タンク21に保湿養生システム1,1の給水管路上流23A,23Aを接続し、これら給水管路上流23A,23Aに前記電動開閉弁24,24をそれぞれ接続している。また、電源は共通でもよい。
【0086】
この場合、一方の保湿養生システム1を実施例1で示したように、外壁102の外面側の縦面3の養生に用い、他方の保湿養生システム1を外壁102の内面側の縦面3の養生に用いることができる。
【0087】
このように本実施例では、各請求項に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0088】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、養生マットの外面側からの散水により養生マットに給水するように構成してもよく、また、養生マットの上縁部から給水してもよい。また、養生する表面たる縦面は、実施例で示したケーソン以外でも、橋脚,タンクやビルなどの縦面などでも良い。さらに、養生マット,吸水材及び水分センサは実施例に限定されず、各種のものを用いることができる。また、実施例では、略水平面であるコンクリートの上面と、略鉛直面であるコンクリートの縦面の養生について説明したが、本発明は、コンクリートの表面である傾斜面の養生に用いることができる。さらに、潅水ホースは、複数の小孔を設けたものなど各種のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 保湿養生システム
2 コンクリート
3 縦面(表面)
4 養生マット
5 水分センサ
6 多孔質素材(吸水材)
7 給水手段
8 制御手段
91 上面(表面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16