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特許7419297フローティング型ブレーキディスク及びその製造方法
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  • 特許-フローティング型ブレーキディスク及びその製造方法 図1
  • 特許-フローティング型ブレーキディスク及びその製造方法 図2
  • 特許-フローティング型ブレーキディスク及びその製造方法 図3
  • 特許-フローティング型ブレーキディスク及びその製造方法 図4
  • 特許-フローティング型ブレーキディスク及びその製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】フローティング型ブレーキディスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20240115BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20240115BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20240115BHJP
   G01P 3/487 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
F16D65/12 Z
B60T8/171 A
G01P3/487 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021114248
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010251
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康裕
(72)【発明者】
【氏名】佐野 泰之
(72)【発明者】
【氏名】滝川 智之
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-232090(JP,A)
【文献】実開平06-065864(JP,U)
【文献】特開2011-201344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
B60T 7/12-8/1769
G01P 3/487
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気に反応する車輪速センサを具備する自動二輪車用のフローティング型ブレーキディスクであって、
環状のロータと、このロータの内側に配置されるハブと、前記ロータと前記ハブとをフローティング状態に連結する複数の連結部材とを備え、前記連結部材と前記ハブの軸孔との間にその厚み方向に貫通させて、各スポーク部が形成される第1貫通孔が多数設けられると共に、前記連結部材よりも径方向内側に位置する前記ハブの所定の環状領域に、車輪速センサにパルスを発生させる検出部が周方向に等間隔で多数設けられるものにおいて、
前記ハブが、非磁性体材料で形成されると共に、各検出部は、前記環状領域にその厚み方向に貫通させて周方向に等間隔で多数形成した第2貫通孔と、前記環状領域を含む前記ハブの少なくとも一方の側面に形成された磁性膜で構成されることを特徴とするフローティング型ブレーキディスク。
【請求項2】
請求項1記載のフローティング型ブレーキディスクにおいて、
前記第2貫通孔はプレス加工により打ち抜かれた状態のものであり、打ち抜き方向後方側に位置する前記ハブの側面を前記車輪速センサに対向配置される面とすることを特徴とするフローティング型ブレーキディスク。
【請求項3】
磁気に反応する車輪速センサを具備する自動二輪車用のフローティング型ブレーキディスクの製造方法であって、
環状のロータに連結部材を介してフローティング状態に連結されるハブの連結部材よりも径方向内側に位置する環状領域に、車輪速センサにパルスを発生させる検出部を周方向に等間隔で多数設ける工程を含み、
前記工程は、プレス加工によるハブの厚み方向への打ち抜きで多数の貫通孔を周方向に等間隔で形成する第1工程と、前記環状領域を含む前記ハブの少なくとも一方の側面に磁性膜を成膜する第2工程とを更に含むことを特徴とするフローティング型ブレーキディスクの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気に反応する車輪速センサを具備する自動二輪車用のフローティング型ブレーキディスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフローティング型ブレーキディスクは例えば特許文献1で知られている。このものは、環状のロータと、このロータの内側に配置されるハブと、ロータとハブとをフローティング状態に連結する複数の連結部材とを備え、連結部材よりも径方向内側に位置するハブの所定の環状領域に、車輪速センサにパルスを発生させる検出部が周方向に等間隔で多数設けられている。このものでは、各検出部は、切削加工やプレス加工等で、ハブに貫通孔や凹凸を設けることにより形成される。そして、ハブの所定の環状領域に対向して車輪速センサを近接配置して、ブレーキディスクの回転に伴い、ハブの周方向に等間隔で設けられた検出部が車輪速センサの対向位置を横切る度にパルスが発生する。この単位時間当たりの発生パルス数を基に車輪回転速度が検出される。このような車輪速センサとしては、磁気に反応する電磁ピックアップセンサ等が用いられ、検出部が設けられるハブは強磁性体材料(例えば鉄合金等)で形成される。
【0003】
ところで、強磁性体材料は、非磁性体材料(例えばアルミニウム合金等)の3倍程の比重を有することから、強磁性体材料で形成したハブは、非磁性体材料で形成したものに比べて重量が増加し、ブレーキディスクを軽量化することが難しくなる。他方、非磁性体材料で形成したハブでは、磁気に反応する車輪速センサにより車輪回転速度を検出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-033132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、ブレーキディスクの重量を軽量化でき、かつ、電磁ピックアップセンサ等の磁気に反応する車輪速センサにより車輪回転速度を検出可能なフローティング型ブレーキディスク及びその製造方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、磁気に反応する車輪速センサを具備する自動二輪車用のフローティング型ブレーキディスクであって、環状のロータと、このロータの内側に配置されるハブと、ロータとハブとをフローティング状態に連結する複数の連結部材とを備え、連結部材とハブの軸孔との間にその厚み方向に貫通させて、各スポーク部が形成される第1貫通孔が多数設けられると共に、連結部材よりも径方向内側に位置するハブの所定の環状領域に、車輪速センサにパルスを発生させる検出部が周方向に等間隔で多数設けられるものにおいて、ハブが、非磁性体材料で形成されると共に、各検出部は、環状領域にその厚み方向に貫通させて周方向に等間隔で多数形成した第2貫通孔と、環状領域を含むハブの少なくとも一方の側面に形成された磁性膜で構成されることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明は、磁気に反応する車輪速センサを具備する自動二輪車用のフローティング型ブレーキディスクの製造方法であって、環状のロータに連結部材を介してフローティング状態に連結されるハブの連結部材よりも径方向内側に位置する環状領域に、車輪速センサにパルスを発生させる検出部を周方向に等間隔で多数設ける工程を含み、前記工程は、プレス加工によるハブの厚み方向への打ち抜きで多数の貫通孔を周方向に等間隔で形成する第1工程と、環状領域を含むハブの少なくとも一方の側面に磁性膜を成膜する第2工程とを更に含むことを特徴とする
【0008】
本発明によれば、ハブを非磁性体材料で形成することで、強磁性体材料で形成したものに比べて、ブレーキディスクの重量を軽量化することができる。また、各検出部は、環状領域にその厚み方向に貫通させて周方向に等間隔で多数形成した第2貫通孔と、環状領域を含むハブの少なくとも一方の側面に形成された磁性膜とで構成され、電磁ピックアップセンサ等の磁気に反応する車輪速センサにより車輪回転速度を検出することができる。また、第2貫通孔を設けたことで、ハブの重量を減らすことができ、ブレーキディスクをさらに軽量化することができる。
【0009】
また、本発明においては、第2貫通孔はプレス加工により打ち抜かれた状態のものであり、打ち抜き方向後方側に位置するハブの側面を車輪速センサに対向配置される面とすることが好ましい。第2貫通孔をプレス加工により打ち抜くことで、打ち抜き方向後方側の第2貫通孔の周縁部にはプレスだれが生じ、打ち抜き方向後方側の第2貫通孔の孔幅は、打ち抜き方向前方側の第2貫通孔の孔幅よりも大きくなる。そして、打ち抜き方向後方側のハブの側面では、第2貫通孔の孔幅が大きくなることで、孔幅の中心は検出部の磁力の影響を受けづらくなり、磁界の変化が大きくなる。このため、車輪速センサに対して打ち抜き方向後方側に位置するハブの側面を対向して配置させれば、車輪速センサの感知性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態のフローティング型ブレーキディスクの正面図。
図2図1のII-II線で切断した拡大断面図。
図3】本発明の第2実施形態のフローティング型ブレーキディスクの正面図。
図4図3のIV-IV線で切断した拡大断面図。
図5】本発明の第2実施形態の変形例のブレーキディスクの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図2を参照して、BDは、本発明の第1実施形態の自動二輪車用フローティング型ブレーキディスクである(以降、ブレーキディスクBDと記載する)。ブレーキディスクBDは、環状のロータ1と、ロータ1の内側に配置されるハブ2と、ロータ1とハブ2とを周方向複数箇所で連結する連結部材としての連結ピン3とを備える。なお、図1中、最下部に位置するものは、連結ピン3を装着していない状態で示す。
【0012】
ロータ1は、例えばステンレス鋼板製で環状に形成されたものであり、ブレーキ操作時、図外の表裏一対のブレーキパッドで挟持されてハブ2を介して図外の車軸に制動力を伝達する。ロータ1の内周縁部には、径方向内方に延びて、連結ピン3の外周略半分を囲うようにして受け入れる舌片状の第1のピン受け部11が周方向に所定間隔で複数形成されている。また、ロータ1には、軽量化等のため、厚み方向に貫通する正面視円形の貫通孔(抜き孔)12が複数開設されている。
【0013】
ハブ2は、例えばアルミニウム合金等の非磁性体材料で形成される。ハブ2には、中央の軸孔21と、軽量化のため、厚み方向に貫通する複数の貫通孔22とが夫々形成されている。そして、軸孔21の周囲に形成した取付孔23を介して図外の車軸に連結される。ハブ2の外周には、ロータ1の第1のピン受け部11に夫々対応させて、連結ピン3の外周略半分を囲うようにして受け入れる第2のピン受け部24が周方向に所定間隔で複数形成されている。
【0014】
連結ピン3は、外径が第1及び第2の両ピン受け部11,24に内接する円の径より僅かに小径の中空ピンで構成され、連結ピン3の一端には、第1及び第2の各ピン受け部11,24の軸方向一方の側面に当接するフランジ部3aを有する。特に図示して説明しないが、連結ピン3の他端側には、皿ばねとワッシャとが外挿されている。そして、連結ピン3の他端をかしめることにより、ワッシャを介して皿ばねを第1及び第2の両ピン受け部11,24の軸方向他方の側面に圧接させることで、ロータ1とハブ2とがフローティング状態で連結される。尚、連結部材は上記のものに限定されるものではなく、他の公知のものを用いることができる。
【0015】
また、ハブ2には、貫通孔22と取付孔23との間の図1に2点鎖線で示す環状領域25に位置させて、周方向に等間隔で、径方向に長手の長円形状の検出部4が多数設けられている。各検出部4は、ハブ2の表面に形成された、例えば鉄、コバルト、ニッケル等の金属を1種類以上含有する合金等の強磁性体材料から成る磁性膜5で構成される。磁性膜5の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、メッキ法、陽極酸化処理法等の公知の方法を用いることができる。なお、本実施形態では、検出部4の形状が長円形状のものを例に説明するが、検出部4の形状はこれに限定されず、例えば線状や矩形状等でもよい。
【0016】
そして、この環状領域25に対向して、車輪速センサとしての電磁ピックアップセンサSが近接配置される。電磁ピックアップセンサSは、該センサSの対向位置を検出部4が横切る度にパルスを発生し、単位時間当たりの発生パルス数を基に車輪回転速度が検出される。
【0017】
本実施形態によれば、ハブ2を非磁性体材料で形成することで、強磁性体材料で形成したものに比べて、ブレーキディスクBDの重量を軽量化することができる。また、各検出部4は、ハブ2の表面に形成された磁性膜5で構成されるため、電磁ピックアップセンサSにより車輪回転速度を検出することができる。
【0018】
次に、図3図4に示す第2実施形態の自動二輪車用フローティング型ブレーキディスクBDについて説明する。なお、上記第1実施形態と同様の部材、部位には上記と同一の符号を付している。
【0019】
第2実施形態では、図3に2点鎖線で示す環状領域25に位置させて、ハブ2の厚み方向に貫通する貫通孔26が周方向に等間隔で多数形成されると共に、ハブ2の表面全体に、磁性膜5が形成されている。本実施形態では、各貫通孔21,22,23,26を形成後、ハブ2の表面全体に磁性膜5を形成している。そして、環状領域25内の各貫通孔26間の磁性膜5が検出部4を構成する。第2実施形態のものでも、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、各貫通孔26を設けたことで、ハブ2の重量を減らすことができ、ブレーキディスクBDをさらに軽量化できる。この場合、各貫通孔26はプレス加工により形成することが好ましい。各貫通孔26をプレス加工により打ち抜くことで、打ち抜き方向後方側の各貫通孔26の周縁部にはプレスだれ26aが生じ、打ち抜き方向後方側の貫通孔26の孔幅Pw1は、打ち抜き方向前方側の貫通孔26の孔幅Pw2よりも大きくなる。そして、打ち抜き方向後方側のハブ2の側面2aでは、貫通孔26の孔幅Pw1が大きくなることで、孔幅Pw1の中心は検出部4の磁力の影響を受けづらくなり、磁界の変化が大きくなる。その結果、電磁ピックアップセンサSに対してハブ2の打ち抜き方向後方側の側面2aを対向して配置させれば、電磁ピックアップセンサSの感知性能を向上させることができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。例えば、上記第2実施形態では、ハブ2の表面全体に磁性膜5を形成しているが、各貫通孔26の間やハブ2の環状領域25のみに磁性膜5を形成してもよい。
【0021】
また、上記第1及び第2実施形態では、貫通孔22と取付孔23との間の環状領域25に検出部4を設けたものを例に説明したが、検出部4を設ける環状領域25の位置はこれに限定されず、連結部材である連結ピン3よりも径方向内側の位置であればよい。例えば図5に示す、変形例に係るブレーキディスクBDのように、ハブ2の厚み方向に貫通する大貫通孔22a及び小貫通孔22bを多数設ける場合、連結ピン3と各貫通孔22a,22bとの間の環状領域25に検出部4を設けてもよい。
【符号の説明】
【0022】
BD~BD…フローティング型ブレーキディスク、S…電磁ピックアップセンサ(磁気に反応する車輪速センサ)、1…ロータ、2…ハブ、25…環状領域、26…貫通孔、3…連結ピン(連結部材)、4…検出部、5…磁性膜。

図1
図2
図3
図4
図5