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  • 特許-電源システム、DCDCコンバータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】電源システム、DCDCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240115BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240115BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021158712
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049146
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 寛彰
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147887(JP,A)
【文献】特開2021-40440(JP,A)
【文献】特開2020-195237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレーを介して負荷に接続された第1バッテリを含む第1電圧系と、
前記第1バッテリよりも低電圧の第2バッテリを含む第2電圧系と、
前記第1電圧系と前記第2電圧系との間に設けられ、
前記リレーが閉に切り替えられる前に、
前記第2バッテリの電圧よりも低い電圧を前記第1電圧系に供給し、
その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1電圧系に供給し、
その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1バッテリの電圧に昇圧して前記第1電圧系に供給するDCDCコンバータと、
を備えた電源システム。
【請求項2】
前記DCDCコンバータは、
前記第2バッテリの電圧よりも低い電圧で動作する電子部品を備える請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記DCDCコンバータは、
前記第2バッテリとの接続状態を切り替えるスイッチを備え、
前記第2バッテリの電圧よりも低い電圧は、前記スイッチよりも前記第1電圧系側から前記第1電圧系に供給する請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項4】
リレーを介して負荷に接続された第1バッテリを含む第1電圧系と前記第1バッテリよりも低電圧の第2バッテリを含む第2電圧系との間に設けられるDCDCコンバータであって、
前記リレーが閉に切り替えられる前に、
前記第2バッテリの電圧よりも低い電圧を前記第1電圧系に供給し、
その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1電圧系に供給し、
その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1バッテリの電圧に昇圧して前記第1電圧系に供給するDCDCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧の異なる2系統のバッテリを備えた電源システムおよびこの電源システムに用いられるDCDCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の電源システムとしては、12Vバッテリから電源を供給する12V系が一般的であったが、近年、48Vバッテリから電源を供給する48V系を採用する動きが活発になっている。従来よりも高電圧の電源システムを採用することにより、同じ出力であっても、供給電流を少なくすることができるようになる。これにより、送電時の電力損失削減や電線を細くできることによる車重削減等が期待される。48V系の電源システムは、今後、自動運転システムが搭載された自動車にも採用されることが見込まれている。
【0003】
48V系の電源システムを採用した場合であっても、当面は、既存の電装品等を動作させるために12V系の電源システムと車両内部で併存することが想定される。12V系と48V系とを併存させることにより、電源の冗長化を図った電源冗長システムを構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-29078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は、12V系と48V系とが併存している自動車の電源システム300を示すブロック図である。本図に示すように、12V系は、12Vバッテリ310が12V系負荷320に電力を供給している。48V系は、48Vバッテリ330がメインリレー350を介して48V系負荷340に電力を供給している。メインリレー350は、一般にメカニカルリレーが用いられる。
【0006】
12V系と48V系との間には双方向で動作するDCDCコンバータ360が設けられており、12V系と48V系とで相互に電力のやり取りが可能となっている。
【0007】
DCDCコンバータ360は、昇降圧回路361、12Vバッテリ110との接続状態を切り替える12V側絶縁スイッチ362、48V系との接続状態を切り替える48V側絶縁スイッチ363、制御部364を備えている。
【0008】
12V側絶縁スイッチ362、48V側絶縁スイッチ363は、MOSFETで構成され、12V側絶縁スイッチ362は電流の逆流を防ぐためにバックトゥバック接続となっている。制御部364は、CPU等で構成され、昇降圧回路361の昇降圧動作、12V側絶縁スイッチ362、48V側絶縁スイッチ363の開閉動作を制御する。
【0009】
48V系には、48V系負荷340と並列に容量Cが存在している。これは、48V系負荷340が有する容量成分や48V系に存在する浮遊容量等によって形成される容量である。一般に、イグニッションがオフになり、メインリレー350が開になると、容量Cは放電される。
【0010】
電源システム300において、容量Cが充電されていない状態でメインリレー350を開から閉に切り替えると、48Vバッテリ330から大きな突入電流が流れ、メインリレー350が溶着するおそれがある。
【0011】
突入電流によるメインリレー350の溶着を防止するため、電源システム300では、12Vバッテリ310を利用して容量Cのプリチャージを行なう。具体的には、メインリレー350を閉に切り替える前に、12Vバッテリ310が供給する12Vで容量Cを充電し、その後、DCDCコンバータ360を動作させ、12Vを48Vに昇圧して容量Cを充電する。このような段階的な充電手順により、48Vバッテリ330と容量Cとの電圧差を無くしてからメインリレー350を閉に切り替えることで、突入電流によるメインリレー350の溶着を防ぐようにする。
【0012】
一方で、12Vバッテリ310を利用して容量Cのプリチャージを行なう際にも突入電流は発生し、12Vバッテリ310からDCDCコンバータ360を通って容量Cに流れることになる。この突入電流により、DCDCコンバータ360の内部回路、特に、12V側絶縁スイッチ362に負荷が生じるおそれがある。この問題は、自動車の電源システムのみならず、電圧の異なる2系統のバッテリとDCDCコンバータを備えた電源システム全般に起こり得る。
【0013】
そこで、本発明は、電圧の異なる2系統のバッテリとDCDCコンバータを備えた電源システムにおいて、高圧側のリレー保護のためのプリチャージを行なう際に、DCDCコンバータの内部回路を保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である電源システムは、リレーを介して負荷に接続された第1バッテリを含む第1電圧系と、前記第1バッテリよりも低電圧の第2バッテリを含む第2電圧系と、前記第1電圧系と前記第2電圧系との間に設けられ、前記リレーが閉に切り替えられる前に、前記第2バッテリの電圧よりも低い電圧を前記第1電圧系に供給し、その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1電圧系に供給し、その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1バッテリの電圧に昇圧して前記第1電圧系に供給するDCDCコンバータと、を備える。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様であるDCDCコンバータは、リレーを介して負荷に接続された第1バッテリを含む第1電圧系と前記第1バッテリよりも低電圧の第2バッテリを含む第2電圧系との間に設けられるDCDCコンバータであって、前記リレーが閉に切り替えられる前に、前記第2バッテリの電圧よりも低い電圧を前記第1電圧系に供給し、その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1電圧系に供給し、その後、前記第2バッテリの電圧を前記第1バッテリの電圧に昇圧して前記第1電圧系に供給する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る電源システムの構成を示す図である。
図2】昇降圧回路の構成例を示す図である。
図3】本実施形態に係る電源システムの動作を説明する図である。
図4】2系統のバッテリを備えた従来の電源システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る電源システム100の構成を示す図である。電源システム100は、2つの電圧系が併存した自動車の電源システムであり、本例では、12V系と48V系とが併存している。ただし、本発明は、12V系と48V系とが併存した自動車の電源システムに限られず、電圧の異なる2系統のバッテリを備えた電源システムに広く適用することができる。
【0018】
本図に示すように、12V系は、12Vバッテリ110と12V系負荷120とを備え、12Vバッテリ110が12V系負荷120に電力を供給している。48V系は、48Vバッテリ130と48V系負荷140とを備え、48Vバッテリ130がメインリレー150を介して48V系負荷140に電力を供給している。さらにISG(モーター機能付発電機)等を備えさせ、48V系負荷140に電力を供給するようにしてもよい。メインリレー150は、メカニカルリレーが用いられ、例えば、イグニッションがオンになったことを示すイグニッション信号により閉に切り替えられる。
【0019】
12V系と48V系との間には双方向で動作するDCDCコンバータ160が設けられており、12V系と48V系とで相互に電力のやり取りが可能となっている。例えば、12Vを昇圧して48Vバッテリ130を充電したり、48Vを降圧して12Vバッテリ110を充電することができる。また、一方のバッテリが失陥等した場合に、他方のバッテリで補うこともできる。さらには、同一の負荷に対して、両方のバッテリから電力を供給することもできる。
【0020】
48V系には、48V系負荷140と並列に容量Cが存在している。これは、48V系負荷140が有する容量成分や48V系に存在する浮遊容量等によって形成される容量である。
【0021】
DCDCコンバータ160は、昇降圧回路161、12V側絶縁スイッチ162、48V側絶縁スイッチ163、制御部164を備えている。12V側絶縁スイッチ162は、昇降圧回路161の降圧出力側に配置され、12V系と接続している。12V側絶縁スイッチ162は、バックトゥバック接続された2つのMOSFETで構成されている。48V側絶縁スイッチ163は、昇降圧回路161の昇圧出力側に配置され、48V系と接続している。48V側絶縁スイッチ163は、MOSFETで構成され、ボディダイオードが48V側に順方向となっている。
【0022】
また、DCDCコンバータ160は、昇降圧回路161と12V側絶縁スイッチ162との間に、10V電源の接続/非接続を切り替えるプリチャージスイッチ165と電圧センサ166とを備えている。ただし、プリチャージスイッチ165は、12V側絶縁スイッチ162よりも48V系側に配置すれば足りる。
【0023】
10V電源は、例えば、DCDCコンバータ160が備えるIC等の電子部品167に供給するために、12Vバッテリ110を電源として従来から用意されたものを流用することができる。既存の電源を利用することで、10V電源のために新たな電源回路を設ける必要がなくなる。また、10Vに限られず、DCDCコンバータ160が備える電子部品を動作させるための、12Vバッテリ110が供給する12Vよりも低い電圧であればよい。
【0024】
昇降圧回路161は、既知の回路を適用することができ、例えば、図2に示すような回路とすることができる。本図の例では、降圧出力側から昇圧出力側にコイル161aとスイッチング素子161cとを直列に接続し、降圧出力側と接地との間にコンデンサ161bを接続している。なお、スイッチング素子161cは、ボディダイオードが昇圧出力側に順方向となっている。
【0025】
また、コイル161aとスイッチング素子161cとの接続点と接地との間にスイッチング素子161dを接続している。なお、スイッチング素子161dのボディダイオードは接地側から順方向となっている。
【0026】
駆動部161eは、制御部164の制御に基づいてスイッチング素子161cとスイッチング素子161dとを駆動する。具体的には、降圧動作を行なう場合は、スイッチング素子161dをオフの状態で、スイッチング素子161cをオンオフ駆動する。昇圧動作を行なう場合は、スイッチング素子161cをオフの状態で、スイッチング素子161dをオンオフ駆動する。
【0027】
制御部164は、CPU等で構成され、イグニッションがオンになったことを示すイグニッション信号および電圧センサ166の検出結果に基づいて、以下に説明する昇降圧回路161の昇降圧動作、12V側絶縁スイッチ162、48V側絶縁スイッチ163、プリチャージスイッチ165の開閉動作を制御する。
【0028】
次に、本実施形態の電源システムの動作について図3を参照して説明する。図3は、上位装置が制御するメインリレー150の開閉状態、制御部164が制御する12V側絶縁スイッチ162、48V側絶縁スイッチ163、プリチャージスイッチ165の開閉状態、昇降圧回路161の動作状態、および容量Cの充電電圧の推移を示している。
【0029】
まず、イグニッションがオフの初期状態T0において、メインリレー150は開状態で容量Cは放電しており0Vである。制御部164は、12V側絶縁スイッチ162、48V側絶縁スイッチ163、プリチャージスイッチ165を開状態とし、昇降圧回路161は非動作とする。
【0030】
T1でイグニッションがオンになったことを示すイグニッション信号が入力されると、制御部164は、上位装置がT4でメインリレー150を閉状態に切り替えるよりも前に以下のT1~T3の制御を行なう。
【0031】
すなわち、まずT1で、制御部164は、プリチャージスイッチ165を閉状態に切り替える。これにより、昇降圧回路161と12V側絶縁スイッチ162との間に10Vが印加され、非動作の昇降圧回路161のスイッチング素子161cおよび48V側絶縁スイッチ163のボディダイオードを介して容量Cが10Vに充電される。
【0032】
電圧センサ166の出力信号から容量Cが10Vに充電されたことを検知すると、T2で、制御部164は、12V側絶縁スイッチ162を閉に切り替える。これにより、12Vバッテリ110から12V側絶縁スイッチ162を介して12Vが印加され、非動作の昇降圧回路161のスイッチング素子161cのボディダイオードおよび48V側絶縁スイッチ163のボディダイオードを介して容量Cが12Vに充電される。この際に、10V電源に逆流しないように、T2においてプリチャージスイッチ165を開状態に切り替えておく。
【0033】
容量Cが12Vに充電される直前では、プリチャージスイッチ165により容量Cは10Vに充電されている。このため、閉に切り替えられた12V側絶縁スイッチ162には、その差の2Vに対応する突入電流しか流れず、12V側絶縁スイッチ162の負荷は十分低減される。
【0034】
電圧センサ166の出力信号から容量Cが12Vに充電されたことを検知すると、T4で、制御部164は、昇降圧回路161を昇圧動作させて、12Vバッテリ110が供給する12Vを48Vに昇圧するとともに、48V側絶縁スイッチ163を閉状態にする。これにより、容量Cが48Vに充電される。48V側絶縁スイッチ163を開状態のまま、ボディダイオードを介して容量Cを48Vに充電してもよい。
【0035】
そして、T4で上位装置がメインリレー150を閉状態に切り替える。容量Cは、前もって48Vに充電されているため、突入電流は発生せず、メインリレー150が溶着するおそれはない。なお、T4以降において、制御部164は、プリチャージスイッチ165の開状態は維持するが、12V側絶縁スイッチ162、48V側絶縁スイッチ163の開閉状態、昇降圧回路161の動作状態は、自動車の走行状態、バッテリの蓄電状態等に応じて適宜制御するようにする。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の電源システム100は、12Vバッテリ110が供給する12Vよりも低い電圧で容量Cを充電した後、12Vで容量Cを充電する段階的なプリチャージを行なうようにする。これにより、DCDCコンバータ160の内部回路には、12Vと12Vよりも低い電圧との差分に相当する突入電流しか流れない。したがって、プリチャージの際の突入電流からDCDCコンバータ160の内部回路を保護することができる。
【0037】
また、12Vよりも低い電圧は、DCDCコンバータ160が備える電子部品167に供給するために用意された、12Vバッテリ110を電圧源とした電圧を流用することができる。このため、12Vよりも低い電圧のプリチャージのために新たに電源を準備する必要は無く、簡易な構成で実現することができる。
【符号の説明】
【0038】
100 電源システム
110 12Vバッテリ
110 48Vバッテリ
120 12V系負荷
130 48Vバッテリ
140 48V系負荷
150 メインリレー
160 DCDCコンバータ
161 昇降圧回路
161a コイル
161b コンデンサ
161c スイッチング素子
161d スイッチング素子
161e 駆動部
162 12V側絶縁スイッチ
163 48V側絶縁スイッチ
164 制御部
165 プリチャージスイッチ
166 電圧センサ
167 電子部品
図1
図2
図3
図4