(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】流体貯蔵設備
(51)【国際特許分類】
B65D 90/02 20190101AFI20240115BHJP
B65D 90/12 20060101ALI20240115BHJP
F17C 13/08 20060101ALI20240115BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B65D90/02 B
B65D90/12 C
F17C13/08 302E
B63B25/16 103
(21)【出願番号】P 2021502608
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(86)【国際出願番号】 FR2019051758
(87)【国際公開番号】W WO2020016509
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-04-11
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】イヴェール エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ルコント クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シャルボニエ ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ウーラリート モハメド
(72)【発明者】
【氏名】カプドゥヴィル ジャン-ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】デタイユ ジェフリー
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-168885(JP,A)
【文献】特開平05-085590(JP,A)
【文献】特表2017-525898(JP,A)
【文献】特表2018-516344(JP,A)
【文献】特開2003-278998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/02
B65D 90/12
F17C 13/08
B63B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体(1)と密閉断熱タンクとを備える流体貯蔵設備(71)であって、
前記密閉断熱タンクは、前記支持構造体(1)に固定された少なくとも1つの底壁(4)を有し、
前記底壁(4)は、厚さ方向に重ねられた多層からなる構造を有し、
前記多層からなる構造は、少なくとも1つの密閉メンブレン(5,7)と、前記密閉メンブレン(5,7)と前記支持構造体(1)との間に配置された少なくとも1つの断熱バリア(6,8)と、を含み、
前記底壁(4)は、
サンプ構造体(9)を有し、
前記サンプ構造体(9)は、側壁(12)を備える剛性の高い容器(10,11)を有し、
前記容器(10,11)は、前記底壁(4)の厚さにわたって配置されており、
前記底壁(4)の前記少なくとも1つの密閉メンブレン(5,7)は、窓の形態の中断部を有し、
前記サンプ構造体(9)の前記容器(10,11)は、固定翼(13,14)を有し、
前記中断部の縁が、前記サンプ構造体(9)を囲み、前記サンプ構造体(9)の前記固定翼(13,14)に、密閉接続されており、
前記サンプ構造体(9)は、前記側壁(12)における固定ポイントにおいて前記剛性の高い容器(10,11)を前記支持構造体(1)に固定するよう設計された少なくとも1つの固定手段(15,32)を備え、
前記少なくとも1つの固定手段(15,32)は、前記容器(10,11)の前記固定ポイントにおける前記側壁(12)に垂直な横方向への前記支持構造体(1)に対する前記容器(10,11)の前記側壁(12)の相対移動を許容するように構成されており、
前記相対移動は1mmよりも大きい移動である、流体貯蔵設備(71)。
【請求項2】
前記側壁(12)は、前記厚さ方向に沿った軸を有する円筒状の形状である、請求項1に記載の流体貯蔵設備。
【請求項3】
前記剛性の高い容器(10,11)は円形の断面を有し、前記横方向は径方向である、請求項1又は2に記載の流体貯蔵設備。
【請求項4】
前記流体貯蔵設備は、前記厚さ方向及び接線方向への前記少なくとも1つの固定手段の移動を阻止するよう構成された少なくとも1つの阻止手段(17,26/28)を有し、
前記接線方向は、前記側壁(12)に対する接線の方向であるとともに、前記横方向と前記厚さ方向とに直交する方向である、請求項1~3の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項5】
前記少なくとも1つの固定手段(15)は、前記剛性の高い容器から前記横方向に突出する固定ラグ(15)を有し、
前記固定ラグ(15)はオリフィス(22)を有し、
前記流体貯蔵設備は、前記厚さ方向において前記固定ラグ(15)を前記支持構造体(1)に固定するために前記オリフィス(22)内に配置された固定装置(24)を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項6】
前記流体貯蔵設備は、前記支持構造体(1)に固定された、接線方向において前記少なくとも1つの固定ラグ(15)の両側に位置する2つのストッパ(28)を備え、
前記接線方向は、前記側壁(12)に対する接線の方向であるとともに、前記横方向と前記厚さ方向とに直交する方向であり、
前記ストッパ(28)は、前記接線方向への前記固定ラグ(15)の移動を阻止するよう構成されている、請求項5に記載の流体貯蔵設備。
【請求項7】
前記オリフィス(22)は、前記横方向に沿った寸法が最大寸法である楕円形のオリフィス(22)を有し、これにより前記固定装置(24)及び前記支持構造体(1)に対する前記固定ラグ(15)及び前記側壁(12)の前記横方向の移動が許容されるよう構成されている、請求項6に記載の流体貯蔵設備。
【請求項8】
前記流体貯蔵設備は、孔(30)を有する2つの有孔プレート(29)を備え、
前記有孔プレート(29)は、前記厚さ方向において前記少なくとも1つの固定ラグ(15)の両側に位置し、
前記固定装置(24)は各前記有孔プレート(29)の前記孔(30)を通過し、
前記有孔プレート(29)は、摩擦係数が0.2未満の材料から作製されている、請求項6又は7に記載の流体貯蔵設備。
【請求項9】
前記固定装置(24)は、ねじ棒(25)及びナット(26)を有し、
前記ねじ棒(25)は、前記支持構造体(1)に固定され、かつ前記有孔プレート(29)の前記孔(30)と前記固定ラグ(15)の前記オリフィス(22)とを通過しており、
前記ナット(26)は、前記支持構造体(1)とともに、前記有孔プレート(29)及び前記固定ラグ(15)に前記厚さ方向に締め付け力を加えるよう構成されている、請求項8に記載の流体貯蔵設備。
【請求項10】
前記流体貯蔵設備は、前記接線方向において前記ストッパ(28)と前記固定ラグ(15)との間に配置されるシム(31)を備え、
前記シム(31)は、前記接線方向における前記ストッパ(28)と前記固定ラグ(15)との間の空いたままの距離を調整するよう構成されている、請求項6~9の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項11】
前記流体貯蔵設備は、前記支持構造体(1)に固定された、前記横方向に配向された少なくとも1つのスライド(17)を有し、
前記少なくとも1つの固定手段は、前記剛性の高い容器(10,11)から前記横方向に突出した固定ラグ(15)であり、
前記固定ラグ(15)は前記スライド(17)内に取り付けられており、
前記固定ラグ(15)は、前記相対移動を達成するために、前記スライド(17)内で前記横方向に移動可能である、請求項1~4の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項12】
前記スライド(17)は、前記支持構造体(1)から前記厚さ方向に突出する第1の部分(18)と、前記第1の部分(18)に接続し、前記横方向に直交する接線方向に沿って配向された第2の部分(19)と、を有して、L字状断面を有するスライドを形成している、請求項11に記載の流体貯蔵設備。
【請求項13】
前記流体貯蔵設備は、前記横方向に直交する接線方向において前記少なくとも1つの固定ラグ(15)の両側に位置する2つのスライド(17)を有し、
前記スライド(17)は、前記厚さ方向及び前記接線方向において前記少なくとも1つの固定ラグ(15)の移動を阻止するように構成されている、請求項11又は請求項12に記載の流体貯蔵設備。
【請求項14】
前記サンプ構造体(9)は少なくとも1つの補強ブラケット(16)を備え、
前記補強ブラケット(16)の第1の側部は前記固定ラグ(15)上で固定されており、
前記補強ブラケット(16)における前記第1の側部に垂直な第2の側部は、前記剛性の高い容器(10,11)に固定されている、請求項5~13の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項15】
前記サンプ構造体(9)は、前記容器(10,11)の外周に一定間隔で分配された複数の固定手段(15,32)を備える、請求項1~14の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項16】
前記少なくとも1つの固定手段は、前記支持構造体(1)に溶接された第1端と、前記サンプ構造体(9)に溶接された第2端と、を有する弾性変形可能な固定具(32)である、請求項1~3の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項17】
前記固定具(32)は前記サンプ構造体(9)の全周に連続的に形成されている、請求項16に記載の流体貯蔵設備。
【請求項18】
前記固定具(32)は、前記サンプ構造体(9)の全周に周期的に配置されたスリット(36)によって透かし加工されている、請求項16又は17に記載の流体貯蔵設備。
【請求項19】
前記流体貯蔵設備は、前記サンプ構造体(9)の全周に一定間隔で分配された複数の弾性変形可能な固定具(32)を備える、請求項16に記載の流体貯蔵設備。
【請求項20】
前記横方向に直交する接線方向に沿って配向された法線ベクトル平面における前記固定具(32)の断面は直線的である又は湾曲している、請求項16~19の何れか一項に記載の流体貯蔵設備。
【請求項21】
低温液体製品を輸送するための船舶(70)であって、
外側船体(72)と、
前記外側船体(72)内に配置される請求項1~20の何れか一項に記載の流体貯蔵設備と、を備え、
前記支持構造体(1)が前記船舶(70)の内側船体である、船舶。
【請求項22】
請求項21に記載の船舶(70)に対して荷積み又は荷降ろしを行う方法であって、
海上若しくは陸上貯蔵設備(77)から前記船舶の前記密閉断熱タンクに、又は前記船舶の前記密閉断熱タンクから海上若しくは陸上貯蔵設備(77)に、断熱パイプ(73,79,76,81)を介して低温液体製品が送られる、方法。
【請求項23】
低温液体製品のための輸送システムであって、
請求項21に記載の船舶(70)と、
前記船舶の前記外側船体内に設置された前記密閉断熱タンクを海上又は陸上貯蔵設備(77)に接続するよう配された断熱パイプ(73,79,76,81)と、
前記断熱パイプを介して前記海上若しくは陸上貯蔵設備から前記船舶の前記密閉断熱タンクに、又は前記船舶の前記密閉断熱タンクから前記海上若しくは陸上貯蔵設備に、低温液体製品を送るためのポンプと、を備える、輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンを有する密閉断熱タンクを備える流体貯蔵設備の分野に関する。具体的には、本発明は、例えば-50℃~0℃の間の温度を有する液化石油ガス(LPGとも呼ばれる)又は大気圧で約-162℃の液化天然ガス(LNG)のような低温の液化ガスを貯蔵及び/又は輸送するための設備に特に関する。これらの設備は陸上又は海上構造物に設置することができる。海上構造物の場合、貯蔵設備のタンクは、液化ガスを輸送するため又は海上構造物を推進させるための燃料として使用される液化ガスを収容するためのものであってもよい。
【背景技術】
【0002】
流体貯蔵設備は、例えば文献WO2016/001142から公知である。このような貯蔵設備は、例えば船舶の内側船体などの支持構造体と、支持構造体の内部に位置しこれに固定された密閉断熱タンクとを含む。密閉断熱タンクは厚さ方向に重ねられた多層からなる構造を有し、多層からなる構造は、密閉メンブレンと、密閉メンブレンと支持構造体との間に配置された断熱バリアと、を備える。
【0003】
このようなタンクの運用イールドを最大限高めるためには、タンクに積み込む及びタンクから降ろすことができる貨物の有用量を最適化することが望ましい。タンクの頂部に向かって液体を吸引する荷降ろしポンプを使用するということは、タンクの底部に一定の高さの液体を維持しなければならないことを意味し、これに失敗すればポンプの吸引部材が気相と連通してポンプが空運転となる及び/又は損傷する。このため、このようなタンクの底壁に、密閉メンブレンを局所的に中断するサンプ構造体を形成することが知られており、このサンプ構造体はタンクの底壁を通って係合された容器を備え、これにより容器内の液体がタンクの最低液位となるように構成されている。
【0004】
したがって荷降ろしポンプはこのようなサンプ構造体に配置され、これによりタンクの運用イールドを最大限に高めることができる。
【0005】
しかしながら、LNG等の極低温流体をタンクに積み込む際に、タンクにおけるサンプ構造体などの流体に直接接する要素は大きな温度変動にさらされ、これにより当該要素が熱収縮する。しかしながらサンプ構造体は、極低温流体に接していない支持構造体に固定されている。したがって、サンプ構造体を支持構造体に固定することができる固定手段はかなりの機械的応力を受ける可能性があり、これにより材料が受ける疲労が加速し、タンクの運用寿命が制限される可能性がある。
【0006】
また、特に、特開2000-168885号公報から、支持構造体がコンクリート製である地中式の陸上貯蔵設備でサンプ構造体を使用することが公知である。この種の設備では、サンプ構造体は支持構造体に固定されておらず、単に支持構造体上に配置されている。その理由は、この種の設備では、海上構造物における貯蔵設備とは対照的に、流体が動くことは想定されておらず、したがってサンプ構造体を固定しなくてもよいからである。しかしながら、この設計は全ての用途に適合するわけではない。
【0007】
さらに、密閉断熱タンクにサンプを形成することを含む上記用途に関連する機械的応力について、当業者による考慮が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一つのコンセプトは、サンプ構造体と支持構造体との固定性を向上させて、そ
の耐用年数及び信頼性を高めることである。
【0009】
一実施形態によれば、本発明は流体貯蔵設備を提供し、当該貯蔵設備は支持構造体及び密閉断熱タンクを備え、前記タンクは支持構造体に固定された少なくとも1つの底壁を有し、底壁は、厚さ方向に重ねられた多層からなる構造を有し、前記多層からなる構造は、少なくとも1つの密閉メンブレンと、密閉メンブレンと支持構造体との間に配置された少なくとも1つの断熱バリアと、を含み、壁は、底壁の密閉メンブレンを局所的に中断するサンプ構造体を有し、サンプ構造体は側壁を備える剛性の高い容器を有し、容器は底壁の厚さにわたって配置されており、サンプ構造体は、側壁における固定ポイントにおいて剛性の高い容器を支持構造体に固定するよう設計された少なくとも1つの固定手段を備え、少なくとも1つの固定手段は、容器の固定ポイントにおける側壁に垂直な横方向への支持構造体に対する容器の側壁の相対移動を許容するように構成されており、相対移動は1mmよりも大きく、例えば1~5mmの間である。
【0010】
「固定ポイントにおける側壁に垂直な横方向」との表現は、固定ポイントにおける側壁の接平面に直交する方向を意味する。
【0011】
さらに、全ての実施形態において、「側壁における固定ポイント」との表現は、サンプ構造体の側壁が位置する高さにおいて、固定手段がサンプ構造体に固定される部位を指す。
【0012】
したがって、少なくとも1つの固定手段により、サンプ構造体の容器の側壁が支持構造体に対して横方向に相対的に移動することを許容しつつ、サンプ構造体を支持構造体に固定することが可能となる。したがってサンプ構造体は、支持構造体に固定されたままで熱収縮することができ、少なくとも1つの固定手段が過度な機械適応力にさらされることが防止される。
【0013】
さまざまな実施形態において、上記の貯蔵設備は以下に記載の特徴のうちの1つ又は複数を有することができる。
【0014】
一実施形態では、少なくとも1つの固定手段は、支持構造体に固定された、好ましくは溶接された第1の部分と、容器の側壁に固定された、好ましくは溶接された第2の部分と、を有する。
【0015】
一実施形態では、少なくとも1つの固定手段は、支持構造体に直接固定される、好ましくは直接溶接される。
【0016】
一実施形態では、少なくとも1つの固定手段は、容器の側壁に直接固定される、好ましくは直接溶接される。
【0017】
一実施形態では、支持構造体は金属材料からなる。
【0018】
一実施形態では、支持構造体は海上構造物の船体の一部である。
【0019】
一実施形態では、少なくとも1つの固定手段は、厚さ方向において密閉メンブレンと支持構造体との間に位置する。
【0020】
一実施形態では、サンプ構造体は固定翼を備え、固定翼は、密閉メンブレンに、密閉して即ち流体が通過できないように閉じた表面を形成して固定されている、例えば溶接されている。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの固定手段は、厚さ方向において固定翼の下側に少なくとも部分的に位置する。
【0022】
一実施形態では、密閉メンブレンは二次密閉メンブレンであり、断熱バリアは二次断熱バリアであり、上記の固定翼は第2の固定翼であり、底壁は、二次密閉メンブレンの上に位置する一次断熱バリアと、一次断熱バリアの上に位置する一次密閉メンブレンと、を備え、サンプ構造体は第1の固定翼を備え、第1の固定翼は、一次密閉メンブレンに、密閉して即ち流体が通過できないように閉じた表面を形成して固定されている、例えば溶接されている。
【0023】
一実施形態では、上記の容器は第2の容器であり、サンプ構造体は第1の容器を備え、第1の容器の下部は第2の容器の中に位置し、第1の固定翼は第1の容器の延長部であり、第2の固定翼は第2の容器の延長部であり、少なくとも1つの固定手段は、第2の容器の側壁の上に位置する。
【0024】
一実施形態では、側壁は、厚さ方向に沿った軸を有する円筒状の形状である。
【0025】
円筒状の側壁は、断面がさまざまな形状を有してもよい。
【0026】
一実施形態では、剛性の高い容器は円形の断面を有し、上記の横方向は径方向である。
【0027】
添付の
図1~
図5に関連して以下に記載する本発明の一実施形態では、上記の設備は、厚さ方向及び接線方向への少なくとも1つの固定手段の移動を阻止するよう構成された少なくとも1つの阻止手段を有し、接線方向は、側壁に対する接線の方向であるとともに、横方向と厚さ方向とに直交する方向である。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1つの固定手段は、剛性の高い容器から横方向に突出する固定ラグを有し、固定ラグはオリフィスを有し、設備は、厚さ方向において固定ラグを支持構造体に固定するためにオリフィス内に配置された固定装置を備える。
【0029】
上記の特徴によって、固定装置は、サンプ構造体が支持構造体に対して厚さ方向に移動するのを防止することができる。
【0030】
一実施形態では、阻止手段は固定装置を備える。
【0031】
一実施形態では、上記設備は、支持構造体に固定された、接線方向において少なくとも1つの固定ラグの両側に位置する2つのストッパを備え、接線方向は、側壁に対する接線の方向であるとともに、横方向と厚さ方向とに直交する方向であり、ストッパは、接線方向への固定ラグの移動を阻止するよう構成されている。
【0032】
上記の特徴によって、ストッパは、サンプ構造体が支持構造体に対して接線方向に移動するのを防止することができる。
【0033】
一実施形態では、阻止手段は、ストッパと固定装置との組み合わせにより形成されている。
【0034】
一実施形態では、オリフィスは横方向に沿った寸法が最大寸法である楕円形のオリフィスを有し、これにより固定装置及び支持構造体に対する固定ラグ及び側壁の横方向の移動が許容されるよう構成されている。
【0035】
一実施形態では、オリフィスは、固定装置の直径よりも大きい直径を有する円形オリフィスを有し、
これにより固定装置及び支持構造体に対する固定ラグ及び側壁の横方向の移動が許容されるよう構成されている。
【0036】
上記の特徴により、楕円形の孔の寸法が大きいこと又は円形オリフィスの直径が大きいことで固定ラグが固定装置に対して横方向に移動することができる。したがって、サンプ構造体の側壁が支持構造体に対して横方向に移動することができ、これによってサンプ構造体の熱収が許容されるという効果が得られる。
【0037】
一実施形態では、上記設備は孔を有する2つの有孔プレートを備え、有孔プレートは、厚さ方向において少なくとも1つの固定ラグの両側に位置し、固定装置は各有孔プレートの孔を通過し、有孔プレートは、摩擦係数が0.2未満、好ましくは0.05~0.2である材料から作製されている。
【0038】
上記の特徴により、固定ラグを支持構造体に対して横方向に移動可能としつつ、有孔プレートによって厚さ方向において固定ラグを固定装置と支持構造体の間に挟んで締め付けることができる。実際、有孔プレートの摩擦係数が低いことで、固定ラグと支持構造体の間の摩擦力が最小化することが可能となり、これによって固定ラグの損傷が回避され、またサンプ構造体の収縮が容易となるという効果が得られる。
【0039】
一実施形態では、有孔プレートの孔は、当該プレートの一方の縁から当該プレートの中心に向かって横方向に延在し、これにより当該プレートの横方向の位置決めが可能となるように構成されている。
【0040】
一実施形態では、有孔プレートはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)から作製されたものである。
【0041】
一実施形態では、ストッパ及び/又はシムは、例えばステンレス鋼などの金属から作製されている。
【0042】
一実施形態では、密閉メンブレン、複数の密閉メンブレンのうちの1つ又は複数の密閉メンブレンは、ステンレス鋼、アルミニウム、インバー(登録商標)、即ち膨張係数が通常1.2×10-6K-1~2×10-6K-1である鉄とニッケルの合金若しくは膨張係数が7×10-6K-1のオーダーである鉄に高マンガン含有量を加えた合金といった金属から製造される。
【0043】
一実施形態では、固定ラグ、補強ブラケット及び容器若しくは複数の容器は、例えばこれらが固定される密閉メンブレンと同じ金属である金属から作製される。
【0044】
一実施形態では、固定装置はねじ棒又はスタッドとナットとを有し、ねじ棒は支持構造体に固定され、そして一実施形態では、ねじ棒は有孔プレートの孔と固定ラグのオリフィスとを通過しており、ナットは、支持構造体とともに、有孔プレート及び固定ラグに厚さ方向に締め付け力を加えるよう構成されている。
【0045】
一実施形態では、ナットが使用中に不意に外れないことを保証するように、ナットはねじ棒上の締め付け位置に溶接されている。ナットを他の適切な阻止手段で固定することも可能であろう。
【0046】
一実施形態では、上記設備は、接線方向においてストッパと固定ラグとの間に配置される1つ又は複数のシムを備え、シムは、接線方向におけるストッパと固定ラグとの間の空いたままの距離を調整するよう構成されている。
【0047】
上記の特徴により、位置決め許容範囲を考慮してサンプ構造体の固定を調整することが可能である。
【0048】
一実施形態では、上記設備は、支持構造体に固定された、横方向に配向された少なくとも1つのスライドを有し、少なくとも1つの固定手段は、剛性の高い容器から横方向に突出した固定ラグであり、固定ラグはスライド内に取り付けられており、固定ラグは、上記相対移動を達成するためにスライド内で横方向に移動可能である。
【0049】
上記の特徴により、スライドによって側壁は横方向に移動することができ、これにより熱収縮の際に固定部に強い応力が加わることが回避されるよう構成されている。
【0050】
一実施形態では、スライドは、支持構造体から厚さ方向に突出する第1の部分と、第1の部分に接続し接線方向に沿って配向された第2の部分と、を有して、L字状断面を有するスライドを形成している。
【0051】
上記の特徴により、スライドの形状によって、厚さ方向と少なくとも部分的に接線方向とにおける固定ラグの移動、したがってサンプ構造体の移動を、阻止することができる。
【0052】
一実施形態では、阻止手段はスライドを備える。
【0053】
一実施形態では、上記設備は、接線方向において少なくとも1つの固定ラグの両側に位置する2つのスライドを有し、スライドは、厚さ方向及び接線方向において固定ラグの移動を阻止するように構成されている。
【0054】
上記の特徴により、スライドによって、厚さ方向及び接線方向への固定ラグの移動、したがってサンプ構造体の移動を、阻止することができる。
【0055】
一実施形態では、阻止手段は固定ラグの両側に位置する2つのスライドから形成されている。
【0056】
一実施形態では、サンプ構造体は少なくとも1つの補強ブラケットを備え、補強ブラケットの第1の側部は固定ラグ上で固定されており、補強ブラケットにおける第1の側部に垂直な第2の側部は、剛性の高い容器に固定されている。
【0057】
上記の特徴により、固定ラグは補強ブラケットによって特に厚さ方向の湾曲について補強され、これにより固定ラグが上記設備の使用中に損傷することが防止される。
【0058】
一実施形態では、固定ラグは2つの補強ブラケットを備え、ブラケットの第1の側部は、固定ラグの上面又は下面に固定されており、ブラケットは固定ラグのオリフィスの両側に配置されている。
【0059】
一実施形態では、サンプ構造体は、容器の外周に一定間隔又はばらばらの間隔で分配された複数の固定手段を備え、例えば3つ又は4つの固定手段を備える。
【0060】
上記の特徴により、サンプ構造体はその全周において固定されており、よって、サンプ構造体は、その側壁が収縮又は膨張自由なままでありながら、全体として移動することが
防止される。この固定は、多かれ少なかれ同じようなかたちで実現することができる。
【0061】
一実施形態では、少なくとも1つの固定手段は、支持構造体に溶接された第1端と、サンプ構造体に溶接された第2端と、を有する弾性変形可能な固定具である。
【0062】
上記の特徴により、固定具は弾性変形可能であり、これによりサンプ構造体を支持構造体に固定したままでサンプ構造体の収縮を許容する。
【0063】
一実施形態では、固定具はサンプ構造体の周囲に連続的に形成されている。
【0064】
上記の特徴により、固定具は単一片として形成され、サンプ構造体をその全周において均一に支持構造体に固定する。
【0065】
一実施形態では、固定具は、サンプ構造体の全周に配置されたスリットによって透かし加工されている。
【0066】
一実施形態では、上記設備は、サンプ構造体の全周に一定間隔又はばらばらの間隔で分配された複数の弾性変形可能な固定具を備える。
【0067】
上記の特徴により、固定具によってサンプ構造体をその全周において均一に支持構造体に固定することが可能となる。サンプ構造体の外縁の周りに非周期的に分配された固定具は、有利なことに固定を最適化することができる。
【0068】
一実施形態では、接線方向に沿って配向された法線ベクトル平面(normal vector plane)における固定具の断面は直線的である又は湾曲している。勿論、固定具は異なる断面
形状を有してもよい。
【0069】
一実施形態では、固定具の断面は湾曲しており、湾曲の符号は不変であり、湾曲は湾曲の程度に小さい又は大きいばらつきを有する。
【0070】
一実施形態では、固定具の断面は湾曲しており、例えば少なくとも1つのうねりを形成するよう湾曲の符号が変化する複数の湾曲を有する。
【0071】
一実施形態では、固定具の断面は固定具の第1端と固定具の第2端との間において支持構造体上の支持ポイントを含む。
【0072】
上記の設備は、例えばLNGを貯蔵するための陸上貯蔵設備であってもよく、あるいは特にLNGタンカーといった遠海、近海又は深海の構造物、浮体式貯蔵及び再ガス化ユニット(FSRU)、浮体式生産、貯蔵及び荷降ろし設備(FPSO)などに設置される設備であってもよい。そのようなタンクはあらゆる種類の船舶の燃料タンクとして機能することができる。
【0073】
一実施形態では、低温流体製品を輸送するための船舶は、外側船体と、外側船体内に配置される上記の流体貯蔵設備と、を備え、支持構造体が船舶の内側船体である。
【0074】
一実施形態では、本発明はまた、上記の船舶に対して荷積み又は荷降ろしを行う方法を提供し、海上若しくは陸上貯蔵設備から船舶のタンクに、又は船舶のタンクから海上若しくは陸上貯蔵設備に、断熱パイプを介して低温液体製品が送られる。
【0075】
一実施形態では、本発明はまた、低温液体製品のための輸送システムを提供し、システ
ムは、上記の船舶と、船舶の船体内に設置されたタンクを海上又は陸上貯蔵設備に接続するよう配された断熱パイプと、断熱パイプを介して海上若しくは陸上貯蔵設備から船舶のタンクに、又は船舶のタンクから海上若しくは陸上貯蔵設備に、低温液体製品を送るためのポンプと、を備える。
【0076】
限定を意図しない例として挙げた本発明の数々の具体的な実施形態に関する以下の記載を図面を参照して読むことによって、本発明はより良く理解され、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】第1の実施形態による支持構造体に固定されたサンプ構造体の斜視図を示す。
【
図3】第2の実施形態による支持構造体に固定されたサンプ構造体の部分斜視図を示す。
【
図4】断面IV-IVに沿った
図3の断面図である。
【
図6】第3の実施形態による支持構造体に固定されたサンプ構造体の概略断面図を示す。
【
図7】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図8】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図9】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図10】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図11】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図12】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図13】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図14】サンプ構造体を支持構造体に固定するように設計された固定手段のさまざまな実施形態の1つを示す。
【
図15】貯蔵設備を備えたLNGタンカー及び貯蔵設備の荷積み/荷降ろしターミナルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下の説明では、支持構造体1、密閉断熱タンク、並びにLNG用の貯蔵タンク及び/又は輸送タンクの底壁4で使用することができるサンプ構造体9を含む貯蔵設備71について記載する。底壁4は、地球の重力場に対してタンクの底に位置する好ましくは全体的に平面である壁4を示す。タンクの全体的な形状もさまざまなタイプとすることができる。最も一般的なのは多面体の形状である。円筒状、球形又はその他のタイプの形状も可能である。
【0079】
タンクの壁4は、2つの断熱バリア6、8と交互に配置された2つの密閉メンブレン5、7を含む、荷重支持壁1に固定される多層構造によって形成される。この多層構造の製造に関しては多くの公知の技術があるため、以下では、サンプ構造体9と、貯蔵設備71の支持構造体1へのサンプ構造体9の固定に限定して記載する。
【0080】
タンク壁4は、例えば二重船体構造の船舶70の内側船体などの厚い鋼板から作製された支持構造体1に取り付けられる。タンク壁4は、例えばマスチックのビーズによって支持構造体1に固定される二次断熱バリア8と、二次断熱バリア8により支持される二次密閉メンブレン7と、二次密閉メンブレン7を覆う一次断熱バリア6と、一次断熱バリア6により支持される一次密閉メンブレン5と、を連続的に備えた多層構造を有する。
【0081】
図1は、第1の実施形態による支持構造体1に固定されたサンプ構造体9を示す。
【0082】
サンプ構造体9の位置において、支持構造体は、
図1に円形のものとして示す開口部2を有し、開口部を介してサンプ構造体9が係合し、開口部によってサンプ構造体9がタンク壁4の厚さの方向に支持構造体1の外側に突出することができる。
【0083】
高剛性の円筒状容器10,11が、開口部2の周囲において1つ又は複数の固定手段15,32により支持構造体1に固定され、支持構造体1から外側に突出して、サンプ構造体9を収納するための追加スペースを提供する拡張構造を形成する。より具体的には、容器10,11は、例えば円形又はその他の形状の円筒状側壁12を有する。容器10,11は、支持構造体1と又は密閉メンブレン5,7の1つと同様の材料で作製することができる。
【0084】
サンプ構造体9は、タンクの内部と連通する第1の容器10と、第1の容器10の下部を取り囲む第2の容器11とを有する。第1の容器10は、一次密閉メンブレン5に連続的に接続されて、漏れ止めを形成して完成する。同様に、第2の容器11は、二次密閉メンブレン7に連続的に接続されて、漏れ止めを形成して完成する。
【0085】
より具体的には、第1の容器11は、支持構造体1に垂直な軸を有する円筒状側壁12を備え、円筒状側壁12は、当該側壁の上部に位置する、一次密閉メンブレン5と実質的に整列した第1の固定翼と、支持構造体の下方で開口部2に係合する下部と、を有する。支持構造体1に平行な底壁によって、円筒状側壁はその下部で閉じられている。第1の固定翼は、円筒状側壁の上部の縁に固定され、第1の容器10の周囲全体にわたってその径方向外向きに突出している。
【0086】
したがって、一次密閉メンブレン5は、例えば円形又は正方形の窓などの窓の形態の中断部を有し、その縁は、
図6に示すようにサンプ構造体9を取り囲んで例えば溶接又は接着剤による接着により第1の固定翼13に密閉接続される。
【0087】
同様に、第2の容器11は、支持構造体1に垂直な軸を有する円筒状側壁12を備え、円筒状側壁12は、二次密閉メンブレン7と実質的に整列した第2の固定翼14と、第1の容器10の底壁の下方で開口部に係合する下部と、を有する。支持構造体に平行な底壁によって、第2の容器11の円筒状側壁12はその下部で閉じられている。第2の容器11の円筒状側壁12は、第1の容器10の円筒状側壁から離れた位置で第1の容器10の円筒状側壁を取り囲む。第2の固定翼14は、円筒状側壁12の上部の縁に固定され、第2の容器11の周囲全体にわたってその径方向外向きに突出している。
【0088】
また、二次密閉メンブレン7は、例えば円形又は正方形の窓などの窓の形態の中断部を有し、その縁は、
図6に示すようにサンプ構造体9を取り囲んで例えば溶接又は接着剤による接着により第2の固定翼14に密閉接続される。
【0089】
タンク壁4において、支持構造体1と二次密閉メンブレン7との間の空間は、二次断熱バリア8を含み、安全対策として窒素の流れを循環させることができる二次空間である。
サンプ構造体9では、第2の容器11と支持構造体1との間の空間も二次空間であり、この二次空間はタンク壁4の二次空間と連通して上記の窒素の掃引を受けることが可能となっている。
【0090】
二次断熱バリア8は、例えば、支持構造体1を比較的均一に裏打ちするために並置されたモジュラーブロックから形成される。
図6からわかるように、これらのモジュラーブロックはサンプ構造体9から所定距離空けた位置で終了する。適切な形状の断熱ブロックは、サンプ構造体9にかなり接近するように設計することができ、あるいはサンプ構造体9に嵌合されて二次断熱部における残りの満たされるべきギャップを制限するように設計することができる。第2の容器11の周囲の断熱部を完成させるために、断熱材が、二次断熱バリア8の縁と第2の容器との間のギャップと、さらにサンプ構造体9の二次空間内にも収容される。実際に、二次密閉メンブレン7及び第2の容器11は、一次密閉メンブレン5に偶発的な漏れが生じた場合に極低温流体と接触しやすい。
【0091】
同様に、タンク壁4において、二次密閉メンブレン7と一次密閉メンブレン5との間の空間は、一次断熱バリア6を含み、安全対策として窒素の流を循環させることができる一次空間である。サンプ構造体9において、第1の容器10と第2の容器11との間の空間も一次空間であり、この一次空間はタンク壁4の一次空間と連通して上記の窒素の掃引を受けることが可能となっている。
【0092】
一次断熱バリア6は、例えば、二次密閉メンブレン7を比較的均一に裏打ちするために並置されたモジュラーブロックから形成される。これらのモジュラーブロックはサンプ構造体9から所定距離空けた位置で終了する。適切な形状の断熱ブロックは、サンプ構造体9にかなり接近するように設計することができ、あるいはサンプ構造体9に嵌合されて一次断熱部における残りの満たされるべきギャップを制限するように設計することができる。第1の容器10の周囲の断熱部を完成させるために、断熱材が、一次断熱バリア6の縁と第1の容器10との間のギャップと、さらにサンプ構造体9の一次空間内にも収容される。実際に、一次メンブレン5及び第1の容器10は使用中にLNGと接触する。
【0093】
一次断熱部及び二次断熱部を完成させるには異なる断熱材が適している場合があり、このような断熱材は、例えば、グラスウール又はロックウール、ポリマーフォーム、特にポリウレタン又はPVC、バルサ材、合板、エアロゲル及びその他の断熱材である。
【0094】
第1の容器10は、一次密閉メンブレン5の下方に位置することから、使用中に、サンプとして、タンク内に存在する液体残留物を重力によって受け取る。第1の容器10は、ポンプの吸引ヘッドを液体に浸した状態に保つのに十分な容積を有し、これによりタンクの運用イールドを最大限に高める。
【0095】
構造安定性を良好にするために、第1の容器10及び第2の容器11は、密閉メンブレンよりも剛性が高い材料、例えば厚さが6~20mmのオーダーの板金から作製されている。
【0096】
サンプ構造体9の他の実施形態は、例えば、文献WO2016/001142に記載されている。
【0097】
図1及び
図2に示す第1の実施形態では、サンプ構造体は、第2の容器11の円筒状側壁12上に、固定ラグ15の形態の固定手段15を備える。固定ラグ15によってサンプ構造体9を支持構造体1に固定することができる。
【0098】
固定ラグ15は、第2の容器11から径方向に突出し、側壁12の全周に一定間隔で分
配され、例えば
図1に示すように、固定ラグ15は3つあり、互いに120°の位置に配置されている。
【0099】
各固定ラグ15を補強するために、サンプ構造体9は各固定ラグ15上に2つの補強ブラケット16を備える。補強ブラケット16は、固定ラグ15の上面に固定された第1の側面20と、第2の側面21と、を有し、第2の側面21は第1の側面20に垂直であり、第2の容器11の側壁12に固定されている。
【0100】
支持構造体1は、開口部2付近にスライド17を備える。スライド17は、支持構造体1から厚さ方向に突出する第1の部分18と、第1の部分18に接続する第2の部分19と、によって形成され、L字型の断面を持つスライドを形成するように、第2の部分19は接線方向に向いている。
図1及び
図2に示すように、各固定ラグ15は2つのスライド17の間に挟まれており、各スライド17の第2の部分19の一部が厚さ方向において固定ラグの上に配置されている。このように配置されたスライド17によって、厚さ方向及び接線方向への固定ラグ15の移動、したがってサンプ構造体の移動を、阻止することが可能となる。
【0101】
さらに、スライド17によって各固定ラグ15は自由度を保つことができ、即ち径方向に並進移動することができ、これによりサンプ構造体9が収縮又は熱膨張できるように構成されている。
【0102】
図3~
図5は、サンプ構造体9を支持構造体1に固定する第2の実施形態を示す。この実施形態は、固定ラグ15を係止するシステムに関して第1の実施形態とは異なる。実際、
図3~
図5から分かるように、第2の実施形態の固定ラグ15は第1の実施形態のものと同様であるが、第2の実施形態では、固定ラグ15はオリフィス直径23を有するオリフィス22を含む。しかしながら、支持構造体1上における固定ラグ15の所定の自由度を阻止するのにスライド17は使用されていない。スライド17の代わりに、ストッパ28が、開口部2付近において支持構造体1に固定されている。ストッパ28は、接線方向においてサンプ構造体9の各固定ラグ15を囲むように支持構造体1上に配置される。
【0103】
ねじ棒直径27を有するねじ棒25とナット26とからなる固定装置24が、各固定ラグ15のオリフィス22に厚さ方向に挿入される。固定装置24は、その一端を介して支持構造体1に固定され、その他端にナット26が位置付けられて、固定ラグ15を支持構造体との間に厚さ方向に挟んで締め付けるように構成されている。これにより固定装置24は固定ラグ15を支持構造体1に対して締め付け固定することで、固定ラグ15を厚さ方向に阻む。ナット26は、貯蔵設備71の使用中にナットが緩むのを防ぐために、締め付け位置でねじ棒25に溶接される。
【0104】
図4及び
図5から分かるように、オリフィス22は、直径23がねじ棒25の直径27よりも大きい円形オリフィスであり、これにより固定ラグ15に特に径方向にいくらかのクリアランスを残し、これによりサンプ構造体9は収縮又は拡張することができる。別の実施形態(非図示)では、オリフィス22は、大きい方の寸法が径方向に位置する楕円形の(oblong)オリフィスである。
【0105】
固定装置24による固定ラグ15の締め付けが熱収縮の影響下でサンプ構造体9の生じ得る移動に悪影響を及ぼさないことを確実にするために、特に
図5から分かるように、有孔プレート29が固定ラグ15のいずれかの側においてナット26と支持構造体1との間に介在するように配置されており、有孔プレート29は、孔30を含み、例えばPTFEなどの低摩擦係数を有する材料で作製されたものである。固定装置24のねじ棒25もまた有孔プレート29の孔30を通過する。
【0106】
有孔プレート29の摩擦係数が低いことから、有孔プレートと固定ラグ15との間の摩擦力が最小化され、固定ラグ15、したがってサンプ構造体が、径方向に収縮又は拡張することが可能になる。
【0107】
ストッパ28と固定ラグ15との間の接線方向の距離を調整するために、シム31が各ストッパ28と固定ラグ15との間に挿入され、これにより接線方向における固定ラグ15の遊びが大きくなりすぎないことが保証される。
【0108】
図6~
図14は、第3の実施形態によるサンプ構造体9を支持構造体に固定するための複数の変形例を示す。この実施形態では、上記の実施形態とは対照的に、固定手段を径方向に自由なままにすることはもはや論点ではなく、代わりに、弾性変形可能な固定手段を使用して、その変形を介してサンプ構造体9の熱収縮を補償することを可能にすることが論点となる。
【0109】
図6に示すように、サンプ構造体9は、少なくとも1つの弾性変形可能な固定具32によって支持構造体1に固定される。固定具32は、第1端が支持構造体1に溶接され、第1端と反対側の第2端が、例えば第2の容器11の側壁12の上又は第2の固定翼14の上で、サンプ構造体9に溶接されている。
【0110】
図7から分かるように、接線方向の法線ベクトル平面において、固定具32の断面は、その高さ33即ちその厚さ方向の寸法と、その軸距34即ちその径方向の寸法と、その厚さ35と、によって定義される。
【0111】
いくつかの変形例によれば、固定具32の断面は異なる形状とすることができ、これによりその径方向の剛性に影響を与えて、サンプ構造体9の収縮又は膨張の影響下でより変形し易くなる又はより変形し難くなるよう構成することができる。
図6に示す実施形態では、固定具の断面は直線状である。
【0112】
図7は、符号が不変の曲率を有し、曲率がわずかに変化する湾曲した固定具の断面を示す。
【0113】
図8は、符号が不変の曲率を有し、曲率が大きく変化する湾曲した固定具の断面を示す。
【0114】
図9は、固定具の断面がわずかに波打つように符号が変化する、つまり変曲点を含む曲率を有する湾曲した固定具の断面を示す。
【0115】
図10は、うねり37を形成するように符号が複数回変化する曲率を有する湾曲した固定具の断面を示す。
【0116】
図11は、符号が複数回変化する曲率を有し、曲率が複数の点で急激に変化する湾曲した固定具の断面を示す。さらに、この変形例の固定具32は、固定具32の第1端と第2端との間において支持構造体1上の支持ポイント38を含み、これによりその厚さ方向の剛性が高められている。
【0117】
図12は第3の実施形態の変形例を示し、この変形例では、貯蔵設備71が、第2の容器11の外周に一定間隔又はばらばらの間隔で分配された複数の固定具32を備える。したがってこの変形例では、サンプ構造体9は複数の固定具32によって離散的に支持構造体1に固定される。
【0118】
図13は、
図12とは対照的に、貯蔵設備71が1つの固定具32を備え、その一端が第2の容器11の側壁12の形状と一致するとともにその全周に溶接され、他端が支持構造体1に溶接されている変形例を示す。したがってこの変形例では、サンプ構造体9は、1つの固定具32によって連続的に支持構造体1に固定されている。
【0119】
図14は、第3の実施形態の別の変形例を示す。この変形例では、固定具32は、
図12に示したものと同じ形状である。しかしながら、
図14の固定具32は、固定具32の表面全体に周期的に分配されたスリット36を備える。スリット36は、特に固定具32の剛性を変化させて、固定具32がサンプ構造体9の収縮又は膨張の影響下で弾性的に変形できるようにする。図示の実施形態では、スリット36は楕円又は長方形の(oblong)形状であり、固定具32の2つの縁の間に位置する。他の変形例(非図示)では、スリット36は、固定具32における一方の縁又は各縁に配置され、これにより固定具32の固定を周期的又は非周期的に中断するように構成されている。さらに、スリットはさまざまな形状とすることができ、例えば多角形又は円形など形状とすることができる。
【0120】
貯蔵設備を実現するための上記の技術は、例えば、陸上設備又はLNGタンカーなどの海上構造物のLNGタンクなどのさまざまなタイプのタンクで使用することができる。
【0121】
図15を参照すると、LNGタンカー70の断面図において、船舶の二重船体72に取り付けられる、略角柱状の密閉断熱タンク71が示されている。タンク71の壁は、タンク内に含まれるLNGと接触するよう構成された一次密閉バリアと、一次密閉バリアと船舶の二重船体72との間に配置される二次密閉バリアと、一次密閉バリアと二次密閉バリアの間、及び二次密閉バリアと二重船体72の間にそれぞれ配置される2つの断熱バリアと、を備える。
【0122】
貨物であるLNGをタンク71に又はタンク71から移送するために、船舶のアッパーデッキに配置される積み降ろしパイプ73を適切なコネクタによって公知の方法で海上又は港のターミナルに接続することができる。
【0123】
図15は、積み降ろしステーション75、水中パイプ76及び陸上設備77を備える海上ターミナルの例を示す。積み降ろしステーション75は、可動アーム74と可動アーム74を支持するライザー78とを備える固定海上設備である。可動アーム74は、積み降ろしパイプ73に接続可能な断熱可撓性パイプ79の束を支持する。操縦可能な可動アーム74はあらゆるサイズのLNGタンカーに適合する。ライザー78の内部には接続パイプ(非図示)が延在する。積み降ろしステーション75によってLNGタンカー70と陸上設備77との間での積み降ろしが可能となる。この陸上設備は、液化ガス貯蔵タンク80と、水中パイプ76を介して積み降ろしステーション75に接続される接続パイプ81と、を備える。水中パイプ76によって、積み降ろしステーション75と陸上設備77との間で例えば5km等の長距離にわたって液化ガスを移送することができ、これにより、荷積み及び荷降ろし作業中にLNGタンカー70を海岸から遠く離れた場所に位置させておくことができる。
【0124】
液化ガスを移送するのに必要な圧力を生成するために、船舶70に搭載されたポンプ、及び/又は陸上設備77に装備されたポンプ、及び/又は積み降ろしステーション75に装備されたポンプが使用される。
【0125】
本発明について複数の具体的な実施形態に基づき記載したが、本発明はこれらに限定されず、本発明の範囲内であるならば記載したものと技術的に等価なもの全て及びこれらの組み合わせを備えることは明らかである。
【0126】
「有する」、「備える」又は「含む」との動詞の使用及びその活用形は、特許請求の範囲に記載されたもの以外の構成要素又は工程の存在を排除するものではない。
【0127】
特許請求の範囲において、括弧内に記載された参照符号は何れも特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。